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カルコパイライト型半導体AgGaTe2薄膜の作製と光学的評価

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(1)

平成

平成

平成

平成

23

年度

年度

年度

年度

修士学位論文

修士学位論文

修士学位論文

修士学位論文

カルコパイライト

カルコパイライト

カルコパイライト

カルコパイライト型半導体

型半導体

型半導体

型半導体

AgGaTe

2

薄膜

薄膜

薄膜

薄膜の

の作製

作製と

作製

作製

と光学的評価

光学的評価

光学的評価

光学的評価

指導教員

指導教員

指導教員

指導教員

尾崎

尾崎

尾崎

尾崎

俊二

俊二

俊二

俊二

准教授

准教授

准教授

准教授

群馬大学大学院工学研究科

群馬大学大学院工学研究科

群馬大学大学院工学研究科

群馬大学大学院工学研究科

電気電子工学専攻

電気電子工学専攻

電気電子工学専攻

電気電子工学専攻

小倉

小倉

小倉

小倉

貴之

貴之

貴之

貴之

(2)

目次

目次

目次

目次

第 第 第 第111章1章章 章 序論序論序論序論... 6 1.1 研究研究研究の研究ののの背景及背景及び背景及背景及びびび目的目的目的目的... 6 第 第 第 第2章章 章章 実験方法及び実験方法及実験方法及実験方法及びびび解析方法解析方法解析方法解析方法... 7 2.1 分光分光分光エリプソメトリー分光エリプソメトリーエリプソメトリーエリプソメトリー((((SE::::Spectroscopic Ellipsometry))))測定測定測定測定... 7 2.1.1 分光分光エリプソメトリー分光分光エリプソメトリーエリプソメトリーエリプソメトリーについてについてについてについて... 7 2.1.2 エリプソメトリーエリプソメトリーのエリプソメトリーエリプソメトリーののの基本原理基本原理基本原理基本原理... 7 2.1.3 複素誘電率複素誘電率と複素誘電率複素誘電率ととと他他他の他の光学定数のの光学定数光学定数光学定数とのとのとの関係との関係関係関係... 9 2.1.4 実験系実験系実験系実験系... 9 2.2 X線回折測定線回折測定線回折測定線回折測定...11 2.2.1 測定原理測定原理測定原理測定原理...11 2.3 ラマンラマンラマンラマン分光法分光法分光法分光法... 13 2.3.1 ラマンラマン効果ラマンラマン効果効果効果についてについてについてについて... 13 2.3.2 ラマンラマン散乱原理ラマンラマン散乱原理散乱原理散乱原理... 13 2.5 EPMA((電子((電子電子プローブマイクロアナライザー電子プローブマイクロアナライザープローブマイクロアナライザープローブマイクロアナライザー))))... 15 2.5.1 はじめにはじめにはじめにはじめに... 15 2.5.2 測定原理測定原理測定原理測定原理... 15 2.2 光吸収測定光吸収測定光吸収測定光吸収測定... 18 2.2.1 光吸収係数光吸収係数の光吸収係数光吸収係数ののの測定測定測定測定... 18 2.2.2 実験系実験系実験系実験系... 21 2.3 光変調光吸収測定光変調光吸収測定光変調光吸収測定光変調光吸収測定 (PT:Photomodulated Transmittance)... 22 2.3.1 はじめにはじめにはじめにはじめに... 22 2.3.2 理論理論理論理論... 22 2.3.3 複素誘電率複素誘電率の複素誘電率複素誘電率ののの電場効果電場効果電場効果電場効果... 24 2.3.4 実験系実験系実験系実験系... 25 2.4 臨界点臨界点臨界点臨界点モデルモデルモデル解析モデル解析解析解析... 26 2.4.1 標準臨界点標準臨界点モデル標準臨界点標準臨界点モデルモデルモデル... 26 参考文献 参考文献参考文献 参考文献... 27 第 第 第 第3章章 章章 作製方法作製方法作製方法作製方法... 28 3.1 はじめにはじめにはじめにはじめに... 28 3.2 真空蒸着法真空蒸着法真空蒸着法真空蒸着法... 28 3.2 AgGaTe2薄膜薄膜の薄膜薄膜の作のの作作作製方法製方法製方法製方法... 29 3.3 ソースソースソースソースののの処理の処理処理処理... 30 3.4 ボートボートボートボートのからのからのから焼のから焼焼焼きききき... 30 参考文献 参考文献参考文献 参考文献... 30

(3)

第 第 第 第4章章 章章 AgGaTe2薄膜の薄膜薄膜薄膜ののの作製作製作製作製... 31 4.1 はじめにはじめにはじめにはじめに... 31 4.2 作製方法作製方法作製方法作製方法ⅠⅠⅠⅠ... 31 4.2.1 作製条件作製条件Ⅰ作製条件作製条件ⅠⅠⅠ... 31 4.2.2 アニールアニール処理アニールアニール処理処理処理... 31 4.2.3 XRD測定測定測定測定... 32 4.2.4 ラマンラマン測定ラマンラマン測定測定測定... 32 4.2.5 電子電子プローブマイクロアナライザー電子電子プローブマイクロアナライザープローブマイクロアナライザープローブマイクロアナライザー((((EPMA))))... 33 4.2.6 レーザーレーザー顕微鏡観察レーザーレーザー顕微鏡観察顕微鏡観察顕微鏡観察... 33 4.3 作製方法作製方法作製方法作製方法Ⅱ ⅡⅡ Ⅱ... 34 4.3.1 作製条件作製条件Ⅱ作製条件作製条件ⅡⅡⅡ... 34 4.3.2 アニアニールアニアニールールール条条条条件件件件... 34 4.3.3 XRD測定測定測定測定... 35 4.3.4 ラマンラマン測定ラマンラマン測定測定測定... 35 4.3.5 電子電子プローブマイクロアナライザー電子電子プローブマイクロアナライザープローブマイクロアナライザープローブマイクロアナライザー((((EPMA))))... 36 参考文献 参考文献参考文献 参考文献... 37 第 第 第 第5章章 章章 AgGaTe2薄膜の薄膜薄膜薄膜ののの光学的評価光学的評価光学的評価光学的評価... 38 5.1 測定試料測定試料測定試料測定試料ⅠⅠⅠⅠ... 38 5.1.1 測定試料測定試料について測定試料測定試料についてについてについて... 38 5.1.2 分光分光エリプソメトリー分光分光エリプソメトリーエリプソメトリーエリプソメトリー測定測定測定測定... 38 5.1.3 光吸収測定光吸収測定光吸収測定光吸収測定... 39 5.1.4 光変調光吸収測定光変調光吸収測定光変調光吸収測定光変調光吸収測定... 41 5.1.5 SCP解析解析解析解析パラメータパラメータパラメータパラメータ... 43 5.2.1 測定試料測定試料測定試料測定試料... 44 5.2.2 光吸収測定光吸収測定光吸収測定光吸収測定... 44 5.2.3 光変調光吸収測定光変調光吸収測定光変調光吸収測定光変調光吸収測定... 46 5.2.4 SCP解析解析解析解析パラメータパラメータパラメータパラメータ... 47 5.2.5 第一原理第一原理バンド第一原理第一原理バンドバンドバンド計算計算計算計算... 48 参考文献 参考文献参考文献 参考文献... 49 第 第 第 第6章章 章章 結論結論結論結論... 50 Appendix... 51 A.1 結晶成長結晶成長結晶成長結晶成長... 51 A.1.1 結晶成長結晶成長結晶成長結晶成長法法法法... 51 A.1.2 垂直垂直垂直ブリッジマン垂直ブリッジマンブリッジマンブリッジマン炉炉による炉炉によるによる結晶成長による結晶成長結晶成長結晶成長... 51 A.2 試料試料試料試料ののの作製の作製作製作製... 53 A.2.1 石英管石英管石英管石英管ののの処理法の処理法処理法および処理法およびアンプルおよびおよびアンプルアンプルアンプルののの作製手順の作製手順作製手順作製手順... 53

(4)

A.2.2 カーボンコートカーボンコートカーボンコートカーボンコートのののの手順手順手順手順... 53 A.2.3 結晶成長結晶成長結晶成長結晶成長ののの手順の手順手順手順... 54 A.3 XRDによるによるバルクによるによるバルクバルクバルク結晶結晶の結晶結晶ののの評価評価評価評価... 55 参考文献 参考文献参考文献 参考文献... 55

(5)

本論文の構成 本論文は全6章からなる。 第1章は序論であり、研究の背景および目的について述べた。 第2章は研究に用いた装置、測定原理について述べた。本研究で行った測定は、XRD測定、 ラマン分光測定、EPMA 測定、分光エリプソメトリー測定、光吸収測定、光変調光吸収測 定である。 第3章では、本研究の試料作製法である真空蒸着法について述べた。 第4章では、実際に試料を作製した条件およびその構造解析について述べた。 第5章では、AgGaTe2薄膜の光学特性について述べた。分光エリプソメトリー測定、光吸収 測定、光変調光吸収測定による測定結果ならびに解析結果について述べた。 第6章では、本研究のまとめを述べ、結論とした。 Appendix:ソースとして用いたAgGaTe2結晶の育成について

(6)

第1

1章

序論

序論

序論

序論

1.1

研究

研究

研究の

研究

の 背景及

背景及び

背景及

背景及

び目的

目的

目的

目的

Ⅰ-Ⅲ-Ⅵ2 族化合物半導体はカルコパイライト構造を有する半導体である。カルコパイラ イト構造の結晶構造をFig. 1-1 (b)に示す。図からわかるようにカルコパイライト型構造は閃 亜鉛鉱型構造(Fig. 1-1 (a))を2つ重ねたような形をしている。Ⅱ-Ⅳ族、Ⅲ-Ⅴ族半導体から 派生したことからわかるように2種類の陽イオンを区別しなければ同様の結晶構造となる。 2種類の陽イオンがc軸方向交互に並んでおり、それぞれの陽イオンと陰イオンの原子間距 離は異なる。したがって、c/aの値は 2からずれている。また、c軸を回転対称軸とした一 軸異方性となり、バンド構造も閃亜鉛鉱型半導体よりも複雑になる。 カルコパイライト構造半導体の応用分野は太陽電池、偏光素子など多彩である。しかし、 三元化合物ということで結晶成長が困難であることから、いまだ基礎物性には未知な点が 多いのが現状である。我々の研究室ではこれまでの研究により、AgGaTe2バルク結晶を育成 し、直接遷移型の半導体であること、バンドギャップエネルギーが1.2 eV(300 K)である ことを明らかにした 1) 。そこで今回はAgGaTe2薄膜の作製を行いその光学特性を明らかに することを目的とした。 Fig. 1-1 (a) 閃亜鉛鉱型構造と (b) カルコパイライト型構造

-

-

2

a

a

c

(a)

(b)

Ⅰ族

Ⅱ族

Ⅲ族

Ⅵ族

-

Ⅳ族

(7)

n

1

φ

1

φ

0

n

0

E

s

E

p

E

2

E

1

E

1

E

2 Fig. 2-1 測定モデル

2

実験方法及

実験方法及

実験方法及

実験方法及び

び解析方法

解析方法

解析方法

解析方法

2.1

分光

分光

分光エリプソメトリー

分光

エリプソメトリー

エリプソメトリー

エリプソメトリー(

SE

Spectroscopic Ellipsometry

) 測定

測定

測定

測定

2.1.1

分光

分光

分光

分光エリプソメトリー

エリプソメトリー

エリプソメトリー

エリプソメトリーについて

について

について

について

エリプソメトリー(Ellipsometry)は光学測定手法であり、基本的に試料からの反射光を 測定している。エリプソメトリーの最大の特徴は、光反射による偏光状態の変化を測定す ることである。エリプソメトリーの呼び名は、反射光の偏光状態が一般に楕円(elliptical) になることに由来している。エリプソメトリーの測定値は(∆、Ψ)であり、それぞれはp、 s 偏光と呼ばれる偏光状態の位相差∆および振幅比Ψを示す。光の波長を変化させて測定を 行う分光エリプソメトリー(Spectroscopic Ellipsometry;SE)では、(∆、Ψ)に対するスペ クトルが測定される。分光エリプソメトリーでは、複素屈折率(N=n+ik)の屈折率 n と消 衰係数 k を直接測定することが出来る。さらに、複素誘電率εおよび光の吸収係数αをそれ ぞれε = N 2 及びα = 4πk/λの関係式から容易に求めることが出来るため、誘電率スペクトルを 測定する上で優れた測定方法である。また、表面に敏感かつ非破壊な測定手段であること から、bulk や層構造物質の光学定数測定だけではなく、固体表面の状態変化や被膜物質の 膜厚測定にも有用である 2) 。 本節ではエリプソメトリーについての測定原理 1-7) 、測定法について述べる。

2.1.2

エリプソメトリー

エリプソメトリー

エリプソメトリー

エリプソメトリーの

の基本原理

基本原理

基本原理

基本原理

エ リ プ ソ メ ト リ ー は 入 射 光 が 試 料 表 面 で反射し、その反射の際に起こる偏光状態 の変化を測定する。これにより試料表面の 光 学 定 数 や 物 質 に 付 着 し た 薄 膜 の 光 学 定 数ならび膜厚を決定する方法である。 一般に光(電磁波)がそれぞれ屈折率の 異なる媒質0から1に入射するとき、その 物質の境界面において光は Snell の法則に 従い反射や屈折が生じる。このときの反射 光及び屈折光は、境界面の反射率や吸収係 数を反映して減衰や位相変化を受ける。エ リプソメトリーは、この反射時に起こる偏 光角と位相角の変化から試料(媒質1)の表面状態の高い感度を持つ。Fig. 2-1のように入 射角をφ0、屈折角をφ1、また入射光、反射光、屈折光をそれぞれ電界ベクトルEE1E2で 表す。ここで、媒質0及び媒質1の複素屈折率をそれぞれ n0n1とし、各光の入射面に平 行な偏光成分(Z-X成分)をp-成分(入射面成分)、垂直な成分(Y成分)をs-成分(垂直

(8)

成分)で表すと、これらの成分についての反射率と透過率は次のように記述される 3) 。 1 1 0 0

sin

φ

n

sin

φ

n

=

(Snell’s Law) (2-1) 1 0 0 1 1 0 0 1 p p p

cos

cos

cos

cos

φ

φ

φ

φ

n

n

n

n

r

E

E

i r

+

=

=

(2-2a) 1 1 0 0 1 1 0 0

cos

cos

cos

cos

φ

φ

φ

n

φ

n

n

n

r

E

E

s is rs

+

=

=

(2-2b) 1 0 0 1 0 0 p p p

cos

cos

cos

2

φ

φ

n

φ

n

n

t

E

E

i t

+

=

=

(2-2c) 1 1 0 0 0 0 s s s

cos

cos

cos

2

φ

φ

n

φ

n

n

t

E

E

i t

+

=

=

(2-2d) ここで媒質1が吸収体の場合、屈折率 n1は複素屈折率(n+ik)となり、Fresnel係数も複 素数になり、Fresnelの反射係数、透過係数のp-成分(入射面成分)、s-成分(垂直成分)は それぞれrprstptsである。 従って、複素反射率 r は p-成分と、s-成分の振幅比ρ =rp/rsを位相差∆=∆p−∆sを用いて表 すと、

)

exp(

p p p

R

i

r

=

(2-3a)

)

exp(

s s s

R

i

r

=

(2-3b) よって反射率比ρは次式のようになり、 ∆ ) ∆ ∆ ( s p s p

tan

s p i i

e

e

R

R

r

r

=

=

ψ

ρ

(2-4) 反射光は、偏光角Ψ、位相角∆の変化を受ける。これら2つのパラメータによって、最終的 に以下の式から試料(媒質1)の光学定数である複素誘電率(ε =ε1+iε2)や複素屈折率(N=n+ik) を求めることができる 5) 。 (2-2a)式と(2-2b)式を(2-3)式に代入し変形すると、 2 1 0 2 2 0 0 1

tan

1

1

1

sin





+

+

=

φ

ρ

ρ

φ

n

n

(2-5) さらに変形し、媒質1の複素屈折率n1は次のように表される。

(9)

(

)

2 1 0 2 2 0 0 1

sin

1

4

1

tan

+

=

φ

ρ

ρ

φ

n

n

(2-6) よって試料の複素誘電率を算出すると以下のように書き表せる。

(

)

(

)

+

+

=

=

0 2 2 2 2 2 0 2 2 0 2 2 1

cos

2

sin

1

sin

2

sin

2

cos

tan

1

sin

ψ

ψ

ψ

φ

φ

ε

n

k

n

(2-7a)

(

)

2 0 2 0 2 2 0 2

cos

2

sin

1

sin

2

cos

2

sin

tan

sin

2

2

ψ

ψ

ψ

φ

φ

ε

+

=

=

nk

n

(2-7b)

2.1.3

複素誘電率

複素誘電率

複素誘電率と

複素誘電率

と他

他の

の光学定数

光学定数

光学定数との

光学定数

との

との

との関係

関係

関係

関係

複素誘電率を求めることにより、以下の光学定数も求めることが出来る 7) 。 複素屈折率

(

N

=

n

+

ik

)

(

)

12 1 2 1 2 2 2 1

2





+

+

=

ε

ε

ε

n

(2-8) 消衰係数k

(

)

12 1 2 1 2 2 2 1

2





+

=

ε

ε

ε

k

(2-9) 光吸収係数

α

λ

π

α

=

4

k

(2-10) 反射率

R

( )

( )

2 2 2 2

1

1

k

n

k

n

R

+

+

+

=

(2-11)

2.1.4

実験系

実験系

実験系

実験系

エリプソメトリーの測定は、消光法と光電測光法とに大別される。光電測光法はまた、 回転検(偏)光子型と位相変調型に大別される。消去法は測定制度の点で優れているが、 測定に時間がかかるという難点がある。このため、分光エリプソメトリーでは光電測光法、 中でも回転検(偏)光子型が多く用いられている 3) 。本研究でも、回転検(偏)光子型の分 光エリプソメトリー測定装置を用いた。装置の概略図をFig. 2-2に示す。また、本研究に使 用したSE装置の仕様をTable 2-1に示す。

(10)

使用装置 (株)溝尻光学工業所製 DVA-36VW-A 方式 回転検光子型 波長可変(200-1100 nm) 入射角可変 光源 Xeランプ 偏光子、検光子 グランテーラプリズム 受光部 光電子増倍管、Siフォトダイオード Fig. 2-2 SE測定装置の概略図 Table 2-1 SE装置の仕様

(11)

2.2

X

線回折測定

線回折測定

線回折測定

線回折測定

2.2.1

測定原理

測定原理

測定原理

測定原理

結晶では原子または原子の集団が周期的に配列し空間格子をつくっている。その間隔は 普通Åである。それと波長が同じ程度あるいはそれ以下のX 線が入射すると、結晶格子が 回折格子の役目をして、X線はいろいろな方向へ散乱される。この現象を回折という。 結晶は原子の並んだ面が一定の間隔で重なっているものと見なされ、その間隔をdとす る。Fig. 2-3のように原子面に波長λのX線が原子面と角θをなして入射するとする。その ときまず一枚の原子面についてみると、反射角が入射角に等しければ各散乱波の位相はそ ろっており、波は互いに強めあう(鏡面反射)。次に異なった面により鏡面反射を受けた波の 間の干渉を考えてみる。異なった面による散乱波は隣り合う面からの散乱波の光路差2dsin θが波長の整数倍 nλに等しい、つまり2dsinθ=nλであれば位相がそろって強めあい回折が 起こる。これをブラッグの条件という。θをブラッグ角、nを反射の次数という。 回折現象の研究には試料の状態(単結晶、多結晶あるいは非晶質)や使用する X 線の性 質などによる各種実験法が工夫されている。記録法で分ければ写真法と計数管法がある。 本実験で用いたのは計数管法であるディフラクトメーターである。その原理について説明 する。粉末状や多結晶のときには結晶粒はあらゆる方向を向いているため、特定の格子面 に対して回折条件を満たしている+結晶粒が多数ある。今、面間隔dの格子面について考え ると、入射角と反射角のなす角θがブラッグ条件を満足すれば回折線は入射線方向を中心軸 として反射角2θの円錐にそって出てくる。異なった面間隔の格子面に対してはそれぞれ別 の円錐ができる。そこで入射 X 線と垂直に平板状フィルムを置くと写真法であるデバイシ ュラー法、フィルムの代わりに回転できる計数管を用いたものをディフラクトメーターと いう。ディフラクトメーターは写真法に比べ回折角、X線強度を正確に求めることができる。 ディフラクトメーターは回折角を正確に測れるゴニオメーター(測角器)、スリット系、計数 管とその計数回路、記録計などから構成される 8) 。その光学系をFig. 2-4に示す。

(12)

Fig. 2.2.1 ブラッグ面による回折 Fig. 2-4 ディフラクトメーター Fig. 2-3 ブラッグ面によるX線の反射

(13)

2.3

ラマン

ラマン

ラマン

ラマン 分光法

分光法

分光法

分光法

2.3.1

ラマン

ラマン

ラマン

ラマン効果

効果

効果

効果について

について

について

について

ラマン散乱は物質に特定の波長(振動数)の光を照射すると、照射光とは異なった波長 (振動数)を持った光が散乱される現象をいい、その散乱の原因は物質の分子の振動と照 射光の相互作用で生じる。初期のころは化学の分野での物質確認や分子構造の研究に使わ れていたため、ラマン散乱の半導体評価技術としての導入は比較的新しい。特に、光源と して各種のレーザー光を絞って半導体の微小領域に照射し、その散乱された光を分光する レーザラマン分光法は面分解能を向上する点で注目されている。半導体材料からラマン散 乱された赤外線スペクトルは、人間の指紋と同じように、半導体材料および構造などに固 有である。光学系はPL(フォトルミネッセンス)とほとんど同じであるが、ラマン散乱光 が非常に弱いために、2~3個の分光器を使用する点で異なる。半導体材料評価のうち、 A)半導体表面のストレスの測定 B)半導体中のキャリア濃度の評価 C)イオン注入工程を中心とするプロセス評価およびプロセス混入不純物評価。 D)混晶半導体の組成比の非接触評価。 などがラマン分光法の主な運用例である 8) 。

2.3.2

ラマン

ラマン

ラマン

ラマン散乱原理

散乱原理

散乱原理

散乱原理

9,10) 以下にラマン散乱の原理について簡単な説明を行う。結晶に単色光を入射させると、散 乱光には入射光と波長の異なるものが観測される。散乱にはレイリー散乱、ブリルアン散 乱、ラマン散乱などがあるが、その中からラマン散乱光のみを分光して観測するのがラマ ン分光法である。 量子力学によってラマン散乱を説明する場合は、Fig. 2-5に示すような分子のエネルギー 準位を考える。状態m(またはn)にある分子に光が照射されると、分子は直ちに高いエネル ギー状態eに励起される。励起に続いてフォトンの放出が起こり、分子は状態n(始状態が nのときはm)に移る。このときの状態mから状態nへの遷移に対応するラマン散乱光の全 強度Imnは次式で表される。

(

±

)

( )

=

ρα ρσ

α

ν

ν

π

4 2 4 5

9

128

mn i mn i mn

I

C

I

(2-12)

( )

Γ

+

+

+

Γ

+

=

e em i e en i e mn

i

n

e

e

m

n

e

e

m

h

ν

ν

µ

µ

ν

ν

µ

µ

α

ρσ σ ρ ρ σ

1

(2-13) ここで、Iiは入射励起光(振動数νi)の強度、νmnはラマンシフト、αρσはラマン散乱テンソ ルのρσ成分を表す。eは分子すべての量子力学的固有状態を含み、νemmからeへの遷移 の振動数を表す。<m|µσ|e>、<e|µρ|n>、…は遷移電気双極子モーメントの成分、µρはρ方向の

(14)

電気双極子モーメント演算子を表す。Γeは状態eの減衰定数である。 Fig. 2.5にラマン分光測定の光学系を示す。励起光源はArイオンレーザーの波長514.5 nm を使用した。試料によって散乱された光に偏光をかけ、分光器(Jobin Yvon 社、T64000 ト リプルグレーティングモノクロメータ)により分光を行い、散乱光の波数シフトと強度を 測定した。測定はレーザーを45°で入射させ、大気中、室温にて行った。 Fig. 2.5 ラマン散乱の機構および光学系

(15)

2.5

EPMA

( 電子

電子

電子

電子プローブマイクロアナライザ

プローブマイクロアナライザー

プローブマイクロアナライザ

プローブマイクロアナライザ

ー)

2.5.1

はじめに

はじめに

はじめに

はじめに

EPMAはElectron Probe X-ray Micro Analyzerの略称であり、X線マイクロアナライザーも

呼ばれている。EPMA は試料の形態観察をはじめ、元素組成分析、相分布解析など豊富な 情報が得られる上、多様な試料種に対応できる。 装置はFig. 2-6のようになっており、試料表面に細く絞った電子線を照射し、その微小部 から発生するX線信号や電子信号を検出し、元素分析および試料の表面形状の観察を行う 分析機器である。X 線を物質に照射すると、一部が吸収されたり、反射されたり、回折さ れたり種々の現象が起こる。この中で放出される二次X線の一種である蛍光X 線を用いる のが蛍光X線分析法である。 入射(一次)X 線により物質内の原子の内殻準位にある電子が叩き出され、それより高 いエネルギー準位にあった電子が空いた準位に落ちる時に放出されるのが蛍光X線である。 検出される蛍光X線の波長を解析することにより存在する元素が分かり(定性)、X線の強 度から元素の含有量が分かる(定量)。分析可能な元素は、BからUだが軽元素よりも重元 素の分析を得意とし、X線入射面から約100 µm内部までの情報が得られる。比較的測定が 容易なので重元素の定性分析には優れた方法といえる。

2.5.2

測定原理

測定原理

測定原理

測定原理

12) 電子線を試料に照射して、発生する特性X線を検出して試料を構成している元素とそ

の量を測定する分析する機器を電子プローブ・アナライザー(EPMA: Electron Probe Micro

Analyzer)という。特性X線発生過程についてFig. 2-7に示した通りである。(1):入射電子が 軌道電子を弾き飛ばす。その結果、空孔ができる。(2):空孔に他の軌道の電子が移る。空位 となった軌道が他のエネルギー準位の電子でとらわれる。(3):電子の遷移前後では、エネル 入射電子線 特性X線 (元素の定性・定量) 二次電子(表面形状 ) 反射電子 (凹凸、平均原子番号) 試 料 吸収電子 (平均原子番号 ) Fig. 2-6 EPMAで得られる情報

(16)

ギーが違うので、その差が特性X線となって放出される。EPMA構成図をFig. 2.8に示す。 特性X線の検出方法には2通りあり、エネルギー分散型X線分光法(EDS : Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)、波長分散型X線分光法(WDS : Wavelength Dispersive X-ray Spectroscopy)

に分けられる。EDSとWDSに違いは以下のようになっている。 ・エネルギー分散型X線分光法(EDS) WDSに比べて波長分解能は劣るが、多数の元素を同時に分析することができ、短時間で の定性分析が可能である。また、X線の検出感度が高いことからSEM観察程度の比較的少 ない電子ビーム電流で分析可能であるため、熱に弱い分析に適している。 試料に電子線を照射すると、照射部位から各種の信号が励起される。この信号全てを半 導体検出器で増幅し、エネルギー別に信号を振り分けることで、構成元素の密度が分かる。 検出元素:超軽元素は不得意である。 ・波長分散型X線分光法(WDS) EDSよりもX線の波長分解能が優れており、近接ピークと重なることが少ないため、デ ータの信頼性が高く、一つのチャンネルで 1 元素を測定することから、微量な元素の分析 に適している。しかし、測定に必要な電子ビーム電流はEDSより大きな量が必要であるた め、電子線照射によるダメージを受けやすい試料の場合には注意が必要である。また、軽 元素用として、高感度の結晶がオプションである。 試料に電子線を照射すると、照射部位から各種の信号が励起される。励起された信号の 中から任意の設定波長のX線を分光結晶で選別し、検出器によって計測することで、元素 の種類と濃度が分かる。 検出元素:超軽元素から重元素まで可能である。 Fig. 2-7 X線発生過程

(17)

EDX:試料より発生した特性X線のエネルギーを直接検出する。 WDX:試料より発生した特性X線の波長を分光結晶を経由して検出する。 エネルギー分散型蛍光X線分析装置の特徴を以下に示す。 入射:電子線 検出:特性X線(表面観察は2次電子) 分析面積:数µ~数nm 分析深さ:横方向 約1 µm、深さ方向 約1 µm(材種による) 得られる情報 定性分析:Bより原子番号の大きな原子 定量分析:Naより原子番号の大きな原子 (標準試料を用いる定量、ZAF法での定量(理論計算)など) その他:点分析、線分析、面における元素分布 深さ方向の分析:不可(試料を切断してその断面を分析することは可能) 試料ダメージ:電子線による熱損傷やカーボンの付着 分析対象:金属、半導体などの固体 Fig. 2-8 EPMA構成図

(18)

2.2

光吸収測定

光吸収測定

光吸収測定

光吸収測定

2.2.1

光吸収係数

光吸収係数

光吸収係数

光吸収係数の

の測定

測定

測定

測定

ある特定の波長(エネルギー)の光に対して、半導体がどのような吸収係数(absorption coefficient)あるいは反射率(reflectivity)を持つかを測定することは、その半導体を用いた 光学系の設計などに基本的データを提供する。一方、光の吸収スペクトルや反射スペクト ルには、半導体のエネルギー帯構造が強く反映されており、その測定により、エネルギー 帯に対する多くの基本情報を得ることが出来る。新しい半導体材料が製作された場合、最 初に、X線回折などの結晶構造解析を行うとともに、光吸収スペクトルの解析を進めその大 まかなエネルギー構造を知ることが重要である。この意味で吸収スペクトルおよび反射ス ペクトルの測定とその解析は光学特性評価のなかで最も基本的な技術である 12) 。 半導体の光吸収の機構にはいろいろな場合があるが、主な光吸収は価電子帯から伝導帯 へ電子を励起するときの基礎吸収である。基礎吸収にはそれが起こり始める限界光子エネ ルギー、限界光波長があるが、この値を測定することにより、基礎吸収端エネルギーなど を求めることができる 13) 。 光が媒質中を進行したとき、光のエネルギーが吸収されて光の強さが減少していく割合 を吸収係数という。物質中のある点における光の強度を I0とし、その点から光が距離 x だ け進んだ後の光強度I(x)とすると

( )

x

I

( )

x

I

=

0

exp

α

(2-14) と書ける。この係数αが吸収係数であり cm- 1 という単位であらわす。吸収係数は、物性 研究の場合、光の波長(エネルギー)の関数として測定され、この吸収係数の波長(エネ ルギー)依存性を吸収スペクトルと呼ぶ。 光が真空中から物質に入射する場合、光の一部は物質中に侵入するが、残りは物質表面 で反射される。反射率Rは、入射光強度Iiと反射光強度Irを用いて単純に i r

I

I

R

=

/

(2-15) と定義される。 光(電磁波)は、物質の内部、外部を問わず電磁波のMaxwell方程式により記述される。 電場、磁場、電流などの観測にかかる巨視的物理量と、固体の微視的(原子的)性質の橋 渡しをするのが“誘電率”と“伝導率”である。半導体の光学特性の把握には、これらの量と、 吸収係数、反射率との関連を理解することが重要となる。 磁気的効果を扱わないとすると、Maxwellの方程式は

t

−∂

=

/

rot

Ε

B

(2-16)

t

J

+

=

/

rot

H

D

(2-17)

0

div

B

=

(2-18) e

ρ

=

D

div

(2-19) で与えられる。ここで、EDHBはそれぞれ、電場、電束密度、磁場、磁束密度で

(19)

あり、ρeJは、電荷密度、電流密度を表す。また、オームの法則を仮定すると

E

J

=

σ

(2-20) が成立する。ここでσは電気伝導度である。式(2-16)-(2-19)からEに関する波動方程式

0

0 2 2 2 2

=

t

E

t

E

c

E

e

σ

µ

κ

(2-21) が導かれる。ここでκεは物質の比誘電率、µ0は真空の透磁率である。またcは 0 0µ ε = c

ε

0は真空の誘電率 (2-22) であり、真空中の光速に等しい。吸収係数、反射率に対するエネルギー分散を求めるた めに波動ベクトルk、振動数ωを持つ電界ベクトル波Eを考える。

{

ik

r

t

}

E

E

=

0

exp

ω

(2-23) これを波動方程式(2-23)に入れると、

( )

2 1 0





+

=

ωε

σ

κ

ω

ω

i

c

k

e (2-24) が得られ、ここで複素屈折率Nを 2 1 0





+

=

ωε

σ

κ

i

N

e (2-25) により導入する。 巨視的な測定により観測される光学的性質は、複素屈折率 N を使って表される。複素誘 電率は複素屈折率と同じく扱われる物理量であり 2

N

ε

(2-26) で定義される。 複素屈折率を実数部nと虚数部kにわけ、x方向に伝播する波を考え

ik

n

N

=

+

(2-27) とおくと式(2-23)は

−

=

c

x

k

t

c

nx

i

E

E

0

exp

ω

exp

ω

(2-28) と書くことが出来る。これと(2-14)の比較から

c

k

/

2 ω

α =

(2-29) と 吸 収 係 数 は k を 用 い て 表 す こ と が 出 来 る 。n を 屈 折 率 、k を 消 衰 係 数 と 呼ぶ 。

(20)

反射率もnkを用いて表すことができ、Fig. 2-9のようにx方向に進む波がx=0に表面 を持ち、x>0に存在する物質に垂直に入射したとすると、透過波Etと反射波Erx=0にお ける境界条件 r i t

E

E

E

=

+

(2-30)

dx

dE

dx

dE

dx

dE

t

=

i

+

r (2-31) より

ik

n

ik

n

N

N

E

E

i r

+

+

+

=

+

=

1

1

1

1

(2-32) を得ることが出来る。光強度は電場振動の二乗であるから、反射率R

( )

2 2 2 2 2

1

)

1

(

1

1

k

n

k

n

N

N

R

+

+

+

=

+

=

(2-33) と複素屈折率を用いて書くことが出来る。 半導体の吸収係数を求める最も一般的な方法は、薄膜または非常に薄くした材料を透過 する光の強さ、表面で反射する光の強さを直接測定する方法である。吸収係数α、厚さdを 持つ平行板結晶に光が垂直入射した場合の透過率Tm、反射率Rmは、干渉を無視して

(

)

( )

(

d

)

R

d

R

T

m

α

α

2

exp

1

exp

1

2 2

=

(2-34) Fig. 2-9 垂直入射光の透過と反射 入射波

 −

=

t

c

x

i

E

E

i i0

exp

ω

反射波

 +

=

t

c

x

i

E

E

r r0

exp

ω

透過波

=

t

c

N

E

E

x t d 0

exp

exp

(21)

( )

{

T

d

}

R

R

m

=

1

+

m

exp

α

(2-35) で与えられる。ここでRは式(2-33)で与えられる半無限の厚さを持つ試料の反射率である。 測定した透過率Tm、反射率Rmから吸収係数を求めるには、式(2-34), (2-35)を用いて計算 式で逆算する方法がとられているが、Rが反射率測定などにより求められている場合には式 (2-34)より解析的に容易に求めることが出来る。 価電子帯の最大と伝導帯の最小の間の基礎吸収端の強度は価電子帯の最大及び伝導帯の 最小がブリアンゾーンの同じ点で生じるかどうかにより、同じ波数ベクトルのバンド間遷 移は直接と名づけられており、基礎吸収端が直接遷移であるものは直接吸収端を持つとい われる。そうでない場合吸収端は間接的と言われる。

2.2.2

実験系

実験系

実験系

実験系

光吸収測定(温度依存特性)に用いた実験系の概略図をFig. 2-10に示す。光源にハロゲ ン ラ ン プ を 用 い た 。 試 料 を 透 過 し た 光 は 分 光 器 を 通 し て Ge フ ォ ト ダ イ オ ー ド (HAMAMATSU:B6175-05)で受光した。試料はクライオスタットにセットし温度を変化 させた。 Fig. 2-10 光吸収測定の実験系概略図

(22)

2.3

光変調光吸収測定

光変調光吸収測定

光変調光吸収測定

光変調光吸収測定

(PT:Photomodulated Transmittance)

14,15)

2.3.1

はじめに

はじめに

はじめに

はじめに

光変調光吸収測定は試料にレーザーをパルス照射することで外部から電界を加え、試料 の透過スペクトルを測定するものである。試料表面にポテンシャル障壁が存在し、電界の 大 部 分 が こ の障 壁 に か か る こ と が こ の 実 験 に は 有 効 で あ る 。 電 界 は 十 分 大 き く な る と Frantz-Keldysh効果が現れ、これが透過スペクトルに変化を与える。

2.3.2

理論

理論

理論

理論

半導体に電場を印加したときに生じる現象には、シュタルク効果、Franz-Keldysh 効果な どが主にあげられる 16) 。シュタルク効果は試料に高電界を印加したとき、原子や分子の準 位の縮退が解け、分裂する現象である。しかし、結晶に 7

10

V/cmもの高電界を実際に印加 するのは難しく、吸収係数がステップ関数状になることが予想されている 17), 18) が、バルク 結晶ではまだ観測されていない。これより低い 5

10

V/cm 程度の電界を試料に印加した際、 吸収係数が低エネルギー側にシフトする現象は、Franz-Keldysh 効果と呼ばれている。これ は電場により、電子の波動関数が禁制帯中に染み込みだし、そこに新たな状態密度を形成 するためと理解されている 19) 。光吸収係数は良く知られているように次の式で表すことが できる 20)

(

)

=

i i f if

E

E

P

ncm

e

δ

ω

ω

π

α

2

h

2 2 2

4

(2-36) ここでEiEfはそれぞれ光子エネルギーħωと相互作用している系の始状態 iと終状態 f のエネルギーである。nは屈折率、ħはプランク定数、cは光速、emは電子の電荷及び 質量を示す。始状態iから終状態fへ移る電子の運動量行列要素Pifは、許容遷移の場合、次 のように表すことができる 21) 。

( )

ki kf if

C

P

=

Φ

0

0

δ

δ

(2-37) ここで C0は、バンド端における周期的なブロッホ状態間の運動行列要素を含み、波数 k に依存せず、運動量の次元を有する定数である。デルタ関数は運動量保存を表す。Φ(r)は、 2 粒子シュレディンガー方程式の解を表し、r は電子とホール対の相対座標を示す。電子・ ホール対が定電場F(Z方向)中に存在する場合、Φ(r)は次の式から得られる。

( )

0

2

2

Φ

=

+

+

r

E

FZ

e

µ

h

(2-38) ここでEは、それぞれのバンド端から測定した電子とホールのエネルギーの和を示す。µ は還元質量と呼ばれ、次の式で定義される。 h

m

m

1

1

1

0

+

=

µ

(2-39)

(23)

m0とmhは、それぞれ伝導体と価電子帯における電子とホールの有効質量である。式(2-38) ではクーロン相互作用による電子・ホール対の束縛を含み、これは水素原子のシュタルク効 果を記述する。ここでは、電子・ホール対間のそのような束縛が存在しないバンド間遷移に ついて考察する。 式(2-38)の厳密解はエアリー関数Aiを用いて次のように記述される 22) 。

( )

( )

( )

ξ

π

=

Φ

+ i y k x k i

A

e

A

r

y x

h

2

(2-40) ここで、ξは次のように表すことができる。 3 / 1 2

2





+

=

h

e

F

F

e

Z

ε

µ

ξ

(2-41)

(

2 2

)

2

2

m

k

x

k

y

E



+



=

µ

ε

h

(2-42) 規格化定数Aは次式で与えられる。

( )

( )

1/6 2/3 2 / 1 3 / 1

2

h

F

e

A

π

µ

=

(2-43) また、エアリー関数Ai(β)は次式で定義されている 23) 。

( )

u

u

du

A

i

+

=

0 2

3

1

cos

1

β

π

β

(2-44) 式(2-40)より

( )

=

( )





Φ

F i F

A

F

e

θ

ε

θ

π

π

h

1/2

h

h

2 / 1

2

1

0

(2-45) となることがわかる。ここで、

h

µ

θ

2

2 2 3

e

F

F

=

(2-46) である。式(2-36)で、和を積分に、またスピンを考慮して2をかける。すると、式(2-36)、 (2-37)、(2-45)より、定電場が存在する場合の光吸収係数(許容遷移)は次式で与えられる。

( )

( )

∞ −

=

F

dt

t

A

R

θ

F ω ω θ i

α

/ 2 2 / 1 1 (2-47) 2 / 3 2 2 0 2

2

2

=

h

h

µ

ωcnm

C

e

R

(2-48) ここで、ħωはエネルギーギャップ値を示す。エアリー関数は微分方程式

(24)

( )

tA

( )

t

dt

t

A

d

i i

=

2 2 (2-49) を満たすため、式(2-47)の積分は次のようになる。

( )

2

( )

2

( )

2

β

β

β

β

A

i

t

dt

=

A

i

+

A

i

∞ (2-50) ここで、プライム(´)は変数による積分を示す。したがって、電場が存在する場合の許容 遷移における吸収係数は次の式で与えられる 19) 。

( )

ω

θ

[

( )

η

η

( )

η

]

α

F

=

R

F

A

i

2

A

i 2 / 1

,

(2-51) F

θ

ω

ω

η

=

1

(2-52)

2.3.3

複素誘電率

複素誘電率

複素誘電率

複素誘電率の

の電場効果

電場効果

電場効果

電場効果

光吸収係数の電場効果は、D. E. Aspnesによって複素誘電率の電場効果へと拡張された 19) 。 吸収係数の変化∆α(ω,F)-α(ω,0)は、複素誘電率の虚部の変化∆ε22(ω,F)−ε2(ω,0)として表 される。ここで、次式で定義されるエレクトロ・オプティカル関数を導入する。

( )

{

( )

η

η

( )

η

}

( ) ( )

η

η

π

η

=

u

A

A

N

F

i2 i2 1/2 2 2 (2-53)

( )

{

( ) ( )

η

η

η

( ) ( )

η

η

}

η

( )

η

π

η

=

N

A

B

A

B

u

G

i i i i 1/2 2 (2-54) Nは規格化定数、Bi(η)は式(2-47)の発散解である。また、u(η)はステップ関数を表す。こ れらの関数を使うと、複素誘電率の電界効果は次のように表すことができる。

( )

[

( ) ( )

η

η

]

ω

θ

ω

ε

F

=

B

G

+

iF

,

21/2 (2-55) ここで 2 / 1 2 2 2 0 2

8

2





=

=

h

h

z y x

c

m

C

e

R

n

B

ω

µ

µ

µ

(2-56) である。光変調光吸収測定では電場による透過率の変化∆T/Tを測定する。 2 1

β

ε

ε

α

+

=

T

T

(2-57) ここでα、βはセラフィン係数とよばれ、以下の係数で表すことができる。 2 2

2

B

A

A

+

=

α

(2-58)

(25)

2 2

2

B

A

B

+

=

β

(2-59) ここでABは次のように表すことができる。

(

2

3

2

1

)

=

n

n

k

A

(2-60)

(

3

2

2

1

)

=

k

n

k

B

(2-61)

(

)

2 1 1 2 1 2 2 2 1

2

+

+

=

ε

ε

ε

n

(2-62)

(

)

2 1 1 2 1 2 2 2 1

2

+

=

ε

ε

ε

k

(2-63) このことから α、βはエリプソメータを使用して測定した複素誘電率から計算して求め ることができる。

2.3.4

実験系

実験系

実験系

実験系

光変調光吸収測定(温度依存特性)に用いた実験系の概略図をFig. 2-11に示す 11) 。光源 にハロゲンランプを用い、アルゴンイオンレーザ(488 nm)または半導体レーザ(533 nm) を用いて電界変調をかけた。試料を透過した光は分光器を通し、Geフォトダイオードで受 光した。測定は液体窒素およびクライオスタットを用いて温度を変化させた。 Fig. 2-11 実験系

(26)

2.4

臨界点

臨界点

臨界点

臨界点 モデル

モデル

モデル解析

モデル

解析

解析

解析

2.4.1

標準臨界点

標準臨界点

標準臨界点

標準臨界点モデル

モデル

モデル

モデル

SCPはM. Cardona等の提唱するモデルで、このモデルにおいて複素誘電率ε (E)は、以下の 式で表される 24) 。

( )

[

(

)

]

=

Γ

+

=

N j n j j g i j j j j

i

E

E

e

A

C

E

1 , θ

ε

(2-64) 式(2-64)において、各パラメータは以下のようになっている。 A j:強度パラメータ θ j:エキシトン位相角 Eg,j:臨界点エネルギー Γj:ブロードニングパラメータ また、指数nを変化させることにより、臨界点の型は以下のように決まる。

1 2

n

= −

:1次元臨界点

0

n

=

:2次元臨界点

1 2

n

=

:3次元臨界点

1

n

= −

:離散励起子 ここで、指数nが0のとき、式(2-62)は次のように表せる。

( )

(

g j j

)

i j j

A

e

E

E

i

C

E

=

j

+

Γ

,

ln

θ

ε

(2-65) PT(photomodulated transmittance)スペクトルは、誘電率スペクトルの3階微分で表せること が知られている。式(2-64)と式(2-65)の3階微分形は、それぞれ以下のようになる。

( )

(

)

(

)

( )(

)

(

)

(

)



Γ

+

=

Γ

+

=

− −

   

   

     

  

0

2

1

0

2

3 , 3 , 3 3

n

i

E

E

e

A

n

n

n

n

i

E

E

e

A

dE

E

d

n j j g i j j j g i j j j θ θ

ε

(2-66) 透過率の変化分(∆T/T)における臨界点は、式(2-66)の実数部

(

)

Γ

+

=

=

j nj j j g i N j j

e

E

E

i

A

T

T

, 1

Re

θ (2-67) で表すことができる 25) 。 ここで、Ajは強度パラメータを示す。また、n=0は2次元臨界点、 n=2.5は3次元臨界点、n=2は離散励起子モデルである。

(27)

参考文献

参考文献

参考文献

参考文献

1) 藤原 祐之, 分光エリプソメトリー, 丸善 (2003). 2) 川端 州一, 応用物理 57, 1868 (1988). 3) 安達 定雄, 応用物理 62, 1197 (1993). 4) 株式会社溝尻光学工業所, 自動エリプソメータDVA-36VW-A本体機構部取扱説明書. 5) S. Adachi, Optical properties of crystalline and amorphous semiconductors, materials and

fundamental principles (Kluwer Academic Publishers, Boston) (1999).

6) R. M. A. Azzam and N. M. Bashara, Ellipsometry and Polarized Light (North Holland, Amsterdam) (1977).

7) H. G. Tompkins, A User’s Guide to ellipsometory (Academic Press, Boston) (1993). 8) 宇佐美 晶, 100例にみる半導体評価技術, 工業調査会 (1988) 9) 濱口 宏夫, 平川 暁子, 日本分光学会測定法シリーズ 17,ラマン分光法, 学会出版センタ ー (1988) 10) 尾崎幸洋, 実用分光法シリーズ, ラマン分光法, アイピーシー (1998) 11) 日本表面科学会編, 電子プローブ・マイクロアナライザー, 丸善株式会社 (1998) 12) 河東田 隆, 半導体評価技術, 産業図書 (1991)

13) E. Matatagui, A. G. Thompson, and M. Cardona, Phys. Rev. 176, 950 (1968).

14) 尾 崎 俊 二 : 修 士 学 位 論 文“分 光 エ リ プ ソ メ ー タ に よ る 化 合 物 半 導 体 の 光 学 特 性 解

析”(1995).

15) 土屋 知英:修士学位論文“ZnOナノワイヤーの作製とその光学的評価”(2004). 16) 塩谷 繁雄, 豊沢 豊, 国府田 隆夫, 柊 元宏, 光物性ハンドブック, p.441. 17) J. Callaway, Phys. Rev. 130, 549 (1963).

18) J. Callaway, Phys. Rev. 134, A998 (1964). 19) K. Tharmalingam, Phys. Rev. 130, 2204 (1963).

20) J. Bardeen, F. J. Blatt, and L. H. Hall, Photoconductivity Conference (John Wiley Sonc, Inc., New York, 1956), p.146.

21) R. J. Elliott, Phys. Rev. 108, 1384 (1957).

22) L. D. Landau and E. M. Lifshitz, Quantum Mechanics (Pergamon Press Inc., New York, 1959), p.170.

23) D. E. Aspnes, Phys. Rev. 153, 972 (1967).

24) P. Lautenschlager, M. Garriga, L. Vina, and M. Cardona, Phys. Rev. B 36, 4821 (1987). 25) S. Ozaki, T. Tsuchiya, Y. Inokuchi, and S. Adachi, Phys. Stat. Sol. (a) 202, 1325 (2005).

(28)

3

作製方法

作製方法

作製方法

作製方法

3.1

はじめに

はじめに

はじめに

はじめに

本研究で行ったAgGaTe2薄膜の作製方法について説明する。薄膜は、PVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長法:スパッタリング、蒸着など)、CVD(Chemical Vapor Deposition:

化学気相成長法)とエピタキシャル成長を利用したエピタキシーなどがある。本研究では 真空蒸着法により作製を行った。

3.2

真空蒸着法

真空蒸着法

真空蒸着法

真空蒸着法

1) 本研究では AgGaTe2薄膜を作製するのに真空蒸着法を用いている。ここではその原理に ついて説明する。 真空蒸着法とは、真空中で物質を加熱し、蒸発あるいは昇華させ、その蒸気を基板など 他の物質上に凝縮することを利用して薄膜を作製するものである。特殊な場合を除いて、 蒸着膜は一般に数1~数10 nm程度の大きさの非結晶粒、または微結晶を緊密に充填した構 造をもつ。蒸着技術は光学及び電子工業部門で最も古くから利用されており、今なおその 応用分野が拡大されつつある。 高真空中における蒸気流は蒸発表面から発生し、蒸発物の一部が基板に付着し蒸着され る。蒸発効率は蒸発源に対向する基板との配置関係によって決まる。蒸気流の密度分布は、 蒸発時のパラメータに依存し、この蒸気流密度分布と蒸着槽内における蒸発源における蒸 気流密度が高くなればなるほど、膜の生成速度が速くなる。また、蒸発物は真空中で加熱 され、蒸発分子が直接的に飛行するために、10- 4 Torr(10-2 Pa) 以下の真空度を必要とし、常 にこれ以下に保たなければならない。 薄膜の性質は蒸着材料、蒸着層の厚み、蒸着プロセスのパラメータなどにより左右され る。基板における凝固条件、特に表面状態及び温度が、薄膜の組織とその性質に影響を与 える。同様に、蒸着前の基板の前処理及び清浄処理も影響する。 蒸着粒子の他に、雰囲気中残留ガスも基板に入射して堆積したり、また凝固する蒸発粒 子と反応したりするが、これは蒸着作業に悪影響をおよぼす。したがって、基板に入射す る蒸発粒子の数に対し、残留ガス粒子の比は出来るだけ小さく押さえる必要がある。これ は、蒸着中の圧力を低くし、または凝固速度を十分早くすることによって避けることがで きる。一方、特殊な目的としてガス雰囲気による残留粒子の堆積や反応が利用されること もある。この種の用途の場合は、一定のガス成分と雰囲気圧力を保持しなければならない。 真空蒸着法の特徴を以下に示す。

(29)

真空蒸着法の利点  真空中で行うため、基板の酸化や不純物の混入は比較的押さえられる。  蒸着材料は、金属や非金属から幅広く選ぶことができる。  膜厚の分布は主として蒸発源と基板との幾何学的配置によって決まり、広範囲にわた って緊密で一様な厚さの膜をつけることができる。  基板温度はあまり高くならず、また高くすることは必ずしも必要でない。 真空蒸着法の欠点  残留ガス圧力が10- 4 Torr(10-2 Pa) 程度以下の真空装置を必要とする。  基板物質のガス放出が必要な真空度を保ち、膜の付着を妨げない程度でなければなら ない。  合金や化合物は組成が変化する可能性がある。  小さな曲率を持った表面や、複雑な形状を持った表面に一様な膜をつけることが難し い。

3.2

AgGaTe

2

薄膜

薄膜

薄膜

薄膜の

の作

作製方法

製方法

製方法

製方法

AgGaTe2 薄膜は真空蒸着装置を用いて、 真空蒸着法によって製膜した。真空蒸着装 置の概略図および真空槽炉内図を Fig. 3-1 に示す。基板をボート内のソースの真上に 来るように配置し、なるべく膜が基板上で 一定になるようにした。基板はボートと10 cm 距離をとって設置した。今回使用した 蒸着装置は抵抗加熱型のものを使用した。 蒸着は真空度が 4.0×10- 6 Torr 以下まで排 気した。ボート内のソースがすべて飛びき るまで加熱し続けた。 Fig. 3-1 蒸着装置概略図

Fig. 4-8  レーザー顕微鏡観察画像( 600°C )Table 4-8 EPMA分析結果
Fig.  5-7 に SCP 解析から得られた E 0A 、 E 0B の温度依存特性を示す。また、比較のために bulk での TR 測定の結果を同図に示した。 このデータは光吸収測定同様、 以前われわれの研 究室で得られた測定データである。図より、測定方法は異なっているが、結果はよく一致 していることがわかる。測定結果から E 0A 、 E 0B のエネルギー差は ~170 meV であることが明 らかになった。図中の実線及び破線は Pässlar の式によって説明される。理論フィットに用 いたパラメ
Table 5-5 E 0B のパラメータ   (film)  Table 5-6 E 0A のパラメータ   (film)
Fig. A-2  結晶成長の温度設定
+2

参照

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