〈医学教育シリーズ〉研修医のメンタルヘルス-第28回医学教育セミナーとワークショップ参加体験記-
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(2) 2 0 0. 岡田. 満. か , B. どこで,どんな介入をすべきであったか,. り屋の研修医に責めるような話をしてしまうと余計. C. この後,どう対応すべきかについて, というも のであった.ビデオの登場人物は 1年次研修医の 女性の前田先生 2年次研修医の松本先生,前田先. につらくなってしまうと感じられた. B. どこで, て研修医の気質やメンタルの問題が起きやすいこと. 4. を研修開始前に説明しておくべきで,研修医に対す. 生の指導医の小西先生,そして前田先生の母で. どんな介入をすべきであったかでは,指導医に対し. つのシーンから構成されていた.シーン lでは,頑. るメンター(相談者)も必要で、はないかと思われた.. 張り屋でまじめな前田先生が研修に疲れを感じてい. また,シーン 1の段階で,たくさんの異なる立場の. 2年次研修医の松本先生が研修医ルー. 人が研修医の話を聞いてあげる機会を設けることが. ムに入り前回先生がしんどそうであることに気付く. 大切なのではとの意見もみられた. C. この後,ど. るところに. のだが,緊急手術の連絡が入った時には松本先生は. う対応すべきかでは,研修センターのスタッフが中. 消えてしまし、前田先生がオペの手伝いをしなけれ. 心に研修医に対して,①第三的立場の者が本人と十. ばいけなくなったという,病状前状態を表したもの. 分に話し合いを持ってあげる,②指導医の変更,業. であった.シーン 2では,前田先生は朝の遅刻を小. 務の軽減,プログラムの変更,十分な休養,研修の. 西先生から指摘され,さらには病棟患者の指示出し. 中断などを状況により判断してあげる,③メンター,. を忘れていたことが見つかり,忙しそうではあるも. 心療内科,精神科などに相談や受診を持ちかける,. ののミスを繰り返すことに対して注意を受けてしま. などの意見が出た.発表後の討論では,参加者全員. い,逆に指導医は研修医の異変のサインを見落とし. このような研修医を経験し,実際の対処としてもな. てしまった.シーン 3では,前回先生が朝のカンフ. かなか難しいことも皆理解しており,多種多数な意. アレンスに再度遅刻して弱音を吐くと,それに対し. 見がみられ,白熱した議論がなされていた.. て小西先生が戒め,病院に来なくてもいいから週末. この問題は,我々の施設においても軽度のものは. は気晴らしするようにと研修医に対して駄目出しを. たびたびあり,また,ビデオに近いような内容も実. してしまった.シーン 4では,前田先生の母親から. 際にみられており,切実な問題として今後も適切な. 小西先生に電話があり,娘の様子がおかしし寝て. 対応を十分にしていかなければいげないと感じられ. いなく食事もとらず,泣いてばかりで何度も死のう. た.ただ,ビデオに関しては他の参加者も感じてい. かと考えているとの連絡が入札最悪の状態になっ. たと思われるが,筑波大学で作製されたのに指導医. たという内容であった.. 役の者がなぜか関西弁をしゃべっており,非常に違. 各班の作業発表内容は類似していたので,ここで. 和感があったのは大阪人のひがみであろうかと思っ. は我々の B班の発表を記載する.まず,制度上で問. てしまった.また,前野先生が作成されたビデオス. 題が起きやすい背景として,①指導医が受けてきた. クリプトも配布されたので,我々のところでも同様. ストレート方式の研修システムから,ローテート方. なビデオの製作を予定している.. 式に変わったことに対してまだ認識できていない,. r. 第 2回グループ作業は, 臨床研修病院として,ど. ②仕事の負担が研修医にかかりやすく,人間関係の. んなシステムの構築が必要か』というテーマで,各. 構築がローテート方式により難しい,③指導医が研. 班にそれぞれ指定された課題としては, A. 予防的. 修医とかかわれる期間が短いために,研修医の状況. システム, B. 介入システム, C. 研修への復帰支. を把握しにくい,④指導医が研修医の気質の変化を. 援システム,についてでトあった. A. 予防的システ. 十分に読み取れていない,などがあげられた.実際. ムの発表では,各施設のスタップが初期研修の規約. の作業内容として, A. どこで発見できたかでは,. を十分に理解しておくことがまず大切であるとの意. シーン 1では 1年次研修医が自分の気持ちを素直に. 見がみられた.システムとしては,定期的な研修医. 話すことはほとんどできず,指導医もこの段階では. への面談,ストレス調査票による自己メンタルチェ. 気が付くことはできないと考えられ,先輩研修医が. ック,メンターの導入などが述べられた. B. 我々. 1年次研修医の変化に気付いた段階で他の人に話し. の班のテーマであった介入システムでは,予防にも. をしていたらとの意見が出た.シーン 2では,指導. 通じることであるが,各研修医の状況を常に把握を. 医が研修医の変化について察知してあげればよかっ. していくことが大切で,研修医同土,先輩研修医,. たが,研修医は指導医には本音を話しにくしまた,. 研修センターのスタップ,メンター,指導医などが,. 指導医も指導に追われて気持ちまではうまく把握で. 研修医の変化を素早く捉えるためにアンテナを張り. きないのではと思われた.シーン 3では,指導医が. 巡らせて,その情報を共有しておくことが重要であ. 研修医の同僚や先輩などに意見を聞いてあげていれ. ると発表した.また,医学部以外の教育関係者から. ばよかったのではとの意見がみられた.また,頑張. は,指導医や研修評価を行う立場の者ではなく,気.
(3) 研修医のメンタルヘルス 第 2 8回医学教育セミナーとワークショップ参加体験記ー. 2 0 1. 軽に相談できるようなメール相談窓口や女性には向. 生は第一人者であり,これまで多数の論文発表およ. 性の相談相手を設置することも良いのではとの意見. び講演をなされてきた.. があった.直接的なシステムとしては,研修医の仕. 当日の参加人数は約 5 0名程度で,会場の大きさの. 事時聞を把握してオーバーワークにならないように. 割には空席がみられてはいたが,セミナーの内容は. 指導する,休暇が取りやすいシステムを作る,気に. 非常に有意義なものであった.また,講演はハンド. なる研修医に対しては事前に申し送りをしておし. アウトに準じて話していただき,わかりやすく理解. などの意見が出ていた. C. 研修への復帰支援シス. できた.以下に内容の大筋を示す.. テムでは,研修センターが中心となって,研修医の. これまで,医師のメンタルヘルスに関してはあま. 復帰しやすい仕事内容から始めさせる(当直業務の. り注意が払われてこなかった.しかし,メンタルヘ. 免除,研修プログラムの変更など),研修医の仕事の. ルスに問題を抱えた研修医が多くみられ,卒後研修. 状況を観察しておく,研修医をサポートしてくれる. での深刻な問題となっている.実際,研修開始 2か. 周りの人(家族,同僚,先輩,メンターなど)と定. 月後には研修医の約 3人に 1人が抑うつ状態を呈し. 期的な話をする機会を設ける,同様な経験をした先. ており,約 4人に 1人が研修開始後に新たに抑うつ. 輩からの助言を受けるなどの意見がみられた.. 状態になることが示されている研修医のストレス. 全体討論では,皆少しでも自分の施設に実践して. モデル(図 1)において,ストレス要因としては,. いくことがあったらと,真剣な話し合いの場となり,. 仕事の責任の重さ,労働時間の長さ ( 9 0時間/週以. 熱心にメモを取っていたのが印象的であった.その. 上),および人間関係などが上げられ,対するストレ. 中で,我々の施設に関係する重要な事柄として,研. ス緩和要因としては,研修医には裁量権や達成感な. 修医の居場所は指導医が居る各医局の一部に設ける. どがあまりないことが上げられた.また,研修医の. のではなしまた. 1年次と 2年次では見方や考え 方などが大きく変わってくるために 1年次と 2年. ストレスの特徴(表)は,①一人の人間としてのス. 次とは別の研修医ルームを設けることが,メンタル. ③新米社会人としてのストレス,の大きく分けて 3. トレス,②未熟な研修中の医師としてのストレス,. ケアとして非常に有効であるとの意見が出されてい. つドメインから成っている 3 これらのストレスを予. た.我々の臨床研修センターの自習室も,新研究棟. 防していく方法として,一次予防,二次予防,三次. 6階に 1年次と 2年次が廊下を挟んだ向かい側の部 屋にあり,そのことが研修医のメンタルケアに非常 に良い影響を与えていたことがよく理解された.実 際の研修医の話でも,自習室に戻って同輩と話をす ると心が非常に和む,次に廻る診療科について先に 廻った同僚から状況を聞き頭に先に入れておくと余 裕ができる,気分がめげていた時に仲間と一緒に夕 食をとり気分転換ができたなど,たくさんみられて. ストレス要因 ・労働時間 ・受け持ち患者数 ・ミス・失敗 ・知識・経験 ・雑用 -人間関係 ・処遇 ・職場以外の要因. いる. 最後に全体総括として,前野先生から研修医を孤 立させない,安心して研修を行える環境を整えてあ げることが大切であると述べられて,このワークシ. 図 1 研修医のストレスモデル. ョップをまとめられた.また,ワークショップの時 間は議論が白熱したために予定の 3時間超えてしま っていた. セミナー 1 :1"臨床研修におけるメンタルヘルス」 講師:前野哲博(筑波大学附属病院. 総合臨床教育. センター長) 講師の前野先生は,筑波大学附属病院総合臨床教 育センターの専任の副部長で総合診療,医学教育が 専門分野の若手の教授である.先生は河北総合病院 での研修後に,総合診療の分野で著名な大滝先生, 伴先生の下でトレーニングを受けてこられた.今回 のテーマである「研修医のメンタルヘルス j では先. 表研修医のストレスの特徴 1.人間としてのストレス プライベートな時間の減少 膨大な労働時間 暖昧な私生活と仕事の境界 2. 未熟な医師としてのストレス 患者の信頼を得るよう振る舞う必要性 過剰に期待される役割や責任 3. 新米社会人としてのストレス 新たに生まれる複雑な人間関係 見知らぬ人と次々にコミュニケーションをとり 適応する必要性.
(4) 2 0 2. 岡田. 満. 予防がある.一次予防では,要因の軽減として,週. ア,が重要であると述べられたまた,メンタリン. 勤務時間を 9 0時間以内にする,呼ばれることのない. グについても話をなされ,職場においてキャリアを. 休日の確保する,研修医のレベルや個性に合わせた. 積んだ現役職人(メンター)と新人(メンティー). フォローを行うことで,緩和要因の増強としては,. の聞のキャリア形成の促進を目的とした相互的な動. 安心して研修できる環境を作り上げる,自己効用感. 的な人間関係を構築していくことは,双方にとって. を高める指導を行う,現実かつ具体的な目標設定と. 非常に有意義であることも示された.まとめとして,. きめ細かいサポート体制を作ることである.二次予. 研修病院では研修医に対してきちんとした支援体制. 防ではストレス反応をできるだけ早期に発見し,三. (サポートシステム)を確立することが大切であると. 次予防ではストレス反応への対応をきちんと行なっ. 話され,その中でも特に強調されていたのが,研修. ていくことである.職場での心の健康(メンタルヘ. 管理委員会での産業医の役割を明確化することであ. ルス)づくりのサポート体制(図 2)としては,①. った.. セルフケア,②ラインによるケア,③職場内産業保. 私も医学部校医(産業医)をしていたが,研修医. 健スタッフなどによるケア,④職場外資源によるケ. のメンタルケアの問題について産業医としての視点 から考慮していなかった点について,大いに反省さ. 量畳屋皇皇巨主主 ストレスへの気づき、ストレスへの対処、 自発的な相談 (職章性ストレス簡易調査表の活用) 量筆撞重E 主主 職場環境の改善(過重労働の防止など) 個別の相敵対応(傾聴的態度で). せられた.また,講演は質疑の時聞が持てないくら い予定時聞をフルに使われたが,あっという聞に終 わってしまったという印象であった. 最後に,当臨床研修センターでも研修医のメンタ ルケアのさらなる充実を図っていくこと,今後行う. 痘盤金量主~組金 心の憧康づくり対策の提言および推進、 ラインによるケアへの支媛 (産業医・安全衛生委員会の活動強化). 事業場外の櫨聞‘尊門家による サービスの活用、支援(労災病院勤労者 メンヲルヘルスセン告ーの活用). 図 2 心の健康づくりの基本的考え方. 指導医講習会に「臨床研修のメンタルヘルス」につ いての内容を取り入れていかなければならないこと を強く感じた. 文 献. 1.前野哲博,中村明澄,前野貴美,小崎真規子,木村琢磨, 富田絵梨子,笹原信一朗,松崎一葉 (2008)新臨床研修制度 における研修医のストレス 医学教育 39:175-182 2 . 木村琢磨,前野哲博,小崎真規子,大滝純可,松村真司, 尾藤誠司,青木誠 (2008)わが国における研修医のストレ ス反応とストレス緩和要因の探索およびストレス理論モデ ルの作成医学教育 39:169-174 3 . 小崎真規子,前野哲博 ( 2 0 0 3 )初期研修医のストレス レ ジデントノート 5:86-89 4 . 山本晴義 ( 2 0 0 6 )第 6回研修指導医のためのセミナー 研 修医の心身の管理 メンタルヘルスを中心に C l i n i . c i a n 546:107-112. 図 3 研修病院における支援体制.
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