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精神障がい者の摂食嚥下機能支援に対する摂食・嚥下障害看護認定看護師の認識と行動

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Academic year: 2021

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精神障がい者の摂食嚥下機能支援に対する摂食・嚥

下障害看護認定看護師の認識と行動

著者

高橋 清美, 齋藤 涼子

雑誌名

日本赤十字九州国際看護大学紀要 = Bulletin of

the Japanese Red Cross Kyushu International

College of Nursing

17

ページ

1-8

発行年

2018-12-28

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Ⅰ はじめに 統合失調症の口腔機能の実態はこれまでに報告 され1 ~ 3)う蝕や歯周病が国民平均より高いこと1) 口腔内を清潔に保てないこと2,3)、歯科受診の機会 が少なかったこと1)が課題とされてきた。統合失 調症患者は、一般集団と比較して欠損歯、う蝕、歯 周疾患の多さから咀嚼力も弱く、薬原性錐体外路症 状の影響による摂食行動の不良が窒息事故を招く ことから4)患者が安全な食事摂取をするためには、 看護師の十分な観察と的確な援助が必要である。 精神科病院入院中の統合失調症患者に対する摂食 時の看護観察を調査した研究では、摂食嚥下機能評 価をもとにした食事観察には至っていないことよ り5)、自記式の質問紙による摂食嚥下機能の評価法 でさえも、精神科臨床では一般的に普及していると は言い難いことが推測される。質問紙の普及とまで はいかなくとも、歯磨きといった口腔ケアは生活の 援助として看護師は日常業務の中で実施する。患者

資料

精神障がい者の摂食嚥下機能支援に対する摂食・嚥下障害看護認定看護師の認識と行動

髙橋 清美1) 齋藤 涼子2)  本研究の目的は、精神障がい者の摂食嚥下機能支援に対し、摂食・嚥下障害看護認定看護師(以下、認定 看護師と略す)が自らの経験をどのように認識し、その後にどのような行動をしているのかを明らかにする ことである。5 名の認定看護師を対象に半構造化面接を行い、実践した印象的な支援に対する認識、認識後の 行動に焦点を当て、コード化しサブカテゴリー、カテゴリーへと抽象化した。調査期間は 2012 年~ 2014 年で、 研究協力者は全員女性で、平均年齢は 43.2 歳(SD=9.6)、看護師の経験年数 21.8 年(SD=10.0)、精神科臨床 経験年数 15 年(SD=3.0)、認定看護師として精神障がい者の摂食・嚥下障害看護は全員が経験していた。  結果では、支援に対する認識には 30 のコード、8 のサブカテゴリーと3のカテゴリー、認識後の行動には 11 のコード、2 のサブカテゴリー、1 つのカテゴリーで構成された。支援に対する認識は、精神症状を踏まえ た摂食嚥下機能支援を評価する、精神障がい者の口腔ケアは看護師同士の理解や共有が重要である、相手へ の違和感を機に自身の支援を内省する、であった。認識後の行動は実現可能な支援を継続するであり、ジレ ンマの中で支援を続行し、自分や相手(医師、看護師、患者)の考えを大切にしていた。  認定看護師は、摂食・嚥下障害看護と精神看護の専門的知識や判断を元に、その支援の評価や、連携の重要さ、 感情を手掛かりに振り返りを認識していた。そして、アサーティブコミュニケーションを用いて支援を継続 していた。 キーワード:精神障がい者、摂食嚥下機能支援、認定看護師、認識、行動  が口腔ケアに協力しない場合であっても、患者に負 担のない範囲で実施するのが臨床の現状なのだが、 問題意識が高い看護師の場合は、現状に満足できず に葛藤を抱くこともある。 では、摂食嚥下機能の支援に対して専門的な技術 と知識を有する摂食・嚥下障害看護認定看護師(以 下、認定看護師と略す)は、精神障がい者の摂食嚥 下機能支援をどのように認識し、その後の行動につ なげるのだろうか。認定看護師は、摂食・嚥下障害 がある患者をアセスメントし、必要な治療が受けら れるように調整することや、患者の個別性を踏まえ た訓練方法を実施する役割のもとで専門的な経験を 積んでいる。熟練した看護技術と知識を持ち合わせ た実践家である認定看護師が、精神障がい者への支 援の経験をどのように認識し、その後にどのような 行動を起こしているのかを明らかにすれば、摂食嚥 下機能支援に対して不全感や葛藤を抱え込みやすい 精神科看護師にとって、気づきを得るきっかけにも なる。 そこで、本研究の目的は、精神障がい者の摂食嚥 1)日本赤十字九州国際看護大学 2)松江赤十字病院

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下機能支援に対する摂食・嚥下障害看護認定看護師 の認識とその後の行動を明らかにする。 Ⅱ 研究方法 1.本研究における用語の定義 認識とは、ある事態に対して、その本質や意味を 理解しようとする心の動きのことを指す。 行動とは、目指すものに向かって、実際に何かを することを指す。 摂食嚥下機能支援(以下、支援と略す)とは、食 べること並びに飲み込むことの機能を支援すること を指す。 2.研究デザイン  本研究は質的記述研究デザインを用いた。 3.データの収集方法と質問項目 摂食・嚥下障害看護認定看護師教育課程がある教 育施設 3 か所に対し、精神科病院で勤務している、 若しくは過去に勤務したことがある該当者を推薦し てもらい、研究協力の交渉を行い、5名の研究協力 者から研究に対する同意を得た。 研究協力者は、精神障がい者への摂食嚥下機能支 援に関し、他の看護職者からの様々な困難事例に対 する相談や指導を行った経験を有することが推測さ れる。本研究では研究協力者自身が実践した支援へ の認識とその後の行動を明らかにするために、特に 印象的な看護場面で、葛藤を感じた支援を想起して もらい、支援に対してどのように認識したのか、そ の認識から具体的にどのようなことを行ったのか、 半構成的面接を行い自由に語ってもらった。 面接はプライバシーが確保でき、内容が第 3 者に 漏れない場所で 1 時間程度実施した。面接内容は対 象者の許可を得てボイスレコーダーに録音した。 研究協力者には、面接の前に、属性、年齢、看護 師の経験年数、精神科病院の臨床経験年数、認定看 護師として精神疾患がある対象者の摂食・嚥下障害 看護の経験の有無、これら質問項目を自記式の調査 用紙に記載してもらった。 4.データ分析方法 研究協力者から聞き取った内容を逐語禄におこ し、データに含まれている情報から、支援に対する 自己の認識、その後の行動、これらの意味する内容 を抽出しコード化を行った。コード化したものの意 味内容の類似性と差異性に従って比較分類しサブカ テゴリー化を行った。サブカテゴリー同士を比較、 分類しカテゴリー化を行った。 5.倫理的配慮 研究への参加は自由意思であり、研究への辞退、 および研究遂行途中での辞退があっても不利益を被 ることは無い旨を説明した。話したくない内容は、 一切話す必要は無く、個人情報の保護遵守を保障し たうえで、学会や雑誌に公表することを説明し、同 意を得た。研究参加予定者の所属施設長に研究計画 書と依頼書を提出し説明を行ったうえで了承を得た のちに、認定看護師にも施設長と同様の説明を行い、 同意を得た場合を研究協力者とした。同意書には研 究者と研究協力者の署名をし、各自1部ずつ依頼書 と共に研究終了まで保管するように説明した。本研 究は研究代表者所属施設の倫理審査委員会で承認を 得た。同意を得た研究協力者のうち、倫理審査が必 要と判断した施設の倫理審査委員会においても、本 研究は承認を得た。 Ⅲ 結果 1.研究協力者の概要 調査期間は 2012 年~ 2014 年で、5 名の研究協力 者は全員女性で、摂食・嚥下障害看護認定看護師だっ た。研究協力者の平均年齢は 43.2 歳(SD=9.6)、看 護師の経験年数 21.8 年(SD=10.0)、精神科臨床経 験年数 15 年(SD=3.0)、認定看護師として精神疾 患がある患者の摂食・嚥下障害看護は全員が経験し ていた。 2.研究協力者が提示した支援の概要 事例 A は、口腔ケアに関して新人看護師の判断 に疑問を感じ、認定看護師として様々な教育上の工 夫を凝らしたが、期待する結果が出ないことに困難 を抱き、疑問を感じたことに対し、その場で新人看 護師に指導をした。 事例 B は寝たきりの高齢者に対する口腔ケアに 違和感があり、自分の知識や経験に基づき様々なア ドバイスを現場に発信したが、スタッフの理解に相 違があることに困難を感じた。そのため、まずは患 者の思いをスタッフに伝え、業務は増えるかもしれ ないが口の中を見ないでケアするのはよくないと伝

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えた。 事例 C は、保護室で時間開錠中にもかかわらず 部屋に引きこもりがちで食事のときだけ活動性が上 がる患者に対し、誤嚥予防をするために、食事時に 保護室から移動させるために歯磨きの誘導を試みた が、ブラッシングを最後まで拒否されてしまい、か ろうじて、食後の飲水のみは実施できた。 事例 D は、自殺企図による舌咬傷の患者に対し、 最初は受け入れが良かったので口腔ケアの指導を 行っていたが、疲れたといわれてケアをやむなく中 断し、病棟スタッフから情報を集約し続けた。 事例 E は多飲水があり口腔機能の低下が顕著な 患者に対し、口腔機能をアセスメントしながら飲水 制限を行ったが成果が得られず、歯磨き介助を実施 し続けた。 3.支援に対する自己の認識の結果 事例 A から事例 E を分析した結果、支援に対す る自己の認識には、30 のコード、8のサブカテゴ リーと 3 のカテゴリーが抽出された(表1)。コー ドは「」、サブカテゴリーは〈〉、カテゴリーは【】 で示す。 1)【精神症状を踏まえた摂食嚥下機能支援を評価 する】のカテゴリー結果 このカテゴリーは、〈患者の笑顔によってコミュ ニケーションの必要性を悟る〉と〈精神症状に配慮 しながら摂食嚥下機能支援した成果を実感する〉の 2 つのサブカテゴリーから構成され、認定看護師は、 患者の反応から自分の行った支援の意味を読み取っ ていた。 〈患者の笑顔によってコミュニケーションの必要 性を悟る〉では、「時間の長さではなく、コミュニケー ションの質が大切だと認識する」(事例 D1)、「口腔 内の創に介入するよりも、まずは話を聴いて関係性 を作ることが重要だと悟る」(事例 D2)、「患者の笑 顔を見て、その人の苦しさが抜けたことを知る」(事 例 D3)より、舌咬傷の患者から支援を拒否されたが、 2、3 週間後に再会した患者の笑顔によって自分の 緊張がほぐれ、コミュニケーションの質や関係性の 大切さを感じ取っていた。 〈精神症状に配慮しながら摂食嚥下機能を支援し た成果を実感する〉では、「患者の誤嚥リスクが低 下して、対応へのめどが立つ」(事例 C1)、「誤嚥リ スク、好物を食べる楽しみ、生活習慣のうち、優先 順位を考えると飲水のみで口腔残渣が取り除けたこ との効果を実感する」(事例 C2)より、ありとあら ゆる手段をとった結果、飲水によって口腔内の残 渣を取り除くことができた。また、「タイマー音で 逸脱行為を終了させることは効果的だった」(事例 E1)、「患者は看護師の顔色を見ながら逸脱行為の 終了を判断し、そのことは他の看護師も周知してい る」(事例 E3)より、タイマー設定は、患者が時間 表1 支援実施後の認識  䜹䝔䝂䝸䞊 䝃䝤䜹䝔䝂䝸䞊 䝁䞊䝗 ᫬㛫䛾㛗䛥䛷䛿䛺䛟䚸䝁䝭䝳䝙䜿䞊䝅䝵䞁䛾㉁䛜኱ษ䛰䛸ㄆ㆑䛩䜛䠄஦౛㻰䠍䠅 ཱྀ⭍ෆ䛾๰䛻௓ධ䛩䜛䜘䜚䜒䚸䜎䛪䛿ヰ䜢⫈䛔䛶㛵ಀᛶ䜢స䜛䛣䛸䛜㔜せ䛰䛸ᝅ䜛䠄஦౛㻰㻞㻕 ᝈ⪅䛾➗㢦䜢ぢ䛶䚸䛭䛾ே䛾ⱞ䛧䛥䛜ᢤ䛡䛯䛣䛸䜢▱䜛䠄஦౛㻰䠏䠅 ᝈ⪅䛾ㄗᄟ䝸䝇䜽䛜పୗ䛧䛶䚸ᑐᛂ䜈䛾䜑䛹䛜❧䛴䠄஦౛㻯㻝㻕 ㄗᄟ䝸䝇䜽䚸ዲ≀䜢㣗䜉䜛ᴦ䛧䜏䚸⏕ά⩦័䛾䛖䛱䚸ඃඛ㡰఩䜢⪃䛘䜛䛸㣧Ỉ䛾䜏䛷ཱྀ⭍ṧ´䛜ྲྀ䜚㝖䛡䛯䛣䛸䛾ຠᯝ䜢ᐇឤ䛩䜛䠄஦ ౛㻯㻞㻕 ᄟୗయ᧯䛿ᝈ⪅䛥䜣䛜䛭䛾ຠᯝ䜢ㄆ䜑䛶䛟䜜䛯䛾䛷⑓㝔ෆ䛷ᬑཬ䛧䛯䠄஦౛㻮㻝㻕 䝍䜲䝬䞊㡢䛷㐓⬺⾜Ⅽ䜢⤊஢䛥䛫䜛䛣䛸䛿ຠᯝⓗ䛰䛳䛯䠄஦౛㻱㻝㻕 䝍䜲䝬䞊㡢䛿䚸ṑ☻䛝䜢⥅⥆䛥䛫䜛䛣䛸䛻䛿䛒䜎䜚ព࿡䛜䛺䛛䛳䛯䠄஦౛㻱㻞㻕 ᝈ⪅䛿┳ㆤᖌ䛾㢦Ⰽ䜢ぢ䛺䛜䜙㐓⬺⾜Ⅽ䛾⤊஢䜢ุ᩿䛧䚸䛭䛾䛣䛸䛿௚䛾┳ㆤᖌ䜒࿘▱䛧䛶䛔䜛䠄஦౛㻱䠏䠅 㣧Ỉᅇᩘ䛾ไ㝈䜢᭩䛔䛯どぬⓗ䛺ᥦ♧䛿䚸㎞䛥䜢䛒䛯䛘䜛䛜ไ㝈䛻䛿ຠᯝ䛜䛺䛛䛳䛯䠄஦౛㻱䠐䠅 ᪥໅䛷ཱྀ⭍䜿䜰䜢⾜䛖䛸ኪ໅䛾ᴗົ䛜ᴦ䛻䛺䜛䛣䛸䜢䝇䝍䝑䝣䛜▱䜛䛸䜏䜣䛺䛜ᐇ᪋䛩䜛䜘䛖䛻䛺䛳䛯䠄஦౛㻮㻞㻕 ⮬ศ䛾᫬㛫䜢౑䛳䛶ດຊ䛩䜛䛖䛱䛻䝏䞊䝮䛜䛷䛝䛶Ꮫ䜆ពḧ䛜⏕䜎䜜䛯䠄஦౛㻮䠏䠅 ᰿ᣐ䜢䜒䛳䛶᪂ே┳ㆤᖌ䛻ఏ䛘䜛ᚲせᛶ䛻Ẽ䛜௜䛟䠄஦౛㻭䠍䠅 䜿䜰䛾ຠ⋡ᛶ䛜ప䛟䛶䜒䚸௒䛿ᚅ䛴᫬ᮇ䛷䛒䜛䛣䛸䜢䝇䝍䝑䝣䛸ඹ᭷䛩䜛䠄஦౛㻯㻟㻕 ᚲせ䛺䜿䜰䜢⥅⥆䛧䜘䛖䛸䛩䜛⮬ศ䛾ಙᛕ䜢䝇䝍䝑䝣䛿⌮ゎ䛧䛶䛟䜜䛶䛔䜛䠄஦౛㻭䠎㻕 ⮬ศ䛾ᥦ᱌䜢ඹ᭷䛷䛝䜛ே䛸䛭䛖䛷䛺䛔ே䛜䛔䜛䠄஦౛㻭㻟㻕 ᭱ึ䛾༳㇟䛸䛿㐪䛖ே䛾䜘䛖䛻ぢ䛘䜛ᝈ⪅䛻㦫䛟㻔஦౛㻰㻠㻕 ᣄྰ䛧䛯ᝈ⪅䛸෌఍䛾㝿䛻䚸ఱ஦䜒䛺䛛䛳䛯䛛䛾䜘䛖䛻䜅䜛䜎䛖ᝈ⪅䛻㐪࿴ឤ䜢ᢪ䛟䠄஦౛䠠䠑䠅 ཱྀ⭍䜿䜰䜢䛧䜔䛩䛔䜘䛖䛻᪂ே┳ㆤᖌ䛻ᑐ䛧㓄៖䛧䛯䛻䜒䛛䛛䜟䜙䛪䚸䛂Ẽ䛜௜䛝䜎䛫䜣䛷䛧䛯䛃䛸ゝ䜟䜜䛯䛣䛸䛻ⴠ⫹䛩䜛䠄஦౛㻭㻠㻕 Ᏻ┤䛺཯ᛂ䜢䛩䜛᪂ே┳ㆤᖌ䛻⮬ศ䛜ఏ䛘䛯䛔䛣䛸䛿ᒆ䛔䛯䛾䛰䜝䛖䛛䛸୙Ᏻ䛻䛺䜛㻔஦౛㻭䠑䠅 ᭱ึ䛛䜙䝤䝷䝑䝅䞁䜾䛸஺᥮᮲௳䛻ዲ≀䛾ྲྀᘬ䜢䜔䜜䜀䜘䛛䛳䛯䛾䛷䛿䛸㏞䛔䛜䛒䜛䠄஦౛㻯䠐䠅 ධᡤணᐃ䛾ᝈ⪅䛿䛖䛜䛔䜔䝤䝷䝑䝅䞁䜾䛜䛭䛾䛖䛱ฟ᮶䜛䛿䛪䚸䛸䛔䛖ඛධほ䛜䛒䜚⮬ศ䛾⪃䛘䛜⏑䛛䛳䛯䠄஦౛㻯䠑䠅 ᝈ⪅䛛䜙ཱྀ⭍ෆデᐹ䛾⑂ປឤ䜢ᢞ䛢䛛䛡䜙䜜䛯䠄஦౛㻰䠒䠅 ⮬ศ䛾ᛮ䛔䜢ᝈ⪅䛻ఏ䛘䛩䛞䛶䛧䜎䛳䛯䛣䛸䜢཯┬䛩䜛䠄஦౛㻰䠓䠅 ಖㆤᐊ䛾⏕ά䛻㐺䛧䛯ṑ☻䛝௓ຓ䛿䚸ᝈ⪅䛾ᮃ䜐䛣䛸䠄㣗䜉䜛䛣䛸䠅䜢ᨭ᥼䛩䜛䛜䚸䜒䛳䛸ู䛾᪉ἲ䛿䛺䛔䛾䛛䛸␲ၥ䜢ᢪ䛟䠄஦౛㻱㻡䠅 㝈⏺䜢▱䜙䛺䛔ᝈ⪅䛿ḟ䚻䛻ḧ䛩䜛䛾䛷䚸䛣䛾ᚚ〔⨾ⓗ䛺㣗≀䛷ᑐᛂ䛧⥆䛡䜛䛣䛸䛜Ⰻ䛔䛾䛛䛸␲ၥ䜢ᢪ䛟䠄஦౛㻱䠒䠅 Ỉ㣧䜏䛾㐓⬺⾜Ⅽ䛜䛒䜛ᝈ⪅䜈䛾ṑ☻䛝䛾ᨭ᥼䛿䝇䝍䝑䝣䛻౫㢗䛧䛻䛟䛔䛯䜑⮬ศ䛾ᨭ᥼䛾䜏䛷␃䜎䛳䛶䛔䜛䠄஦౛㻱䠓䠅 ▱㆑䜢䜒䛸䛻ᐇ㊶䛧䛯䛾䛛䜢᪂ே┳ㆤᖌ䛻☜ㄆ䛧䛺䛛䛳䛯⮬ศ䛻Ẽ䛜௜䛟䠄஦౛㻭䠒䠅 ᪂ே┳ㆤᖌ䛜㌿ಽ䝸䝇䜽䛸ㄗᄟ䝸䝇䜽䛾ඃඛ㡰఩䜢ㄗ䛳䛶䛔䛯䛣䛸䛻Ẽ䛜௜䛟䠄஦౛㻭䠓䠅 ⮬ศ䛿䚸᪂ே┳ㆤᖌ䛜య㦂䛧䛯䛣䛸䜢ᙜே䛻䝣䜱䞊䝗䝞䝑䜽䛫䛪䛻䚸䛥䜙䛳䛸ὶ䛧䛶䛧䜎䛳䛯䛣䛸䛻Ẽ䛜௜䛟䠄஦౛㻭䠔䠅 ┦ᡭ䜈䛾㐪࿴ឤ䜢ᶵ 䛻⮬㌟䛾ᨭ᥼䜢ෆ┬ 䛩䜛 ᝈ⪅䛾཯ᛂ䛻㐪࿴ ឤ䜢ᢪ䛟 ᪂ே┳ㆤᖌ䛾཯ᛂ 䛻㐪࿴ឤ䜢ᢪ䛟 ⮬ศ䛾ᑐฎ䛜ᝈ⪅ 䛻䛸䛳䛶Ⰻ䛛䛳䛯䛾 䛰䜝䛖䛛䛸᣺䜚㏉䜛 ⮬ศ䛾ᑐฎ䛜᪂ே ┳ㆤᖌ䛻䛸䛳䛶Ⰻ 䛛䛳䛯䛾䛰䜝䛖䛛䛸 ᣺䜚㏉䜛 ⢭⚄⑕≧䜢㋃䜎䛘䛯 ᦤ㣗ᄟୗᶵ⬟ᨭ᥼ 䜢ホ౯䛩䜛 ᝈ⪅䛾➗㢦䛻䜘䛳䛶 䝁䝭䝳䝙䜿䞊䝅䝵䞁䛾 ᚲせᛶ䜢ᝅ䜛 ⢭⚄⑕≧䛻㓄៖䛧 䛺䛜䜙ᦤ㣗ᄟୗᶵ ⬟䜢ᨭ᥼䛧䛯ᡂᯝ䜢 ᐇឤ䛩䜛 ⢭⚄㞀䛜䛔⪅䛾ཱྀ ⭍䜿䜰䛿┳ㆤᖌྠኈ 䛾⌮ゎ䜔ඹ᭷䛜㔜 せ䛷䛒䜛 ᰿ᣐ䜢䜒䛳䛶䜰䝗䝞 䜲䝇䛩䜛䛸௰㛫䛜⌮ ゎ䜢♧䛧䛶䛟䜜䜛 ཱྀ⭍䜿䜰䛾ᨭ᥼䛻 䛿䝇䝍䝑䝣ྠኈ䛾⌮ ゎ䜔ඹ᭷䛜䛔䜛

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を気にしながら飲水を済ませようとするため飲水制 限には効果があった。しかし、「タイマー音は、歯 磨きを継続させることにはあまり意味がなかった」 (事例 E2)、「飲水回数の制限を書いた視覚的な提示 は、辛さをあたえるが制限には効果がなかった」(事 例 E4)より、タイマー音による歯磨きの継続性を 伝えることや、飲水回数制限の張り紙は患者への負 担があるだけで効果的ではなかった。 2)【精神障がい者の口腔ケアは看護師同士の理解 や共有が重要である】のカテゴリー結果 このカテゴリーは、〈根拠をもってアドバイスす ると仲間が理解を示してくれる〉と〈口腔ケアの支 援にはスタッフ同士の理解や共有がいる〉の2つの サブカテゴリーから構成され、認定看護師としての 豊富な経験を仲間に伝えることによって得られるこ とや、スタッフ同士の理解や共有といった連携に関 するものであった。 〈根拠をもってアドバイスすると仲間が理解を示 してくれる〉では、「日勤で口腔ケアを行うと夜勤 の業務が楽になることをスタッフが知るとみんなが 実施するようになった」(事例 B2)、「自分の時間を 使って努力するうちにチームができて学ぶ意欲が生 まれた」(事例 B3)より、認定看護師としての豊富 な経験と知識を伝えることが摂食嚥下機能支援に対 する看護師同士の理解や共有につながっていた。 〈口腔ケアの支援にはスタッフ同士の理解や共有 がいる〉では、「必要なケアを継続しようとする自 分の信念をスタッフは理解してくれている」(事例 A2)、「自分の提案を共有できる人とそうでない人 がいる」(事例 A3)より、患者からの拒否があっても、 必要なケアは実施できる可能な範囲で実施して行こ うとする信念を認めてくれるスタッフもいれば、そ うではないスタッフもいることを認識していた。 3)【相手への違和感を機に自身の支援を内省する】 のカテゴリー結果 このカテゴリーは、〈患者の反応に違和感を抱く〉、 〈新人看護師の反応に違和感を抱く〉、〈自分の対処 が患者にとって良かったのだろうかと振り返る〉、 〈自分の対処が新人看護師にとって良かったのだろ うかと振り返る〉、の 4 つのサブカテゴリーより構 成された。支援した対象者の反応に違和感があり、 自分自身を振り返るとともに、期待した結果が得ら れないことに対し対象者に困惑するといった振り返 りに関するものだった。 〈患者の反応に違和感を抱く〉では、「最初の印象 とは違う人のように見える患者に驚く」(事例 D4)、 「患者が拒否した後に再会し、何事もなかったかの ようにふるまう患者に違和感を抱く」(事例 D5)よ り、支援を拒否したにもかかわらず笑顔で迎えてく れた患者に対し、まるで別人に会ったかのような感 覚に陥っていた。 〈新人看護師の反応に違和感を抱く〉では、「口腔 ケアをしやすいように新人看護師に対し配慮したに もかかわらず、「気が付きませんでした」と言われ たことに落胆する」(事例 A4)、「安直な反応をす る新人看護師に自分が伝えたいことは届いたのだろ うかと不安になる」(事例 A5)より、歯磨きの介 助を患者にしてもらいたい一心で、新人看護師が実 施しやすいように歯ブラシやコップをセッティング したが、気が付かなかったといわれたことに対して 落胆し不安になった自分に気が付いた。 〈自分の対処が患者にとって良かったのだろうか と振り返る〉では、「最初からブラッシングと交換 条件に好物の取引をやればよかったのではと迷い がある」(事例 C4)、「入所予定の患者はうがいやブ ラッシングがそのうち出来るはず、という先入観が あり自分の考えが甘かった」(事例 C5)より、自分 の実施した支援では期待される結果が出なかったの で、本当に良かったのか、もっと別の方法がむしろ 良かったのではないかといったすっきりしない感じ が残っていた。 更に、「患者から口腔内診察の疲労感を投げかけ られた」(事例 D6)、「自分の思いを患者に伝えすぎ てしまったことを反省する」(事例 D7)より、口腔 内診察がきついという訴えに対し、相手に思いをス トレートに伝えすぎてしまう自分の傾向があったこ とを振り返っていた。 「保護室の生活に適した歯磨き介助は、患者の望 むこと(食べること)を支援するが、もっと別の方 法はないのかと疑問を抱く」(事例 E5)、「限界を知 らない患者は次々に欲するので、この御褒美的な食 物で対応し続けることが良いのかと疑問を抱く」(事 例 E6)、「水飲みの逸脱行為がある患者への歯磨き の支援はスタッフに依頼しにくいため自分の支援の みで留まっている」(事例 E7)より、保護室での看 護は閉鎖的であるため安全に支援しやすい一方で、 逸脱行為がある患者に本人が望まない支援である歯 磨きを実施し続けるのは主に自分であり、スタッフ

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にも依頼しにくい状況であることを振り返ってい た。 〈自分の対処が新人看護師にとって良かったのだ ろうかと振り返る〉では、「知識をもとに実践した のかを新人看護師に確認しなかった自分に気が付 く」(事例 A6)、「新人看護師が転倒リスクと誤嚥 リスクの優先順位を誤っていたことに気が付く」(事 例 A7)、「自分は、新人看護師が体験したことを当 人にフィードバックせずに、さらっと流してしまっ たことに気が付く」(事例 A8)より、支援に関す る知識の確認を新人看護師に行っていたところ、転 倒リスクとの優先順位が判断できていない状況が明 らかとなり、自分自身もさらりと流してしまったこ とを振り返っていた。 4.その後の行動の結果 データを分析した結果、認識をした後の行動には、 2 のサブカテゴリーと 1 のカテゴリーが抽出された。 コードは「」、サブカテゴリーは〈〉、カテゴリーは 【】で示す(表 2)。 1)【実現可能な支援を継続する】のカテゴリー結 果 本カテゴリーは、〈ジレンマの中で支援を続行す る〉、〈自分の考え、相手の考えを大切にしながら支 援を模索する〉のサブカテゴリーより構成され、患 者にとってより良い支援がなにかを明確に打ち出せ ないままだが、自分と対象者の考えを大切にしなが ら支援を継続していった。 〈ジレンマの中で支援を続行する〉では、「ブラッ シングとの交換条件にご褒美的食べ物を渡すがジレ ンマは残る」(事例 C1)より、歯磨きに協力してく れた場合は交換条件として好物を渡すという方法が 本当に患者にとって良いことなのかと思いつつ支援 を続けていた。「保護室から解放できない患者の口腔 機能を案じて、本人の理解が得られないままに歯磨 きを行う」(事例 E1)では、保護室のまま時間だけ が経過し、患者が年老いて口腔機能が低下するのを 受け身の姿勢で待つわけにもいかず、本人の理解が 得られないまま歯磨きを行っていた。「スタッフから 試されている感じに戸惑いながらも、誤嚥性肺炎予 防の口腔ケア技術をデモンストレーションする」(事 例 B1)では、支援の技術を見せてほしいとスタッフ から依頼を受け、認定看護師としてプレッシャーを 感じながらもデモンストレーションを行った。 〈自分の考え、相手の考えを大切にしながら支援 を模索する〉では、「同僚に相談することで、深く掘 り下げても伝わらないことがあることを悟る」(事例 A1)、「口腔ケアを継続する可能性が低い看護師に対 し、実践したのかという質問をして確認を取る」(事 例 A3)より、新人看護師のことについて同僚に相 談して意見を求めたり、新人看護師に直接確認を取 ることによって相手も自分も大切にする態度を取っ ていた。また、「安全に食べられる間食について主治 医と話し合う」(事例 C2)、「ダメかもしれないがう がいや飲水の促しを習慣化するようにスタッフに伝 える」(事例 C3)より、患者に譲歩して安全な間食 について主治医に相談していた。更に、「自分を拒 否した患者へ謝罪しながら関係性をつくる」(事例 D1)、「冷静になった患者に対し話を聴くことから始 める」(事例 D2)、「患者が信頼する人と関係性を作り、 その関係性を患者にみてもらうようにする」(事例 D3)では、自己理解を通して患者に対する率直な気 持ちを謝罪という形で表現しながら、精神症状が落 ち着いた患者と対話による看護を行っていた。 表2 認識後の行動  䜹䝔䝂䝸䞊 䝃䝤䜹䝔䝂䝸䞊 䝁䞊䝗 䝤䝷䝑䝅䞁䜾䛸䛾஺᥮᮲௳䛻䛤〔⨾ⓗ㣗䜉≀䜢Ώ䛩䛜䝆䝺䞁䝬䛿ṧ䜛䠄஦౛㻯䠍䠅 ಖㆤᐊ䛛䜙ゎᨺ䛷䛝䛺䛔ᝈ⪅䛾ཱྀ⭍ᶵ⬟䜢᱌䛨䛶ᮏே䛾⌮ゎ䛜ᚓ䜙䜜䛺䛔䜎䜎䛻ṑ ☻䛝䜢⾜䛖䠄஦౛㻱䠍䠅 䝇䝍䝑䝣䛛䜙ヨ䛥䜜䛶䛔䜛ឤ䛨䛻ᡞᝨ䛔䛺䛜䜙䜒䚸ㄗᄟᛶ⫵⅖ண㜵䛾ཱྀ⭍䜿䜰ᢏ⾡䜢䝕 䝰䞁䝇䝖䝺䞊䝅䝵䞁䛩䜛䠄஦౛㻮䠍䠅 ྠ൉䛻┦ㄯ䛩䜛䛣䛸䛷䚸῝䛟᥀䜚ୗ䛢䛶䜒ఏ䜟䜙䛺䛔䛣䛸䛜䛒䜛䛣䛸䜢ᝅ䜛䠄஦౛㻭㻝㻕 Ᏻ඲䛻㣗䜉䜙䜜䜛㛫㣗䛻䛴䛔䛶୺἞་䛸ヰ䛧ྜ䛖䠄஦౛㻯䠎䠅 䝎䝯䛛䜒䛧䜜䛺䛔䛜䛖䛜䛔䜔㣧Ỉ䛾ಁ䛧䜢⩦័໬䛩䜛䜘䛖䛻䝇䝍䝑䝣䛻ఏ䛘䜛䠄஦౛㻯䠏䠅 ⮬ศ䜢ᣄྰ䛧䛯ᝈ⪅䜈ㅰ⨥䛧䛺䛜䜙㛵ಀᛶ䜢䛴䛟䜛䠄஦౛㻰䠍䠅 ෭㟼䛻䛺䛳䛯ᝈ⪅䛻ᑐ䛧ヰ䜢⫈䛟䛣䛸䛛䜙ጞ䜑䜛䠄஦౛㻰㻞䠅 ᝈ⪅䛜ಙ㢗䛩䜛ே䛸㛵ಀᛶ䜢స䜚䚸䛭䛾㛵ಀᛶ䜢ᝈ⪅䛻䜏䛶䜒䜙䛖䜘䛖䛻䛩䜛䠄஦౛㻰䠏䠅 㐣ᗘ䛺せồ䜢䛩䜛ᝈ⪅䛻ᑐ䛧䚸ㆡ䜛㒊ศ䛸䛭䛖䛷䛺䛔㒊ศ䜢Ỵ䜑䛶䛚䛟䠄஦౛㻱䠎䠅 ཱྀ⭍䜿䜰䜢⥅⥆䛩䜛ྍ⬟ᛶ䛜ప䛔┳ㆤᖌ䛻ᑐ䛧䚸ᐇ㊶䛧䛯䛾䛛䛸䛔䛖㉁ၥ䜢䛧䛶☜ㄆ 䜢ྲྀ䜛䠄஦౛㻭㻟䠅 ᐇ⌧ྍ⬟䛺ᨭ᥼ 䜢⥅⥆䛩䜛 䝆䝺䞁䝬䛾୰䛷ᨭ᥼䜢 ⥆⾜䛩䜛 ⮬ศ䛾⪃䛘䚸┦ᡭ䛾⪃ 䛘䜢኱ษ䛻䛧䛺䛜䜙ᨭ ᥼䜢ᶍ⣴䛩䜛

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Ⅳ 考察 支援に対する自己の認識は、【精神症状を踏まえ た摂食嚥下機能支援を評価する】、【精神障がい者の 口腔ケアは看護師同士の理解や共有が重要である】、 【相手への違和感を機に自身の支援を内省する】の 3つから構成された。【精神症状を踏まえた摂食嚥 下機能支援を評価する】では、患者の反応から自分 の行った支援の意味を読み取り、【精神障がい者の 口腔ケアは看護師同士の理解や共有が重要である】 では、認定看護師としての豊富な経験を仲間に伝え ることによって得られることや、スタッフ同士の連 携が得られることを認識していた。【相手への違和 感を機に自身の支援を内省する】では支援した対象 者の反応に違和感があり、自分自身を振り返るとと もに、期待した結果が得られないことに対して患者 に困惑していたことを認識していた。 認識後の行動は【実現可能な支援を継続する】で 構成され、患者にとってより良い支援がなにかを明 確に打ち出せないままではあるが、自分と対象者の 考えを大切にしながら支援を継続するという行動を とっていた。 支援に対する認識の結果より、認定看護師は、摂 食・嚥下障害看護と精神看護の専門的知識と判断を 根拠に【精神症状を踏まえた摂食嚥下機能支援を評 価する】であった。〈患者の笑顔によってコミュニ ケーションの必要性を悟る〉では、支援を拒否した 患者に笑顔が見られたことより、その人の精神症状 が軽減したことをアセスメントしたうえで、患者の 話を傾聴することの重要性を認識していた。〈精神 症状に配慮しながら摂食嚥下機能を支援した成果を 実感する〉では、患者が支援を受け入れてもらえる 場合は交換条件として好物を提供するという方法に ついての良し悪しが語られた。応用行動分析では行 動することで良いことが起こったり悪いことがなく なると、その行動は将来繰り返されるとし、何か良 いことを「好子」、何か悪いことを「嫌子」という6) 望ましい行動が起きた直後に、好子を提示したり、 嫌子をのぞいたりすることでその行動は強化され る6)ため、自殺企図を繰り返す患者の行動変容を 行った報告7)や、問題行動による行動制限がある 患者への看護介入の枠組みの検討8)など、精神科 看護でも応用されている。本結果からも認定看護師 は理論に基づく支援を展開した後で、それが患者に どう影響したのかを認識していた。 さらに日勤で口腔ケアを行うと夜勤の業務が楽に なることによって仲間が理解を示すことや、スタッ フ同士の理解や共有によって口腔ケアが行われるこ とより【精神障がい者の口腔ケアは看護師同士の理 解や共有が重要である】ことを認識していた。精神 科看護師は身体合併症ケアを実施する上での臨床判 断の困難さを感じ、自分の下した判断がこれでよ かったのかどうか、困難感や葛藤、ジレンマを抱く ことはまれではないことが報告された9)。本研究で は、認定看護師が支援に関する専門的知識をスタッ フへ丁寧に説明することによって、スタッフの不安 や困難感を軽減させ、それが看護師同士の理解や共 有につながったと認識していた。 さらに、支援の対象者とのやり取りの間で【相手 への違和感を機に自身の支援を内省する】を行って いた。印象的な場面をインタビューしたため、驚き や落胆、そして不安といった違和感が語りの中で得 られたのだが、印象的だったと感じ取った自己の感 情を手掛かりにしながら、対処したことが果たして よかったのか、どうだろうかという迷いや自分自身 の判断の甘さ、対象への反省や自分の傾向に関する 振り返りを認識していた。 認定看護師は、精神症状を踏まえたうえでの摂食 嚥下機能支援を評価し、看護師間の支援に対する理 解や共有の重要さ、支援への内省を認識し、対処し たことへの迷いや実践への反省等をしながらジレン マの中で支援を継続し、継続する上で自分の考えと 相手(医師、看護師、患者)の考えを大切にしなが ら、患者に対して実現可能な支援を継続していた。 精神科看護師の判断と、支援の対象である精神障害 者の判断が対立する10)こともあり、その患者に必 要な支援を提案しても患者が拒否する場合、認定看 護師として必要と考える支援が提供できなくなる可 能性もある。本結果からは、認定看護師としての考 えを大切にしつつも、相手(医師、看護師、患者) の考えを尊重する姿勢があるからこそ、患者に対し て継続的で現実的な支援を可能にすることが考えら れた。アサーティブコミュニケーションとは、自分 も他人も大切にする考え方11)であるが、認定看護 師はアサーティブコミュニケーションを巧みに用い ることによって支援を継続していた。 Ⅴ 結論 摂食・嚥下障害看護認定看護師は、精神障がい者

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に実践した摂食嚥下機能支援を振り返った際に、精 神症状を踏まえた摂食嚥下機能支援を評価する、精 神障がい者の口腔ケアは看護師同士の理解や共有が 重要である、相手への違和感を機に自身の支援を内 省することを認識し、対処したことへの迷いや実践 への反省をしながらジレンマの中で支援を行い、継 続する上で自分の考えや相手の考えを大切にしなが ら実現可能な支援を継続していた。 謝辞 本研究にご協力を頂きました摂食・嚥下障害看護 認定看護師の皆様、関係諸施設の各位の皆様に深く 感謝申し上げます。なお、本研究は平成 24 年度日 本赤十字九州国際看護大学奨励研究費助成を受け実 施した。 文献 1) 浅田正佳:精神科入院患者における歯科疾患の 実態―口腔ケアの遅れとその背景.民医連医療, 362:61-63,2002. 2) 向井美惠,蓜島弘之,原明美,他:精神障害者 の口腔機能の健康支援 摂食・嚥下機能の先行 期と準備期との関連性.口腔衛生学会雑誌,53 (4):371,2003. 3) 中村広一:統合失調症患者の歯科診療 問題点 と対応.障害者歯科,27(4):541-547,2006. 4) 向井美惠:臨床編Ⅲ-原疾患と評価・対処法 1 章成人期・老年期の疾患と摂食・嚥下障害の評 価・対処法 12 精神疾患(統合失調症).鎌倉 やよい,熊倉勇美,藤島一郎,他:摂食・嚥下 リハビリテーション 第 2 版,東京,医歯薬出版, 307,2007. 5) 髙橋清美,佐々木裕光,帆秋孝幸,他:統合失 調症患者に対する摂食時の看護観察は摂食・嚥 下機能評価と関連するのか.日本赤十字九州国 際看護大学 IRR, 7:1-8, 2009. 6) 今本繁,島宗理:対人支援の行動分析学 改訂 版,岡山,ふくろう出版,81,2008. 7) 如澤学,岩渕誠一,平野のり子,他:自殺企図 を繰り返す統合失調症患者の看護 応用行動分 析に基づいたかかわりを通して.日本精神科看 護学術集会,57(3):334-338, 2014. 8) 日下部祥子,三好尚子,宮原加奈,他:新たな 看護介入の枠組み導入とその運用に際して:あ る統合失調症患者への介入を通して.日本精神 科看護学術集会,55(2):215-219,2012. 9) 藤野成美,脇崎裕子,吉武美佐子,他:精神科 看護師が身体合併症ケアを実施する上での臨床 判断における困難さ.国際医療福祉大学学会誌, 20(2):70-77,2015. 10) 田中美恵子,濱田由紀,嵐弘美,他: 精神科 看護師が倫理的問題を体験する頻度と悩む程 度、および倫理的問題に直面したときの対処行 動.東京女子医科大学看護学会誌,5(1): 1-9, 2010. 11) 平木典子:アサーショントレーニング:さわや かな「自己表現」のために.日本・精神技術研 究所,24,1993.

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Source

Observations on recognition and behavior of certified nurses who provide swallowing

function support concerning care for people with mental disabilities

and swallowing disorders

Kiyomi TAKAHASHI, RN, PhD1) Ryoko SAITO, MA2)

  This study aimed to identify how certified nurses (CNs) in dysphagia nursing recognize their own experiences and conduct themselves accordingly with regard to swallowing function support for people with mental disabilities. We conducted semi-structured interviews with five CNs focusing on recognition for impressive support they had implemented and their behaviors after the recognition. The interviews were encoded and abstracted, creating categories and subcategories. The study period was from 2012 to 2014. All of the participants were female, aged 43.2 years (SD = 9.6) on average with 21.8 years (SD = 10.0) of nursing experience and 15 years (SD = 3.0) of psychiatric clinical experience. Each of them had had experiences of caring for the mentally disabled with dysphagia as a CN.

  Recognition for their support was composed of 30 codes, 8 subcategories, and 3 categories, whereas behavior after recognition had 11 codes, 2 subcategories, and 1 category.

  The results indicated that awareness of support was evident from the evaluation of the support they provided and the patients’ mental conditions, importance of collaboration and information sharing among nurses regarding oral care for such patients, and review of their support quality when they perceived a feeling of discomfort through interactions with patients.

  As for behaviors after recognition, the CNs provided as much sustained support as they could and continued to support their patients in a dilemma while respecting the opinions of others (doctors, nurses, and patients).

  The CNs recognized the importance of reflecting on the evaluation of the support they had given, importance of collaboration, and their emotions. They reviewed their experiences based on their judgment and expertise in psychiatry and caring for people with dysphagia. They continued to support their patients using assertive communication.

  Key words: people with mental disabilities, swallowing function support, certified nurse,

recognition, behavior

1)Japanese Red Cross Kyushu International College of Nursing 2)Matsue Red Cross Hospital

参照

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