• 検索結果がありません。

ワイン産業への黒人の参入 -- BEEワイナリーの挑戦 (特集 南アフリカの経済・社会変容)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ワイン産業への黒人の参入 -- BEEワイナリーの挑戦 (特集 南アフリカの経済・社会変容)"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ワイン産業への黒人の参入 -- BEEワイナリーの挑

戦 (特集 南アフリカの経済・社会変容)

著者

佐藤 千鶴子

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

206

ページ

16-19

発行年

2012-11

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003827

(2)

  民主化後の南アフリカでは、白 人がコントロールしてきた経済の 主流部門への黒人の登用・進出を 促すためのさまざまな取り組みが 行われている。長い間、白人によ る商業的農業部門の支配を象徴す るような産業であったワイン産業 においても、民主化とともに導入 された土地改革と黒人の経済力強 化︵BEE︶政策を背景に、黒人 が経営する 、あるいは経営に関 わっているワイナリー︵BEEワ イナリー ︶が出現してきている 。 本稿では、南アフリカに存在する 三つのタイプのBEEワイナリー について、代表的な事例を紹介し つつ、それぞれの特徴について論 じる。

民主化後のワイン産業の成長   現在、ワインは南アフリカを代 表する農産物加工品として知られ る。南アフリカはワイン用ぶどう の栽培面積では世界第一二位なが ら、ワインの生産量においては世 界第八位、世界のワイン生産量の 三・六%︵すべて二〇一一年︶を 占めている︵参考文献①︶ 。   アパルトヘイト撤廃がほぼ確実 となった一九九〇年代初頭以降 、 南アフリカのワイン生産量は右肩 上がりに伸びたが、ワイン産業の 成長を牽引したのが輸出であり 、 二〇〇八年にはワインの輸出量が 国内の販売量を上回るに至った ︵図 1︶。オーストラリアやアメリ カ、チリなどと共に﹁新世界﹂ワ インに分類される南アフリカ産ワ インは、 おもにイギリス、 ドイツ、 スウェーデン、オランダといった ヨーロッパ諸国に輸出されてい る。近年では、日本のデパートや 酒類専門店でも南アフリカ産ワイ ンが販売されるようになってい る。   ぶどう栽培農場とワイン醸造 所 ︵セラー ︶はケープタ ウンから内陸へと広がる 西ケープ州に集中してお り 、ワイン産業は 、ワイ ン ツ ー リ ズ ム を 含 め て 、 同州の被雇用者の八 ・ 八% ︵二〇〇八年︶ 、ほぼ一一 人に一人を雇用する基幹 産業となっている ︵参考 文献②︶ 。

白人農場主との

合弁ワイナリー

  第一 の タ イ プ の B E E ワ イナリー は 、 通常 、 白人農 場主 と の 合弁事業 の 形 態 を 取っ てい る。こ れ は も と も と、黒 人 に よ る 土 地 所 有 を 増や す た め に 民 主 化 後 に導 入された土地改 革 の 一 環と し て 始 め ら れ た 。 二 〇〇〇 年 代 に 入っ て か ら は 、 政 府 の 土 地 改 革 資 金 を 受 け ず に 、 農 場主 が 所有地 の 一 部 を労働者 に 与 え る 形 で の 合 弁 事業も増加 し て い る 。   南ア フ リ カ の 土 地 改 革 は 、 政 府 が補 助 金 を 支 給 す る こ と で 黒 人 に よる 土 地 取 得 を 財 政 的 に 支 援 す る ことを 主 軸 と し て い る 。だが 、 ワ イ ン 用 ぶ ど う 栽培農場 の 場合 、 土 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 (100万リットル) 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 輸出 国内販売 生産量 図1 ワイン生産量・国内販売量・輸出量の推移

(出所) South African Wine Industry System (SAWIS) 2005. およびSAWIS 2011.

より筆者作成。

南ア

・社

ン産

の黒

人の

参入

BEE

(3)

地の 価 格 が そ も そ も 相 対 的 に 高 い う え に 、 苗を植え て か ら収穫を得 ら れ る ま で の 四年間は収入を得 る ことが で き な い 。 そのため 、 た と え農 場 を 購 入 できたと し て も 、 農 場 か ら実際 に 収入を得ら れ る ま で には 時 間 がかか っ てし ま う 。ぶ ど う栽培技術 や ワ イ ン 醸造 に 関 す る 知識 や経験も必 要 で あ る 。 それ ゆ え、 黒 人 に 土 地 を 与 え て 農 場 経 営 を完全 に 任せ て し まうよ り も 、 白 人農場主 と の 合弁事業 の 形 を取 っ た方が良 い 。 こ う い っ た考 え に 基 づ き、ワ イ ン 産 業 界 の 推 奨 す る 土 地改革 モ デ ル と し て提 案された の が共 同 出 資 ス キーム で あ っ た。   同スキームのもとでは、白人農 場主と黒人農場労働者双方が出資 して、農場経営やワイン醸造販売 を共同で行う。出資は土地、農業 機械や醸造設備などさまざまな形 態がありうる。たとえば農場労働 者は、土地改革による土地購入補 助金を利用して農場の一部ないし 全部を購入し、土地を出資金の一 部とするほか、土地を担保に銀行 から回転資金を借り入れて出資金 とする。白人農場主は、所有する 農場の一部を無料で提供する、ト ラクターなどの農業機械を提供す る、あるいはワイン醸造設備の使 用権を提供するといった形で資本 提供を行う。事業を通じて得られ る利益は、出資比率に応じて、農 場主と農場労働者の間で分配され る。   合弁ワイナリーの最も初期の事 例のひとつが、タンディ︵コーサ 語で ﹁愛を育む﹂の意︶である 。 タンディは、南アフリカ森林公社 と白人の経営するデラスト・エス テートが所有する総計二〇〇ヘク タールの土地を、農場労働者と地 元住民に売却する土地改革事業と して一九九六年に始まった。森林 公社、 デラスト、 コミュニティ︵労 働者と住民︶の三主体が等しい割 合で出資する合弁事業の形が作ら れ、森林公社は土地、デラストは 土地およびトラクターなどの使用 権と経営補助、コミュニティは土 地改革補助金を資本として提供し た。それまで森林に覆われていた 土地が開墾され、西ケープ州政府 農業省の支援を受けつつ、りんご などの果樹とワイン用ぶどうが植 えられた。   ぶどうの収穫ができるようにな ると、そのぶどうからワインを醸 造し 、﹁タンディ ﹂という新しい ブランド︵銘柄︶として売り出す タンディ・ワイン事業が新たに開 始された。タンディの農場には醸 造設備がないため、ワインは隣接 するデラスト・エステートとステ レンボッシュにある醸造所で醸造 されることになった。後者は販売 促進窓口の役割も果たし、二〇〇 三年にタンディ・ワインはフェア トレード認証を取得した。同認証 はタンディ・ワインが輸出市場で 売上げを伸ばすのに大いに役立っ たとされ、現在、タンディは南ア フリカのBEEワイナリーとして は売上げ第二位を誇っている ⑴ 。

●ワイン銘柄ビジネス

  第二のタイプの BEE ワイナ リーは、土地を取得せずに、既存 の醸造所からバルク・ワインを購 入し、ブレンド、熟成、瓶詰めし て、独自の銘柄として販売すると いう形態をとる。 筆者はこれを ﹁ワ イン銘柄ビジネス﹂ と呼んでいる。 これはワイン生産の主たる二工程 ︵ぶどう栽培 、ワイン醸造︶のう ち第二工程のみに関与する事業形 態であるが、黒人のワイン銘柄ビ ジネスは実働部隊が一人か二人に すぎない零細企業が多く、ほとん どの企業においてすべてのワイン 醸造過程 ︵ぶどうの破砕 、 圧搾 、 発酵 、ブレンド 、熟成 、瓶詰め︶ は既存の醸造所に委託されてい る。   土地や醸造所という資産を必要 としないため、銘柄ビジネスは比 較的参入が容易であると考えられ る。だがその反面、ワインの生産 工程に実質的にはほとんど関与し ないため、事業からの退出も早い というのが現状である。 たとえば、 黒人ワイン銘柄ビジネスの先駆け として二〇〇三年に設立されたリ ンディウェ・ワイン︵ズールー語 で﹁訪れを待っていた人﹂ の意︶ は、 わずか五年ほどで新規のワイン生 産ができなくなり廃業に追い込ま れている。   黒人銘柄ビジネスは、二〇〇〇 タンディのぶどう栽培農場(2011年10月筆者撮影)

ワイン産業への黒人の参入

― BEEワイナリーの挑戦 ―

(4)

職 、 ぶどう栽培やワ 。私が育ったタウン だから私はワインなんか嫌い だった 。だけどその一方で 、 メディアではワインはいつも 洗練された飲み物として描か れている。この違いは何なの かってずっと気になってた の ⑵ 。   自らの銘柄ワインを販売する黒 人銘柄ビジネスの武器は、ワイン に物語性をもたせることで差別化 を図ろうとすることである。セス フィキレ・ワインは、ケープタウ ンのタウンシップで育った四人の 女性が創った企業のワイン銘柄で あることを前面に打ち出した販売 戦略を展開している。他にも、た とえばアフリカン・ルーツ・ワイ ンが販売している﹁セブン・シス ターズ﹂銘柄ワインは、七種類の ワインに対して、七姉妹それぞれ の性格とワインの風味を関連づ け、姉妹の名前にちなんだ名前が つけられている。さらに、ワイン の裏ラベルには姉妹が育った西 ケープ州沿岸部の小さな漁村の話 が記されている。ウィメン ・ イ ン ・ ワインも女性が起こしたワイン企 業であることを社名で明確にして おり、販売戦略としても女性が所 有・経営する企業であることを前 面に打ち出している。   ワイン市場における生産国間お よび銘柄間の競争は激化してお り、BEEや女性といった物語性 だけでは事業を軌道に乗せていく のは実際には容易なことではな い。銘柄ビジネスには、販売して いる商品の生産過程に直接的に関 わることが難しく、製品の決定や ワインのスタイル、種類などに関 する影響力が弱いという問題も指 摘されている ︵参考文献③︶ 。銘 柄ビジネスは、土地を取得する見 込みが限られているなかで、黒人 にとってワイン産業に参入する近 道であったが、ワインの生産工程 に関わる資産 ︵ぶどう栽培農場 、 醸造所︶を持たないことが、自銘 柄ワインの販売の際に不利益とな ることが明らかになりつつあり 、 現在では、彼らの多くがぶどう栽 培農場の取得を望むようになって いる。

黒人家族が所有・経営する

BEE

ワイナリー

  このようなワイン銘柄ビジネス の希望を体現しているのが、ムフ ディ・ワイン︵ツワナ語で﹁収穫 者﹂の意︶である。ぶどう栽培農 場を所有するBEEワイナリーの ほとんどが合弁ワイナリーである のに対し、ムフディは、黒人家族 がぶどう栽培農場を購入し、ワイ ンの醸造販売を開始した例外的な 事例であり、第三のタイプのBE Eワイナリーとして位置づけられ る 。二〇〇二年にステレンボッ シュ郊外の二三ヘクタールの農場 を購入したアフリカ人家族は、も ともと都市で専門職の仕事に就い ており、農場の購入は長年抱いて きた農場経営という﹁夢﹂の実現 であった。   ぶどう栽培においてもワイン醸 造においてもまったくの素人で あったが、インターネットで知識 を身につけながら、以前の農場主 BEEワイン銘柄(2011年9月筆者撮影)

(5)

が雇用していた労働者からぶどう 栽培の実践について学び、隣接す るエステートを経営する白人家族 からワインの醸造、保存、販売に ついて学んだ。ムフディ・ワイン は、同エステートを通じて、イギ リスの大手スーパーマーケット ・ チェーンへワインを卸す契約を獲 得し、国内と輸出市場双方におい てワインの売上げを伸ばす努力を する一方で、農場に宿泊施設を建 設し、ワインツーリズム方面へと 経営の多角化にも挑んでいる ⑶ 。 事業経営を軌道に乗せるのは決し て容易ではないものの、黒人家族 が単独で経営するワイナリーは西 ケープ州の黒人社会に希望を与え る存在ともなっている ⑷ 。   南アフリカのワイン産業におい てBEEワイナリーの存在感はま だまだ薄いが、以上で述べたよう な三つのタイプのBEEワイナ リーそれぞれの今後の展開に注目 していきたい。 ︵さとう   ちづこ/アジア経済研究 所  アフリカ研究グループ︶ ︽注︾ ⑴ タンディ ・ワイン常務インタ ビュー ︵二〇一一年一〇月五日、 於エルジン︶ 。 ⑵ セスフィキレ・ワイン代表イン タビュー︵二〇一一年九月二九 日、於ググレトゥ︶ 。 ⑶ ムフディ・ワイン最高経営責任 者インタビュー︵二〇一一年九 月 二 六 日 、 於 ス テ レ ン ボ ッ シュ︶ 。 ⑷ 南アフリカ・ワイン産業信託基 金BEE&社会開発事業責任者 インタビュー︵二〇一〇年九月 二二日、於ケープタウン︶およ びワイン産業開発協会BEE事 業責任者インタビュー︵二〇一 〇年九月一七日、於パール︶ 。 ︽参考文献︾ ① South African Wine Industry System (SA WIS) 2012. , P aarl: SA WIS (http://www .sawis. co.za/info/download/ Book_2012_eng.XLS), 二 〇 一二年九月一八日アクセス。 ② Conningarth Economists 2009. , P aarl: SA WIS (http://www .sawis. co.za/info/download/Macro_ study_2009.pdf), 二〇一一年 一一月二日アクセス。 ③ South African Wine Industry T rust (SA WIT) 2010. , Stellenbosch: SA WIT . ムフディ・ワイン経営者(2011年9月筆者撮影)

ワイン産業への黒人の参入

― BEEワイナリーの挑戦 ―

参照

関連したドキュメント

仏像に対する知識は、これまでの学校教育では必

Bでは両者はだいたい似ているが、Aではだいぶ違っているのが分かるだろう。写真の度数分布と考え

「兵庫県災害救援ボランティア活動支 援関係団体連絡会議」が、南海トラフ

○○でございます。私どもはもともと工場協会という形で活動していたのですけれども、要

それで、最後、これはちょっと希望的観念というか、私の意見なんですけども、女性

【細見委員長】 はい。. 【大塚委員】

 医療的ケアが必要な子どもやそのきょうだいたちは、いろんな

・沢山いいたい。まず情報アクセス。医者は私の言葉がわからなくても大丈夫だが、私の言