泥炭地盤における道路盛土の沈下補修に関する解析的検討
土木研究所 寒地土木研究所 正会員 ○林 宏親 同上 正会員 山梨 高裕 同上 正会員 橋本 聖 同上 正会員 山木 正彦 1.まえがき 北海道や東北のような寒冷地には、極めて軟弱で特異な工学的性質を持つ泥炭地盤が広く分布している。 大きな長期沈下が発生する泥炭地盤上の道路盛土では、供用中においても地盤の沈下が継続して発生するこ とが知られており、結果として、橋梁やボックスカルバートなどの構造物との取付け部での段差が生じ、維 持管理上の大きな問題となっている1) 2) 3)。泥炭地盤上には、既に相当な延長の道路盛土が供用・管理されて いるが、維持管理関連の予算が削減されている中、泥炭地盤上の道路盛土を合理的に維持補修する技術の確 立が求められている。 竜田ら4)、稲垣ら5)および石垣ら6)は、軟弱地盤上の道路盛土に関して、関口太田モデル7)を構成則に用 い た土/水連成 FEM 解析を用いて供用後の長期にわたる沈下予測を行い、その性能設計への応用を提案してい る。これらの研究は、道路盛土の維持管理マネジメントにおける FEM 解析の活用の方向性を示している点 で先駆的である。もちろん、FEM 解析が地盤の長期沈下を精度良く予測できることが前提であるが、林・西 本 8)は泥炭地盤の長期沈下が関口太田モデルを用いた土/水連成 FEM 解析によって解析可能なことと、その ためのパラメータの決定法を報告しており、泥炭地盤においても道路盛土の維持管理マネジメントにFEM 解 析を活用できる可能性はある。 一方、川井田ら 9)は、軟弱地盤の長期沈下に起因して橋梁取付け部の段差の補修を繰り返し実施せざるを 得なかった道路を対象に発泡スチロール(以下、EPS とする)を用いた置換えを実施し、その効果の検証を 行っている。これは、沈下に伴う道路段差の問題に対して、対処療法的にオーバーレイ舗装を繰り返す従来 型の対応以外の対策例として貴重なデータを示すものである。泥炭地盤の場合、圧縮性が極めて高いため、 オーバーレイ舗装によるわずかな荷重増でも、無視できない量の再沈下が発生し、粘土地盤以上にオーバー レイ舗装が繰り返し必要となる。したがって、EPS による置換えは抜本的な段差補修法として有効な方法と なり得る。しかし、川井田らの研究では、その合理的な設計法の提案には至っていない。 以上の背景 を受けて本文 では、泥炭地 盤上の道路盛 土を対象に、 関口太田モデ ルを用いた土/水連成 FEM 解析を実施し、EPS 置換えの厚さや施工実施時期の違いが、置換え後に発生する沈下の抑制効果に与える影 響を検討した。 2.FEM 解析の対象と方法 (1) 解析対象 泥炭地盤上に建設された高規格幹線道路である日高自動車道を対象に解析を実施した。日高自動車道の供 用区間(苫小牧東IC~日高門別 IC)のうち、広範囲に泥炭地盤が分布している KP15km~KP30km 付近まで の土質縦断図と供用開始時期を図1示す。この区間においては、供用後にも沈下(以下、供用後に発生する 沈下を残留沈下とする)が発生し、路面の維持補修が頻繁に必要となっている。以下、当該道路の残留沈下 の状況を簡単に述べる。 道路盛土の残留沈下によって生じる維持補修上の主な問題は、橋梁やボックスカルバート前後の段差 であ るが、段差は走行時の乗り心地と密接な関係がある。そこで、乗り心地の定量的な評価指標である国際ラフ ネス指数(以下、IRI とする)の測定結果(KP28km~KP30km 間、供用後約 8.5 年に実施)を図2に示す。IRI Analytical Study on Maintenance for Settlement of Road Embankment on Peat Ground: Hirochika HAYASHI (Civil Engineering Research Institute for Cold Region), Takahiro YAMANASHI, Hijiri HASHIMOTO and Masahiko地 盤 工 学 会 北 海 道 支 部 技 術 報 告 集 第 5 5 号 平成27 年1月 於 室 蘭市
は数値が大きいほど乗り心地が悪いことを示し、高規格幹線道路のように高い平坦性が要求される路面では IRI=0~2 程度が求められており、IRI=4 を超えると不完全な表層といわれている。橋梁やボックスカルバー トの前後で4 を超える IRI となっており、それ以外では高規格幹線道路に要求される平坦性を満足している。 このことは、構造物前後での段差が問題となることを再認識させる。また、KP29km より終点側と比較して、 起点側のIRI が大きく、比較的平坦性が悪い。KP29km より起点側には、泥炭が堆積しており(図1)、その 影響と考えられる。 図1 日 高自 動車 道 の 土質 縦断 と 供 用開 始時 期 図2 IRI 測定 結果 図3にIRI の比較的大きかった KP28.1km 付近の鵡川インターチェンジボックスカルバート(以下、IC 函 渠とする)前後における段差のレベル測量結果(供用後約9.5 年に実施)を示す。IC 函渠端部から 30m 離れ た箇所において、26cm と 46cm の段差であった。本検討では、この IC 函渠前後の盛土を対象に関口太田モ デルを用いた土/水連成 FEM 解析を実施することとする。 図3 IC 函 渠 部で の 段 差量 平成10年7月供用 平成15年8月供用 平成18年3月供用 平成10年7月供用 平成15年8月供用 平成18年3月供用 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 28 28.5 29 29.5 30 キロポスト(km) I R I 基 底 長 10m( m/k m) H23.11測定 H23.12測定 H24.2測定 H24.3測定 IC函渠 用水路函渠 町道函渠1 町道函渠2 町道函渠3 農道函渠 橋梁 17.0 17.2 17.4 17.6 17.8 18.0 -60 -40 -20 0 20 40 60 函渠中央からの距離 (m) 標高 (m ) IC函渠 L=30m D=46cm L=30m D=26cm
(2) 使用したモデルとパラメータ 図4に解析対象箇所の地盤構成と盛土の形状を示す。当該箇所の地盤は、火山灰土から成る表土の下位に 泥炭、粘性土、砂質土、粘性土、火山灰混り細砂と続く土層構成であった。粘性土層は、その物性から5つ の層に細かく区分した。火山灰混り細砂は、N 値が 6~33 と比較的強固であることと、地表面から 22m 程度 と深い位置に存在しており、盛土荷重がある程度分散していることを考慮して基盤層と判断し、それより浅 い粘性土5層までを FEM 解析の対象とした。泥炭層および粘性土層に関口太田モデルを適用し、盛土、表 土層および砂質土層は線形弾性体と仮定した。 図4 解 析対 象箇 所 の 地盤 構成 と 盛 土の 形状 解析に用いたパラメータを表1に示す。いずれの土層においても、パラメータを決定するための適当 な試 験結果がある場合は、その結果から忠実に決定した。適当な試験が実施されていない場合は、他の試験結果 から推定するか、その土質の標準値を用いている。具体的には、粘性土については、Iizuka & Ohta の方法10)
に基づいて推定した。泥炭層については、著者らが提案している方法8) 11)によった。ただし、本検討で扱う 沈下速度の問題に大きな影響を与える透水係数については、感度分析を実施して決定した。このことについ ては次章において詳述する。 表1 解 析に 用い た パ ラメ ータ 図5に FEM 解析の要素メッシュを示す。変位の境界条件については、左右端を「水平方向固定・鉛直方 向自由」とし、下端を「水平・鉛直方向固定」とした。水平方向の拘束位置は、盛土法尻位置より軟弱層厚 の約3倍をとった。水理的境界条件として、地表面(盛土直下を除く)、盛土面、左右端および下端に完全 排 水を与えた。また、解析ステップについては、実施工や段差のレベル測量の実施時期を考慮して表2に示す 土層 モデル 単位体積重 量(kN/m3 ) 変形係数 (kN/m2 ) ポアソン比 圧縮指数 (自然対数) 膨張指数 (自然対数) 応力比M 初期間隙比 e0 原位置での 静止土圧係数 K0OC 正規圧密での 静止土圧係数 K0NC 初期鉛直 透水係数 kv0(m/s) 初期水平 透水係数 kH0(m/s) 透水係数の 変化係数k (自然対数) 二次圧密係数 (自然対数) 初期体積 ひずみ速度 v0(1/day) 盛土(火山灰土) 線形弾性体 15.0 22400 0.33 - - - - 0.50 - 1.0×10-4 1.0×10-4 - - - 表土 線形弾性体 15.0 2800 0.33 - - - - 0.50 - 1.0×10-4 1.0×10-4 - - - 泥炭 関口太田モデル 11.2 - 0.30 1.28 0.16 1.46 5.4 0.55 0.44 1.40 0.019 2.6×10-4 粘性土1 関口太田モデル 14.4 - 0.45 0.58 0.07 0.81 3.0 0.94 0.81 1.0×10-8 1.0×10-8 0.61 0.007 1.7×10-6 粘性土2 関口太田モデル 14.1 - 0.43 0.53 0.07 0.85 2.6 0.84 0.76 8.5×10-9 8.5×10-9 0.78 0.007 8.4×10-7 粘性土3 関口太田モデル 15.3 - 0.43 0.39 0.06 0.85 2.0 0.92 0.76 5.5×10-9 5.5×10-9 0.53 0.006 1.3×10-6 粘性土4 関口太田モデル 18.5 - 0.38 0.20 0.03 1.01 1.3 0.78 0.62 2.5×10-8 2.5×10-8 0.20 0.004 1.6×10-5 砂質土 線形弾性体 18.0 22400 0.33 - - - - 0.50 - 1.0×10-4 1.0×10-4 - - - 粘性土5 関口太田モデル 18.5 - 0.38 0.20 0.03 1.01 1.3 0.66 0.62 2.5×10-8 2.5×10-8 0.20 0.004 6.9×10-5 EPS 線形弾性体 0.3 20000 0.12 - - - - 0.50 - 1.0×10-9 1.0×10-9 - - - 表3の通り
Uw:過剰間隙水圧 図5 解 析に 用い た FEM 要 素メ ッ シ ュ 表2 設 定し た解 析 ス テッ プ 3.再現解析 ここでは、今回用いた解析方法およびパラメータの妥当性を検証する目的で実施した解析(以下、再現解 析とする)について述べる。 (1) 解析条件 再現解析では、泥炭層の透水係数に関する感度分析を行った。泥炭の透水係数は、圧密の進行に伴い 大き く減少することが明らかになっている12)。このことは、一次圧密の進行の遅れの要因となり、残留沈下に大 きく影響する。したがって、本解析では、圧密に伴う透水係数の減少を考慮することとし、透水係数を式(1) で定義する。ここで、k は透水係数、k0は初期の透水係数、e は間隙比、e0は初期の間隙比、kは透水係数 の変化係数(自然対数表示)である。 k = k0 exp((e-e0)/k) (1) 式(1)において、kは圧密試験から得られるe-In k 関係から決定できるが、問題となるのは k0である。泥 炭 のk0を式(2)によって圧密試験から求めると原位置の透水係数の 1/10~1/100 程度に過小評価することがわか っている(図6)。 k = cv mv w (2) 残念ながら、今回の解析対象箇所では、原位置透水試験は実施されておらず、圧密試験から推定せざるを得 ない。したがって、表3に示す条件でk0の感度分析を行い、沈下挙動に与える影響を調べた。 時間 t (days) 備考 施工開始 0 最終検討日 37700 現場状況 4670 3ヶ年段階施工 盛土完成後200日間放置 供用後9.5年に段差測量を実施 供用後100年を最終検討日 1200 施工終了 供用開始 段差測量 盛土施工期間 盛土放置期間 供用期間(段差測量前) 1000 供用期間
図6 泥 炭の 圧密 試 験 から 求め た 透 水係 数 klと 原位 置 の透 水 係数 kiの関 係13) 表3 設 定し た泥 炭 の 初期 透水 係 数 (2) 解析結果 図 7 に 盛 土 中 央 に お け る 地 表 面 沈 下 量 の 解 析 結 果 を 示 す 。 い ず れ の ケ ー ス に お い て も 、 最 終 的 に 約 3.5m の地表面沈下が生じており、経過日数20000 日程度以降では、透水係数の違いによる沈下挙動の差は認めら れない。しかし、盛土施工中から経過日数10000 日程度までの間では、ケース1の沈下速度が他のケースと 比べて顕著に遅い。圧密試験から得られた透水係数をそのまま解析に用いると沈下速度を遅く見積もる可能 性がある。なお、供用後9.5 年に実施された測量結果などから推測されるこの時点での沈下量は、3m 程度で あるが、解析結果は概ね実際の沈下量を再現しており、今回用いた解析手法がほぼ妥当であったといえる。 図7 再 現解 析結 果 ( 盛土 施工 開 始 から の総 沈 下 量) 1.0E-09 1.0E-08 1.0E-07 1.0E-06 1.0E-05 1.0E-04
1.0E-09 1.0E-08 1.0E-07 1.0E-06 1.0E-05 1.0E-04 laboratory coefficient of permeability kl (m/s)
in -s itu c oe ffic ie nt o f p er m ea bility k i (m /s ) peat organic clay clay ki /kl = 1 ki /kl = 10 ki /kl = 100 -4.0 -3.5 -3.0 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 盛土施工開始からの経過日数 (days) 沈下量 (m ) 供用時(t=1200) 供用後9.5年(t=4670) ケース1(1倍) ケース2(10倍) ケース3(50倍) ケース4(100倍) ケース 条件 初期鉛直 透水係数 kv0(m/s) 初期水平 透水係数 kH0(m/s) 透水係数の 異方性 備考 1 圧密試験結果 5.0×10-8 2.5×10-7 5 k case1 = cv mvw 2 圧密試験結果の10倍 5.0×10-7 2.5×10-6 5 k case2 = 10 kcase1 3 圧密試験結果の50倍 2.5×10-6 1.25×10-5 5 kcase3 = 50 kcase1 4 圧密試験結果の100倍 5.0×10-6 2.5×10-5 5 kcase4 = 100 kcase1
残留沈下に与える影響を明確にするために、盛土中央における地表面沈下量の供用時(経過日数1200 日) からの残留沈下を図8に示す。当該箇所における供用後9.5 年の実測残留沈下量は、26cm~46cm(図3)で あった。同じ経過日数の解析値と比較すると、ケース1では沈下が遅れて発生したことから実測値と離れて い る 。 ケ ー ス 2 が 実 測 値 の 最 大 値 、 ケ ー ス 4 が 最 小 値 と ほ ぼ 等 し く 、 圧 密 試 験 か ら 得 ら れ た 透 水 係 数 の 50 倍を用いたケース3が、実測値の平均的な沈下であった。また、図6の関係においても、原位置の透水係数 は、平均的に室内の値の50 倍であった。したがって、ケース3の解析結果が実際の沈下挙動を最も良く再現 したと判断し、以降の解析ではこの透水係数を用いることとする。 図8 再 現解 析結 果 ( 供用 開始 か ら の残 留沈 下 量 ) 4.EPS による置換えの効果 ここでは、EPS 置換えの段差補修工法としての効果について述べる。具体的には、EPS の置換え厚および 施工時期の違いが、その後に発生する沈下に与える影響を調べた。なお、解析上、EPS は線形弾性体と仮定 し、文献14)に示される物性を参考にしてパラメータを決定した(表1)。 (1) EPS 置換え厚の影響 段差のレベル測量が行われた供用後9.5 年に、EPS 厚 1m、2m、3m の置換え施工を実施した3ケースを想 定して解析した。供用時からの残留沈下の経時変化を図9に示す。無対策では、供用後 9.5 年以降も沈下が 継続し、路面の段差量が増すことが想定されるが、EPS 置換えによって残留沈下は抑制されることがわかる。 ただし、EPS 厚によってその効果に明瞭な違いがある。EPS 厚 1m では、施工後も大きな沈下が継続して発 生しており、段差補修としての効果は薄い。一方、EPS 厚 2m および 3m では、施工後にリバウンドが認めら れることから、EPS 置換えによる除荷効果(サーチャージ効果)が十分に発揮されており、その後の沈下も 大きく低減されている。その傾向はEPS 厚 3m の方が著しい。実際の問題では、維持補修に要するコストを 無視することはできない。許容される構造物前後の段差量を10cm 程度15)とすると、今回解析したケースに おいては、EPS 厚 2m で十分な効果が得られると判断できる。
EPS 置換えによって得た過圧密比 OCR と残留沈下の低減率(無対策の残留沈下に対する EPS 置換えケー スの残留沈下)の関係は図 10 の通りである。OCR が 1.1 程度の場合、残留沈下が 60%程度まで、OCR が 1.2 程度であれば、20%程度まで低減できることがわかる。今回解析したケースでは、盛土厚が 11m と比較的高 いため、EPS 厚が 2m 以上なければ、十分な効果が得られなかったが、盛土厚が比較的低いケースでは、よ り薄いEPS 厚でも効果が得られる可能性がある。また、OCR と残留沈下の低減率に明瞭な関係が認められた ことから、適切なEPS 置換え厚を決定するために、OCR が有効なパラメータとなると考えられる。 (2) EPS 置換えの施工時期の影響 EPS 置換えによる段差補修を実務に適用する場合、その施工時期の判断が必要となる。そこで、EPS 置換 -1.4 -1.2 -1.0 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 盛土施工開始からの経過日数 (days) 供用 時か ら の 残留 沈下 量 (m ) 供用時(t=1200) 供用後9.5年(t=4670) ケース1(1倍) ケース2(10倍) ケース3(50倍) ケース4(100倍)
えの施工時期を変えた解析を実施した。具体的には、前述の供用後 9.5 年に加え、まだ一次圧密が進行中と 思われる供用後300 日に施工するケースと供用後 20 年に施工するケースの3ケースを設定した。いずれのケ ースもEPS 厚は 2m とした。 図9 EPS 置換 え厚 の 違 いが 残留 沈 下 量に 与え る 影 響 図 10 OCR と 残留 沈 下 の低 減率 図 11 EPS 置 換え の 施 工時 期の 違 い が残 留沈 下 量 に与 える 影 響 (置 換え 厚 2m) -0.8 -0.7 -0.6 -0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0.0 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 盛土施工開始からの経過日数 (days) 供用 時か ら の 残 留沈下 量 (m ) 供用時(t=1200) 供用後9.5年(t=4670) 無対策 EPS厚1m EPS厚2m EPS厚3m 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 OCR 残留 沈下 の低減 率 供用後50年 供用後100年 -0.8 -0.7 -0.6 -0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0.0 0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 盛土施工開始からの経過日数 (days) 供用時から の残留沈下量 (m ) 無対策 供用後300日に置換え 供用後9.5年に置換え 供用後20年に置換え 供用時(t=1200) 供用後9.5年(t=4670)
供用時からの残留沈下の経時変化を図 11 に示す。供用後300 日に施工を行った場合、ある程度の残留沈下 低減効果はあるが、施工後の沈下速度には無対策と大きな違いはない。一方、施工時期を供用後 9.5 年以降 とした場合では、明瞭な効果が認められ、9.5 年と 20 年にはほとんど差異がない。つまり、一次圧密進行中 に置き換えるのと二次圧密に移行してから行うのでは、同じEPS 厚であっても効果に有意な差が生じると想 定される。したがって、EPS 置換えにあたっては、施工時期を十分に検討する必要があると考えられる。ま た、施工時期によって適切な置換え厚が異なる可能性があるが、この点については今後の課題としたい。 5.まとめ 本検討において、泥炭地盤上の道路盛土を対象に、関口太田モデルを用いた土/水連成 FEM 解析を実施し、 EPS 置換えの厚さや施工実施時期の違いが、置換え後に発生する沈下の抑制効果に与える影響を検討した。 得られた主な結論を要約すると以下の通りである。 ①当該泥炭地盤において、関口太田モデルを用いた土/水連成 FEM 解析および著者らが提案している泥炭 地盤のパラメータの決定法は、ほぼ妥当な沈下解析結果を示した。 ②EPS 置換え厚によって、残留沈下の抑制効果に違いがあった。つまり、盛土厚に応じた適切な EPS 置換 え厚がある。 ③EPS 置換えによって得た過圧密比 OCR と残留沈下の低減率に明瞭な関係が認められたことから、適切な EPS 置換え厚を決定するために、OCR が有効なパラメータとなり得る。 ④EPS 置換えにおいて、一次圧密進行中に置き換えるのと二次圧密に移行してから行うのでは、同じ EPS 厚であっても効果に有意な差が生じると想定される。 謝辞 本検討にあたって、北海道開発局苫小牧道路事務所から多大なご協力を頂いた。ここに謝意を表します。 【参 考 文 献】 1) 豊田邦男、辻野英幸、門田浩、坪田邦治:道央道(札幌~岩見沢間)の軟弱地盤における沈下と維持管理について、 地盤 工 学 会北 海道 支 部 技術 報告 集No.45、pp.253-258、2005. 2) 西 本 聡 、 林 宏 親 、 橋 本 聖 、 梶 取 真 一 : 泥 炭 性 軟 弱 地 盤 の 長 期 沈 下 予 測 と 合 理 的 な 対 策 工 に 関 す る 研 究 、 土 木研究所 資料No.4228、pp.6-24、2012. 3) 林宏親、山梨高裕:泥炭地盤における道路盛土の残留沈下に関する実態調査、第 30 回日本道路会議論文集(CD-R)、 2013. 4) 竜 田 尚 希 、 稲 垣 太 浩 、 三 嶋 信 雄 、 藤 山 哲 雄 、 石 黒 健 、 太 田 秀 樹 : 軟 弱 地 盤 上 の 道 路 盛 土 の 供 用 後 長 期 変 形 挙動予測 と性 能 設 計へ の応 用 、 土木 学会 論 文集No.743/Ⅲ-64、pp.173-187、2003. 5) 稲 垣 太 浩 、 三 嶋 信 雄 、 武 部 篤 治 、 藤 山 哲 雄 、 石 黒 健 、 太 田 秀 樹 : 軟 弱 地 盤 上 の 道 路 盛 土 に 対 す る 性 能 設 計 の試み、 土木 学 会 論文 集No.771/Ⅲ-68、pp.91-110、2004. 6) 石垣勉、尾本志展、竹山智英、ピパットポンサーティラポン、飯塚敦、太田秀樹:土/水連成解析を用いた道路ア セ ット マ ネ ジメ ント 支 援 の試 み、 応 用 力学 論文 集Vol.10、pp.971-982、2007.
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