ADP-ribosylation factor-like 4C predicts worse
prognosis in endometriosis-associated ovarian
cancers.
著者
脇ノ上 史朗
学位授与機関
滋賀医科大学
学位授与年度
平成30年度
学位授与番号
14202乙第441号
発行年
2019-03-08
URL
http://hdl.handle.net/10422/00012551
doi: https://doi.org/10.3233/CBM-181836学
位
の
種
類 博士(医学)
学
位
記
番
号 博士乙第 441 号
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第2項
学 位 授 与 年 月 日 平成31年 3月 8日
学 位 論 文 題 目 ADP-ribosylation factor-like 4C predicts worse prognosis
in endometriosis-associated ovarian cancers.
(ADP-ribosylation factor-like 4C は子宮内膜症関連卵巣
癌において予後不良因子である)
審
査
委
員 主査 教授 漆谷 真
副査 教授 平田 多佳子
副査 教授 杉原 洋行
別 紙 様 式
3
(課程博士 •論文博士共用)論 文 内 容 要 旨
0
整理番号4 4 5
ft 名 脇 ノ 上 史 朗学位論文題目
ADP・ribosylation factor-like 4C predicts worse prognosis in endometriosis-
associated ovarian cancers
(ADP-ribosylation factor-like 4 C
は子宮内膜症関連卵巣癌において予 後不良因子である)目的
卵 巣癌 において類内膜癌および明細胞癌は、子宮内膜症関連卵巣癌
(endometriosis-
associated ovarian cancer (EAOC))
と して知られており、本 邦 に 多 く 、再 発 率 • 死亡率 が高い卵巣癌とされる。 有効な予後予測バイオマーカーは、知られて いな いが 、近 年 、他 の 癌 腫 に 関 し てADP-ribosylationfactor-like4C(ARL4C)
が癌細胞の増殖能、運 動 能 、浸潤能の促進に関与していることが明らかにされている。卵巣癌においてはA R L 4C
との関連についての報告は少なく、特 にEA O C
に お い てARL4C
発現と予後 の関連について詳細に解析したものはない。 本 研 究 で はEAOC
に つ い てARL4C
の 免 疫 組 織 化 学 染 色 を 行 い 、臨床データと比較し、発現と予後の関連性を明らかにす ることを目的とした。 方法 滋 賀 医 科 大 学 産 婦 人 科 に お い て 初 回 治 療 が 行 わ れ た 卵 巣 類 内 膜 癌2 1
例および卵巣 明 細 胞 癌4 1
例 、計6 1
例 のEAOC
患者を対象とした。初回手術において摘出された検 体 の免 疫組 織 化 学 染 色 を 行 い 、半定量的評価を行った。A R L 4 C
の発現と臨床データ (年齢、進 行 期 分 類 、腫 瘍 マ ー カ ー 、組 織 型 、治療完遂度)お よ び5
年全生存期間(5-
year overall survival (5 y O S ))
、5
年 無 増 悪 生 存 期 間(5-year progression-free survival
(5 y P F S ))
との関連を検討した。ARL4C
の 発 現 と 臨 床 デ ー タ の 比 較 に はf
検定あるい はF ish e r's
検 定 を用いた 。OS
、P F S
の評価には、Kaplan-Meier
生 存 曲 線 、log-rank
検 定 、% 2
検定を 用いた。O S
お よ びP F S
の 予 後 不 良 因 子 をC ox
比例ハザード回帰を用い た多変量解析によって分析した。 有 意 水 準5%
未満を有意差ありとした。 本研究は滋 賀 医 科 大 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 て 施 行 さ れ た (承 認 番 号 :2 9 -1 7 8 )
。 結果A RL4C
は6 1
例 中3 6
例に高 発現し て お り 、年 齢 、進 行 期 分 類 、腫瘍マーカー及び組 織型と は相 関が認 められなか った。A R L 4 C
高発現は治療完遂群と比べて非完遂群に おいてより高頻度に認められた(p=0.011)
。5yO S
は、ARL4C
高 発現 群は 、低発現群に (備考) 1 . 論 文 内 容 要 旨 は 、研 究 の 目 的 • 方 法 •結 果 •考 察 •結 論 の 順 に 記 載 し 、 2 千字 程度 で タ イ プ 等 を 用 い て 印 字 す る こ と 。 2 . ※ 印 の 欄 に は 記 入 し な い こ と 。別 紙 様 式
3
の2
(課程博士 • 論文博士共用)_________ ________________________________________(続紙)
比 べ て 、有意に低かった
(log-rank
検定,p=0.036)
。5yPFS
に関しては、ARL4C
高発現群 は 、低発現群よりも低い傾向にあった
(log-rank
検定,p=0,056)
。単変量解析では、進行 期 分 類 、治 療 完 遂 度 、
ARL4C
発 現 が 、5yOS
及 び5yPFS
において予後との相関が認められた。 多 変 量 解 析 に て
ARL4C
高発現は、5yO S
及 び5yPFS
において独立した予後不良因子であった
(5yOS:HR=12.048,p=0.0201, 5yPFS:HR=8.130, p-0.0036)o
考察 本 研 究 は
E A O C
とA R L 4 C
との関連を論じた最初の報告である。E A O C
に関して は、が ん 抑 制 遺 伝 子 で あ るARID1A
の低発現が知られているが、同 様 にARL4C
高発 現も貴重なバイオマーカーとなり得る。ARL4C
は、低 分 子 量G
蛋 白 質 のA r f
ファミ リーに属する蛋白質であるが、その機能について不明な部分が多い。近 年 、癌との関 連に つ いて研 究 がすすめ られて おり、癌 細胞の増殖能、運 動 能 、浸潤能の促進に関与 していることが明らかにされている。A R L4C
は、ADP-ribosylation factor6 (Arf6)
を活性化することが 知 られて いる。
A rf6
の活性は、癌 細胞の浸潤や転移に関与しており、Epithelial to mesenchymal transition (EMT)
を促進すると報告されている。E M T
は上皮がんが他臓器へ
浸潤、
転移していくのに重要な役割を果たしており、
化学療法抵抗性に も関与している。 卵 巣 癌 の う ちE A O C
は、既存の抗癌剤に抵抗性をしめす症例が多 く、治療に難渋することが多い。 癌 の 進 行 に 関 与 し て い るA R L4C
をターゲットとし た治 療 戦略は有用と思われる。A R L 4 C
が 活性化されるためには、脂質による蛋白質 の修 飾反応 が重要であるが、この修飾反応に必要なイソブレノイド中間代・t
産物の主 要な 合 成 経 路 は 、メバロン酸経路である。このメバロン酸経路を阻害する薬剤として、 脂質異常症治療薬のスタチンと骨粗鬆症治療薬のビスホスホネートが知られている。 実 際 、スタチンやビスホスホネートの抗腫瘍効果についての報告が近年、卵巣癌を含 め た 各 種 癌 で な さ れ て お り 、 ドラッグリポジショニングと して 臨床 応用 が期 待さ れ る。 結論ARL4C
は、EA O C
において予後不良因子であり、
新規の治療ターゲットとなる。ス タチン及びビスホスホネ ートは 、A R L 4 C
を標的とした治療薬として有力な候補とな るが、その有効性を検証するためにはさらなる研究が必要である。別 紙 様 式