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Ⅰ 等級 一般職 ( 定型 補助業務担当者 ) Ⅱ 等級 担当職 ( 基幹業務担当者 ) Ⅲ 等級 推進 指導職 ( 主任 熟練業務担当者 ) Ⅳ 等級 業務管理責任職 ( 課長 ) Ⅴ 等級 部門経営責任職 ( 部長 ) なお 金額はあくまでも例ですので 実際には各社に合わせた水準にしなければなり

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Academic year: 2021

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図表 1:基本給を組み立てるポイント (ア)基本給は全体として地位が高いほど高くなるようにする (イ)習熟による伸びしろを確保するために範囲給とする。ただし、青天井の昇給を防ぐた めに上限を設ける (ウ)運用を円滑にするために等級間の賃金バンドは重複型とする。ただし、重複を説明す るために等級基準は役割などの仕事基準とする (エ)習熟の違いを反映するために、評価に応じた上限額を設ける  前回から基本給の具体的な組み立て方に ついて考えています。地位報酬と習熟報酬 を同時に受けとめる基本給のポイントを整 理すると、図表 1 のようになりました。図 表 2 はこれらのポイントを盛り込んだ基 本給のイメージです。これを「ゾーン型等 級別範囲給」と呼びましたね。  今回は、ゾーン型等級別範囲給の賃金管 理上の意味と運用方法を詳しく考えていき ます。 1ゾーン型等級別賃金表  まず、実務で運用しやすくするために、賃 金バンドの中を細かな金額に分けます。す ると、38 〜 39 ページの図表 3 のような賃 金テーブルができあがります。賃金額の一 覧表ですので「ゾーン型等級別賃金表」と 呼ぶことにします。  図表 3 には、Ⅰ等級からⅤ等級までの 5 つの基本給表が入っていますが、これは小 規模企業に多い次のような 5 等級構成を想 定した例です。

「多様な働き方」時代の

連 載

ゾーン型等級別賃金表で「絶対額管理」を行う

<12>基本給の組み立て方⑵

株式会社プライムコンサルタント 

田中博志

賃金設計

賃金設計

賃金設計

 正社員、嘱託社員、パートタイム社員、契約社員、派遣社員、勤務地限定社員…。 近年、雇用形態の細分化が進み、さまざまな働き方の「社員」が増えてきた。そのよ うな働き方の異なる社員の賃金はどのように決めればよいのか?「多様な働き方」時 代の賃金設計の考え方・ノウハウについて、株式会社プライムコンサルタントの田中 博志氏に解説いただく。連載第12回は「基本給の組み立て方⑵」です。

(2)

図表2:ゾーン型等級別範囲給

S

等 級

A

B

C

D

S

A

B

C

D

S

A

B

C

D

基本給の金額

 なお、金額はあくまでも例ですので、実 際には各社に合わせた水準にしなければな りません。 ⑴賃金表の見方  まず、図表 3 の見方を確認しておきまし ょう。  基本給額は、Ⅰ等級 1 号 16 万 5000 円、Ⅰ 等級 2 号 16 万 6100 円…というように、「○ 等級△号□円」という形で表します。  同じ等級の中で隣りあう号数の金額差を 「号差金額」と呼びます。同じ等級の中では 号差金額は一定にしてあります。図表 3 の 表頭の括弧内の数値が号差金額を示してお り、Ⅰ等級は 1100 円、Ⅱ等級は 1380 円… というように、等級が高いほど大きくなり ます。  各等級の 1 号の金額は「初号値」と呼び ます。初号値は、各等級の役割を任せるに あたっての最低保障額という意味合いがあ ります。したがって、Ⅰ等級の初号値は 16 万 5000 円、Ⅱ等級は 18 万 400 円…という ように、等級が上がるにしたがって初号値 も高くなっていきます。なお、Ⅰ等級の初 号値は通常、高校新卒入社の初任給として 設定します。  実は、図表 3 の各金額は、等級初号値と 号差金額がわかれば簡単に計算することが できます。初号値に号差金額を順次足し算 していけばいいわけですね。  さらにこの賃金表には、E ゾーン、D ゾ ーン…S ゾーンという区分が設けられてい ます。これは、同じ等級でも習熟・貢献度 の評価に応じて賃金に差をつけるための基 本給の区分です。そして、各ゾーンの最高 額は、評価の SABCD に対応した賃金の伸 びしろの上限です。評価に応じた上限額で あることを示すために、ゾーンの記号に括 弧をつけて、(E)、(D)…(S)というよう に表しています。  図表 2 の「ゾーン型等級別範囲給」を具 体的な賃金テーブルにするとこのような形 になるのです。なお、図表 3 の E ゾーンは、 Ⅰ等級からⅢ等級までの賃金が低い層を底 上げするために昇給しやすいゾーンとして 特別に追加しているものです。また、Ⅴ等 級 1 号が(D)となっていますが、これは Ⅴ等級で D 評価の場合は初号値に据え置 くことを示しています。 Ⅰ等級…一般職(定型・補助業務担当 者) Ⅱ等級…担当職(基幹業務担当者) Ⅲ等級…推進・指導職(主任・熟練業 務担当者) Ⅳ等級…業務管理責任職(課長) Ⅴ等級…部門経営責任職(部長)

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図表3:ゾーン型等級別賃金表の例 Ⅰ等級 担当 Ⅱ等級担当 Ⅲ等級主任 Ⅳ等級課長 Ⅴ等級部長 号 ゾーン (1,100) ゾーン (1,380) ゾーン (1,730) ゾーン (3,980) ゾーン (7,370) 1 E 165,000 E 180,400 E 208,000 D 251,300 (D) 323,000 2 E 166,100 E 181,780 E 209,730 D 255,280 C 330,370 3 E 167,200 E 183,160 E 211,460 D 259,260 C 337,740 4 E 168,300 E 184,540 E 213,190 D 263,240 C 345,110 5 E 169,400 E 185,920 E 214,920 D 267,220 C 352,480 6 E 170,500 E 187,300 E 216,650 D 271,200 C 359,850 7 E 171,600 E 188,680 E 218,380 D 275,180 C 367,220 8 E 172,700 E 190,060 E 220,110 D 279,160 C 374,590 9 E 173,800 E 191,440 E 221,840 D 283,140 (C) 381,960 10 E 174,900 E 192,820 E 223,570 D 287,120 B 389,330 11 E 176,000 E 194,200 E 225,300 (D) 291,100 B 396,700 12 E 177,100 E 195,580 E 227,030 C 295,080 B 404,070 13 E 178,200 E 196,960 E 228,760 C 299,060 B 411,440 14 E 179,300 E 198,340 E 230,490 C 303,040 B 418,810 15 E 180,400 E 199,720 E 232,220 C 307,020 B 426,180 16 E 181,500 E 201,100 E 233,950 C 311,000 B 433,550 17 E 182,600 E 202,480 E 235,680 C 314,980 (B) 440,920 18 E 183,700 E 203,860 E 237,410 C 318,960 A 448,290 19 E 184,800 E 205,240 E 239,140 C 322,940 A 455,660 20 E 185,900 E 206,620 E 240,870 C 326,920 A 463,030 21 E 187,000 E 208,000 E 242,600 (C) 330,900 A 470,400 22 E 188,100 E 209,380 E 244,330 B 334,880 A 477,770 23 E 189,200 E 210,760 E 246,060 B 338,860 A 485,140 24 E 190,300 E 212,140 E 247,790 B 342,840 A 492,510 25 E 191,400 E 213,520 E 249,520 B 346,820 (A) 499,880 26 E 192,500 E 214,900 E 251,250 B 350,800 S 507,250 27 (E) 193,600 E 216,280 E 252,980 B 354,780 S 514,620 28 D 194,700 E 217,660 E 254,710 B 358,760 S 521,990 29 D 195,800 E 219,040 E 256,440 B 362,740 S 529,360 30 D 196,900 E 220,420 E 258,170 B 366,720 S 536,730 31 D 198,000 E 221,800 E 259,900 (B) 370,700 S 544,100 32 D 199,100 (E) 223,180 E 261,630 A 374,680 S 551,470 33 D 200,200 D 224,560 E 263,360 A 378,660 (S) 558,840 34 D 201,300 D 225,940 E 265,090 A 382,640 35 D 202,400 D 227,320 E 266,820 A 386,620 36 D 203,500 D 228,700 (E) 268,550 A 390,600 37 D 204,600 D 230,080 D 270,280 A 394,580 38 D 205,700 D 231,460 D 272,010 A 398,560 39 (D) 206,800 D 232,840 D 273,740 A 402,540 40 C 207,900 D 234,220 D 275,470 A 406,520 41 C 209,000 D 235,600 D 277,200 (A) 410,500 42 C 210,100 D 236,980 D 278,930 S 414,480 43 C 211,200 (D) 238,360 D 280,660 S 418,460 44 C 212,300 C 239,740 D 282,390 S 422,440 45 C 213,400 C 241,120 D 284,120 S 426,420 46 C 214,500 C 242,500 (D) 285,850 S 430,400 47 C 215,600 C 243,880 C 287,580 S 434,380 48 C 216,700 C 245,260 C 289,310 S 438,360 49 C 217,800 C 246,640 C 291,040 S 442,340 50 C 218,900 C 248,020 C 292,770 S 446,320

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51 (C) 220,000 C 249,400 C 294,500 (S) 450,300 52 B 221,100 C 250,780 C 296,230 53 B 222,200 C 252,160 C 297,960 54 B 223,300 (C) 253,540 C 299,690 55 B 224,400 B 254,920 C 301,420 56 B 225,500 B 256,300 (C) 303,150 57 B 226,600 B 257,680 B 304,880 58 B 227,700 B 259,060 B 306,610 59 B 228,800 B 260,440 B 308,340 60 B 229,900 B 261,820 B 310,070 61 B 231,000 B 263,200 B 311,800 62 B 232,100 B 264,580 B 313,530 63 (B) 233,200 B 265,960 B 315,260 64 A 234,300 B 267,340 B 316,990 65 A 235,400 (B) 268,720 B 318,720 66 A 236,500 A 270,100 (B) 320,450 67 A 237,600 A 271,480 A 322,180 68 A 238,700 A 272,860 A 323,910 69 A 239,800 A 274,240 A 325,640 70 A 240,900 A 275,620 A 327,370 71 A 242,000 A 277,000 A 329,100 72 A 243,100 A 278,380 A 330,830 73 A 244,200 A 279,760 A 332,560 74 A 245,300 A 281,140 A 334,290 75 (A) 246,400 A 282,520 A 336,020 76 S 247,500 (A) 283,900 (A) 337,750 77 S 248,600 S 285,280 S 339,480 78 S 249,700 S 286,660 S 341,210 79 S 250,800 S 288,040 S 342,940 80 S 251,900 S 289,420 S 344,670 81 S 253,000 S 290,800 S 346,400 82 S 254,100 S 292,180 S 348,130 83 S 255,200 S 293,560 S 349,860 84 S 256,300 S 294,940 S 351,590 85 S 257,400 S 296,320 S 353,320 86 S 258,500 S 297,700 (S) 355,050 87 (S) 259,600 (S) 299,080 (注)表頭の( )内の数値は号差金額、各ゾーンの( )はそれぞれの上限額の位置を示す。  これがゾーン型等級別賃金表の構造です が、各等級の基本給を等間隔で設定した賃 金表にゾーン区分が加わったシンプルなつ くりとなっています。 ⑵賃金表の各金額の意味  では次に、賃金表の各金額の意味を考え ていきましょう。  38 ページ図表 4 は、各等級の号差金額、 初号値、各ゾーンの上限額を一覧にしたも のです。  基本給の範囲は、Ⅰ等級が初号値 16 万 5000 円〜最高額(S)25 万 9600 円、Ⅱ等 級 18 万 400 円〜最高額(S)29 万 9080 円 …というように、等級とともに高くなりま す。この基本給範囲の差が地位・役割によ る違いを反映しています。  同じ等級の各ゾーンの上限額(アルファ ベットを括弧でくくったところ)は、Ⅰ等 級では、(D)20 万 6800 円、(C)22 万円…

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図表4:ゾーン型等級別賃金表(図表3)の主な金額… (単位:円) Ⅰ等級 Ⅱ等級 Ⅲ等級 Ⅳ等級 Ⅴ等級 号差金額 1,100 1,380 1,730 3,980 7,370 初号値 165,000 180,400 208,000 251,300 323,000 (E) 193,600 223,180 268,550 − − (D) 206,800 238,360 285,850 291,100 323,000 (C) 220,000 253,540 303,150 330,900 381,960 (B) 233,200 268,720 320,450 370,700 440,920 (A) 246,400 283,900 337,750 410,500 499,880 (S) 259,600 299,080 355,050 450,300 558,840 となっており、評価が高いほど基本給の上 限が高いことを示しています。これが、習 熟・貢献による賃金の伸びしろの違いを表 しています。ここで上限額の意味を整理す ると次のようになります。 ①(D)…その等級の社員に、将来の最低 額として保障している最低額  最も低い評価が D ですので、退職しない 限り、誰でもここまで昇給できるので将来 的な最低額なのです。特に、Ⅰ等級の(D) は、正社員として採用した人には、先々、少 なくともここまでは上げると約束した金額 でもあります。 ②(B)…その等級の標準的な社員の最高 額  標準の B 評価を取り続けると(B)まで 昇給できるわけですが、通常、B 評価が最 も多くなりますので、社員にとっては現実 的な将来の到達点となります。また、会社 にとっては等級ごとの平均基本給の上限と みなすことができます。社員のヤル気と会 社の人件費負担の両方の観点から重要な意 味を持ちますので、実際に賃金表を設計す るときには十分な吟味が欠かせない金額で す。 ③(A)…その等級の優秀者に報いる最高 額  優秀な A 評価を取り続けたときに到達 できる金額です。優秀な人にはさらに大き な役割責任を任せたいところですが、組織 にそのポストがなければ昇格させることが できません。そのような場合でも、優秀人 材に応分の処遇をできるようにするための 金額です。最高の S 評価の場合に到達でき る(S)とあわせて、優秀人材に励みを持 ってもらううえで重要な役割を果たす金額 です。 2賃金の絶対額管理と昇給額管理  このように、ゾーン型等級別賃金表には、 等級に応じた基本給の範囲と評価に応じた 上限額があります。このことは、「地位・役 割と習熟・貢献に応じた基本給の絶対額」が 定まっていることを示しています。具体的 には、Ⅰ等級(一般職)の役割で B 評価を 受けるような標準的な貢献をする社員には Ⅰ等級(B)の 23 万 3200 円、優秀な A 評 価ならⅠ等級(A)の 24 万 6400 円、Ⅲ等 級(主任)の役割で B 評価ならⅢ等級(B) の 32 万 450 円というように、役割と貢献の 度合いに対応して最終到達額が決まってい

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図表5:ゾーン型等級別賃金表における基本給改定の考え方 Ⅰ等級(抜粋) X さん Y さん ゾーン 基本給額(円) A 評価 B 評価 C 評価 C 評価 Y さんの現基本給→ (D) 206,800 昇給 C ・・・ ↓ C ・・・ C ・・・ (C) 220,000 B ・・・ B ・・・ B ・・・ ↑ X さんの現基本給→ (B) 233,200 昇給 据置 降給 A ・・・ ↓ A ・・・ A ・・・ (A) 246,400 るのです。 ⑴基本給の運用の考え方  ゾーン型等級別賃金表を使って基本給を 運用するときには、これらの絶対額を意識 して行います。  例えば、今、Ⅰ等級の X さんの基本給が ちょうどⅠ等級(B)の 23 万 3200 円だとし ます。この X さんが A 評価をとったとき、 基本給はどうすればよいでしょうか? 今 の金額は A 評価の上限の(A)24 万 6400 円に達していませんので昇給しなければな りません。  次に、X さんが B 評価だったらどうでし ょう? 現在の基本給は B 評価という貢献 に見合った上限額と一致しているので昇給 する必要はなく、据え置きでよいことにな ります。  では、C 評価ならどうでしょう? C 評 価の上限額は(C)の 22 万円ですので、現 在の金額は貢献度 C としては高すぎるとい う解釈になり、本人には厳しいですが、基 本給を下げる必要があります。  さらに、同じⅠ等級に基本給が(D)の 20 万 6800 円の Y さんがいて、評価が C だ ったらどうなるでしょう?  Y さんの現基本給は C 評価の上限より低 いので昇給しなければなりません。この考 え方を図にすると図表 5 のようになります。  このように、現在いくら支払っているか ということと、その評価ならいくらまで払 えるか、という基本給の絶対額に着目して 昇給・据え置き・降給を使い分けることに なるのです。これを専門用語で賃金の「絶 対額管理」と呼びます。  いかがでしょうか。「絶対額管理」は伝統 的な賃金管理とは違いますね。従来は、「S 評価なら 6000 円…、C なら 3000 円、D は 2000 円」というように、評価ごとに一律の 昇給額を決めるやり方が主流でした。この ような方法を賃金の「昇給額管理」と呼び ます。昇給額管理においては、図表 5 の X さんと Y さんのように、同じ C 評価なのに 昇給と降給という異なる扱いが生じること

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はありません。 ⑵社員に対する説明  昇給額管理と絶対額管理では、社員に対 する説明も異なります。  昇給額管理では、「S なら 6000 円、A な ら 5000 円…というかたちで、評価が高いほ ど多く昇給しますよ」という単純な説明に なり、社員は、より多く昇給できるように、 ともかくいい評価を取ろうとシンプルに考 えます。  一方、絶対額管理では、現在の基本給が 評価の上限と比べてどの高さにあるかによ って次の 3 パターンに分かれます。 ・現基本給<評価の上限額のとき  「今の基本給よりも高い貢献をして くれたので昇給します」 ・現基本給=評価の上限額のとき  「今の基本給に見合った貢献でした ので据え置きます」 ・現基本給>評価の上限額のとき  「今の基本給としては貢献度が足り ないので降給となります」  社員は、いい評価を取ろうと仕事に励む と同時に、「自分は給与にふさわしい仕事を しているだろうか?」と自分を客観的に見 つめながら頑張ることになります。 ⑶絶対額管理の意義とこれからの賃金管理  伝統的な昇給額管理と新しい絶対額管理 があるわけですが、皆さんにはどちらが腑 に落ちますか? 経営者ならどちらの支払 い方を選択しますか?  一見わかりやすいのは昇給額管理ですね。 評価結果だけを見ればよいので運用も説明 もしやすいでしょう。ただ、その一方で次 のような素朴な疑問も生まれます。  (ア)は当然の疑問ですから適当なところ で頭打ちにしたいですね。(イ)についても、 優秀人材を動機づけるために昇給を続けた い反面、もうこれくらいで十分ではないか、 という思いもあるはずです。  このような疑問に対し、絶対額管理は「同 じ役割でも貢献によって賃金の高さを変え ましょう」という明快な解答を与えている のです。  「同じ役割でも貢献に応じて賃金の高さ を変える」ことは、昇給に対する疑問を解 消するだけでなく、人件費の有効活用とい う面でとても重要です。従来の昇給額管理 では、人によっては必要以上に高い賃金に なってしまう可能性があります。そのよう な支払い方をすると、優秀人材や底上げが 必要な若手の昇給原資が足りなくなってし まいます。  また、賃金が低すぎると社会的な問題に なっている非正規社員の待遇を改善しよう にも、その原資をねん出することができま せん。さらに、政府が推進しようとしてい る「同一労働同一賃金」という流れから、こ れからは貢献度とバランスのとれた賃金決 定が求められるようになることは容易に想 定されます。  筆者は、ゾーン型等級別賃金表は、地位・ 役割だけではなく習熟・貢献度に応じた上 限額を設けたことによって、これからの多 様な働き方の時代において、多様な人材に (ア)「D 評価の人にどこまでも昇給さ せるのはおかしくないだろうか?」 (イ)「A 評価だからといって十分に高 い賃金の人まで昇給する必要がある のだろうか?」

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適切に報いることを可能にする手法だと考 えています。 3ゾーン型等級別賃金表の使い方  ここまで重複型範囲給にゾーン区分を設 ける意義を解説しました。次に、毎年の賃 金改定をどのように行うと良いかを考えて いきましょう。 ⑴洗い替え方式  最も単純なのは評価に連動した「洗い替 え方式」です。すなわち、C 評価をとった ら一気に(C)まで昇給し、翌年 A 評価だ ったら(A)まで上げ、翌々年 B 評価なら (B)に下げ、…というように、評価に対応 する上限額にすぐに合わせるという方法で す。もっとも、洗い替え方式なら図表 4 の ように初号値と各ゾーンの上限額さえあれ ば十分で、そのほかの号数は不要になりま す。  とても簡単ですが、これだと基本給が数 万円単位で大きく変動しますので中期決済 の報酬としてはふさわしくありません。昇 給時はともかく、降給のときは社員の生活 給が急に減ってしまい、会社への帰属意識 に悪影響を及ぼします。 ⑵段階号俸制  基本給を中期的に緩やかに改定するには、 図表 3 のたくさんの号数を活用して、昇給 額を細かく設定する必要があります。改定 号数の決め方として第一に浮かぶのは、次 のように評価に応じて号数を変える方法で しょう。 S は+ 6 号 A は+ 5 号 B は+ 4 号 C は+ 3 号 D は+ 2 号  同じ等級での号差金額は同じですので、 評価が高いほど昇給号数も昇給額も多くな ります。このように、評価ごとに一律の昇 給号数を決めるやり方を「段階号俸制」と いいます。  では、図表 3 に段階号俸制を適用すると どうなるでしょうか? 図表 6 は、高校新 卒 18 歳で入社したⅠ等級社員が、毎年同じ 評価を取り続けた場合、どのように昇給し ていくかをシミュレーションしたものです。  図表 6- ①は、D 評価から S 評価に対応す る昇給号数・昇給額が、各評価の上限に達 するまでは一定であることを示しています。  図表 6- ②は、18 歳以降、毎年の基本給 がいくらになるかの一覧表です。表の中の 太字はそれぞれの評価の上限額に達した時 点を表しています。例えば、D 評価では 37 歳で(D)の 20 万 6800 円、C 評価なら 35 歳で(C)の 22 万円に到達し、翌年以降は 据え置きとなります。  この年々の推移をグラフにすると、図表 6- ③のように評価ごとのモデル昇給カーブ ができあがります。  皆さんはこのカーブを見てどのように感 じますか?  まず、評価が高いほどカーブの勾配が急 なので、昇給スピードが速いことがわかり ます。次に、評価が良いほど最終的な到達 金額が高いことも一目瞭然です。ここまで はいいのですが、何か釈然としない感じが しますね。恐らく次の 2 つの疑問を抱かれ ると思います。 (ア)評価が高いほど早く昇給停止に なってしまう (イ)評価が高いほど昇給停止になっ たときのインパクトが大きい

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図表6:段階号俸制による基本給の運用 ①評価ごとの昇給額設定(段階号俸制) 評 価 D C B A S E ゾーン +2,200 円+ 2号 +3,300 円+ 3号 +4,400 円+ 4号 +5,500 円+ 5号 +6,600 円+ 6号 D ゾーン ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ C ゾーン ↓ ↓ ↓ ↓ B ゾーン ↓ ↓ ↓ A ゾーン ↓ ↓ S ゾーン ↓ ②同じ評価を取り続けた場合の基本給の推移 (単位:円) 年齢 D C B A S 18 歳 165,000 165,000 165,000 165,000 165,000 19 歳 167,200 168,300 169,400 170,500 171,600 20 歳 169,400 171,600 173,800 176,000 178,200 21 歳 171,600 174,900 178,200 181,500 184,800 22 歳 173,800 178,200 182,600 187,000 191,400 23 歳 176,000 181,500 187,000 192,500 198,000 24 歳 178,200 184,800 191,400 198,000 204,600 25 歳 180,400 188,100 195,800 203,500 211,200 26 歳 182,600 191,400 200,200 209,000 217,800 27 歳 184,800 194,700 204,600 214,500 224,400 28 歳 187,000 198,000 209,000 220,000 231,000 29 歳 189,200 201,300 213,400 225,500 237,600 30 歳 191,400 204,600 217,800 231,000 244,200 31 歳 193,600 207,900 222,200 236,500 250,800 32 歳 195,800 211,200 226,600 242,000 257,400 33 歳 198,000 214,500 231,000 246,400 259,600 34 歳 200,200 217,800 233,200 246,400 259,600 35 歳 202,400 220,000 233,200 246,400 259,600 36 歳 204,600 220,000 233,200 246,400 259,600 37 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 38 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 39 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 40 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 41 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 42 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 43 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 44 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 45 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 46 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 47 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 48 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 49 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 50 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 51 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 52 歳 206,800 220,000 233,200 246,400 259,600 ③基本給の昇給グラフ 270,000 250,000 230,000 210,000 190,000 170,000 150,000 15歳 20歳 25歳 30歳 35歳 年齢 40歳 45歳 50歳 S A B C D 基本給︵円︶

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たなか・ひろし

 1966 年生まれ。広島大学理学部卒業後、東ソー㈱にて研究開発、技術 営業に従事。英語教育業を経て 2006 年、㈱プライムコンサルタントに 入社。幅広い業種で会社と社員の良い絆づくりを目指したコンサルティン グを展開する。中小企業診断士。日本人材マネジメント協会会員。ゴール ドラット・スクール認定トレーナー(TOC Management Tools Basic)。 TOC-ICO 認定 Jonah。  (ア)は、D 評価を続けていれば 37 歳ま で昇給しますが、S 評価の場合はそれより 4 年も早い 33 歳で頭打ちになりますので、優 秀人材のモチベーションが維持できるだろ うかという心配です。  (イ)については、D 評価の人は 37 歳ま で 2200 円ずつ昇給していたのが翌年から ゼロになるのに対し、S 評価の人は 32 歳ま では毎年 6600 円昇給していたのが、33 歳 のときは 2200 円になり、34 歳からはゼロ となって急ブレーキがかかったようなかた ちになります。Ⅰ等級では数千円ですみま すが、Ⅲ等級以上では 1 万円以上の急ブレ ーキとなりますので、評価が高いほど昇給 停止の衝撃が大きくなってしまい、やはり 優秀人材への心理的な影響が懸念されます。  これは悩ましいジレンマですね。貢献が 高い人には昇給額を多くしたいわけですが、 それを行った結果、上限額に達する年齢が 若くなり、なおかつ昇給停止のショックが 大きくなってしまうのです。  どうやら、評価に応じて一律に昇給号数 を決める段階号俸制だけでは上手くいきそ うにありません。では、どうすればよいの でしょうか?  次回は、このジレンマを解消し、ゾーン 型等級別賃金表の特長を引き出す賃金改定 の手法を考えていきたいと思います。 ■ INDEX ■ [1]「多様な働き方」の実態①   (2015 年 7 月 25 日号) [2]「多様な働き方」の実態②   (2015 年 8 月 25 日号) [3]雇用区分構成のための考え方   (2015 年 9 月 25 日号) [4]「等級制度」における等級基準の考 え方①   (2015 年 10 月 25 日号) [5]「等級制度」における等級基準の考 え方②   (2015 年 11 月 25 日号) [6]正社員の報酬の考え方①   (2015 年 12 月 25 日号) [7]正社員の報酬の考え方②   (2016 年 1 月 25 日号) [8]月例賃金の組み立て方①   (2016 年 2 月 25 日号) [9]月例賃金の組み立て方②   (2016 年 3 月 25 日号) [10]月例賃金の組み立て方③   (2016 年 4 月 25 日号) [11]基本給の組み立て方①   (2016 年 5 月 25 日号) [12]基本給の組み立て方②   (2016 年 6 月 25 日号)

参照

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(ロ)

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[r]

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