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国際化への対応としての共同研究 (特集 外国を研究すること)

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国際化への対応としての共同研究 (特集 外国を研

究すること)

著者

後閑 利隆

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

216

ページ

7-8

発行年

2013-09

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003625

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  近年は国際航空券が劇的に安く なり、また、インターネットで情 報を集めやすくなった。さらに、 海外に滞在する日本人研究者だけ でなく、現地の研究者も優秀であ る。 そ こ で、 「 日 本 か ら 外 国 を 研 究する研究者は、世界にいる同業 者とどのように勝負すべきか」と いうテーマを頂いた。   私自身は外国を研究している専 門家と公言できないことを前置き しなければならない。また、以下 で外国を研究する研究者に言及す る場合には、単にアジア経済研究 所(以下、アジ研)にいる外国を 研究対象とする研究者たちの観察 から得られた限られた範囲の話で あることも前置きしたい。

●現地の日本人との比較

  外国を研究している専門家の中 で、ミャンマーを研究するKさん と仕事をさせて頂いている。自分 には真似できない驚かされた出来 事 が 三 つ あ っ た。 ま ず、 ミ ャ ン マーの精米所で聞き取り調査をし た際に、訪問先の大規模な精米所 で、当初訪問を予定していた精米 所以外に、ごく小規模な精米所が 近くにあることが分かった。その 精米所までの道幅が狭いので、K さんが周囲にいたミャンマー人に 声をかけ、スクーターの後ろに乗 せてもらえるように交渉をして、 事なきを得た。次に、ミャンマー の空港の取調べで、Kさんの旅行 鞄 か ら 多 額 の 現 地 通 貨 が み つ か り、職員が「プレゼント」と言い つつ、その現地通貨を職員の手の 平に載せるように要求された。K さんの対応は「○○さんは今日は い る か な 〜。 」 と 言 い 出 し、 空 港 に勤務する知人が現金を預かるよ うに空港の警備員に頼み、次回の 訪 問 時 に そ の 所 持 金 を 受 け 取 っ た。 三 点 目 と し て は、 イ ン タ ー ネットで探しても、問い合わせ先 の電話番号しか分からないデータ について、Kさんにデータの必要 性を説明すると、Kさんの部屋か ら、目的のデータが入ったCD― ROMが出てきた。そのCD―R O M は 頂 き も の ら し い。 前 記 か ら、外国を研究している専門家の 強みは、現地語が話せること、現 地 人 と の ネ ッ ト ワ ー ク が 広 い こ と、統計などの資料収集を継続す る こ と に あ る と 思 う。 ( た だ し、 Kさん本人からは、研究に関係が あるのは、三点目だけではないか という指摘を受けた。しかし、一 点目と二点目の強みが三点目の強 み に つ な が る と 思 う。 ) 前 記 の 三 点 は 継 続 が 大 き な 違 い を 生 む た め、外国に滞在する日本人が増加 し、また、インターネットで現地 の情報を簡単に取得できるように なったとしても、一朝一夕で他の 日本人に対する優位性は無くなら ないと予想する。



現地の優秀な研究者への対応   次に、現地人の優秀な研究者が 増えているので、差別化が難しく なったのではないかという疑問に ついては、電話料金が安くなり、 また、Eメールで容易に原稿を送 れるので、現地の研究者と一緒に 仕事をすればいいと思う。   その理由を説明するために、ま ず、現地の研究者と日本の研究者 で作業ごとの生産性が異なること を想定する。日本人研究者のJ氏 と 現 地 人 研 究 者 の F 氏 が い た 際 に、現地人研究者F氏に日本人研 究者J氏が全ての面で劣っていた としても、J氏に比較優位がある 作業をF氏の代わりにJ氏が負担 することで、J氏とF氏が別々に 研究を進める場合よりも、J氏と F 氏 が 共 同 で 仕 事 を 進 め る ほ う が、効率は上がることを示す。比 較優位がある作業とは、機会費用 が小さい作業を指す。機会費用を 説明するための具体例として、論 文の作成が資料収集と論文執筆か ら成るとする。まず、J氏が現地

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で資料収集をするために二カ月必 要で、調査結果を論文にまとめる のに一カ月必要とすると、J氏の 現地調査に対する調査結果を論文 にまとめる機会費用は一/二とな る。一方で、調査結果を論文にま とめることに対する現地調査の機 会費用は二となる。J氏の現地調 査に対する調査結果を論文にまと め る 機 会 費 用 の 方 が 小 さ い た め に、調査結果を論文にまとめるこ と に J 氏 は 比 較 優 位 を 持 つ。 一 方、現地人の研究者が資料収集に 要する期間が一/四カ月で済み、 調査結果を論文にまとめる期間が 二/三カ月で済むとする。その場 合には、資料収集に対する調査結 果をまとめる機会費用は八/三と なり、調査結果をまとめることに 対する資料収集の機会費用は三/ 八となる。そのため、現地研究者 は資料収集に比較優位を持つこと になる。次に、J氏だけが論文を 作る場合には、論文一本を作成す るために必要な時間は三カ月とな り、F氏だけが論文を作る場合に は、一本の論文を作成するために 必要な時間は一一/一二カ月必要 となる。次に、J氏もF氏も比較 優位を持つ作業に特化して、共著 をすると、つまり、J氏は論文の 執筆だけを行い、F氏が資料収集 だけを行った場合には、二本の論 文を作成するために、J氏は二カ 月を必要とし、F氏は一/二カ月 を要する。つまり、J氏とF氏が 別々に論文を執筆するより、比較 優位のある作業に特化して、J氏 とF氏が共に論文を執筆したほう が、一人当たりで同じ論文の本数 を執筆するために必要な時間は、 J氏もF氏も少なくて済む。ここ では、J氏とF氏の間で、ある作 業に必要な期間を比較すると、ど の作業でもF氏のほうがJ氏より 短時間で済むために、F氏はJ氏 にどの作業でも絶対優位を持って いる。絶対優位はあったほうがよ いが、比較優位を生かせばいい。   次に、生産性の違いではなく知 識の創造と移転に焦点を当てる。 ここでは、現地の研究者と日本の 研究者の各々が持つ知識が異なる ことと共通の知識を持つことが、 知識を創造するために会うことに どのような影響を与えるかに言及 す る 。 そ の た め に 、 B er lia n t a n d Fujita [ 2009 ] で 提 示 さ れ た 理 論分析の結果を紹介する。まず、 現地人研究者と日本人研究者が全 く同じ知識を持つのであれば、情 報交換の必要はない。逆に、知識 が異なり過ぎると、相手の話すこ との意味が分からず、意思疎通が できない。そのため、ある程度の 共通の知識があるが、お互いに異 なる知識を持つ相手と会う誘引を 持つことが示された。さらに初期 の状況に応じて、二種類の均衡が 示された。まず、共有知識が少な く、一方が他方に与えられる知識 が二人の知識全体の大部分を占め る初期条件では、長期的には二人 は会わなくなる。それ以外の初期 条件では、長期的には、両者の共 通知識と一方が他方に与えること ができる知識のバランスがよくな る。そのため、海外の研究者の動 向が心配になるような競合関係に あるときには、その研究者と共通 の知識があると言えるので、共通 の知識と双方の独自の知識の間で バランスの取れた安定的な関係を 築ける可能性もある。

●日本にいるのであれば

  さらに、日本にいる外国を研究 する研究者は日本にいる異分野の 研究者と一緒に仕事をすることに より、研究の幅を広げることも可 能だと思う。日本にいる外国を研 究する研究者は、日本にいる他の 分野の研究者と比べ、現地の問題 や 様 々 な 因 果 関 係 を 理 解 し て い る。さらに、異分野の分析手法で 得られた結果の妥当性やその解釈 が容易にできる。そのうえ、資料 も持っている。また、異分野の研 究者とお互いの意図が理解できな いほど、学術的な背景が異なる場 合には、異分野の研究者と分野が 近い現地の研究者を日本の異分野 の研究者に紹介することで、三名 で研究を進めても相互にメリット があると思う。   以上から、比較優位から分業が 富を生み、共通知識のある競争相 手は長期的な知識の創造と交換を 行える可能性もあるので、 研究環 境や情報環境の変化を生かして、 共同研究を行うとよいと思う。 ( ご か ん   と し た か / ア ジ ア 経 済 研 究所   経済統合研究グループ) 《参考文献》 ① B er lia n t M ., an d M . F u jit a 2 0 0 9 . “D yn am ic s o f K n o w l-edge Creation and T ransfer: T h e T w o P er so n C as e ”, In -te rn at io n al J ou rn al o f E co -n o m ic T h e o ry , 5 (2 ): 1 5 5 -179.

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