Kobe Shoin Women’s University Repository
Title
タテヤからヨコヤへの転換とその後の発展過程
―住空間の史的展開過程に関する研究(その 15)―
Historical study on two typical farm houses, Tateya
and yokoya types.
Author(s)
島村 昇(Shimamura Noboru)
Citation
生活科学論叢(Review of Living Science)
,
No.31:1 -37
Issue Date
2000
Resource Type
Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
URL
Right
タテ ヤ か ら ヨ コヤ へ の 転 換 とそ の 後 の 発 展 過 程
住空 間の史的展開過程 に関す る研究{そ のユ5>
島
村
昇
目
次
は じめ に ユ.完 成 期 農 村 柱 居 の成 立 背 景 1-1完 成 期 の 動 向 1-2集 居 村 と散 居 村 1-3タ テ ヤ の 系 譜 1-4ヨ コ ヤ の 系 譜 1-5ケ の 空 間 分 化 1-6ハ レ と ジ ョウの 空 聞 分 化 2.タ テヤ の 住 空 間 構 成 2-・ ユ 全 住 窒 間 の 構 成 2-2ド マ の 規 模 ・内 容 2-3ヒ ロ マ の 規摸 ・内 容 2-4諸 室(ネ マ)の 規模 ・内 容 2-5諸 室{プ ッマ 、 ザ シ キ)の 規 模 ・内 容 2-6山 村 と農 村 の タ テ ヤ 住 空 闘比 較 3.ヨ コ ヤ の 住 空 聞構 成 3-1金 住 空 間 の構 成 3-2ド マ の親 模 ・内 容 3-3ヒ ロマ の規 模 ・内容 3-4諸 室1ネ マ)の 規 模 ・内 容 3_5諸 室(ブ ッ マ ・ザ シ キ)の 規 摸 ・内 容 3-6農 村 の タ テ ヤ と ヨ コヤ の 住 空 間 比 較 一1一は じ め に 近 代 は伝 統 的 農 村 住 居 の完 成 期 で あ る 。 しか し、 妻 入 りタ テ ヤ 造 の 農 村 住 居 と平 入 り ヨ コヤ 造 の 農 村 住 居 で は 完 成 の さ れ 方 が 多 少 異 る 。 本 論 第1巻 で 扱 っ た 白 山 山系 の タ テ ヤ 造 の系 譜 を ひ く 加 賀 の タテ ヤ は 、 前 面 大 ドマ ・ヒ ロ マ 型 と して完 成 され るが 、 この タ テ ヤ が 平 入 りに転 換 した 能 登 、 越 中 の ヨ コヤ は大 ドマ は 共 通 す る もの の 、 ヒ ロマ は ダ イ ドコ ロ や ザ シ キ に 分 化 して い く。 ヨ コヤ 造 で は 、 前 庭 に面 す る オ モ テ側 と反 対 の ウ ラ側 の 空 間が ハ レ とケ の 空 間 に 明 確 に使 い 分 け ら れ 、 と くに奥 能 登 で は オ モ テ のザ シ キ 化 が 極 限 まで 推 し進 め られ る。 ま た 、 近代 は 旧来 の ク ズ ヤ に替 っ て 板 葺 きや 瓦 葺 きの 屋 根 が 普 及 し、 加 賀 の タ テ ヤ で は ヤ カ タ ヅ ク リ、 カ グ ラ ヅ ク リ、 シ コ ロ ヅ ク リ な どの近 代 的 外 観 を呈 す る に到 る。 ヨ コ ヤ造 で は 生 活 部 分 を受 け もつ ウ ラ側 の 空 間 が 緩 勾 配 の板 葺 きや瓦 葺 き の ピサ シ に よ っ て 拡 張 され る。 近代 は 伝 統 的 構 法 や空 間構 成 の完 成 期 で あ る と同 時 に、 新 た な次 代 へ の 方 向 性 を 胎 み つ つ あ る。 さ らに 、 い ま まで 採 り上 げ る こ との なか っ た 漁 村 住 居 に つ い て も完 成 期 の 様 相 を み るが 、 海 浜 部 に密 集 す る漁 村 集 落 で は、 トオ リニ ワ式 の住 居 形 態 な ど、 い わ ば都 市 型 の 住 空 間 構 成 が 現 象 し て い る の も注 目 さ れ る 。 な お 、 本 文 中 の本 論 第1巻 とは 、 拙 著 『住 空 間史 論1』(京 都 大 学 学 術 出版 会 、1998年)を 指 す 。 1.完 成 期 農 村 住 居 の 成 立 背 景 11完 成 期 の動 向 完 成 期 は 明 治 か ら大 正 、 昭和 戦 前 期 まで の 近 代 を指 して い る。 こ の 時 期 は 、 近 世 まで に確 立 さ れ た住 空 間 構 成 手 法 を踏 襲 す る 一 方 、1日末 の 手 法 を極 限 的 に お し進 め 生 活 向上 を志 向 し、 ま た新 た な建 築 素 材(瓦 、 ガ ラス 等)の 導 入 に よ っ て住 空 間 の 居 住 性 を増 強 させ よ う と した時 期 で あ る 。 い うな れ ば 近 代 は伝 統 的 農 村 住 居 の発 展 的 継 承 期 とい え る 。近 代 が 近 世 と異 る 主 要 な点 は 次 の よ う で あ る。 1)家 作 制 限(藩 法)か らの 解 放 加 賀 藩 の 家作 制 限 に つ い て は 、 第5章 第4節 「加 賀 藩 の住 居 規 制 」の と こ ろ で詳 述 した が 、 大 き く分 け る と(1)規模 規 制 と(2)意匠 規 制 で あ っ た。(1)規模 規 制 は 、 梁 間2.0間 以 内 、 ピサ シ 6.0尺 以 内 と い う もの で あ っ た が 、 こ れ らの 禁 が 解 か れ た こ と に よ っ て 、 と くに ヒ サ シ の 延 長 が 顕 著 に な り、住 空 間 の 拡 大 、 機 能分 化 を促 進 した 。 (2)の意 匠 規 制 は 、 武 家 住 居 の様 式(床 の 間、 建 具 、 組 物)を 模 す る こ と を禁止 した もの で あ っ たが 、 これ の解 禁 に よ っ て 武 家 住 居 の 様 式 が 農 村 住 居 に一 気 に 流 入 す る こ と に な る 。 も っ と も、 そ の 流 入 は 上 層 の農 村 住 居 に 顕 著 で あ り、 下 層 や 中 層 で は 旧 来 の ま まで あ る 。 -2一
2)新 しい 建 築 素 材 の導 入 旧末 の クズ ヤ は、 ワ ラ葺 き屋 根 に板 ピサ シ が主 流 で あ っ たが 、 近 代 には 瓦 、 ガ ラ ス が 農 村 部 に も普 及 し、 ワ ラ葺 きで も ヒサ シ は 瓦 葺 き とす る もの が しだ い に数 を増 す 。 さ らに進 ん で 従 来 ワ ラ葺 きで あ っ た屋 根 を切 妻 の瓦 葺 き とす る もの が 現 わ れ た 。 こ れ を ア ヅ マ ダ チ(東 建 ち)ま た は ヤ カ タ ヅ ク リ(屋 形 、 館 造 り)と 呼 ん だ 。外 観 上 も大 き な変 化 を きた した 。 ま た 、 ガ ラ ス の 普 及 は ガ ラ ス戸 とな っ て室 内 の 日照 ・採 光 に寄 与 した だ けで な く、 エ ン の普 及 に も 一 役 か っ た。 近 代 に お い て も旧 来 と同様 の 木 構造 に は相 違 な い が 、 機 械 製 材 に よ る建 築 用 材 の量 産 は、 通 直 性 の あ る 角 材 を多 量 に供 給 し、屋 根 裏 空 間 ア マ床 の 梁 、根 太 とな っ て ア マ の2階 化 、 居 室 化 を推 進 した 。 ア ヅ マ ダチ の 屋 根 の種 も同 様 で あ る 。 旧来 の 野 物 の丸 太 梁 や 丸 竹 の根 太 な ど は しだ い に使 用 され な くな る。 ま た 、板 材 の量 産 は 、 旧来 の土 座 か ら板 床 へ の 改 善 に寄 与 した 。 3)生 活 様 式 の変 化 近 世 まで の農 村 生 活 の 生 活 様 式 は 、稲 作 の た め の ね ぐ ら と して の 性 格 が つ よ く、 今 日か ら み れ ば 就 寝 室 の不 足 、 台 所 の不 備 、 フ ロ の 未 普 及 等 枚 挙 に い と まが な い が 、 そ し て そ れ らの 完 全 な 解 決 は戦 後 の 現 代 に もち 越 さ れ る こ と に な る が 、 そ れ で もそ の 解 決 へ の動 きが ま っ た くな か っ た わ け で は ない 。 就 寝 室 の 不 足 に対 して は 、 旧 来 の ナ ン ドの 他 に ッ ケ ネ ドコ や シモ ネ ドコ を増 設 す る動 きが あ り、 台 所 の不 備 に対 して は ミズ ヤ(ナ ガ シ)と オエ(イ ロ リ)の 連 続 性 を え る た め ドマ に板 床 の カ ッ テ を設 け る動 きな どが 現 わ れ て い る 。 ま た 、 フ ロ の未 普 及 に つ い て は、 ミズ ヤ の 一 角 に フ ロ桶 や フ ロ釜 を設 置 す る動 きが 現 わ れ て い る 。 さ らに 、都 市 化 の 一 環 と して 、正 面 に 町家 風 の 木 格 子 を入 れ る もの も現 わ れ る。 総 じて近 代 の 生 活 様 式 は 、 近 世 の ね ぐ ら的生 活 様 式 か ら脱 して住 生 活 の 改 善 を 目指 す 動 向 が み られ る。 もち ろ ん 、 そ の 間 の 階 層 差 に つ い て は 考 慮 さ れ ね ば な らな い が 、 戦 後 の 住 居 問 題 とな る 食 寝 分 離 や 就 寝 分 離 の動 向 は 近 代 の農 村 生 活 の 中 に現 わ れ て い る 。 しか し、 そ う した 近 代 化 の 反 面 、伝 統 的 な ブ ツマ の 常 設 、 武 家 様 式 の ザ シ キ の 導 入 、 イ ロ リの使 用(熱 源 の 関 係 か ら当 然 で あ るが)、用水 や井 戸 の 使 用 等 従 来 の 生 活 様 式 を継 承 して い る面 も少 な くな い。 1-2集 居 村 と散 居 村 個 々 の 農 村 住 居 は 、 以 上 の よ う に近 代 化 と前 時 代 の 伝 承 とい う二 面 性 を も っ て い る が 、 そ の 内 容 につ い て は次 節 以 降 に述 べ る と して 、 本 項 で は 個 々 の 農村 住 居 の 集 合 形 態 に つ い て ふ れ て お き た い 。 す な わ ち 、 集 落 形 態 に つ い て で あ る。 近 世 の 加 賀 藩領 は 、加 賀 、 能 登 、 越 中 の3国 に また が っ て い た 。広 大 な領 有 で あ る 。そ の た め 、加 賀 藩 は 全 国第 一 の 百 万 石 を領 有 す る こ とが で きた。 そ の 主 要 な 米 処 が加 賀 平 野 と砺 波 平 野 の 米 作 地 帯 で あ る 。 -3一
農 村 の 集 落 形 態 か らみ る と、 手 取 川 扇 状 地 に展 開 す る加 賀 平 野 は 集 居 村(何 戸 か が 集 っ て 集 落 を成 す)、庄 川 扇 状 地 に展 開 す る砺 波 平 野 は 散 居 村(1戸 ず つ が 屋 敷 林 に 囲 まれ て 点 在 す る)で あ る。 この2者 の対 照 は、旧 来 か ら人 目 を惹 い て きた 。加 賀 の 集 居 村 と越 中 の散 居 村 とい う対 照 は、 そ れ が 同 一 藩 内 にお い て み られ る だ け に 多 くの 論 考 の 的 と な っ た 。 ・ 村 松 繁 樹 「手 取 川 扇 状 地 の村 落 居 住 形 態一 特 に砺 波 平 野 との比 較一 」(大阪 市 立 大 学 文 学 会 『人 文研 究 』 第11巻 第2号 、1960年 、71∼85)に 両 者 の 成 立 要 因 が 論 じ られ て い る 。 結 論 的 に い え ば、 集 落 形 態 の差 異 は、 用 水 の 集 中管 理 と個 別 管 理 の差 に帰 着 す る とい うの が そ の論 点 で あ る。 米 作 に と っ て も っ と も重 要 な給 水 条 件 が手 取 川 と庄 川 で は大 き く異 な り、 そ の 利 水 管 理 の 方 式 が 集 落 形 態 の差 を生 じた とい うの で あ る 。 したが っ て 、 集 落 形 態 の 差 は結 局 両 河 川 の流 量 、 流 水 の 時 期 が 用 水 の 管 理 方 式 を決 定 した結 果 に よ る こ と に な る。 古 代 以 来 近 代 ま で わ が 国 の 主 産 業 は農 業 で あ り、米 作 は そ の 根 幹 を なす もの で あ っ た 。住 居 形 態 が 大 ドマ 型 に 移行 し、 農 事 用 のサ ク ニ ワ(作 庭)を 屋 内 に もつ に 至 っ た よ う に、 集 落 形 態 は集 中管 理 の 集 居 村 と個 別 管 理 の 散 居 村 に分 化 適 合 した 。 す べ て は米 作 の 一 点 に 集 中 して い る の で あ る。 な お また 、 前 第9章 を通 じて述 べ た 加 賀 の タ テ ヤ造 と越 中の ヨ コヤ 造 に つ い て も、 上 の 視 点 は 参 考 に な ろ う。 加 賀 も越 中 も山方 で は 同様 の タ テ ヤ造 で あ るが 、 山 を下 っ た 平 野 部 で は加 賀 の タ テ ヤ 造 、 越 中の ヨ コヤ 造 の2形 態 に分 化 して い た 。庄 川 に比 して水 量 、流 水 時 期 の不 適 切 な 手 取 川 流 域 の 加 賀 平 野 で は 、 永 ら く古 代 、 中世 的 な 山 方文 化 圏 の範 鋳 に と どま り、 米 作 に よ り適 合 し た庄 川流 域 の 砺 波 平 野 で は一 足 は や く平 野 部 の 近 世農 村 文 化 圏 に移 行 した の で あ ろ う。 加 賀 の タ テ ヤ 、越 中 の ヨ コヤ の 由来 で あ る。 1-3タ テ ヤ の系 譜 集 居 村 とい う加 賀 平 野 の集 落 形 態 は 、 た ん に村 落 の 集 合 形 式 だ け で な く、 そ れ の 寄 っ て 立 つ と こ ろ の歴 史 的 ・文 化 的 背 景 を考 え る と山 方 との 関 係 が つ よ く意 識 さ れ る 。 そ の 一 環 と して 住 居 形 態 の 問題 が あ り、 山 方 か らの タ テ ヤ の系 譜 が 指 摘 で きる。 これ は再 三 述 べ て い る よ う に、 能 登 や 越 中 の ヨ コ ヤ と対 照 さ れ る べ き性 格 の もの で あ る。 加 賀 平 野 に広 く分 布 す る タテ ヤ は 、前 第9章 の[図9-1]で は加 賀1型 と して 分 類 され て い た タイ プで あ る が 、 本 論 第1巻 で扱 った 白 山 山 村 住 居 を も含 め て い ま まで に例 示 した 加 賀 農 村 住 居 を並 べ て み る と、 タ テ ヤ の 発 展 プ ロセ ス が よ くわ か る[図10-1]。[図 ユ0-1]の(1)は 第1巻 で例 示 した 山村 住 居 で あ るが 、 ヒロ マ1室 の単 室 住 居 で あ る 。 ヒロ マ 型 の原 点 に位 置 す る もの で あ る が 、 そ の先 行 形 態 は 断 面3角 形 の 屋 根 だ け の ネ ブ キ住 居 で あ る。 図 の② もや は り第1巻 で 例 示 した 山 村 住 居 で あ る が 、(1)に比 べ て 内 部 の 室 分 割 が 進 行 して い る 。 ヒ ロ マ の 背 後 の 部 分 が ネ ドコ とブ ツ マ の2室 に分 割 され ヒ ロ マ 型 後2列 タイ プ に な っ てい る 。 ヒ ー4一
ロマ 背 後 の 列 段 構 成 が 始動 して い る(こ の 場 合 は2列1段)。 ま た 、 ヒ ロマ 前 面 に は サ シ カ ケ に よ るゲ ンカ(玄 関)が 設 け られ て い るが 、平 野 部 農 村 住 居 の ニ ワ とは ま っ た く性 格 の異 る ドマ で あ る。 した が っ て 、 山村 住 居 は タ テヤ で あ る が 、 無 ドマ な い し僅 少 ドマ で あ る 。 図 の(3)は第1巻 で か りに 半 山 村 住 居 と名 づ け た タ イ プ で あ るが 、 ヒ ロ マ か ら後 は(2)と同 じ く2 列1段(ネ ドコ と ブ ツ マ)に 分 化 して い る 。 しか し、 も っ と も大 きな 差 異 は 前 面 の広 い ドマ(ニ ワ)で あ る 。農 作 業 用 の大 き な ドマ が 設 け られ て い る の で あ る。 山村 に お い て も平 野 部 に近 い 山 麓 部 で は河 岸段 丘 を水 田化 して 稲 作 を営 む場 合 が あ り、 純 正 の 山村 住 居 に ドマ(ニ ワ)を 附 属 し た形 を と る 。半 山 村 住 居 と名 づ け た ゆ え ん で あ る。 な お 、 こ の場 合 の ドマ(ニ ワ)の 大 きさ は ヒ ロ マ相 当 分 で あ る 。 図 の(4)は山方 の タ テ ヤ の 空 間 構 成 を踏 襲 して い るが 、 モ ヤ 側 面 両側 に ヨ コ ピサ シ を附 加 して 間 口長 さ を拡 大 して い る。 そ の た め 、 ヒ ロ マ や ニ ワ は偏 平 な 形 に移 行 して い る 。 ま た 、 ブ ツ マ横 に エ ンが 附 設 さ れ て い るの もハ レ空 間 の 進 展 を物 語 っ て い る 。 ドマ(ニ ワ)の 前 の 正 面 ピサ シ 下 が ゲ ンカ で あ り、 先 の② の 山村 住 居 にみ え た ゲ ン カ と同性 格 の もの で あ る。 [図10-1]タ テ ヤ の 発 展 プ ロ セ ス [山 村 住 居][半 山 村 住 居][農 村 住 居] (1)(2)(3)(4)(5) ▲ ▲
(凡例)園
ハレ ロ ケ
▲
(註)わ か りや す い よ う に、 す べ て を左 勝 手 に統 一 して い る 。(1)第1巻[図4-6](3)、 (2)第1巻[図4-6](5)、 〈3)第1巻[図5-15]、(4)[図8-24]高 田 家 、(5)[図 8-27]竹 川 家 。 図 の(5)は ヒ ロ マ 背 後 が2段 に 発 展 し た 場 合 で あ る 。2列 は 先 の(2)、(3)、(4)と 同 じ で あ る が 、 段 数 が1段 か ら2段 に 増 加 し て い る の で あ る 。 図 で は2段 ま で を 図 示 し て い る が 、 よ り進 展 し た も の で は3段 の も の も あ る 。 さ て 、2段 の 場 合 は4室 に な り、 こ の 部 分 は い わ ゆ る 田 の 字 型 の プ ラ ン と な る 。 室 の 用 途 は 、 基 本 的 に は 左 勝 手 の 場 合 は 左 列 が ケ 系 列 、 右 列 が ハ レ 系 列 に な る が 、 そ の 他 の ヴ ァ リ エ ー シ ョ ン も あ る 。 そ れ に つ い て は 、 ヨ コ ヤ を も含 め た 住 空 間 の 発 展 プ ロ セ ス の と 一5一こ ろ で述 べ る。 以 上 の よ う に 、 タ テ ヤ の 系 譜 は 山村 住 居 と農 村 住 居(い ま の場 合 は加 賀 平 野 部 の タ テ ヤ)と 共 通 す る と こ ろが 多 い。 近代 の 完 成 期 にお い て も タテ ヤ の 伝 統 を 継承 す る加 賀 の 農 村 住 居 は 、 そ の 成 立 過 程 な い し背 景 と して 山 方 の タテ ヤ を忘 れ る こ とが で きな い 。 1-4ヨ コヤ の系 譜 加 賀 の タテ ヤ の次 に は 能 登 、越 中 の ヨ コヤ で あ る 。タテ ヤ が ヨ コヤ に転 換 した理 由 につ い て は 、 住 空 間 の 開放 性(居 住 性 の 向 上)、交 流 性(社 会 的 関 係 の 増 進)の 増 強 に あ る と し たが 、 ヨ コ ヤ の 成 立 な い しそ の 進 展 は 里 方 農 村 住 居 の 特 色 とす る住 居 形 態 で あ る。 そ の 意 味 で は、 加 賀 の タ テ ヤ は特 異 とい え る。 しか し、加 賀 の タテ ヤ と能 登 、越 中 の ヨ コ ヤが 隣 接 した 地 域 に分 布 す る お 陰 で 、 タテ ヤ か ら ヨ コ ヤへ の 転 換 の 様 相 も よ くわ か る 。 [図10-2]は ヨ コヤ へ の 転 換 後 ヨ コヤ と して 進 展 した 道 程 をす で に例 示 した事 例 に よ っ て 跡 づ け た もの で あ る。 ヨ コヤ の 発 展 プ ロセ ス を理 解 す る た め に は 、基 本 的概 念 と して 、(1)ハ レ とケ (の生 活 組 織)、(2)オ モ テ と ウ ラ(の 空 間 分 化)、(3)カ ミ と シモ(の 空 間序 列)を 据 え て お か ね ば な らな い 。 そ れ に 、 ヨ コヤ へ 転 換 して 後 も従 前 の タ テ ヤ 時代 の 名 残 り と して 、(4)クチ と オ ク の 空 間 序 列 も尾 を ひ く。 以 下 、[図10-2]の(1)か ら(6)を順 にみ て い く。 (1)は本 論 で ヒ ロ マ ・貫 通 型 と名 づ け た タ イ プ で あ る が タ テ ヤ が そ の ま ま ヨ コ ヤ に転 換 した もの で あ る。 た だ しこ の転 換 に際 して 、 ブ ツ マ や ヒ ロマ の客 座 の方 、 す な わ ち ハ レの空 間 が オ モ テ に 配 置 さ れ て い る こ とが 重 要 で あ る。ハ レを オ モ テ とす る 空 間 観 が み と め られ る。反 対 の ウ ラ に は 、 ミズ ヤ 、 タナ マ エ 、 ナ ン ドな どの ケ の 空 間 が横 列 す る 。 こ う して 、 オ モ テ す な わ ち ハ レ、 ウ ラす な わ ち ケ とい う空 間 と生 活 の対 応 関 係 が 明確 に実 現 され る。 (2)は この対 応 関係 を よ り明 確 に した もの で 、 オ モ テ の ハ レ と ウ ラ の ケ が 間仕 切 に よ っ て 区 画 さ れ る。 ウ ラ に は ナ ガ シ(ミ ズ ヤ)、リ ョウ リノ マ 、 モ ノ オ キ 、 ネ マ が 横 列 して一 連 の ケ の空 間 を形 成 して い る 。 他 方 、 オ モ テ は ニ ワ、 ヒ ロ マ 、 ナ ン ドが横 列 す る 。 こ こ で ヒ ロ マ が オ モ テ に位 置 づ け ら れ て い るの で 、こ の タ イ プ を ヒ ロ マ ・オ モ テ型 と名 づ け た が 、ヒ ロ マ の 客 座 の方 が オモ テ(前 庭)に 面 して い る と ころ を み る と、 ヒ ロマ の 接 客 機 能 が ヒ ロマ ・オ モ テ型 の成 立 要 因 とな っ て い る こ とが わ か る。 そ の カ ミ手 の 室 は 、 ナ ン ド と呼 ば れ 、 本 来 的 に は ネ マ で あ る が この 小 住 居 で は ま だ ブ ツ マ と ナ ン ドが 分 化 す る以 前 の状 況 を示 して い る もの と考 え られ る 。 した が っ て 、 こ の場 合 の ナ ン ドは ブ ツ マ と考 え て も よ い。 次 の(3)は② と同様 ヒ ロマ ・オ モ テ型 で あ るが 、(2)と相 違 す る点 は ブ ツ マ とそ の 前 室 が 縦 列 し、 タテ ヤ の ク チ ・オ クの 空 間序 列 が 遺 存 して い る点 で あ る 。 そ の た め 、 ブ ッ マ は オ ク ノ デ 、 前 室 は た ん に デ また は ク チ ノデ とい わ れ る 。 この 場 合 の クチ とオ ク は、 い う ま で もな く前 庭 の カ ドか ら み て の 話 で あ る。 そ の 意 味 で こ のハ レの 部 分 は加 賀 の タ テ ヤ に近 い 。 大 勢 と して は ヨ コヤ で あ る 一6一
[図10-2]ヨ コ ヤ の 発 展 プ ロ セ ス [ヒ ロ マ ・貫 通 型][ヒ ロ マ ・オ モ テ 型] (1)(ウ ラ)(2)
箪+図
で 一 →
図
製
口 卍v ▲ ▲ (オ モ テ) (3)(4) 卍 図 図 一 一 一 一レ 図 ▲ ▲ [ヒ ロ マ ・ウ ラ 型] `: 図 図 図 ▲(凡例)薗
ハレ ロ
ケ
(註)わ か りや す い よ う に 、 す べ て を左 勝 手 に 統 一 して い る 。(1)[図9-18]松 原 家 、 (2)[図9-7]国 田 家 、(3)[図9-11]、(4)[図9-12]石 丸 家 、(5)[図9-13] 平 家 、(6)[図9-14]堤 家 。 が 、 部 分 的 に タ テ ヤ の 空 間 序 列 観 を 混 入 し 、 一 種 の ア マ ル ガ ム を 形 成 して い る の で あ る 。 タ テ ヤ の 名 残 り と い え ば 、 こ の ヒ ロ マ は オ ー エ と 呼 ば れ 、 加 賀 の オ エ(ま た は オ イ)と 同 一 の 呼 称 法 を と っ て い る 。 奥 能 登 で は 他 の 呼 称 法(ヒ ロ マ ・ア ラ ケ な ど)も 使 用 さ れ る 。 次 に(4)は 、 や は り(3)と 同 様 の 形 態 を も っ て い る が 、(3)と 異 な る 点 は 火 処(イ ロ リ)が2箇 所 に 一7一分 化 してい る と ころ で あ る。 も と も と(1)のヒ ロマ ・貫 通 型 の と き に は ヒ ロ マ は オ モ テ に もウ ラ に も面 してい た。 ヒ ロマ の オ モ テ の 方 は接 客 、 ウ ラの 方 は タナ マ エ の調 理 や 食 事 の 空 間 に分 離 して い た か ら、 ウ ラ 方 の 調 理 ス ペ ー ス や 食 事 ス ペ ー ス が 空 間 的 に 隔 離 さ れ独 立 した の で あ る。 調 理 ス ペ ー ス は リ ョ ウノ マ(料 の 間:料 理 の 間 の短 縮 形)あ る い は カ ッ テ(勝 手)と 呼 ば れ 、 食 事 ス ペ ー ス は ダ イ ドコロ(台 所)と 呼 ば れ る。 オ モ テ に面 す る ヒロ マ 部 分 は 、 チ ャ ノマ(茶 の 間)、イ マ (居 間)、ヒ ロ マ(広 間)、と きに は オ エ(御 上)な ど と呼 ば れ る。 結 局 、 本 来 多 機 能 で あ っ た ヒロ マ が分 化 した の で あ る 。 次 に(5)は、 い ま まで の ヨ コ ヤ よ り一 段 と ヨ コヤ 的 で あ る 。 そ れ は オ モ テ通 りが す べ て ハ レの場 と して 使 用 さ れ 、 ニ ワ 寄 りの室 が シモ ノ デ(下 の 出 居)、そ の上(カ ミ)が カ ミノ デ(上 の 出居) で あ る 。 す な わ ち 、 シ モ ノ デ は カ ミ ノ デ(ブ ツ マ)の 前 室 で あ り、 い ず れ もハ レの 空 間で あ る 。 そ の た め 、 こ の2室 の前 に はエ ンが 張 られ前 庭 の カ ドか ら直接 出 入 りで きる よ うに動 線 上 の配 慮 もな され て い る。 ウ ラ通 りの配 室 は 下(シ モ)か ら ドマ の ナ ガ シ 、 リ ョウ リバ(リ ョウ ノ マ と同 じ)、ダ イ ドコ ロ 、 ナ ン ド(ネ マ 〉 と な る。 次 に⑥ は 、 こ の種 の ヨ コ ヤ の到 達 点 と もい え る タ イ プ で 、 カ ミノ デ か らブ ッマ が分 化 ・独 立 し て カ ミ ノデ に は オ シ イ タか 床 の 間 が しつ らえ られ てザ シ キ の 体 裁 を と る。 つ ま り、 こ こ に到 っ て 武 家 住 居 の ザ シ キ構 え が 導 入 さ れ る の で あ る 。 す な わ ち 、 カ ミノ デ は カ ミザ シ キ 、 シモ ノ デ は シ モ ザ シ キ と な る。 こ れ が 完 成 期 の ヨ コ ヤ の到 達 点 で あ る 。 1-5ケ の 空 間分 化 能 登 や越 中の ヨ コ ヤ の 発 展 プ ロ セ ス は 、加 賀 や 山方 の タテ ヤ に比 べ る と多 少 複 雑 で あ る。 タテ ヤ の ク チ ・オ ク(ヨ コ ヤ で は シ モ ・カ ミ)に オ モ テ ・ウ ラの 空 間序 列 が 加 わ るか らで あ る。 しか し、 こ れ らの 空 間序 列 は 建 築 的 空 間(空 間 位 相)の 問題 で あ るが 、 他 方 に は 生 活 内 容(生 活 位 相) の 問 題 が あ る。 こ こ に 両 位 相 の対 応 関 係 が 生 じる。 生 活 内 容(生 活 位 相)に つ い て は、 い ま まで ハ レ とケ を対 照 と して論 じて きた 。 ハ レ とケ につ い て は 、 川 上 責 『日本 中世 住 宅 の研 究 』(墨 水 書 房 、1977年、5)に 、 中 世400年 の 住 宅 の 移 行 過程(寝 殿 造 か ら書 院造 へ)の 中 で 建 築 計 画 の 原 理 と して 働 い た 計 画 理 念 をハ レ とケ の2面 と し、 ハ レ(晴)は 正 装 的 ・儀 礼 的 ・公 式 的 、 ケ(褻)は ハ レ に対 して反 対 の 略 装 的 ・日 常 的 ・私 的 な 意 味 を表 現 す る と し、 「中世 住 宅 の う ち 、 と く に公 家住 宅 は一 般 に この 計 画 基 準 と もい うべ き もの で そ の施 設 が くみ た て られ て い た こ とが 顕 著 に み と め られ る。」 と述 べ て い る。 これ で み る と、 ハ レ とケ とい う生 活 位 相 は 、 中世 の公 家 住 居 に顕 著 に み とめ られ る計 画 原 理 と な って い る こ とが わ か る 。 本 論 で扱 っ て い る 山村 住 居 や 農 村 住 居 に もハ レ と ケ の 両位 相 は有 効 で あ る ば か りか 、 中世 の公 家 住 居 に顕 現 した 空 間位 相 は、 そ の ま ま後 代 の 農 山 村 住 居 に採 り入 れ ら れ て い る。 と くに ヨ コ ヤ の 農 村 住 居 に そ の 観 が つ よい 。 お よそ 数 百 年 の 年 月 をへ て 上 層 の公 家 住 一8一
居 の 計 画 原 理 が 下 層 の 農 山 村 住 居 に 現 わ れ る の で あ る 。 農 山 村 住 居 の 原 初 的 な 姿 は 、 ヒ ロ マ1室 の 単 室 住 居 で あ り、 公 家 住 居 が ハ レ と ケ の 空 間 分 化 を 遂 げ て い た こ ろ に は 、 い ま だ そ の 段 階 に は 至 っ て い な か っ た 。 農 山 村 住 居 が 一 般 に ハ レ と ケ の 計 画 理 念 に よ っ て 建 築 さ れ る の は 、 近 世 後 半 期 か ら 近 代 に か け て の こ と で あ ろ う 。 し か し 、 い ず れ に し て もハ レ と ケ に よ る 建 築 計 画 が 行 わ れ た 以 上 、 そ の 状 況 を み て お く必 要 が あ ろ う 。 ま ず は ケ の 空 間 に つ い て で あ る 。 本 論 第1巻 第2章2-1「 オ ミヤ(ヒ ロ マ の 原 型)の 機 能 」 の と こ ろ で 、 ヒ ロ マ の 機 能 を 、(1) 火 ま わ り台 所(K、)(水 ま わ り台 所(K1)は 戸 外)、(2)食 事(D)、(3)休 息 ・団 ら ん(L)、(4)接 客(R)、(5) 作 業(E)、(6)就 寝(B)、(7)祭 祀(P)、(8)収 納(C)、(9)通 路(S)と し た 。 こ れ は ヒ ロ マ の み の 単 室 住 居 の 場 合 で あ る 。 ハ レ と ケ の 問 題 も こ の 単 室 住 居 の ヒ ロ マ か ら 出 発 す る 。 以 上 の9機 能 の う ち ケ に 属 す る も の は 、(1)火 ま わ り 台 所(K2)、 同 時 に 水 ま わ り 台 所(K1)、 (2)食 事(D)、(3)休 息 ・団 ら ん(L)(こ れ は ハ レ 的 要 素 を も も つ 〉、(5)作業(E)、(6)就 寝(B)、(8)収 納(C)で あ る 。(9)通 路(S)は 中 性 的 性 格 を も つ の で 除 外 す る 。 ま た 、(5)作 業(E)は ニ ワ か ら ヒ ロ マ に わ た り 、(2)、 (3)と 空 間 的 に 重 複 す る 。 ⑧ 収 納(C)は モ ノ オ キ を 設 け る 場 合 も あ る が 、 大 き な ス ペ ー ス を 専 有 し な い 。 よ っ て(5)、(8)も 除 外 す る 。 結 局 、 ケ の 空 間 に 属 す る 主 機 能 は 、(1)火 ま わ り台 所(K2)、 水 ま わ り台 所(K1)、(2)食 事(D)、(3)休 息 ・団 ら ん(L)、(6)就 寝(B)で あ る 。 水 ま わ り台 所(K1)は 、 本 来 戸 外 の 水 汲 み 場 に あ っ た も の が 屋 内 ドマ の 一 角 に 設 け ら れ る よ う に な り ミズ ヤ と な り後 に ナ ガ シ と 呼 ば れ る 。 火 ま わ り台 所(K、)は イ ロ リ と そ の 主 婦 の 座 の あ た りで タ ナ マ エ と 呼 ば れ る と こ ろ で あ る 。 タ ナ マ エ(棚 前)は 食 器 棚 の 前 の 意 で あ る 。 した が っ て 、 タ ナ マ エ は 調 理 、 配 膳 等 の 場 で あ る 。 ま た 、 食 事(D)と 休 息 ・団 ら ん(L)も イ ロ リ の ま わ り(イ ロ リ バ タ)で 行 わ れ る 。 今 日 の 現 代 住 居 に もみ ら れ るK、D、Lの 各 要 素 と そ の 関 連 が す で に 現 わ れ て お り、 そ れ ぞ れ の 分 化 が 農 村 住 居 の ケ の 空 間 分 化 で も あ る 。 ケ の 空 間 分 化 プ ロ セ ス か ら み る と、 タ テ ヤ 、 ヨ コ ヤ と も に ミ ズ ヤ は ドマ の 一 角 に 分 化 し て い る が 、 タ ナ マ エ は タ テ ヤ で は イ ロ リ バ タ と 一 体 的 で あ り 、 そ の た めDやLと も 一 体 的 で 未 分 化 で あ る 。 そ の 点 、 ヨ コ ヤ で は タ ナ マ エ が リ ョ ウ ノ マ 、 イ ロ リ バ タ は ダ イ ドコ ロ のDと ヒ ロ マ(チ ャ ノ マ 、 イ マ と も い う)のLに 分 化 す る 。 ケ の 空 間 分 化 の 度 合 か ら み る と 、 タ テ ヤ よ り ヨ コ ヤ の 方 が 進 行 し て い る 。 そ れ だ け ヨ コ ヤ の 方 が 近 代 的 な 住 居 形 態 を も っ て い る と い え よ う か 。 最 後 に就 寝(B)は 、 ヒ ロ マ の 各 機 能 か ら 分 化 し て ナ ン ド と な る が 、 空 間 分 化 の 過 程 で は も っ と も 早 い 時 期 に 分 化 し た ケ の 空 間 で あ ろ う 。 1-6ハ レ と ジ ョ ウ の 空 間 分 化 ケ に 対 す る ハ レ は 、(4)接 客(R)と(7)祭 祀(P)機 能 で あ る 。 接 客 の た め の 空 間 は 、 常 客 に 対 す る も の 一9一
と正 客 に対 す る もの の2様 が あ る。 祭 祀 は神 統 に対 す る空 間 と仏 教 に対 す る空 間 が や は り2様 あ る。 ひ と口 にハ レ とい って も 内容 は や や複 雑 で あ る。 しか し、 す くな く と も こ の4様(接 客2様 、 祭 祀2様)を 区 別 して お か な い とハ レの 空 間分 化 が 明確 に な らな い 。 最 初 の接 客 様 式 は 、本 来 イ ロ リバ タの 座 位 に よ って 区 別 して い た(本 論 第1巻 第2章5-3参 照)。 常 客 と正 客 の 区 別 も座 位 に よっ て い た 。 しか し、 こ れ を室 空 間 と して 分 化 させ る段 階 に な る と、常 客 は 従 来 の イ ロ リバ タ に と どま るが 、正 客 に対 して は床 構 え を もつ ザ シ キ が 用 意 され る 。 この ザ シ キ に よ る接 客 様 式 は 明 らか に 武 家 住 居 の接 客 様 式 を導 入 した もの で あ る 。 す なわ ち 、 武 家 住 居 の 影 響 で あ る。 農 村 住 居 にお け るザ シ キの 成 立 は 、 近 世 末 か ら近 代 に か け て で あ り、 そ れ が 一 般 に 普 及 す る の は近 代 の 完 成 期 で あ る 。 ザ シ キ に代 表 され るハ レの 空 間が 、 住 空 間 内 に確 固 と し た地 位 を 占 め る の は完 成期 で あ るが 、 そ れ の 確 立 に 際 して は ブ ツマ と の競 合 関 係 が 生 じる の で 、 次 に 祭 祀 機 能 の 方 を み る 。 祭 祀 機 能(神 仏)を 代 表 す る装 置 は 神 棚 と仏 壇 で あ る 。神 棚 は ヒ ロマ 正 面 の サ シ ガ モ イ上 に 吊 棚 とさ れ る の で 、神 の 空 間 は ヒ ロ マ と一 体 的 で あ り、 ヒロ マ は聖 な る空 間 を も含 ん で い る 。 お そ ら く原 初 的 な ヒ ロ マ の み の 原 始 住 居 以 来 の 伝 統 とみ られ る 。 家 族(住 人)の 生 活 庇 護 ・生 産 加 護 を司 る神 の 場 で あ る神 棚 は 、 ヒ ロ マ に一 体 化 して い て も 自然 で あ ろ う。 他 方 、 仏 壇 は 祖 先 崇 拝 を 含 む信 仰 の 場 で あ り、 生 活 や 生 産 を超 え た彼 岸 を設 定 し、 心 の 安 寧 を え る場 で あ る 。 仏 壇 の 置 か れ る室 が ブ ツマ で あ り、 そ れ は現 世 を超 え る 浄 の 空 間(浄 室)と し て特 別 の 扱 い を 受 け た(本 論 第 工巻 第9章5-1参 照)。 原 始 ・古 代 以 来 の神 は 、 火 の神 、 水 の神 、稲 の 神 、 家 の 神 な ど と して 、 い わ ば ケ の 統 帥 と して ヒ ロ マ に 一体 化 して い た が 、 浄土 真 宗 の メ ッ カ とい わ れ る加 賀 、 能 登 、 越 中 で は仏 壇 、 ブ ッ マ の 浄 と して の 空 間 は 、他 の 空 間 と馴 む こ と を え なか っ た 。 さ ら にい え ば 、他 の 空 間 が 此 岸 の 空 間 で あ る の に対 して 、仏 壇 ・ブ ツ マ は 彼 岸 の空 間 で あ っ た の で あ る。 浄 土 真 宗 の 普 及 は 中 世 に遡 及 す るが 、 ブ ツマ の発 生 も当 事 の タ テ ヤ 時 代 に さ か の ぼ る 。 ヒ ロ マ の 背 後 の ネ ドコ の一 隅 に仏 像 ・仏 具 等 を飾 っ て信 仰 の 場 と した の が ブ ツマ の 発 生 で あ る 。 した が って 、 ブ ツ マ は 当初 は ネ ドコ(後 の ナ ン ド)と 空 間 的 に は一 体 的 で あ った 。 住 空 間 内 の位 置 づ け か ら い え ば 、 神 は ヒ ロマ 、 仏 は ナ ン ドで あ る。 神 は ヒ ロマ と共 に現 代 に至 り、仏 は ナ ン ドか ら分 化 して ブ ツマ とな る 。 分 化 した の は、 そ れ が 彼 岸 の 存 在 だ っ たか らで あ る。 そ の 意 味 で は、 神 は 此 岸 の空 間 に 同化 して き た。 ブ ツマ とナ ン ドが 末 分 化 な場 合 、 そ の 室 は ブ ツ マ ナ ン ドと呼 ぶ こ と が で きる 。 次 に接 客 空 間 と して の ザ シキ が 登 場 す る と、 ブ ツマ とは 別 に ザ シ キ を設 け な け れ ば な らな い 。 なぜ な ら、 ザ シ キ は此 岸 の空 間 で あ り、 ブ ッ マ の 彼 岸 性 と は 同化 で き なか っ た か らで あ る 。 こ こ にハ レ(晴)と ジ ョ ウ(浄)の 空 間分 化 が 生 じ る。 近 代 の 完 成 期 は 、 従 来 の ケ と ジ ョ ウの 空 間 に 一10一
ハ レが 参 入 して 、 い くつ か の住 空 間 型 を生 じる 時 期 で あ る(本 論 第1巻 第9章5-2参 照) 。 2.タ テ ヤ の 住 空 間 構 成 2一 ユ 全 住 空 間 の 構 成 加 賀 平 野 に分 布 す る タ テヤ が 山村 住 居 の 系 統 を ひ くタ テ ヤ で あ る こ とに つ い て は 前 章 に お い て も述 べ た が 、 確 立 期 か ら完 成 にか け て 定 立 し、 ハ レの 空 間(ザ シ キ 、 クチ ノ マ 、 ヒカエ ノマ な ど) を増 強 す る こ と に よっ て 完 了 した タ テ ヤ の 事 例 を[図10-3]に 示 す 。 小 住 居 か ら大 住 居 に わ た って 並 べ た プ ラ ン を み る と、 そ こ に は 自か ら タ テ ヤ の発 展 過 も現 わ れ て お り、 また、そ の到達 点 も明 らか で あ る。 全 体 の 床 面 積 は最 小23.3坪(76.9㎡)か ら最 大82.0坪(272 .6㎡)に 及 ん で い る 。 ち な み に 、平 均 は53.1坪(175.2㎡)で あ る 。(数値 は畳 数 に よ り、2畳 を1坪(3 .3㎡ 〉 と し て い る)。 全 住 空 間の 形 状 は 、 間 口長 さ と奥 行 長 さか ら成 る タ テ長 の 長 方 形 に な る が 、 そ の 場 合 の 形 状 表 示 と して 、 本 論 で は細 長 比(奥 行 長 さ÷ 間 口長 さ)を 採 用 して い る。[図10-3]に 列 挙 した26事 例 の 間 口 長 さ は、 最 小3.5間 最 大7.5間 で 平 均 は5.3間 で あ る。 同様 に して 、 奥 行 長 さは 最 小6 .5間 最 大12.0間 で 平 均 は9.5間 で あ る。 した が っ て 、平 均 細 長 比 は1.79(9.5問 ÷5 .3間)と な る 。 間 口長 さ に比 して 奥 行 長 さは 約1.8倍 の タ テ 長 の 長 方 形 で あ る こ とが わ か る[表10-1] 。 [表10-1]間 ロ 長 さ ・奥 行 長 さ別 戸 数 お よび 細 長 比 問 ・ 長 さ 葡4・ ・4・55・5・56・ ・6・57・ ・7・5-(計 戸)溜 奥 行 長 さ 繍7・58・59・ ・9・51…1・ ・51L・ …512・ ・(計戸)禰 冑 戸 数342112732126 ・9 .5 盟 昇 灘(間)7・56.57.59.81・.81・.81・.7・ ・.51・.5-一 細 長 比2・141・631・671・961・961・8…651・5・1・4・ 一 平 脚 鼻 (註)間 口 長 さ、 奥 行 長 さ と も0.5問 未 満 の 端 数 は切 上 げ て い る 。 間 口対 応 奥 行 長 さ と は 、 同 一 問 口 長 さの 家 の 平 均 奥 行 長 さ ・全 床 面 積A、(畳)と 間 口 長 さa(間)の 相 関 度 は0.9409、 相 関 式 はa=0.0291A】+2.20、 同 じ く奥 行 長 さb(間)の 相 関 度 は0.9003、 相 関 式 はb=0 .0443AI+4.78、 細 長 比Pの 相 関 度 は 一 〇.1843、 相 関 式 はP=-0.0014Al+1.97で あ る 。 -11一
[図10-3]加 賀 の タ テ ヤ 空 間 構 成(26事 例) No.1No。2No.3No.4 ▲ No.5N o.6No.7No,8 ▲ ▲ ▲ N。.gN。.10N・ ・11N・.12 ▲ ▲ ▲ No.13No,14No.16 No.15 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ -12一
No,17No.18No,19No.20 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ N・.21N。 ⑳N・ ・23N。 .24 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ No.25 Nα26(凡 例) [基 本 的 構 成] 図 イ ロ リ ェ 諸 室 エ 画 便 所(セ ッチ ン、 ン ン カ ミカ ン シ ョ) ■ フ・ ヒ ロ マ 匿 コ ドマ(ニ ワ、 ナ 舞:無 零:;llナ ガ シ・ ドエ ン 〉 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 卍 仏 壇 (註)恥3、4、5、6、9、10、13、20は[図8-24]、[図8-26]、 第1巻[図5-15]、[図8-27]、 [図8-28]、[図8-29]、[図8-25]、[図8-11]、Nα2、7、11、12、14、16、22、25は 『石 川 県 の 民 家 』(石 川 県 教 員 委 員 会 、1972年)、Nα15、18、19、21、23、24、26は 『金 沢 の 歴 史 的 建 築 』(金 沢 市 教 育 委 貝 会 、1986年)、M1、8、17は 石 原 憲 治 『日 本 農 民 建 築 』(復 刻 版 、 第5輯 、 南 洋 堂 書 店 、1973年 、 初 版1934∼1942年)よ り 作 成 。 戦 後 の 現 代 的 な 改 造 は 復 原 的 に 扱 っ て い る 。 各 住 居 は 規 模 の 小 か ら 大 の 順 に 並 べ て い る 。 -13-一
同 じ くタ テ ヤ で あ る 白 山 の近 代 山村 住 居 の 平均 細 長 比 は1.75で あ っ た(第1巻 第6章3-5参 照)。こ の 山村 タテ ヤ の1.75と 上 記 の 農 村 タ テ ヤ の1.79を 比 べ る と ほ ぼ等 しい 。 しか し、 こ の 結 果 は 奇 異 で あ る 。 なぜ な ら、 農 村 タテ ヤ で は前 面 に大 きな ドマ を附 設 す るか ら、 奥 行 長 さ が長 くな り細 長 比 も大 き くな る と考 え られ る か らで あ る。 しか し、 実 際 に は農 村 タ テ ヤ で は 両 側 の ヨ コ ピ サ シ の発 達 に よ り間 口長 さ も拡 大 さ れ て お り、 奥 行 の長 い分 間 口 も長 くな っ て 上 記 の 結 果 を も た らせ て い る の で あ る。 以 上 の よ うな 平 面 形 状 を もつ タ テ ヤ の 内 部 空 間 は 、 前 面 か ら ドマ ・ヒ 百マ ・諸 室 の 順 に 配 列 さ れ て い る と ころ は規 模 の大 小 を問 わず 共 通 して い る。 本 論 で い う前 面 大 ドマ ・ヒロ マ 型 後 列 段 構 成 タ イ プ で あ る 。 ドマ 、 ヒ ロマ 、 諸 室 の う ち、 発 生 史 的 に は ヒ ロマ が も っ と も古 く古 代 か ら さ ら に原 始 の 時代 にそ の渕 源 をた ど る こ とが で きる 。 次 に古 い の は ドマ で あ る。 近 世 前 半 期 に は コ ナ シヤ と呼 ば れ た ドマ 棟(作 業棟)が ヒ ロマ(居 住 棟)に 附設 され オ モ ヤ に組 み込 ま れ て ニ ワ とな る。 最 後 に 諸 室 は、 近 世 後 半 期 か ら近代 に か け て ヒ ロマ か ら分 化 し発 展 した室 空 間 で も っ と も新 しい部 分 で あ る。 以 下 、 ドマ 、 ヒロ マ 、 諸 室 の 川頁に そ の 内容 をみ て い こ う。 2-2ド マ の 規 模 ・内 容 前 面 に 大 き な ドマ を もつ 加 賀 の タテ ヤ は 、 当 初 は農 作 業 の た め の 空 間 と して ドマ を附 設 し、 こ れ を ニ ワ と呼 ん だ の で あ っ た が 、 この ドマ は しだ い に他 の 用 途 に も使 用 され て い く。 そ の最 た る も の が 、 ミズ ヤ(水 まわ り台 所)で あ る。 台所 機 能 の うち 火 ま わ り台 所 は古 くか ら ヒ ロ マ にあ っ た の で 、 ドマ の 一 角 に ミズ ヤ を設 け る こ とは 両 者 の接 近 性 や ナ ガ シの 全 天候 性 等 か ら至 便 で あ っ た。 ミズ ヤ は も と も と戸 外 の水 利 の よい場 所 に あ っ た 。 近 年 の 調 査 報 告 書 をみ る と、 この ミズ ヤ は た い て い ナ ガ シ と表 示 され 、 室 呼 称 と して も ミズ ヤ か らナ ガ シ に移 行 し た こ とが 識 れ る。 この 呼 称 法 の 背 景 に は 、 台 所 設 備 の 多 少 の 向 上 、 ニ ワ との 隔 離 性 の 強 化 等 が推 測 さ れ る が 、 こ れ も近 代 の 産 物 で あ ろ う。 い ず れ に して も、 ナ ガ シは ドマ の 一 角 を 占め る。 そ の た め 、 ドマ は ニ ワ と ナ ガ シ か ら成 る。 そ の 他 、 ウマ ヤ や セ ッチ ン(便 所)が ドマ に 組 み 込 ま れ る場 合 もあ るが 、 ナ ガ シ の よ う に普 遍 的 で な い 。 した が っ て 、 ドマ の 規 模 は ニ ワ とナ ガ シ の和 と考 え れ ば よい 。 ドマ の 平 均 規 模 は28.9畳(ニ ワ23.2畳 、 ナ ガ シ5.7畳)で30畳 に近 い[表10-2]。 平 均 全 床 面 積 は106.1畳 で あ るか ら、 ドマ の 占 め る割 合 は27.2%に な る。 住 空 間 の 約3割 が ドマ に 占 め られ て い る こ と に な る。 前 面 大 ドマ の 名 に 適 しい 。 階 層 的 に み る た め に1階 の全 床 面 積A1(畳)と ニ ワN(畳)、 ナ ガ シK1(畳)の 相 関 を み る と、A1とNの 相 関 度 は0.7339で 相 関式 はN=0.145Al +7.87で あ る。 他 方 、A1とK1の 相 関 度 は0.5900で 相 関 式 はKl=0.055A、-1.15で あ る 。 い ず れ も正 の 相 関 を示 して い るが 、 ニ ワ はか な り強 い 相 関 、 ナ ガ シ は や や 弱 い 相 関 で あ る 。 両 者 を合 わ せ た ドマ 面 積D(畳)とA1の 相 関 を求 め る と 、相 関度 は0.8046で ひ じ ょ う に 強 い 一14一
[表10-2]ド マ と ニ ワ の 畳 数 別 戸 数 誉'5'8212324252728293°343536374445(書)平 均 畳 数 (311.5%)(ぞ7>21(8α8%) 特 大 型 大 超 大 型 型 碧'2'4'5182°2'232425262728293°3336(計 戸)平 均 畳 数 (註)畳 数 は小 数 以 下 を4捨5入 して い る 。平 均 畳 数 は小 数 以 下 を 含 め て算 出 し て い る 。 ドマ とニ ワ の 差 が ナ ガ シ に 当 た る が 、 ナ ガ シ を保 有 す る もの は21戸 で ナ ガ シ の 平 均 畳 数 は5.7畳 、 全26戸 で 平 均 す る と4.6畳 と な る 。全 床 面 積A、(畳)と ドマD (畳)の 相 関 度 は0.8046、 関 係 式 はD=0.197AI+6.51、 ニ ワN(畳)と の 相 関 度 は 0.7339で 相 関 式 はNニ0.145A1+7.87で あ る 。 ち な み に、 ナ ガ シK⊥(畳)の 相 関 度 は0.5900で 相 関 式 はKFO.055Ar1.15で あ る 。 正 の 相 関 を 示 す 。 関 係 式 はD=0.197A1+6,51で あ る 。 こ れ で み る と ドマ の 面 積 は 住 居 規 模 と き わ め て 強 い 相 関 関 係(階 層 的 関 係)に あ る が 、 こ の ドマ が ニ ワ と ナ ガ シ に 分 化 し た 場 合 、 ナ ガ シ の 通 階 層 的 必 要 性 か ら 、 そ れ ぞ れ の 規 模 は や や 階 層 的 性 格 が 薄 ら ぐ。 ま た 、 ドマ の 前 の 軒 下 空 間 は 、 ドマ の 延 長 と し て 使 用 さ れ 、 と く に セ ッ チ ン を 設 け る も の が 多 い 。 セ ッ チ ン の 設 置 率 は26事 例 中20事 例(77%)で あ る 。 セ ッチ ン を 保 有 す る20事 例 の 平 均 セ ッ チ ン 規 模 は1.5畳 、 全26事 例 の 平 均 は1.1畳 で あ る 。 な お 、 セ ッチ ン を 有 し な い 家 は 、 旧 来 の 別 棟 に こ れ を 有 す る 。 2-3ヒ ロ マ の 規 模 ・内 容 発 生 史 的 に も っ と も古 い ヒ ロ マ は 住 空 間 の 中 心 的 な 場 を 占 め て い る 。 そ こ に は 必 ず イ ロ リ が 常 設 さ れ 、 火 ま わ り台 所 の 役 割 を 果 す 。 前 項 で み た ナ ガ シ(水 ま わ り台 所)と 連 動 し て 台 所 機 能 を 果 す の で あ る 。 し た が っ て 、 ナ ガ シ(水 処)と イ ロ リ(火 処)の 両 者 は 不 可 分 の 関 係 に あ り、 イ ロ リ も ま た ナ ガ シ の 方 に 寄 っ て 配 置 さ れ る 。 イ ロ リ は ヒ ロ マ の 中 央 よ りニ ワ 寄 り の ナ ガ シ 寄 り に 設 置 さ れ る 。 こ れ を 本 論 で は イ ロ リ の 偏 心 と 呼 ん で い る(本 論 第1巻 第2章2-4参 照)。 ヒ ロ マ が 住 空 間 の 中 心 で あ っ た の に 対 し て 、 イ ロ リ は そ の ヒ ロ マ の 中 心(位 置 で は な く生 活 的 一15一
に)で あ っ た。 そ して 、従 来 イ ロ リ まわ りの 座 に は序 列 が 存 在 した 。4角 形 の イ ロ リ の4辺 に4 座 を対 応 させ る と、正 面 が 主 人 の 座 、 側 面 の 一 方(ハ レ側)が 長 男 や 客 の座 、 他 方 が 主 婦 の 座 、 ニ ワ に近 い座 が そ の他 の者 の 座 で あ る(本 論 第1巻 第2章5-3参 照)。この よ う な座 の 序 列 は 山 方 も里 方 も変 る と こ ろ が な い 。 封 建 的 身分 序 列 制 は 山 方 も里 方 も覆 っ て い る。 上 記 の 台所 との 関 係 で い う と、 主 婦 の座 が 重 要 で あ る 。 主 婦 の座 は煮 炊 の 場 で あ る と同時 に背 後 の 壁 面 に立 て られ た フ ロ ダ ナ(食 器 棚)に 由 来 して タナ マ エ と よば れ る調 理 ・配 膳 の 場 で もあ る 。 台 所 は水 と火 を使 用 す る 場 と この ナ タ マ エ か ら成 立 っ て い る 。 タ ナ マ エ は ヨ コ ヤ で は リ ョウ リバ とか リ ョ ウ ノマ と呼 ば れ る 空 間 に分 化 す る が 、 タ テ ヤ で は分 化 せ ず 近 代 にお い て も従 来 の ま ま で あ る・ イ ロ リ に客 座 が あ る よ う に 、 ヒ ロマ は ま た接 客 の 空 間 で も あ っ た 。 完 成 期 の 近 代 に お い て も、 イ ロ リ を囲 む生 活 様 式 は 継 承 さ れ 、 台 所 機 能 、食 事 機 能 、 接 客 機 能 な ど を残 した 。 ヒロ マ の 規 模 は最 小14.0畳 か ら最 大42.0畳 に及 び 、平 均 ヒ ロマ 面 積 は26 .7畳 であ る[表10-3]。 1階 全 床 面 積Al(畳)と ヒ ロ マ 面 積H(畳)の 相 関 を求 め る と、相 関 度 は0 .8568と な りひ じょう に 強 い 正 の相 関 を示 す 。 相 関 式 はH=0,159A+9.86で あ る。 前 項 で み た ドマ 面 積 の 平 均 は28.9畳 で あ っ た か ら、 ヒ ロ マ の 平 均26.7畳 は ドマ の規 模 に匹 敵 す る 。 従 来 、 民 家 学 で は ヒ ロ マ型 と して [表10-3]ヒ ロ マ の 畳 数 別 室 数 14畳182・2122232528293・3642(計 室)平 均 畳 数 (318)3(11・5%)22(84.6%) (註)畳 数 は小 数 以 下 を 四 捨 五 入 して い る 。 平 均 畳 数 は 小 数 以 下 を含 め て 算 出 し て い る 。 全 床 面 積A】(畳)と ヒ ロ マ 面 積H(畳)の 相 関 度 は0.8568、 相 関 式 はH=0.159 A、+9.86で あ る 。 な お 、 ヒ ロ マ は26戸 が す べ て1室 を保 有 し保 有 率 は100 .096で あ る。 ヒ ロ マ の 重 要 性 は 指 摘 さ れ て い る が 、 ドマ の 方 は あ ま り重 視 さ れ て い な い よ う で あ る 。 面 積 的 に ほ ぼ 等 し い 広 い 面 積 を 占 め る ドマ と ヒ ロ マ は 同 等 に 評 価 す べ き で あ ろ う 。 本 論 で 大 ドマ ・ヒ ロ マ 型 と す る の は そ の た め で あ る 。 旧 来 、 加 賀 大 工 の 間 で は 、 ドマ は ヒ ロ マ と 同 じ く ら い の 広 さ に す る と い わ れ て い る が 、 上 記 の 両 者 の 数 値 を み る と 、 ドマ 面 積 の 方 が2畳 ほ ど 多 い 。 ナ ガ シ や フ ロ な ど の 近 代 的 改 造 に よ る ドマ の 拡 幅 が 影 響 し て い る の で あ ろ う。 一 ユ6一
2-4諸 室(ネ マ)の 規 模 ・内 容 ヒ ロマ 背 後 の列 段 構 成 部 分 が諸 室 で あ るが 、基 本 的 に は ナ ン ド、 ブ ツ マ 、 ザ シキ の3種 類 で あ る 。 この3種 類 の 室 の 成 立 時 期 は 再 三 述 べ て い る よ う に、 この順 で あ る 。 そ れ は ま た住 空 間 に と っ て の 必 要 度 の川頁で もあ る。 まず は ナ ン ドか ら始 め る。 従 来 、 寝 室 は ナ ン ド1室 が 通 例 で あ っ た。 ナ ン ドは主 夫 婦 の寝 室 で あ り、 そ の他 の家 族 成 員 は ヒ ロ マ の 一 隅 な どを ネ ドコ と した 。 農 村 住 居 の寝 室 数 の不 足 は 明 らか で あ っ た。 こ の 欠 を補 う た め に 、 旧 来 か ら一 部 で は 、 ッ ケ ネ ドコが 行 わ れ て い た が 、完 成 期 の近 代 に入 る と寝 室 数 の 増 加 が 顕 在 化 す る。 そ の状 況 は[表10-4]に 示 す よ う に、 従 来 の(1)ナン ドに加 え て(2)ツケ ネ ドコ 、(3) ヘ ヤ 、(4)シモ ネ ドコ な どが 数 を増 す 。 い ず れ も寝 室 を指 す の で 、 本 論 で は こ れ ら を ネ マ と総 称 す る。 (1)ナン ドは 従 来 か らあ る寝 室 で あ るが 、 ② ツ ケ ネ ドコ は ヒ ロマ 横 の ピサ シ部 分 に小 問 をつ く り 寝 室 と した もの で あ る 。(3)ヘヤ は ナ ン ドの 前 や そ の 他 の部 分 の 室 を寝 室 と した もの で 、 従 来 の ナ ン ドを増 設 した もの で あ る。 家 族 数 の 変 動 に よっ て 寝 室 数 も変 化 す る の で 、 そ の 流 動 性 か ら用 途 の 特 定 され な い ヘ ヤ とい う呼 称 を使 う。(4)シモ ネ ドコ は ドマ 部 分 に1室 を張 り出 し寝 室 と した も の で 、 寝 室 の 中で は もっ と も シ モ手 に位 置 す る の で こ の呼 び 名 が あ る 。 シモ ネ ドコ の増 設 に よ っ て ドマ 面 積 は 消 滅 さ れ る が 、 こ の 時期 に は ドマ そ の も の の拡 幅 や別 棟 の ナ ヤ の拡 張 が 進 行 して い る。 以 上 の よ う に、 ッ ケ ネ ドコ は ヨ コ ピサ シ下 の利 用 、 ヘ ヤ は モ ヤ の 拡 大 に よる室 数 の増 加 、 シ モ [表10-4]ネ マ の 種 類 別 畳 数 別 室 数 ネ マ の 種 類(2畳)3456789…314(衷)平 櫨 数 (註)畳 数 は 小 数 以 下 を四 捨 五 入 して い る 。平 均 畳 数 は 小 数 以 下 を含 め て 算 出 し て い る 。 全 床 面 積A1(畳)と1室 当 た り ネ マ 面 積N(畳)の 相 関 度 は0.4480、 相 関 式 はN= 0.067A,+5.35で あ る 。 ま た 、A1と ネ マ 室 数nと の 相 関 度 は0.3310、 相 関 式 はn =0 .0071A1+1.05で あ る。 -17一
ネ ド コ は 広 い ドマ 空 間 の 転 用 に よ る も の で あ る が 、 ま ず そ の 室 数 は26事 例(戸)に 対 し て(1)ナ ン ド26室(100%)、(2)ヘ ヤ12室(46%)、(3)ツ ケ ネ ド コ8室(31%)、(4)シ モ ネ ドコ3室(12%)と な る 。 ナ ン ドが100%あ る の は と う ぜ ん と し て 、 次 に 高 率 な の は ヘ ヤ の46%で あ る 。 こ れ は モ ヤ の 拡 大 化 、 ひ い て は 列 段 構 成 の 進 展 を 意 味 して い る 。 ヒ サ シ 下 を 利 用 す る ツ ケ ネ ド コ は31%で3. 戸 に1戸 が ツ ケ ネ ドコ を 増 設 し て い る 。 も っ と も低 率 な の は シ モ ネ ド コ の12%で あ る 。 ドマ 面 積 の 消 滅 は や は り強 い 抵 抗 力 に な っ て い る よ うで あ る 。 総 じ て 、 ネ マ 数 は26戸 に 対 し て49室 、 す な わ ち1戸 当 た り1.9室 と な り 、1戸 当 た り ほ ぼ2室 と な る 。 ナ ン ド1室 の 時 代 に 比 べ る と 、 か な り の 進 歩 で あ る[表10-4]。 次 に ネ マ の 室 規 模 に つ い て 平 均 畳 数 を み る と 、(1)ナ ン ド7.3畳 、(2)ヘ ヤ6.5畳 、(3)ッ ケ ネ ド コ4.7 畳 、(4)シ モ ネ ドコ6.5畳 で あ る 。4者 を合 わ せ た ネ マ の 平 均 は6.6畳 と な る 。 全 床 面 積 に 対 す る ネ マ の 大 き さ 、 ネ マ の 室 数 の 相 関 は 、 相 関 度 が そ れ ぞ れ0.4480、0.3310で 低 い 相 関 を 示 す 。 ネ マ も 通 階 層 的 に 必 要 な 室 で あ り 、ナ ガ シ の0.5900と 同 様 で あ る 。ナ ガ シ は ネ マ よ り や や 階 層 的 で あ る 。 ネ マ は ま だ 増 設 の 途 上 に あ り、 階 層 性 を 帯 び て い な い 。 しか し 、 完 成 期 に は2階 の 居 室 化 が 進 行 し つ つ あ り、 そ れ を も 含 め て 考 え る と ネ マ の 階 層 性 は も う す こ し 上 が る も の と お も え る 。 旧 来 の ク ズ ヤ の2階 は ア マ と 呼 ば れ 、 屋 根 裏 の 収 納 ス ペ ー ス で あ っ た が 、 こ こ の 改 造 に よ っ て2階 に 居 室 を 設 け る も の も現 わ れ る か ら で あ る 。 そ の 他 の ケ 系 列 の 空 間 と して 、 エ ン 、 セ ッ チ ン 、 ロ ー カ が あ り、 そ の 設 置 状 況 は[表10-5] の よ う で あ る 。 エ ン の 発 達 は61.5%に 達 し、 か な り普 及 し て き て い る 。 エ ン の 普 及 も完 成 期 の 特 色 で あ る が 、 こ の 場 合 の エ ン は ケ 系 列(生 活 用)の エ ン で あ る 。 平 均 面 積 は6.4畳 に 及 ぶ 。 セ ッ チ ン の 保 有 率 は76.9%で 近 世 の 別 棟 の セ ッ チ ン に 比 べ る と オ モ ヤ へ の 組 み 込 み が8割 に 近 づ い て い る 。 最 後 に ロ ー カ は 僅 少 で あ り 、[図10-3]のNα20、Nα22の2事 例 に し か み ら れ な い が 、 大 型 住 居 の 空 間 隔 離 手 法 と して タ テ 長 の ロ ー カ が 現 わ れ て い る こ と は 注 目 さ れ る 。 平 均 面 積 は4.8 畳 で0.5間 幅 の ロ ー カ の 長 さ は5.0間 に 近 い 。 [表10-5]エ ン 、 セ ッ チ ン 、 ロ ー カ の 設 置 状 況 室 名 轡 朧 ヂ 平蘭 積 全摺 騨 矯 灘1購 喪 こ対 す る エ ン ・66・.56.94.3査:1:雛 、-5。21 セ ・チ ン2・76.91.51.・ §:8:搬 1+。.。1 ・一 力27.74.8・.4畏 ±1:lllk rα77 (註)平 均 面 積 は保 有 戸 数 に よ る 平 均 、 全 平 均 面 積 は全 戸 数(26戸)に よ る 平 均 。 -18一
2-5諸 室(ブ ツマ 、ザ シ キ)の 規 模 ・内 容 ネマ の次 に は ブ ツマ 、ザ シキ で あ る。 再 三 述べ て い る よ う に旧 来 ブ ツマ を も っ て い た農 村 住 居 にザ シ キ が参 入 して くる の で あ る。 こ こに ブ ツマ とザ シ キ の競 合 関係 や 融 合 関 係 が 生 じる。 ザ シ キ の 参 入 は完 成 期 の 近 代 に著 しい 。 しか し、 ザ シ キの 参 入 を許 容 す る た め に は 、 あ る 程 度 の室 数 が必 要 で あ る。 そ れ に 旧来 の農 村 住 居 で は ネ マ も不 足 して い た 。 室 数 の 増 加 、 ひ い て は住 居 規 模 の 拡大 が 進 行 す る の も完 成 期 の 特 色 で あ るが 、 ネマ 、 ナ ン ド、 ザ シ キ の3者 の 組 み合 わ せ を模 式 的 に 図 化 す る と、[図10-4]の よ う に な る。 室 数 は列 段 構 成 の 列 数 と段 数 の 結 果 と して 決定 され る が 、加 賀 の タテ ヤ は た い て い 列 数 は2列 で あ る か ら、 問 題 は段 数 で あ る 。 列 数 が3列 に な る と、 ロ ー カ に よっ て2列 と1列 に 分 割 さ れ る ([図10-3]Nα20参 照)。 段 数 は1段 か ら3段 が大 半 で あ る 。 したが っ て 、2列 を基 本 とす る と、 1段 で は2室 、2段 で は4室 、3段 で は6室 とな る。 こ れ らの 室 数 に 上 記 の ネ マ 、 ブ ツマ 、 ザ シ キ を組 み込 んだ もの が加 賀 タ テ ヤ の住 空 間構 成 で あ る。 初 期 の段 階 で は、1列1段(1室)で あ り、 ネ マ の1隅 に仏 壇 を置 い た 。 ブ ツ マ ナ ン ドの 時 代 で あ る。 や が て ブ ツマ とナ ン ドが 分 割 さ れ 、[図10-3]の(0)に 示 す ブ ツ マ ・ナ ン ド分 割 型 が で き る。 こ れ は2列1段(2室)の 場 合 で あ り、古 い 形 式 で あ る と同時 に近 代 以 降 で は 下層 の 小 住 居 とい え る 。次 に2段 に な る と室 数 は 一 挙 に4室 に な り、 ネ マ 、 ブ ツ マ 、 ザ シキ の 組 み合 わ せ も 多様 化 す る 。 多 様 化 した場 合 の 組 み合 わ せ は 、4つの パ タ ー ンで あ る。(1)ブ ツマ 型 は1列 をブ ツマ の あ るハ レ の列 と し、他 の1列 を ネマ2室 の ケ の列 とす る も の で あ る。 ブ ツマ は デ エ 、 あ る い は オ ク ノ デ エ 、 カ ミノ デ エ 、 前 室 は デエ 、 クチ ノ デ エ 、 シモ ノ デ エ 、 ク チ ノ マ な ど と呼 ば れ 、 奥 の ネ マ は オ ク ナ ン ド、 カゲ ノ マ 、前 の ネ マ は クチ ナ ン ド、 シ モ ナ ン ドな ど と呼 ば れ る 。 こ の場 合 は ま だ ザ シキ が 参 入 して い な い 。 (2)カギ ノマ 型 は ザ シ キが 最 初 に参 入 した 時 の姿 で あ る。ブ ツ マ の横 に ザ シ キ を並 列 して 配 置 し、 ク チ ノ マ → ブ ツ マ→ ザ シ キ とい うハ レの 動 線 を確 保 す る。 ザ シキ へ は鍵 の 手 に 曲 っ て入 る の で カ ギ ノ マ とい う。(3)ザ シ キ型 は(2)よ りザ シキ に ウエ イ トを置 い た 配 置 で 、 ブ ツ マ の 前 を ネ マ と し、 ザ シ キ の 列 をハ レの列 と した もの で あ る 。 ザ シ キ は カ ミザ シ キ 、 前 室 は シ モ ザ シキ 、 ク チ ノマ な ど と呼 ば れ る。 こ の場 合 の ザ シキ は側 庭 に面 す る の で 、 側 庭 か らエ ン をへ て ザ シ キ に至 る動 線 も 稀 に あ り、 この 場 合 の エ ン は ザ シ キ に対 す る式 台 の役 割 を も果 して い るの で あ る 。 (4)ブッ マ ザ シ キ型 は ブ ッ マ とザ シ キ が 一 体 化 した もの で 、仏 壇 と床 の 間が 並 列 され る タイ プ で あ る。 ブ ツ マ ザ シ キ の あ る列 が ハ レの 列 と して扱 わ れ 、 前 室 は ク チ ノデ エ 、 クチ ノマ な ど と呼 ば れ る。 ケ の列 は ナ ン ド、 ヘ ヤ な ど と呼 ば れ る。 こ の ブ ツマ とザ シ キ が 一 体 化 した ブ ツ マ ザ シキ 型 は 、 浄 室 と して 維 持 され て きた ブ ツマ が ザ シ キ に よっ て 侵 略 され た姿 を示 して い る。 ブ ッ マ の 彼 岸 性 に比 べ れ ば ザ シ キ は 此 岸 的 で あ り、 そ の 意 味 で は ブ ツ マ の 生 活 レベ ルへ の 下 降 現 象 が 一 歩 は 一19一
[図10-4]列 段 構 成 と 室 の 組 み 合 わ せ rl(0)ブ ツ マ ・ナ ン ド分 割 型
.毒
謹回
回
灘
國
□
盛
↑
ニ
ハレの動熱 進路)ザ シキ
類
(1)ブ ツ マ 型(2)カ ギ ノ マ 型(3)ザ シ キ 型(4)ブ ツ マ ザ シ キ 型1翻
緬 →隈
團 榊
口
↑
↑
↑
↑
(5)ブ ツ マ 型(6)カ ギ ノ マ 型(7)ザ シ キ型(8)ブ ツ マ ザ シ キ 型 3 .:.:.一:卍 一… ・レ:::;:1卍 ・'… レ 段 ・'…'・'・毯
↑
↑
↑
↑
じ ま っ て い る の で あ る 。 ブ ッ マ ザ シ キ 型 は 、 も っ と も近 代 的 な タ イ プ と い え よ う 。 次 に3段(6室)の 場 合 は さ ら に 室 数 が 増 加 し 、 ネ マ 、 ブ ツ マ 、 ザ シ キ の 組 み 合 わ せ も多 様 化 す る が 、 基 本 的 に は ブ ッ マ 、 ザ シ キ は 最 奥 部 に 配 置 さ れ 、 ハ レ の 列 と ケ の 列 を 設 け る の が 慣 例 で あ る 。 そ の た め 、(5)ブ ツ マ 型 、(6)カ ギ ノ マ 型 、(7)ザ シ キ 型 は2段(4室)の 場 合 に 準 じ る が 、 ネ マ は 増 加 す る 。(8)ブ ツ マ ザ シ キ 型 で は 、 ブ ツ マ ザ シ キ の 横 に ヒ カ エ ノ マ(控 え の 間)を と り、 ザ シ キ の 格 式 を 高 め る も の も あ る 。 こ れ は 明 らか に 武 家 住 居 の 流 れ を 汲 む 構 成 手 法 で あ る 。 ヒ カ エ ノ マ は カ ギ ノ マ に な る 。 タ テ に3室 が 縦 列 す る と ナ カ ノ マ と い う 呼 称 も生 じ る 。 ブ ッ マ 、 ザ シ キ 、 ク チ ノ マ 、 ヒ カ エ ノ マ な ど の 祭 祀 ・儀 礼 関 係 の 室 数 、 室 規 模 に つ い て は 、[表 10-6]に 示 す よ う で あ る 。 ま ず 、 室 数 に つ い て み る と 、 ブ ツ マ26室(1戸 当 た り1室)、 ザ シ キ 13室(1戸 当 た り0.5室)、 ク チ ノ マ17室(1戸 当 た り0,7室)、 ヒ カ エ ノ マ6室(1戸 当 た り0.2室) と な り 、 ブ ツ マ の 伝 統 的 普 及 性 と ザ シ キ の 新 規 普 及 状 況 が う か が え る 。 こ の 傾 向 は 室 規 模 に も み え 、 平 均 室 規 模 は ブ ッ マ10.6畳 、 ザ シ キ9.0畳 、 ク チ ノ マ8,0畳 、 ヒ カ エ ノ マ7.8畳 と な り、 伝 統 一20一[表10-6]ブ ツ マ 、 ザ シ キ 、 ク チ ノ マ 、 ヒ カ エ ノ マ の 畳 数 別 室 数 室 名(4畳)67891…12・314・5・6(墓)平 均 畳 数 クチ ノ マ6641・7[1:1] ヒ カ エ ノ マ1・226[1:§] 室 の 規 鯉(ll6)47(758%)13(2…%)(ll6) 62(100.0%) に よ る室 数 小 型 中 型 大 型 特大型 (註)畳 数 は小 数 以 下 を四 捨 五 入 して い る 。平 均 畳 数 は小 数 以 下 を含 め て算 出 して い る。 平 均 畳 数 の[]内 は 保 有 戸 数 に よ る 平 均 ・全 床 面 積A、(畳)に 対 す る ブ ツ マB (畳)、ザ シ キZ(畳)、 ク チ ノ マK(畳)、 ヒ カ エ ノ マH(畳)の 相 関 度 は 、0,2629、 0.6206、0.6858、0,6199で 、 相 関 式 はB=0.02QA、+8.55、Z=0.084Ar4.42、 K=0.082Ar3.44、H=0.062Ar4.76で あ る 。 ブ ツ マ 、 ザ シ キ 、 ク チ ノ マ 、 ヒ カ エ ノ マ の 和(祭 祀 ・儀 礼 系 の室 の和)P(畳)の 相 関 度 は0.8834、 相 関 式 はP =0 .247Ar4.11、 室 数nと の 相 関 度 は0.7950も 相 関 式 はn=0.025A、-0.27で あ る 。 的 な ブ ツ マ が 最 大 規 模 を も ち 、 ザ シ キ が こ れ に つ い で い る 。 そ し て 、 ハ レ 系 の4種 類 の 室 の 全 平 均 は9.3畳 と な り、 今 日 の 住 宅 か ら み る と 大 き い 規 模 を も っ て い る 。4種 類 の 室 の 総 和P(畳) の 全 床 面 積A1(畳)に 対 す る 相 関 は 、 相 関 度0.8834で ひ じ ょ う に 強 い 階 層 性 を 示 し て い る 。 相 関 式 はP=0.247A、-4.11で あ る 。 同 じ く 室 数n(室)に つ い て は 相 関 度O.7950で 、 や は り強 い [表10-7]ハ レ 系 の エ ン 、 カ ミ カ ン シ ョ の 設 置 状 況 (註)1戸 に2箇 所 以 上 あ る 場 合 は そ の 合 計(面 積 も 同様)。 平 均 面 積 は 保 有 戸 数 に よ る平 均 、 全 平 均 面 積 は全 戸 数(26戸)に よ る 平 均 。 -21一
階 層 性 を 示 す 。 相 関 式 はn=0.025A1-0.27で あ る 。 ま た 、 ザ シ キ の 発 達 に と も な い ハ レ系 の エ ン や カ ミ カ ン シ ョ(上 閑 所:エ ン の 先 に つ く客 用 便 所)も 現 わ れ る 。 こ れ も 武 家 住 居 の 模 倣 で あ る 。 そ の 設 置 状 況 は[表107]の よ う で あ り 、 と く に エ ン の 普 及 状 況 は め ざ ま し く、 全 床 面 積A、(畳)に 対 す る エ ン の 面 積E(畳)の 相 関 は 、 相 関 度0.8478で ひ じ ょ う に 強 い 階 層 性 を 示 す 。 武 家 住 居 へ の 上 層 志 向 と い え る 。 相 関 式 はE=0. 181A】-9.05で あ る 。 2-6山 村 と農 村 の タ テ ヤ 住 空 間 比 較 以 上 、 タ テ ヤ 農 村 住 居 の 規 模 、 室 種 類 、 室 数 、 室 規 模 等 に つ い て み て き た が 、 こ れ ら を 総 括 す る に 当 っ て 、 同 じ く タ テ ヤ で あ る 山 村 住 居 と の 相 違 点 も 明 ら か に し て お く。 加 賀 の タ テ ヤ と 白 山 の タ テ ヤ の 比 較 で あ る 。 そ の 結 果 は[表10-8]に 示 す 通 りで あ る が 、 ま ず 住 空 間 を 大 き く分 け て ケ 系 列 と ハ レ系 列 と す る と 、 山 村 も 農 村 も ケ 系 列70%、 ハ レ 系 列30%と な り配 分 率 は 等 し い 。 次 に そ れ ぞ れ の 内 容 を み る 。 [表10-8]山 村 住 居 と 農 村 住 居 の タ テ ヤ 住 空 間 量 の 比 較 (註)山 村 住 居 の 諸 数 値 は 、 第1巻[表6-1]∼[表6-4]、[表6-9]に よ る。 農 村 住 居 の 諸 数 値 は 、[表10-2]∼[表10∼7]に よ る 。 ドマ は ニ ワ 、 ナ ガ シ 、 フ ロ 、 便 所 、 物 置 等 、 ネ マ は ナ ン ド、 ヘ ヤ 、 ツ ケ ネ ドコ 、 シ モ ネ ドコ 、 押 入 等 、 ケ 系 列 の エ ン は ロ ー カ を含 む 、 ブ ッ マ は 仏 壇 入 、 仏 壇 置 場 、上 段 、 ク チ ノ マ 等 、 ザ シ キ は 床 の 間 、 床 脇 、 書 院 を含 む 、 ク チ ノマ 、 ヒ カ エ ノ マ 等 の 和 を示 す 。 な お 、 タ テ ヤ 農 村 住 居 の 全 床 面 積A、(畳) に対 す る ケ系 列 の 全 床 面 積K(畳)の 相 関 度 はO.9442、 相 関 式 はK;0.5358A、+15.96、 ハ ケ 系 列 の 全 床 面 積H(畳)の 相 関 度 は0.9276、 相 関 式 はHニ0.4642Ar15.96で あ る 。 ま ず 、 ケ 系 列 は ドマ 、 ヒ ロ マ 、 ネ マ 、 エ ン に よ っ て 構 成 さ れ る が 、 ドマ は 山 村20%、 農 村30% で 、 農 村 は 山 村 の1.5倍 で あ る 。 平 野 部 の 農 村 の 方 が ドマ の 発 達 し て い る こ と が わ か る が 、 山 村 一22一
の ドマ は カ ッテ とサ シ カ ケ か らな っ て い る の で 、 も し山 村 の古 い 形 式 で あ る サ シ カ ケ(平 均6.2 畳 、13%相 当)の な い場 合 を想 定 す る と、 そ の 差 は さ らに 大 き くな る 。 次 に住 空 間 の 中心 とな る ヒ ロマ は 、 山村30%、 農 村25%で 山村 の 方 が や や発 達 して い る が 大 差 は ない 。 次 にネ マ は 山村20%、 農 村10%で 山村 は 農 村 の2倍 で あ る 。 こ れ は大 き な差 で あ る 。 山 村 で は ドマ の少 ない 分(10%)を ネマ に ま わ して い る の で あ る。 次 にエ ン(ケ 系 列)は 山村 で は 末発 達 で0%、 農 村 で は5%の 発 達 率 で あ る 。 近 代 の完 成 期 に入 る と 山村 で も農 村 で もエ ンが 発 達 して くる が 、 そ れ は ま ず ハ レ系 列 の エ ンか らで ケ系 列 の エ ンは農 村 の方 が 先 行 して い る 。 農 村 の ヒ ロマ が 山村 の ヒ ロ マ よ り5%少 な か っ た が 、 そ の分 が エ ンに まわ っ た と考 え て も よ い 。 以 上 の ケ 系 列 の空 間 畳 の 和 が 山村 、 農 村 いず れ も等 し く70%に な る こ と は先 に ふ れ た通 りで あ る 。 次 にハ レ系 列 は ブ ツ マ 、 ザ シ キ、 エ ンで あ る。 ブ ツ マ は 山村 、 農 村 い ず れ に も設 置 さ れ る 室 で あ り、 加 賀 か ら 白山 に か け て の 地 域 が 蓮 如 の 布 教 以 来 浄 土 真 宗 の メ ッカ で あ る こ と を示 して い る が 、 そ の 空 間配 布 率 は 山村20%、 農 村10%で あ る。 この 差 も大 きい 。 い ま、 わ か りや す い よ う に %を 畳 に読 み か え る と、 ブ ツ マ は 山村20畳 、農 村10畳 と い う こ と に な る 。山村 の20畳 は仏 壇 入(4 畳)、ブ ツマ(8畳)、 前 室 の クチ ノマ(8畳)程 度 の構成 で あ る 。 農 村 の10畳 は仏 壇 入(2畳)、 ブ ツ マ(8畳)程 度 の 構 成 で あ る。 こ の よ う にみ る と、 結 局 山村 の ク チ ノマ が 農 村 で は 欠 落 して い る の で あ る 。換 言 す る な ら、 山 村 の方 が ブ ツマ 系 の 空 間 を重 視 して い るの で あ る 。 次 にザ シ キ は 山 村0%、 農 村10%で 農 村 の 方 が ザ シ キの 導 入 率 が 高 い 。 上 に み た 山 村 の ブ ッ マ の前 室 クチ ノ マ の 分(10%)を ザ シ キ に まわ した とい え る 。 す な わ ち 、 山 村 よ り農 村 の方 が ザ シ キ化 の 方 向 で は 先行 して る 。 次 にハ レ系 の エ ンは 山村10%、 農 村10%で 等 しい 。 ハ レ系 の エ ン の 発 達 状 況 は両 者 と も 同等 とい え る。 た だ し、 こ の ハ レ系 の エ ン は 山村 で は ブ ツ マ に対 す る も の で あ り、農 村 で はザ シ キ に対 す る もの で あ る こ と は注 意 され ね ば な ら な い 。以 上 の ブ ッ マ 、ザ シ キ 、 エ ン を合 わ せ た ハ レ系 の 空 間 配 分 率 は 山 村 も農 村 も等 し く30%で あ る 。 ケ 系 列 の 空 間 配 分 量70%と ハ レ系 列 の 空 間 配 分 量30%を 合 わ せ た 全 住 間量 は 、 と うぜ ん100% に な る が 、 山村 、 農 村 を通 じて ケ とハ レの 空 間配 分 率 が等 しい こ とは 注 目 さ れ る 。 こ れ が 時 代 性 とい う もの か。 山 村 住 居 との 比 較 を通 して 得 られ た タ テ ヤ 農 村 住 居 の 特 色 は 、(1)前面 ドマ の大 型 化 、(2)ヒ ロ マ の 同 等 性 、(3)ネマ の少 量 性 、(4)ケ系 列 の エ ンの 普 及 傾 向 、(5)ケ系 列 の 空 間量 の 同 等 性 、(6)ブ ツ マ の保 持 性 、(7)ザシ キ の普 及 傾 向 、(8)ハ レ系 列 の エ ンの 同 普 及 性 、(9)ハ1!系 列 とケ 系 列 の空 間 量 の 同量 性 で あ る 。 と くに 、 農 村 に お け るザ シ キ の 進 出傾 向 は顕 著 で あ り、 近代 の都 市 化 とは 武 家 住 居 を規 範 とす るザ シ キ化 とい っ て も過 言 で は な い。 この ザ シ キ化 は ヨコ ヤ 農 村 住 居 で さ ら に進 展 した 形 を とる 。 -23一