Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
コロナ禍の中で振り返る東京歯科大学での40年間
Author(s)
矢島, 安朝
Journal
歯科学報, 120(4): 496-496
URL
http://hdl.handle.net/10130/5365
Right
Description
≪プロフィール≫ <略 歴> 1980年3月 東京歯科大学卒業 1980年4月 東京歯科大学口腔外科学第1講座入局 1985年10月 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔外科 学専攻)修了 1990年11月 東京歯科大学口腔外科学第1講座講師 1995年11月 ドイツ連邦共和国 Hannover 医科大学口腔 顎顔面外科学教室に留学 (1997年2月まで) 2005年4月 東京歯科大学口腔インプラント科准教授 (配置換え) 2006年10月 東京歯科大学口腔インプラント科教授 2007年4月 東京歯科大学口腔インプラント学研究室教 授(研究室昇格に伴い名称変更) 2009年4月 東京歯科大学口腔インプラント学講座教授 2013年6月 東京歯科大学水道橋病院病院長 2019年6月 東京歯科大学大学院歯学研究科研究科長 現在に至る 道はなかった 道は築くものであった 時代の黎明にあってフロンティアであることほど困難なことはない しかしそこには大いなる意思があった 東京歯科大学口腔インプラント学講座 幾多の苦難を乗り越えて今を築き上げた仲間たちの勇気と情熱に乾杯! さらなる高みをめざし立ち上がれ未来の仲間たち,そしてもう一度,皆で乾杯! 私の東京歯科大学での40年間は前半と後半に分けられます。まず,1980年卒業と同時に,口腔外科学第一講座に入局し 24年間を過ごしました。野間弘康教授をはじめ多くの先輩方から,臨床の技能や研究の基本まで厳しくご指導をいただき ました。おかげさまで現在まで,口腔外科医と名乗っても恥ずかしくない手術技能を身に付けることができ,多くの症例 を経験させていただきました。さらに大学の研究者であると胸を張って言えるような論文を数多く書かせていただくこと ができました。何よりも自由でおおらかな講座の雰囲気は,私のような性格のものには打って付けで,居心地が良く,楽 しくて仕方のない医局員生活でした。外来患者と入院患者,さらに自らの研究と毎日4,5時間の睡眠でも充実した日常 を過ごしていたことを懐かしく思い出します。また,当時の病棟では多くの入院患者が死亡した時代でした。担当患者の 死は,私の人生観や死生観に大きな影響を与え,さらにこれらが私の歯科医師人生のバックボーンになっているように感 じています。 2005年に千葉病院に診療科として口腔インプラント科が誕生し,そこに配置替えとなり,2007年に研究室に,さらに2009 年には口腔インプラント学講座に昇格いたしました。口腔インプラント科開設当初は,私を含め4名の医局員と3名の歯 科衛生士が配属となりました。口腔外科の時代との最大の違いは,自分たちの前に道がなかったことです。すべての事柄 において,道は造るしかありませんでした。方向を考えたら,まず実行,実行してうまく運ばなければ撤退,新しい方向 を探る,3歩進んで2歩下がるような毎日でした。口腔外科の時代は,講座に長い歴史と伝統があり,問題が持ち上がっ ても数多くの前例から適切な道は選択するだけでよかったわけです。生まれたばかりの講座において,すべてを造り上げ て行く作業は楽しいものです。規則もありませんから,毎回,瞬時に「判断と決定」が求められることも私には適してい ました。しかし,目の前に規則や方略などの道をつくるには,ゼロからの出発ですから,既存の講座と比較して膨大な時 間と努力が必要でした。私たちは,この場所でフロンティアであることの楽しみと苦しみの両方を味わうことができたわ けです。 ところで私たちは現在,コロナ禍の中で多くのことを学んでいます。今回の新型コロナウイルスの感染拡大は,地震や 洪水のような自然現象ではなく,一人一人の行動を媒介として,あっという間に世界全体に拡がった社会現象だというこ とです。自然現象である地震や洪水は,復興が完了すれば元の生活に戻ることが可能です。しかし,このコロナ禍は社会 が変わらなければ終息は不可能です。社会が変わるということは,私たち一人一人の行動変容が重要な要因となります。 当然終息しても,コロナ以前の社会生活が戻ることは決してないのです。今後,本学の教育も研究も臨床も各人の行動変 容を基にした大きな変革がなされなければ成り立ちません。したがって,コロナ以降の社会においては,すべての人,す べての組織の前に道はなく,創造しながら方向を決め,道を築き上げて行くというフロンティアとしての覚悟が,私たち に必須であると思っています。講演では口腔インプラント学講座での臨床・研究・教育を中心にお話しさせていただき, フロンティアとしての16年間の軌跡を報告させていただきたいと思います。