練習船深江丸20年の航跡
The Track of Training Ship “FUKAE MARU” in her 20 years of Service
矢野吉治
有田俊晃
Yoshiji YANO, Toshiaki ARITA
(平成 19 年 4 月 2 日 受付)
Abstract
T.S. FUKAE MARU of the Faculty of Maritime Sciences, Kobe University started the ship services in October, 1987. And she faces 20 years this year. In these 20 years, she has been engaged in various services such as investigations and researches, experience cruises and enlightening activities concerning maritime affairs besides her original activity as a training ship. Then, the total activities and tracks of T.S. FUKAE MARU were investigated and described in this paper for the reference of the construction plan of the next FUKAE MARU.
(Received April 2, 2007) 1.はじめに 練習船深江丸は文部省所有の神戸商船大学附 属練習船として昭和 62 年(1987 年)10 月に就 航し、以来 20 年を迎える。平成 15 年(2003 年)10 月の大学統合後は海事科学部附属練習船に、ま た、平成 16 年 4 月、国立大学の法人化に伴って 船舶所有者が神戸大学に、さらに平成 19 年 4 月 には海事科学研究科附属練習船となり、大学変 遷の歴史とともに現在に至る。 平成 11 年 7 月に神戸商船大学紀要第二類商船 ・理工学篇第 47 号で "附属練習船「深江丸」10 年の航跡" と題し、就航以来 10 年間の活動状(1) 況、船の現状と展望などについて報告した。 その後さらに 10 年が経過したことから、今回 改めて歴代の深江丸を紹介するとともに、現、 深江丸の就航後 20 年間における運航実績の他、 近年の活動状況などについて、航海日誌その他 の運航関連資料を基に精査したので報告する。 2.歴代の深江丸 船名の「深江丸」(ふかえまる)は、旧神戸 高等商船学校時代からのゆかりの地「深江」に 因んで歴代その名が受け継がれてきた。昭和 27 年 5 月の神戸商船大学創立後、当時の運輸省航 海訓練所における大型練習船による長期の練習 船実習とは独立して、大学独自の短期間の実習 や調査・研究・実験用として専用の練習船を望 む声が高まり、開学 6 年目の昭和 33 年(1958 年)2 月、待望の練習船が、その名を「深江丸」 と命名され進水した。これにより商船大学の附 属練習船を用いた独自の実習・教育・訓練並び に船舶や海事に関連する様々な実験や調査など が可能になり、実船を活用した教育・研究活動 の第一歩を踏み出した。 昭和 33 年 4 月に同船は竣工したが、当時とし ては最新鋭の運航設備と機器を搭載し、商船大 学の練習船としては小型ながらも十分な機能と
性能を備えていた。就航後は期待通りの活躍を 果たし、大学において輝かしい存在であった。 しかしながら、日進月歩の技術革新、商船の大 型化と自動化、海運界や海事産業界のめまぐる しい革新と発展に伴い、わずか 10 年でその座を 次の練習船に譲ることになった。 深江丸(Ⅱ)は昭和 43 年(1968 年)2 月に進 水、先代深江丸の活躍と実績、経験等をふまえ、 将来の技術進歩に対応すべく最新の自動化設備 と画期的な実習・教育・実験・研究設備を備え た練習船として就航した。学内外の学生や教官 ・研究者他、様々な研究分野を対象に持ちうる 能力を発揮し、附属練習船として永らく時代の 要請に応え続けた。建造以来歳月を重ね、船体 ・機関の他、各種設備の老朽化が目立ちはじめ たことから、新たな時代への適応、要求される 高度な教育・実験・研究水準の確保、科学技術 のめざましい進歩に対応できる諸設備の拡充、 さらには実習・居住環境の整備などが要求され るところとなり、代船の必要性が強く望まれた。 このような中、昭和 62 年(1987 年)10 月に 深江丸(Ⅲ)(以下、深江丸という)が就航し、 附属練習船としての能力と持ちうる機能を発揮 しながら現在に至る。 歴代の深江丸については神戸商船大学五十周 年記念誌及び同七十五周年記念誌に紹介されて いることから、ここでは写真と主要目を示す。 深江丸(Ⅰ)を図 1 に、深江丸(Ⅱ)を図 2 に、 現在の深江丸を図 3 に、また、同船の進水時の 風景を図 4 に示す。 図 4 深江丸(Ⅲ)の進水風景 図 1 深江丸(Ⅰ)150.86 総トン 図 2 深江丸(Ⅱ)361.71 総トン 図 3 深江丸(Ⅲ)449.00 総トン 2.1 深江丸(Ⅰ) ※ 1 海里(mile)= 1.852 km 《主要目》 1 knot = 1.852 km/h 1.総トン数:150.86 トン 2.全長:31.83 m 3.幅:6.40 m 4.喫水:2.50 m 5.航行区域:沿海区域(距岸 20 海里以内) 6.航海速力:10 ノット(約 18km/h) 7.最大搭載人員:54 名 8.主機関:ディーゼル 450 馬力× 1 基 9.推進器:4 翼固定 直径 1,600mm 10.燃料搭載量:16.5KL 11.清水搭載量:16.18 トン
12.航続距離:1,000 海里(約 1,800 ㎞) 13.建造所:林兼造船所 14.進 水:昭和 33 年(1958 年)2 月 6 日 2.2 深江丸(Ⅱ) 《主要目》 1.総トン数:361.71 トン 2.全長:37.00 m 3.幅:7.80 m 4.喫水:2.70 m 5.航行区域:近海区域 6.航海速力:10.75 ノット(約 20km/h) 7.最大搭載人員:66 名 8.主機関:ディーゼル 750 馬力× 1 基 9.推進器:4 翼可変 直径 1,900mm 10.燃料搭載量:40.0KL 11.清水搭載量:56.0 トン 12.航続距離:2,700 海里(約 5,000 ㎞) 13.建造所:美保造船所 14.進 水:昭和 43 年(1968 年)2 月 28 日 15.主要設備:指導船橋、バウ・スラスタ 2.3 深江丸(Ⅲ) 《主要目》 1.総トン数:449.00 トン 2.全長:49.95 m 3.幅:10.00 m 4.喫水:3.20 m 5.航行区域:近海区域 (GMDSS:A2 水域;距岸 150 海里以内) 6.航海速力:12.5 ノット(約 23km/h) 7.最大搭載人員:64 名 (乗組員 12・教員:4・学生 48) 8.主機関:ディーゼル 1,500 馬力(1100kW)× 1 基 9.推進器:左回り 4 翼可変 ハイ・スキュー 直径 2.100mm 10.燃料搭載量:79.46KL 11.清水搭載量:56.26 トン 12.航続距離:3,000 海里(約 5,500 ㎞) 13.建造所:三井造船 玉野事業所 14.代船建造委員会の発足:昭和 61 年 2 月 15.建造契約の締結:昭和 61 年 12 月 22 日 16.起工式:昭和 62 年 4 月 14 日(1987 年) 17.進 水:昭和 62 年 7 月 10 日 18.就 航:昭和 62 年 10 月 14 日 19.主要設備:航海総合コンソール(NCC)、機関 制御コンソール(ECC)、バウ及びスタン・ス ラスタ各 1 基、ジョイスティック・コントロ ール、軸発電機、電気推進システム(緊急用)、 アクティブ防振システム、船内 LAN、データ 処理室、実験室(DRY) 錨: KS-8 型高把駐力錨 空中重量 965 ㎏ 標準把駐係数: 泥 7.2 / 砂 6.5 ※ KS-8 型錨:神戸商船大学の開発 深江丸の一般配置図 (GENERAL ARRANGEMENT)を図 5 に示す。 3.深江丸歴代の船長 下記に深江丸の歴代船長を記す。 初 代 三好 雄一 昭和 62 年 10 月 ∼ 平成元年 3 月 第 2 代 鈴木 三郎 平成 元年 4 月 ∼ 平成 2 年 3 月 第 3 代 笠原 包道 平成 2 年 4 月 ∼ 平成 3 年 3 月 第 4 代 和氣 博嗣 平成 3 年 4 月 ∼ 平成 4 年 3 月 第 5 代 井上 欣三 平成 4 年 4 月 ∼ 平成 5 年 3 月 第 6 代 石田 廣史 平成 5 年 4 月 ∼ 平成 6 年 3 月 第 7 代 林 祐司 平成 6 年 4 月 ∼ 平成 7 年 3 月 第 8 代 古莊 雅生 平成 7 年 4 月 ∼ 平成 8 年 3 月 第 9 代 河口 信義 平成 8 年 4 月 ∼ 平成 9 年 3 月 第 10 代 矢野 吉治 平成 9 年 4 月∼ 4.実習・実験で乗船する学生の課程 平成 15 年 10 月の大学統合後、翌平成 16 年 4 月には神戸大学海事科学部に新課程の学生が入 学した。平成 18 年度までは新旧両課程の学生が 混在し、課程の名称、実習や実験等の名称をそ れぞれ異にした。下記に新旧両課程の記号と名 称を示す。 [神戸商船大学] 4BN:商船システム学課程 航海学コース 4 年 4BE:商船システム学課程 機関学コース 4 年 3BT:輸送情報システム工学課程 3 年
3BP:動力システム工学課程 3 年 3BK:海洋電子機械工学課程 3 年 [神戸大学海事科学部] 3N:海事技術マネジメント学課程 航海群 3 年 4E:海事技術マネジメント学課程 機関群 4 年 3T:海上輸送システム学課程 3 年 3M:マリンエンジニアリング課程 3 年 ※ 海事科学部の学生は 2 年次後期から課程配 属となる。 5.平成 17 年度及び 18 年度の運航状況 深江丸の主たる行動海域は大小の船舶や漁船 等が昼夜を問わず輻輳する瀬戸内海であり、こ の海域は東西に狭水道が連なり、内外多数の船 舶が航行する。また、海上衝突予防法、海上交 通安全法、港則法などの海上交通法規の様々な 規定が集約される海域であり、実習等の展開に あたっては片時も気を抜くことのできない海域 でもある。さらに大規模コンビナートや海上物 流の拠点が東西に連なり、西日本における海上 物流の隆盛な地域となっている。深江丸で実習 を行う学生にとっては、座学で身につけた知識 やこれまでに培った技術や経験を実証し検分す る絶好の機会であり、乗船系・非乗船系の学生 を問わず、附属練習船を活用した実習訓練、社 会教育や人間教育には比類なき最適の場といえ る。 5.1 学生の実習・実験 5.1.1 3BN 学内船舶実習1(1 泊 2 日) 3N 学内船舶実習 前期・後期(2 泊 3 日) <17 年度> 3BN の学生を対象に、1、2 組に分けて実習を 行う。大阪湾北部の海面を実習海域に設定し、 約 1 海里離して海上に設置した 2 基の浮標間に おいて、浮標への離達着操船の指揮を学生全員 に輪番で挑戦させ、船の運動性能の理解、増減 速法、風潮流の利用法、錨の準備と格納法等の 出入港や投抜錨に関連する一連の諸作業と運用 の流れを理解させる。あわせて、船舶の運航に 必要なチームワークとリーダーシップの重要性 を理解させ、習得させることで 4 年次の実習に 備える。船橋当直・機関当直双方の実習を行う。 17 年度をもって終了する。 <18 年度> 3N の学生を対象に、1、2 組に分けて前後期 のそれぞれにおいて 2 泊 3 日の実習を行う。 3N 前期では船内設備調査を実習のメインテー マとし、船内オリエンテーリング・プログラム に従って船体、機関、船内諸設備や属具などを 調査させ、また、海事法規や海上交通法規等に ついて理解させる。3N 後期では、前述の 3BN 同様に浮標離達着操船実習をメインテーマとす る。船橋当直・機関当直双方の実習を行う。 1 泊を大阪湾錨泊とし、高松に寄港する。 5.1.2 4BN 学内船舶実習2(3 泊 4 日) 4BN の学生を対象に、1、2 組に分けて 3 泊 4 日の実習を行う。実習第 1 日に小豆島の池田湾 において揚投錨操船実習を行うことにより、深 江丸の速力逓減法や増速法、錨の投下に関連す る錨の準備や格納等の技術の習得、さらに海上 において場面ごとに要求されるリーダーシップ やチームワークの重要性を理解させる。 また、班ごとに研究課題を提示し、実習で航行 する海域に係る航海計画の立案と発表を行わせ、 その後の実際の航海を通じて、明石海峡や備讃 瀬戸、さらには来島海峡等の船舶交通の輻輳と ともに、ときとして海象の厳しい瀬戸内海にお ける船舶の総合的な運用実務知識と技術を習得 させる。併せて機関運転管理に係る当直実習を 行う。松山と高松に寄港する。 18 年度をもって終了、名称変更となる。 5.1.3 4BE 学内船舶実習(3 泊 4 日) 4BE の学生を対象に、1、2 組に分けて 3 泊 4 日の実習を行う。航海実習を実施する前に、海 事科学部ポンドに係留中の深江丸において、主 機関・補機関の発停や取り扱い法等の機関運転 管理に係る一連の実習を修了した後、実習の総 まとめとして 4 日間の航海を実施する。 機関プラントの総合管理や運転技術の習得の他、 当直実習を通じて責任ある立場を個々に経験さ せることにより、機関運転に係る総合的な運航 実務知識を習得させる。船橋当直・機関当直双 方の実習を行う。行動海域は 4BN に同じ。 18 年度をもって終了、名称変更となる。
5.1.4 3BP・3BK 学内船舶実習(3 泊 4 日) BP・BK の学生にとっては、入学直後の体験 乗船を除き、深江丸における最初で最後の船舶 実習となる。船舶運航の概要を理解させるとと もに船内共同生活等を通じて協調性やチームワ ーク、慣海性を涵養する。尾道と高松に寄港す る。課程改組により 17 年度をもって廃止となる。 5.1.5 3BT 船舶実験(3 泊 4 日) 上記 3BP・3BK に準じる。担当教員の指導の 下、各種の実験テーマに基づいて実船現場でな ければできない計測や実験、調査等を行い内容 の充実を図る。行動海域は上記に同じ。課程改 組により 17 年度をもって廃止となる。 5.1.6 3T 学内船舶実習(3 泊 4 日) 課程改組により 18 年度から開始する。3T の 学生を対象に、1、2 組に分けて 3 泊 4 日の実習 を行う。実習内容は上記 3BP・3BK に準じる。 5.1.7 3M 学内船舶実習(3 泊 4 日) 課程改組により 18 年度から開始する。3M の 学生を対象に、1、2 組に分けて 3 泊 4 日の実習 を行う。実習内容は上記 3BP・3BK に準じる。 5.1.8 海事科学船上セミナー(2 泊 3 日) 平成 16 年度からの入学生で、独立行政法人航 海訓練所の大型練習船による 1 年次 1 ヶ月間の 船舶実習1について、これを履修しない学生を 対象に開講する。セミナーの内容は海上交通や 海上物流、港湾や船舶についての理解を深める ことに重点をおくが、セミナーの期間を通じて 船内オリエンテーリング・プログラムを実施す る。また、共同生活や船内規律を通じて、協調 性や社会規範、挨拶や人との接し方などの日常 のマナー、機敏な身のこなし方などを徹底する。 セミナーの期間中、深江丸による航海は 3 日間 で、1 泊を瀬戸内海錨泊とし、高松に寄港して 1 泊する。 5.2 学生実験 各課程の学生実験の一環で半日の実験航海、 あるいはポンド係留中の船内において船の航海 機器や設備などを活用した実験を実施する。 <17 年度> 3BN 海事科学実験 1 及び 2 <18 年度> 3N 航海学実験 2、3N 航海学実験 3 3T 海上輸送システム学実験 5.3 研究航海 毎年、夏季には 6 ∼ 8 日間程度、春季には 5 ∼ 6 日間程度の研究航海を実施する。 学内・外の研究者や学生の研究目的により行 動海域を選定し、研究テーマに沿った各種の実 験や計測、観測・調査活動などを行う。 <17 年度> ① 夏期(6 泊 7 日) 寄港地:鹿児島・高松 大阪湾∼紀伊水道∼四国南岸∼九州南岸∼ 豊後水道∼瀬戸内海∼大阪湾 ◎ 研究テーマ数:大気・海洋間の二酸化炭素 (CO2)の交換に関する研究 他 12 テーマ ② 春期(4 泊 5 日) 寄港地:別府・高松 大阪湾∼紀伊水道∼四国南岸∼豊後水道∼ 瀬戸内海∼大阪湾 ◎ 研究テーマ数:新型船底防汚塗料の防汚性能 評価実験 他 6 テーマ <18 年度> ① 夏期(6 泊 7 日) 寄港地:長崎・高松 大阪湾∼紀伊水道∼四国南岸∼九州南・西岸 ∼豊後水道∼瀬戸内海∼大阪湾 ◎ 研究テーマ数:ディーゼル排気中の微粒子の 測定と分析 他 17 テーマ ② 春期(5 泊 6 日) 寄港地:別府・高松 大阪湾∼紀伊水道∼四国南岸∼豊後水道∼ 瀬戸内海∼大阪湾 ◎ 研究テーマ数:舶用における電気集塵機の排 ガス処理実験 他 14 テーマ 5.4 全学共通科目、他大学の船舶研修 全学共通科目及び他大学学生の船舶研修を受 け入れる。 <17 年度> ① 全学共通科目「瀬戸内海学入門」海洋調査 <1 日;8 月> ② 全学共通科目 教養原論 「海への誘い」 <4 日;9 月> ③ 中京大学心理学部 船舶研修 <2 日;7 月> ④ 大阪府立大学工学部海洋システム工学科船舶 研修 <2 日;10 月> <18 年度> ① 全学共通科目 「瀬戸内海学入門」海洋調査 <1 日;8 月>
② 全学共通科目 教養原論 「海への誘い」 <2 日;9 月> ③ 神戸大学 COOP 教育洋上セミナー <2 日;9 月> ④ 中京大学心理学部 船舶研修 <2 日;7 月> ⑤ 大阪府立大学工学部海洋システム工学科船舶 研修 <2 日;11 月> 5.5 公開講座 募集人員を 30 名程度とし、夏休みの期間中に 高校生以上の一般を対象に開講する。講座のテ ーマと内容、寄港地については毎年変化をもた せる。船橋及び機関当直体験と船内講義、実践 的な操練(退船時や火災発生時の対応訓練)、 心肺蘇生法と AED(自動体外式除細動器)の取 り扱い実習などを行う。また、通航する海域ご とに航路説明を行い、船と海運、港と海上物流 などについての理解を図る。深江丸ならではの 特色ある講座とし、参加者の印象に残る充実し た航海を目指す。 《深江丸公開講座のテーマ》 <17 年度>「海と船に親しむ」(4 泊 5 日) 寄港地:周防大島・高松 ;大阪湾∼紀伊水道∼四国南岸∼ 豊後水道∼瀬戸内海∼大阪湾 <18 年度>「船と人と環境の連環」(4 泊 5 日) 寄港地:尾道・高松 ;大阪湾∼瀬戸内海∼大阪湾 5.6 体験型海洋セミナー、校外学習 海事体験プログラム 5.6.1 体験型海洋セミナー 本学部の海洋セミナー実行委員会の企画によ り、夏休みの期間中小学 5・6 年生を対象に海洋 セミナーを開催する。「船の科学」を題材とし、 船内での講話や実験などを通じて、物理と科学、 自然現象と天文現象、海洋と海運などに関して、 比較的早い時期の青少年に科学的興味を喚起し、 海や船に親しむ純粋な心を育ませるとともに環 境保全意識の芽生えを促す。さらに、船内での 集団行動や共同生活を通じて自己完結性や集団 的完結性、チームワークや人への思いやりの心、 社会に迷惑をかけない気持ちなどを、規律の厳 しい環境下で徹底して指導する。 <17 年度>「船の 科学:操るしくみ」 8 月 24 日・25 日(1 泊 2 日) <18 年度>「船の 科学:船が浮くわけ」 8 月 22 日・23 日(1 泊 2 日) 5.6.2 校外学習、海事体験プログラム 小中高生から一般を対象に、海と船、海運と 物流、さらには港湾の重要性などについて、各 種の海事体験プログラムを展開する。 17 年度及び 18 年度の実施状況を次に示す。 <17 年度> ① 神戸大学 OB「しんざん会」体験航海 <1 日;5 月> ② 深江祭 体験航海(3 航海) <1 日;5 月> ③ 帆船日本丸入港歓迎・体験航海 <1 日;6 月> ④ 附属住吉中学校 1 年生体験学習 <1 日;6 月> ⑤ 附属明石小学校 5 年生体験学習 <1 日;6 月> ⑥ 高校生海事科学部体験と航海 <1 日;7 月> ⑦ 海の日 体験航海 <2 日;7 月> ⑧ わくわく調査船 2005 中学生洋上プログラム <4 日;8 月> ⑨ 国際大学交流セミナー <3 日;9 月> ※ 台風接近のため、航海は 1 日のみ ⑩ 神戸大学クラブ 体験航海 <1 日;9 月> ⑪ 学長と報道関係者の懇談会・運航視察 <1 日;11 月> ⑫ テクノオーシャン・ユース 2005 体験航海 <1 日;11 月> ⑬ 神戸大学留学生 体験航海 <1 日;1 月> <18 年度> ① 神戸商船大学 OB 体験航海 <1 日;4 月> ② 深江祭 体験航海(3 航海) <1 日;5 月> ③ 海の日 体験航海 <2 日;7 月> ④ 高校生海事科学部体験と航海 <1 日;7 月> ⑤ 東灘こどもいろいろ体験スクール <1 日;7 月> ⑥ 附属明石中学校 1 年生フローティング・スク ール 海事体験・海事調査 <2 日;7 月> ⑦ オープンキャンパス 体験航海 <1 日;7 月> ⑧ 海と船の体験教室 体験航海 <1 日;9 月> ⑨ あいおいっこを育てよう・ワクワク船体験 のじぎく国体開幕事業 <4 日;9・10 月> ⑩ 情報通信研究機構 洋上研究会 <1 日;10 月>
⑪ 附属明石小学校 5 年生 フローティング・ス クール 海・船体験 <1 日;10 月> 5.7 研究室・研究団体の各種実験・調査 共同研究 各種の学生実習や実験以外に、内外の研究者 や海事関連企業等からの実験・研究依頼を受け 付け、個々に対応した実験航海を実施する。 また、この機会を利用して通常の運航状態でな ければ実施できない機器類の点検や保守整備並 びに推進器・船体の汚れ落としを行い、引き続 き予定する各種の航海に備える。 <17 年度> 6 航海 <18 年度> 3 航海 (燃料費の高騰により、実験専用の航海を控えた) 5.8 社会人研修(船舶・物流・運航研修) 海事関連企業の実船による現場研修を受け入 れる。 <17 年度> 4 社(1 ∼ 2 日) <18 年度> 5 社(1 ∼ 2 日) 5.9 共同研究・依頼実験 深江丸の船体を活用した共同研究や依頼実験 を受け入れる。 <17 年度> ① 新型船底防汚塗料の性能評価実験 <18 年度> ① 新型船底防汚塗料の性能評価実験 ② 新型防汚フェンダー(防舷物)の船側外板汚 損評価実験 ③ 関西空港 2 期工事における夜間航空灯火調査 ④ レーダによる漁網ブイの観測実験 5.10 海事の普及活動 海事に関する社会一般の関心を高めるために、 神戸海事広報協会、神戸海洋博物館などの協力 により見学者に海事広報資料を配布するほか、 各種の実習や研究航海における寄港時において 機会あるごとに船内を公開し見学者を受け入れ る。また、本学部ポンド係留中においても、海 事博物館と連携して各種団体や個人を対象に随 時船内を公開し、船舶と海洋、港湾と海上物流 などに関してのさらなる理解と関心を深めてい ただく。運航時の体験乗船者を除き、年間 700 名程度の訪船・見学者がある。 6.航行区域、航行資格の変更と旅客定員の 確保 船舶安全法では日本船舶の航行区域を「遠洋 区域」「近海区域」「沿海区域」「平水区域」の 4 区域と定める。深江丸の航行区域は上記のうち の「近海区域」であり、東経 94 度 ∼ 東経 175 度、南緯 11 度 ∼ 北緯 63 度の線で囲まれた水 域がこれに該当する。しかしながら、平成 11 年 2 月 1 日から GMDSS[Global Maritime Distress and
Safety System]が国際的に完備され、従来の SOS
に代表されるモールス信号を主体とした海上遭 難通信システムから、海事衛星、衛星 EPIRB、 双方向無線電話やレーダ・トランスポンダ等を 活用した遭難・安全通信システムが運用される ことになった。現在の深江丸では人的・物的に 近海区域の航行は不可能となる。航行可能な水 域は、陸岸に沿って連続する距岸 150 海里(約 277 km)以内の"A2 水域"に限定される。 また、依頼出動等で本学の学生や教職員以外 の一般者が乗船する場合は臨時的に旅客定員を 確保する必要がある。依頼の状況により最大搭 載人員 64 名を超える乗船者がある場合には臨時 旅客定員の増員を行う。臨時変更手続きとして、 その都度、神戸運輸監理部海上安全環境部の船 舶検査官(JG)による臨時航行検査を受検して 「臨時変更証」を取得する。甲板暴露部の手す りに海中転落防止用防護ネットを常設し、船内 の危険箇所に立ち入り禁止区域を設定するなど、 乗船者の安全対策を講じるとともに、十分な数 の大人用・子供用救命胴衣と浮器(浮き板)を 搭載する。 ただし、臨時変更日数の上限は年間 30 日であり、 これを超えての臨時航行はできない。 <17 年度> 臨時変更に係る船舶検査受検回数 :19 件 臨時変更日数:28 日 <18 年度> 臨時変更に係る船舶検査受検回数 :16 件 臨時変更日数:26 日 7.災害時医療支援船構想 本学は、瀬戸内海を含む近隣の都市災害発生 時において医療機関と連携して海上ルートと船 舶を活用した医療支援構想に参画し、災害時医
療支援ネットワークの一翼を担う。 この中で深江丸の役割は緊急時において医療 スタッフの収容とともに医療設備・機材等を搭 載して災害現地に赴き、船を仮設の災害医療提 供施設として活用しながら救急患者や慢性疾患 の患者、負傷者の手当と搬送並びに救援物資の 搬送を行うことである。また、被災地の防災岸 壁等で船内電力(約 300kW)の陸揚げを可能と する。平成 17 年 7 月 19 日及び 10 月 2 日に医療 関係者と透析患者並びに災害時医療支援ネット ワークの関係者が乗船、災害時医療支援船構想 に係る検証航海を実施した。 8.入渠工事 既述のとおり、深江丸は 1987 年 10 月の就航 以来 2007 年 10 月で船齢 20 年を迎える。この間、 年 1 回の入渠工事により入渠時でなければでき ない船体・機関、属具の整備や修理などを実施 してきた。深江丸の法定検査としては 5 年ごと に実施される定期検査と、この中間で実施され る第一種中間検査がある。船級が JG(Japanese Government)であることから船舶検査は日本政 府(国土交通省の船舶検査官)により船体・機 関の保守・整備などと並行して直接行われる。 また、検査を伴わない船体整備のための入渠と して合入渠(あいにゅうきょ)工事がある。 最近までは例年 9 月期に入渠工事を実施してい たが、9 月期は船の活用が多いこと等を勘案し て、定期検査入渠工事を除くその他の入渠の時 期を 1 月下旬から 2 月上旬とした。工事の期間 は入渠の種類や船体整備、特殊工事などにより 一様ではない。 <17 年度> 合入渠工事 工期:平成 18 年 1 月 24 日∼ 2 月 16 日 入渠地:内海造船株式会社 田熊工場 工事内容:一般整備工事及び船尾管プロペラ・ シャフト貫通部漏水修復工事 <18 年度> 第一種中間検査入渠工事 工期:平成 19 年 1 月 24 日∼ 2 月 8 日 入渠地:サノヤス・ヒシノ明昌 大阪工作部 工事内容:第一種中間検査に係る船体・機関・ 属具の法定検査及び一般整備工事 これまでに実施した入渠工事及び今後の入渠 予定を下記に示す。 《これまでの入渠工事》 入渠年月 入渠工事の名称 就航年数 ・・・・・・・・・・・・・・ 平成 11 年 9 月:定期検査入渠工事 12 年 平成 12 年 9 月:合入渠工事 13 年 平成 13 年 9 月:第一種中間検査入渠工事 14 年 平成 14 年 9 月:合入渠工事 15 年 平成 15 年 9 月:合入渠工事 16 年 平成 16 年 9 月:定期検査入渠工事 17 年 平成 18 年1月:合入渠工事 19 年 平成 19 年1月:第一種中間検査入渠工事 20 年 《今後の予定》 平成 20 年1月:合入渠工事 21 年 平成 21 年1月:合入渠工事 22 年 平成 21 年 9 月:定期検査入渠工事 22 年 9.航海集計(航海実績) 平成 17 年度における深江丸の航海集計を表 1 に、また、18 年度のそれを表 2 に示す。 10.深江丸就航 20 年間の実績 昭和 62 年(1987 年)10 月の就航以来、平成 18 年(2006 年)度までの 20 年間における深江丸 の運航実績を年度ごとに調査し、集計した。 10.1 運航実績 表 3 に各年度の航海次数、航海日数、入渠日 数、航海時間、学部外停泊時間、錨泊時間、総 航程、乗船者数と内訳及び乗船延べ人数を示す。 また、図 6 に航走距離(航程)と航海日数を、 図 7 に乗船者の内訳と乗船者延べ人数を、さら に図 8 に乗船者内訳の比率をグラフで示す。 10.2 航海目的ごとの運航日数 表 4 に航海目的ごとの運航日数と比率を示す。 また、図 9 に航海目的ごとの運航状況を、図 10 に航海目的ごとの運航比率をグラフで示す。 さらに図 11 に平成 18 年度運航日数の内訳をグ ラフで示す。
表 3 就航 20 年間の運航実績
図 6 就航 20 年間の航走距離(航程)と航海日数
表 4 就航 20 年間の航海目的ごとの運航日数と比率
図 9 就航 20 年間の航海目的ごとの運航日数
11.運航実績のまとめ 深江丸は昭和 62 年 10 月に就航したことから、 この年度については半年間の運航となる。運航 に係る各実績を他の年度と対等に比較できない ことから、次に示す各項目の最小と平均では昭 和 62 年度の運航実績のみを割愛した。 11.1 航海次数 海事科学部∼海事科学部を 1 次航とする。 平成 6 年度は阪神淡路大震災の年である。災害 発生直後に、衛星を用いた情報通信の唯一可能 な深江丸に神戸商船大学地震災害対策本部が設 置された。以後、予定した航海ができなかった ことにより最小の 44 回となった。共同研究等に よる船舶実験等の多かった平成 11 年度が最大の 63 回、平均は 51.4 回であった。また、昭和 62 年度を含む総航海次数は 1,001 回であった。 11.2 航海日数 平成 11 年度の 112 日が最大であった。これは 淡路花博が開催され、淡路交流の翼港からの体 験航海を数度行ったことや共同研究他の船舶実 験による。最小は平成 6 年度の 75 日、平均は 90.8 日であった。増減はあるものの、平成 7 年度か ら増加している。 11.3 入渠日数 既述のとおり深江丸の入渠の種類として、 1.定期検査入渠工事(5 年ごと) 2.第一種中間検査入渠工事(定期検査の中間) 3.合入渠工事 がある。 入渠工事の内容や入渠地(造船所)の場所に より回航を含む入渠日数が異なる。 平成 17 年度の合入渠工事においてプロペラ・シ ャフト船尾管の緊急用海水シールが機能しない ことが発見され、シャフトの抜き出しと搬送・ 再形成、2 度にわたるドライドックの他、これ らの付帯工事を含み 26 日間の長期入渠となっ た。 次に、入渠地往復の航海を含み、これまでの 入渠工事に要した平均日数を示す。 1.定期検査入渠工事 :17.2 日 2.第一種中間検査入渠工事:15.0 日 3.合入渠工事 :11.1 日 11.4 航海時間 平成 18 年度の 696 時間が最大であった。これ は新課程制度のスタートによる学生の学内船舶 実習、各種の海事体験プログラム、企業の船舶 ・物流・運航研修などが増えたことによる。 最小は震災のあった平成 6 年度の 366 時間で、 平均は 512 時間であった。平成 11 年度以後漸増 している。昭和 62 年度を含む総航海時間は 9,851 時間であった。 11.5 学部外停泊時間 平成 18 年度の 992 時間が最大であり、就航時 に比べると 3 倍程度になっている。 最小は震災のあった平成 6 年度の 287 時間で、 平均は 546 時間であった。平成 11 年度以後一段 と増加している。昭和 62 年度を含む学部外停泊 時間の総数は 10,526 時間であった。 11.6 錨泊時間 平成 7 年度の 372 時間が最大であった。最小 は平成 3 年度の 133 時間で、平均は 261 時間で あった。平成 7 年度以後漸増している。 62 年度を含む総錨泊時間は 4,988 時間であった。 11.7 総航程(総航走距離) 平成 18 年度の 7,527 海里が最大であった。こ れは新課程制度のスタートによる学生の学内船 舶実習、小中高生を対象にした各種の海事体験 プログラム、他大学の船舶研修や企業研修など が増えたことによる。 最小は震災のあった平成 6 年度の 3,825 海里 で、平均は 5,553 海里であった。年度によって 多少の増減はあるが、平成 7 年度以後増加傾向 にある。62 年度を含む総航程は 107,000 海里で あった。 11.8 乗船者数 乗組員を除くすべて乗船者を示す。 平成 18 年度の 3,188 人が最大であった。平成 10 年度以後に顕著な増加が見られ、17 年度から 一段と増加している。これは前述のような、小 中高生や一般を対象にした海事体験プログラム などが増えたことによる。最小は平成 8 年度の 1,092 人、平均は 1,794 人であった。昭和 62 年 度を含む乗船者総数は 34,416 人であった。
11.9 乗船者の内訳 11.9.1 学生 実習・実験時に乗船した学生及び各種の海事 体験プログラム、公開講座、研修や研究航海な どにおける船内案内・警備・運航補助学生の数 を示す。 平成 13 年度の 1,004 人が最大であり、最小は 平成 16 年度の 664 人、平均は 843 人であった。 昭和 62 年度を含む学生の総数は 16,263 人であ った。 11.9.2 教職員 実習・実験時の担当・指導者や研究者として 乗船するほか、公開講座や各種の海事体験プロ グラムを実施する際にスタッフとして乗船する。 平成 12 年度の 144 人が最大であり、最小は平 成 17 年度の 63 人、平均は 101 人であった。 62 年度を含む教職員の総数は 1,957 人であった。 11.9.3 一般の乗船者 各種の海事体験プログラムや公開講座、船舶 ・物流・運航研修、共同研究・実験等において 乗船した小中高生や大学生、一般社会人の乗船 者数を示す。 平成 18 年度の 2,333 人が最大であり、最小は 平成 8 年度の 87 人、平均は 851 人であった。平 成 10 年度以後増加傾向にあり、特に 17・18 の 両年度は著しく増加した。 62 年度を含む一般の乗船者総数は 16,196 人で、 乗船した学生の総数とほぼ同数であった。また、 12 年度以後は一般者の数が学生数を上回り、16 年度以後は学生数の 2 ∼ 3 倍となる。 11.9.4 乗船延べ人数 乗船延べ人数は"乗船人数×乗船日数"で表す。 たとえば、30 人が 4 日間乗船した場合の乗船延 べ人数は 120 人(30 人× 4 日)として積算する。 平成 18 年度の 4,893 人が最大であり、最小は 平成 4 年度の 2,134 人、平均は 3,237 人であった。 平成 9 年度以後増加傾向にあり、特に 17・18 の 両年度は 4 千人台と、顕著に増加している。理 由は既述のとおり。昭和 62 年度を含む乗船延べ 人数の総数は 62,164 人であった。 図 6、図 7 及び図 8 のグラフを参照されたい。 11.10 航海目的ごとの運航日数 昭和 62 年度から平成 18 年度の 20 年間におけ る運航日数は 1,761 日で、入渠の 277 日を入れ ると、海事科学部のポンド係留岸壁を離れてい た日数の総数は 2,038 日であった。20 年間に実 施した各種の航海を目的ごとに 9 項目に大別し た。これらの運航日数及び比率を下記に示す。 1.学生実習・学生実験 874 日 42 % 2.調査・研究 実験・試運転 515 日 24 % 3.合入渠・検査入渠 277 日 14 % 4.研修・研究会 96 日 5 % 5.授業・セミナー 79 日 4 % 6.公開講座 73 日 4 % 7.一般者の海事体験 59 日 3 % 8.小中高生の海事体験・学習 53 日 3 % 9.その他の航海 12 日 1 % 合 計 2,038 日 100 % 図 9、図 10 及び 18 年度の図 11 を参照された い。 12.終わりに 深江丸の就航以来 20 年間における運航の状況 を子細に調査することで、これまでの運航実績 や昨今の新たな運航状況について数値で具体的 に示すことができた。 既述のとおり、深江丸は世界でも有数の船舶 交通の輻輳する瀬戸内海を主たる活動の舞台と している。この海域は四季折々の変化に富んだ 気象や海象、潮汐や潮流の特殊な環境下にある。 外洋や沿岸域とは異なるこのような海域におい て、座学で培った知識や技術を学生に検証・検 分させ、船舶運航の実務を習得させ、船舶交通 や海上物流の実態等を把握させながら安全運航 に徹しようとする意識と姿勢を育むませること は肝要と考える。実務の習得に伴う充実感の体 得、慣海性、チームワークやリーダーシップな どの資質を涵養させるには比類なき最適の場と いえる。日本有数の大型港湾と大阪湾に面し、 瀬戸内海を間近に控え、地理的に恵まれた環境 を今後とも大いに活用して、行動形態や航海内 容のさらなる充実を図る必要がある。
近年、小中高生の総合学習や校外学習の一環 としての海事体験、他学部学生の授業や他大学 学生の船舶研修の他、一般を対象にした海事体 験プログラムを実施する機会が増えている。 資源に乏しい我が国は、大量の原材料を輸入 し、製品に加工して輸出する「貿易・技術立国」 である。原油・天然ガス・石炭などのエネルギ ー資源の 93 %を、小麦・大豆などの食糧資源の 60 %を、また、鉄鉱石・パルプなど国民生活に 欠かせない物資のほとんどを海外にたより、輸 出入貨物の 99 % 以上を海上輸送が担っている。 また、日本の外航海運による海上貿易量は世界 シェアーの 15.7 %であり、中国、アメリカに次 いで世界第 3 位である。(2004 年統計) 等々、これらの諸事情は日本の現状を理解し、 海事への関心をより高めるための題材に値する。 加えて、日本は、四方を海に囲まれた「海洋 国家」・「島嶼(とうしょ)国」であり、日本に 帰属する島の数は 6,847 とされ、日本の海岸線 の総延長は"35,000km"にも及ぶ。また、自国の 周囲に海をめぐらす国は、その国の領土の基線 から 12 海里の範囲を「領海」といい、国土の延 長と見なされる「海」を有する。さらに、領海 に接続する「排他的経済水域」(EEZ:Exclusive Economic Zone)として領土の基線から 200 海里 の「海」を有する。日本の国土に隣接する「領 海」と「排他的経済水域」の面積は、それぞれ、 領海が 43 万平方キロメートル、排他的経済水域 が 447 万平方キロメートルで、日本の国土面積 の約 12 倍に相当し、面積においては世界第 6 位 の広さがある。日本の排他的経済水域及び大陸 棚の海底と海底下には 鉱物資源、石油、天然ガ ス、メタンハイドレードなどのエネルギー資源 が大量に埋蔵されているとされ、将来の日本発 展のためには、この海域における海洋開発や海 洋の利用に大きな期待がかかっている。 船は、自家用車、バスやトラック、電車や航 空機などに比べて現代人には身近な存在ではな いが、このような海事体験を通じて、特に若年 層にさらなる関心を抱いてもらい、近い将来の 海洋技術者や海事関連分野に携わるプロフェッ ショナルを目指してもらいたいところである。 深江丸は海技に関する高度な技術の伝承と向 上並びに海事に関する学際的な活動を担いなが ら、これからの海事社会を創造し、国際的に社 会貢献を果たすことのできる多くの若人を育成 する練習船として、海と船を舞台にした幅広い 人材教育と研究活動の場を提供し、かつ、人間 教育の場であり続ける必要がある。 以下に練習船深江丸の展望を示す。 (1) 航海・機関に関する高品質な人材教育 (2) 海事に精通し、人間性、創造性並びに専門 性豊かで幅広い教養を備え、国際海事社会 で活躍できる人材の育成 (3) 海事に関する様々な事象を対象にした研究 と調査 (4) 一般社会と連携した、幅広い年齢層を対象 にした人間教育、社会・道徳教育、若年層 への科学的興味の喚起と海事の啓蒙 (5) 大規模災害時等において、海上ルートを活 用した人的・物的支援と災害医療の支援 最後に、深江丸の就航から平成 18 年 3 月末ま での 20 年間における航走距離は 107,000 海里 (198,164 キロメートル)で、地球を 5 周する距 離に相当した。また、乗船者の総数は 34,416 人、 乗船延べ人数は 62,164 人となった。 この報告が次世代「練習船深江丸」の建造構 想に活かされることを期待する。 参考文献 (1) 附属練習船「深江丸」10 年の航跡 (矢野吉治)神戸商船大学紀要第二類 商船・ 理工学篇 第 47 号, pp.25-51, 1999 年 7 月 (2) 海事教育における神戸商船大学附属練習船 「深江丸」の役割(中井 昇・矢野吉治) 神戸商船大学紀要第二類 商船・理工学篇 第 46 号, pp.103-118, 1998 年 7 月
(3) 深江丸航海日誌(Ship's Log Book ) (4) 深江丸運航関連書類
(5) 神戸商船大学練習船深江丸紹介資料 (6) 神戸商船大学七十五周年記念誌
(7) 学内船舶実習方案・各種体験プログラム (8) 国土交通省 海洋沿岸域政策大綱 2006 年 6 月