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写真 ウィルヴァ原発近くの港町 撮影, FoE Japan

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(1)

英国の原子力政策と

日立のウェールズへの

原発輸出の問題点

(2)
(3)

目次

1.

ウィルヴァ・ニューウィッド原発プロジェクトの概要 ... 1

2.

プロジェクトの背景・経緯 ... 2

許認可 ... 3 財務 ... 4 その他 ... 4

3.

プロジェクトの問題点 ... 4

1)事業のニーズ ... 4 2)技術面 ... 6 日立-GE の原子炉 ... 6 3)財務面 ... 7 事業コスト ... 7 コラム 1:原子力発電は未完の技術 ... 8 電力買取価格 ... 9 英国の原発支援の枠組み ... 9 コラム 2 巨額建設リスクは誰が負うのか ... 10 ベクテルの撤退 ... 10 なぜ建設事業にリスクが生じるのか? ... 11 誰がホライズンの建設を担うのか? ... 11 4)社会・環境影響 ... 12 環境影響 ... 12 生計手段への影響および雇用創出 ... 12 社会インフラへの影響 ... 13 ウェールズ文化 ... 13 5)原子力防災計画・避難計画 ... 13 6)原子力規制体制 ... 14 7)賠償責任 ... 15 コラム 3 国際原子力産業の動向 ... 16 原子力産業の不振 ... 16 将来への見通し ... 17 コラム 4 ヒンクリーポイント C ... 18 莫大なコスト ... 18 裁判 ... 19

(4)

4.

英国における原子力政策 ... 19

1)原子力政策の歴史 ... 19 第一次原発建設プロジェクト ... 19 第二次原発建設プロジェクト ... 19 民営化と 1990 年代以降 ... 20 2005 年以降の政策転換 ... 21 2)現行のエネルギー・原子力政策 ... 22 保守党政権下の国家政策ステートメント(NPS) ... 22 気候変動政策との関連 ... 22 国家インフラ委員会による勧告 ... 22 3)核廃棄物管理・再処理 ... 23 英国の再処理政策 ... 23 MOX 燃料 ... 24 プルトニウム処分 ... 24 4)電力・再エネの状況 ... 25 電力システム ... 25 電力全般 ... 26 再生可能エネルギー ... 26 5)保障措置 ... 28 英国の保障措置の状況 ... 28 EU 離脱による影響とその対処 ... 28

5.

日英原子力協定 ... 30

経緯 ... 30 英国のユーラトム離脱に伴う保障措置体制の変更 ... 30 日英原子力協定の見直し ... 31

6.

日本の原発輸出政策 ... 31

経緯 ... 31 事前調査に投入される税金 ... 32 国の「安全確認体制」 ... 33 国際協力銀行(JBIC)/日本貿易保険(NEXI)の環境社会配慮ガイドライン ... 34 国際協力銀行(JBIC)/日本貿易保険(NEXI)の情報公開指針 ... 35

7. まとめと提言 ... 36

(5)

略語表

略 語 略語の内容

ABWR 改良型沸騰水型軽水炉(Advanced Boiling Water Reactor) AGR 改良型ガス冷却炉(Advanced Gas-cooled Reactor) AONB 特別自然美観地区(Area of Outstanding Natural Beauty)

BETTA 英国電力取引制度(NETA をスコットランドまで拡大した制度)(British Electricity Trading and Transmission Arrangements)

BNFL 英国原子力燃料公社(British Nuclear Fuel Limited) BWR 沸騰水型炉(Boiling Water Reactor)

CANDU 加圧重水炉(Canadian deuterium uranium)

CCS 二酸化炭素回収・貯留(Carbon dioxide Capture and Storage) CEGB 英国中央電力庁(Central Electricity Generating Board)

CfD 差額決済契約制度 (Contract for Difference)

CGN 中国広核集団(China General Nuclear Power Group) DCO 開発同意(Development Consent Order)

DEPZ 詳細緊急計画域(Detail Emergency Planning Zone) EDF フランス電力公社(Électricité de France)

EMR 電力市場改革(Electricity Market Reform) EPR 欧州加圧水型炉(European Pressure Reactor)

EURATOM 欧州原子力共同体・ユーラトム(European Atomic Energy Community) F/S 実現可能性調査(feasibility study)

GCR 黒鉛減速炭素ガス冷却炉(Gas Cooled Reactor) GDA 包括的設計審査(Generic Design Assessment) GW ギガワット。1GW=1000MW=100 万 kW。

IAEA 国際原子力機関( International Atomic Energy Agency)

IRRS 総合規制評価サービス(Integrated Regulatory Review Service) JBIC 国際協力銀行(Japan Bank for International Cooperation) MOX 混合酸化物(Mixed Oxide )

NAO 英国監査局( National Audit Office)

NDA 英国原子力廃止措置機関(Nuclear Decommissioning Authority)

NETA 新電力取引制度(イングランド・ウェールズ内)(New Electricity Trading Arrangements)

NEXI 日本貿易保険(Nippon Export and Investment Insurance) NFFO 非化石燃料義務(Non-. Fossil Fuel Obligations)

NIC 国家インフラ委員会(The National Infrastructure Commission) NPS 国家政策ステートメント(National Policy Statement)

NPT 核拡散防止条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons) ONR 英国原子力規制局(Office for Nuclear Regulation)

(6)

PWR 加圧水型炉(Pressurized Water Reactor) RAB 規制資産ベース(Regulated asset base)

REPPIR 放射線(緊急時準備及び公衆情報)規制(Radiation( Emergency Preparedness and Public Information )Regulations)

RO 再生可能エネルギー購入義務(Renewable Obligation)

RWE ライン・ヴェストファーレン電力会社(Rheinisch-Westfälisches Elektrizitätswerk)

SDR 特別引出権(Special Drawing Rights) SMP MOX 燃料加工工場(Sellafield MOX Plant)

THORP 酸化物燃料再処理プラント(Thermal Oxide Reprocessing Plant) TWh テラワット時。 1TW=1000GW。

(7)

概要

英国は、電力供給の約2割を原子力に頼る原発依存国の一つであるが、1995 年以降、原子力発 電所の新設はなく、再生可能エネルギーの開発が進んだ結果、2017 年には太陽光と風力を合わせ た発電量は原子力を上回った1 英政府は、現存原発の老朽化による閉鎖、気候変動対策などの理由から新たに 6 箇所 16GW 分 の原子力発電所の建設を計画している。そのうちヒンクリーポイント C 原発の建設は既に開始され ており、次に日立製作所のウィルヴァ・ニューウィッド原発の計画が、他の原発計画に先んじて進 んでいる。ヒンクリーポイント C 原発には、高い電力買取価格が設定されており、英国民負担の増 大が政治的に問題となっている。 ウィルヴァ・ニューウィッド原発計画は、現在、許認可の取得や買取価格や投融資スキームの交 渉が進められている。事業主体であるホライズン・ニュークリア・パワーを 100 パーセント保有す る日立製作所は、日本政府に対しては公的資金による支援を、英政府に対しては高い買取価格など を求めていることから、日英両国民へのリスク転嫁や国民負担の増大が懸念される。 ウィルヴァ・ニューウィッド原発立地のウェールズ北部のアングルシー島では、このプロジェク トによる環境破壊、廃棄物問題、事故への懸念などから、住民らによる根強い反対運動が続けられ ている。 英国で先行するヒンクリーポイント C 原発建設計画では、莫大な建設費により、高い買取価格を 設定しなければならなくなった、一方、英国においては、再生可能エネルギーからの電気の価格が 急落している。ウィルヴァ・ニューウィッド原発の建設費用も増加しているため、どのような買取 価格の設定となるかが注目される。 英国の EU および欧州原子力共同体(ユーラトム)離脱に伴い、英国国内の保障措置体制が変更 となる。英国は現在、離脱に向けて国内体制を整備中である。これに伴い、日英原子力協定の改定 もしくは新たな取り決めを締結する可能性が大きい。 日本はこれまで、ベトナムやインドなどへの原発輸出に官民挙げて取り組んでいるが、その成果 はあがっていない。また、世界的には原発は衰退傾向に、再生可能エネルギーは急成長している傾 向にある。英国も例外ではなく、再生可能エネルギーの開発が進んでいる。

1 Vaughan,Adam. “Wind and solar make more electricity than nuclear for first time in UK“,The Guardian,

2018.3.29, ”https://www.theguardian.com/business/2018/mar/29/wind-and-solar-made-more-electricity-than-nuclear-for-first-time-in-uk

(8)

1. ウィルヴァ・ニューウィッド原発プロジェクトの概要

ウィルヴァ・ニューウィッド(Wylfa Newydd)原発は、日立製作所の子会社ホライズン・ニュ ークリア・パワー(以降、ホライズン社)が英ウェールズ北部アングルシー島で建設を進める新規 原発である。改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を2基建設するもので、発電容量は合計 2.7GW。総 事業費は約3兆円と見積もられている。日立製作所の同事業に対する最終投資判断は 2019 年末。 建設開始予定は 2020 年、稼働開始は 2027 年とされている。ABWR の建設は英国では初めて。60 年間稼働を想定している。

2. プロジェクトの背景・経緯

ホライズン社は、2009 年にドイツの電力会社 E.ON UK と RWE の合弁企業(出資比率 50:50) として設立され、ウィルヴァ、オールドベリーの2箇所で原発建設を計画。しかし 2012 年 3 月に ドイツの脱原発政策に呼応して両企業が撤退を表明し、同年 10 月に日立製作所が 6 億 9600 万英 ポンド(約 854 億円)で買収した2 ウィルヴァ・ニューウィッド原発は、2015 年に稼働停止したウィルヴァ原発(現在廃炉作業 中)に隣接して建設される。

2 日本エネルギー経済研究所「日立、英・Horizon Nuclear Power 社を買収」2012.10,

(9)

【表:アングルシー島の原子力発電所】 事業者 タイプ 容量 稼働開始 稼働終了 ウィルヴァ(1号 機) マグノックス Ltd.3 AGR(マグノッ クス) 490MW 1971 2015 ウィルヴァ(2号 機) マグノックス Ltd. AGR(マグノッ クス) 490MW 1971 2012 ウィルヴァ・ニュ ーウィッド ホライズン社 ABWR 2700MW (2基分) 2020 年代 を予定 60 年運転 を想定

許認可

2018 年8月現在、ウィルヴァ・ニューウィッド原発建設に必要な許認可は、現在取得途上にあ る。原発建設にあたり、取得すべき主たる許認可は以下のとおり。

・包括的設計審査(Generic Design Assessment, GDA) ・立地許可(Nuclear Site License)

・開発同意(Development Consent Order) ・環境許認可

包括的設計審査(GDA)は、英国原子力規制局(Office for Nuclear Regulation, ONR)が原子炉 の設計を包括的に審査する。ONR はエネルギー法(2013)により設置された法定法人4。2017 年

12 月 14 日に約 5 年に及んだ審査がおわり、日立-GE が申請した ABWR の型式は GDA に合格し た。

立地許可(Nuclear Site License)についても、ONR が審査を行う5。申請から最大 18 ヶ月にお

よぶ審査が行われる。審査では事業者の運営能力、廃炉や放射性廃棄物、緊急時対策に関する計画 などが審査される6。ウィルヴァ・ニューウィッドの立地許可審査は、2018 年後半の終了が見込ま

れている7

開発同意(Development Consent Order、DCO)は、「国家的に重要なインフラプロジェクト (NSIP)」に対して取得が課せられる。独立行政機関である計画査察局(Planning

Inspectorate)による審査が行われる8。DCO は申請書が受理されてから認可可否決定までに、最

3 現在は英国原子力廃止措置機関(Nuclear Decommissioning Authority, NDA)のもと廃止措置が行われてい

る。実際には NDA は土地を所有し、Magnox 社との契約の元、Magnox 社により解体作業等が行われている。

4 原子力規制局「Legal framework and regulations」 http://www.onr.org.uk/legal-framework-and-regulations.htm

2018/8/14 最終閲覧

5 ONR

ウェブサイト(ウィルヴァ・ニューウィッド)http://www.onr.org.uk/civil-nuclear-reactors/wylfa-newydd.htm 2018/8/14 最終閲覧

6 エネルギー法(2008 年)に基づき建設開始前に廃炉および核廃棄物の処理等にかかる費用について、適切

な資金確保が保証されていることを示す文書(Funded Decommissioning Programme, FDP)を建設前に提出 する必要がある

7 ホライズン・ニュークリア・パワー ”Nuclear Site License Summary” , n.d.

https://www.horizonnuclearpower.com/files/downloads/Nuclear%20Site%20Licence%20Application%20Summary .pdf

(10)

大 16 ヶ月かかる9。ウィルヴァ・ニューウィッドの申請書は 2018 年 6 月 28 日に受理された。最 も遅い場合でも 2019 年 10 月ごろには許認可の可否が判定される。なお、ヒンクリーポイント C 原発の場合、2011 年 12 月 28 日に申請書が審査のために受理され、審査開始は 2012 年 3 月 22 日、2013 年 3 月 19 日に許認可の決定がなされているので、一年で審査が完了したことになる10 環境許認可については、ウィルヴァ・ニューウィッドの場合、ウェールズ自然資源局(Natural Resource Wales)に対し申請されており、現在審査中である11

財務

プロジェクトの財務面については、詳細は後述するが、2018 年 8 月現在、日立製作所は最終投 資判断(FID)を 2019 年中としており、英政府との買取価格交渉などが行われている。(詳しく は p11)

その他

周辺インフラの整備として、既存の送電線では容量が不足することから、送電線の新規建設が行 われる予定である(「ノースウェールズコネクションプロジェクト」)。現在、送電事業者である ナショナル・グリッドにより建設許可が申請されている12。鉄塔や送電線の建設により景観や環境 への影響が懸念され、住民反対運動が起きている13

3. プロジェクトの問題点

1)事業のニーズ

英国の原子力政策については後段で詳しく述べるが、国家政策ステートメントに示されている原 発の必要性は下記の3点にまとめられる14 https://www.horizonnuclearpower.com/our-sites/wylfa-newydd/development-consent-order

9 Wilson,Mark (Infrastructure Planning Lead) “The Development Consent Process(計画プロセスについて)” n.d .

https://infrastructure.planninginspectorate.gov.uk/document/3168533

10 National Iinfrastructure Planning “Hinkley Point C” 2018/8/14 最終閲覧

https://infrastructure.planninginspectorate.gov.uk/projects/south-west/hinkley-point-c-new-nuclear-power-station/

11 ホライズン・ニュークリア・パワー ”WYLFA NEWYDD – PROTECTING OUR ENVIRONMENT” 2018/8/14 最

終閲覧 https://www.horizonnuclearpower.com/our-sites/wylfa-newydd/protecting-our-environment

12 National Infrastructuer Planning “North Wales Connection”

https://infrastructure.planninginspectorate.gov.uk/projects/wales/north-wales-connection/ 2018/8/14 最終閲覧

13 Gareth Wyn-Williams, “Protesters opposing overhead pylon plan warn National Grid 'Anglesey will fight'”, The

Daily Post, 2017/6/26 https://www.dailypost.co.uk/news/north-wales-news/protesters-opposing-overhead-pylon-plan-13239019

(11)

・気候変動対策(低炭素電源の確保) ・エネルギー安全保障(多様なエネルギーミックスと安定供給) ・需要対応 2つ目のエネルギー安全保障に関しては、日本と同じく英国もウランはすべて輸入に頼っている ことから、原発がエネルギー安全保障に資するとは言い難い。英国の核燃料サイクルについては後 述(p.23)するが、使用済み燃料の再処理をやめることが決定している。 2005 年にエネルギー消費量がピークを迎えて以降、消費量は毎年減少している。また、2014 年 は 2005 年にくらべ、18%の減少を記録した15。近年の家庭でのエネルギー消費減少の背景には白 熱電球が LED に代替され始めたこと、効率のよいボイラーや断熱性能の向上、電力・ガス価格の 高騰があるとみられている16。今後もさらに電力・熱両方の分野で省エネルギー・エネルギー効率 向上の可能性がある。 一方、電力部門以外の二酸化炭素排出削減のために、現状ガスが中心の家庭用暖房設備を電気式 に切り替えていくことや、ガソリン車を電気自動車へ移行することなどを進めているため、電力需 要は上昇すると政府は試算している17。しかし、家庭部門に関しては、現状の住宅設備が非常に古 く、断熱設備を改善することでエネルギー効率を格段に向上させることができる。英国エネルギー リサーチセンターなどの研究によれば、家庭の暖房効率・断熱・照明の効率を改善するだけで、ヒ ンクリーポイント C 原発と同じサイズの原発6基分の省エネルギーになるという18 また、100%再生可能エネルギーシナリオはいくつかの機関によって試算・研究がなされてい る。グリーンピースや FoE イギリス(Friends of the Earth EWNI)といった環境 NGO は、二酸化 炭素回収・貯留(CCS)や、新規原発建設なしで、2030 年までに再エネ 100 パーセントを達成す ることは財政的にも技術的にも可能とするレポートを発表している19,20。また、代替技術センター

(Center for Alternative Technology)は 2007 年から“ゼロカーボン・ブリテン(Zero Carbon Britain)”と題したレポートを発表しており、今日利用可能な技術のみで社会全体の脱炭素化は可 能であるとしている21

15 Carbon Brief "Five charts show the historic shifts in UK energy last year" 2015.7.30

https://www.carbonbrief.org/five-charts-show-the-historic-shifts-in-uk-energy-last-year

16 Carbon Brief “A detailed look at why UK homes are using less energy” 2014.6.16

https://www.carbonbrief.org/a-detailed-look-at-why-uk-homes-are-using-less-energy

17 Department of Energy and Climate Change, Overarching National Policy Statement for Energy (EN-1), 2011.6 18 Rosenow, Jan et al. ”Unlocking Britain’s First Fuel: The potential for energy savings in UK housing”, 2017.9.

Centre on Innovation and Energy Demand (CIED) and UK Energy Reserch Centre (UK ERC)

http://www.cied.ac.uk/wordpress/wp-content/uploads/2017/09/3900_UKERC_CIED_briefing_final.pdf

19 Quiggin, Daniel and Wakefield,Max. 2030 Energy Scenario. Greenpeace 2015.7.25

https://www.greenpeace.org.uk/wp-content/uploads/2017/06/Greenpeace_2030_Public_July_2015_LowRes.pdf

20 Friends of the Earth “A plan for Clean British Energy Powering the UK with renewables – and without nuclear”

2012.9 https://friendsoftheearth.uk/sites/default/files/downloads/plan_cbe_report.pdf

21 Centre for Alternative Technology “Zero Carbon Britain Making it Happen” 2017.

(12)

2)技術面

日立-GE の原子炉

ウィルヴァ・ニューウィッド原発で採用されている技術は、日立-GE によって提供される改良型沸 騰水型原子炉(ABWR)であり、柏崎刈羽 6、7 号機、浜岡 5 号機、志賀 2 号機で運転実績がある

22

【出典:GOV.UK, GDA of Hitachi-GE】

沸騰水型(BWR)は大事故を引き起こした福島原発で採用されていた技術であり、安全面では以 下の諸点が指摘されている。  放射能を帯びた一次冷却水が格納容器外部を循環する。  制御棒の下部からの挿入に駆動装置が必要。  格納容器のサイズが小さく、重大事故(燃料溶融)時に短時間で圧力上昇し易い。  使用済み燃料プールが建屋上階に設置され損壊リスクが大きい。 一方で、加圧水型(PWR)にも、蒸気発生器を必要とするため設備が複雑になる、圧力容器は中 性子脆化を起こしやすい、格納容器内は空気が充満しているため水素爆発を起こしやすい(BWR は窒素封入)などの問題点が指摘されている。 欧州では稼働中の全原発 129 基(2017 年 7 月時点、CIS 諸国は除く)のうち、PWR が 101 基、 BWR が 12 基、ガス冷却炉が 14 基、加圧重水炉(CANDU)が 2 基と圧倒的に PWR が多い。英国 では、ガス冷却炉が 14 基、PWR が 1 基であり BWR の運転や建設の実績はない。今回、ABWR 型 が選ばれているのは自社技術の売り込みを図る日立の都合以外の理由はなく、その目的のための事 業会社(ホライズン社)買収は本末転倒と言わざるを得ない。ちなみに、日立が次世代 ABWR と して喧伝している新型炉は航空機衝突対策、免震基礎、使用済み燃料プールの地下化などによって 安全対策が強化されている。しかしながら今回、英国で採用されるのは日本での建設・運転実績を

22 ONR “UK Advanced Boiling Water Reactor (UK ABWR)”

(13)

有する ABWR 炉であり、上述したような新たな安全対策は採られていない。

また、日立による買収(2012 年)以前、ホライズン社は PWR 型(ウェスチングハウス社の AP1000 型あるいはアレバ社の EPR 型)の採用を前提とした計画・申請を行なっていた23。EPR 炉

も航空機対策が採られ、炉心溶融対策としてのコアキャッチャーが設置され、また、燃料プールも 地下設置である。日立は明らかに世界の潮流に目を背けて、安全性よりもコストと自社の都合を優 先したものといえる。

3)財務面

事業コスト

プロジェクト総額は公式には明らかにされていないが、報道等によれば、約 3 兆円と言われてい る。事業者であるホライズン社は、日立製作所が 100 パーセント出資する完全子会社であるが、日 立製作所は、事業継続の条件として、許認可の取得、採算性の確保、出資比率を 50%以下にするこ とによるオフバランス化(連結決算の対象外とすること)を挙げている。また、最終投資判断 (FID)は 2019 年末までとしている。日立は、2018 年 7 月の四半期決算説明会において、今すぐ プロジェクトを中止すれば、約 2700 億円の損失になると発言している24 出資比率低減のため、日立は出資パートナーを探しており、これまでに、日本の大手電力会社、 政策投資銀行などが投資パートナーとして打診を受けている25 融資に関しては、国際協力銀行(JBIC)による融資、日本貿易保険(NEXI)による付保が検討 されていると報道されていた。JBIC も NEXI も政府 100 パーセント出資の公的金融機関である。前 者は財務省、後者は経産省が所管している。 当初(2017 年)は JBIC や日本のメガバンクが1兆円の融資をするという報道が主要だったが、 2018 年に入ってからは、日本政府・日本企業、日立、英政府・英国企業のそれぞれが 3000 億円ず つ出資し、残りの2兆円を英政府や英国機関が融資するという枠組みが報道されている26 3兆円の事業費をどのように調達するのか、未だ明らかでないが、日立側は政府の関与無くして はこのプロジェクトは成り立たないとの見方を示しており27、事業リスクを軽減させるため、日英 両国に公的支援を求めているのが現状で、公的資金の投入により日英両国民にコストとリスクが転 嫁される恐れがある。

23 ホライズン・ニュークリア・パワー”Environment Impact Study Scoping Report – Nov. 2009” 24 “2019 年 3 月期 第 1 四半期 機関投資家・アナリスト向け決算説明会” http://www.hitachi.co.jp/IR/library/presentation/webcast/180727-2.html 25 “中部電・東電などに出資打診 日立、英原発計画で” 2018.6.25 日経新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31827450V10C18A6TJC000/ 26 “日立の英原発、英政府が譲歩案 2兆円を融資” 2018.5.11 日経新聞 27 “日立の英原発建設、日英政府の積極関与が必要=経団連次期会長” ロイター 2018.2.13 https://jp.reuters.com/article/idJPL4N1Q334T

(14)

コラム 1:原子力発電は未完の技術

炉型にかかわらず原発が危険な技術であることには論を待たない。人間が作り、運転するもので ある以上、原発に「絶対安全」はあり得ず、大小の不具合や故障、操作ミス、そして事故は常に起 こりうる。地震、津波、火山影響、さらには航空機墜落、破壊活動やサイバー攻撃といった外部事 象による影響もありうる。広範な放射能汚染をともなう過酷事故が起こった場合の被害は一般産業 施設にくらべて取返しのつかない深刻さをもたらす。たとえ、各国で策定されている規制基準(日 本の場合は 2013 年 7 月施行の新規制基準)に合格しても、原発は常に下図のような多くの過酷事 故リスクに晒されている。 【出典:原子力市民委員会「原発ゼロ社会への道 2017」】 原発が一般産業施設と異なるのは、その制御の困難さと同時に大量の放射性物質の存在であり、 いったん過酷事故が発生した場合には、その収拾は人間や工学的対策の手に負えるものではなく、 チェルノブイリ、福島が示しているように国境を超え多くの人々の生命、健康、財産、環境への甚 大な被害を広範囲にもたらすことになる。 加えて、核廃棄物の処理を含めた原子力発電は事業のライフサイクルがあまりにも長期に及ぶた め事業者や政府がその責任を負うことは不可能であり、人類の将来に対して極めて無責任な技術で ある(使用済み核燃料の放射能が自然界レベルにまで減衰するには約 10 万年を必要とする)。ま た、使用済み核燃料の再処理によるプルトニウムの取り出しが世界の核セキュリティ上への重大な 脅威となっていることも忘れてはならない。

(15)

電力買取価格

日立製作所は、事業の採算性を確保するため、英国政府に対して高い電力買取価格の設定を求め ている28

英国では低炭素電源の買取制度として、差額決済契約制度(Contract for Difference, CfD)とい う制度を導入している。まず、発電所ごとの買取価格(ストライクプライス)が設定され、原子力 発電所は、発電を開始してから 35 年間、買取価格が保証される(再生可能エネルギーは 15 年)。 その上で、設定された買取価格が電力市場価格(レファレンスプライス)を、下回る場合、発電事 業者が差額を調整機関(LCCC)に支払い29、逆に市場価格を買取価格が上回る場合、その差額 (difference)は LCCC が発電事業者に対して補填を行うが、財源は「供給者義務(Supplier Obligation)」を通じて小売から回収される30。最終的には電力料金に上乗せされて回収されるの で、消費者負担となる。 例えば、ヒンクリーポイント C 原発の買取価格は 92.5 ポンド/MWh であるが、2018 年 7 月の 英国の電力市場価格は 50 ポンド/MWh 辺りを推移している31。仮にこの状況でヒンクリーポイン ト C 原発が稼働した場合、差額の 42.5 ポンドは電力料金に加算されて回収されるので、消費者負 担が増加することになる。(ヒンクリーポイント C 原発による消費者負担については p.18 参 照)。

英国の原発支援の枠組み

前述のようにヒンクリーポイント C 原発については、高い買取価格が原発支援そのものになって いるが、消費者負担が巨大になる可能性が高いことから、この枠組みへの批判は大きかった。そこ で、ヒンクリーポイント C の次に作られる原発には、別の枠組みを用いるか、もしくはヒンクリー ポイント C より安い買取価格でないとならないという認識が広まっていた。 メディアでは、買取価格は安く抑える代わりに、英国政府が公的資金を融資保証もしくは直接出 資する案が検討されていると報道されていた。英国政府が公的資金を使って直接プロジェクトに出 資することで、その他の投資家を呼び込みやすくする狙いなどがある。しかし、もし英国政府が直 接出資することになれば、これまで電力業界を民営化してきた英国にとっては非常に大きな政策転 換となる32

その後、規制資産ベース(Regulated asset base, RAB)の適用が議論されるようになった33。日本

28 ”原発輸出 電力買い取り価格で日立と英政府に開き”テレビ朝日 2018.05.10

http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000126941.html

29 R.Bridle & C.Attwood ”It’s Official: The United Kingdom is to subsidize nuclear power, but at what cost?” 2016.2

https://www.iisd.org/sites/default/files/publications/united-kingdom-subsidize-nuclear-power-at-what-cost.pdf

30GOV. UK, “Electricity Market Reform: CFD Supplier Obligation”

https://www.gov.uk/government/collections/electricity-market-reform-cfd-supplier-obligation

31 Ofgem ”Electricity prices: Day-ahead baseload contracts – monthly average (GB)” 2018.8.17 最終閲覧

https://www.ofgem.gov.uk/data-portal/electricity-prices-day-ahead-baseload-contracts-monthly-average-gb

32 N. Butler “Stake in nuclear plant would be dramatic change of policy for UK” The Financial Times 2018.6.4.

https://www.ft.com/content/7ba55ce6-63f3-11e8-90c2-9563a0613e56

(16)

の総括原価方式に類似する仕組みで、全体のコストと固定資産税等を足したものをベースとして価 格を計算し、電力購入者から徴収する34 いずれのオプションも共通しているのが、⼗分な情報開⽰も、⺠主的な議論や意思決定もまった くなしに、なんらかの形で公的資金を投入して、事業リスクを軽減させる、もしくはコストを消費 者に転嫁しようとしているということである。 コラム 2 巨額建設リスクは誰が負うのか ベクテルの撤退 2018 年 8 月 22 日、日立製作所はホライズン社プロジェクトを推進するために「米ベクテル社を PMC(プロジェクトマネジメント受託会社)として任命し契約を締結した」とのプレスリリースを 発表した35。ベクテル社とは言うまでもなく世界最大規模の建設・エンジニアリング会社であり、 これまでに 42 基の原発建設実績を持つとされている。日立は、このことによって「プロジェクト 全体のマネジメント力が強化された」というが、本当にそうだろうか。 下図はウィルヴァ計画の現状の契約相関図である。日立・ベクテル・日揮(日)の 3 社がジョイン 【図】プロジェクトに関わるアクター図(ファイナンス部分除く) https://www.gov.uk/government/speeches/statement-to-parliament-on-horizon-project-at-wylfa-newydd

34 Oxera Consulting, “Agenda The regulatory asset base and regulatory commitment” 2014.2.

https://www.oxera.com/agenda/the-regulatory-asset-base-and-regulatory-commitment/

35日立製作所プレスリリース 2018.8.22.

(17)

ョイントベンチャーである Menter Newydd 社)を構成し、2016 年 5 月にホライズン社と EPC36 備契約を交わした。主に、プラント建設費の算出を中心とする F/S37業務の一部を担っているもの と思われる。 この 3 社連合は、プロジェクトが実施段階に至った時には、引き続き EPC(設計・調達・建設」 を一括して請け負うコントラクターとして期待されていた。しかしながら、昨今の東芝/ウェスチン グハウス(WH)社による米国における巨額損失、仏アレバ社によるフランスとフィンランドにお ける大幅遅延と大損失等は、原発建設事業における一括請負契約のリスクが一挙に顕在化したもの といえる。 ベクテル社はこの間、ホライズン社に対する EPC 準備業務を実施するなかで、EPC 受注のリス クを慎重に見極め、結論としてハイリスクハイリターン型の EPC 一括請負を辞退し、実行リスク を直接は負わない PMC 契約を選んだと考えられる。 なぜ建設事業にリスクが生じるのか? 原発建設事業者を危機に追い込んでいる背景についてはコラム 3「国際原子力産業の動向」 (p.16)を参照されたい。加えて、建設実行段階で顕在化しうるリスク例をリストアップしてみよ う。  カントリーリスク⇒デフォルト、法令変更、治安悪化、国際紛争  商務リスク⇒顧客信用リスク、プロジェクトの中断・延期、為替変動  市場リスク⇒機器・資材費、人件費、輸送費の高騰、熟練技能者・労働者の不足  技術・マネジメントリスク⇒新技術の採用、設計・製作・工事段階での不適合発生、プロジ ェクト管理力不足  原発特有のリスク⇒試運転段階における被ばく、放射能漏えい事故、核セキュリティ関連リ スク  その他⇒係争事象の発生、下請け倒産、事故、不可抗力 一部は契約条件や保険、適切なプロジェクト運営で回避あるいは軽減することができるであろう が、単純化していえば、これらのリスクが顕在化し、損失総額が一括契約金額の中に含まれる引当 額を超えた場合、当該プロジェクトの収支は赤字となる。上述した東芝/ウェスチングハウス、ア レバ社の場合、結果として累積で 1 兆円を超える大損失を被ることになった。 ベクテル社が結果として、ホライズン社との一括請負契約から撤退したことは、自社のリスクマ ネジメント上、きわめて妥当な結論といえるだろう。 誰がホライズンの建設を担うのか? では、3 社連合が解消され、ベクテル社が一括請負契約から撤退した今、誰が責任をもって建設 を実行し、リスクを引き受けるのであろうか? 今後、ホライズン社自身がベクテル社(PMC)の 支援を受けながら主要なスケジュールの策定、契約のパッケージング計画、個別契約の入札・交 渉・締結等々を融資スキームの実現と平行して実施していくことになる。細分化されたパッケージ が対象となるにしても、すでに迷走を始めている本案件の請負リスクを引き受ける企業がそう簡単 に現れるとは思えない。期日までの完工に疑義が生じるような場合は出資や融資予定者も二の足を 踏むような状況に陥るであろう。試行錯誤はまだまだ続くに違いない。

36プラント建設にあたって、Engineering, Procurement and Construction(設計、調達、建設)の全工程を表す

略号

(18)

4)社会・環境影響

アングルシー島の面積は約 700km2。約7万人が居住し、現在は農業や建設業、サービス業など が経済の中心である38。ここでは、このプロジェクトが地元地域社会や環境に及ぼす影響について 記述する。

環境影響

ウィルヴァ原発予定地は、美しい海岸沿いに位置し、近隣の海岸線が景観保護区域である特別自 然美観地区(Area of Outstanding Natural Beauty, AONB)に指定されている39。立地から半径2

km 以内に少なくとも6箇所、国や EU の基準により指定された保護区域や指定地域が存在する40 EU の法律によって保護が定められているキョクアジサシの生息地が見つかっており、そのため 開発同意申請が遅延した経緯もある。原発建設地の近隣は、数千のサンドイッチアジサシの生息地 ともなっており、英国全土に生息するサンドイッチアジサシの5分の1にあたる。地元の自然保護 団体は、建設による騒音や光による鳥類への影響に懸念を示している41

生計手段への影響および雇用創出

アングルシー島では数百年に及び、農業が営まれている。2010 年には、土地買収を拒否した農 家に対し、法的手段による強制収用を行おうとしたホライズン社に対し、批判が巻き起こった42 ホライズン社は、プロジェクトが雇用創出などにより地元経済に貢献するとしており、建設のピ ーク時には最大 9000 人の雇用が創出されると説明している。しかし、その大半を島の外からやっ てくる労働者に頼る計画になっており、地元で実際に雇用するのは 2000 人である43。また、発電 所運転時には 850 人程度の長期雇用が生じるとしているが、アングルシー島に技能を持った人材が 多くいるとは考えにくく、地元そのものへの長期的な雇用創出という経済効果は期待できない。 またアングルシー島は観光業もさかんである。年間 160 万人の観光客を受け入れており、4000

38 Local Government Data Unit Wales “Economic overview of the Isle of Anglesey A data analysis of the Island May

2013” 2013.

39 “AREA OF OUTSTANDING NATURAL BEAUTY (AONB)”, 2018.8.16 最終閲覧

https://www.visitanglesey.co.uk/en/about-anglesey/aonb/

40 Nuclear Free Local Authrity “New Nuclear Monitor Policy Briefing” 2018.8.13.

http://www.nuclearpolicy.info/wp/wp-content/uploads/2018/08/NFLA_New_Nuclear_Monitor_No54_Wylfa_B_planning_application.pdf

41 Vaughan, Adam, “Plans for Welsh nuclear power plant delayed by concerns over seabirds” The Guardian,

2018.4.9. https://www.theguardian.com/environment/2018/apr/09/plans-for-welsh-nuclear-power-plant-delayed-concerns-seabirds-anglesey-tern-colonies-wylfa

42 “Rally backs farmer refusing to sell land for Wylfa B” BBC. 2012.1.21

https://www.bbc.com/news/uk-wales-north-west-wales-16664969

43 ”Wylfa Newydd: Nuclear plant 'increases homelessness risk'” BBC. 2018.3.27

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人の雇用を有する島の主要産業として位置付けられている44。ウィルヴァ・ニューウィッド原発 は、新たに 121 ヘクタールの土地を必要とし45、新たな送電線の建設計画も進んでいる。景観や環 境への影響は少なくない。またひとたび事故が発生したら、観光業のみならず地元の経済への影響 は計り知れない。

社会インフラへの影響

アングルシー島行政は、ウィルヴァ・ニューウィッド原発の建設のピークに数千人の労働者が島 外から流入することにより、島の社会インフラが圧迫される恐れがあると報告している。特に住宅 価格の高騰が懸念されている46 また、労働者が利用するのパーク・アンド・ライド用駐車施設の建設が島内 100 箇所で計画され ているが、地元では騒音などの懸念が示され住民による反対の声が大きい47

ウェールズ文化

アングルシー島は、ウェールズ語を使う人の数が多く、ウェールズ固有の文化が根付く土地であ る。地元住民らは、原発建設により一時的に流入する建設労働者がもたらす文化への影響について 懸念している。原発建設計画の環境影響評価には、ウェールズ語への影響も評価対象に含まれてい る(Welsh Language Impact Assessment)。しかし、ホライズン社は、このような影響評価は、 「プロジェクト遂行に影響が出る」とし、言語に関する影響を評価対象から外すように要請したこ とで、地元から強い反発を受けた48

5)原子力防災計画・避難計画

英国では、原子力施設周辺における緊急時計画は地元行政(ウィルヴァ原発の場合、アングルシ ー島議会)が管轄し、オンサイト(原子炉施設内)に関しては事業者が管轄する。ただし「放射線 (緊急時準備及び公衆情報)規制、(Radiation(Emergency Preparedness and Public

Information)Regulations 2011, REPPIR)では、原子炉事業者に対し、オフサイトにおける緊急 計画と一般への情報提供に関する追加的義務も規定している。ホライズン社は ABWR の安全性や 過酷事故の分析は行なっているが49、ウィルヴァ・ニューウィッド原発の防災計画や緊急時計画な

44 Isle of Anglesey County Council “Anglesey remains committed to tourism”

http://www.anglesey.gov.uk/empty-nav/news/press-releases-2016/november-2016/anglesey-remains-committed-to-tourism/130554.article 2018.8.16 最終閲覧

45 “Wylfa nuclear power plant construction time slashed by 18 months” New Civil Engineer. 2017.12.15

https://www.newcivilengineer.com/business-culture/wylfa-nuclear-power-plant-construction-time-slashed-by-18-months/10026274.article

46 “Wylfa Newydd: Nuclear plant 'increases homelessness risk'” BBC 2018.3.27

https://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-north-west-wales-43563174

47 “Plan for 110-vehicle 'Wylfa workers' park and ride is scrapped”. Daily Post. 2018.3.26

https://www.dailypost.co.uk/news/north-wales-news/plan-110-vehicle-wylfa-workers-14459719

48 “Wylfa Newydd developer slammed for wanting to delete Welsh language policies” Daily Post. 2016.9.1. 49 Horizon Nuclear Power, “Wylfa Newydd Project 6.4.98 ES Volume D - WNDA Development App D14-2 -

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どは 2018 年 8 月現在まだ公開もしくは策定されていない。適切な緊急時計画は、運転開始前(核 燃料がサイトに運び込まれる前)に制定されていることが事業者に求められている50 緊急時計画の範囲(詳細緊急計画域、DEPZ)は、REPPIR に基づき、原子力規制局(ONR)が 設定する。各原発サイトにより、DEPZ の範囲は異なるが、現在稼働中の原発については、3km 範囲を超えないものが多い。現在廃炉作業中のウィルヴァ原発に関しては、2.5km であった51 事故時の長期的な影響や間接的な影響に対応するため、拡大緊急計画域を設けることが議論され たが、これも最大 15km 範囲までであった。福島第一原発事故後、30km 圏内に拡大すべきとの議 論がなされた52。2015 年に政府が発表した原子力緊急計画・対応ガイダンス(Nuclear Emergency

Planning and Response Guidance)では、必要とみなされる場合、現地行政は拡大アセスメント (Extendibility assessment)を行い、30km まで範囲を拡大することができるとしている53,54 ウィルヴァ・ニューウィッド原発はアングルシー島の北端 Cemaes に位置するが、サイトから、 島と本土を繋ぐ橋までは直線距離にして約 35km 程度である。島と本土を繋ぐ橋は2本しかなく、 通常でも通勤時には交通渋滞が発生しており、迅速な島外への避難に困難が伴うことが懸念され る。

6)原子力規制体制

英国では、エネルギー法(2013)を根拠として新たに組織された原子力規制局(ONR)が規制 や安全対策を担っている。なお、それまでは保健・衛生執行部原子力局、原子力施設検査局などの 組織が担っていた。ONR は原子炉設置法(1965、1969)に基づく許認可発行も行なっている。 ONR の業務範囲は、原子炉建設許認可の審査や、原子力関連施設に関する規制である。保障措 置に関する業務は欧州原子力共同体(以下、ユーラトム)を通じて行われきた。しかし、英国は EU 離脱に伴い、ユーラトムからの脱退も決定しているため、新たなセーフガード体制の構築を行 なっている。それまでユーラトムが担っていた保障措置(核物質・核技術の管理)を ONR が担う 方向性で議論が進んでいる(詳しくは p30)。

2015 年の規制緩和法(Deregulation Act)に基づく新たな命令(2017 Order)において、規制組織

Analysis of accidental ,2018.6. releases”https://infrastructure.planninginspectorate.gov.uk/wp- content/ipc/uploads/projects/EN010007/EN010007-001544-6.4.98%20App%20D14-2-Analysis%20of%20accidental%20releases%20(Rev%201.0).pdf

50 S.F. Ashley et al. “Considerations in relation to off-site emergency procedures and response for nuclear accidents”

Process Safety and Environmental Protection 112, 2017,11

51 Office for Nuclear Regulation “Emergency planning areas around UK nuclear installations”

http://www.onr.org.uk/depz.htm 2018.8.16 最終閲覧

52 S.F. Ashley et al. “Considerations in relation to off-site emergency procedures and response for nuclear accidents”

Process Safety and Environmental Protection 112, 2017,11

53 “Nuclear Emergency Planning and Response Guidance” 2015.10.

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/472426/NE PRG04_-_Annexes.pdf

54 被曝限度については ONR “Numerical targets and legal limits in Safety Assessment Principles for Nuclear

Facilities - an explanatory note” 2006.12 http://www.onr.org.uk/saps/numerical-targets-limits-explanatory-note.pdf

(21)

に「経済成長を考慮する義務」が課せられた。これは、規制組織としての独立性が損なわれるとし て批判の声が大きい55。そんな中、ユーラトムという第三者が担ってきた保障措置を、英国国内の

機関が担うことで、独立性や査察の質が低下するのではと懸念する声もある56

7)賠償責任

57

英国の原子力損害賠償制度は、原子力施設法(Nuclear Installation Act 1965)およびパリ条約 及びブラッセル補足条約による。

2004 年、パリ条約で定められた賠償限度額や対象範囲を拡大するため、「2004 年議定書」が合意 されたが、2018 年 8 月現在、未だ発効しておらず、英国でもまだ批准されていない。この 2004 年 議定書に対応するため、原子力設置法に基づく原子力損害賠償令(The Nuclear Installations (Liability for Damage) Order 2016)が策定されたが、2004 年議定書が批准されるまでは効力を持 たない。 原子力設置法、パリ条約・ブラッセル補足条約に基づく、英国の賠償制度は以下のとおりであ る。 ・ 賠償責任は、原子力事業者(オペレーター)に集中しており、他のもの(メーカーや請負 業者)には及ばない。(責任集中) ・ 原子力事故が武力紛争における敵対行為に起因する場合、事業者は免責されるが、それ以 外は、たとえ異常に巨大な天災地変であったとしても免責されない。 ・ 日本やドイツのような無限責任ではなく、有限責任である。 ・ 事業者の損害賠償責任の上限は、総額 1 億 4,000 万ポンド(約 205 億円、1 ポンド= 146.3 円で計算)とされている(原子力施設法第 16 条第 1 項)。「原子力損害賠償令 2016」発効後は、7 億ユーロ(約 901 億円)となり、その後、毎年1億ユーロ(約 129 億 円)ずつひきあげられ、最終的に 12 億ユーロ(約 1,544 億円)となる。 ・ 国務大臣は、財務省の承認を得て、命令によって責任限度額を増額することができる。た だし、命令の施行前に生じた事故について遡及的に適用されない(原子力施設法条第 1A 項)。 ・ それを上回る場合、国会の議決により 3 億 SDR58を限度として政府が補償する(同法第 18 条第 1 項、第 1A 項)。

55L. Leftly “Alarm over Government’s growth mandate for nuclear regulator” The Independent 2015.11.3

https://www.independent.co.uk/news/business/news/alarm-over-government-s-growth-mandate-for-nuclear-regulator-a6718841.html

56 FoE Japan による核政策専門家 David Lowry へのヒアリング

57 原子力委員会「諸外国の原子力損害賠償制度の概要」(平成 27 年 5 月)、国会図書館「イギリスの原子力

損害賠償制度」(平成 30 年 8 月 10 日)、UK Parliament ”Taxpayer liability for safety at the Wylfa Nuclear power project” 2018.7.20 などを参照

58 SDR は Special Drawing Rights(特別引出権)の略。全世界共通の通貨単位を表す。1SDR は 2018.1 時点で

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・ パリ条約・ブラッセル補足条約に基づき、政府は賠償資金を 1 億 7,500 万 SDR 用意しな ければならない。これを超える場合には締約国からの拠出金を 3 億 SDR(約 450 億円) まで利用することができる。(改正後は、15 億ユーロ) リスクを負わされる住民の側からみたとき、最も問題なのは、有限責任であることだ。原子力事 業者の責任限度額は現在 1 億 4,000 ポンド(約 205 億円)であるが、あまりに低額である。福島第 一原発事故の賠償費用は、政府による見積もりでも 7.9 兆円に達している。本来であれば賠償費用 に含まれるべき除染の費用も含めれば、11.9 兆円となる。。 政府による補填がされても、完全賠償となるかどうかは定かではなく、万が一事故が生じた際 に、被害を受けた人々が泣き寝入りすることになりかねない。 原子力事業者の責任限度額が低いこと、政府による補填がなされることは、事業者が、事故回避 のための十分な安全対策を行うインセンティブが働かず、結果としてコストが高い安全対策が実施 されないおそれもある。

コラム 3 国際原子力産業の動向

原子力産業の不振

世界の原子力産業は岐路に立っている。下のグラフは「世界原子力産業報告 2017」に示された 新規運転基数(グラフ上側)と閉鎖基数(グラフ下側)の推移である。すでに先進国における原発 基数は 400 基を超えて頭打ち状態となっており、1986 年のチェルノブイリ事故以降の新規原発基 数は中国を除いて減少の一途をたどっている。

【図:世界の原子炉の稼働と閉鎖の推移 The World Nuclear Industry Status Report 2017(M. Schneider Consulting Project)より】

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加えて、福島原発事故以降は、安全対策強化による遅延や建設費の高騰が発電事業や建設事業に 大きなダメージを与えている。いくつかの具体例をみていく。 東芝が米国での建設事業の巨額損失に見舞われて子会社のウェスチングハウス社の連邦破産法 11 条の申請と資本関係の解消を行なったことは記憶に新しい。東芝はその後、海外における建設 事業のみならず発電事業からも撤退することを決定し、2018 年 5 月 31 日に米国サウステキサスプ ロジェクト(STP)からの撤退を取締役会にて決議した。英国に有する発電事業ニュージェネレー ション社の韓国企業への売却も交渉中であるが、現地従業員の大幅削減方針も報道されており59 プロジェクトの存続自体不透明である。 他社も同様に退潮のなかにある。三菱重工は仏アレバ社との、日立製作所は米 GE 社との合弁企 業にてそれぞれ建設受注を目指しているが、国内外とも福島原発事故以降、新規受注はない。三菱 重工がトルコにて計画中のシノップ原発は共同事業者であった伊藤忠商事が 2018 年 4 月に採算性 を理由に撤退し、さらに 2018 年 8 月に入ってからのトルコ・リラの急落により、実現はいっそう 困難となった。また、2016 年には有力視されていたベトナム・ニントゥアン省の新設計画はベト ナム政府によって白紙化されている。 日立は英ホライズン社を買収して ABWR 型 2 基の建設実現を図っているが本冊子内で詳細に報 告されているように問題は山積している。 仏アレバ社はすでに事実上破綻しフランス電力公社(EDF)の傘下に入っているが、進行中のフラ マンビル(仏)、オルキルオト(フィンランド)の両建設プロジェクトで大幅な遅延と損失の拡大 が続いている。

将来への見通し

各社をこのような状況に追い込んだ背景を要約する。  9・11 米国同時多発テロ事件と福島原発以降の安全対策強化による建設費の高騰  事業を取り巻く様々なリスクと巨額資金調達の困難さ  シェールガス開発と原油・ガス価格の低下に伴う原子力発電事業の競争力低下  世界規模で自然エネルギー利用が急速に普及し、競争力、廃棄物処理を含めた社会・環 境影響の面で脱原発の潮流が加速 現実に各社の苦境をみれば、日本、欧米を中心とした原発建設産業にとっては国内新設、輸出案 件ともに先行きは不透明であり、継続的かつ安定した事業利益を期待することは出来ない。マーケ ットは原発建設企業にとって既存の組織を維持できる規模ではなく、今後も、すでに原発産業の将 来に見切りをつけた独シーメンス、米 CB&I 社のような撤退、あるいは業界の再編が起こりうるだ ろう。 こうして、行政による強力なテコ入れを必要とし、電力自由化路線とは相容れない原発産業は衰

59 “Staff layoffs leave Cumbria nuclear plans on the brink” 2018.9.8. Times

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退の一途をたどろうとしており、さらに、その延命策は自然エネルギー利用等の将来分野の発展を 阻害している。世界の潮流は明らかに「原発と化石燃料に代わる再生可能エネルギーの利用」であ り、そのことが関連産業の発展を含めた好循環をつくり出している。関連企業は原子力事業から撤 退し、廃炉ビジネス、省エネルギー、スマートグリッド、再生可能エネルギー産業などの分野で世 界を牽引する体制への転換を望みたい。

コラム 4 ヒンクリーポイント C

ヒンクリーポイント C 原発は、英国南西部サマセットで現在建設中の原発である。フランス・ EDF と中国・CGN が出資する(出資比率は 66.5:33.5)60。炉のタイプは欧州加圧水型炉(EPR) で、2基合計 3260MW の設備容量を持つ。現在建設中。このプロジェクトは高価な買取価格設定 や、EU 裁判所での係争など様々な問題を抱えている。

莫大なコスト

2013 年時点には、コスト予測が利息を除いて 140 億ポンドに上方修正され、最終的に度重なる 遅延なども影響61し、最終的に 200 億ポンド(約 2.8 兆円、1 ポンド=142.9 円)に到達すると見ら れている62 ヒンクリーポイント C 原発には、CfD が適用されており、買取価格(ストライクプライス)は 92.5 ポンド/MWh(35 年間)に設定されている。2018 年 7 月の電力市場価格がおよそ 50 ポンド /MWh 周辺を推移する中、非常に高価な買取価格である。もちろん電力市場価格は変動するので、 今後もこの買取価格が市場価格を上回るかどうかは明言できない。しかし、今後、電力供給に占め る再エネの割合が増えていくことは確実であり、再エネの価格が急落していることを鑑みても (2013〜5 年あたりには 140 ポンド/MWh だった洋上風力が 2017 年には 60 ポンド/MWh)、市 場価格が原発の買取価格を上回ると想定するのは難しい63 さらに、英国監査局(NAO)は、ヒンクリーポイント C 原発について、CfD を通じて電力消費 者が追加的に支払う金額は 300 億ポンドになり、年間の電力料金に換算すると 10〜15 ポンド (1500~2000 円)がヒンクリーポイント C を支えるために利用されると試算。同レポートは、原 発建設によって消費者がリスクに晒されるだろうと結論づけた64 このため、英国国内では、ヒンクリーポイント C 原発のあとに建設される原発には、高い買取価 格はつけられないという認識が広まり、新たな枠組みが模索されるべきだという議論が巻き起こっ 60 もともと、ヒンクリーポイント C 原発は、仏・EDF と英・Centrica が 8:2 で出資する計画だった。しかし、 Centrica が 2013 年に撤退し、中国 CGN が加わった。 61 計画当初は 2017 年に完工予定だったが、2027 年まで遅延。

62“Hinkley Point: the ‘dreadful deal’ behind the world’s most expensive power plant

” The Guardian. 2017.12.21 https://www.theguardian.com/news/2017/dec/21/hinkley-point-c-dreadful-deal-behind-worlds-most-expensive-power-plant

63 Stephen, Thomas “Time to cancel Hinkley?” September 2017

64 National Audito Office “Hinkley Point C” 2017.6.23

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た65

裁判

2013 年、同プロジェクトに対する英国政府の公的支援が、EU の公正競争に関する法律(State Aid)に違反する可能性があるとして、ヨーロッパ委員会が調査を開始。調査の結果、違反はない としたものの、その結論に対し、オーストリア政府が裁判を起こした。オーストリアの申し立ては 却下されたが66、オーストリア政府は控訴の意思を明らかにしている67

4. 英国における原子力政策

1)原子力政策の歴史

第一次原発建設プロジェクト

英国の原子力技術開発は、1940 年代の原子爆弾開発から始まった。1946 年、最初の原子炉がハ ーウェルに設置され、1953 年に政府により正式に原子力の民生利用開始が発表された。1955 年、 政府は「原子力プログラム」と題する白書を発表。白書では、1965 年までに合計 1,400〜 1,800MW 分のマグノックス炉68を建設するとした(のちにスエズ危機などを経て 5,000MW〜 6,000MW に目標を上方修正)。1956 年に最初の民生用原発コールダーホール原発が運転を開始し た69。1956~71 年にかけて合計 11 箇所 26 基(計約 5,000MW)のマグノックス炉が建設された。 2018 年現在、2015 年にウィルヴァ原発1号機が閉鎖されたのを最後に、マグノックス炉は全て稼 働を終えている。

第二次原発建設プロジェクト

1964 年に新たな原子力白書(The Second Nuclear Power Program)が政府により発表され、 1970 年〜75 年の間に、約 5,000MW 分の新設が計画された。以降 1995 年までの間に、7箇所 14 基の改良型ガス冷却炉(AGR)炉、1箇所1基の加圧水型原子炉(PWR)が建設された(計約

65 J.Ambrose “Government to rethink Hinkley Point funding model for future projects” Telegraph, 2017.10.3

https://www.telegraph.co.uk/business/2017/10/03/government-rethink-hinkley-point-funding-model-future-projects/

66 “EU裁判所、英国の新設計画に対するオーストリアの異議申し立てを却下” 日本原子力産業協会 2018.7.13

http://www.jaif.or.jp/180713-a

67 “Austria plans to appeal EU ruling on UK's Hinkley Point nuclear plant” Reuters 2018.9.3

https://uk.reuters.com/article/eu-nuclear-uk-austria/austria-plans-to-appeal-eu-ruling-on-uks-hinkley-point-nuclear-plant-idUKL8N1VP1Y1

68核分裂により生じた熱エネルギーを、高温の炭酸ガスとして取り出す原子炉。黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子

炉。

69 World Nuclear Association “Nuclear Development in the United Kingdom”

http://www.world- nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-t-z/appendices/nuclear-development-in-the-united-kingdom.aspx 2018/7/31 最終閲覧

(26)

8,800MW)70。現在、これら 15 基全てが稼働中である

【表:英国で現在稼働中の原発 WNA のウェブサイト71など参考に作成】

名称 炉形 容量(MW) 稼働開始 閉鎖時期 Dungeness B 1&2 AGR 2 x 545 1983 & 1985 2028 Hartlepool 1&2 AGR 2 x 595 1983 & 1984 2024 Heysham 1&2 AGR 2 x 580 1983 & 1984 2024 Heysham II 1&2 AGR 2 x 615 1988 2030 Hinkley Point B 1&2 AGR 2 x 610

(ただし出力 70%で 稼働)

1976 2023

Hunterston B 1&2 AGR 2 x 610,

(ただし出力 70%で 稼働)

1976 & 1977 2023

Torness 1&2 AGR 2 x 625 1988 & 1989 2030 Sizewell B PWR 1188 1995 2035 合計(15 基) 合計 約 8800 MW

民営化と 1990 年代以降

発送電は、1958 年に設立された中央電力庁(Central Electricity Generating Board, CEGB)に より担われ(1957 年電力法)72、同組織による発送電の事実上の独占は 1990 年まで続いた。なお、

CEGB が原子力推進の中心的役割を担った73

1983 年の電力法改正で、発電部門に新規事業者参入が認められたが、CEGB の独占状態は変わ らなかった74。サッチャー政権のもと、1989 年の電力法改正によりさらなる民営化が図られ、

CEGB は、3つの発電会社、PowerGen(2002 年にドイツの E.ON が買収), National Power(の ちに国内業務を行うイノジー(Innogy)と、国際業務を行う International Power に分離、前者は ドイツの RWE が買収), Nuclear Electric(1996 年に British Energy となり、その後 2009 年にフ

70 World Nuclear Association “Nuclear Development in the United Kingdom”

http://www.world- nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-t-z/appendices/nuclear-development-in-the-united-kingdom.aspx 2018/7/31 最終閲覧

71World Nucelar Association “Nuclear Power in the United Kingdom” (Updated September 2018)

http://www.world-nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-t-z/appendices/nuclear-development-in-the-united-kingdom.aspx

72 配電は地域ごとに分けられた 12 の配電局により担われてきた。

73 Winskel, Mark “Autonomy’s End: Nuclear Power and the Privatization of the British Electricity Supply Industry”,

Social Studies of Science 32-3, 2002,

74 杉平二郎「英国:電力自由化、規制改革と企業戦略」IEEJ, 2002.10

(27)

ランスの EDF が買収)に分離され、送電を行う National Grid Company が設立された75 1980 年代当時、ヒンクリーポイント C 原発、ウィルヴァ B 原発、サイズウェル C 原発の建設計 画があった。しかし 1989 年、政府は原子力政策の見直しを行うと発表し、新規原発建設にモラト リアムが発令された。その結果、1995 年に行われた原子力レビューでは76、原子力部門の民営化は 可能であるとし、原子力部門に対し公的資金を投入しないことを結論づけた。その後、Nuclear Electric は、原子力に経済合理性がないと結論づけ、新規原発計画を中止した(建設開始していた サイズウェル B 原発はそのまま建設された)77

2005 年以降の政策転換

1995 年以降、結果的に英国では原発新設はなかったが、行うとしても原則として新規原発は民 間資金のみで行う方針(No subsidies policy、補助金なし政策)を維持していた。その後、英国の 原子力政策の転換は 2005 年から始まった。 通常、英国のエネルギー政策の見直しは頻繁に行われるものではなく、10 年に一度程度のペー スである。しかし、2003 年にエネルギー政策が決定されてから、たった 2 年後の 2005 年にブレア 政権(労働党)はエネルギー政策の見直しを発表78。2003 年の白書79では新規原発建設は経済性に 乏しく、放射性廃棄物の問題も未解決であることから、エネルギー効率と再生可能エネルギーに注 力するべきであると結論づけていた。しかし、2006 年、貿易産業省は原発と石炭火力発電所の老 朽化・温室効果ガス削減などの観点から原発新設を提案。建設から解体、長期的な廃棄物の管理ま であくまで民間が担うとしたうえで、経済性については、将来的な化石燃料価格や CO2排出にもと づく炭素ベースのエネルギー価格に左右されるとし、2003 年当時よりも原子力の経済優位性につ いての見通しが前向きであるとした80

2007 年、英国政府は原発に関するコンサルテーションペーパー(The Future of Nuclear Power81)をとりまとめ、ブラウン政権下の 2008 年には原子力白書(Meeting the Energy

75杉平二郎「英国:電力自由化、規制改革と企業戦略」IEEJ, 2002.10 https://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/513.pdf 76 (参考)“Commons sitting on Nuclear Review” (議事録)1995.5.9

https://api.parliament.uk/historic-hansard/commons/1995/may/09/nuclear-review

77 World Nuclear Association, “Nuclear Development in the United Kingdom”,

http://www.world- nuclear.org/information-library/country-profiles/countries-t-z/appendices/nuclear-development-in-the-united-kingdom.aspx 2018.8.19 最終閲覧, “Timeline: Nuclear power in the United Kingdom”The Guardian 2008.5.26 https://www.theguardian.com/environment/2008/jan/10/nuclearpower.energy

78 Stephen, Thomas “The Hinkley Point decision: An analysis of the policy process” 2016.9

Energy Policy 96

79 Department of Trade & Industry Our energy future: creating a low carbon economy 2003

http://webarchive.nationalarchives.gov.uk/+/http:/www.berr.gov.uk/files/file10719.pdf

80Department of Trade and Industry ”The Energy Challenge” 2006.6

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/272376/688 7.pdf

81 “The Future of Nuclear Power” 2007.5

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Challenge: A White Paper on Nuclear Power82)が発表された。原子力白書においては、公的資金 は注入しないという従来の方針を残しつつ、民間の原子力産業への参入の妨げになっている課題な どに取り組むとした。

2)現行のエネルギー・原子力政策

保守党政権下の国家政策ステートメント(NPS)

2010 年にブラウン政権から保守党のキャメロン政権(自由民主党との連立内閣)に移行して も、原発推進政策は維持された。保守党政権下で決定された国家政策ステートメント(National Policy Statement, NPS)で示された方針83は、下記にまとめられる。 ・エネルギー安全保障の確保 再生可能エネルギーは不安定であり、安定してエネルギーを供給できる低炭素エネルギー の原発が、エネルギー安全保障のために必要である。また、エネルギーミックスの多様性を 確保することで、安全保障に資する。ガスに比べ原発の方がコストが低く、化石燃料価格高 騰による影響を軽減することができ、さらに再生可能エネルギーよりも経済競争性がある。 ・需要対応 英国では 2020 年までに、石炭火力発電所など化石燃料によるものも含めて少なくとも 22GW 分の発電所が、老朽化や規制強化により閉鎖されるため、発電所の新設が必要でる。 また、温室効果ガス排出削減目標達成のために、電力源の脱炭素化だけでなく、輸送・熱 (暖房)などの脱炭素化および電化が必要である。そのため電力需要が、2050 年までに現 在の2倍になると推定される。 ・気候変動対策 気候変動法の温室効果ガス排出削減目標達成のためには低炭素電源である原発が必要であ る。

気候変動政策との関連

2008 年の気候変動法では 2050 年までに 1990 年比で少なくとも 80 パーセントの温室効果ガス を削減することが課せられている。

国家インフラ委員会による勧告

現行の原子力政策への批判としては、独立した立場で英国政府のインフラ政策にアドバイスを行

82 Department for Business,

Enterprise & Regulatory Reform “Meeting the Energy Challenge: A White Paper on Nuclear Power” 2018.1 https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/228944/729 6.pdf

83 Department of Energy and Climate Change “Overarching National Policy Statement for Energy” Part 3

https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/47854/1938 -overarching-nps-for-energy-en1.pdf

参照

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