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構音獲得困難な幼児に対するSchema理論と強化随伴法の適用

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Academic year: 2021

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(1)構音獲得困難な幼児に対するSchema理論と 強化随伴法の適用 辻千雅子* ・鈴村健治** Combined. Application on. a. Young. of Schema Child. Chikako. with. Theory. and. Difficulty. TsuJI. in Acqulrlng. Kenji. and. Contingensy. of Reinforcement Articulation.. SuzuMURA. 1.問題と目的 正しい構音を行うためには,. 4つの段階を通ると考えられる。第1段階は情報の入力,. 第2段階は情報の処理,第3段階は運動への変換,第4段階は実際の構音である。 言語障害の中に運動障害性構音障害と呼ばれる言語障害がある。これは,発声発語の運動 過程(神経・筋系)のなんらかの異常によって運動が損なわれたことから起こる言語障害であ る。この言語障害では,既述の構音を行うための4つの段階のうち第3段階の運動への変換 と第4段階の実際の構音に問題があると考えられる。第3段階では,パターン化された理想的 \構音の再認及び実際の構音と理想的構音の照合,修正が行われるが,運動障害性構昔障害 の場合には,理想的構音を獲得していないために誤った構音を行ってしまうものと考えられ る。さらに,その正否を照合することができないために構音の修正をすることが困難となり, 結果として第4段階の実際の構音において常に誤った運動を繰り返すものと考えられる。 ある音の構音を健常者が行うときには,入力された情報を既に貯蔵されている過去の経. 験と琴らし合わせながら,構昔すべき音やアクセントなどを検索して処理し,パターン化 された理想的構音の再認を行う運動への変換を通して,最後に実際の構音が行われる。実 際の構音を誤った場合,運動への変換で理想的な構音との照合,修正が行われる。 以上のような一連の過程に障害がない場合に初めて構音が円滑に正しく行われ,どこか の過程に異常が生じれば言語障害を引き起こすことになるのである。 例をあげて説明してみよう。絵カードを用いてそれが何であるかを答えさせる場合,悼. 報の入力は絵カードによって行われる。次にそれが何であるかという情報の処理が行われ る。たとえば絵カードが「飴+であれば,処理では,. 「飴+の知覚,. [α]と[me]という. 音の検索, 「雨+ではなく「飴+に対応するアクセントの検索などが行われる。そして,. に対応した[αme]を構音するための理想的な構音の再認を行い,最後に正しい[αme]の 構音が行われるのである。しかし,得られた構音が望んでいた構音とは異なる場合,理想 *未定(No *. Regular. *特殊教育教室(°ept.. Occupation) of Special. Education). 「飴+.

(2) 212. 辻千雅子・鈴村健治. 的な構音を得るために構音の修正が行われる。 本論文でとりあげる事例研究の対象児は,運動障害性構音障害の中でも麻捧性構音障害 に酷似した症状を呈し,理解言語に比べ表出言語の発達が著しく遅れている言語障害児で ある。しかし,医学的にはまったく異常がないという診断を受けており,本児の言語障害 の原因は明らかではない。. 3歳10ケ月時に行った絵画語い発達検査では,語嚢年齢は3歳. 4ケ月で,生活年齢と比べると6ケ月の遅れがあったが,母親や他の人物の言っているこ とを理解したり指示に従うことはできるため,日常生活における理解言語には問題はない と考えられた。したがって,本児は構音を行うまでの4つの段階のうち,第3段階と第4 段階に問題を有するものと考えられた。つまり,第3段階の運動への変換に異常があるた めに第4段階の実際の構音がうまくいかないのである。しかし,運動そのものの獲得が困 難であるということばなく,また,一度構音できた音は確実に習得していくことなどから, 非常に困難を伴うが構音獲得は可能であると考えられた。 ところで,. Schmidt. (1975)は目標となる運動を起こすためには以下の4つのことを貯. 蔵していなければならないと述べている。 (1)先行条件(Initial. conditions). (2)反応明確化(Response (3)感覚結果(Sensory. specifications) consequences). !4)反応結果(Response. outcome) これらの4つの情報源は運動が起きたあと一緒に貯蔵され, ると,. このような運動が多くなされ. 4つの情報源の関係を抽象化し始める。この4つの情報源の関係の強さは同じ一般. 的タイプの連続した運動と反応結果からのフィードバック情報の正確さで強化される。こ れが運動のためのスキーマである。. 4つの情報源がスキーマの形成にどのように関係があ. るかを示したものが図1である。 INITIAL. CONDITIONS. DESIRED. PAST. OUTCOME. PAST. PAST ≡ (⊃. j呈. < u しJ 仕:. RESPONSE. t.J. エ U Ul. 喜喜. ACTUAL. SENSORY. `工:. SPECIFECAT10NS. OUTCOMES. U). CO†〉SEOUENCES. RESPONSE. EXPECTED. SPECIFICAT10NS. SENSORy CONS【OUENCES. 図1. Richard. A.. Schmidtのスキーマ.

(3) ■213. 構音獲得困難な幼児に対するSchema理論と強化随伴法の適用. 先に述べたように,本論文の対象児が正しい構音を獲得するためには非常に多くの時間 と努力を要するが,一度構音できた音が再び構音できなくなるということばない。したがっ て,構音のためのスキーマを形成することば可能であると考えられた。ところが,構音が 安定し,どのような状況であっても正しい構音が行えるようになるまでにはかなりの時間 を要することから,本児には形成したスキーマを有効に利用することとスキーマをより強 固で安定したものにしていくことに問題があると考えられた。そこで本児に対する言語指 導では,図1中の再生スキ-マ(recall. schema)と再認スキーマ(recognition. schema). の形成を目的とする指導ではなく,図2のような指導により形成されたスキーマの強化を 図ることに焦点を当てた指導を行うことが必要であると考えた。. 巨]-[司■-声] 1† 修正†、 1 運動への変換. 再生・. 検索. イメージ化. ストア. パターン化された. 目標. 理想的構音運動. 達成. 再認. 照合. 指導 図2. 構音表出過程. 本児のような発達期における麻捧性構音障害は,失語症のように発音を規定する既得の 構造図の一部が機能しなくなったために障害占51生じたものではなく,構造図自体が形成さ. れない白紙の状態であることが特徴となっている。このように発声と発音に醜する構造が なければ,イメージ化された発音が実際の運動へ変換される機能は働かない。したがって, 構音の種類を増加させるためには,構造を新しく獲得させなければならない。しかし既成 の構造が無い場合には,その運動を再生させるための運動軌跡がストアされていないわけ で,動かすこと自体が不可能になる。したがって,新しい構音はモデル提示などの指導で は獲得されにくいと思われる。 そこで,新しい構音を獲得させるためには,レバートワ-内の構音の偶発的な変化をと らえてターゲットとすることになる。しかし,偶発時な構音はそれ以上にはなりえないか.

(4) 214. 辻千雅子・鈴村健治. ら,この偶発的な反応を更に意図的な自発的構音に移行させるために,随伴強化弁別法の 適用が有効であると思われる。つまり,偶発的な発音の変化はトポグラフイ-の範囲内に あるが,意識されている動きではない。この時モデル提示などで意図的に発音させようと すると,それまで行っていた遊びが中断したり,構音を意識していないために口形をコン トロールできないことから,指導は負の介入となり反応は消去してしまう。 そこで,偶発的な構音を計画的な構昔へと移行させるために,偶発的な反応をターゲッ トとして即時強化し,音を意識させるためにその酎ヒを随伴弁別刺激として用いることに することが考えられる。この随伴弁別刺激は,次の発声のための随伴モデルの役割も果た しているから,シェービングの全過程において有効となると推察される。 一方,事例のような麻痔性構音障害幼児は,強制的に構音訓練をされた経験を持っこと が多い。この不快な経験は,口形模倣の訓練などを強く拒絶することとなって現れる。本 事例においてもこの傾向は強く,構音だけの訓練に対しては強い拒否を示した。したがっ て意図的な構音へと移行させるためには,遊びなどを利用して訓練する必要があり,カー ドなどを利用した遅延物的強化の併用が考えられた。この遅延物的強化は構音のためのス キーマが獲得されるにしたがい消去する。このことが自己強化による意図的構音の獲得を 促進して構音は安定すると思われる。. 2.症 1.対 (1)生. 象. 児. 年 月. 日. 1985年11月11日. 別. 男子. (2)性. (3)指導開始年齢 2.生. 育. 例. 3歳10ケ月. 歴. 分娩時に特に問題はなかったが,黄垣で光線療法を受けている。また,母親は,目が見 えているか,耳が聞こえているかそれぞれの時期に心配して相談に行っている。横浜国立 大学教育学部特殊教育教室、(以下,本学)において構音指導を受ける1年前に言語発達の 遅れのため小児療育センターで診察を受けているが,脳のCT検査,脳波,レントゲン, 聴力などに異常は認められなかった。ここで3年間の経過観察を経,. 1991年9月以降は. 言葉の教室における指導の継続のみを指示されている。 3.言葉の教室における指導 本児は2週間に1度の割合で言葉の教室で構音指導を受けている。ここでの指導は口形 模倣による構音指導が中心である。 指導を受けている。. 1回の指導時間は20-30分で,毎回新しい音の構音.

(5) 215. 構音獲得困難な幼児に対するSchema理論と線化随伴法の適用 状. 4.症. 1989年10月に初めて本学で指導を開始した時点でみられた構音は[∂]. [∂:]のみで. あり,今回の指導開始時(1990年5月22日)にみられた構音も同様であったo 3歳10ケ月時に行ったPVTでは語嚢年齢は3歳4ケ月であったが,母親や他の人物の 言っていることや指示の理解には問題はなかった。しかし正しい構音のための口形をっく ることができず模倣もできなかった。. 法. 3.方 1.指導場所及び指導期間 (1)場所. 本学プレイルーム. (2)期間1990年5月22日-1991年11月26日 過1回約1時間. 全54回. 2.指導内容 指導期間及び指導内容は表1の通りである。 表1指導期間と指導内容. 指導期間. 口形・構音の指導期. 指導内・容. ○口形・構音の指導 a.モデル提示による口形模倣の促進と遅延物的強化. 口形・構音と要求表出 の指導期. ○口形†構音の指導 b-1.即時強化による随伴刺激の利用と遅延物的強化 ○要求表出の指導. b-2.即時強化によ・る随伴刺激の利用と連延物的強化 要求表出と構音器官の 運動パターン獲得の指 ■導期. ○要求表出の指導 b-2.即時強化によ ̄る随伴刺激の利用と遅延物的強化 ○理想的構昔運動との再認,・照合の指導 c.モデル提示による正構音の促進.

(6) 216. 辻千雅子・鈴村健治. 口形・構音の指導 本児は,自分自身の構音の誤りに気づいてはいるものの,日常生活の会話において何も 不自由を感じていなかった。そのため構音の誤りを直す努力や他者の口形への注目がみら れず,他者との会話はすでに獲得されている[∂]. [∂:]と身振りによって成立していた。 したがって,構音器官の運動の指導とともに,各音の構昔時における口形の違いに気づか. せ,模倣させる必要があると考えた。 指導では,本児が特定の音を取り上げた構音指導に拒否反応を示したこと,課題に集中 すると他者を受け付けなくなり,. [∂] [∂:]の構音さえも見られなくなってしまうこと. 等を考慮し,特定の音に対する構音指導は避け,指導者と本児とのやりとり行動を中心と した指導を行うことが適切であると考えた。 教材として絵カードと単語カードを使用した。以下に指導の概要を記す。 指導a.モデル提示による口形模倣の促進と遅延物的強化 この指導は,指導者2名と本児が絵カードを媒介としてやりとり行動を行うものであ る。絵カードはあらかじめ指導者Bのそばに配置しておく。指導者Aが本児に「00の 絵カードをもらってきて+と言って正しい構音のモデルを提示し口形模倣をさせる。本 児は指示された絵カード名を指導者Bに伝えて物的強化としての絵カードを受け取る。 そして最後に,受け取った絵カードを指導者Aに渡す。 指導b-. 1.即時強化による随伴刺激の利用と遅延物的強化. この指導は,指導者2名と本児が絵カードと単語カードを媒介としてやりとり行動杏 行うものである。絵カードはあらかじめ指導者Bのそばに配置しておく。指導者Aが本 児にもらってくる絵カードを単語カードで指示し,本児が単語カードを読むのを待っ。 目標とする構音もしくはそれに近い構音が現れたときは即時強化し,誤構音の場合は正 しい構音を提示するにとどめる。本児は指示された絵カード名を指導者Bに伝えて物的 強化である絵カードを受け取る。そして最後に,受け取った絵カードを指導者Aに渡す。 要求表出の指導 口形・構音の指導では本児が自発的に音声言語を表出する場面を設定していなかったの で,本児は指導において受動的であったといえる。そこで,本児が指導に能動的にかかわ り,音声言語の表出の頻度が高まる場面を設定する必要があると考えた。自発的な音声言 語の表出を促すためには,本児の要求が音声言語によって表出されたときに満たされる状 況を設定することが望ましいと考えられた。そこで,本児が色,形,数字に関心を抱いて いることに着目し,これを利用して要求表出を引き出す指導を行うこととした。 教材としてパズルを使用した。これは,丸 三角,四角の木片を碁盤の目の枠に1つず つはめるものであり,それぞれの木片には,赤,育,黄,緑の4種頬の色がある。以下に 指導の概要を記す。.

(7) 楕音獲得困難な幼児に対するSchema理論と強化随伴法の適用. 指導b-. 217. 2.即時強化による随伴刺激の利用と遅延物的強化. この指導は,指導者と本児が1対1で行うものである。木片は指導者のもとにおいて おく。指導者は本児に,欲しい色,形,個数を聞き,音声言語で要求表出されるのを待 っ。要求表出されたら目標とされる構音もしくはそれに近い構音が現れたときは即時強 化し,誤構音の場合は正しい構音を提示するにとどめる。 理想的構音との再認,照合の指導 本児がここまでの指導を通して獲得した音を,特定の単語すなわち指導で使用した単語 の中で使用する場合には指導者はその内容を理解できたが,本児との会話においてはその 内容を理解できなし、、ことが多かった。また正確に構音できる音も誤って構音することが多 いため,聞き手は本児が何を言っているのかを頭の中で整理しなければならず,内容を理 解するのに時間がかかった。 これまでの指導では,獲得された音は特定の単語の中で一定の音と結びついて構音され ていたため,構音器官の運動パターンも一定であった。しかし,他の単語や文の中では音 の結びつきが変化するので,同じ音を構音する場合でも構音器官の運動は異なったものと なる。そのため,獲得されたと思われた青もある音との結びつきでは構音可能であってち 他の音との結びつきでは構音できなくなるのではないかと考えた。そこで,構音器官の様々 な運動パターンを獲得させるために以下のような指導を取り入れた。なお,この段階で構 音のための構造図が形成されている音に関しては,誤構音の場合の修正のためにモデル提 示を行うことば有効な方法であると考えられた。 指導c.モデル提示による正構音の促進 この指導は,指導者と本児が1対1で行うものである。ごっこ遊びや物語の音読の中 で目標とされる構音が現れたときは即時強化し,誤構音の場合は正しい構音もしくは本 児の誤構音を指導者がモデル提示をし,誤構音の修正を促した。 3.評. 価. 指導場面を8ミリビデオに録画し,時間的,量的,質的変化右求めた。. 4.結. 果. 本児が最終的に獲得した構青ば40音であるが,獲得された順位が早いにもかかわらず 構音が不安定で誤り易い音や,獲得された順位が遅いにもかかわらず構音が安定していて 誤りにくい音などがあり,構音の獲得に系統性がみられなかった。 図3は指導期間中における獲得構音の累積数を5回ごとに示したものである。これによ ると5回-15回の指導では獲得構音数はほとんど増加していないが15回-35回の指導の 間では著しい増加が見られる。これは構音の補助手段(手がかり)としての単語カードや 文字カードの導入,要求表出指導の導入の時期にあたる。.

(8) 218. 辻千雅子・鈴村健治 累 積 数. 40. 30. 20. 10. /. 0. 5. 10. 15. 20. 25. 30. 35. 40. 45. 50. 54. 指導回数. 図3. 指導期間中における獲得構音の累積数. 表2は,獲得された構音が第三者にどのように伝達されるかを調べ,その割合を示した ものである。聴取者9人に本児の構音を聴取してもらい,本児の構音と聴取者の聴取音が 一致した人数により伝達度を3段階に分類した。一致した人数が7-9人を伝達度の高い 育, 4-6人を伝達度の低い音, 0-3人を伝達不可能な音とした。. ・表2. 伝達された音の割合 31. 40. ・7. 2. 40. 40. 40. 獲.嶺.. 伝達度の. 伝達度の. 伝達不可. 構音数. 高い ̄音. 低い音. 能な音.

(9) 219. 構昔獲得困難な幼児に対するSche皿a理論と強化随伴法の適用. 察. 5.考. 14回までは,指導者が構音のモデルを提示し,口形模倣を促進させることもしくは口 [∂:]の構音しか 形に注目させることを中心とした指導を行った。これは,本児が[∂] 獲得していないことから,特別な指導を受けなくても日常生活の中で構音の獲得が行われ る一般の子どもとは異なり,意図的な構音の指導を受けなければ新しい構音の獲得が困難 であると考えたからである。特に本児の場合,意識的に他者の口形に注目し,構音不可能 な音の獲得を意図的に行うという傾向がなかったため,第1の指導として,口形模倣など により構音を習得する機会を与えることで新しい構音の獲得を図るという方法を導入した。 しかし,約5ケ月の指導で新しく獲得した音が5音のみであったことから,このような方 法は本児にとって有効な指導法ではないということが明らかになった0 そこで,構音図のない状態から新しい構音を形成するという指導法ではなく,本児の既 得のあるいは偶発的な構音を利用しこれを強化していくことで,目標とする構音に段階的 に近づけていくという指導方法を導入した。強化の方法として即時強化と遅延物的強化を 取り入れた。この方法は15回目の指導から導入した。この指導法の導入後,本児の構音 可能な音は飛躍的に増加した。これは表2から明らかである。 ところで,図3を見てみると,獲得構音数にほとんど変動がみられない時期と著しく増 1回目は. 加している時期とが存在する。獲得構音数に変動がみられない時期は2回ある。 5回-15回の指導期間である。これは前述の通り,指導でモデルの提示を行っており, 指導法そのものが不適切であった時期である。. 2回目は35回-54回の指導期間である。. この期間は指導法自体は適切であったが,本児に即時強化のターゲットとなる構音の変化 が現れなかったため,新たな構音の形成が不可能であったものと思われる。 獲得構音数が最も増加した時期は15回-35回の指導期間である。この時期は指導法を 変えた時期と一致することから,本児にとって新たな指導法である随伴強化弁別法の適用 は有効であったといえるであろう。さらに,. 17回の指導までに母音の[α]. [i]. [u]. [e]の4音を獲得したことも日本語音のア列,イ列,り列,エ列の構音を容易にした一. 因と考えられる。 本児が最終的に構音を獲得した青ば40音であるが,この中にオ列の音は存在しない。 これほ本児が[o]やこれに近い音をレバートワー内に持っておらず,強化できなかった ためオ列の音を獲得できなかったものと考えられる。このことから本児は珍しいとされて. いる母音の障害を有しているものと考えられる。 14回までの指導は同じ単語を利用し,モデル提示することによって新しい構音を形成. することを試みた時期であるが,本児の症状ははとんど改善しなかった。このことから, 本児のような構音に問題のある言語障害は,構音の経験不足が原因となって引き起こさ・れ た言語障害ではないため,モデル提示を行って経験する機会を多く与えても,症状を改善 することば難しいと考えられた。したがって,本児には,本児に変化を与えるのではなく 本児の変化を利用する指導法の適用が適切であると考えられた。この方法では,本児の構 音が正しいかもしくはそれに近い場合に即時強イヒを行ったが,これは新しい構音の獲得に.

(10) 220. ′辻千雅子・鈴村健治. 向けて指導をスモールステップで行ったということにはかならない。しかもその個々のス テップは本児の変化を捉えたものであるから本児の能力とも一致しており,指導場面にお ける本児の拒否反応をより低くすることが可能であった。また,誤構音の場合には音を意 識させるために正しい構音を提示したが,強制的な指導ではないため本児に不快な感情を. 抱かせることはなかった。さら七,誤構音に対して指導者が拒否を示さなかったことが本 児の発声頻度を高めることにつながったと考えられる。 以上のことから,強化随伴法は本児の能力と心理的側面の均衡を保ちながら指導を進め ることができる方法であり,本児のような言語障害児が新しい構音を形成するためには有 効な指導法であると考えられる。 6.文 福迫陽子(1984).麻痔性構音障害. 献. B.訓練・指導.福迫陽子・伊藤元信・笹沼澄子(編).. 言語治療マニュアル.医歯薬出版 永山健二(1985).診断と治療. 構音障害.隈江月晴・西川盛雄・冨田尚達(編).. 言語障害の診断と治療.ナカニシヤ出版 Richard. A・. Schmidt. Psychological. (1975). Review,. A. 82. Schema. Theory. of Discrete. Motor. Skill Learning.. (4), 233-240. 柴田貞雄(1975).言語治療の適応.麻痔性構昔障害の場合.聴覚言語障害,. 4,. 5ト54. 柴田貞雄(1981).運動障害性構音障害(麻痔性構音障害).堀口申作(編).聴覚言語障害. 医歯薬出版 柴田貞雄(1989).麻捧性構音障害.笹招澄子(編).リ-ビリテーション医学全書11 言語障害.医歯薬出版 進藤美津子・石田宏代・井上たみ江(1974).母音の構音障害の4例.聴覚言語障害, 10-17. 3 (1),.

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