〔原著〕松本歯学12:42∼45,1986
key wordS:蛍光一味蕾一ミクロピリーF・アクチン束
味蕾細胞のF-アクチン束
平川良勝 野村浩道
松本歯科大学 口腔生理学教室(主任 野村浩道教授)
F-Actin Bundles in the Microvilli
of Taste Bud Cells
YOSHIKATSU HIRAKAWA and HIROMICHI NOMURA
1)幼α吻2θ斑q〆Oral Physiology.〃dtSu励to 1)θ吻1 Co〃ege 佗万ばこProf H.∧romu匂
Summa町
NBD・phallacidin, a fluorescent probe, was used to stain F・actin in the taste bud cells of foliate and circumvallate papillae in rabbits. F・actin bundles were observed in the microvilli of the taste bud cells, as well as in those of the intestinal epithelial cells. The microsomal fraction of foliate papillae electrophoresed on SDS・polyacrylamide slab gel was shown to contain proteins corresponding to actin and myosin. 緒 言 筋肉だけでなく,すぺての非筋肉細胞にもミオ シン,アクチンおよび関連蛋白が存在することが 知られている.アクチンは,マイクロフィラメン トや,さらにそれが束になり,細胞の形を維持す るいわゆる細胞骨格を形成し,細胞運動にかか わっている1“’6).小腸上皮細胞刷子縁部では,アク チン線維束がミクロビリより終末網まで下行して いる4−−6).ウサギ葉状乳頭味蕾細胞先端にもミクロ ビリが存在し7・8),小腸上皮細胞同様アクチン線維 束が存在するものと考えられる. 我々は,このことをBarakら9},およびBarak とYocumi°)による簡便な方法で示そうとした. すなわちG’アクチンには結合しないで,F・アクチ ンに特異的に結合する茸毒の一種であるファラシ ジン(Phallacidin)と,蛍光物質との合成物7 −Nitrobenz−2−oxa−1,3−diazole(NBD)−Phal・ lacidinを用いて,蛍光観察を行った. さらに葉状乳頭粘膜のミクロソーム分画を SDS・ポリアクリルアミドスラブ電気泳動にかけ, ミオシン,アクチンおよび関連蛋白を小腸刷子縁 のものと比較してみた. (1986年3月11日受理)材料と方法
2−3kgのウサギをイソミタールソーダで殺 しウサギ葉状乳頭を摘出した.葉状乳頭はPer・ iodate−Lysine−Paraformaldehyde(PLP)固 定11)をした後,10%蕉糖一PBS溶液で3時間毎に 二回洗浄し,一晩置いた.さらに,15%蕉糖・PBS 溶液,20%蕪糖・PBS溶液でそれぞれ順次一晩ず つ洗浄し,O. C. T. Compoundに包埋し,−30℃で松本歯学 12(1)1986 保存した. 試料をクリナスタットで厚さ10μmの薄切片 とし,卵白アルブミン処理したスライドグラスに 付着させた.スライドグラスー枚につき,33 ngの NBD一ファラシジンを200μ1のPBSに溶かした 溶液を試料にかけ,湿箱中で37℃30分間インキュ ベートしたのち,PBS溶液で洗浄した.ついで試 料をグリセリン・PBS(1:1)溶液でカバーグラ スに封入した. NBD一ファラシジソの最大励起波長は460−470 nmであり,蛍光は510−650 nmである1°).オリン パス蛍光顕微鏡モデルFLMおよびオリンパス落 射蛍光顕微鏡モデルBH2−RFLを用いて試料を 観察した. SDS・ポリアクリルアミドスラブ電気泳動の試
料はピ筋層をほぼ完全に除いた葉状乳頭を
ULUTRA−TURAXでホモジネートし, S,OOO g 上清を105,000gで遠心した沈殿をミクロソーム 分画として用いた.小腸刷子縁膜小胞の調製は, 大澤ら12)の方法によった.電気泳動はLaemmli の方法13)にならい,3%の濃縮ゲル,10%の分離i ゲルを用いた.分子量のマーカとしてミオシン (200kdaltons),β一ガラクトシダーゼ(116 kdaltons),ホスホリラーゼb(92.5 kdaltons), 牛血清アルブミン(66.2 kdaltons)および卵白ア ルブミン(45kdaltons)を使用した.蛋白・ミンド の発色はBio−Radの銀染色キットを使用した. 43 面部に蛍光を発するのは味蕾のものである.図2 は,電気泳動で用いる粘膜固右層の大部分および 筋層を除いた葉状乳頭の落射蛍光顕微鏡像であ る.血管,乳頭側面部,漿液腺開ロ部および味蕾 先端部に強い蛍光が観察される. 図3は乳頭側面を拡大したものである.味蕾先 端に強い蛍光が見られる.糸状の構造のものが味 孔部に向かって集合しているのが分かる.いわゆ 、.5 ・“//XSgti t挙 壼3
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図1:モデルFLMによる葉状乳頭の蛍光顕微鏡 像(75×) 1二筋肉,2:血管,3:漿液腺,4:漿 液腺導管,5:味蕾先端. 結 果 まず,アクチン線維束が上皮細胞ミクロビリに 存在することが知られている小腸絨毛部を観察し た.小腸絨毛の周辺部に強い黄色の蛍光がみられ た.これは上皮細胞のミクロピリ部に蛍光色素が 吸着していることを示しているもので,周辺を 覆っているアクチン束の存在を反映している.一 方粘膜固右層では黄緑色の弱い蛍光が観察される のみであった. 図1は,葉状乳頭の蛍光顕微鏡像である.筋肉 層に強い蛍光が観察される.これは筋肉のアクチ ソ束によるもので当然の結果である.粘膜固有層 の小管に強い蛍光が観察される.これは毛細血管 の平滑筋のアクチン束によるものである.漿液腺, 漿液腺導管,重層扁平上皮や乳頭側面部などは筋 肉や血管より弱い蛍光として観察される.乳頭側 図2 モデルBH2−RFLによる葉状乳頭の落射 蛍光顕微鏡像(60×)44 平川・野村’味蕾細1抱のF一アクチン束 図3:葉状乳頭側面剖;の拡人像・240×.
BH2−RFL使用
1一
2レ
3レ
4).,.一5一
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望唱■
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一
−
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昔一
図4:SI)Sホリアクリルア ト’スラフケル電気 泳動図laば・」・腸刷r・縁膜’」・胞,bはaの試 料の蛋白濃度をlt4にLたもの,cは葉状乳 頭ミクロソーム分画,dはcの試料の蛋白 濃度を1Llにしたものをそ21それゲルにの せた.mは分了量のマーカー酵素をのせた ゲ’しで,1はミオシン・2{}OkdaltOnS l,2 [ILβ.ガラクトンダー’ビ1116kdaltOIIS I,3 はホxホリラ… ビb192.5 kdaltons ,F, 4[t. fl:Ml{1号アノし『ノ ミ ン(66.2 kdaltons戊, 5Cl .tNf9 白アル.〆ミン( ・4 :5 kdaltonS ,をそ]iそれ示 す. る味毛と呼ばれるものであり,ミクPビリに相当 するものである.このことによりアクチン線維束 がミクロビリに存在することが確かめられた.拡 大すると重層扁’Fヒ皮にも蛍光が強くでるが,こ れぱ裏打ち構造のアクチンによるものであろう. ウサギの有郭乳頭やラットの有郭乳頭での観察 も同様の結果であった. 図4は,小腸刷子縁小胞と葉状乳頭粘膜のミク ロソーム分画の電気泳動の結果である.小腸刷j∴ 縁についてなさ]1た報告〔・川を参考にして比較 した.同図のaは小腸刷子縁であり,bはaの蛋白 量を4分の1にしたものである.図のcは葉状乳 頭のもので,dはやはり4分の1にしたものであ る.卵白アルブミンC45 K .F近くに濃いバンドが 葉状乳頭の方にも見られる.これが42Kのアク チンであると思われる.2〔}OKミオシンの場合,こ こでは薄くしかでていないが,別の泳動では.明 瞭に出ていた.ビリン(95K)やフィンブリン〔68 K ,) fgどのアクチン束結合蛋白については,バンド が多いので,はっきりしたことは言えない, 考 察 味蕾細胞ミクロピリには小1揚届1仔縁同様アクチ ン線維束があり,味毛基部まで延長していると思 われる.Murrav 9) 7・e}の分類によると,味蕾細胞 は第1型から第4型に分類される.第1型は最も 多い細胞型で、電’f’密な頼粒をもち,開ll分泌が 観察される.先端部は味{fL近くで急に細まり,先 端部からミクロヒリが派生している.第2型細胞 には電∫・密な小胞はなく,第1型同様細胞先端に ミクロビリ様突起を持つが短い.第3型糸田胞には ミクロビリはなく,受容細胞と考えられている. 第4型は第1から3型の母細胞である.ここで蛍 光観察された味{三は主として第1型のものであろ う.第3型細胞については味{三として観察された のかどうか分からない. 小腸ミクロビリと終末網が微量のCaイオンとATPの添加により収縮することが示されてい
る’t・5〕.こわが膜輸送とどのように共役しているの か今のところ分かっていないが,味蕾細胞でも小 腸と同様な事が起こっている可能性は人きい. 電気泳動の結果についてであるが、この場合葉 状乳頭全体を用いたので,重層扁平上皮が含まれ ており,蛋泊バンドに味蕾がどれだけ寄与してい松本歯学 12(1)1986 るか不明である.Albrechtら1‘)は味蕾だけを取り 出す方法を報告したが,今後の課題としてさらに ミクロピリだけを集め,実験する必要があろう. 稿を終るに臨んで,御助言をいただいたロ腔解 剖学教室第2講座の佐原講師,落射蛍光顕微鏡を 貸していただいた歯科保存学教室第1講座,クリ ナスタットを貸していただいた歯科薬理学教室, 電気泳動装置を貸していただいた口腔生化学教室 に深く感謝致します. 文 献 1)Pollard, T. D. and Weihing, R. R.(1974)Actin and myosin and cell movement. CRC Critical Rev. Biochem.2:1−65. 2)Clarke, M. and Spudich, J. A.(1977)Nonmuscle contractile proteins:The role of actin and myosin in cell motility and shape determina− tion. Ann. Rev. Biochem.46:797−822. 3)Geiger, B.(1983)Membrane−cytoskeleton inter・ action. Biochimica et Biophyica Acta,737: 305−341. 4)Burgess, D. R.(1982)Reactivation of intestinal epithelial cell brush border motility:ATP −dependent contraction via a termina】web contractile ring. J. Cell BioL 95:853−863. 5)Keller, T. C. S. and Mooseker, M. S.(1982)Ca++ −calmodulin−dependent phosphorylation of myosin and its role in bruSh border contraction in vitro. J. Cell Biol.95:943−959. 6)大澤一爽(1983)小腸刷子縁微絨毛(非筋細胞) はどのような運動をするのか.蛋白質核酸酵 45 素, 28:1155−1164. 7)Murray, R. G., Murray, A. and Fujimoto, S. (1969)Fine structure of gustatory cells in rabbit taste buds. J. Ultrastruct. Res.27:444 −461. 8)Murray, R. G.(1973)The ultrastructure of sensory organs,1−81. North−Holland Pub1., Amsterdam, London. 9)Barak, L. S., Yocum, R. R., Nothnagel, E. A. and Webb, W. W.(1980)Fluorescence staining of the actin cytoskeleton in living cells with 7 −nitrobenz−2−oxa−1, 3−diazole−phallacidin. Proc. Natl. Acad. Sci. USA.77:980−984. 10)Barak, L. S. and Yocum, R. R.(1981)7 −Nitrobenz−2−oxa−1,3−diazole(N BD)−Phal・ 1acidin:Synthesis of a fluorescent actin probe. Analytical Biocheistry,110:31−38. 11)McLean,1. W. and Nakane, P. K.(1974)Per・ iodate−lysine−paraformaldehyde fixative:A new fixative for immunoelectron microscopy. J.Histochem. Cytochem.22:1077−1083. 12)Ohsawa, K., Kano, A. and Hoshi, T.(1979) Purification of intestinal brush border mem’ brane vesicles l)y the use of controlled−pore glass−beads column. Life Science,24:669 −678. 13)Laemmli, U. K.(1970)Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature,227:680−685. 14)Albrecht, J., Brouwer, J. N. and Wiersma, A. (1984)Isolation of taste buds from the foliate papillae of the rabbit. Cell Tissue Res.237: 187−189.