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バイオコークスの燃焼性促進に関する基礎研究

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Academic year: 2021

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1.緒 言 1.1 背景 近年、化石燃料の使用が CO2等の温室効果ガス排出によ る地球温暖化問題や窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SOX) 等の排出による酸性雨問題など様々な環境問題を引き起こ している。また産業革命以降の大量消費によって枯渇する 恐れも生じている。これらの事柄が要因で環境にやさしく、 枯渇しない新たなエネルギー資源の必要性が生じ、現在で は太陽光、風力、水力、地熱などの環境負荷が少なく枯渇 しない再生可能エネルギーの利用が注目されるようになっ た。日本は森林地帯が多く、カーボンニュートラルの観点 からバイオマスが化石燃料の代替燃料として注目されてい る。林地に放置される間伐材や林地残材、製材所で発生す る製材屑などの廃棄物を単に焼却処理するだけではなく、 焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用することで 化石燃料の使用量を減少させるとともに地球温暖化を抑え る研究が進められている。 1.2 研究目的 固体燃料の着火現象は、加熱によって燃料の熱分解が起 こり揮発分である可燃性ガスを放出し、可燃性ガスが可燃 濃度、着火温度に達することで生じる1)。本研究グループ では様々なバイオマス由来の廃棄物を用いて、石炭コーク スの代替燃料となるバイオコークス(以下、BIC と表記) の製造を試みてきた。しかし、BIC は高温高圧で製造され るため高密度となり、強度は増加するが着火性の悪化が問 題である。そこで本研究では BIC に燃料としての汎用性を 持たせるために日本において代表的な林業廃棄物であるス ギに、固形成分よりもガス化の速いバイオマス由来の油脂 を添加することで、燃料のガス化を促進し着火性を向上さ せることを目的とする。添加する成分としてバイオディー ゼル燃料の製造過程で発生し、不純物を含むため廃棄され るグリセリン(以下、廃グリセリンと表記)を用いた。 2.試 料 2.1 スギ スギは日本における代表的な針葉樹種であり本州や四 国、九州の太平洋側に多く分布している。用途が広く、各 地で植林が進められたため、日本の約 10 万 km2(1000 万 ha)の人工林のうち、約 4.5 万 km2 (450 万 ha)はスギであ る2)。スギの利用において間伐材や製材屑など大量の林業 廃棄物が生じ 、 その処理が問題となっている。林業廃棄物 であるスギをサーマルリサイクルの観点から粉砕後、固形 化、ペレット化して民生用のボイラやストーブなどの燃料 として実用化されているが、着火性の悪さが用途の拡大を 妨げている。

バイオコークスの燃焼性促進に関する基礎研究

Fundamental Study on Combustibility Promotion of Bio-coke

後 藤 亮 介

・難 波 邦 彦

**

・井 田 民 男

***

・水 野   諭

***

Ryosuke GOTO, Kunihiko NAMBA, Tamio IDA and Satoru MIZUNO (Received January 14, 2012)

The development of new energy sources have been advancing due to global warming and exhaustion of fossil fuels. The biomass fuel is one of these energy sources and is expected from the viewpoint of carbon neutral agricultural and biomass waste recycling and thermal recovery. Bio-coke is an alternate fuel of coal coke and is made by heating organic waste while being compressed at high pressures. The ignitability of Bio-coke worsens by high density. This study was an attempt to produce Bio-coke added with waste glycerin that is generated from the manufacturing process of bio-diesel fuel. The gasification characteristic of the fuels was examined by thermogravimetric analysis, while the stress-strain characteristic was examined by a high-temperature compression testing machine. The ignition and combustion characteristics of the fuels were observed in a fall-type electric furnace. Results show that Bio-coke can be made with the addition of waste glycerin. The gasification of the resulting fuel was promoted with the increase in amount of added waste glycerin. Moreover, the combustibility of the fuel was also promoted and the ignition delay time and burnout time became shorter.

Key Words: Bio-coke, Biomass, ignition, combustion, waste glycerin

*,**大阪府立大学工業高等専門学校 総合工学システム学科 機械システムコース(〒 572-8572 大阪府寝屋川市幸町 26-12)     Osaka Prefecture University Collage of Technology (26-12 Saiwai-cho, Neyagawa, Osaka, 572-8572 Japan)

***近畿大学 理工学部 機械工学科(〒 577-8502 大阪府東大阪市小若江 3-4-1)

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2.2 廃グリセリン バイオディーゼル燃料は菜種油、ひまわり油、大豆油な どの生物由来の油やてんぷら油などの各種廃食用油から作 られるディーゼルエンジン用の燃料でありバイオマスエネ ルギーの一つである。製造過程では油(トリグリセリド) とメタノール(化学式:CH3OH)が反応し、エステル交換 反応が起こることでバイオディーゼル燃料と廃グリセリン が生成する。生成した廃グリセリンの写真を Fig.1、エス テル交換反応を Fig.2 に示す。廃グリセリン中に含まれる 水分は 3 % 程度と考えられる。 2.3 原料 スギには様々な種類があり種類によって幹と樹皮の質量 割合が若干異なるが、今回はその質量割合を平均的な値で ある 9:1 に混合した試料を用いる。スギと廃グリセリンの 高位発熱量と元素分析の測定結果を Table 1 示す。スギの 含水率をドライベースで 21 wt% に調節し、廃グリセリン を 5 wt% 刻みで 0 ∼ 30 wt% 添加した試料の固形燃料化を 試みる。廃グリセリンについては燃料の生成時に触媒とし て、水酸化カリウムなどを利用するため、燃料として利用 した後の燃焼灰を農業用肥料等に使用する場合は土壌に対 する影響などを充分に検討する必要がある。 3.実験方法 3.1 熱分析測定 測定に用いた本校地域連携テクノセンター材料評価室設 置の高温型示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナ ノテクノロジー㈱ TG/DTA6300)の概略図を Fig.3、分析 条件を Table 2 に示す。ビーム先端に取り付けられたサン プルホルダーに試料、リファレンスホルダーに基準物質を のせ、電気炉内において設定された速度で加熱する。温度 上昇によって試料の重量変化が生じると試料側のビームが 傾き、その変化を光学的にとらえ、常にビームが水平にな るように駆動コイルを作動させる。コイルに流れる電流は 試料の重量変化量に比例するので、この電流量を検出して TG 信号とする3) 。測定では BIC 作製温度の決定および作製 した各添加割合での BIC の熱分解特性の比較を行うことを 目的とする。 3.2 燃料化実験 BIC の作製に用いたバッチ式ホットプレス装置の概観図 を Fig.4、製造条件を Table 3 に示す。図のシリンダ内にス ペーサと放熱を防止するためにシリコンゴムを挿入し、成

Table 1 Thermogravimetric analysis conditions

Sample Cedar Waste glycerin Higher Heating Value [kJ/kg] 20500 26800

Carbon (Dry base) [wt%] 55 41 Hydrogen (Dry base) [wt%] 6.3 10.4

Nitrogen (Dry base) [wt%] 0.1 5.4

Fig.1 Waste glycerin

Fig.2 Transesterification

Furnace

Sample holder Balance beam

Gas outlet Supporting unit Detecting unit Balance circuit TG/DTA Module Gas inlet Temp.Data DTA Data

Heater power TG Data Reference holder

Thermocouple

Fig.3 Thermogravimetric analyzer (TG/DTA6300)

Table 2 Thermogravimetric analysis conditions Sample Cedar, Waste glycerin, BIC Sample weight 10mg

Atmosphere Air/N2

Gas flow rate 200cm3/min

Temperature range 303 ∼ 1073K Heating rate 10K/min

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形後の燃料のアスペクト比(直径:長さ)がほぼ 1:1 にな るように試料を一定量投入する。装置上部に取り付けられ た油圧ジャッキによってピストンを下方に一定圧力になる ように荷重をかけて試料の圧縮を行う。圧縮と同時にシリ ンダ周囲を円筒型セラミック電気管状炉で覆い、シリンダ に設けられた測定穴よりシース型熱電対を用いて燃料温度 を測定し、加熱量を温度コントローラによって制御しなが ら一定速度で加熱する。スギおよび廃グリセリンの熱分析 測定の結果より加熱温度を決定し、その温度で一定時間保 持した後、加熱を中止し 313 K 以下になるまで冷却して取 り出す。 3.3 圧縮強度実験 実験に用いた高温圧縮試験装置(㈱島津製作所 AG-300 kNX)の概略図を Fig.5 に示す。固定された試料はクロスヘッ ドが降下することにより圧縮荷重を受ける。クロスヘッド の移動量により試料のひずみの計測を行い、装置上部に取 り付けられたロードセルによって試料の抵抗力が電気信号 に変換され、それらをコンピュータで逐次計測する。製鉄 用の石炭コークスの代替燃料等に利用するための強度を把 握するために、常温での圧縮試験を行い、試料の応力−ひ ずみ特性および最大圧縮強度を調べることを目的とする。 試験方法は各試料につき 3 回の圧縮試験を行い、その平均 値を最大圧縮強度とする。初期条件としてストロークを 0 mm にセットし、クロスヘッド速度を 0.5 mm/min として試 験を行う。 3.4 燃焼実験 実験で用いた落下式電気炉および装置全体図を Fig.6 に 示す。電気炉内は± 5 K の範囲で温度設定が可能であり、 炉底面に試料挿入口が設けられ炉側面には石英ガラスによ る観察窓があり、試料の燃焼の様子を観察することが可 能である。電気炉が試料支持台に固定された試料の上方よ り垂直に落下することで、試料は瞬間的に高温雰囲気に挿 入される。着火および燃焼の様子は炉側面の観察窓を通し て 1/1000 sec のタイムカウンタと共にビデオカメラで撮影、 録画される。ビデオ画像から試料の炉内挿入から火炎が発 生するまでの時間(着火遅れ時間)、火炎の消滅から赤熱状 態での燃焼が終了するまでの時間(チャー燃焼時間)、炉 内挿入から灰になるまでの時間(燃え切り時間)を算出し、 比較を行う。また、電子天秤とコンピュータを接続し、炉 内での燃焼による重量変化を記録して比較も行う。

Table 3 Manufacturing conditions of Bio-coke Cylinder bore 12mm

Heating time 225sec Heating temperature 150℃ (423K) Starting sample water content 21wt% (Dry base)

Sample Weight 1.56g Pressure 21.7MPa Waste glycerin content 0 ∼ 30%

Fig.4 Batch-type hot press apparatus

ԙ

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6%

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Fig.5 High-temperature type compression tester

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4.実験結果および考察 4.1 熱分解特性 BIC 固形化の原理概念図を Fig.7 に示す。植物細胞壁を 構成する主な高分子成分であるセルロース、ヘミセルロー ス、リグニンのうち比較的重合度の小さいヘミセルロース の軟化およびリグニンの脱水縮合反応によるネットワーク 化が起こっているものと考えられ、この温度域で圧縮する ことにより固形燃料化が可能になる。 空気雰囲気中のスギ粉末と廃グリセリンの TG 曲線を Fig.8、窒素雰囲気中のスギ BIC と廃グリセリンの TG 曲線 を Fig.9 に示す。Fig.8 において、スギ粉末の TG 曲線にお いて約 380 ∼ 500 K の温度域で重量が変化しない領域が確 認できる。この温度域は BIC 作製において、加熱温度を決 定するために重要である。また、廃グリセリンはこの温度 域でも多少熱分解によるガス化が進行するので、BIC 作製 時になるべくガス化を生じさせないように加熱温度は比較 的低温域である 423 K(150 ℃)とした。Fig.9 において約 700 ∼ 750 K の範囲で廃グリセリンの TG 曲線にノイズの ような急激な重量減少が発生しているが、これは窒素雰囲 気であるため燃焼が生じず、温度上昇によって分解温度が 高い不純物によって表面部分に膜が形成され、高温領域で 揮発したガスが膜を突き破って一気に噴出する反動でサン プルホルダーのビームが下方へ押したためであると考えら れる。 窒素雰囲気での廃グリセリンの各添加割合での BIC の TG 曲線を Fig.10 に示す。廃グリセリン添加割合が増加す るにつれて熱分解開始温度が低温側に遷移することが確認 できる。これは廃グリセリンのガス化によるもので、添加 割合が 10 wt% までは 500 K 以下でのガス化はあまり生じ ていないのに対し、15 wt% 以上になると熱分解特性は大 幅に変化し約 450 K からガス化が開始する。15 wt% 以上の BIC を Fig.9 と照らし合わせると約 450 ∼ 550 K までは廃 グリセリンの熱分解曲線による影響が見られ、それに引き 続きスギ BIC の固形成分の熱分解が進行していることが確 認できる。そして、各添加割合において約 20 ∼ 22 % の固 定炭素および灰分が残留する。 400 600 800 1000 0 20 40 60 80 100 Y ie ld of w e ig ht % Temperature K Cedar Waste glycerin 400 600 800 1000 0 20 40 60 80 100 Y ie ld of w e ig h t % Temperature K Cedar Waste glycerin 400 600 800 1000 0 20 40 60 80 100 Temperature K Yi e ld o f we ig h t % Cedar 5% 10% 15% 20% 25% 30%

Fig.7 Conceptual principle of solidification

Fig.8 Cedar powder and waste glycerin TG curve (in Air)

Fig.9 Cedar BIC and waste glycerin TG curve (in N2)

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4.2 固形燃料化 作製した BIC の全容および上面、下面の状態を Fig.11 に 示す。左列が全容、中列が上面、右列が下面の状態を表し ている。各添加割合において色の違いはほとんど見られな いが、下面においては廃グリセリン添加割合が増加するに つれて表面に付着する廃グリセリンの量も増加することが 確認できる、BIC の重量収率を Fig.12、原料重量からの差 で計算した燃料作成時の廃グリセリンガス化量およびガス 化割合を Fig.13 に示す。添加割合 10 wt% までは燃料作成 時に廃グリセリンのガス化はそれほど起こらず重量収率は 97 % 程度の高い水準を維持しているのに対し、15 wt% 以 上で廃グリセリンのガス化量が多くなり重量減少の割合が 大きくなる。また、添加割合が大きくなると廃グリセリン がシリンダ上部から吹き出す現象が見られた。

BIC の密度および高さを Fig.14 に示す。BIC 密度は添加 割合が大きくなるほど減少するが、BIC 高さは 15 wt% ま では増加する傾向にあり、15 wt% を最大として減少してい ることが分かる。15 wt% までは試料内部でガス化した廃グ リセリンが外部に抜けずに膨張した後、再び液化するので BIC 高さは高くなると考えられる。20 wt% 以上になると固 形燃料に対する廃グリセリンの割合が大きくなり、試料内 部で発生したガスが外部へ抜けてしまうので BIC 高さは低 くなる。この結果より BIC 密度は 15 wt% までは高さによ る影響、20 wt% 以上では重量減少による影響により減少し ていると考えられる。

Overall View Top surface Bottom surface

Cedar 5% 15% 10% 20% 30% 25%

Fig.11 Comparison of general view of BIC

0 10 20 30 85 90 95 100 Addition rate of WG wt% Y ie ld of w e ig ht % 0 10 20 30 0 0.1 0.2 0.3 0 20 40 60 Addition rate of WG wt% G a si fi ca tio n amo u n t g G a si fi c a ti o n ra te w t% Gasification amount Gasification rate 0 10 20 30 1180 1200 1220 1240 1260 1280 1300 1320 9.6 9.8 10 10.2 10.4 10.6 10.8 Density Height Addition rate of WG wt% He ig h t m m D e ns it y kg/ m 3

Fig.12 Yield of weight

Fig.13 Gasification amount and gasification rate of BIC

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BIC 内の廃グリセリン残量を Fig.15 に示す。残量につい ては原料重量からの差で計算した。30 wt% では燃料作成時 に約半分の廃グリセリンがガス化してしまうので、BIC 内 に残留する廃グリセリン量としては 25 wt% で最大となる。 4.3 圧縮強度特性 常温での各添加割合における BIC の応力ひずみ曲線を Fig.16、最大の圧縮強度を Fig.17 に示す。各添加割合にお ける応力ひずみ曲線は、添加割合が増加するにつれて最大 圧縮強度は減少し、ひずみは増加する傾向にあることが確 認できる。添加割合 10 wt% までは燃料内部の空隙が押し つぶされた後、固形成分が押し固められることによって図 に示すような応力ひずみ特性となるが、15 wt% 以上になる と曲線の形が変化する。その原因として考えられるのが燃 料内部に残留する廃グリセリンの染み出しである。圧縮に よって燃料内部の空隙が押しつぶされるのに引き続き燃料 内部に残留している廃グリセリンの染み出しが起こり、そ の後に残った固形成分が押し固められることによりこのよ うな応力ひずみ特性を示す。これにより添加割合が大きい 試料は応力ひずみ曲線の前半の傾きがなだらかなのに対し て後半の傾きが急に大きくなる。Fig.17 より最大圧縮強度 を比較すると、10 wt% までは圧縮強度は直線的に減少して いるが、10 wt% と 15 wt% との間で圧縮強度は約 7 MPa 減 少し、15 wt% 以上でも直線的になるがその傾きはなだらか になることが確認できる。 4.4 着火・燃焼特性

炉内での BIC の燃焼状況の一例を Fig.18 に示す。BIC は 炉内に挿入された後、加熱された空気との熱伝達および炉 壁面からの熱放射によって加熱され水分蒸発および熱分解 による揮発分の放出が生じる。数秒∼数十秒で発生した熱 分解ガスが可燃濃度、着火温度に達して着火が起こり、有 炎燃焼において火炎の成長が見られる。その後、火炎が消 滅し固定炭素分が赤熱状態で燃焼するチャー燃焼に移行 し、固定炭素分が燃え尽き最終的には灰のみが残留する。 チャー燃焼中に小さな炎を纏っているように見えるが、表 面反応によって燃焼により生じた H2O や CO2が固定炭素分 と反応することで再び可燃性ガスである H2や CO に還元す るためである1)。 0 10 20 30 0 0.1 0.2 0.3 Addition rate of WG wt% Re m a in in g a m ount of W G g 0 10 20 30 40 50 0 20 40 60 80 Strain % St re ss MPa Cedar 5% 10% 15% 20% 25% 30% 0 10 20 30 50 60 70 80 Addition rate of WG wt% Com pre ss ive s tre ngt h M P a

① Insert ② Ignition ③ Visible flame combustion ④ Char combustion ⑤ Ash

Fig.18 Combustion appearance of BIC

Fig.15 Remaining amount of waste glycerin

Fig.16 Stress-strain curves of BIC

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着火遅れ時間を Fig.19、チャー燃焼時間を Fig.20、燃え 切り時間を Fig.21 に示す。着火遅れ時間は炉内温度が 600 ℃、700 ℃、800 ℃の全てにおいて添加割合が大きくなるほ ど短くなっていることが分かる。特に 600 ℃ではその傾向 が顕著に現れており最大で 50 % 以上の着火遅れ時間の短 縮が生じる。この結果より着火現象は低温域ほど廃グリセ リンのガス化による影響が大きいことが確認できる。廃グ リセリン添加割合が増加すると原料であるスギの量が減少 するため、チャー燃焼時間は各炉内温度によって一定の割 合で減少する。また、燃焼時間の大半は固定炭素分である チャーの燃焼によるものなので燃え切り時間もその影響を 受け、一定割合で減少する。 炉内での燃焼による重量変化を 150 秒前後で拡大した図 を Fig.22 に示す。炉内での燃焼による重量減少は着火遅れ 時間の差が最も大きかった 600 ℃のものである。それぞれ、 着火遅れ時間の違いによって添加割合が大きくなるほど重 量減少の曲線が低温側に遷移するが、着火した後はほとん ど同じ速度で揮発分の有炎燃焼による重量減少が急速に生 じる。20 % 程度まで有炎燃焼による重量減少が生じた後、 チャー燃焼に移行し、最終的に灰分が残留する。 各添加割合における着火エネルギーを Fig.23 に示す。着 火エネルギーは傾向を観察しやすいように廃グリセリン添 加割合 10 % 毎の比較を行う。グラフの点線は各添加割合 での着火時刻を示しており、ガス化および水分蒸発量の曲 線と点線、横軸に囲まれる領域が着火に要するエネルギー であると考える。加熱された空気との熱伝達および炉壁面 0 10 20 30 0 10 20 30 40 50 Igni ti on de la y t im e s e c Addition rate of WG wt% 600͠ 700͠ 800͠ 0 10 20 30 300 400 500 600 C h ar co mb u stio n time s e c Addition rate of WG wt% 600͠ 700͠ 800͠ 0 10 20 30 300 400 500 600 700 800 600͠ 700͠ 800͠ Addition rate of WG wt% Burnout t im e s e c 0 100 200 0 20 40 60 80 100 Y ie ld of w e ight % Time sec Cedar 5% 10% 15% 20% 25% 30%

Fig.19 Ignition delay time

Fig.20 Char combustion time

Fig.21 Burnout time

Fig.22 Weight decrease of BIC

0 20 40 60 80 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 Time sec G as if icatio n amo u n t a n d e v a pora ti on a m ount g Cedar 10% 20% 30%

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からの熱放射により与えられる熱量はガス化または水分蒸 発の相変化に用いられる。囲まれる面積を比較すると添加 割合が増加するにつれて減少する傾向にあることが確認で きる。添加割合が小さい燃料ではガス化速度が遅いため水 分蒸発の割合が大きくなり、熱分解により生じる可燃性ガ スが希釈され4)、可燃温度に達しないので着火までに時間 を要し、着火エネルギーが大きくなる。添加割合が大きく なると廃グリセリンの影響により水分蒸発に比べて廃グリ セリンのガス化の割合が大きくなり、可燃濃度に達する時 間が短くなり着火エネルギーは減少すると考えられる。 5.結 言 日本の代表的な林業廃棄物であるスギに、バイオディー ゼル燃料の製造過程で発生する廃グリセリンを添加し BIC として固形燃料化することができた。燃焼実験において着 火遅れ時間および燃え切り時間の短縮が確認でき、燃焼性 が改善された。以下のことが明らかになった。 1. スギは約 380 ∼ 500 K でヘミセルロースの軟化およびリ グニンの脱水縮合反応が起こり、この温度域で BIC 燃料 製造が可能である。 2. 廃グリセリン添加割合が増加するにつれて BIC の熱分解 開始温度が低温側にずれる。 3. 燃料作成時に廃グリセリンのガス化が起こるので、添加 割合が増加すると重量収率は減少する。 4. 廃グリセリン添加割合が大きくなると廃グリセリンのガ ス化により着火に要するエネルギーは小さくなる。 5. 着火遅れ時間は雰囲気が低温であるほど廃グリセリンの 影響が大きく減少し、チャー燃焼時間および燃え切り時 間も一定の割合で減少することから、廃グリセリンの添 加によって着火、燃焼性が促進される。 6. 廃グリセリン添加割合が増加するにつれて最大圧縮強度 は減少し、ひずみは増加する。燃料を輸送する際に破損 には至らないが、廃グリセリンの染み出しが起こる可能 性がある。 7. 重量収率、圧縮強度、着火性から判断すれば、廃グリセ リンの添加割合 10 % 以下が最適である。 引 用 文 献 1) 水谷幸夫著:“燃焼工学 第 2 版”、pp.32-33, 166-167、森北出版 (1992) 2) 日本エネルギー学会 編:“バイオマス用語事典”、p. 231、オー ム社(2006) 3) 難波邦彦・井田民男:“有機性廃棄物の燃料化と燃焼特性”、 高温学会誌、Vol. 35, No. 2, pp. 76-80, (2009) 4) 伊東弘行ほか:“高温雰囲気中に置かれたバイオコークス燃 料の着火現象の観察”、日本機械学会熱工学コンファレンス 2009 講演論文集、No.09-33, pp.33-34, (2009)

Table 2 Thermogravimetric analysis conditions
Table 3 Manufacturing conditions of Bio-coke

参照

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