ここからの Brexit タイムラインと要注意日
英国で最も政治に注目が集まる党大会シーズンが終了しました。ここからは時間があまり 残っていない Brexit 交渉の最終合意に向け、アクセルを踏む時期となります。EU 側もイギ リスの党大会シーズン終了をじっと待っていたため、ここから一気に動きが加速しそうです。 そこで今週のコラムでは、今週と来週、そしてそれ以降の Brexit 重要日をご紹介します。 場合によっては、予期せぬ要人発言などが出て、マーケットが動くことになるかもしれませ ん。ポンド取引をなさっていらっしゃる方は、是非参考にしてください。2019 年 3 月 29 日までのタイムライン
まず最初に、2 年間の交渉が終了する 2019 年 3 月 29 日までのイベントをご紹介します。 交渉期間の延長は可能ですが、全ての EU 加盟国の合意が必要です。現時点では、ハン ガリーが反対しており、全会一致のメドは立っておりません。 出典: 欧州委員会ホームページ https://www.consilium.europa.eu/en/meetings/calendar/?dateFrom=2018%2F10%2F04&dateTo=2019%2F10% 2F04&filters=2031&filters=2034&filters=2032今週と来週の予定
それでは、直近の予定について調べてみましょう。10 月 3 日(水)
保守党年次党大会終了10 月 4 日(木)
保守党年次党大会終了翌日に、早速バラッカー・アイルランド首相が、トゥスク EU 大統領 とバルニエ主席交渉官と会談しました。10 月 5 日(金)
北アイルランドのナショナリスト政党:シンフェイン党が、バルニエ主席交渉官と会談予定10 月 5 日(金) 或いは 10 月 8 日(月)
イギリスのラーブ Brexit 担当相がブリュッセル入り(どちらの日になるかは不明) EU が、アイルランド国境問題についての「バックストップ案」を発表予定10 月 10 日(水)
この日は非常に重要です。 ユンケル欧州委員会委員長は、Brexit に向けた EU からの合意内容詳細を、この日に発 表すると語っています。しかし、これは正式決定ではなく、アイルランド国境問題での解決 が見られない場合、ずれ込む可能性があるそうです。 見方を変えれば、この日に EU が詳細を発表しなければ、Brexit 交渉の進捗具合が思っ たほど芳しくないということになります。 既にもれ聞こえてきた内容としては、 ・EU からの詳細は、4~5 ページくらい ・英国と EU との貿易スタイルは、カナダ式(包括的経済協定 CETA)に似ている内容 となっています。10 月 17 日(水)
10 月 18 日の EU サミット本番前夜のこの日、メイ首相を除く EU27 ヶ国がトゥスク EU 大統 領の招待を受けワーキングディナーを開催し、Brexit について協議される模様。10 月 18 日(木)
本来であれば 10 月 18/19 日の 2 日間となるはずであった EU サミット。しかし、10 月 19 日には、EU/アジア・リーダー会合の開催があるため、18 日の 1 日だけに短縮。 この日はイギリスのメイ首相も出席し、Brexit について協議し、うまくいけば最終合意となる かもしれません。ただし、メイ首相はこの日までにアイルランド国境問題が解決に持ち込ま れることには、やや懐疑的。 話し合う内容は、Brexit だけでなく、難民問題・外交政策なども含まれます。10 月 19 日(金)
ヨーロッパからは、EU28 ヶ国とノルウェー、そしてスイスの 30 ヶ国。アジアからは 21 ヶ国、 総勢 51 ヶ国が集まる国際会合です。 ここでも、Brexit について少々話し合われる模様。 10 月 17 日から 19 日にかけてのサミット/会合で Brexit 最終合意がなされるか?その可 能性は低いというのが、英国での一般的な見解です。その理由は、9 月中旬からの党大会 シーズンで英国議会は閉会していたため、政治的決断が中断したことが大きいでしょう。特 にメイ首相率いる保守党の党大会終了後、わずか 2 週間でのサミットですので、英国での 期待は高くありません。11 月 17/18 日(土・日)?
確定ではありませんが、10 月の EU サミットでアイルランド国境問題が解決されなければ、 臨時サミットが開催される予定となっており、一応この週末での実施という噂が出ておりま す。ただし、欧州委員会の公式予定には、現時点では入っておりません。 https://www.consilium.europa.eu/en/meetings/calendar/?dateFrom=2018%2F10%2F04&dateTo=2019%2F10% 2F04&filters=2031 そもそも 11 月に臨時サミット開催は、ドイツのメルケル首相の提案です。10 月のサミットは 1 日に短縮され、アジアとの会合も続くため、ゆっくりイギリスに「さようなら」を告げられない ことを理由に、臨時サミットを提案しました。これに対し、マクロン仏大統領は、この開催に は消極的なようです。12 月 13/14 日(木・金)
最悪のケースとして、10 月・11 月両サミットでも合意できなかった場合、12 月サミットで合 意しない限り、時間的に間に合わない計算となり、「合意なき離脱」リスクが高まります。2019 年 1 月 21 日(月)
この日は英国議会にとって、非常に重要な日です。 万が一、この日までに EU との合意が出来ていなかった場合に限り、英国政府は 5 日間 以内に、英国の身の振り方を発表する義務があります。これは、2018 年 EU 法で定められ ていることで、絶対に守らなければなりません。場合によっては、ここでも「合意なき離脱」 のリスクが出てくることになるでしょう。 逆に、この日より前にメイ首相が「合意なき離脱」を決定した場合は、状況が変わってきま す。これはのちほど説明します。2019 年 3 月 29 日(金)まで
この日までに、Brexit 最終条件内容について、EU 加盟各国と欧州議会での批准/承認作 業が終了していなければなりません。 合意内容の承認には、Supermajority(圧倒的多数決)が必要となり、EU加盟国のうち、 20 ヶ国以上(人口の 65%以上)の賛成に加え、欧州議会でも本議会採決での決定となり ます。 http://www.europarl.europa.eu/about-parliament/en/organisation-and-rules/how-plenary-works2019 年 3 月 29 日(金)
Brexit当日。2 年間の交渉を終え、この日の英国時間 23 時(欧州時間 24 時)に英国は正 式にEUから離脱します。2019 年 3 月 30 日(土)
この日から、21 ヶ月に及ぶ移行期間がスタート。ここでは主に、英国とEUとの貿易交渉が 進められる予定となっています。 現在の離脱条件では、英国は移行期間中に限り一時的に、関税同盟に残ることになって います。しかし、これは今後の合意内容により、変更があるかもしれません。2020 年 12 月 31 日
この日で移行期間は終了。アイルランド国境問題も片付き、この翌日から英国は関税同盟 から出る予定。今年 12 月末までにEUとの合意がなされなかった場合
先ほど、2019 年 1 月 21 日が非常に大事だとお伝えしました。その日に起こることについ て、2 通りのシナリオが立てられます。 ① この日までにEUと英国との間で最終合意がなされなかった場合 英国政府は 5 日間以内に、英国の身の振り方を発表する義務があります。 ② この日までに、「合意なき離脱」にするとメイ首相が発表した場合 英国政府は 14 日間以内に、どういう方法をとって離脱するかを決める義務があります。 ①②それぞれの、それ以降の動きを図にまとめてみました。