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黒ダイズ(Glycine max, Merrill.forma Kuromame Makino)のトリプシンインヒビターについて

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昭 和56年11月(1981年) 一一'45一

研 究 資 料

黒 ダ イ ズ(Glycine

max,

Merrill.

forma

Kuromame

Makino)の

ト リ プ シ ン イ ン ヒ ビ タ ー に つ い て

子,岡

Tripsin Inhibitors of Soybean (Glycine max, Merrill. forma Kuromame Makino)

Keiko

Arahori,

Mitsuko

Okano

動 植 物 の 組 織 中 に は,ト リプ シ ンを は じめ とす る哺 乳 動 物 の タ ンパ ク質 消 化 酵 素 の働 き を 阻 害 す る 物 質 (プ ロテ ア ーゼ イ ン ヒ ビ タ ー)が 存 在 す る 。 これ らプ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒビ タ ー は.そ れ ら 自身 が タ ンパ ク質 で あ り.多 くの 食 品 材 料 中 に含 まれ て い るた め.食 品 学,栄 養 学 を は じめ生 化 学,農 学,医 学 な ど多 くの 分 野 の 研 究 者 の 関 心 を 集 め て い る。植 物 性 食 品 の プ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー の 研 究 は,1946年 にKunitzl)が, 大 豆 よ り トリプ シ ン イ ン ヒ ビ タ ーを 単 離 して 以 来,著 しい 進 展 が み られ,豆 類,種 子 類,疏 菜 類 を は じめ 種 々 の 植 物 性 食 品 材 料 中 か ら イ ン ヒビ タ ー が 単 離 され, そ れ らの性 質 が 明 らか に さ れ て い る。 わ れ わ れ は,わ が 国 の 限 られ た地 域 で 生 産 さ れ,古 くか ら親 しま れて い る黒 ダ イ ズ の成 分 に 興 味 を も ち, 特 に そ の 中 の ト リプ シ ン イ ン ヒビ タ ー に つ い て 検 討 し,2,3の 知 見 を 得 ま した の で,そ の 結 果 と と もに 従 来 よ り研 究 さ れ て い るダ イ ズ の イ ン ヒビ タ ー につ い て 紹 介 す るべ く本 資 料 を作 成 しま した 。 1.黒 ダ イ ズ に つ い て 黒 ダ イ ズ は.ダ イ ズ の 一 種 で あ る 。 ダ イ ズ は,現 在 世 界 各 国 で,食 糧.飼 料 と して利 用 さ れ て い る主 要 植 物 性 食 品 で あ り.そ の原 産 地 は 東南 ア ジ ア とい わ れ て い る。 わ が 国,中 国,そ の他 ア ジ ア各 地 で は古 くか ら 食 用 に 供 せ られ,重 要な タ ンパ ク質 源 と な って い た 。 そ の 栽 培 の 歴史 は極 め て 古 い が,栽 培 地 域 は ア ジ アに 食 品学第4研 究室 限 られ て い た 。 ダ イ ズが 欧 米 に 伝 わ って 栽 培 さ れ る よ うに な っ た の は 比 較 的 近 年 の こ と で あ る。 と くに ア メ リカが 世 界 最 大 の ダ イ ズ生 産 国 に な っ た の は,こ こ30 年余 り の こ とで あ る 。 この よ う に世 界 各 国 で 栽 培 さ れ る よ う に な った の は,ダ イ ズ が さ ま ざ まの 気 象 条件 や 土 壌 条 件 に適 応 し うる とと もに,品 種 の 選 定 と適 当 な 栽 培 管 理 を講 ず れ ば,ど こ で も栽 培 が 可 能 な 植 物 で あ る た め で あ る。 そ の た め ダ イ ズ は 品 種 の 分 化 が 進 み, わ が 国 で 栽培 さ れ て い る ダ イズ も長 年 に わ た って 種 々 の 栽 培 条 件 に よ り著 し い分 化 が お こ り,現 在 多 数 の 品 種 が あ る2)。 そ れ ぞ れ の 地 方 に 根 強 く残 っ て い る これ らの 品種 は,そ の土 地 に 対 す る適 応 性 が 高 く,そ の 風 土 に慣 ら され た 品種 で あ る 。 ダ イズ の 品 種 は そ の 種 実 の 形 態(種 皮 や 膀 の色,種 実 や 英 の 形 な ど)お よび 栽 培,利 用 面(栽 培 の 季 節,産 地,脂 質 ・タ ンパ ク質 ・ 炭 水 化 物 な どの 成 分 含 量 な ど)か ら分 類 さ れ.極 あ て 多 岐 に わ た って い る 。

黒 ダ イズ(Giycire max, Meer. forma Kuromame Makino)は,一 般 に黒 豆 と 呼 ば れ わ が 国 で は煮 豆 に さ れfお せ ち料 理 の ひ とつ と して 親 し ま れて い る。 ダ イ ズ の栄 養 的 に優 れ た 成 分 を 含 む と と も に解 毒 効 果 や 咳 止 め な ど の薬 効 を 持 つ と いわ れ.古 くか ら生 薬 と して 用 い られ て い る。 わ が 国 で は.北 海 道 産 の夏 大 豆 と近 畿 産 の 秋 大 豆 の2種 類 が 代 表 的 で あ り,と くに後 者 は 大 粒 で 良 質 な た め 丹 波 黒 と 呼 ば れ 親 し まれ て い る。成 分 は タ ンパ ク質22∼29%.脂 質18∼22iv',灰 分 は4.5 ∼5%で あ る。 と くに タ ンパ ク質 の構 成 ア ミノ 酸 が動 物 性 タ ンパ ク質 に似 て お り,リ ジ ン,ア ル ギ ニ ンな ど

(2)

- 46-が多い。また植物性タンパク質としての特徴であるグ ルタミン酸の含量も多い。その他.特異な品種には他 品種には認められない特異成分が含まれ.乙れらの成 分研究は極めて興味深い。

n

.

ダイズのトリプシンインヒピター

について

今世紀のはじめ頃より生ダイズで飼育したラット は.加熱ダイズを与えたものと比較すると著しく成長 抑制のおこることが知られていた。乙の熱不安定成長 抑制因子のひとつが1946年, Kunitzがダイズより結晶 状にとり出したダイズトリプシンインヒピター (ST

である。ダイズからはさらに60%アルコールに可溶. アセトンに不溶なインヒピターが, Bowman3)により 見い出され, Birkらりにより単離された。乙のインヒ ピターははじめ“acetone-alcohol-isoluble-inhibi tor" と名付けられたが,現在では, Bowman-Birl王インヒ ピター (BBI)と呼ばれている。 乙の2種類がダイズ の代表的なインヒピターとして多くの研究がなされて いる。 その後, Racksらのは, SBTIA1, SBTIA2

SBTIB1, SBTIB2と4種類のインヒピターを単離した。 乙のうちSBTIA2は,Kunitzのインヒピターと同一物 であるととがわかったが.他の3品種は新種のインヒ ピターであった。また, Frattali6)は市販のKunitz ンヒピター製品から, Fl, F2, F3の3種類のインヒビ ターを分画し,そのうち主インヒビターであるらは, Kunitzインヒビターであったが,残りの2種類は新し いインヒピターであった。乙れらの結果よりダイズか ら, STI, BBT, SBTIA1, SBTIB1, SBTIB2, Fl. F3

の7種類のトリプシンインヒピターが単離された。さ らに,小原ら7)は.ダイズのトリプシンインヒビター の種類について.Sephadex G-75によるゲノレ櫨過およ びポリアクリJレアミドゲノレ電気泳動法を用いて総合的 な検討を行ない,ダイズ中に7-10窪類のトリプシン インヒピターが存在する乙とを報告している。最近小 谷らめは.

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3

種類の新しいイン ヒビターを単離し.その性質を明らかにしている。ま た越山ら9)はダイズの 2Sグロプリン画分より得られ たタンパク質的,

α

3

,叫がトリプシンに対して阻害活 性を示すことを報告している。なぜこのようにダイズ 中に数多くのトリプシンインヒビターが存在するかの 疑問について「遺伝的不均一性によるJ6) とか「ダイ ズの品種に遺伝的変異がある

J

10)といっている研究者 があるが,各説とも憶測の段階である。 食物学会誌・第36号 ダイズのこのような多くのインヒピターのうち.物 理化学的性質について詳しく研究されているのは STI とBBIの2種類であるが.STIは熱.pH変化に対して 失活しない安定なタンパク質である。 300 C以下ではpH 1-12までの広範囲で安定であるとともに800 Cに加熱 しても室温にもどすと,元の阻害活性を示す。分子量 は.アミノ酸配列決定より20,10011)であることが確定 された。またヘリックス構造をもたない球状タンパク 質であることが多くの研究報告で立証されている。そ の立体構造はち密でなく,ほとんど規則性のないラン ダムコイル状であることが旋光分散分析から示唆され ている12)。しかし円偏光二色性の研究から,未変性状 態での乙のタンパク質は.

α

ーヘリックスや

α

-

構造と も異なる特別の構造をとっている乙とが示されてい る13)。これに対してBBIは可逆的に解離会合するタン パク質で,分子量8,00014),そのアミノ酸組成は,ト リプトファンやグリシンを全く含まず.シスチン量が 約20%である15)。乙れは5個のアミノ酸残基あたり 1 個の%シスチンが存在し. それらが-S-S-結合を形 成しているので,非常に安定な三次元構造を保ってい る。このため1000 Cで10分間の加熱にも失活は認めら れない。乙れらふたつのインヒピターの一次構造が明 らかにされているとともにその作用機構についても多 くの報告および総説Iのがあり,詳しく知るためにはそ れらを参照されたい。 また栄養学的立場からは生ダイズの生体に与える影 響が研究されている。生ダイズを雛.マウス.ラット に与えると.発育阻害.食餌の同化エネルギーの低 下,脂肪吸収量の減少.捧臓の肥大.捧液の過大分泌 などをひきお乙す。さらにラットに生ダイズを与え続 けると,他の組織の酵素系には変化がみられないが, 腎臓のトランスアミナーゼ活性が減少するO このよう な生理的影響を与える要因のほとんどが生ダイズの豆 乳区分に含まれており,乙の区分を加熱すると.乙れ らの要因は消失してしまう。乙の豆乳区分はダイズ タンパク質の6-8%を占めており17),STI, BBI, SBTIAlI8)などのインヒピターは,すべてこの区分に含 まれている。乙の豆乳をラットに与えた場合と生ダイ ズをラットに与えた場合には.程度の差はあるが,ほ とんど同じような生理的影響を与える。 ラットを用いての比較実験で, STIをラットに与え ると捧臓肥大をおこすなど,生ダイズを与えた場合の 30-60%の発育阻害をひき起こした19)。またSTrを雛 に与えると,その発育速度の抑制.代謝エネJレギーの 減少,捧臓肥大をひき起こすことが確認されている。

(3)

で加え,塩析を行なった。沈でんを櫨集し,少量の水 にとかし.蒸留水に対し透析を行なった。透析内被を 遠心分離 (10,000回転, 10分間)し,上清を凍結乾燥 して粗製トリプシンインヒピターを得た。さらにこの 粗製トリプシンインヒピターをSephadexG-75 (Super Fine)カラムにより分離した結果.タンパク質の吸収 とインヒピターの活性の重なる3つのフラクションを ( '* -100.'? 〉 に〉 叫 e 。 r弓 50主 ( 渓 ) b s z o ︽ K C D 立 ︹ 岩 手 三 一 斗 つ 1 1 1 1 1 M l , / ( 室 ) 一 O 国 Z

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のクロマトグラム。

F-

1

20mgをO.lM-Tris-HCl (凶8.0)に溶

かし, DEAE-Sephadex A-25カラムに加え,

食塩濃度0から 1Mの濃度勾配で溶出し, 1 両分3mlで分画した。

一一

280nmの吸収 一 一 食 塩 濃 度 Sephadex G-75 (Super Fine)カラム(1.8 x 100cm)による粗製トリプシンインヒピタ ーの分画。 粗製トリプシンインヒピター140mgを0.1 M Tris-HCl (凶8.0)に溶かし, Sephadex G-75カラムに加え, O.lM-Tris-HClで溶 出し, 1画分 3mlで分画した。 一 一 280nmの吸収 一 一 阻 害 活 性 率 - 47ー

一阻害活性率 F-rr F-III¥ 80 F-Ia 60 Tul附 nO. F-I 20

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図1 -t 1 t I h -l i ! L r ﹄ l f n u 今 / ム 図2 1.0 E 己 口 ∞ N4 試料として, 1978年度兵庫県丹波産,丹波黒種の黒 ダイズを入手し,脱脂,粉砕して使用した。 Sephadex G-75 (Super Fine), DEAE-Sephadex A-25は, Phar -macia Fine Chemical Co.製品を, ト リ プ シ ン は Sigma Chemical Co.製品, α-N-Benzoyl-D.L.-Ar -ginine-p-Nitro anilide HCl (以下 BANA)は,財団 法人,蛋白質研究奨励会の製品を,それぞれ用いた。 その他の試薬は市販特級試薬を使用した。 トリプシンに対する阻害活性の測定は, BANAを基 質として測定した22)。純度の確認および分子量の測定 は, SDSーポリアクリJレアミドゲ、ル電気泳動法を用い た23)。単離したインヒビターのアミノ酸組成の分析は, 試料に6M-HClを加え, 110.Cで24時間加水分解して, 835型目立高速アミノ酸分析機で分析した。 脱脂黒ダイズ末100gに約10倍量のO.lM-NaCl溶液 を加え.可溶成分を抽出した。その後60.Cで5分間の 熱処理を行ない,熱に不安定なアルブミン系のタンパ ク質を除いた。次に乙の熱処理液を遠心分離し,得ら れた上清液に硫酸アンモニウムを100%飽和になるま 生ダイズの発育抑制は,この 2種類の機構が原因す るのではないかと Gertlerら21)は推論している。 以上,ダイズのトリプシンインヒビターについて は.広範囲な研究が行なわれている。これらの研究結 果をふまえて,わが国の近畿地方という限られた地域 だけに生産されている黒ダイズのトリプシンインヒピ ターについて検討を試みた。 さらに立乳からこれらのインヒピターを除いて得られ た画分は,ラット,マウスにトリプシンインヒピター を与えた場合におとる抗栄養的影響を助長させるとと がわかっている。 以上のことより生ダイズによる発育抑制は以下の原 因が考えられる。 トリプシンインヒピターが陣臓の肥大とトリプシ ンなどのタンパク質分解酵素の合成を促してアミノ 酸の要求を増大させ.結果的に内因性窒素の損失を もたらす乙と。 2) 生ダイズ中には消化性の低いタンパク質区分が含 まれている乙と。これは加熱すると消化性となる が,この区分の存在は生ダイズ自身の消化性の低い こと,および生ダイズは, トリプシンインヒピター を添加した加熱ダイズよりもさらに大きい発育抑制 効果のあることなどより推察される。

][.黒ダイズのトリプシンインヒピター

昭和56年11月(1981年〉 1)

(4)

-

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1

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は,

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ムによってさらに精製をすすめた。

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については 図 2に示すごとく,強い活性を示すフラクションを 得,これを

F-I

a.とした。

F

-

J

I

については.図

3

に 示すごとく 3つの活性を示すフラクションを得,それ ぞれ.

F-JIa

F

-

J

I

b,

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とした。 カラムクロマトグラフィーで=得た各フラクションの 純度を調べるために ,

SDS

ーポリアクリルアミドゲル電 気泳動を行なった。

F-I

a..

F-][

は,電気泳動的に均 ーであった。しかし他の両分については均一なものは 得られなかった。

SDS-

ポリアクリノレアミドゲ、ル電気泳動の結果,分子 表1 アミノ酸組成

Amino A

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と推定された。

BANA

法を用いてトリプシンに対する阻害活性を 調べたところ,重量比でトリプシン

1

に対し,

F-I

a,

F-][

はそれぞれ

0

.

7

7

9

0

.

7

5

8

の割合でトリプシン活 性を 100~ぢ阻害するという結果を得た。 アミノ酸組成の分析を行なった結果は表1に示す。 表の右側にダイズ中の代表的なインヒピターである

STI

を示した。

F-Ia

STr

とほぼ等しい組成を示し,

F-I

a.は

STr

であると推定した。

F-][

F-Ia

!

ζ

比 べ,セリン,アラニン・シスチン,プロリンの含有率 が高く.グリシン,パリン.イソロイシン,フェニー ルアラニンが低い値を示した。

N.

お わ り に

以上.ダイズトリプシンインヒピターについての紹 介と黒ダイズ中のトリプシンインヒビターの単離につ いてわれわれの実験結果を示した。すでにダイズ中に は, 6

-

-

1

0

種のインヒビターの存在が確認されている が,われわれのデーターでは.黒ダイズ中に, 5種類 以上のインヒピターの存在を認めた。このようなイン ヒピターが植物休に存在する意義については.一般に は. 1) 植物体中のタンパク質の合成,代謝の調整 2) 自己分解防止 3) 昆虫,動物などからの防御 などであると言われている。またこれらの説を推察さ せるデーターは示されているが,現在まで明確な解答 は与えられておらず,インヒピター研究の一課題であ る。 ダイズは植物性タンパク質源として.極めて重要な 食品であり,種々の調理法.加工法により.われわれ の食卓にのせられている。その際のインヒビターの挙 動については,加工面よりの検討は比較的行なわれて いるが,乙れらは主としてオートクレープ熱処理など. 温度によるインヒビターの失活と栄養面との関連で検 討される。しかし,生ダイズを他の食品材料.調味料 などとの共存下で調理した時のインヒピター活性の挙 動については.ほとんどデーターが認められず,調理 学の立場からのダイズトリプシンインヒピターの挙動 もわれわれにとって,興味深い研究課題である。 最後に.本資料作成にあたり,御指導下さいました 本学光永助教授に深く感謝いたします。

(5)

昭和

56

11月 (1981年〉 。単行本 大豆食品

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核分裂あるいは崩壊熱により燃料棒内で発生した熱は、燃料棒内の熱

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