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1 日目のシナリオから得られた結論 北朝鮮の挑発に効果的に対処するには 日米韓 3カ国の調整が不可欠であるこのシナリオは日本海の韓国作戦地域外で発生したうえに 3カ国から派出された艦船や航空機がいずれも難民を乗せた船に到達できる距離にいたため 各国とも直ちに3カ国で調整することの必要性を認識した こ

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1 図上演習「パシフィック・トライデント」 北朝鮮の挑発に対する日米韓3カ国、日米、米韓の対応の検証 2018年2月14-16日 東京 マイケル・マクデビット/加藤洋一 笹川平和財団米国(SPF USA) (翻訳・校正:茶城麻優子) 図上演習の概要 2018年2月14日から16日にかけて、笹川平和財団米国(SPF US A)は、笹川平和財団(SPF)の協力のもと、北朝鮮による意図的な挑発行 為や不測の事態に対する、日米韓3カ国、および日米、米韓2カ国による対応 を考察する目的で、3カ国それぞれから政策、防衛、情報、安全保障各分野の 専門家を招き、公開での図上演習を実施した。 南北首脳会談および、それに続いて開催されるとみられる、米国のドナルド・ トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談が、北朝 鮮の脅威を平和的に解消する一縷の望みと捉えられた一方で、これまで北朝鮮 が核開発計画を固持してきた長い歴史に鑑みれば、将来、北朝鮮による深刻な 挑発行為が起きる可能性は否定できない。北朝鮮の核・ミサイル能力が査察下 にない状況ではなおさらである。 演習1日目 シナリオ 難民や政府高官の亡命者を乗せた北朝鮮の漁船3隻が、韓国の作戦地域(KT O)外の日本海を秋田に向かって東南東の方角に航行していた。北朝鮮の艦艇 や戦闘機がこれら漁船の航行を阻止するために急派されたことに対抗するた め、米国、日本、韓国から艦船や戦闘機が派出された。続く対立的な状況の 下、北朝鮮はエスカレーションを招く選択を行った。これに対して、米軍の戦 闘機が北朝鮮航空機を撃墜、米軍の潜水艦が北朝鮮の軍艦を撃沈した。

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2 1日目のシナリオから得られた結論 北朝鮮の挑発に効果的に対処するには、日米韓3カ国の調整が不可欠である このシナリオは日本海の韓国作戦地域外で発生したうえに、3カ国から派出さ れた艦船や航空機がいずれも難民を乗せた船に到達できる距離にいたため、各 国とも直ちに3カ国で調整することの必要性を認識した。この認識が、3カ国 の外相、国防相レベルの政府当局者、さらに軍の最高指揮官を含む、いわゆる 「2プラス2プラス2」と呼ばれた3カ国調整メカニズムの即時立ち上げに繋 がった。この新たな枠組みは、3カ国間の協議、計画、協調行動を格段に強化 すると同時に、3カ国間の潜在的また実質的な政策の差異が北朝鮮に有利に働 くことを防ぐ上でも有効であると示された。 集団的自衛権の行使により、日本はより効果的な役割を果たせる 集団的自衛権の行使を可能にした日本の政策転換が、北朝鮮の挑発に対処する 作戦の立案や実施において、自衛隊が、米軍や韓国軍にとって、より対等なパ ートナーとして加わることを可能にした。さらに、日本は北朝鮮有事に対処す る上での、海上・航空防勢作戦の重要性を示すこともできた。 米国の指揮関係は有効に機能した 朝鮮半島における大規模な紛争に備えた指揮手順は十全に確立されており、間 断なく実行された。しかし、北朝鮮の長距離ミサイルによる大規模戦争に至ら ない程度の挑発活動は、在韓米軍と韓国軍の指揮系統のいずれをも麻痺させる 可能性があることが明らかになった。北朝鮮の挑発の対処には、弾道ミサイル 防衛システムや、対潜戦(ASW)能力、さらにサイバー作戦能力の使用を含 んでいる。これら3分野における、米太平洋軍、米韓連合軍司令部(CF C)、在韓米軍(USFK)、米サイバー軍、米北方軍、さらに日本の間の相互 支援ならびに調整が、効果的な軍事作戦のためにきわめて重要である。 各国ごとに異なるROE(交戦規定/部隊行動基準)は戦術的不利益をもたら す 米軍は、北朝鮮軍の敵対的な意思表示に対して発砲することが認められていた が、自衛隊と韓国軍は、北朝鮮軍が実際に敵対行動を取った後に初めて発砲が 許された。この図上演習で想定されたような有事の際、北朝鮮軍はおそらく、 日米韓3カ国の軍隊すべてに対して発砲する命令を受けていると考えられる。 日韓両国のROEが、米国に比べてより限定的であることは、3カ国が共に効 果的で統一性を持った対処方法を発展させていく上で、戦術的な障害となる。

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3 演習2日目 シナリオ 2日目のシナリオは、1日目の演習結果を適用せず、改めて最初から開始され た。北朝鮮は、韓国・釜山港への機雷敷設、日本や韓国の艦船に対する魚雷攻 撃、限定的な数量の通常弾頭搭載弾道ミサイルの在日米軍基地及び韓国に対す る発射などの一連の挑発行為のエスカレーションを通じ、米韓、日米両方の同 盟関係にくさびを打ち込もうとした。北朝鮮の試みは、結果として、日韓の民 間人、米軍人に死者を出した。シナリオでは、北朝鮮が、日本最南端の無人 島、沖ノ鳥島上空の大気圏内で10キロトンの核爆弾を爆発させ、その緊張は 最高点に達したが、人的な被害はなかった。核爆発に続く北朝鮮の要求は次の ようなものである。 ① 日本は、北朝鮮に対して敵対的な姿勢を取ることをやめるとともに、在日 米軍基地から行われる米軍の作戦行動に同意してはならない。さもなけれ ば、核攻撃を受ける。 ② 韓国は、米軍との合同軍事演習を中止しなければならない。さもなけれ ば、核攻撃を受ける。 ③ 米国は、北朝鮮を核兵器保有国家として認めたうえで、朝鮮戦争を終結さ せる平和条約締結のため、北朝鮮との交渉に入らなければならない。 2日目のシナリオから得られた結論 北朝鮮の挑発に効果的に対処するには、日米韓3カ国の調整が不可欠である 初日の演習で、日米韓3カ国間の高官による調整会議が有効であったことを踏 まえ、演習参加者はこの日も、外相、国防相レベルの政府当局者、さらに軍の 最高指揮官を中心とする「2プラス2プラス2」を立ち上げた。この協議枠組 みは、北朝鮮の博打的な挑発に対処するための3カ国間の協議、計画、調整、 さらに衝突回避に有効であると、改めて証明された。 同盟の結束はきわめて重要である 北朝鮮の挑発行為が、米韓ならびに日米の両同盟の結束を乱すことはなかっ た。北朝鮮は核兵器を使用した上で3カ国に要求を突き付けたが、どの国も北 朝鮮に譲歩して要求に応じることを選択肢としなかった。北朝鮮の挑発には3 カ国が団結して対処することが有効である。 通常兵器による北朝鮮の挑発行動に対処するためには、3カ国間の協力が必要 である

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4 日本および韓国に駐留する米軍基地に対する北朝鮮のミサイル攻撃にどう報復 するかをめぐって、3カ国は長時間議論した。3カ国は、各国ごとの単独行動 は控えるとともに、北朝鮮に対する通常弾頭を搭載したミサイルを用いた大規 模攻撃を緊密に調整したうえで実施することで合意した。 北朝鮮が日本の無人島上空で行った大気圏核実験への対処は、均衡のとれたも のでなければならない 3カ国は、無人島上空での核爆発に対する報復措置として、北朝鮮に対して核 攻撃を行うことは、不均衡だとして拒否した。米国チームは自らの核のデモン ストレーションを拒否し、日韓両国も強く反対した。 米国は、北朝鮮が韓国または日本に対して核兵器で直接攻撃すれば、北朝鮮の 核兵器ならびに通常兵器を破壊することも辞さないだろう 3カ国は、もし北朝鮮が核兵器を用いて韓国または日本の領土を直接攻撃した 場合、米国は北朝鮮の核と通常兵器の両方の能力を破壊するため、北朝鮮に対 する報復攻撃を実施したであろうという点で意見が一致した。このコンセンサ スには、米国の2018年版「核態勢の見直し」(NPR)が反映されてるい る。 非戦闘員退避活動(NEO)は3カ国間の意見の不一致につながる 3カ国がいったん北朝鮮の核爆発に対して報復すると合意すれば、日本と米国 は、自国民を朝鮮半島から退避させて保護するために必要な措置をとることに なる。しかしながら、米韓連合軍司令部(CFC)と韓国政府は、このような 退避活動を、(米韓両国による)全面戦争の準備であると北朝鮮が解釈する恐 れを指摘した。加えて、韓国政府は、NEOは韓国の国民を警戒させ、他の問 題につながると懸念した。 提言 日米韓3カ国間のハイレベル調整メカニズムを作り、運用する 北朝鮮の挑発に効果的に対処するためには、3カ国の間に、常設で活用しやす い調整メカニズムの創設が必要である。このメカニズムは、それぞれの政府・ 軍の高官で構成されるが、構成員が過去に一緒に働いた経験を有することは、 早急な会議の招集に有効である。今回の図上演習では、各国の外相、国防相レ ベルの政府当局者、さらに軍隊の最高指揮官が参加する「2プラス2プラス 2」が立ち上げられた。

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5 ・ 日米の同盟調整メカニズム(ACM)は、そのような3カ国間の協議体創 設にあたり、適切なモデルを提供する。 日本の新たな能力を、北朝鮮の攻撃に対する抑止・防衛のための計画に、より 深く関与させる 現行の米韓二国間の計画をモデルとし、日本の集団的自衛権行使という新たな 能力を活用した3カ国の挑発対抗計画を立案する。 ・ 日本海における、日本の重要な対潜戦、対空戦、ミサイル防衛能力を、北 朝鮮の攻撃を抑止、撃破する全体計画の一部として取り入れる。 ・ 3カ国が共有する共通作戦状況図(COP)を作成し、同じ情報に基づく 決定が下せるようにする。 ・ 北朝鮮の弾道ミサイル搭載潜水艦への対抗に焦点を絞った、3カ国による 対潜戦(ASW)演習を、日本海で実施する。 韓国からの非戦闘員退避活動(NEO)を、3カ国間相互の協議を通じて発展 させる 北朝鮮が日本を攻撃する可能性も念頭に置き、日本からのNEOも視野に入れ る。 ・ 高齢者、子供、病人など、退避対象にあたる韓国市民も、米国や日本の退 避計画に組み入れる。 ・ 韓国在住の外国市民の安全を確保するため、韓国から出発する直前までの 段階的な退避プロセスを作成する。 ・ 韓国からのNEOの初期段階で、制服を着た日本の自衛官が韓国に入るこ とを避けるため、日本の民間の航空機や船舶の利用能力を構築する。 北東アジア地域における米国の指揮関係を、柔軟かつ状況適応能力を兼ね備え たものへと進展させるとともに、日米韓3カ国間の意思疎通、調整用軍事チャ ネルを増強させる ・ 北東アジア地域に米国軍の統合任務部隊を複数形成し、挑発への対処、お

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6 よび事態がエスカレートした場合の、より大規模な統合部隊の編制に備え る。 ・ 日米韓3カ国で、軍の効率性、政治的な結束を高めるため、軍相互の意思 疎通を向上させる。 ・ 米太平洋軍に対し、平時、危機、紛争時を通じた、日米韓3カ国の意思疎 通・協議のチャネルを強化するよう促す。 今回の演習では取り上げられなかったが、他の重要な問題点を探求するため、 あり得る北朝鮮有事を想定した図上演習をさらに実施する ・ 今回の図上演習参加者は、北朝鮮が、韓国あるいは日本の居住地域に対し 核攻撃を行った場合、米国による核を使った報復攻撃を実施/支持すると いう点において一致した。今後の図上演習では、北朝鮮の核兵器使用につ いて、より現実味のある脅しをかけてきた場合や、核や他の大量破壊兵器 の攻撃に踏み切った場合、今回想定した核攻撃よりも低いレベルにとどま った場合の対応を検討すべきである。 ・ 今回の図上演習シナリオは、日本と韓国に対する同時攻撃を含んでいた。 今後の演習では、両国同時ではなく、日本あるいは韓国どちらか一国に対 する攻撃のケースを検討すべきである。 ・ 韓国に居住、あるいは訪問中の中国人は、総計100万人を超えている。 これは米国人と日本人の数を合わせたとしてもその3倍以上に相当する。 今後の図上演習では、北朝鮮有事の際に中国が果たす役割も検討すべきで ある。

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目次

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 図上演習の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 図上演習の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 第1日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 第2日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 図上演習に関する分析:政策レベル・・・・・・・・・・・・・・・17 3カ国間調整は成功した・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 日本の新しい防衛政策は重要であることが示された・・・・・・・18 朝鮮半島危機の際の非戦闘員退避活動(NEO)は問題を含む・・19 紛争が起きそうな場合、米国と連合司令部の指揮関係は、日韓両国を直接的 に巻き込む・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 北朝鮮の大気圏内核爆発に釣り合った形で対応する・・・・・・・22 北朝鮮の挑発的、威圧的あるいは高圧的動向は、核兵器の保有でさらに悪化 するのか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 その他の分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 提言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28

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はじめに

増加し続ける北朝鮮の弾道ミサイルと核兵器の保有量は、地域や世界に深刻な 脅威をもたらしている。2018年2月14〜16日、笹川平和財団米国(S PF USA)は、笹川平和財団(SPF)の協力のもと、日本、韓国、米国 3カ国それぞれの軍、安全保障、情報担当の政府当局および外交に老練な参加 者を得て、起こり得る北朝鮮の挑発への3カ国の対応を検討する図上演習(T TX)を実施した。この演習は機密扱いではなく、東京の笹川平和財団ビルで 実施された。同財団とそのスタッフには、このような規模のTTXが円滑かつ 効率的に運営されたことに特別の感謝を申し上げる。 TTXの参加者には、日米、米韓、さらには日米韓3カ国の対応を試すため、 日本海、朝鮮半島周辺における北朝鮮有事のシナリオが提示された。参加者 は、現行の政策、直近の協議、調整、意思疎通の手続きに基づき、それぞれの 対応を検討、決定した。この決定には、最近日韓間で調整された、共同作戦へ の貢献拡大についても含まれた。この演習は、北朝鮮有事に効果的に対処する にあたって、3カ国間の調整がいかに重要かを明確に示した。さらに、民間人 だけによるいわゆる「トラック2」で、次の演習で検証されるべき重要な課題 についても浮き彫りにした。 図上演習は、2018年平昌冬季オリンピックの最初の週に行われた。折し も、北朝鮮が韓国に選手団や役員、さらに文化芸術使節を送り込み、韓国では 北朝鮮との関係に楽観的な見方が広がった時期だった。続く南北高官会談で は、2018年4月に首脳会談を開くことで合意がされ、さらにそのすぐ後に は、トランプ米国大統領と金正恩・朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談も予定 されている。このように、現在の朝鮮半島が、南北の平和的共存、さらには北 朝鮮の非核化へ一定の希望を見出せるような状況である一方で、北朝鮮は核開 発計画の放棄を拒否し続けてきた長い歴史を持つ。北朝鮮の深刻な挑発の可能 性を排除することはできず、これは、北朝鮮の核・ミサイル能力が査察を受け ないままの状態に置かれればなおさらのことである。

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図上演習の目的

今回の図上演習は以下の目的を達成するために実施された。 ・ 日米韓すべての国を巻き込んだ有事や北朝鮮の挑発に対する、3カ国の政 策、外交、軍事のあるべき対応の検討。 ・ 日米韓3カ国への北朝鮮の挑発に対して、効果的な対応を準備し、実行す るために必要な3カ国間の協議、調整、意思疎通の方法の探究。 ・ 自衛隊の作戦行動の範囲を拡大した新たな政策のもと、日本が北朝鮮の挑 発への対処に貢献するための新たな能力の探究。

背景

過去30年近くにわたり、日米韓3カ国は、北朝鮮の核兵器開発計画を停止さ せようとしてきた。しかし、北朝鮮が、核兵器やその運搬手段こそが、敵に対 する抑止と戦略的な優位性を自国にもたらし、政治体制の維持にとって非常に 重要な手段だと考えていることから、3カ国の試みは失敗に終わっている。北 朝鮮は、核兵器とミサイルの能力があれば、日米韓に圧力をかけ、威嚇でき、 朝鮮半島統一に向けた道筋を作ることもできると考えている。北朝鮮は敵対国 との平和条約を求めているが、それは、米韓同盟を切り崩し、韓国からの米軍 撤退につながるだけでなく、北東アジアでの米国の拡大核抑止機能を奪う。最 も重要な点は、政権を存続させたいのであれば、核兵器を保持していなかった 過去へ戻ることは絶対にあり得ないと北朝鮮が認識していることである。 北朝鮮は核兵器を国の存続に不可欠な要素であると考えているが、一方で米国 はそれを容認できない脅威だと考えている。北朝鮮の非核化は、米国、日韓両 国にとってはもちろんのこと、さらにその他の大多数の国にとっても目標であ り続けている。日韓両国の安全を請け負っている米国は、北朝鮮の核脅威への 対応については限られた選択肢しか持たない。それは、(1)検証可能で、不 可逆的な非核化に関する合意を交渉する、(2)結果のリスクを伴いながら も、北朝鮮の能力を破壊するため、先制攻撃か、予防攻撃を実施する、(3) 抑止と封じ込めを通じて、その脅威と共存し、管理することを試みるの3つで

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10 ある。 これまで、米国とそのパートナー国は、金正恩に対して、核兵器は政権の存続 を担保しないこと理解させようと動いてきた。(実際に、核兵器とその運搬手 段の開発は、北朝鮮の経済成長の妨げとなっており、国内の不安定を引き起こ すかもしれない。)さらに、外交、情報、軍隊、そして経済的な国際連携を通 じて、金正恩に非核化の交渉を始めるよう強く働きかけている。 米国は過去に、核兵器をすでに保有していたり、開発したりしてきた、他の権 威主義的あるいは独裁主義的な敵対国に対応するに当たって、今回と似たよう なジレンマを経験している。具体的に、20世紀にはソ連と中国、そして21 世紀に入ってからはリビアとイランが挙げられる。米国は、結果としていずれ のケースについても物理的な武力行使を伴わない(non-kinetic) 選択をしたが、1960年代には、中国の核施設に対する攻撃を真剣に検討し た。 北朝鮮のミサイルシステムの進歩は、同国の核脅威をさらに強大なものにし た。ソ連と中国の同盟国であった時代から、北朝鮮は両国からミサイルシステ ムや、関連技術を受け取ってきた。加えて、近年、北朝鮮は、自国の科学者や 技術者及び工業力を用いて独自のミサイル計画を展開してきたと同時に、活発 な取引が行われているミサイル技術・部品の国際的ブラックマーケットやグレ ーマーケットも利用している。金正恩が権力の座につくまでは、北朝鮮のミサ イル計画は段階的に進んできた。ところが、金正恩が指導者に就任すると、計 画に拍車がかかり、米国本土に到達する可能性のある大陸間弾道ミサイル(I CBM)の実験も実施された。北朝鮮が固体燃料ミサイルの開発において確固 たる進歩を遂げていることも同様に懸念される。固体燃料ミサイルは、隠蔽や 迅速な発射が可能なので、攻撃手段としてより大きな柔軟性を持たせることが できる。 北朝鮮のミサイルの脅威は、現時点ですでに、韓国だけでなく日本、グアム、 ハワイにまで及んでおり、近い将来には、米国本土にも脅威を与える可能性が ある。その結果、北朝鮮の挑発の地理的範囲と影響力の大きさは、今や、伝統 的な標的であった韓国を大きく超えている。

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図上演習の概要

図上演習には、日米韓3カ国の、元政府当局者、自衛隊・軍の幹部、さらに有 識者・専門家が参加した。北東アジアにおける同盟や指揮系統の力を再現する ため、参加者は、在韓米軍/在ソウル米国大使館チーム、韓国チーム、米韓連 合軍チーム、在日米軍/在京米国大使館チーム、日本政府チーム、自衛隊チー ム、米太平洋軍/米国政府チームの7つのチームに分けられた。コントロール チームは、演習の実施、その結果の審査、北朝鮮、中国、ロシア、国連といっ たアクターの行動を決定する役割を果たした。全チームには、外交、情報、軍 事、経済各分野の一連の政策策定、実行が求められた。 参加者は一つの大きな会場に集まり、移動式の仕切りによってそれぞれのチー ムごとに分けられた。演習時は、非現実的なチーム同士の会話は原則として禁 止された。そのため、チーム間の意思疎通は、図上演習用に設置された電子メ ールシステムか、現実では地理的に離れているチーム同士の手段として想定さ れるビデオ会議(VTC)を模したものとして、差し向かいでの会合を通して 行われた。こうした演習の設計は、実際に有事が発生した際に3カ国政府間が 意思疎通を図る際に生じる摩擦を再現しようとしている。シナリオの結果につ いて出席者全員で議論が行われた際には、仕切りは取り払われた。 演習は2日半にわたって行われ、日ごとに異なるシナリオに基づいて実施され た。一日単位では同一のシナリオが使用された。演習開始時の状況を示すシナ リオの「実行」(“run”)、さらに「第一転換」(“first turn”) と、それに続く各チームの反応を反映した「第二転換」(“second tu rn”)で構成された。 初日、二日目の演習はそれぞれ、開始時点を「2018年5月1日」と設定し た。参加者は、設定情報として、平昌オリンピック終了後、朝鮮半島での緊張 が再び高まり、北朝鮮の核兵器や長距離ミサイル開発計画に関する問題の解決 策が明確には存在しない状況を与えられた。東シナ海、南シナ海での状況、さ らに日中、米中関係は安定しているものの、米国による主要な安全保障状況に 関する評価は、いずれも、中国との地政学的競争が激しくなることを予測する ものであった。

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図上演習の概要:第1日

(1)難民や亡命者が乗った3隻の北朝鮮の漁船が、秋田に向かって日本海を 東南東に航行している。亡命者のうち複数名が北朝鮮高官である可能性があ る。無名の非政府組織(NGO)に所属している韓国系米国人(男性)が1 名、そのうちの1隻に乗船しており、衛星電話を保持している。その米国人が CNNに電話をかけて助けを求め、直ちに世界中で大ニュースとなった。日本 海で通常哨戒飛行をしていた米国海軍のP-8哨戒機1機が、この難民船を発 見した。発見された漁船の位置は、韓国作戦地域(KTO)外で、日本の排他 的経済水域(EEZ)の中であった。 (2)北朝鮮のフリゲート2隻が、亡命者を同国に連れ戻すために派遣され る。亡命者を乗せた船のうちの1隻が、エンジン故障によって速度が落ち、フ リゲートに追いつかれそうになる。1隻の日本の漁船が、現場に到着し、エン ジンが故障した漁船から乗船者を移乗させ、彼らを収容して日本に連れて帰る ことに同意する。韓国海軍の駆逐艦と日本の海上自衛隊の艦艇が、乗船者を保 護するよう命令を受けて派遣される。 (3)米国の国家安全保障担当大統領補佐官の提案を受け、日米韓3カ国の外 相、国防相レベルの政府当局者、さらに軍の最高指揮官を加え、ビデオ会議で 「2プラス2プラス2」を開催することに合意した。この会議が、意見交換や 意思決定の調整に非常に有効であり、2日目も含めたそれ以降の図上演習で も、この枠組みが3カ国間の主な政策調整メカニズムとして用いられた。 (4)北朝鮮が4機のミグ戦闘機を緊急発進させ、現場に向かわせているとの 情報が入る。韓国空軍は2機のF-15戦闘機を緊急発進させた。(現場付近上 空を飛行中の)米海軍のP-8哨戒機は武装していないため、日本に駐留する 米第5空軍は、同機を護衛するため、F-16戦闘機とF-22戦闘機を派遣し た。米国、韓国、日本はそれぞれ独自に亡命者が乗船する船を護衛することを 決定し、日本は現場に向かっている海上保安庁の巡視船に亡命者を収容させる 計画を立案した。 (5)上空では、日本の漁船及び巡視船を護衛するため、あるいは北朝鮮のミ グ戦闘機を迎撃するために発進した、米海軍のP-8哨戒機、第5空軍のF-2 2戦闘機、韓国空軍のF-15戦闘機、さらに航空自衛隊の戦闘機2機が飛行

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13 しており、全機が概ね同じ空域に集まっている。ROE(交戦規定/部隊行動 基準)をめぐって問題が生じた。米国の戦闘機は、もし相手の敵対的な意図を 感知すれば交戦することが許されている。航空自衛隊の戦闘機は、より限定的 なROEに基づいて行動する。すなわち、自衛のために行動することはできる が、相手から攻撃された場合に限定される。韓国空軍は、敵対的行動に遭遇し た場合にのみ交戦が許される休戦協定ROEのもとで作戦行動をしている。 (6)北朝鮮のミグ戦闘機部隊は、機数、実力ともに劣勢にあることを認識 し、現場空域から離脱する。北朝鮮のフリゲートは、日韓両国の艦船による防 衛線を突破しようと試みるが、日韓両国艦船が警告射撃をしたため、これも現 場海域から離脱する。その間、亡命者たちは、乗って来た漁船から、日本の巡 視船に移乗する準備をすすめる。 (7)この地域に展開された、米国、日本、韓国の航空戦力、海軍艦艇の規模 を考えれば、対立は解決されたようにみえる(北朝鮮は知るよしもないが、米 海軍の原子力潜水艦も1隻、この海域にいる)。しかしながら、本国からの命 令に従って、北朝鮮側は行動をエスカレートさせ、ミグ戦闘機が急降下して機 銃掃射を行った。その結果、日本の民間人と亡命者に負傷者が出た。北朝鮮の フリゲートは、難民船を守っている韓国と日本の水上艦艇に魚雷を発射し、自 国に戻った。さらに、北朝鮮側は韓国と日本の艦船に対し、対艦巡航ミサイル (ASCM)を数発発射した。そのうち魚雷1本が日本の艦艇に命中し、巡航 ミサイル1発も韓国艦艇に命中した。同じ頃、黄海/西海で北朝鮮は、数隻の 日本漁船を拿捕、乗組員を違法操業の容疑で逮捕した。 (8)北朝鮮の攻撃を受けて、韓国軍は、北朝鮮のミグ戦闘機と交戦する命令 を受けた。しかし、米空軍の戦闘機がすぐに追いつき、4機をすべて撃墜し た。日本の自衛隊も、護衛艦が攻撃された後、北朝鮮のフリゲートと交戦する 許可を与えられたが、任務を遂行できる場所にいなかった。韓国も自国軍に、 北朝鮮のフリゲートと交戦する許可を与えた。しかし、米海軍の潜水艦が攻撃 できる場所におり、魚雷を発射、北朝鮮のフリゲートを2隻とも撃沈した。 (9)結論 このシナリオは、北朝鮮が東海岸の港から、潜水艦を発進させたことで終わ り、日本の漁民は依然として北朝鮮に身柄を拘束されており、金正恩は復讐を 誓う。

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図上演習の概要:第2日

第2日に使用するシナリオの開始時期は、第1日と同様、2018年5月1日 である。参加者は、第1日のシナリオの下で起きた全ての出来事は、第2日に 適用されないとの指示を受ける。 (1)北朝鮮は、米韓、日米両同盟に溝を作り、弱体化を試みる。北朝鮮は、 自国の潜水艦に、韓国海軍と自衛隊の水上艦艇を攻撃するよう命令を下す。北 朝鮮は必要となれば事態をエスカレートさせる用意をするが、朝鮮半島での全 面戦争は避けたい考えである。北朝鮮は、在韓米軍や韓国軍が「韓国に対する 大規模攻撃の準備」と解釈するような、非武装地帯沿いに展開する部隊の即応 性を高める措置は何も取っていない。 (2)ロナルド・レーガン空母打撃群は釜山港と鎮海に所在する。日本の海上 保安庁の巡視船は、海上自衛隊の護衛艦とともに、本州の日本海沖で発見され た不審船を調査している。巡視船は、魚雷によるものと判断される攻撃を受け た。ほぼ同時に、鎮海港の沖合で作戦行動をしている韓国海軍のフリゲート も、魚雷攻撃を受けたと報告した。 (3)攻撃源については、北朝鮮が「自国の潜水艦2隻が最初に攻撃を受けた ため、自衛のために反撃した」と発表したことから、明らかになった。北朝鮮 の要求は、日本が敵対的な姿勢をやめること、韓国が米韓合同演習をやめるこ とを、そして米国が日韓両国から(駐留する)軍隊を撤退することであり、そ れが満たされない場合は、核兵器使用の可能性を含む大惨事がもたらされると 警告している。 (4)釜山へ向かっていた商業タンカーが、何らかの攻撃をうけて爆発し、原 因は機雷ではないかと疑われた。続いて、他の機雷も釜山の近くで発見され た。釜山と鎮海にいる米海軍部隊は、北朝鮮の潜水艦が掃討され、周辺海域の 機雷掃海が終了するまで出撃を遅らせる。韓国軍は、釜山と鎮海への水路を掃 海するため、対潜戦と機雷掃海の部隊を派遣する。魚雷攻撃をうけた日本の巡 視船は、沈没は免れたものの、20人が死亡した。韓国軍のフリゲートも沈没 はしなかったが、多数の死者と行方不明者が出た。韓国軍による機雷掃海作戦 は成功し、レーガン空母打撃群は、韓国の港を出港する。米国は、正当な理由 なく攻撃したことに対して、同盟国を支援する姿勢を明らかにする。巡視船攻

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15 撃への対応として、日本政府は、韓国、米国との緊密な協力を誓約する。 (5)ワシントン、ニューヨーク、そして東京近郊を赤い丸で囲んだ明らかな 攻撃目標地図を金正恩が検討している様子を映した映像が、テレビニュースで 放映される。核攻撃をほのめかすことで、米国の介入を抑止し、日本国民を怖 がらせるための試みである。米太平洋軍は、日本とグアムに駐留するすべての 米海軍部隊に対して、出港できる部隊に出港を下命する。在日米軍は、最高レ ベルの警戒態勢に入った。また、日本の弾道ミサイル防衛(BMD)統合任務 部隊が始動した。3カ国の情報機関は、北朝鮮の潜水艦部隊が母港を出たとの 情報を伝える。 (6)日米韓3カ国の外相、国防相レベルの政府当局者、さらに軍隊の最高指 揮官が参加する「2プラス2プラス2」調整グループが開催され、調整、軍相 互の衝突防止、選択肢の協議を行った。3カ国は、北朝鮮の魚雷攻撃に対して は報復しないことを決定する。その代わりに、3カ国はそれぞれの対潜戦部隊 に北朝鮮の潜水艦部隊を捜索し、発見したら攻撃するよう命令する。 (7)韓国では、米韓両軍が、過度に挑発して北朝鮮を攻撃に走らせないよう 慎重になっている。両軍は、冷静にミサイル防衛部隊などの即応性態勢を上げ ているが、非武装地帯(DMZ)に向けた動きは一切行われておらず、防衛準 備態勢(DEFCON)も公式には引き上げていない。 (8)時間が経過し、金正恩が姿を消した。北朝鮮は国境を封鎖し、外国の外 交官を国外に退去させる。政治的な要求が受け入れられなかったうえ、日韓の 艦艇への魚雷攻撃、釜山港周辺での機雷敷設に対する反撃がなかったため、北 朝鮮は追加の挑発行為として、4発の通常弾頭の弾道ミサイルを在日米軍基地 に、さらに4発を在韓米軍基地に発射する。そのうち何発かは撃墜されたが、 残りは日本と韓国の米軍基地周辺に着弾し、米軍人と、日韓の民間人に死傷者 が出る。この攻撃は、日韓両国で大混乱を引き起こす。 (9)米国と日本は、自国民に韓国を離れるよう求める警告を発すると決定す る。そのような警告は、自国民を恐怖で動揺させたくない韓国政府と自国民保 護を求める日米との間で、深刻な意見の不一致を生じさせた。中国はすべての 関係各国に冷静な対応を促す。日米韓3カ国は、国連安全保障理事会の臨時会 合を開くよう要請する。韓国では、米韓連合軍司令部が戦時態勢となり、警戒 レベルは防衛準備態勢(DEFCON)3に引き上げられる。

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16 (10)日米韓3カ国は報復をめぐって長時間の議論を行う。北朝鮮の核の脅 威に直面していることを考えれば、どのような報復も危険過ぎるのではないか という意見も出た。最終的に、各国は協調したアプローチをとることを決定す る。米国は、北朝鮮のミサイル発射場と疑われる場所およびSA-5長距離地 対空ミサイル(SAM)の発射台にトマホーク巡航ミサイルによる限定的攻撃 を実施する。一方、韓国軍は、北朝鮮のミサイル発射場3カ所に限定的なミサ イル攻撃をかける。日本には北朝鮮に反撃する能力がないので、トマホークミ サイルを発射している米海軍艦艇を護衛するために、海上自衛隊の艦艇に危険 な海域を航行させ、米国の行動に対する明確な支援を実施する。3カ国は緊密 な協力を続け、単独行動はとらないことを誓約する。韓国は米国と日本からの 非戦闘員退避活動(NEO)を始めたいという要求にようやく同意したが、韓 国政府は、自衛隊の艦艇や航空機がNEOの支援のため韓国領土内に入ること には否定的である。 (11)北朝鮮は、小笠原諸島に属する日本最南端の無人島、沖ノ鳥島の周辺 半径80海里に水路通報・航行警報を発した。その後、間もなく、沖ノ鳥島上 空で、10キロトン規模と推定される核の空中爆発が起きる。日本人の死者は 出ず、放射性物質を含んだ煙は、風に吹かれて無人の海に飛散した。 (12)北朝鮮は核実験の実施を周知し、日本政府に対して、北朝鮮への敵対 的な姿勢をやめ、日本国内の基地から米軍を撤退させるよう、再度要求し、日 本が核攻撃を受ける可能性を示した。韓国政府に対しても、核攻撃の可能性を 示して、米国との合同軍事演習を止めるよう、要求を突きつける。米国政府に も、朝鮮戦争を終結させる平和条約の交渉に入るとともに北朝鮮を核保有国と 認めるよう求める。 (結論)世界は北朝鮮の核実験に呆然とした。米国、日本、韓国はどうするの か。中国とロシアは、金正恩政権について「もうたくさんだ」と結論を下すの だろうか。図上演習のシナリオに基づいた演習はここで終了し、最終段階での 展開に関する議論やシナリオの結果を振り返って検討が行われた。

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図上演習に関する分析:政策レベル

3カ国間調整は成功した ・ 最初のシナリオは、日本海の、しかも韓国の作戦戦域(KTO)外の東側 海域で発生したうえ、日米韓3カ国の艦船や航空機はすべて、難民船の航 続距離の範囲内にいたので、3カ国の政府は即座に相互調整の必要性を認 識できた。北朝鮮の挑発は、確立されている米国の指揮権の枠組みに制限 されず、日本海の水上、水面下、あるいは上空での北朝鮮の作戦行動を含 む。 ・ 米国の図上演習チームは、3カ国の外相、国防相レベルの政府当局者、さ らに軍の最高指揮官が参加する「2プラス2プラス2」会議を組織した。 3カ国の外相が会合を先導し、軍や国防省の代表は、軍事的選択肢を提供 した。この会議は、3カ国間の効率的な、協議、計画そして調整行動を生 み出した。北朝鮮は、3カ国間の政策の差異につけ込み、利用することは できなかった。 ・ 韓国と日本は、政策や軍事的選択肢を議論するうえで、米国が仲介者とし て介在しなくても、直接協議した。米国は、日本や韓国に情報を与えた り、米国の一方的な決定を受け入れるよう説得したりするのではなく、日 韓両国をパートナーとして協議した。3カ国の代表は、それぞれに政策の 選好や構想を持って「2プラス2プラス2」に臨んでいたが、すべての国 の代表が、最終的な政策決定の前に他国の意見に耳を傾けた。この会合で 下された最終的な決定は、北朝鮮に対抗するための一致した政策・行動を 築こうという強い意志によって、推し進められた。 ・ 「2プラス2プラス2」は、その場ですべての国がそれぞれの軍(特に、 一瞬の判断が要求される戦闘機)に朝鮮半島危機においてどのように行動 を許可するか、ROE(交戦規定/部隊行動基準)を協議する一種のメカニ ズムになり得る。図上演習の1日目には、米軍が敵対的な意図に対して行 動をとることが許された一方で、自衛隊と韓国軍は、敵対的な行動への対 処としてのみ武力行使が許されたため、攻撃されることを待たなければな らなかった。

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18 ・ 図上演習の期間を通じて、3カ国間の協力が進展するにつれ、軍事面と政 策面の決定がすぐに束ねられるようになり、一つの調整された対応が迅速 に出来上がっていった。3カ国間に時差はあるものの、最高水準の機密テ レビ会議設備の信頼性のおかげで、図上演習の会場で会議を開くのと同じ ようにして、現実においても3カ国協議が可能となっている。 日本の新しい防衛政策は重要であることが示された ・ 米韓の演習参加者は、北朝鮮の挑発に対処するに当たり、日本が新たな政 策と能力によって、より対等なパートナーとして作戦に参加することが可 能となったことを学んだ。自衛隊は、集団的自衛権を行使する能力を有し ているだけでなく、実際に計画を立案、決定し、さらに決定された政策を 実行することができることを実証した。日本は、3カ国協力の実効性と抑 止力を高めるために、自衛隊を活用する政治的度量と軍事的能力を持つ。 ・ 図上演習は、日本海の東側海域における日本の海上および航空防勢作戦の 重要性を明らかに示した。北朝鮮の挑発に対する米国と韓国の対応に日本 が支援を提供し、さらに、朝鮮国連軍(UNC)に対しても後方支援を自 ら提供する、より確固たる意図を示したことで、紛争を想定したシナリオ において日本はより対等なパートナーとなった。演習の際、海上自衛隊の 艦艇を攻撃し現場から離脱しようとする北朝鮮のフリゲートに対して、自 衛隊は率先して砲火を浴びせようとしたが、実際の攻撃は、戦術的により 都合の良い位置に展開していた米国の潜水艦が行った。 ・ 韓国政府はこれまで、日本の自衛隊が韓国の作戦戦域(KTO)内で、集 団的自衛権を行使して行動することに反対してきた。しかし、本図上演習 においては、韓国チームは、この地理的線引きにそれほど強い懸念を持た なかった(ただし、以下に説明する非戦闘員退避活動(NEO)は除く)。 演習の2日目、北朝鮮は、韓国のフリゲートと日本の巡視船に攻撃を仕掛 けた後、潜水艦を港から発進させた。3カ国すべては、日本海のどの海域 で北朝鮮の潜水艦を探知しても攻撃できるよう、対潜戦(ASW)作戦を 開始した。演習は戦術レベルの詳細にまではふれなかったが、各チーム は、地理的な位置よりも任務や能力に基づいて、それぞれの取り組みを進 んで調整した。海上自衛隊は、世界の中でも優れた対潜戦能力を有してお り、危機や紛争で北朝鮮の潜水艦に対抗するにあたり極めて重要な貢献が

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19 できる。航空自衛隊の航空戦力も、日本上空の航空優勢確保に重要な貢献 ができる。 ・ 北朝鮮が弾道ミサイル搭載潜水艦の開発を進めているため、日本海におけ る、日韓2国間、日米韓3カ国間の対潜戦協力の重要性は拡大している。 北朝鮮は、射程650海里の固体燃料型KN-11シリーズの弾道ミサイ ルを1〜2機搭載できるディーゼル駆動潜水艦を1隻以上配備しようとし ている。北朝鮮東海岸の新浦を母港とすることから、日本海が北朝鮮の潜 水艦にとってもっとも蓋然性の高い作戦海域となるだろう。海上から発射 されたKN-11ミサイルは、日本あるいは韓国に、異なる方角から接近 し得るため、現在配備されている弾頭ミサイル防衛(BMD)システムで 迎撃することはより困難になる。 朝鮮半島危機の際の非戦闘員退避活動(NEO)は問題を含む ・ 韓国からのNEOの計画や演習は、長年、米韓両国の安全保障担当当局者 に難題を提起し続けてきた。基本的な問題が2つある。(1)韓国に居住し たり、旅行で訪れたりしている米国人や第3国の国民の数が膨大であるこ と。(2)韓国から民間人を退避させることが、北朝鮮に対して、米国と韓 国の軍が攻撃準備をしているというシグナルになり得ること。北朝鮮が現 在配備している弾道ミサイルは、韓国国内の深くまで到達でき、NEO問 題を一層難しくしている。紛争の最中に日本の民間人を韓国から退避させ ることについては、最近3カ国で検討され始めているが、問題の構造がよ り複雑である。いかなるNEOでも、退避した民間人に対して一時的な避 難場所を提供することを含め、日本は主要な役割を果たすので、非常に重 要な問題である。 ・ 米国と日本の政府は、それぞれの国民を保護する責任を負っている。現在 の米太平洋軍司令官は、最近の議会証言で、NEOの範囲を説明した。ど の時点をとっても、米国人約20万人、日本人6万人、そして中国人10 0万人が韓国に居住しているか、訪問している。したがって中国は米国、 日本など、韓国内に自国民がいる他のどの国々とも、自国民の退避につい て調整することに強い利益を見出すことになる。ある元米国当局者がこの 図上演習で語ったように、任務の重要性を考えれば、「ただ座って砲撃の開 始を待つ大使はいない」。

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20 ・ 図上演習の間、日本や米国チームが、米韓連合軍司令部(CFC)が初動 開始する前の段階で、韓国在留の自国民に対して自発的な出国を促し、そ れに引き続き退避命令を発出したことに対して、韓国チームは次第に懸念 を深めていった。喫緊の現状は、長い間安全な退避先と考えられてきた日 本が、今や攻撃目標ともなりうるというように、NEOに関する長年の想 定をも変化させてしまっている。 ・ 図上演習の間、日本は航空自衛隊の人員および装備を、NEOに使用した いと考えたが、韓国が自国領土内に自衛隊が入ることを許可しなかった。 日本は相当数の民間航空機とフェリーを保有しているが、過去の経験に鑑 みれば、民間の輸送手段を潜在的な戦争地域に送り込もうとする企図は、 政治的な問題に直面するだろう。日本政府は、いかにして民間の輸送資源 を最も有効に活用するかを熟考する必要がある。同時に韓国は、危機への 対応を計画するにあたり、柔軟性を今以上に見せる必要がある。実際の緊 急事態では、民間、軍を問わず、多数の艦船や航空機が必要となる。今後 に向けた一つの可能性としては、老人、子供、病人など韓国の民間人の中 でも特に助けを必要とする人々に対しての緊急時避難場所を日本が提供す ることについて、日韓両政府で議論を始めることだ。このような対話は韓 国側に、民間人ための退避計画を検討する、より強い動機提供するだろ う。 ・ 中国とロシアが朝鮮半島での危機に際し、おそらくそれぞれ独自のNEO を展開すると思われるが、両国は、米国人、日本人、さらに他の外国人に 対し、最も迅速で、効率的な韓国からの避難ルートを提供すると申し出る かもしれない。本図上演習では、朝鮮半島での戦争が差し迫った場合、数 千人のロシア人、さらに100万人の中国人を退避させる必要性が、どの ような影響を及ぼすかについては検討されなかった。 紛争が起きそうな場合、米国と連合司令部の指揮関係は、日韓両国を直接的に 巻き込む ・ 過去何十年にわたり、北東アジア地域で戦争が生じた場合の米軍の指揮関 係は、二つの指揮系統を有してきた。朝鮮半島で紛争が起きた場合には、 米韓連合軍司令部が指揮にあたる。同司令部は、米国の統合参謀本部議長 を通じて、米国防長官に直接報告する。また、韓国合同参謀本部議長を通

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21 じて、韓国の国防大臣にも直接報告する。米太平洋軍は支援軍となる。日 本に対する侵略があった場合には、太平洋軍が、自衛隊とともに作戦行動 を実施する一方で、隷下の米軍部隊に対し、日米安全保障条約で保障する 日本防衛の義務を果たすよう、命令する。 ・ 北朝鮮による長距離ミサイルの開発は、本格的な戦争のレベルには達しな い挑発を加えるだけでなく、この二つの指揮命令系統を断絶する可能性が ある。まさにそのような事態が図上演習で起きた。加えて、北朝鮮の軍事 的挑発は、平時と紛争との境界をあいまいにする。米韓連合軍司令部の司 令官は、戦争には至らない挑発が起きた場合、米軍や韓国軍を指揮しない が、司令官は、米国と韓国双方の国家指導権限者に助言し、事態がエスカ レートした場合に備えて計画を準備し、さらに、太平洋軍司令官に常に情 報を伝えるという責任がある。同時に、米韓連合軍司令官は、北朝鮮の挑 発への対応として、挑発対応計画と韓国(と米国)の報復行動を立案する うえで、韓国合同参謀本部議長と緊密に調整する。その間、米太平洋軍司 令官は、北朝鮮の挑発に対する米国としての対応を計画し実行するととも に、日本の自衛隊の代表と日米合同での対応と作戦を実施するための調整 する責任がある。 ・ このように絶えず変化する連携関係では、米韓連合軍司令官、太平洋軍司 令官、統合参謀本部議長、さらに隷下の第7艦隊、第5、第7空軍、在日 米陸軍といった部隊の司令官の間で、頻繁な協議と柔軟性が必要される。 米太平軍の軍種別構成部隊司令官である、米太平洋艦隊司令官、太平洋空 軍司令官、太平洋陸軍司令官も、前方展開部隊を支援するというそれぞれ の主要な責任に基づいて、情報が与えられ、協議されなければならない。 このような調整のレベルは、米国の複雑な防衛体制の中では、特異なもの ではないが、北朝鮮による挑発と潜在的な紛争を前にした場合、厳しい時 間的および空間的プレッシャーに直面することになる。 ・ 図上演習の間、協議は絶え間なく速やかに行われた。米韓連合軍司令官と 米太平洋軍司令官は、緊密に意見交換し、北朝鮮の挑発への対応計画を立 案し、統合参謀本部議長に提出した。統参議長が承認し、国家の最高司令 官である大統領から政治的な許可が得られた後、3カ国間の「2プラス2 プラス2」の場で、韓国と日本の代表に計画が提示された。 ・ この図上演習のシナリオは、2本ともに全面戦争までには拡大しなかった

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22 が、朝鮮半島の紛争が、弾道ミサイル防衛、日本海での対潜戦、サイバー 作戦の3分野で、米韓連合軍(CFC)の地理的担当区域を超えて拡大す る可能性を明らかにした。この3分野では、米太平洋軍、米戦略軍、米北 方軍、米サイバー軍の間の支援/被支援関係の組み合わせ、並びに日本と の調整が、有効な軍事作戦のためには必要となる。そのような連携は、米 国防総省内では良く理解されているが、その有効性を維持するためには、 繰り返しの演習や更新が必要である。 ・ 朝鮮半島で紛争が起きた場合、米韓連合軍の海軍構成部隊司令官を務め る、米第7艦隊司令官の役割は緊張感を伴う。図上演習中に問題となり、 実際の状況でも起こりうるのは、司令官やその隷下にある大部分の前方展 開部隊が、朝鮮半島作戦に移動した場合、インド洋まで伸びている作戦担 当地域(AOR)の他の海域に対する責任をどのようにして果たすのかと いうことだ。台湾や南シナ海近辺で紛争が起きた場合、太平洋軍には、前 方展開できる海軍の指揮官と部隊が必要となる。 ・ 最後に、あらゆる朝鮮半島での挑発あるいは全面戦争のシナリオにおい て、日本の自衛隊は、従来の国連軍の枠組みを超える、米軍や韓国軍との 正式な関係が構築されておらず、またそのようなことはほとんど演練され たり、実施されたりしていない。図上演習の参加者は、その場で一時的な つながりを構築したが、そのような関係を公式化し、訓練する必要があ る。さらに、日本の指揮概念は、集団的自衛権を使えるようになったとい う事実変更に対してまだ追いついていない。追加的に、日本チームから は、朝鮮半島挑発シナリオの最中でも、自衛隊は東シナ海での中国の軍事 行動や、北方のロシアの軍事行動に責任を持たなくてはならないというこ とが指摘された。 北朝鮮の大気圏内核爆発に釣り合った形で対応する ・ 図上演習では、北朝鮮の核爆発実行に対して、3カ国が足並みをそろえて 対応するように意見の一致を図ることまでは求められなかった。その代わ りに、各チームは、それぞれの国の立場からどのような対応をとりうるか を議論し、その上で、全体討論に参加するよう求められた。チーム間の事 前協議がなかったのにも関わらず、参加者は、最終的な対応を決定する際 に重要ないくつもの点について同じ立場をとった。

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23 ・ 北朝鮮からの各国への要求を拒否することについて、非常に明確な意見の 一致がみられた。北朝鮮は日本に対して、敵対的な姿勢をやめ、米軍の日 本国内の基地からの行動を許さないことを要求。韓国に対しては、米韓合 同軍事演習をやめること、そして米国に対しては、朝鮮戦争に終止符を打 つ平和条約の交渉を始め、北朝鮮を核保有国として認める要求だった。要 するに、同盟は強固であり、北朝鮮の核を用いた脅迫には屈しないという ことが証明された。 ・ 米国の図上演習参加者は、北朝鮮の大気圏内核爆発実施が、危機を孕む極 めて挑発的な行為であり、米国の拡大抑止の信頼性に対する直接のテスト であることをよく理解していた。米国参加者は、(演習中追加的にコントロ ールチームからの情報があったように)朝鮮半島での戦争、とりわけ米国 民の血が流れていないのに米国の核兵器使用が見込まれることを米国世論 が支持しないという事実を考慮した。また、米国チームは、いかなる対応 を選択しようと、北朝鮮が次の一手を打つことも理解していた。このた め、「それで次はどうなる?」という、大統領から必ず尋ねられるであろう 質問に対する答えを考えるためには、時間が必要だった。 ・ 米国は、北朝鮮の核爆発に対して、いくつかの威圧的な反応を検討した。 しかし、最終的な行動方針の決定には至らなかったし、図上演習でも求め られなかった。重要なことは、米国やほかの演習参加チームが、どのよう な行動方針も、互いに矛盾するものではないと理解していたことだ。 ・ 北朝鮮の弾道ミサイルと核の能力をできる限り破壊することを狙った、大 規模な航空機とミサイルによる攻撃が検討された。実際にこの作戦を実行 しようとすれば、1回だけの短い攻撃では不十分のため、数日間にわたっ て作戦を継続することがほぼ確実に必要となる。韓国チームは、空からの 通常兵器による攻撃では、どのようなものであっても、北朝鮮の能力の2 5%は破壊されずに残ると見積もっているため、決定的な手段となるかど うか懐疑的だった。それでも、韓国チームの何人かは、この行動方針を支 持し、その中の一人は、平壤は北朝鮮の重心なので、もしそこを攻撃しな ければ金正恩は報復しないかもしれないと意見を述べた。日本チームはこ の選択肢について、明確に立場をとるまでには至らなかった。しかし、演 習の初期の段階では、日本に対する非核ミサイルによる攻撃への報復とし ての、通常兵器による北朝鮮への攻撃を支持していた。

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24 ・ 3カ国のうちどの国も、人的被害のなかった核爆発への対応として、金正 恩政権を転覆させるために通常兵器による全面戦争を始めることは、支持 しなかった。3カ国の参加者たちは、このような対応をとった場合、北朝 鮮が3カ国による政権転覆の試みであると見なす恐れがあり、通常兵器と 大量破壊兵器の両方を韓国や日本、さらには両国に駐留する米軍に使用す ることが予想され、リスクが高すぎると判断した。 ・ 3カ国のチームは、米国主導の包括的な航空、海上封鎖を検討した。韓国 チームはそのような作戦を支持した。しかし、日本チームは、集団的自衛 権を行使できるようになってもなお、日本が封鎖作戦に参加できるかどう か、確信をもって判断することができなかった。 ・ 3カ国のチームはすべて、有効な封鎖のためには、中国とロシアの参加が 必要であることを認識した。図上演習は、この提案が試される段階にまで は進まなかったが、このような選択肢を今後のTTXで検討する価値はあ るだろう。北朝鮮をインターネットやサイバーに関連したすべての経済活 動から孤立させることを狙った、全面的なサイバー封鎖も提案された。米 国、日本、そして韓国の3カ国はすべて、北朝鮮の核爆発に対応する、二 つの核の選択肢を拒否した。米国チームは、米国自ら核攻撃を実施すると いう選択肢を直ちに拒否し、日本、韓国も同意した。北朝鮮には、米国が 保有する核兵器の信頼性を疑う理由がない。核兵器を試しに使ってみせる ことは、金正恩を脅すことになるかも知れないが、それによって、世界の 非難の矛先を北朝鮮から米国に転じてしまうかも知れないうえ、米国を抑 止するために核兵器を保有し続けるという北朝鮮の主張に裏付けを与えて しまうことになる。 ・ 北朝鮮の核爆発が無人島上空で行われたことに対して、参加国は一致し て、北朝鮮に対する大規模な核攻撃を拒否した。それに加えて、米国の核 攻撃が生み出す放射性降下物は、韓国と日本、さらに中国をも危険にさら す恐れがある。実際、日韓両国は、北朝鮮による大気圏内の核実験に対す る米国の核兵器を用いた反撃には、それがいかなる形であっても強く反対 した。 ・ しかし、北朝鮮が人の居住地域で核兵器を使用した場合、それが韓国であ っても日本であっても、米国は北朝鮮の核と通常兵器による攻撃能力を破 壊するため報復攻撃を実行すべきだという点において、3カ国のチームの

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25 意見は一致した。このコンセンサスは、2018 年の「核態勢の見直し(NP R)に明言されているアメリカ政府公式の政策を反映している。 「北朝鮮に対する我々の抑止戦略は明確だ。米国あるいは同盟国に対するいか なる核攻撃も容認せず、北朝鮮の政権の終焉に帰することになる。金政権が、 核兵器を使用して、生き残れるシナリオはない」

Nuclear Posture Review, 2018: Page 33

・ 日本と韓国のチームはともに、北朝鮮の核兵器の使用によって、両国内で 継続的に展開されている核に関する非公式の議論を激化させるだろうと述 べた。日本の場合は、非核三原則の実行可能性であり、韓国の場合は、米 国の拡大抑止に全面的に依存することの是非についてである。日本チーム は、今後も非核保有国であり続けることを、日本にとって最良の道だとし て支持した。それは、いみじくも韓国チームの一人が「もし日本が核兵器 を入手したら、我々はその翌日に入手する」と意見を述べたように、日本 は、核兵器を保持することと引き替えに最も多くを失うことになるから だ。 ・ 韓国チームは、戦術核兵器の韓国内への再配備を支持すると示唆した。注 目に値するのは、2017年11月16日、米空軍核兵器センターが、性 能を向上させたB61-12核爆弾の最初の試験を終了したと公表したこ とだ。この核爆弾は、核と通常兵器の両方を搭載可能なF-15およびF-35A戦闘機で投下できる。オバマ政権時代の「核態勢の見直し」には、 そのような能力について明確な規定がある。 北朝鮮の挑発的、威圧的あるいは高圧的動向は、核兵器の保有でさらに悪化す るのか? ・ 北朝鮮が、攻撃目標に到達可能な核兵器を保有することにより、自らが採 った威圧的行動に対する報復から免れることが出来ると北朝鮮が確信に至 った場合、より大胆な行動をとり得るだろうという懸念が、米国チームの 中で重要な議題として挙がった。しかし、図上演習ではそうはならなかっ た。米国と韓国は、北朝鮮の通常弾頭を搭載した弾道ミサイルによる攻撃 に対して報復に出た。それが、北朝鮮の核攻撃実施につながったが、一方 で、北朝鮮は、非武装地帯を超えて攻撃する準備をしているわけではない

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26 との信号を送る慎重な行動を見せた。 ・ 北朝鮮の常軌を逸した多くの挑発は、核兵器を保有する以前の数十年の間 にも起きている。韓国と米国は時々、そうした挑発を無視しており、一例 としては、2010年に北朝鮮が撃沈し46人の犠牲者を出した韓国海軍 コルベット「天安」沈没事件が挙げられる。他の例では、例えば1972 年に、非武装地帯で米陸軍士官2人が北朝鮮側兵士に斧で殺された「ポプ ラのまさかり事件」があり、これに対しては、米韓が北朝鮮に軍事力を見 せつけることによって対応した。この決定に加わった参加者によると、韓 国と米国の指導者の間では、常に全面戦争に拡大する懸念があったとい う。ソウルが北朝鮮の重砲の射程内にあるという地理的な前提は、北朝鮮 の核兵器開発の有無に関わらず変わることはない。 ・ 北朝鮮が現在、核兵器で日本を攻撃できる能力を持っていることと、潜在 的には将来、米国をも攻撃可能となることで、北朝鮮のリスク算出法が変 わるかもしれない。北朝鮮の指導部は、報復されることなく日本や、前方 展開している米軍に対する挑発が可能で、政治的優位に立ったり、実質的 な譲歩を得たりすることができると計算しているかもしれない。しかし、 図上演習では、北朝鮮による挑発への反応として、譲歩を検討したチーム はひとつもなかった。実際、3カ国のチームはすべて、北朝鮮による韓国 および日本国内に所在する米軍基地に対するミサイル攻撃への対応とし て、航空機やミサイルを用いた北朝鮮のミサイルシステムへの核を用いな い空爆を支持した。

その他の分析

緊張の緩和と武力衝突の終息を追求せよ 図上演習のなかで発生した北朝鮮による攻撃はすべて、法的には戦争行為と定 義されるもので、米国と韓国が、日本の支持も得て、戦闘状態と宣言すること を正当化できるものだった。そのような攻撃には、海上自衛隊、海上保安庁と 韓国の海軍や沿岸警備隊の艦船に対する魚雷攻撃や、米国人と受け入れ国の国 民に死傷者を出すことになった日本および韓国国内に所在する米軍基地に対す るミサイル攻撃、人が居住しない日本の島に対する核攻撃が含まれる。これら

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27 すべての事例で、3カ国を代表する参加者は、全面的な交戦状態を自ら始めよ うとはしなかった。その代わりに、北朝鮮の挑発を終わらせ、危機の緊張を引 き下げるための政策や行動を作ろうと試みた。北朝鮮に対しては、全面戦争を 始める意図はないと伝わるよう注意した。北朝鮮は、軍事的な準備が、非武装 地帯を超えた全面的な地上攻撃を狙ったものではないことを明確にした。双方 が全面戦争の危険性は低いことを確信したため、危機は挑発と反「挑発」のレ ベルでとどまった。実際の世界では、双方が全面戦争の危険性は低いと確信を 持つに至ることができるか明白ではない。どちらか一方による全面的な防衛準 備が、攻撃の準備だと解釈され、先制攻撃や、意図しない戦争の開始をさせて しまうような圧力につながる可能性もある。 各国ごとに異なるROE(交戦規定/部隊行動基準)は戦術的不利益をもたら す 避難民シナリオの中で、避難民が乗船した漁船を護衛した、米国、日本および 韓国の艦艇および航空機は、いずれも北朝鮮の艦艇や戦闘機と対峙した。米軍 は、北朝鮮軍の敵対的な意思表示に対して発砲することが認められていたが、 自衛隊と韓国軍は、北朝鮮軍が実際に敵対的な行動を取った後に初めて発砲が 許された。このシナリオでは――現実もそうなる可能性があるが――北朝鮮軍 は3カ国すべての軍に対して発砲する命令を受けており、日本と韓国のより限 定的なROEは自衛隊と韓国軍を、戦術的に不利な立場に置いた。 共通作戦状況図(COP)が必要 大縮尺地図や全般的な兵力配置図は、閣僚レベルの演習参加者が、政策を決定 したり、行動方針を選択したりするには十分だった。しかし、戦術レベルで は、参加3カ国の艦艇および航空機にとって、北朝鮮からの航空、海上におけ る脅威に立ち向かうためには、正確で迅速に更新される共通作戦状況図(CO P)が必要だ。過去数年にわたり、日米韓3カ国はLink16や他のシステ ムを使って、協同作戦のために航空、海洋状況把握に努めた。本図上演習シナ リオの要求基準を満たすのに十分な早さと効率で、3カ国の戦術用の共通作戦 状況図ができるのかどうかは定かではない。 3カ国及び2カ国の協議は、二つの例外を除いて良く機能した 日本の指導者は長年にわたって、米国が西太平洋において二つの別立ての指揮

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28 系統を持っていることで、日本は、事態の推移や、北朝鮮の挑発や紛争に対応 する米韓の計画や行動に関する情報を得られない結果を招くのではないかと懸 念してきた。しかし、この図上演習では、日本チームは3カ国調整に深く関与 し、北朝鮮の行動や米韓の計画について、十分に情報を得ることができたと実 感できた。実際、演習の全体を通じて、日韓両チームはよく調整ができてい た。2件の例外は、まず、航空自衛隊の航空機が、韓国での非戦闘員退避活動 (NEO)に参加した時であり、もう1件は、自衛隊の連絡官を米韓連合軍司 令部に配置するよう求めた時だった。後者については、演習での議論の結果、 両国間で事前に、別途、合意しておくことが可能だとされた。 日本海が重要な海域になり、紛争の可能性を大きくしている 図上演習のシナリオで、関係する6カ国(米国、日本、韓国、北朝鮮、ロシ ア、そして潜在的に中国も含む)の潜水艦が、日本海海域で同時に作戦行動を していることもありうるという状況を思い起こさせた。演習では、そのうち4 か国の海軍の水上艦艇と哨戒機が、当該海域で作戦行動をとっていた。緊張が 高まっている際には、ソナーによる追跡や、潜望鏡での目視探知に起因する軍 事衝突が起きる可能性も高い。

提言

日米韓3カ国の間で、直接会談やビデオ会議を通じたハイレベルの「2プラス 2プラス2」調整メカニズムを設立し、実施する ・ 現在、日米韓の間には、数多くの3カ国会議があるが、北朝鮮の挑発に対 応するためには、常設で運用に慣熟している3カ国間メカニズムが必要で ある。直ちに招集でき、過去に一緒に働いた経験のある、各国の政府高官 および軍の最高指揮官が参加するものだ。現在、韓国は、その時々の政治 的配慮から、こうした3カ国間の会議への参加を拒否することもある。 ・ 日本と米国との間にある同盟調整メカニズム(ACM)は、そのような3 カ国間の協議プロセスを構築するに当たって一つのモデルとなる。ACM は一般的に安全が確保されたテレビ会議(VTC)を使って行われる。出 席者は、協議される問題の性格や広がりによって変わる。多くの場合、両 国のNSC(国家安全保障会議)、および国防総省/防衛省、国務省/外務

参照

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