一貫した判断基準としての「電流モデル」の形成―
小学校理科6年「電流のはたらき」を対象として―
著者
白井 秀明, 荒井 龍弥, 宇野 忍, 工藤 与志文
雑誌名
東北教育心理学研究
巻
9
ページ
37-45
発行年
2003-03-25
URL
http://hdl.handle.net/10097/00121893
一貫した判断基準としての「電流モデル」の形成
一 小 学 校 理 科
6
年 「 電 流 の は た ら き 」 を 対 象 と し て
-白 井 秀 明
荒 井 龍 弥
宇 野 忍
工 藤 与 志 文
(東北福祉大学総合福祉学部)(仙台大学体育学部)(東北大学大学院教育学研究科) (札幌学院大学人文学部) 1 .問題 科 学 教 育 に お い て 「 誤 概 念 ( ルール)JI
素朴概念」 「メンタルモデル」といった学習者の既有知識が問題に されるようになって久しし1。これら既有知識のうち、関 連文献で頻繁に取り上げ‘られるものに「電池と仕事場 (豆電球など)をつないだ単純回路の電流に関する誤っ た知識」がある。電流概念は、理科教育において比較的 早くから導入され、繰り返し取り上げられる概念である にもかかわらず、多くの人が科学的に認められたものと は異なったモデルを形成・保持しているというのである。C
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安藤他,1
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。これまでの 研究によれば、そのようなモデルとして、電池の両極か ら電流が流れて電球内で衝突することによって明かりが つくとする「衝突モデル」や、電池の一方の極から流れ た電流が豆電球で使われて少なくなって戻ってくるとす る「減衰モデノレ」、あるいは電池の一方の極から流れた 電流が電球で使いつくされ戻ってこないとする 「単極モ デル」などの存在が知られている。しかも、これらのモ デルは、電流の「供給源」である電池から流れた電流が 豆 電球などの仕事場で「消費」されるとみなしている点 で共通点があり、しかも、その点が科学的に正しいとさ れているモデルと大きく異なっている。さらに、これら 「消費モデルJ(前述の3
モデルの総称)は、電池が消耗 すると電球がつかなくなるといった日常的経験と一致し ているため、電流計によって電流の大きさが変化してい ないことを示しても修正されにくく、その修正には電気 エネルギ一概念の導入やアナロジーによる代替モデルの 教授が必要であるとされている。 したがって、消費モデルの修正を含んだ電流概念の学 習 援助を考える際には、以上の点を考慮に入れた援助計 画の立案が必要となってくるであろう。ただし、特に学 習の初期段階では、 電 流概念と識別した形で電気エネル ギ一概念、を導入することは困難であると予想される。ま た、アナロジーによる教授では、アナログに関する知識 が別に要求される点やアナロジーの誤用による無用の混 乱・誤解(例えば、水流回路とのアナロジーから、導線 を切れば電気が「漏れる」と判断してしまう)を招くと いった点が問題として指摘されているC
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9
1
)
。 したがって、少なくとも学習の初期段階での指導を考慮 する場合、電気エネルギ一概念、やアナロジーに頼ること なく、消費モデルの修正をはかる方法を開発・工夫する ことが求められよう。 ところで、消費モデルがもっともらしく見えるのは、 電池 (供給源)と豆電球やモータ一 (消費者)からなる 回路を想定しているからであり、例えば、電磁誘導といっ た電池がなくても電流が流れる現象は消費モデルと矛盾 する。また、「消費者」であるモーターと「供給源」で ある発電機が原理的には同じものであることも、消費モ デルからは説明できなC'oこのように、電池と仕事場を つないだ回路に限定して電流をとらえるのではなく、磁 力との関係の中でより広く電流概念をとらえ返すことに よって、消費モデルでは説明できない電気現象の存在や 「供給源JI
消費者」という回路のとらえ方の限界を認識 させることが可能になり、ひいては、エネルギ一概念や アナロジーに頼ることなく消費モデルを修正することが 可能になるのではなし1かと考えられる。そこで、本研究 では小6理科の「電流のはたらき」の授業において、身 近な電磁気的現象を組織的に体験させることが、電流概 念、の理解に及ぼす効果について検証する。一連の授業に よって、電流と磁力の関係を理解させることができれば、 消費モデルの修正を含めた電流概念理解の促進が期待さ れよう。I
I
.
研 究1
1.事前調査 実験授業を行うための前提値の実現度と授業前の目標 値の実現度を知るために、学習者(仙台市内の小学6年 生32
名)を対象に調査を実施した。 1-1.調査課題1
-1 -1.
前提実現値調査課題 前提値としては、「電池のつなぎ方と豆電球の明るさ断線 導線長 + と + ショート 豆 電 球 は ? 電 流 は ? 豆 電 球 は ? 電 流 は ? 豆 電 球 は ? 電 流 は ? 豆 電 球 は ? 電 流 は ?
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.
1
電流ー仕事関係課題 循環 単極 、,、〆 衝突 減 豪 、、,〆〈
叫
電流の大きさは変わらない/ ¥豆電球を通つたf後灸は流れない/ ¥ 電流の大きさは変わらない / ¥は、豆電球を通つた後小さくなる/ FIGURE.2 電流モデル課題 の関係Jの理解および「通電回路の条件」と「通電と仕 事の関係(電流が流れれば仕事をする/電流が流れなけ れば仕事をしない)Jの理解を取り上げた。実現値調査 課題は、電池の直列つなぎと並列つなぎによる豆電球の 明るさの違いを問う「直列・並列課題」と、電池と立電 球をつないだ様々な図(回路が断線・導線が長い・+極 から+極に結線・ショー卜回路)を示し、豆電球がつく か、電流が流れるかを問う「電流-仕事関係課題」を設 定した(
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1
参照)0i
電流一仕事関係課題」のショー ト回路以外は、小4
理科で学習した知識によって解決可 能であると考えられる。1
-1
-2
.目標実現値調査課題
目標値として、最も重要な「正しい電流モデルの獲得」 の実現度を測定するために、電流の「循環モデル(科学 的に正しいモデル)Ji
単極モデルJ
i
衝突モデルJ
i
減衰 モデル」を表わす図を示し、正しいと思う図を選択させ る電流モデル課題 (FIGURE.2参照)を設定した。さら に、電流モデルの修正のための「身近な電磁気的現象の 組織的体験」によって実現されると考えられる目標値と して、「身近な電気製品での通電と仕事の関係の理解」 「電磁気的現象を応用した電気製品の原理の理解」を取 り上げ、それらの実現度を測定するために、電気製品を 使うときに電流が流れているか否かを問う電気製品電流 課題と電気製品の中に磁石が入っているか否かを問う電 気製品磁石課題を設定した。 1 -2.事前調査結果1
-2
- 1
.
前提実現値について 直列・並列課題では、 24名 (83%)が正答したものの、 電流一仕事関係課題では、豆電球がつくことと電流が流 れることの判断が一貫していない者が少なからず存在す ることがわかった。特に、+極どうしを結線した回路で は、豆電球はつかないが電流は流れると判断したものが 12名、逆に電球はつくが電流は流れないと判断した者l 名、計13名 (41%)が、通電と点灯の判断に一貫性を示 さなカ〉った。1
-2
-
2
.
授業前の目標実現値について 電流モデル課題では、「衝突モデル」の選択者がもっ とも多く26名 (81%)を占めた。また、「減衰モデル」 の選択が5名(16%)であり、「単極モデル」の選択者 はいなかった。また、正しいモデル(循環モデノレ)を選 択できたものは、 1名 (3%)にすぎなかった。一方、 電気製品電流課題のうち、 13種すべての電気製品につい て 、 使 用 時 に 電 流 が 流 れ て い る と 答 え た 者 は 8名 (25%)にすぎなかった。正答率が低かった電気製品は 懐中電灯 (58%)、扇風機 (67%)、ヘッドホン (67%) であった。また、電気製品磁石課題では、13種のうち実 際に磁石がない場合がある2種をのぞいた11種について、 すべて磁石があると答えた者は3
名(
9
%)であった。 特に、扇風機 (30%)、掃除機 (46%)、マイク (46%) の正答率が低かった。 1 -3.考察 電流モテ、ル課題の結果から、従来報告されているよう に、ほとんどの学習者は科学的に正しいとされるモデル とは異なった電流モデルを形成していることが明らかと なった。また、電磁気現象の体験によって達成される目 標群も事前段階では実現されていないことがわかる。さらに、電流一仕事課題の結果から、電流が流れないと仕 事をしないという基本的な内容についても、理解が不十 分であることがわかった。特に+極どうしを結線した回 路でその傾向が顕著である。電気製品電流課題で、使用 時に電流が流れていると答えない学習者が多いのも、同 様の傾向である。これらの点を考慮し、授業プランが作 成される必要があろう。
2
.
実験授業 電磁気に関する初歩的な原理・法則の理解を目標とし た自作テキストによる授業(小6単元「電流のはたらき」 に対応する)を行うことによって、電流モデルの修正が 可能となるかを検討する。2
-
1
.授業における目標群 授業は直接には4つの法則・原理の定性的理解を目標 として計画された。これらの目標群は最も重要な目標値 である「正しい電流モデルの獲得」の実現のための前提 であり、いわば下位目標として位置づけられる。 (1)導線に電流が流れると磁力が生じる。(
2
)
導線を輪にし、コイルにすると磁力が強まる。 (3)磁力が変化すると、 導線に電流が流れる。 (4)導線に電流が流れると、熱や光が生じる。 以上のうち、 (3)のみは教科外の目標として追加した。2
-2
.
テキスト作成上の方針 「問題」の項で述べた事柄に即して①②③の原則を立 てるとともに、④⑤を追加し、これらに基づいてテキス トを作成した。 ①モータ一、 スピーカ一、 マイクなどを使って、身近な 電磁気的現象を組織的に体験させる。 ②アナロジーは使用しなし、。 ③エネルギ一概念は導入しない。 ④焦点事例を用いる。 モーターを事例として焦点的に取り上げ、それらが 発電機、スピーカーとしても使用可能であるという体 験を通じて法則・原理が電気製品の個々の用途にかか わらず成立することを示し、それらの一般化を図った。 ⑤工作的発問を使用する。 「工作的発問」とは、目的となる一定の結果をうる ためにはどんな条件をどのように操作したらよし、かを、 論理的・経験的・試行錯誤的に推理させる発問である (細谷, 1996)。工作的発問は、特定の目標実現を左右 する要因に関する「仮説」の導出と検証を活発にする はたらきがあり、結果的に適切な要因の把握や要因聞 の関数関係の理解を促進するはたらきを持つという (伏見・麻柄、 1989)。そこで、ここでも発問はできる だけ工作的なものとした(例:できるだけ強い電磁石 を作るには? もっと導線を熱くするには?) なお、テキストは①モーターとコイル ②電磁石 ③ 電流を起こす ④マイクとスピーカー ⑤電流と熱 の5
部分からなる。2
-
3
.
手続き 事前調査に答えた小学生に対し、1997年2月"'3月に 正規の理科の授業として当該授業を行った。所要時間は 11校 時 (1校時は40分)。授業は、概ねテキストに基づ いて行われた。授業終了後、事前調査と同ーの課題に、 目標群に関わる課題として「電磁石課題J
(強い電磁石 を作るには巻き数は?電池の数は?)と「方位磁針課題」 (通電した導線のまわりにおいた方位磁針の向きは?電 池の極を逆さまにすると方位磁針の向きは?)を加えた 事後テストを行った。2
-4
.
事後テストの結果2
-4
- 1
.
目標実現値調査課題の結果 まず、 電 流モデノレ課題結果をTable.1に示す。この結 果から、①衝突モデル・減衰モデルに当たる回路図を選 択する学習者は事後では大幅に減っていること、特に衝 突モデルを選択する学習者が81%→9%と激減している こと②正しい回路図を選択する学習者が3%→84%と激 増していることがわかる。また、 電気製品課題の結果を Table.2に示す。いずれも分析対象となった電気製品す べてについて正しい判断をなしえた学習者の割合は増加 し、「電流」について約7
割、「磁石」 については約5
割 に達した。 TABLE.1電流モデル課題の結果 循環 単 極 衝突 減衰 事前 1( 3%) O(0%) 28(81%) 5(16%) 事後 27(85%) O(0%) 3( 9%) 2( 6%) ※数字は各モデルの選択者数。 TABLE.2 電気製品課題の結果 電流 磁石 両課題 事前 8(25%) 3( 9%) 2( 6%) 事後 21(66%) 15(47%) 13(41%) ※数字は完答者数。 一方、事後テストで新たに追加した課題のうち、電磁 石課題では「コイルの巻き数は多く」を選択した者が32 名(100%)、「電池は多く」を選択した者が28名 (88%) であった。また方位磁針課題では、磁針の向きを正しく 記 述 で き た 者 は25名 (78%)、電 池 の 極 を 逆 に す る と 「方位磁針の向きが反対になる」と記述できた者は31名(97%)であった。 欠いたまま、 電流モデル課題のみを正しく解決できるよ 2-4-2.前提実現値調査課題の結果 うになった学習者の存在を示すものである。かくして、 直子JI・並列課題の正答者は24名 (75%)であり、事前 ここで取り上げている「電流モデル」が、状況の違いを 調査時の正答者数よりもやや減少した。また、電流一仕 越えである程度一貫して使用される判断基準であるとい 事関係課題 (TABLE.3参照)のうち、断線回路および導 う、「モデル」として備えていなければならない条件を 線が長い回路では豆電球の点灯・電流ともに
80%
以上の どの程度満たしているのかが問題として浮上することに 正答率を示しているが、+極どうしを結線した回路では、 なった。仮にモデルとしての条件を欠いているとすれば、 点灯すると判断する者が34%、電流が流れると判断する 「モテ。ルの修正」という目標自体を見直し、「モデルの形 者が44%と、誤答率が高かった。また、この回路に関し 成」という新たな目標が設定されねばならないだろう。 て、通電に関する判断と点灯に関する判断に一貫性がな かった者が依然として7名いた。 III.研究2 1.事前調査 TABLE.3 電流ー仕事関係の結果(事後) 学習前状態の学習者を対象に、電流モテール課題の解決 豆 電 球 は ? 電 流 は ? っく つかない 流れる 流れない 断線 4(13%) 盆血z'ill 5(16%) 包也監i
導線長い 盟盟主監i
2( 6%) 型血盟i
1( 3%) +極の結線 11(34%) 辺直~ 14(44%) 盟堕皇皇i
ショート 24(75%)_
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監i
24(75%) ユ立~ ※数字は人数。下線は正答者。 ※「ショート」は、無回答が1名。2
-
5
.
考察 事後テス トの結果から、事後に8
割以上の学習者が循 環モデルを選択できたことがわかった。事前段階では、 ほとんどの学習者が「衝突・減衰」という消費モデルを 選択していたことからすれば劇的な改善であり、消費モ デルは修正されにくいとするこれまでの知見とは大きく 異なる結果が得られたといえよう。また、同時に「電磁 石課題J1方位磁針課題」の正答率がほぼ8
割に達した ことや「電気製品課題」の完答率が著しく増加したこと など、テキス卜内容も十分に理解されたと考えられるこ とから、電流と磁力の関係に関する法目JI・原理の定性的 理解もすすんだことが想定される。したがって、「電磁 気的現象」を組織的に体験させることにより、アナロジー やエネルギー概念を援用しなくても電流モデルの修正が 可能であると一応結論づけることができょう。 しかしながら、電流モデルの修正が必ずしも他の通電 現象の正しい理解を伴ったものではないという問題も明 らかになった。すなわち、電流-仕事関係課題中の1+
極どうしを結線させた回路」において'通電する'あるい は'点灯する'と判断する学習者や、通電判断と点灯判断 に一貫性が見られない学習者が授業後に依然として存在 した。これらの事実は、「通電回路の条件」や 「通電と 仕事の関係」といったより基本的な内容に関する理解を と他の通電現象における反応との一貫性を検討し、電流 現象に関してどの程度一貫した判断基準を形成している のかを検討する。 1 -1.調査課題 1-1-1.電流モデル課題 直流回路に関するモデル選択課題(直流課題)と交流 回路に関するモデル選択課題(交流課題)の2問よりな る。直流課題は研究1の電流モデル課題と同一であり、 「循環J1単極J1
衝突J
1
減衰」の各モデルを図示して、 電球点灯時の電流の流れ方を問うものである。 また交流 課題では、交流電源使用時の洗濯機とコンセン トの聞の 電流の流れ方を問うものであり、選択肢として「循環」 「減衰J
1
アース(電流は床に流れ、コンセントに戻らな い)J1非』盾環(コンセントから出た電流は全く戻らない)J を図示している。1
-1
-2
.
非通電回路課題 直流単純回路について、「豆電球がつくか否かJ
1
電流 はどう流れるか」の順で問う。後者では正答(流れない) の図とともに電流モデルと類似させた選択肢を図示した。 課題は断線場面について問う「断線課題」と+極どうし をつないだ場面について問う1+
・+課題」の2
つであ る。 (FIGURE.3参照)1
-2
.
事前調査結果1
-
2
-
1
.
電流モデル課題について 直流課題に対して、衝突モデルを選択する者が最も多 い (TABLE.4参照)。これは研究1の結果と一致してい る。一方、交流課題では非循環モデルを選択する者が最 も多し、。交流課題の非循環モデルは直流課題の単極ない し衝突モデルに相当するので、両課題とも衝突モデルに 対応する判断が最も多いという点では一致しているよう にも思える。ただし、モデルごとに詳しく対応関係を検 討すると、両課題で一貫したモテ、ルを選択したと判断さ│断線課題│ ① 電 球 は ?(つく・つかない)
J
C-J
C;;
F
~J ~
本←は、ゃにくらべて流れる電流が少ないことをあらわします │+・+課題│ ① 電 球 は ?(つく ・つかない)話
合
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*←は、〈コにくらべて流れる電流が少ないことをあらわします FIGURE.3 非 通 電 回 路 課 題 れる者は14人 (47%)にとどまっている。また、直流課 題で正しく循環モテソレを選択で、きたとしても、必ずしも 交流課題で循環モデルを選択するわけではないことも明 らかである。 TABLE.4 電流モデル課題の結果(事前) 交流¥直流 循環 減衰 単極 衝突 言十 循環 3 2。
5 10 減衰。 。
3 4 非循環 3。
3 8 14 アース。
。 。
無答。 。 。
計 7 3 3 17 30 ※数字は各モデルの選択者数。 下線は両課題で一貫したモデルを選択している者。1
-2
-2
.
非通電回路課題について 非通電回路課題の結果をTable.5に示す。豆電球の点 灯について正答する(つかないと判断する)者は半数を 超えるものの、電流に対して正答する(流れないと判断 する)者は極めて少ない点は、断線課題、+・+課題で 共通している。また、通電判断の内容も電流モデル課題 と比べて反応の多様性が増しており、しかも反応の分布 が両課題で異なっていることがわかる。そこで、直流モ デルが他の通電状況にも適用可能なものとして機能して いるかどうかを確かめるため、非通電回路課題での電流 の流れ方の判断と電流モデル(直流課題)での反応との 関連を検討した (TABLE.6参照)。 モデルと一貫した電 流の流れを予想した者は断線場面で16人 (53%)、 +・ +場面では10人 (33%)にとどまった。また、循環モデ ルを選択できた学習者が、必ずしも非通電回路で正答も しくは循環モデル的誤答をするわけではないことも明ら かである。 TABLE.5 非通電回路課題の結果(事前) 電 流 は ? 流 単 循 衝 減 衝 N 計 課 題 豆 電 球 は ? れ 極 環 突 豪 減R
な 断線 っく。
3。
2。
7 つかない 2 2 9 2 2 5 23 -ーー ー ー ー ・ ・ ・ ・ ー--_--ーー ー ー ー ー 計 2 5 1 11 2 3 6 30 + と + つく。
6。
2 2 12 つかない5 5 2 1 3 0 2 1
8
計 5 6 3 7 3 2 4 30 ※数字は人数。「衝減」は衝突と減衰の中間的課題。 TABLE.6 直流電流モデルと非通電回路課題の反応との関連(事前) 断線 + と + モデル 一 貫 非 一 貫 正 答 一 貫 非 一 貫 正 答 循環 6。
2 4 減衰 2。 。
2 単極 2。
2。
衝突 11 4 2 7 8 2 計 16 12 2 10 15 5 ※数字は人数。1
-3
.
考察 多くの学習者は、直流/交流のみならず、同じ直流回 路であっても場面が異なると電流に関する判断を変えて いた。したがって、これらの学習者が電流現象に関して 一貫した判断基準を持っているとはいいがたし、。電流モ デル課題の正しい解決をもって、 電流現象一般に関する 正しい理解の指標とすることは危険であり、むしろ「モ デルの形成」が試みられなければならないだろう。よっ て、「一貫した判断基準としての電流モデルの形成」を 中心的な目標値とした実験授業の立案・実践・評価を行 い、「モデル形成」を可能にする諸条件を探る必要があ ろう。2
.
実験授業2
- 1
.
授業における目標群 電流モデルの選択と「通電と仕事の関係」の理解を互 いに関連づけることによって、 電流モデルの孤立化を防 ぎ、さまざまな通電事態での電流の流れを予測する判断 基準として使えるようにするには、以下の3
項関係の中 で電流の流れを理解させる必要があるだろう。 ①回路が形成されているのか否か(断線なと‘つながって いない部分があるのか否か) ② 電流が流れるのか否か ③仕事をするのか否か(豆電球がつくのか否か) したがって、研究1の目標群に、 「回路の形成・通電・ 仕事の3
項関係の理解」が付け加えられた。 これらの目 標は、本研究における中心的な目標値である「一貫した 判断基準としての電流モデルの形成」にとっての下位目 標群として位置づけられる。2
-
2
.
テキス卜作成上の方針 前研究のテキスト作成方針に次の方針を付け加えた。 ①さまざまな回路を作る機会を増やす(例:電池に豆電 球、モータ一、電磁石をつないで回路を作らせる。) ②回路をコントロールする機会を増やす (例:検流計を 用いながら、スイッチを切る、断線させる、 豆電球を ゆるめる。) ③交流回路も扱う(交流電源に豆電球をたくさんつない で"クリスマスツリー"を作る。コンセントを分解する。 電気製品のスイッチを分解する。) 「通電と仕事の関係」 を理解させるためには、 さまざ まな事態で前述の3
項関係を確認することが必要である。 それには、さまざまな回路を作り、検流計を用いながら 回路をコントロール(切ったりつないだり)する活動が 有効だと考えられる。しかも、電流モデ、ルの一貫性を高 めるには、直流だけでなく交流の回路のコントロールも 有効であると考えられる。2
-3
.
手続き 授業の時期は、1
9
9
8
年2
月"
"
'
3
月。学習者は事前調査 に参加した小学6
年生3
0
人。新たに追加された方針のも とに構成し直されたテキストに基づいて実験授業が行わ れた。その後、事前調査と同ーの課題が「目標実現値調 査」として課された。全体の所要時間は1
4
校 時 (1
校時 は4
0
分)であった。2
-4
.
目標実現値調査の結果 電流モデル課題の結果をT
a
b
l
e
.
7に示す。
両課題にお いて、ともに2
7
名(90%)が循環
モデルを選択した。事 前のモデルにかかわらずほぼ修正できたと言える。また、 両課題に対する一貫反応者は2
8
名(93%)
であった。ま た、非通電回路課題の結果をT
AB
L
E
.
8
に示す。いずれの 場面でも、正しい判断(豆電球はつかなし¥電流は流れT
A
B
L
E
.
7
電流モデル課題の結果(事後) 交流¥直流 循環 減 衰 衝突 計 循環2
6
。
2
7
減衰。
2
。
2
非循環。 。
計2
7
2
3
0
※数字は各モデルの選択者数。 下線は両課題で一貫したモデルを選択している者。T
A
B
L
E
.
8
非通電回路課題の結果(事後) 電 流 は ? 課 題 豆 電 球 は ? ;荒 単極 環循 衝突 減衰 衝減 計 れ な 断線つ
。。。 。。
つかない2
6
2
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2
9
-・ ・・・・・・・・・・・ー・・・・・・・ーーーーーo o _ー---_.--- -計2
6
2
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2
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+ と + つく。。
6
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8
つかない1
9
0 2 1 0 0 2
2
言 十1
9
0 8 2 1 0 3
0
※数字は人数。「衝減」は衝突と減衰の中間的課題。T
A
B
L
E
.
9
直流電流モデルと非通電回路課題の反応との関連(事後) 断線 + と + モ デ ル 一 貫 非 一 貫 正 答 一 貫 非 一 貫 正 答 循環。
3
2
4
8
1
8
減衰。
。
衝突。 。
。 。
計。
4
2
6
1
0
1
9
※数字は人数。なしつが増加し、反応の多様性が減じていることがわか る。しかし、+・+場面に対しては
8
名が依然として豆 電球が点灯すると答え、 11名が何らかの電流の流れを予 想している。 さらに、非通電回路課題と電流モテソレ課題の関連を TABLE.9に示す。+・+場面に対する判断と電流モデ ルの選択の間に、高い一貫性が見られる。すなわち、電 流が流れることを予想した11名中10名は電流モデルと一 貫した予想、を立てていた。しかも、循環モデルと一貫し た予想を立てる者が多かった。2
-5
.
考察 事前調査結果について、直流回路では「衝突モデル」 が最も多く選択され、しかも直流回路のモデルから交流 回路のモデルを予測することはできなかった。また、非 通電課題において、モデルと一貫した電流を予想する者 と予想しない者と同程度いたことから、同じ直流回路に 対しても電流モデルは一貫した判断基準として作用して いないことがわかった。このように、研究1で指摘され た電流概念の体系的獲得に関する問題点、すなわち、誤っ た電流モデルが選択される点と電流モデルが一貫した判 断基準として使われていない点が、研究2
の学習者でも 確認されたと言える。 授業後の結果は、研究lと同様にほとんどの学習者が 正しい電流モデルを選択し得たのみならず、課題間およ び学習者内の反応の一貫性が著しく高まったことを示し ている。したがって、前述のテキス卜作成方針に従って 「通電と仕事の関係」を教授することにより、上記の問 題点が克服され、電流現象に広く適用される一貫した判 断基準を形成できたと結論づけることができょう。しか も、+極どうしをつなぐ非通電回路に電流が流れるとす る誤判断の大半が電流モデルと一貫した判断であったと いう結果は、各課題の正答率が上昇したために判断が一 貫しているように見えるという解釈を退け、電流モデル が判断基準として実際に使用されていることを裏付けて いる点で重要である。これらの誤りはモテ、ルの適用範囲 を過剰に拡大したために生じたものであろう。なお、こ の「電流モテソレの誤った適用」については、教授活動の 際に1+
と の極性の違し可」を強調することで解決でき るものと考えられる。 また、モデルの適用範囲が単純に広がったのではない ことは、断線した非通電回路においてモデルと一貫した 誤判断が皆無であったことからもわかる。事前調査で見 られた断線場面での通電判断とモデルとの一貫反応が、 授業後に消滅したということは、断線場面に対して電流 モデルを適用できないことが十分に理解されたためであ ると考えられる。 IV. 全体的討論 本研究の当初の前提は以下のようなものであった。 ①学習者が科学的に正しいものではないにせよ、電流現 象に関しである「モデル」を形成し、それに基づいて さまざまな判断を行っている。 ②学習者がどの「モデル」を形成しているかは電流モデ ル課題に対する反応によって知ることができる。 以上の2点を前提とすれば、電流モデル課題を修正する ことによって他の電流現象に関する正しい判断が可能に なると期待することができる。ところが、授業の前提と なる単純回路の基礎的理解が不十分なまま電流モデル課 題の解決が可能となったと考えられるケースが見いださ れた結果、前提①の妥当性が改めて問題とされることと なった。この点については、研究2
の事前調査において 詳しく検討され、その結果、前提①が従来主張されてい るように広く成立するものではないことが明確に示され た。したがって、研究1で行ったような、消費モデルと 矛盾する電磁気的現象を経験させることは、電流モデル 課題の解決に特殊化した効果しか持ち得なかったと結論 せざるを得なし、。もともと研究lの授業は電流モデル課 題という特定の課題に焦点化して計画されたものである ので、前提①が満たされていない場合、特定の課題解決 に限定された効果しか得られないのは当然であろう。 さらに、研究2ではモデルの修正で=はなく形成が新た に目標値として取り上け、られ、「通電と仕事の関係」を 含む諸法則・原理が様々な回路で同じように成立するこ とを実験を通じて確認するという活動を組み込んだ授業 を行った。その結果、電流モデ‘ル課題に対する反応から 他の課題の解決に対する反応を、誤答も含めて予測する ことができるようになり、ある程度一貫した判断基準が 学習者に形成されたと判断することができた。このよう に、新たに追加した教授活動が、モデル形成に一定の有 効性を発揮したと考えることができる。なかで‘も、取り 上け、た回路が多様であるにもかかわらず諸法則・原理が 繰り返し成立するということを体験させたことがモデル 形成にとって重要であったと思われる。回路の多様性と その中での諸法則・原理の再現性が、判断の一貫性を構 築する上での経験的基盤となったことは、授業記録など に見られる学習者の活動・発言からもうかがい知ること ができる。 他方、本研究の授業方針と鋭く対立するのが、豆電球 と乾電池からなる回路を中心的に取り上げ¥もっぱらそ の回路を例にして諸法則・原理を説明する学習指導である。この種の単純回路は、その仕組みが単純で理解しゃ 念・素朴概念研究)でも同様の問題を抱えたものがある すいこと、操作しやすいことなど、多くの利点を持って かもしれない。今後、再検討される必要があるだろう。 いる。このような回路が教科書などの学習教材で広く活 用されているのには、十分な根拠があってのことである 文献 ことは言うまでもなし1。しかしながら、その一方で、学 安藤裕明・森藤義孝・中山迅
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単純電気回路に関す 習場面で体験する電流現象が、家電製品の使用といった る小・中学生の考え方の再検討一事象面接法を通し 日常的体験内容や発電所・送電線に関する知識と別もの で一科学教育研究,2
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であるととらえられがちであるという指摘もある(麻柄 伏見陽児・麻柄啓一1
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工作的発問(課題)、そして1
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)
。確かに、乾電池と豆電球をつないで回路を作る 操作的発問おおみか教育文化,2
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といった経験がただちに他の日常的経験と結ひ‘つくわけ Glynn,S.M.1
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ExplainingScience Concepts: A ではないし、ましてやそれらの原理的な同一性を認識す Teaching-with-Analogies Model InS.M.Glynn, ることは著しく困難であろう。このような場合、学習体 R.H.Yeany,&
B.K
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Britton(eds.)The Psychology 験を含むさまざまな経験を相互に孤立した知識としてま of Learning Science, Lawrence Erlbaumとめ上げ、孤立した課題として解決するという現象が生 Associa tes.
じるのは十分に予想されることである。本研究の授業前 細 谷 純
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大自然、の知的探検における「きまり」 の学習者が同じ直流回路に関してであっても場面によっ の 役 割 教 科 学 習 の 心 理 学 中 央 法 規1
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て判断を変えていたことには以上のような背景があった Johsua,G., & Dupin,J.J.
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Taking Into のではないだろうか。今後、特定の電流モデルに焦点を 当てた研究を行う場合には、前提①が満たされているこ とを確認した上でなされる必要があろう。 なお、従来の電流モデル研究では、特定の課題に焦点 を当て、その反応の分析から電流モデルの推定および授 業の効果測定を行っているものが多いが、そのような方 法が妥当なのは、前提②が満たされている場合に限られ る。モデルをとらえるのに特定の課題に対する反応で十 分なのかどうか、「モデル」の存在という前提①が満た されているのかどうかとも考え合わせて、方法論を吟味 し直してみる必要があるだろう。さらに、「電流モデル」 以外の領域におけるメンタルモデル研究 (さらには誤概 Account Student Conceptionin Instructional Strategy An Example inPhysics, Cognition and Instruction,4
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麻柄啓一1
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中学生と大学生における誤った回路認 識 科 学 教 育 研 究2
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Osbourne,R.,
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Freyberg,P.1
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Learning in scienceThe Implicationsof Children's Science, Heinemann.Shipstone,D.
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ElectricityinSimple Circuits In R.Driver et al.(eds.) Children'sIdeas inScience, Open University Press.On formation of a scientific conceptual model of electric current in simple circuits which children can use consistently in many problem solving situations: on the subject of the science unit titled "function of electric current" for sixth graders in elementary school
Hideaki SHIRAI, Tatsuya ARAI, Shinobu UNO, Y oshihumi KUDO
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has been thought that children had wrong conceptual models such as, for example, the unipolar model concerrred with electric current in simple circuit, and that such models could not be changed easily. In the first study, the scientific model was taught to the sixth grade children by showing electromagneticphenomena such as generating electricity by vibrating the diaphragm of a speaker. After teaching, teaching effect was investigated by whether children could answer correctly to the tasks which asked them models concerned with electric current. Children showed good performance and also showed that they could change easily their wrong models into scientific models. This was new finding. However, many of the children showed that they did not use the newly learned model consistently in problem solving tasks.
In the second study, children were taught by using teaching program that was developed in order to give them the wide experiences with function of direct electric current and alternating current. The result showed clearly that the revised teaching program was effective and children could use their new model consistently and correctly in many problem solving situations.
Keywords: conceptual model, electric current, teaching program, electromagnetic phenomena, elementary school