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東南アジア政治の比較研究 (特集1 開発途上国、地域の理解の深化に向かって -- 2017年度アジア経済研究所の研究プロジェクト)

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全文

(1)

東南アジア政治の比較研究 (特集1 開発途上国、地

域の理解の深化に向かって -- 2017年度アジア経済

研究所の研究プロジェクト)

著者

川村 晃一

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

260

ページ

8-8

発行年

2017-05

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00048948

(2)

特集1

開発途上国、地域の理解の深化に向かって

―2017年度アジア経済研究所の研究プロジェクト―

川 村 晃 一

東南アジア政治の比較研究

●制度を通じた東南アジアの比較分析 アジア経済研究所は、2010~11年度に実施した「東 南アジア制度の比較分析」研究会の成果として、中村 正志編『東南アジアの比較政治学』(アジ研選書No. 30)を2012年に刊行した。この本は、東南アジアの先 進5カ国(タイ、インドネシア、フィリピン、マレー シア、シンガポール)における政治制度がいかなる形 態をとり、いかに機能しているかを、政治学の分析枠 組みを用いながら平易な形で解説したものである。 東南アジア政治に関する概説書は、これまでも数多 く出版されてきた。しかし、それらの書籍は、「タイ」、 「フィリピン」といった国別の事情を紹介するもので あったり、年代順にそれぞれの国々がたどってきた歴 史を叙述するものだったりするのがほとんどである。 このような構成では、各国の歴史を個別に知りたい読 者にはいいが、東南アジア政治のおおまかなイメージ をつかみたい読者の要求に応えることはできない。 これに対して、『東南アジアの比較政治学』の目次 を見ると、第1章の「政治体制」に始まり、「執政・立 法関係」、「司法制度」、「政党」、「選挙」、「社会運動」、 「国際制度」といったように、抽象的な概念が並んで いる。そこには国の名前も出てこないし、年代順にも 並んでいない。それぞれの章では、政治学の理論を用 いながら、制度の変容や差異が各国の歴史の中で、ま た国家間で、どのような政治の違いを生んだのかが説 明されている。同書は、制度を比較しながら理論を使っ て東南アジアを分析することで、この地域を単純化し た形でひとまとめに理解できるように工夫されている のである。 ●さらなる東南アジアの比較分析へ 今年度に発足した本研究プロジェクトは、この『東 南アジアの比較政治学』の手法を受け継いだうえで、 カバーする範囲を広げていこうというものである。東 南アジア各国でめざましい経済成長が続いていること もあり、これらの国々の現地情勢に対するニーズは衰 えることがない。一方で、高い経済成長にともなう急 速な社会変容を経験している東南アジア諸国では、社 会に通底する構造的問題が再燃すると同時に、経済社 会変容にともなう新しい問題が発生するなど、政治的 に対処されなければならない問題も多様化、複雑化し ている。しかしながら、とくに政治情勢については情 報がまだまだ不足しており、現地の歴史的背景や制度 的特徴などを踏まえた分析の必要性は高い。 一方で、東南アジアの政治情勢に関する解説は、特 定の国の文脈に即してなされすぎるところがある。あ る国が直面する問題が他の国ではどのように表出して いるのか、過去にはどう対処されたのか、といった比較 の視点が提供されないため、政治学で蓄積されてきた 知見が東南アジアの分析に十分生かされないまま、そ れぞれの国に固有の問題として処理される傾向がある。 そこで、本プロジェクトは、現地の事情を踏まえな がらも、政治学の理論を活かしつつ地域の国々が直面 する政治的・社会的イシューを比較分析し、読者に分 かりやすく東南アジアのいまの姿を提示していくこと を目指すことにした。取り上げられるイシューは、民 主主義、法の支配、軍と政治の関係、地方政治といっ たガバナンスに関わるもの、エスニシティや宗教、市 民社会、ジェンダーといった国家と社会の関係に関わ るもの、国際協調と国際紛争、国境を越える人の移動、 そして日本・東南アジア関係といった国際関係に関わ るものまで幅広くカバーすることを予定している。 これらの問題は、東南アジア以外の地域の国々にも 共通するものである。地域固有の要因だけから説明す るのではなく、理論的にもこれらの問題を分析するこ とで、域内だけでなく、域外と比較しながらの理解も 可能になる。本プロジェクトでは、政治学と地域研究 の双方の知見を結びつけることを通じて、現代東南ア ジアの政治を理解するための視座を分かりやすい形で 読者に提供することを目指したい。 (かわむら こういち/アジア経済研究所 東南アジ アⅠ研究グループ)

8

アジ研ワールド・トレンド No.260(2017. 6)

参照

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