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IRUCAA@TDC : 大腸癌の動向と治療法の現況

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

大腸癌の動向と治療法の現況

Author(s)

大久保, 剛

Journal

歯科学報, 114(6): 543-548

URL

http://hdl.handle.net/10130/3507

Right

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はじめに 厚生労働省の人口動態統計によれば,1981年以来 わが国の死因の第1位は,悪性新生物で,近年では 総死亡数の約3割を占めている。とりわけ大腸癌死 亡数は年々増加の一途をたどり,2012年の大腸癌死 亡数は4万7千人を超え,女性においては全悪性新 生物による死亡数では最多となっている。男性で は,肺癌,胃癌に次いで3番目ではあるが,その死 亡数の差は過去数年間で徐々に縮まってきていて, 近い将来には男女ともに大腸癌が死因の第1位とな る可能性もある。一方,大腸癌は早期に発見し治療 すれば,ほぼ100%の治癒が見込める,癌の中では 最も性質の良い癌でもある。したがって,わが国に おける大腸癌の死亡率を低下させるためには,生活 習慣の改善による一次予防と,スクリーニングの普 及による二次予防の徹底が必要であり,早期発見, 早期治療という原則が守られなければならない。 大腸癌の治療法は,内視鏡的切除法,手術療法, 抗癌剤による化学療法の3つに分けられる。本稿で は,これらの治療法ごとに2005年に刊行され,以後 3回の改訂がなされた「大腸癌治療ガイドライン」 の変遷を踏まえながら紹介,解説し,さまざまな問 題点についても触れていきたいと考えている。 1.内視鏡的治療法 内視鏡的治療法を紹介する前に,まず大腸ポリー プについて述べる。そもそもポリープとは主として 消化管の内腔を覆う粘膜の一部が隆起したものであ り,あくまで形態学的名称である。したがって病理 学的に良性であれ,悪性であれ,隆起型形態を呈す ればポリープと呼んでいる(図1)。これら大腸ポ リープで内視鏡的治療の対象となるのが,腺腫とし て分類されるポリープであり,早期癌を含めた腺腫 が大腸ポリープの約80%を占めている(図2)。好発 部位は S 状結腸と直腸である。すなわち,内視鏡 的治療とは大腸ポリープを切除し,切除組織を回収 する方法であり,診断を含めた治療のことである。 ここで重要になってくるのが,病変の大きさ,予測 深達度,形態に関する情報を見極めたうえで,内視 鏡的切除が可能であるかを診断する技量である。最 近は通常内視鏡観察に加えて,色素内視鏡観察,拡 大内視鏡観察,内視鏡超音波検査所見などを参考と しているが,すべての施設がこのような最新の内視 鏡機器を備えているわけではない1−3) 。 病変の大きさについてのみ言及するならば,一般 に5mm 以上の大きさのポリープであれば癌の可 能性から切除してもよいのではないかと考える(図 3)。「大腸癌治療ガイドライン2014年版」において も,大腸癌の内視鏡治療の適応については粘膜内 癌,粘膜下層への軽度浸潤癌を対象としている。さ らには,大きさや肉眼型は問わず,リンパ節への転 移の可能性がなく,腫瘍の一括切除ができることと している。

関連医学の進歩・現状

大腸癌の動向と治療法の現況

大久保 剛

キーワード:大腸癌治療ガイドライン,内視鏡的切除,腹 腔鏡下切除,化学療法 東京歯科大学千葉病院内科 (2014年9月11日受付) (2014年10月27日受理) 別刷請求先:〒261‐8502 千葉市美浜区真砂1−2−2 東京歯科大学千葉病院内科 大久保 剛

Takeshi OKUBO: Current treatment for colorectal

can-cer(Department of Internal Medicine, Tokyo Dental Col-lege Chiba Hospital)

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内視鏡的治療法はいわゆるポリペクトミーとい う,病巣茎部にスネアをかけて高周波電流によって 焼灼切除する方法(主として隆起性病変に用いられ る)と,EMR(Endoscopic Mucosal Resection)とい う,粘膜下層に生理食塩水やムコアップ(0.4%ヒア ルロン酸ナトリウム溶液,ジョンソン・エンド・ ジョンソン株式会社)などを粘膜下に局注して病巣 を拳上させ,ポリペクトミーの手技により焼灼切除 する方法(主として表面型腫瘍や大きな無茎性病変 に用いられる)が主体であった。しかし,これらの 方法で無理なく一括切除ができる限界は2cm であ り,事実「大腸癌治療ガイドライン2005年版」では 内視鏡的治療の適応は2cm 未満の病巣と制限され ていた4,5) 。しかし,2007年頃より ESD(Endoscopic Submucosal Dissection)が施行されるようになり内 視鏡的治療法は大きく進歩飛躍した。本方法は,粘 膜下層にムコアップなどを局注して病巣を拳上さ せ,専用のナイフで病変の周辺の切開,粘膜下層の 剥離を進め腫瘍を切除する手技である。これにより 理論上は大きさにかかわらず一括切除が可能となっ た(図4)。大腸 ESD は2012年に早期悪性腫瘍に対 して保険適応が認可された。ただし,技術的難易度 が高く合併症の危険性の高さから,どこの施設で も,誰にでもできる手技ではない。現時点では,径 2∼5cm までの病変が保険適応となっている6,7) 。 大腸癌の内視鏡的治療法は拡大内視鏡の開発や, 肉眼的形態診断法の進歩によって深達度などの質的 診断がなされるようになり,その適応基準は広がっ 図1 大腸ポリープの形態 図2 大腸ポリープの分類 腺腫と早期癌が80%を占める 図3 0.9cm 以下の大きさのポリープでも,癌化するものもある 544 大久保:最近の大腸癌治療法について ― 12 ―

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ている。とはいうものの,大腸 ESD では手技的な 問題として穿孔率が高いことや,操作が煩雑なため 手技時間が長くなってしまうなどの問題点があり, 患者や医療従事者への負担が大きく標準手技として 普及するには,まだまだ時間が必要である。 2.手術療法 手術療法では腹腔鏡下大腸切除の進歩と普及が歴 史を変えたといっても過言ではない。1991年に世界 で初めての腹腔鏡下大腸切除術が報告され,その2 年後に本邦でも報告された8,9) 。以後約20年を経過 し,数多くの施設で開腹手術例数と,腹腔鏡下手術 症例数が逆転している(図5)。 当初,腹腔鏡下大腸切除術は,内視鏡的切除が困 難な大きさの良性腫瘍や難治性の憩室症,早期大腸 癌を対象としていた。いわば,内視鏡的治療と開腹 手術の中間的位置づけでもあった。しかし,開腹手 術に比べて,手術創が小さいために術後疼痛が軽微 であり,美容の面でも優れている。そして何より術 後在院日数が短縮されるという利点がある。一方で は,手術経験の不足から技量に格差が生じ,どうし ても手術時間が延長する傾向があった。これに伴 い,患者はもちろん,術者やそれ以外の医療従事者 の負担も大きかった。また,安全性や根治度の問題 などの課題も多く,最初から急速に普及していった わけではなかった。 今日の腹腔鏡下大腸切除術の発展要因としては, 手術器具の操作性の進歩ももちろん重要ではある が,この手術の最大の利点である低侵襲性を何とか 生かせないものかと考え,手術技量の向上を目指し 不断の努力を惜しまなかった外科医の姿勢があげら れる。いくつかの,本術式に関する研究会を立ち上 げ情報を交換し,講習会を開催してトレーニング法 を検討した。また,データを集積し手術成績を蓄積 し分析した。2000年以降となり,欧米における大腸 癌に対する開腹手術と腹腔鏡下手術を比較した大規 模な調査結果が発表され,短期成績での腹腔鏡下手 術の優越性と長期成績での同等性が報告された10) 。 この頃になると本邦でも腹腔鏡下手術においても, ある一定のリンパ節廓清手技が確立された。それに 伴い,腹腔鏡下大腸切除の適応は早期大腸癌から進 行癌へと広がり,手術症例も右肩上がりに増加して いった。さらには,2005年には日本内視鏡外科学会 によって技術認定制度が制定された。この制度は, 図4 ESD による一括切除 図5 順天堂大学下部消化管外科における大腸癌治療の変遷 (同大学ホームページより) 開腹手術例は年々減少してきている 歯科学報 Vol.114,No.6(2014) 545 ― 13 ―

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腹腔鏡下手術を後進に指導するレベルにあるかどう かの技量判定を手術ビデオによって行うものであ り,これまでの外科系専門医制度にはない画期的な ものであった。本制度の目的は腹腔鏡下手術の健全 な普及と進歩を促すことである。 このような流れにしたがって,「大腸癌治療ガイ ドライン」も腹腔鏡下手術の適応基準の見直しが行 われた(図6)。要するに,「腹腔鏡下手術の適応は, 癌の部位や進行度などの腫瘍側要因および肥満,開 腹歴などの患者側要因だけでなく,術者の経験,技 量を考慮し決定する。」というものとなった。今後, 腹腔鏡下大腸切除が手術療法の中心となっていくこ とは疑いようのない事実であり,症例を重ねること によって,長期成績の検証もなされていくであろ う。 さらに最近では腹腔鏡下手術をさらに低侵襲化し ようとの試みも実践されている。通常の腹腔鏡下大 腸切除術では腹部に5つのポートを挿入するのが一 般的である。そのポートを1つに減らす,いわゆる 単孔式手術である。腹腔鏡と手術器具とを一か所よ り挿入して手術を行うという手技である。もちろん 標準術式ではなく,症例も少ない現状では本当に低 侵襲なのか,安全性や根治性はいかがなものかなど の問題も残されている11) 。 3.化学療法 次に抗癌剤を用いた化学療法について述べる。ま ずは現在,日本の保険診療として,大腸癌治療の化 学療法に適応が認められている主な抗癌剤を(図7) に示す。経口薬と注射薬に分かれているが,いわゆ る分子標的薬剤は4種類である。これらの薬剤は単 独で投与されることは稀で,いくつかの薬剤を組み 合わせて投与されることが多い。また,術後再発抑 制を目的とした補助化学療法と切除不能転移・再発 大腸癌を対象とした化学療法に分かれているので, それぞれについて解説する。 1)補助化学療法 癌治療の成否は生存期間によって決まる。つまり は手術後の再発を抑制し予後を改善する目的で,実 施される全身化学療法が補助化学療法である。これ は,治癒切除がなされた症例が適応となる。という のは,手術で目に見える癌をすべて取りきっても何 割かは再発する。目には見えない癌が残っているか らである。「大腸癌治療ガイドライン」によると, 再発率は StageⅡ 12.5%,StageⅢa 24.1%,Stage Ⅲb40.2%である。本療法の適応は,原則として, StageⅢ大腸癌(リンパ節転移が陽性)と StageⅡ大 腸癌の一部に限られている。StageⅢ大腸癌に対す る術後補助化学療法の再発抑制および生存期間に 対する上乗せ効果はすでに欧米では報告されてい る12,13) 。ただし,StageⅡ大腸癌全体では StageⅢ大 腸癌と異なり,再発率が低いので補助化学療法の有 効性が証明されにくい。そこで StageⅡに関して は,深達度が漿膜を超えるもの,穿孔例,組織型が 低分化,未分化,粘液癌,脈管侵襲など,再発リス クの高い症例に的を絞って補助化学療法を行うの が,現時点では妥当な選択となる。 開始時期については,術後合併症から回復してい ることが第一条件であるが,術後4∼8週頃までに 開始することが望ましい。さらに治療期間について は6カ月投与が標準的であり,適切である14,15) 。ま た,薬剤による有害事象や医療コストを踏まえ,適 切なインフォームド・コンセントに基づき患者から 文書による同意を得ることは言うまでもない。 現時点で推奨されている大腸癌術後補助化学療法 図6 「大腸癌治療ガイドライン」における腹腔鏡下手術の 適応基準の見直し 図7 大腸癌治療に用いられる主な抗癌剤 546 大久保:最近の大腸癌治療法について ― 14 ―

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は,日本における保険適応収載順に,5-FU+LV, UFT+LV,Cape,FOLFOX(5FU+LV+OX), Cape+OX である。 2)切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法 化学療法を実施しない場合,切除不能と判断され た進行再発大腸癌の生存期間中央値は約8カ月と報 告されている。しかし,近年の化学療法の目覚まし い進歩によって約2年にまで延長した。 これは1990年代後半より irinotecan(IRI,イリノ テカン),UFT+LV,S-1,oxaliplatin(OX,オキ サリプラチン),といった新しい細胞毒性効果を有 する有 効 薬 剤 が 登 場 し た か ら で あ る。さ ら に は bevacitumab(ベバシツマブ),cetuximab(セツキシ マブ)といった分子標的治療薬が開発され,これら の薬剤を組み合わせることにより,患者の状態に応 じた,いわゆるテーラーメード治療が可能になった からである。とは言え,化学療法の目標は腫瘍増大 を遅延させて延命と症状のコントロールを行うこと であり,現状では治癒を望むことは難しい16,17) 。 全身化学療法の適応となる転移部位は肝,肺,リ ンパ節,腹膜,局所などがあり,より効果的で強力 な薬剤の選択が要求されるが,無理な化学療法ので きない患者もいる。つまり,強力な治療が適応とな らない患者とは,重篤な併存疾患や臓器障害を有す る症例である。このような患者にあえて化学療法を 行う場合には,予測されるリスクとベネフィットに ついて十分なインフォームド・コンセントを行う必 要がある。 強力な治療が適応となる患者に対する治療法を (図8)に示す。国内外の臨床試験において有用性が 示されており,かつ保険診療として国内で使用可能 な一次治療,二次治療,三次治療のアルゴリズムで ある。また,これらの治療を継続し繰り返す場合に は,蓄積性の有害事象(神経障害,食欲不振,倦怠 感,下痢,皮膚障害,味覚障害など)に注意する。 血液検査結果,尿検査所見,身体所見などを定期的 に確認し,抗癌剤投与の継続の可否を判断し,適宜 投与量の調節を考慮する。 おわりに 以上,簡単にではあるが今日の標準的な大腸癌治 療法を紹介し解説してきたが,こうしている間にも 治療法は改良され進歩していくであろう。確かなこ とは内視鏡的治療,腹腔鏡下手術,化学療法とそれ ぞれの分野で,より専門的で細分化された,技術や 知識が要求されるようになってくるということだ。 つまり最早,一人の外科医が大腸癌治療の全ての分 野を担当することには無理がある。このように消化 器外科では,医療技術の高度化に伴い,診療体制が 臓器別,領域別に細分化されていく傾向にある。し たがって,一人前になるのには時間がかかり,将来 の目標が立ちにくいことから若い医師に敬遠されて いるというのも今後の大きな問題点である。 本論文の要旨は,第297回東京歯科大学学会例会(2014年6 月7日,東京)において特別講演したものである。 文 献

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歯科学報 Vol.114,No.6(2014) 547

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7)大腸癌研究会編:大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014年版,金原出版,東京,2014.

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548 大久保:最近の大腸癌治療法について

参照

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