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多様化する中国の古本屋 -- 国有企業からネット販売まで (特集 アジアの古本屋)

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Academic year: 2021

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多様化する中国の古本屋 -- 国有企業からネット販

売まで (特集 アジアの古本屋)

著者

狩野 修二

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

247

ページ

8-9

発行年

2016-04

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00002965

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アジ研ワールド・トレンド No.247(2016. 5)

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特 集

アジアの古本屋

  中国の古本屋は、一九五〇年代、 公私合営という形を経て他業種の 私 企 業 と と も に 国 営 化 が 進 ん だ。 その結果、北京では一一〇あった 民間の古本屋が、国営企業である 中国書店へとまとめられた(参考 文 献 ① )。 そ の 後、 一 九 八 〇 年 代 になり、私企業による経済活動が 認められるようになると、民間の 古本屋が再び出現し始めた。   現在、古本屋は主に二種類に分 けられる。ひとつは実店舗のある 古本屋であり、もうひとつはイン ターネット上の古本屋である。本 稿では、主に筆者が訪問したこと のある北京の古本屋およびインタ ーネット上の古本屋サイト、特に 最大手である「孔夫子旧書網」を 紹介する。中国の古本屋事情の一 端をお伝えできればと思う。

  「 ︙︙ 八 〇 年 代 以 前、 北 京 の 書 店は二つしかなかった。一つは新 華書店、もう一つは中国書店。新 華書店は新しい本を売り、中国書 店 は 古 本 を 売 っ て い た 」( 参 考 文 献 ② )。 北 京 の 書 店 に つ い て 書 か れているこの資料のとおり、北京 の古本屋といえば長らく中国書店 を指していた。中国の書店に関す る資料を読むと、八○年代以前に 学生であった知識人たちが中国書 店に入り浸り、ここで知的好奇心 を満たしていたことが綴られてい る。 現 在 は 歴 史 的 に 価 値 の 高 い、 い わ ゆ る 古 書 と 呼 ば れ る 資 料 や、 書画、 文学、 歴史関連の新刊本(古 本でない本)を中心に扱っている が、近年刊行された本の古本も販 売されている。しかし、書架上の 配列は無規則で、分野別にもなら べられていない。必要な本を探す のには丹念に棚をみていくほかな く苦労する。   典型的な古本屋といった風情が あるのは、清華大学の西側にある 前流書店である。大通り脇の、気 をつけないと見落としてしまいそ うな路地のなかにあり、一見ひど く寂れた店構えである。実際店内 も古びてはいるが、思ったより奥 行きがあり、人文社会科学分野を 中心とした学術書が分野ごとに並 べられている。この古本屋は、イ ンターネットでも図書を検索・注 文することができるのだが、新し く仕入れた古本はまず店頭に一〇 日から一五日程度並べたのち、イ ンターネットでも販売するといっ た店頭優遇策をとっている。筆者 の来店時、客は一人もいなかった が、店内中央には、発送用に梱包 された図書が積み上げられていた ことから、インターネットでの利

多様化

中国

古本屋

︱国有企業

販売

用が相当数あることがうかがわれ る。   日本ではおそらくあまりみかけ ないタイプの古本屋に豆瓣書店が ある。店は古本屋というよりむし ろ小規模な書店といった印象を受 ける。実はここで売られている本 は出版社の在庫処分品を仕入れた ものなのである。これにより新品 と同様の本が低価格で販売されて いる。もちろん在庫処分品を何で も仕入れている訳ではなく、店主 が人文系の本を中心に選定をして いる。店員によると、誰かが一度 使った本をほしがる人はあまりい ないため、いわゆる古本は扱って いないとのことであった。またこ の店では、一部であるが新刊書も 取り扱っている。   北京ではいくつかの場所で古本 市が開催されている。市内東部に あ る 潘 家 圓 旧 貨 市 場 の 古 本 市 は、 一九九〇年代前半に始まり、現在 でも行われている数少ない古本市 のひとつである。開催は土日のみ で、駐車場を思わせるスペースに 三畳程度の広さを一区画としてそ れ ぞ れ の 売 り 主 が 出 店 し て い る。 潘家圓旧貨市場は、常設市として は、骨董や装飾品などが取り扱わ れる場所ということもあり、古本 08_09_特集_狩野修二_多様化.indd 8 16/03/29 18:09

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アジ研ワールド・トレンド No.247(2016. 5) 市でもそれらに関する資料が多く 売られている。また、毛沢東関連 の資料や地図、連環書と呼ばれる 小型の本、民国期の資料などが多 く取り扱われていた。本の扱いは 売り主によって随分異なり、一冊 一冊ビニールに包みきれいに陳列 する店から、うずたかく積まれた 本を前に「一冊二元!」とたたき 売りをする店、店主が狭い売り場 スペースを本を踏みつけながら歩 く店などさまざまである。

  中国でインターネット上の古本 屋が現れ始めたのは二〇〇〇年頃 といわれている。一時は斜陽産業 といわれた古本市場はインターネ ットの登場により再び活性化する ことになる。従来の実店舗の形態 は、店側・客側双方の売買が基本 的に居住する地域内に限定されて しまい需要と供給のマッチングが 難しかった。しかしインターネッ トの登場によりこれらの制約がな くなった。これに加え、実店舗を 持つことによる賃貸料などのコス ト削減や同一図書の価格がインタ ーネット上で比較できるため、そ の値段が平均化するなど、双方に とって利点が生じた (参考文献③) 。 孔夫子旧書網は、インターネット 古 本 屋 の な か で は 比 較 的 早 い 二〇〇二年に創業され、現在では 最大手の古本屋サイトである。こ のサイトは単独の古本屋ではなく、 複数の古本屋がインターネット上 で取引できるようなプラットフォ ームを提供している、いわゆるオ ンラインモールである。二〇一六 年二月現在、約六万の店舗が出店 し、合わせて六九〇〇万冊もの本 が出品されている。前述の前流書 店もここに出店し実店舗とインタ ーネット店舗両方で営業している。 筆者は、中国滞在時にこのサイト を利用し、統計局でもすでに販売 していないような一九八〇~九〇 年代の統計資料を収集し、アジア 経済研究所図書館が所蔵する統計 資料の欠号年を補充した。このよ うに図書館や地方都市にいる研究 者にとって、これまでなかなか収 集できなかった資料へのアクセス は格段に向上したといえるであろ う( 参 考 文 献 ③ )。 た だ し、 各 店 舗によって対応がまちまちである 点は注意が必要である。例えば注 文をしてもその後連絡がない、あ るいは領収書の発行をしてくれな いなどである。このため利用しな がら優良店舗を見極めていくこと も必要である。   また、孔夫子旧書網では、すで に新刊書を取り扱う書店も存在し ており、古本屋サイトという枠を 超えた総合書店サイトへの変化も みられる。

  以上、北京の古本屋とインター ネット上の古本屋を簡単に紹介し たが、このなかだけでも昔ながら の店舗からネット販売との兼業店、 処分される在庫を販売する店など 多様な形態の古本屋があることが わかる。また、中国書店や豆瓣書 店、孔夫子旧書網の一部店舗のよ うに新刊書を取り扱うなど、古本 屋と新刊書店の垣根も低くなり始 め て い る。 特 に 孔 夫 子 旧 書 網 は、 インターネット上での古本取引の 約九割を占めているとの話もあり、 これに新刊書が加わった場合、孔 夫 子 旧 書 網 で み つ か ら な い 本 を、 別の書店で探すのは難しいといっ た情況が発生するのではないかと の 予 想 も さ れ て い る( 参 考 文 献 ④ )。 こ う し た 情 況 も 含 め、 今 後 中国の古本屋がどのように変化し ていくのか非常に興味深いところ である。 ( か の う   し ゅ う じ / ア ジ ア 経 済 研究所   図書館) 《参考文献》 ① 吴熹、李雪懿著「北京旧 书 市 场 的 经营 与开 发 」( 『北京 联 合大学 学 报 』十六巻四期、二〇〇二年 一二月) 。 ② 严 彬 主 编 『 北 京 书 店 印 象 』( 中 央 编译 出版社、二〇一六年) 。 ③ 沈志富・汪健著「 论 网 络 旧 书业 的 发 展特点及 现实 意 义 」( 『国家 图 书 馆 学 刊 』 第 八 二 期、 二〇一二年四月) 。 ④ 赵 玉琦「中国互 联 网旧 书经营 模 式 初 谈 ―― 以 孔 夫 子 旧 书 网 为 例 」( 『中国出版』二〇一二年五 月上) 。 潘家圓古本市の様子(筆者撮影) 08_09_特集_狩野修二_多様化.indd 9 16/03/29 18:09

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