合同会社における少数派社員の保護
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(2) 合同会社における 少数派社員の保護. 論. 説. 小. 西 みも恵. 一. はじめに. 二. 合同会社の特徴. 三. 合同会社と SAS の比較. 四. 社員の業務執行権. 五. 社員の地位. 六. 解散判決. 七. おわりに. 一. はじめに. 2005年の会社法施行により, わが国の会社形態に関して大きな改正が行 われた。一つめは, 有限会社を廃止し, 株式会社に一元化したことである。 (1)(2). 二つめは, 新たな会社形態である合同会社制度を導入したことである。合. (1). わが国における合同会社制度の導入に関する立法提言として, 宍戸善. 一「ベンチャー・ビジネスのための組織法作りを試みて ─『創造会社法 試案』の解説」 ジュリスト』1125号 (1997年) 4頁, 大杉謙一「新しい 事業組織形態 (日本版 LLC) の構想 索として─. ─国際競争力を持つ企業法制の模. (Ⅰ)∼(Ⅳ)」『商事法務』1648∼1652号 (2002∼2003年) が. ある。 (2). 合同会社は, アメリカの LLC (limited liability company) に類似した. 会社形態であるが, 税制上のパススルー課税が認められ て い る LLC と は 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月). 99( 246 ).
(3) 同会社は, 出資者の全員が有限責任社員でありながら, 内部関係について 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. は民法上の組合と同様の規律が適用される会社である。会社法上, この合 同会社および合名会社, 合資会社を持分会社と総称し (会社法575条1項), 株式会社とは異なる会社類型として整理している。. 異なり, 財務省は, 法人格があれば法人税の課税対象になるとして合同会 社にパススルー課税を認めることに反対した。そこで経済産業省は, 急遽, パススルー課税を受けることができる組織形態として, イギリスの LLP (limited liability partnership) に類似した「有限責任事業組合」を導入する ことを目的として, 2005年通常国会において「有限責任事業組合契約に関 する法律」を成立させた。同法については, 篠原倫太郎「有限責任事業組 合契約に関する法律の概要」 商事法務』1735号 (2005年6月) 6頁, 経済 産業省「LLP に関する40の質問と40の答え」 新会社法 A2Z』5号 (2005 年8月) 44頁, 宍戸善一「LLP」 法学教室』303号 (2005年12月) 2頁を 参照。 有限責任事業組合は, 民法上の任意組合の特例として導入され, 法人格 を有しないが, 合同会社と同じく, 出資者 (組合員) 全員の有限責任が確 保され (15条), 出資比率とは異なる損益および権限の配分を当事者が自 由に決めることができる (33条)。一方, 共同事業性が強く要求される。 すなわち, 有限責任事業組合の業務執行の決定は原則として組合員全員の 同意を要し (12条), 組合員全員が業務執行を行う (13条)。これは, 有限 責任事業組合にパススルー課税が認められることから, 損失の取込だけを 狙った租税回避目的の悪用を回避する趣旨である (経済産業省, 前掲論文, 問22)。 有限責任事業組合契約の効力発生件数は, 平成17年は344件, 平成18年 は1380件, 平成19年は999件, 平成20年は777件, 平成21年は637件, 平成 22年は536件である。有限責任事業組合の利用があまり多くない理由とし て, ①法人格がないために間接金融 (銀行からの融資) による資金調達が 困難であること, ②有限責任事業組合におけるルールは複数の組合員全員 による合意で決定する必要があるが (4条1項), この合意形成が困難で あること等があげられている (関口智弘・西垣健剛「合同会社や有限責任 事業組合の実務上の利用例と問題点」 法律時報』80巻11号 (2008年10月) 23頁)。 100( 245 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(4) 合同会社の設立数は, 法務省が公表している登記統計によれば, 2006 年は3392社, 2007年は6076社, 2008年は5413社, 2009年は5771社, 2010. 論. 年は7153社であり, その数は増加傾向にあるものの伸び悩んでいるとさ れてきたが (同時期の株式会社の設立数は, 2006年は76570社, 2007年は 95363社, 2008年は86222社, 2009年は79902社, 2010年は80535社), 2011 年には前年比27%増の約9200社となり, 2012年には1万社を超えるとの (3). 見方も出ている。 会社法制定時, 合同会社は人的資産を活かす組織形態としての活用が想 定されており, 2003年に経済産業省が有限責任の人的会社制度の導入に 向けて公表した報告書の中では, 合同会社の利用例として, ①弁護士や公 認会計士等の士関係業務や経営コンサルタント, ファンドマネージャー等 高度な知識, ノウハウを用いる専門家集団, ②コンテンツビジネスやソフ トウエア開発, 産学連携による大学発ベンチャーといった人的資産を元手 にした創業, ③法人同士の共同研究開発等に用いられるジョイント・ベン (4). チャーが挙げられていた。しかしながら実際は, ①設立費用の節約のため, (5). ②意思決定の迅速化のため, ③合弁会社 (ジョイント・ベンチャー) の設. (3) 『日本経済新聞』2012年4月20日9頁。記事のなかでは, 大手石油精 製業の極東石油工業が株式会社から合同会社に組織変更した例, トヨタ自 動車, ホンダ, 三菱自動車, 中部電力, 日本政策投資銀行等9社が, 電気 自動車の急速充電器の早期普及を目的に, 新しく合同会社「充電網整備推 進機構」を設立した例が紹介されている。 (4). 経済産業省. 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案. 本版 LLC 制度の創設に向けて─. ─日. (2003年11月) 31頁。なお, 同報告書の. 解説として, 石井芳明「日本版 LLC 制度の創設に向けて」 金融法務事情』 1692号 (2003年12月) 30頁, 渡邊佳奈子「日本版 LLC 制度の創設に向け て」 NBL』775号 (2003年12月) 29頁, 高市邦仁「日本版 LLC 制度の創 設に向けて」 企業会計』56巻2号 (2004年2月) 69頁がある。 (5). 現時点で合同会社として最大規模である西友が株式会社 (委員会設置 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 101( 244 ). 説.
(5) (6). (7). 立, ④ファイナンス分野における従来の有限会社の代替組織として, 合同 (8). 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. 会社は利用されているようである。 このような現状に対して, 複数の構成員がいる伝統的な中小企業で合同 (9). 会社を利用することのメリットを説く見解がある。というのは, このよう なタイプの企業が株式会社である場合, とりわけ少数株主は, 自己の経営 への参加を確保するために, 取締役の選任権付株式 (会108条1項9号) 等の種類株式, または議決権拘束契約のような株主間契約を利用すること (10). が多いが, 後者の議決権拘束契約についてみれば, 契約そのものの効力が. 会社) から合同会社に組織変更したのは, 経営の効率化, スピーディーな 意思決定を行うことがその理由であるとの説明がなされている (江頭憲治 郎・大杉謙一・新家寛・伊藤剛・黒田裕「座談会. 合同会社等の実態と課. 題 (上)」 商事法務』1944号 (2011年10月) 9頁 (伊藤発言))。また, 注 (3)に引用した極東石油工業および充電網整備推進機構も, 機動的な経営 が可能であることが合同会社を選択した理由であると述べている。 (6). 武井一浩「日本版 LLC 制度とジョイント・ベンチャー実務への利用. 可能性. ─合弁契約 (株主間契約) の実効性の観点から─」 金融法務事. 情』1706号 (2004年5月) 20頁。 (7). 具体的には, 流動化案件, リース取引等に係るストラクチャードファ. イナンス案件, ファンド組成に係る資金調達案件において, 有限会社の代 わりに合同会社が利用されている。 合同会社を利用する理由として, ①会社更生法の適用がないこと, ②大 会社規制がないため, 監査役・会計監査人の設置 (会327条3項・328条) を要せず, また内部統制システムの整備 (会348条3項4号 ・4項) を要 しないこと, ③計算書類の公告義務 (会440条1項) がないことが挙げら れている (江頭・大杉・新家・伊藤・黒田, 前掲論文注(5)8頁 (新家発 言))。 (8) この他に, アメリカの税法上の観点から, アメリカの会社がパススルー 課税を享受するために, 日本の子会社を合同会社とする利用例もある (関 口・西垣, 前掲論文注(2)19頁)。 (9). 江頭・大杉・新家・伊藤・黒田, 前掲論文注(5)7頁 (江頭発言)。. (10). 江頭憲治郎『株式会社法』(第4版) (有斐閣, 2011年) 50頁。. 102( 243 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(6) (11). 有効であるといっても, それは契約当事者間に債権的な拘束関係を生じさ せるだけにとどまり, 会社に対抗することはできないとされる。したがっ. 論. て, ある株主が契約の内容と異なる議決権を行使した場合でも, その議決 権行使は有効であって, 株主総会決議は有効に成立するとするのが多数の 見解である。この見解によれば, 契約に違反した株主に対しては, 債務不 (12)(13). 履行にもとづく損害賠償請求を行うことができるにとどまる。 (11). かつては, 議決権拘束契約の効力そのものを無効とする見解もみられ. たが (松田二郎「経済事情の変遷と株主の議決権の性質」 法協』50巻12 号, 大隅健一郎「コンツェルンの法律的組織概説 (一)」 論叢』29巻5号), 現在では有効説が通説である (大森忠夫「議決権」田中耕太郎編『株式会 社法講座 第三巻』(有斐閣, 1956年), 菱田政宏『株主の議決権行使と会 社支配』(酒井書店, 1960年), 青木英夫「議決権 (拘束) 契約」 独協法 学』1巻 (1968年, 12月))。 (12). 東京高判平成12・5・30判時1750号169頁, 名古屋地決平成19・11・12. 金判1319号50頁。なお, 前者は取締役会における議決権拘束契約の有効性 も認めている。 ただ, 損害賠償を請求する際, 具体的にどのような損害を主張・立証す べきなのかが問題となる。たとえば, 企業間で合弁会社を設立したような 場合において, 自己の指定する者が取締役に選任されないことにより当該 企業が被る損害といっても, 何がそれに当たるのか必ずしも明らかではな いとの指摘がなされている (棚橋元「合弁契約における株主間の合意とそ の効力」 ジョイント・ベンチャー契約の実務と理論』(判例タイムズ社, 2006年) 208頁)。 一方, 株主全員が契約当事者である場合には, 議決権拘束契約に違反し た議決権行使について, 決議の内容が定款に違反した場合に準じて株主総 会決議の取消しを認め (会831条1項2号), 閉鎖会社における議決権拘束 契約の利用に則した解決を図ろうとする見解がある (浜田道代『アメリカ 閉鎖会社法』(商事法務研究会, 1974年) 309頁, 江頭憲治郎, 前掲書注 (10)318頁)。 (13). 強制履行の可否については, 履行請求訴訟を提起し, 特定の議案につ. き一定方向に議決権を行使するよう命ずる判決を求めることは可能である とする見解もあるが (野村秀敏「議決権拘束契約の履行強制」 一橋論叢』 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 103( 242 ). 説.
(7) 一方, 合同会社は, 中小企業によくあるスクイーズ・アウト (少数派の (14). 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. 締出し) が生じにくい制度になっているとされる。 そこで, 本論文では, 諸外国の「有限責任の人的法人制度」として上述 の経済産業省の報告書においても取り上げられているフランスの簡易株式 . (以下 SAS という)) を素材とし 組織会社 ( par actions て, わが国の合同会社, なかでも複数の社員がおり, 社員間の出資比率が 対等ではない会社における少数派社員の保護規制についての検討を行う。 まず, 合同会社の特徴を明らかにするために, 株式会社との共通点およ び相違点について確認する (二)。次に, 比較検討の対象であるフランス の SAS とわが国の合同会社が類似する会社形態であることを明らかにす る (三)。そして, 合同会社における少数派社員の保護規制について, 社 員の業務執行 (四), および社員の退社・除名の観点から (五), SAS に おける制度と比較しながら検討する。最後に, 少数派社員の保護にも資す る解散判決について言及する (六)。. 二. 合同会社の特徴. 合同会社と株式会社はいくつかの点で共通している。両者はいずれも法 人格を有し (会3条), 社員全員が会社債権者に対して有限責任しか負わ ず (会104条・580条), 会社債権者の責任財産が会社財産のみに限られる。 また, 最低資本金規制がないこと, 社員の数に制限がなく一人会社も認め られること, 労務出資が認められない点も同じである (会576条1項6号)。. 117巻1号 (1997年1月) 26頁), 株主総会における株主の議決権行使には 株主の任意性が尊重され, 外部強制力をもって干渉すべきではないから, 契約の強制履行を請求することはできないとする見解が多数である (菱田 政宏, 前掲書注(11))。 (14). 江頭・大杉・新家・伊藤・黒田, 前掲論文注(5)7頁 (江頭発言)。. 104( 241 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(8) さらに, 非公開会社であれば, 合同会社と同様, 出資比率とは異なる利益 の分配が可能である (会109条2項, 622条)。. 論. 一方, 合同会社と株式会社の社員および債権者保護に関する規制につい ては差異もある。この点について立法担当者は次のように説明している。 すなわち, 株式会社については, 不特定多数の者が, 特に法的知識, 交渉 能力, 資金力等を有しない場合であっても, 容易にその社員となり, また は取引することができるようにするために, 株式会社をめぐる利害関係者 の利益を法律によって事前・事後にわたって手厚く保護することが望まし いという観点から, 規制の合理性を根拠づけることとしている。もっとも, 株式譲渡制限会社など, 不特定多数の者が関与する可能性を自ら制限して いる株式会社については, 2005年改正前商法と比較して大幅に規制を緩 和することとしたとする。一方, 合同会社については, 株式会社のように 会社をめぐる利害関係者の利益を保護するための法規制を積極的に講じな いこととし, 当事者間で最適な利害状況を自由に設定することを可能とす (15). ることにより, その事業の実施の円滑化を図っているとする。 このような立法政策的な区別をすることにより, 合同会社は以下のよう な特徴を有する。 (16)(17). ① 株主総会のほか, 取締役の設置 (会326条1項) も不要である。した がって, 社員の過半数により意思決定し, 各社員が業務を執行するか (会590条), または業務執行社員に決定と業務執行を委任することも 相澤哲・郡谷大輔「新会社法の解説 持株会社」 商事法務』1748号 (2005年11月) 12頁。. (15) (16). 非公開会社においては, 取締役会の設置を要せず (会327条1項1号),. 大会社でない場合には監査役の設置も要しない (会327条2項 ・3項・328 条2項)。 (17). 合同会社においては, 機関設計は完全に自由であるとする見解がある. (宍戸善一「持分会社」 ジュリスト』1295号 (2005年8月) 115頁)。 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 105( 240 ). 説.
(9) (18). できる (会591条)。 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. ② 会社代表権は社員により行使される (会599条)。 ③. 持分の譲渡には原則として社員全員の同意を要する (会585条1項)。. ④ 定款に定めることにより, 出資比率とは異なる損益分配の割合を決め (19). ることができる (会622条)。 ⑤ 定款の変更には原則として社員全員の同意を要する (会637条)。 ⑥ 会計監査人の設置義務 (会328条2項), 決算公告義務 (会440条) が (20). ない。 ⑦ 現物出資について, 検査役の選任 (会33条) を要しない。 また, 設立登記の際に納付する登録免許税の最低額は, 株式会社の場合 は資本金が1円であっても15万円であるのに対し, 合同会社の場合は6. (18). 合同会社では社員以外の者に業務執行を委ねることはできないが, 法. 人業務執行社員 (会598条) を用いれば, 社員以外の自然人を業務執行者 とすることができる (宍戸善一, 前掲論文注(17)112頁)。 (19). 出資比率に応じない柔軟な利益の配当は, 多額の損失を抱える社員に. 対して分配を多くし, 次期には別の社員に分配を多くするといった租税回 避行為に利用されるなど, 社員間の贈与税対策や同族会社の行為計算の否 認規定が適用されることになるので, 経済的合理性に基づいた分配に注意 すべきであるとする指摘がある (葭田英人「合同会社の意義と問題点」 神奈川法学』39巻 2・3 号 (2007年3月) 10頁)。同様の指摘は, 登坂純 一「持分会社」 税経通信』60巻14号 (2005年11月) 273頁においてもなさ れている。 (20). 衆議院および参議院において会社法案が可決された際,「合同会社制. 度については, 今後の利用状況を観察し, 株式会社の計算等に係る規制を 逃れるために株式会社から合同会社への組織変更等が顕在化した場合は, 必要に応じ, その計算に関する制度の在り方について, 見直しを検討する こと」という附帯決議がなされていたが (会社法案に対する附帯決議13項), 現在のところ, こうした濫用目的による合同会社の設立, または株式会社 からの組織変更がなされたという顕著な例は見られないようである (関口・ 西垣, 前掲論文注(2)20頁)。 106( 239 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(10) 万円である。また, 株式会社の設立には定款認証の費用5万円が必要とな るが, 合同会社の設立には公証人による定款の認証が不要である。. 三. 合同会社と SAS の比較. 本論文に係る事項に関してわが国の合同会社とフランスの SAS が類似 する点であるが, まず機関設計が自由なことである。SAS においては, 第三者保護のために最低限社長を選任しなければならないが (商法典L. 2276条), 株主総会も含め, その他の機関の設置は任意である。合同会 社も上述のように株主総会等の機関の設置を要しない点で共通する。次に 会社の意思決定についてであるが, 後述するように (四2), SAS におい て, 会社の重要事項については社員の合議により決議され (商法典L.227 9 条2項), とくに重要な事項については社員全員の同意が必要である (商法典L.227 13条・L.227 14条・L.22716条等)。その他の事項の決 議要件および手続については定款自治に委ねられている。一方, 合同会社 における会社の意思決定は社員の過半数で行われ (会590条2項), 重要 事項については社員全員の同意により決定される (会585条1項等)。た だし, いずれの場合も定款で別段の定めをすることが認められている (会 590条2項・585条4項等)。 次に合同会社と SAS の相違点であるが, SAS においては株式の自由な 譲渡が原則であり, 社員間の人的要素を考慮する必要性の度合いにあわせ (21). て, 株式の譲渡禁止条項 (商法典L.22713条), 株式の譲渡承認条項 (22). 16条) を定 (商法典L.227 14条) および社員の除名条項 (商法典L.227 (21). 論. SAS において, 最長10年間の株式の譲渡禁止を定款に定めることが. できる。このことにより, 社員を緊密に結び付け, 安定した会社の中心的 なグループ (noyau dur) の形成が可能となる。 (22) SAS において, すべての株式譲渡について, 会社の事前承認を要する 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 107( 238 ). 説.
(11) 款に定めることができる。一方, 合同会社においては, 持分の譲渡は他の 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. 社員全員の同意を要し, 持分譲渡の自由が制限されている (会585条1項) (ただし, 業務を執行しない社員は, 業務執行社員全員の同意があれば持 分を譲渡できる (同条2項))。その代わり社員からの一方的告知による任 意退社が認められているが (ただし, 会社の存続期間を定款で定めた場合 には, やむを得ない事由が生じた場合を除き, 自己の意思で退社すること はできない (会606条1項・3項)), 任意退社を制限する定款の定めを置 くことが認められている (同条2項)。. 四. 社員の業務執行権. 1 少数派社員の業務執行権の確保 閉鎖的な会社においては, 社員は自己の経営権を確保することが重要と なる。というのは, 閉鎖型の中小企業においては, 経営者としての報酬が 剰余金の配当に代わる機能を果たすことが多いので, 経営者の地位から排 除された社員 (株主) は, 経済的困難に直面する可能性が高いからであ (23). る。 この点についてみれば, 合同会社は所有と経営の一致を原則としている ことから, 社員は原則として全員業務執行者であるため (会590条1項), (24). 少数派の締出しが生じにくいとされる。もっとも, 定款に定めることによ. 旨を定款に定めることができる。わが国の譲渡制限株式 (会2条17号) と 同様の制度である。株式の譲渡承認条項は, 会社の競争相手の入社を阻止 すること, または各社員の持株比率を管理することで, 特定の株主の権限 が増大するのを防ぐことを目的とする。会社の承認が必要となるのは, 第 三者への譲渡に限られず, 社員間の譲渡の場合も含まれる。 株式の譲渡承認の手続については定款自治に委ねられており, 承認を決 定する機関, 多数決要件, 譲渡承認請求の方法を定款に定める必要がある。 (23). 江頭憲治郎, 前掲書注(10)419頁。. 108( 237 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(12) り, ある社員を業務執行者としないとすることも可能である (会591条)。 ただし, このような定めを会社設立時に原始定款に定めるか, または設立. 論. 後に定款を変更して定めるか, いずれの場合も原則として社員全員の同意 が必要であり (会575条・637条), 当然業務執行権を失う社員の同意も要 する。. 説. 2 業務執行の決定権 合同会社 合同会社においては, 持分の譲渡 (会585条), 入社 (会604条), 定款 変更 (会637条), 組織変更 (会781条), 合併・分割 (会793条・802条・ 813条) などの重要事項については, 社員全員が同意することが原則であ (25). る。これは, 合同会社は全員有限責任の企業組織であるが, 内部関係につ いては株式会社的規律ではなく, 組合的規律が適用され, 原則として全員 一致で会社のあり方を決めるという思想を表現しているからであるとされ (26). る。ただし, 全員の同意はあくまでデフォルト・ルールであり, 定款で別 (27). 段の定めをすることができる。したがって, たとえば, 社員の過半数とす. (24). 江頭・大杉・新家・伊藤・黒田, 前掲論文注(5)7頁 (江頭発言)。. (25). 法律上, 事業譲渡等, 会社の基礎に関する行為で社員全員の同意を要. するとされていない事項について, 会社法637条を適用または類推適用す べきかどうかについては明らかではない (江頭・大杉・新家・伊藤・黒田, 前掲論文注(5)20頁 (大杉, 江頭発言))。 (26). 宍戸善一, 前掲論文注(17)110頁。. (27). 合名会社における定款変更に関する平成17年改正前商法17条について,. これを任意法規であるとして, 社員の多数決による旨の定款の定めも有効 であると解するのが通説であった (米沢明「17条」上柳克郎・鴻常夫・竹 内昭夫編『新版注釈会社法』(有斐閣, 1985年) 236頁, 大隅健一郎・今 井宏『会社法論 (上)』(第3版) (有斐閣, 2001年) 86頁, 田中誠二『三 全訂 会社法詳論 (下)』(勁草書房, 1994 年) 1211頁)。判例 (大判大 5・ 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 109( 236 ).
(13) ることのほか, 業務執行社員の過半数とすること, 特定の業務執行社員へ (28). 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. の委任等も認められる。もっとも, このような定款の定めを置くためには, 社員全員の同意を要する (会637条)。. SAS SAS において, ①社員全員の同意を要する事項と, ②社員の合議によ る決議 ( collective) を行うことが義務づけられている事項がある。 他の事項については, 定款に定めることにより, 社員の合議により決議す ることができる。 まず①の事項であるが, 株式の譲渡禁止条項 (商法典L.227 13条), 株式の譲渡承認条項 (商法典L.227 14条), および社員の除名条項 (商 法典L.227 16条) を定款に新たに定めるとき, または定款の内容を変更 するときは, 多数決による決議は定款をもってしても認められず, 社員全 員が同意しなければならない (商法典L.22719条)。また, 一般法上, SAS から人的会社に組織変更する場合のように, 社員の義務が増加する 場合 (民法典1836条2項), および, 会社の国籍を変更する場合も社員全 員の同意を要するとされている。一方, 清算人の選任 (商法典L.237 18 。 条Ⅱ 6 ), 任期の更新 (商法典L.23721条), 解任および交替 (remplacer) (商法典L.237 22条), 清算中および清算終了時の年次計算書類の 。 承認 (商法典L.23727条Ⅰ 3 ), 必要な許可の付与, 検査役・会計監査 5・30民集9巻1031頁) も, 定款に定めることにより, 社員総会の決議に より定款を変更できると判示していた。会社法637条が定款変更の要件を 定款により緩和することを明示したことは, このような判例・通説の解釈 に沿ったものである (川島いづみ「人的会社に関する改正と新たな会社類 型の創設」 判例タイムズ』1158号 (2004年11月) 10頁)。 (28). 相澤・郡谷, 前掲論文注(15)23頁。他に, 資本多数決によることも可. 能であるとされる (宍戸善一, 前掲論文注(17)111頁)。 110( 235 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(14) 人・監査委員会構成員の権限を必要がある場合に一新する決定については, 原則として, 社員全員の同意を得なければならないが, 定款に定めること (29). 論. により, 多数決により決議することもできるとされる。 次に②に該当するものは, 資本の増加・償却・減少, 会社の合併・分割・ 解散, 他の形態の会社への組織変更, 会計監査人の選任, 年次計算書類お よび利益処分である (商法典L.227 9 条2項)。SAS の社員は, 定款変更 または組織再編に関して決議する全般的な権限を有しているわけではない。 したがって, 社員は, 法により社員の管轄に属するとされていない事項に (30). ついては原則として決議することができず, 会社の存続期間の延長, 会社 住所の変更, 会社の目的の変更などは定款の変更を伴うが, 社員が合議に より決議する必要はない。社債の発行, 社長の選任および解任についても 同様である。 社員の合議による決議の手続と要件については, 一部の法定事項につい て社員全員の同意が必要されていることを除き, 定款に委ねられている。. このように, 合同会社においても, SAS においても, 会社の重要事項 については社員全員の同意が必要である。したがって必ず少数派社員の同 意を要し, 少数派社員の意思が反映されやすくなる。反面, 少数派社員が 反対する限り重要事項を決定することができなくなり, デッド・ロック状 態に陥る危険もある。そのような事態に直面した場合には, 少数派社員が 採りうる措置として退社もしくは多数派社員の除名が考えられる。そこで, 次に, 社員の退社と除名についての検討を行う。. commerciales, 2011, p. 874, n60512. (29) Francis Lefebvre, (30). フランスにおいて, 会社の存続期間は99年を超えることができない. (商法典L.210 2 条)。 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 111( 234 ). 説.
(15) 五 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. 社員の地位. (31). 1 社員の退社 合同会社 合同会社においては, 社員の個性が重視されるため, 持分の譲渡が制限 されており, 持分を譲渡する際には原則として社員全員の同意を要する (32). (会585条1項)。もっとも, この要件は緩和することができ (四2参照), (33). 一定の場合には社員の同意を要しないとすることも可能であるとされる。 一方, 後述するように, 合同会社の社員は退社による投下資本の回収が 可能であることから, 買取価格またはその算定方法等を定款で自由に定め (34)(35). ることができるとされ (会585条4項), 持分の譲渡に関する定款自治の. (31). 退社は, 社員たる資格が絶対的に消滅する点において, 持分の全部譲. 渡と区別されている (古瀬村邦夫「84条」上柳克郎・鴻常夫・竹内昭夫編 『新版注釈会社法』(有斐閣, 1985年) 303頁)。 (32). 非業務執行社員の持分の譲渡には業務執行社員全員の同意があれば足. りる (会585条2項)。 (33). 井上健一「585条」江頭憲治郎・中村直人編『論点体系 会社法4』. (第一法規, 2012年) 387頁, 江頭・大杉・新家・伊藤・黒田, 前掲論文注 (5)14頁 (黒田発言)。 (34). 宍戸善一, 前掲論文注(17)113頁, 井上健一, 前掲書注(33)387頁。 なお, 株式会社において, 定款で先買権者をあらかじめ指定することは. 可能となったが (会140条5項), 買取価格については原則として当事者の 協議によって定めることとされ (会144条), 定款に定めることは認められ ていない (買取価格について当事者間で合意できなかった場合には, 裁判 所が価格を決定する)。 (35). たとえば, 実務でもっとも利用されている先買条項の対外的執行力を. 確実にすることができれば, 株主間契約の法的不安定性の解消につながる ため (江頭憲治郎・森本滋・相澤哲・永井智亮「座談会 会社法の現代化 に関する要綱試案をめぐって」. 商事法務』1685号 (2004年1月) 26頁 (相. 澤発言)), このことにより, 合弁事業における合同会社の利用可能性が期 112( 233 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(16) (36). 範囲は株式会社よりも広い。 なお, 持分の譲渡により社員の持分の増減, 社員の退社または入社が生. 論. ずるため, 定款を変更しなければならないが (会576条1項4号 ・6号), 合名会社・合資会社と異なり, 社員の氏名は登記事項ではないため, 変更 登記の必要はない (会909条・912条5号・913条5号)。. 合同会社における退社には, 法定退社 (会607条), 社員からの一方的 告知による任意退社 (会606条), 持分差押権者による退社 (会609条) が ある。このうち任意退社については, 退社を制限する旨を定款に定めるこ (37). とができるが (会606条2項), その場合であっても, 社員は「やむを得 ない事由」があればいつでも退社することができる (同条3項)。 任意退社は, 合同会社において持分の譲渡が制限されていることから, (38). 投下資本の回収のため, 持分全額の払戻しを保障するものであり, 退社し た社員は, 会社財産に強制執行を行ってでも持分全額の払戻しを受けるこ (39). とができる。このような退社制度は, 非公開会社を含め, 株式会社におい 待できるとする (武井一浩, 前掲論文注(6)22頁)。 (36). 株式・持分の譲渡に関する定款自治の範囲が株式会社においてはなお. 限られることが, 実務上は制約と感じられているようであるとされる (大 杉謙一「合同会社」 法学教室』304号 (2006年1月) 89頁)。 (37). 入社後一定期間 (たとえば10年間) は任意退社をすることができない. とする旨を定款に定めることが有効であるかどうかが問題となるが, 会社 の存続期間を定めなかった場合であっても, このような定款規定を定める ことは可能であるとされる (相澤・郡谷, 前掲論文注(15)19頁)。 (38). 江頭憲治郎「 会社法制の現代化に関する要綱案』(Ⅷ・完)」 商事法. 務』1729号 (2005年4月) 8頁。 (39). 江頭憲治郎, 前掲論文注(38)9頁。 持分払戻額が簿価純資産額を超える場合には, 清算に準じた債権者保護. 手続を経ることにより, 社員に持分を払い戻すことができる (相澤・郡谷, 前掲論文注(15)23頁)。 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 113( 232 ). 説.
(17) ては認められていない。 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. もっとも, 退社の自由を広く認めることは, 会社の継続性という観点か ら問題となり得る。実務上, 大きな持分を有する社員が退社した場合, 会 社を解散しなければならない事態も生じ得るし, 投資ファンドが合同会社 を用いる場合には, 退社する社員に持分を払い戻すために合同会社の資金 (40). 運用が制約されることはあまり好ましいものではないからである。そこで, 定款をもってどこまで退社の自由を制限することができるかが問題となる。 この点について, 持分の譲渡または退社のいずれかの方法で投下資本を 回収する機会が確保されていれば足り, 先買権制度のような持分の譲渡制 (41). 限の仕組みを作り, 持分の譲渡による投下資本の回収が可能である場合に は, 定款で退社が認められる要件を相当程度制限することは可能であると (42). する見解がある。さらに, 社員が出資をなす前に十分な周知がなされたの であれば, 真にやむを得ない事情がある場合を除き, 退社は認められない (43). とする見解もある。 (40). 大杉謙一「LLC 制度の導入」 企業会計』56巻2号 (2004年2月) 65. 頁。 (41). 社員の氏名・名称および住所は定款の絶対的記載事項であるので (会. 576条1項4号), 持分の譲渡等による社員の変動には定款変更が必要にな るが, 定款所定の譲渡承認手続が終了した場合に, 社員の変動に伴う定款 変更を代表社員に一任することを定めておくことは可能であり (四2参 照), このような工夫によって, 先買権制度を導入することの障壁を除去 することができるとする (宍戸善一, 前掲論文注(17)111頁)。 (42). 宍戸善一, 前掲論文注(17)113頁。. (43). 江頭・大杉・新家・伊藤・黒田, 前掲論文注(5)17頁 (新家発言),. 大杉謙一, 前掲論文注(40)64頁。 反対に, 退社の自由が法定されていることから, 持分の譲渡を一切許さ ないとすることや, 持分の譲渡に法定の要件に加えて一定の要件を加重 する旨の定款の定めを置くことも可能であるとする見解がある (太田穰 「持分会社の社員の加入と退社」江頭憲治郎・門口正人編『会社法大系1』 114( 231 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(18) また,「やむを得ない事由」をどこまで認めるかという問題についてで (44). あるが, かつては,「やむを得ない事由」は退社しようする社員の一身に. 論. 関するものでなければならず, 他の社員の不誠実や事業の不振などの会社 (45). 自体についての事情は含まないとされていたところ, 退社しようとする社 員を中心とするすべての事情を斟酌すべきであるとする見解も有力であ (46). る。会社法の立法担当者は,「やむを得ない事由」とは, 社員が単に当初 の意思を変更したというだけでは足りず, 定款規定を定めた時や入社・設 立時に前提としていた状況等が著しく変更され, もはや当初の合意どおり (47). に社員を続けることができなくなった場合等がこれに当たるとする。. SAS 退社に関して, SAS 法に明確な規定はないが, 定款に退社の要件と方 法を定めた場合, 社員は退社することができるとされている。退社条項は, SAS が企業間の持続的な協力の手段として導入されたことにかんがみて, その目的に反すると思われる可能性もあるが, 後日会社から解放される機 会を社員に付与することが, 入社の条件とされる場合もある。 定款に定めるべき要件として, 退社できる社員の範囲 (全社員または一 部の社員), 退社の時期 (いつでも, または一定の期間以降), 退社事由 (青林書院, 2008年) 366頁)。 (44). 合名会社の社員に退社が認められているのは, 社員の負担する危険が. きわめて大きいため, その意思に反して会社に拘束するのは適当ではない からであるとされる (古瀬村邦夫, 前掲書注(31)304頁)。対して, 社員が 有限責任のみを負う合同会社においては,「やむを得ない事由」の範囲は 合名会社の場合よりも狭くなるとする (大杉謙一, 前掲論文注(40)65頁)。 (45). 大隅・今井, 前掲書注(27)95頁。. (46). 江頭・大杉・新家・伊藤・黒田, 前掲論文注(5)17頁 (大杉発言),. 古瀬村邦夫, 前掲書注(31)307頁。 (47). 相澤・郡谷, 前掲論文注(15)19頁。 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 115( 230 ). 説.
(19) (当事者の裁量または一定の事由が生じた場合のみ) がある。退社の方法 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. によって,「株式の買取条項 (clause de retrait)」と「社員の共同退社条項 (clause de sortie conjointe)」を定款に定めることができるとされている。 「株式の買取条項」は, ある社員が, 会社または他の社員に自己の保有 する株式を買い取ってもらうことにより, 会社を退社することができると (48). いうものである。買取条項を定款に定めた場合は, 社員の裁量による買取 権の行使を防ぐために, 定款に権利行使の要件を定める必要がある。 「社員の共同退社条項」は, 特定の社員 (一般に多数派) が株式の一部 またはすべてを譲渡する場合, 当該株式の譲受人が他の社員 (一般に少数 派) の株式も買い取ることを少数派社員に対して申し出るようにする義務 を多数派社員が負うというものである。共同退社条項を定款に定めること により, 少数派社員は, 原則として, 多数派社員が予定している譲渡価格 と同額で株式を譲渡することができるため, 少数派社員にとっては金銭的 に良い条件で退社することが可能となる。反面, 多数派社員にとっては株 式の譲渡に対する制約となりうる。. 2 社員の除名 合同会社 法定退社のうち, 除名による退社 (会607条1項8号) については, 法 定の除名事由がある場合に, 他の社員の過半数の決議に基づき, 裁判所の 判決によって行われる (会859条)。. (48). SAS に限らず, 一般的に, 特別な場合を除き, 定款に買取条項を定. めることが時宜にかなっていることはめったにないと指摘されている。 少数派に会社を不安定にさせる手段を与えることになるからである (Yves Guyon, Les .
(20). . statutaires et conventions entre 5e 1993, p. 200, n119)。 116( 229 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(21) 定款による除名事由の追加・縮小や除名手続の変更の可否について, 会 (49). 社法859条は強行法規であると解する見解が多数説である。. 論. (50). SAS. SAS 法は, 会社にとどまるという社員の権利を制限することができる 場合を規定しており, そのうちの一つが, 社員が株式を譲渡する義務を負 う, すなわち除名される可能性があることを定款に定めることができると (51). いうものである (商法典L.227 16条1項)。具体的な除名事由および除 名手続については法定されておらず, 定款に定めなければならない。. ① 除名事由 会社は除名事由を定款に自由に定めることができるが, 客観的, かつで (49). 古瀬村邦夫「87条」上柳克郎・鴻常夫・竹内昭夫編『新版注釈会社法. 』(有斐閣, 1985年) 332頁。 東京地判平成 9・10・13判タ977号238頁は, 合資会社の事案について, 「社員は他の社員の過半数の決議により退社する」と定めた定款の規定に 基づいて社員の退社の決議をしたところ, 当該定款規定は退社事由が具体 的に特定されておらず, 当該定款規定によれば, 2005年改正前商法86条1 項各号所定の事由が存在せず, 単に他の社員との間に対立があるというだ けでも他の社員の過半数の決議だけで当該社員を退社させることができる ことになり, このような定款の定めは2005年改正前商法86条1項の規定を 潜脱し, その趣旨に反するものであって, 無効というべきであると判示し た。 (50). SAS における定款による社員の除名については, Michel Germain et. Pierre-Louis L’exclusion statutaire des . de SAS, Bull. Joly, 2010, p. 1016 を参照。 (51). フランスの株式会社において, 株主が引き受けた株式の払込金額の不. 払いの場合に, 当該株主を除名することができる (商法典L.228 27条) (山口幸五郎・加藤徹「フランス新会社法 (七)」『阪大法学』76号 (1968 年11月) 231頁)。 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 117( 228 ). 説.
(22) (52). きるだけ明確に定めなければならない。したがって, 社員が絶え間なく除 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. 名に脅かされることを防止するために, いつでも任意に除名すること, 換 (53). 言すると, なんの理由もなく除名することはできない。 具体的な除名事由は法律上および判例上明らかではないが, 社員間に不 和が生じたことにより, 会社の継続を不可能にするものとして, 深刻な意 見の対立, 決議の行き詰まり, 会社経営への無関心, 増資・組織変更・解 散を決議する際の議事妨害, 会社の存続期間の延長決議に対する反対など がある。また, 社員に帰責事由がある場合として, 定款または法令違反行 為, 会社経営における判断の誤り, 競業取引または不正競争を行った場合, .
(23) ) に違反した場合, 会社を中傷した場合, 独占義務 (obligation 会社の利益・評判またはブランドイメージを毀損した場合がある。 ② 除名手続 定款に定めるべき除名手続として, 除名を決定する機関 (社員の合議, 会社の発起人のような特定の社員, 専門の委員会, 指揮者, 合議制の指揮 (54). 機関 (取締役会, 業務執行役員会) または監督機関 (監査委員会)), 決議 (55). に必要な多数決要件, 除名後会社を退社するまでの期間, 除名社員が会社. (52). アフェクティオ・ソキエタティスの喪失, または, 単なる社員同士の. 不和というような曖昧な除名事由は認められない。. SAS: La par actions 4e
(24) 2010, p. (53) Pierre-Louis
(25) 208, n377;
(26) Azarian, La par actions 2e
(27) 2007, p. 116, n186. (54). 社員間に対立がある場合には, 仲裁者である第三者に決定を委ねるの. が効果的である。 (55). 除名が決定されたにもかかわらず, 除名社員が株式の譲渡を拒否す. る事態に備えて, 当該社員に対する措置を定款に定めることが認められ ている。すなわち, 社員の除名の決定後, 当該社員が株式の譲渡を拒否 した場合には, 定款に定めた要件において, 議決権, 情報収集権 (droit d’information) などの非経済的権利を一時停止することができる (商法典 118( 227 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(28) または第三者との間で締結していた契約の動向などがある。 ③ 除名社員の議決権. 論. 社員の除名を社員の合議により決議する場合, 除名を検討されている社 員は決議に参加できないと定款に定める場合があった。このような定款条 項を認めなければ, 多数派社員は常に除名を免れ, 少数派社員の退社を強 いるためにのみ除名条項が利用されることになる恐れがあるからである。 除名を検討されている社員から議決権を奪う定款条項の有効性については, 学説上見解が分かれていたが, 破毀院はこのような定款条項は無効である (56). とした。. 六. 解散判決. 少数派社員が退社するにせよ, 多数派社員を除名するにせよ, これらの 場合には会社が継続することを前提としている。一方で, 解散判決 (会 833条2項) により少数派社員の利益を守ることができる場合がある。解 散判決は, 会社が営業廃止またはそれに近い状態に追い込まれた場合ばか りでなく, 社員間の不和対立が深刻で信頼関係が破綻している場合にも認 められることがあるが, やはり問題解決の最終的な手段であって, 退社や 除名によって事態の打開が可能である限り, 解散請求は認められないと考 L.227 16条2項)。 (56). Cass. com., 23 oct. 2007, Bull. civ., Ⅳ, n225 は, 民法典1844条1項に. より, すべての社員は合議による決議に参加し, 投票する権利を有してお り, 定款は, 法定されている場合においてのみ, 民法典1844条1項の適用 を除外することができること, また, 商法典L.227 16条は, 社員の除名 を社員の合議により決議する場合, 除名を提案されている社員から, 決議 に参加し, および投票する権利を奪うことを定款に定めることを認めてい ないと判示した。本判決の詳細な検討については, 拙稿「フランス簡易株 式組織会社 (SAS) における株式譲渡に関する定款自治の拡大と限界 (一)」 佐賀大学経済論集』42巻4号 (2009年11月) 75頁を参照。 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 119( 226 ). 説.
(29) えられる。ただし, 会社業務が一応困難なく行われており, しかも退社と 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. いう方法が残されているときでも, 解散請求が認められた事案がある。 最判昭61・3・13民集40巻2号229頁は, 合名会社の事案について, 会 社業務が一応困難なく行われているとしても, 会社の「業務の執行が多数 派社員によって不公正かつ利己的に行われ, その結果少数派社員がいわれ のない恒常的な不利益が被っているような場合にも, また, これを打開す る手段のない限り, 解散事由があるものというべきである」と判示した。 合同会社の場合にも, たとえば, 社員間の不和対立から一方の社員が退社 しようとするときに, 会社が適切な債権者保護手続をとらないために, 退 社による持分の払戻しに長期間を要したり, 適切な払戻しを受けられない ような場合には, 業務執行者の責任問題とは別に, 退社しようとする社員 (57). には, 解散判決を請求するやむを得ない事由があるとする見解がある。. 七. おわりに. 2005年の会社法施行により導入された合同会社制度であるが, 当初予 想されたほどその設立数は増えていない。合同会社の利用を妨げる要因と してはいくつか考えられるが, まず, パススルー課税が認められなかった (58). ことが挙げられる。次に, 機関設計や損益分配の柔軟性など, 会社法施行 前の株式会社では認められなかった合同会社の特徴は, 会社法施行により 株式会社について広く許容されたため, あえて合同会社を選択するインセ (59). ンティブがあまり大きくないということもある。さらに業務執行社員の有 (57). 川島いづみ, 前掲論文注(27)9頁。清算手続後, 退社員は残余財産の. 分配を受けることになる (相澤・郡谷, 前掲論文注(15)23頁)。 (58). 合同会社の税制としてペイスルー課税の導入を検討すべきであるとす. る見解がある (葭田英人, 前掲論文注(19)23頁)。 (59). 関口・西垣, 前掲論文注(2)20頁, 江頭・大杉・新家・伊藤・黒田,. 前掲論文注(5)36頁 (黒田発言)。 120( 225 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(30) (60). 限責任性の問題も合同会社の利用しづらさの一因であるとされている。こ のようにいまだ課題の多い合同会社制度であるが, 少数派社員の保護とい. 論. う観点から, 有用な会社形態ではないかという点について, フランスの SAS 制度と比較しながら検討を行った。 合同会社の社員には一方的告知による任意退社が認められているが (会 (61). 606条), 定款をもって退社を制限することができる。ただし,「やむを得 ない事由」があれば社員はいつでも退社することができ, 多数派社員と少 数派社員の対立が激しく, デッド・ロック状態に陥った場合には,「やむ を得ない事由」に該当し, 少数派社員は退社することができると考えられ る。また, 社員の除名には裁判所の関与が求められており (会859条), (60). 合同会社は有限責任法人であるが, 実際には有限責任社員が業務執行. を行う場合, 第三者に対して善管注意義務を負うため (会597条), その有 限責任には事実上の制約を伴う。すなわち, 株式会社が子会社を合同会社 として設立する場合, 合同会社は社員でなければ業務執行権限を持ち得な いので (会590条・591条1項), 親会社が子会社の経営を支配するには, 親会社が自ら業務執行・有限責任社員となるしかない。その場合, 親会社 は, 子会社の債権者から, その業務執行に関する善管注意義務違反を理由 に損害賠償責任 (直接無限責任) を追及される可能性がある。この点, 当 該親会社は職務執行者を選任する必要があり (会598条1項), 当該職務執 行者にも同様の対第三者責任を負うリスクがあるが (会598条2項・597条), 職務執行者が選任されたからといって, 当該親会社の対第三者責任を免責 する規定は会社法には存在しない。このような親会社の責任負担リスクを 考慮すれば, 一定規模の日本企業が子会社を設立する場合, 合同会社を選 択することはほとんどないのではないかと思われる。この問題は, 合同会 社が, 所有と経営の一致を前提とした持分会社として導入されたことに起 因するものと考えられるとされる (関口・西垣, 前掲論文注(2)20頁)。 (61). 持分の譲渡と社員の任意退社は, いずれも投下資本の回収の機会を社. 員に付与するという趣旨から定められたものであるが, その要件は異なる ため, いずれかを全くあるいはほとんど認めないことは定款をもってして も認められないと考えられる。一方で, 社員が有限責任のみを負う合同会 社においては, 会社債権者の利益をも斟酌する必要がある。 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 121( 224 ). 説.
(31) 少数派社員が容易に除名される可能性は低いことから, 少数派社員の締出 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. しという事態を招くことはないであろう。もっとも, フランスの SAS の ような定款による社員の除名を認めることも検討に値するのではないかと 考えられる。SAS において, 除名事由および除名手続については定款に 定めなければならず, その内容を変更する場合には社員全員の同意を要し, 定款をもってしても多数決によることはできないことから (商法典L.227 19条), 少数派社員に一方的に不利益になるような除名条項が定款に定 められる危険は少ないと考えられる。また, 除名を決定する機関について, 社員間の対立がある場合には第三者に決定を委ねる, または社員の多数決 により決定する場合には, 1人1票とすることにより, 少数派社員が多数 派社員を除名することが可能な場合もあり得る。 会社の業務執行についてみれば, 定款変更 (会637条) 等の重要事項に ついては社員全員の同意を要し, 社員全員が業務執行者であることは (会 590条1項), 少数派社員が会社の経営に関与できるという点で合同会社 制度の利点である。もっとも, 全員の同意はデフォルト・ルールであり, 定款に定めることにより要件を緩和することができ, また, 定款に定める ことにより, ある社員を業務執行者としないことも可能である。 以上のように, 合同会社においては, 定款自治に委ねられている事項も 多いが, 合同会社の本質または強行規定に反する定款変更はなしえないと (62). されており, 合同会社についても, 合同会社の本質または強行規定がなに (63). かを確立しておくことが重要である。そこで, 合同会社における定款自治 の限界の根拠が問題となる。 従前, わが国では, 定款自治を制限する根拠として, 株主平等原則が頻. (62). 合名会社におけるこの点について, 米沢明, 前掲書注(27)237頁。. (63). 川島いづみ, 前掲論文注(27)10頁。. 122( 223 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(32) (64). 繁に登場するが, わが国の株式会社については, 商法に具体的な定めのな い事項または立法論の領域において, 株主平等原則の観念が必要以上に定 (65). 論. 款自治を制約してきたと指摘されている。 法律上, 合同会社を含む持分会社の定款には, ①会社法の規定により定 款の定めがなければその効力を生じない事項, ②その他の事項で会社法の 規定に違反しないものを記載し, 又は記録することができる旨が定められ (66). ている (会577条)。株式会社についても同一の規定が置かれており (会29 条), このうち①は, 法律の規定に基づき定款で定めを置く事項を, ②は 法律に定めがない事項について, 法律とは無関係に定款で一定の事項を定 めるものを意味し, これらのもの以外について定款の定めを置くことは許 (67). されないというのが, 株式会社に関しての立法担当官の解釈である。ただ し, 持分会社に関してはこの旨の説明はされておらず, かえって定款自治 (64). 宍戸善一「定款自治の範囲の拡大と明確化」 商事法務 1775号 (2006. 年8月) 58頁。 (65). 江頭憲治郎, 前掲書注(10)54頁。 このような指摘に対し, 株主平等原則が株式会社における定款自治の制. 約原理として従来の少数株主保護論の範囲をカバーする機能を有し, さら に会社法の条文にその機能を有することから, 大規模な株式公開会社と小 規模な閉鎖型のタイプの会社でそれぞれ課題に応じて少数株主保護機能を 果たすことができる実務適用性の高い原理であることを主張する見解があ る (田邉真敏『株主間契約と定款自治』(九州大学出版会, 2010年) 328頁)。 (66) 定款に何が書けるかという問題は, 原始定款 (または全員一致の修正) で何が書けるか, あるいはそれでも書けないものは何かという問題と, 多 数決による修正で何が書けるか, あるいは, 多数決原則の限界は何かとい う問題に分けて考える必要がある。従来, わが国では両者を分けて議論す ることが少なかったが, 全員一致を原則とする合同会社の制度の導入は, この区別の重要性を認識させるものであるということができると指摘され ている (宍戸善一, 前掲論文注(64)17頁)。 (67). 相澤哲・岩崎友彦「会社法総則・株式会社の設立」 商事法務』1738. 号 (2005年) 12頁。 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 123( 222 ). 説.
(33) (68). を原則として許容する趣旨の説明がなされているとし, 定款自治の範囲に (69). 合 同 会 社 に お け る 少 数 派 社 員 の 保 護. 関する立法担当官の解釈は持分会社には当てはまらないとされている。 (70). このように, 株式会社と持分会社では定款自治の範囲が異なっており, 持分会社の方が株式会社よりも定款自治の範囲が広いが, 常に持分会社法 に違反しない限りで認められるものであり, 解釈上導かれる原理等に基づ (71). く制約があり得るとされている。. 本論文は, 科研費 (22730088) の助成を受けたものである。. 加藤先生が関西学院大学法学部に着任された年に, 加藤先生のゼミに入 り, それ以来, 時には厳しく, また根気よく御指導いただき, ありがとう ございました。不肖の弟子ではございますが, 今後ともご指導, ご鞭撻の 程, よろしくお願いいたします。. (68). 相澤・郡谷, 前掲論文注(15)23頁。. (69). 大杉謙一, 前掲論文注(36)86頁。. (70). 定款自治の認められる範囲は, 最終的には, ヴィークル属性よりも当. 事者の属性 (private equity fund, joint venture, family-owned business) に依 存すると指摘する見解がある (柳明昌「定款規定の有効性」 法律時報』 80巻11号 (2008年10月) 30頁)。 (71). 今泉邦子「持分会社」奥島孝康・落合誠一・浜田道代編『新基本法コ. ンメンタール』(日本評論社, 2010年) 7頁。 この点について, 合同会社においては, 出資者の自己責任による組織と の位置づけを重視し, 契約法理に照らして自治の限界が判断されるべきで あるとし, その契約法理として関係的契約モデルを挙げ, 当該モデルが無 制約な自治から生ずる問題に対処できる規範理論となり得るとする見解が ある (田邉真敏, 前掲書注(65)349頁)。 124( 221 ). 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月).
(34) Protection des minoritaires dans les “godo kaisha”. 論. Mimoe KONISHI 説. Au Japon, en 2005, une nouvelle loi sur les a .
(35). qui a une nouvelle forme de
(36) “godo kaisha”. Les “godo kaisha” sont une forme
(37) .
(38) de personne morale, dans lesquelles la
(39) des est
(40) . au montant leurs apports respectifs. Le mode d’organisation interne e aux “godo kaisha” son . .
(41) par rapport l’entreprise “kabushiki kaisha”. Certains estiment que les “godo kaisha” peuvent . utiles aux minoritaires parce qu’en premier lieu ils conservent le pouvoir de gestion ou de direction de la . Autrement dit, en principe, tous les sont dirigeants et certaines .
(42) . . importantes, comme par exemple la cession d’actions, ou la modification des statuts, doivent . prises
(43) . des . En . lieu, dans les “godo kaisha”, si on se retrouve dans une configuration provoquant un blocage des prises de , un des peut quitter la . De plus, il n’est pas impossible pour un minoritaire d’exclure un autre de la si ce dernier est majoritaire. Ainsi, la contractualisation de l’organisation dans les “godo kaisha” permet d’inscrire dans les statuts des droits les minoritaires.. 法と政治. 63 巻 1 号. ( 2012 年 4 月) 125( 220 ).
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