C A N C ER 7
(1
998), p.33-44 33境港市におけるべニズワイガニの
水揚げ‘
と加工産業
本 尾 洋 ・ 山 本 達 雄
ベニズワイガニChionoecetes japonicus
はクモガ ニ科に属する日本近海特産の重要食用蟹である . 日本海におけるその年間漁獲量は近縁種ズワイガ ニの 2 ,798 トンをはるかに凌ぎ, 24 ,584 トンに達 している( 農林水産省統計情報部, 1997). 一方, 本種はその味がズワイガニに比べて やや落 ち,肉 質が水 っぽくて身入りがいま ーっ とされ,味覚上 さほど高い評価i
を受けてはいない . そのためか市 場に姿のまま生鮮あるいは茄でて出荷されること は量的に少なく ,そのほとんどは水揚げ後直ちに 加工工場に運 ばれ,そこ で抜き身加工されて,殻 部分の無い形で流通 に回 っているのがほとんどで ある . 一方,加工処理の過程で大量に廃棄される脚, 頭胸部や甲羅の殻 は現在立派に人間生活に役立っ ている事実は未だ一般にはあまり知られてはいな いようである . ここでは,ベニズワイカニの水揚げ高日本ー を 誇る鳥取県境港市を訪問し,そこ での水揚げや加 工の様子を実地に視察 ・調査したのでその結果を 紹介する. 結果と考察 現地を 訪れ,視察して聞き取り調査等を行った のは平成10年 3 月13 日と 4 月30 日の 2 日間であっ た. 以下に水揚げ ・漁業状況,抜き身加工そして かに殻パイテク加工について記述する . 1 漁業概況 1 ) 水揚 げ状況 4 月30 日, 5 時50分,境漁港 ( 干684 -0034 境Hiroshi M O T O H an d Tatsuo Y A M A M O T O: Notes on the landing an d indu stry of the red sno w crab,
Ch
削wecetes Ja.
抑 制cus
,at Sakaiminato C ity, Tottori Prefectu re,J
apan 港市昭和町9-7) の大型漁船用岸壁を訪れた ,4
月下旬とは 言 え,早朝の浜風は頬に冷たい. そ こには既 に2 隻のベニズワイガニ能漁船が接岸 し, 赤や緑の :長 方形のプラスチックケースに詰 められた30kg入りの蟹が陸揚げされてい る真つ 最中であ った( 図 1 - C ),漁獲物の陸揚げ作業 専門の荷役の人達が,船上の船員が慌ただしく 氷蔵船倉から 出 してくるケースをすかさず受け 取り,岸壁に隣接する上屋のある建物内に運び 込み ,整然と3
段に積 み上げていた. 早朝5
時 頃から陸揚げを始めているとの こと. 氷 の少な いケースには上 っ面に砕氷を補充しながら競争 するかのようにしててきぱきと運んでいた . 鮮 度保持にとても気を使っている様子が実感され た. よく見るとどのかにも甲羅を下にして納め られていた . 甲羅を上にした正座の姿勢で収容 しないのは水分と内蔵が流れ出るのを防ぐため であるとのこと( 図 1 - B ). 白い氷と紅の蟹の 色が自に鮮 やかに写る . 船は 第78盛勝丸( 島根 県籍) と第 58栄丸 (鳥取県籍) で ,いずれも 120 トンクラスの 大型かに龍 漁船である. どの 船も 船名を大 きく名記した船首部の 両わきに国籍を 示す日の丸 がくっきりと 捕かれ ており ,いかに も国際海域での操業船であるということを強く 印象付け ていた . また船の両側にはかに 寵承認 船である証として「べにずわいがに 43J とその 操業許可番号が大きく掲げられていた( 図 1 -A ). 作業開始か ら 1 時間半経 った午前 6 時40分 頃にようやく陸揚げ作業が終わ った . 整然と並 べ積 まれた プラスチッ クケースは縦 15個 ×検 17 個 ×高さ3
個の大きな平たい砦を形造 っていた (図 1 - D ). また ,その脇には 70 ケース程が 1 段 に並べられていた . これは主 にボ イルしたあ と 庖頭で「姿売り (一匹売り )J 用になるものであ34 境港市におけるべニズワイガニの水揚げと加工産業 図1 境漁港でのべニズワイガ二の陸揚げ風景 A かに能漁船. B kg 入りケースに収ま ったベニズワイガニ , C 漁船から搬出し氷をかけて市場に運び込まれるかに. 0 3段積みされて入札 をf寺っかに る . ざ っ と 計 算 し た と こ ろ 全 部 で800龍 以上にな っ た . こ れ がl 航 海 1 隻 の 漁 獲 量 で あ る . 陸 揚 げ用 の1 ケ ースに平均 100出入 っているので , 漁 獲 さ れ た 全 体 の か に の 数 は お よ そ8万匹と凄い数 に上る . 漁場が遠く ,実 働5 日間 の 水 揚 げ量 だ か ら平均1日に 1.6万尾の泊、獲ということになる .
2
) 入札 午 前 7 時 にかにの入札が始ま った. ここではか には生産者( 漁業者) → 荷受 人→ 仲 買人のルー ト で取り引きされていく . かにはl船 毎 に 販 売 受 託 している3
荷受人( 鳥取県漁連, 島棋県漁連, 境 港魚市場株式会社) によって入札にかけられ,約 20名の仲 買業者によって引き取られていく. 当日 はゴールデン ・ウィークを控えて加工工場の休業 が予定されていることと,北朝鮮漁船 (大 倉 号) とロシア漁船( ベガ号) からの入荷もあって,供 表1 べニズワイガニ のサイ ズ銘柄区分 側 一 大 中 小 * J:t:数(J毛) l内閣サイズ (mm) 120- 140 100- 120 91 - 100 40 - 50 60- 110 100- 150 本30 kg 入りケース中の数 (鳥取県水屋試験場調べ) 給 過剰気 味 の ム ー ド が 支配 して ,通常よ り安値の 龍当たり3.800 - 4.500 円 で 取 り 引 き さ れ て い っ た. 値段はかにのサイズで異なり,1
ケース当た り匹数は少ないが大銘柄が最も高い. 大,中,小 の銘柄は概 ね表 1 に示す基準で区分されている. このようにして降揚げされ,入札に かけられる ベニズワイガニは 一体何処でどのようにして漁獲 されているのだろうか.本尾 洋 ・山本達雄
3
) 漁船,漁場と漁獲規制 境港には現在同港を陸揚げ港に指定している 21 隻のかに能漁船が入港し水揚げしている. その大 部分は 100 トン級の大型船である( 図l - A ) . 1 隻に通常 10 - 11 人が乗り組み ,rC
海域」と呼ば れる日本海のほぼ中央部を主漁場にしている( 図 2 ) . 漁場まで片道1- 1 .5日を要し 1航海の日 数はおよそ 1 週間である. 資源保護と秩序ある操 業のためにかに龍漁船はすべて農林水産大臣の承 認を得た船に限られている. 先ほど「べにずわい がに 43J 等 と 明 記 し て あ っ た の は こ の た め で あ る. 現 在 操 業 許 可 船 は 以 下 の よ う な 種 々 の 禁 止 . 市JI限 条 件 を 遵 守 す る こ と が 義 務 づ け ら れ て い る. 違反すると 2 年以下の懲役もしくは 50万円以 下の罰金を払わなければならないことが農林水産 省令で定められでもいる . ①水深8 0 0 m 以浅の海域で、の操業禁止 ② メスガニ及び甲 幅9 cm
以下の雄ガニの漁獲禁止 ③ 使用する龍の網目は内径15cm
以上 ④夏場の 7 - 8 月の2ヶ月間は禁漁 ⑤使用する能数は9
連以内 (50 トン未満船は7
連) で 1 連 150個以内 これだけ多くの規制措置がなされているのであ るが,一方で、それでも漁獲量の減少が続いている 図2 漁場のrc
海域J (北陽冷蔵株式会社資料より ) 35 実態がある . このことは現在の漁獲が資源管理上 大きな問題を含んでいることを示唆していると思 われる .4
) 統計上の水揚げ状況 境漁港におけるべニズ、ワ イガニ( 市場の銘柄名 はひらがなで“べにがに" ) の過去25年間の水揚 量を表2 に示した 同表からわかるように昭和56 年代までの年間水揚量は, 昭和 53年を除き, 2 万 トン以下であった. しかしその後水揚量は増加 し はじめ,UB
和 59年には過去最高の約 3.2万トンに 達した . そしてこれをピークにして ,以後減りは じめ ,昭和63年には 2 万トンを割り,その後増減 を繰り返しながら,平成9年には1 .5万トン程度 にまで減少した. 昭和5 8 - 6 1年間の 3 万トン前後 表2 境漁港に水揚げされる べニズワイガニの 数量,金額と単価 金額( 千円) 単仙j (円/k g) 場年 数量 (t ) S 4 8 18.285 49 16,090 50 13.674 51 14.947 52 19.060 53 21.895 54 18.417 55 16,464 56 17.743 57 24.1 11 58 29.533 59 31.750 60 31、459 61 28,521 62 21‘814 63 16,820 H 1 15,858 2 17,644 3 17,071 4 14,752 5 14,899 6 16,443 7 16,720 8 17,152 9 15,703 ) h 引 ソ 8 0 0 2 6 4 7 4 7 8 0 3 2 8 2 1 6 2 0 i 9 一 は 弓 t n b p O F U A 守 司 , , ゥ ー っ t ハ U 1 i k d ハU 凋 q A 9 1 4 0 0 0 d n u -A 3 7 a 一 川 円 1 i 1 A 1 i 1 A 1 i ' ﹄ 1 4 1 i つ ム ワ ω ワ ム ︼ つ & ワ 白 ワ 臼 9 b 1 i 1 i ワ u ワ μ 1 i 1 A -日 ヮ ー -) 1 一 / ¥ 二 l L 一 余 -F-R
6
一 , 一 を 王 一1
事 ハ U n L n x u n L n v 目 u a q p o n v A 官 民 υ a q n u k υ 1 A F b n L q u q L q J R υ 一 , 宜 主 8 8 0 7 4 7 4 9 1 i 9 3 9 2 1 8 0 8 0 8 1 3 一 8 リ P O ヮ “ r h d R U ﹁ D n b n b q J ヮ “ P り つ ム ワ u n J n y o O Q d A せ n J p u n t Aせ 一 ψ 小 2 3 2 8 8 3 4 0 9 5 6 3 3 0 6 3 6 0 1 1 5 一 , 昌 巳 9 9 5 9 8 9 3 3 0 1i 5 1 4 7 1 i 6 2 2 1 8 0 一 7 、 つ d A “ I Q J A “1 P D 1 i ワ i u に d 巳 d つ れ ︼ Aせ A望
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o q J £ υ p o o d n J P U つ 白 R U 一 } 品 あ 3 3 1 2 2 4 5 5 6 6 5 3 3 4 3 2 2 3 3 3 2 一 船 県 削 減 j f 禁 ハ リ ー レ だ た ( 白 川 つ 白 ' E A 唱 E A *36 境港市におけ るべニ ズワイガニの水錫げと川│工産業 の高水準は出漁日数の増加 によるものであり , こ れは
i
魚場の拡大と漁具性能の向上等に起因してい る. 水揚金額については 昭和52年からの記録がある (表 2 ) . 昭 和 5 2 - 5 6年は概ね 3 0億円を行き来し ていたが, その後昭和 62年までは大幅に水揚金 額が増加し, 6 0億 円前後を記録した. これは上 述の理由による水揚量増に起因したものと判断 される . しかしながらそれ以降は出漁日数が減 るのに伴 って漁獲量減に連動して漁獲金額も減 少し,近年は 30億 円前後を推移しつつ減少傾向 を示している . キロ当たりの単価 は21年間概ね 15 0 - 2 5 0円で推 移し,近年は 200円弱となっている( 表 2 ). 漁獲 量が多いにもかかわらず昭和 60 一平成 3 年の 200 円 を越える高価格維持の原因は大銘柄のかにが多 か ったことや消費需要が高か ったことによるもの と思われる . 表3 境漁港 に水揚げされる べニズワイガニのサイス 銘柄別単価と 量割合 大 ホ年度 円/kg % 円/kg % 円/kg %S
54 250 8 .7 167 45.8 126 45.5 55 266 6.0 150 43.0 119 51. 0 56 283 4.4 174 46.5 148 49.1 57 272 4.9 189 51. 4 157 43.7 58 268 5. 6 178 51. 2 146 43.2 59 237 7.8 195 53 .2 181 39.0 60 252 7.8 223 51. 8 206 40.4 61 272 7.6 242 53.1 216 39.3 62 575 1. 7 234 47 .0 218 51. 3 63 610 1. 8 224 39 .9 207 58 .4 H 1 596 1. 0 274 27 .8 229 71. 2 2 552 0.8 258 30.3 233 68 .9 3 475 0.9 172 34.5 161 64.6 4 468 0.9 220 35.0 199 64 .1 5 322 2.4 197 35 .8 172 61. 8 6 314 3.3 196 37.8 190 58.9 7 346 4.5 215 38.0 210 57 .5 8 302 0 .9 173 35.6 165 63.4 市当該年 9 月一翌年 6 月 (7 . 8 月は禁漁期) (鳥取県境港水雄事務所資料より ) 一方,かにの銘柄即 ち大中 小の点、j躍比率を示し たのが表3
である . 昭和54年頃は大がにが全体の 8 .7 %を占めており,これは 過去 18年間における 記録上最も高い数値である. その後減少し ,昭和 5 9 - 61年は 一旦 8 % 近くまで回復した. この原因 は再び日朝民間漁業暫定協定が締結され,59年 10 月からはほとんど漁獲行為のなか った北朝鮮水域 への出漁が可能となり ,それに伴い大銘柄がにの 割合が高くな ったと解釈される. しかし,その翌 年からは 2 % 以下に急減している. そして平成 5 - 7年はやや上向いたものの,平成8年には再び1
% 以下に急落した . 以上,統計表で見た限りでは,総漁獲量の減少 及び大がに比率の減少傾向からみて,ベニズワイ ガニの資源最は明らかに減 ってきていると推察さ れる . なお ,北朝鮮は 10年以上前に漁獲を開始し,平 成 1 年頃から操業を本格化 させ,ロシアは 10年ほ ど前からベニズワイガニを漁獲しており,平成5
年から本格的に操業し , ともに境漁港に水揚げし ているとのことである .2
かに身処理加工 訪れたのは下記の2
杜である . 1 ) 株 式 会 社 門 永 水 産 ( 干684-0034 境港市昭 和 Ilff12-27) 門永水産は; 境漁港から歩いて 10分程の工場団地 の一角にある . 同社の松本勝 志 常 務 ( 3 月13 日) や 岸 本 泰 宏 氏 (4
月30 日) に案 内 されて工場内に 入 った. まず篤いたのはここでは衛生管理に細心 の注意を払 っていることである . 加工場内に入る には以下の手順を踏むことにな っている. ①靴をスリ yパにはき替えてロ ッカ一 室 に入る. そこで上着を脱ぎ白衣と白い長靴に替え,最後に ヰーまで覆う白い帽子を着用する . ② 別棟の入り口で薬用石けんで手を洗浄 ・乾 燥 し,その後アルコールで消毒する . ③ そして加工場に 向か う途中 ,細長く狭い部屋で エアーシャワーでちり ・ほこりを払い去る. これ でようやく最終チェ ックが完了し,加工場内への 立ち入りが可能となる . ④ 別棟の加工場に入る際は,青白い殺菌灯を備本尾 洋 ・山本達雄
37
えた 二重扉室に 一旦に入る. すると今通過した 扉側が閉まる. この室内は陽圧にな っており, このため外の竺気が加工室内に入り込まない仕 掛けにな っている . やがて反対側 の扉が開いて 外に出る . ⑤工場内の各部屋にも消毒液 (薄めた次亜塩素酸 ナトリウム ) が置いてあり,ここでも殺菌に意を 注い で、いる . ⑥ かつ最終的に加工場を出るときは消毒液を含む 回転ローラーで靴底の付着物を払い落とし,脱い だ靴はオゾン殺菌箱に収納する . さて ,工場ではまず入荷したベニズワイガニを 生のまま「脱甲機」で半自動的に甲羅をはずし, “みそ" と呼ばれる肝すい臓や精巣類を洗い出し, 鯉も除去される. ここで蟹は胴部分付きのまま半 身にカットされる. スーパーで「肩身」等と記し であるあのスタイルである . 生のま ま甲羅を剥が す( 脱甲 ) のはみそ部分も有効に利用するためで ある. 鉄釜でj弗騰塩水でおよそ 10分かけて茄であ げる( 図 3 -A ). 次ぎに 別の調理室 に移し ,そこ で胴,脚, つ め (鉄) に分割される (図 3 - B ). なお,みそは樋をったって集められ,“かにみそ " などの原料として有効に利用されている. 次の工程は抜き身作業で ある . 最も手 間のかか るこの作業は現在では主に機械で行われている . 作業員 が頭胸部から切り離されたカニの脚3 - 4
本を持ち ,回転するローラーに指節 (先端の細い 方) から 差 し入れる( 図3 - C , D ). すると 脚 は 巻き込 まれ圧縮されて肉だけが絞り出されてぽと りと抜け落ちる仕掛けにな っている . 胸l殻の方は ぺ しゃんこになってしまい, 中には筋だけが残る (図3 - E ). 水 っぽいベニズ ワイガニだか らこそ うまくいく肉の取り出し方法だなーと納得した. 発案者の素晴らしいアイデアに感心する . この身 は「俸肉」と呼ばれ最良質のものとされている. 胴の肉は「肩肉」と 呼ばれ,水洗され繊維状とな った「フレーク」と 繊維状でなくなりどろどろし た品質の落ちる「落し身」に分かれる . こ れも機 械で自動的に取り出される. 混じ って いる殻細片 などの侠雑物は細かいメッシュ付きの回転ドラム 内で回転しているうちに取り除かれるようになっ ている( 図3 - F ). つめの肉は取り出さずにその まま 「つめ肉」として殻付きのまま調味加工さ れ て出荷される . 次の工程では取り出さ れた身 を箱に詰め計量 し,20cm
X25cm
X 4
cm
( 厚さ) の箱にきちんと敷 き詰められていた( 図 3 - G ). 駅弁の蟹ちらし寿 司の表面に似た状態である.1
箱400- }
,000
gで 製品化されており,箱のサイズはこの他 にも幾種 類かあるとのことだ った. この工場ではベニズワイガニの他に, ズワイガ ニ,タラバガニ( ホンタラパと呼んで、いた) やま れにア ブラガニも使うとのことだった . ただし, それ らはベニズワ イガニの場合とは異なって抜き 身にはせず,甲緩や内蔵類を除去した後,茄でて 脚 ・殻付きで冷凍出荷されている . ここで1 日に 処理され る原料は約 9 トン(300
ケース分) とい うからすごい量である .30 kg
の生がにか ら6
-7
kg
の肉が採れる. これを80
名 (ほとんどが女性) の作業員で処理しているとのことだ、っ た. すべて がベル トコンベア式に流れて来るから,手先が器 用で勤勉な日本女性だから勤まる仕事のように思 えた. 実際彼女らは脇目も振らず に次々と目の前 に流れてくるかにを手際ょくできぱきと処理して いた . 工場内は常時, 17 - 180 C にエアコンされて いる . 市内には他に11
社ほどのかに処理加工工場があ り,内5
杜がここのように大手会社とのことだ っ た. 最後に見学した部屋ではベニズワイガニの甲羅 がサイズ別に而白い方法で分別されていた . 動い ているベルトコンベアに甲羅を乗せてやるとそれ らがコンピ ュータで制御 されたセンサーで大きさ が測定され,個々にサ イズが記憶され,それから 後の行程でソj、さい ものから順に6種類のサイズ別 に自動的に分別されて所定の所でポンとエアーで はじき飛ば されて落ちる ようにな って いた (図3
H ).
この様子は面白く子供ならずとも見ていて 飽きない感じだ、っ た. きれいに 洗浄 されたこれら の甲羅はグラタンなどの料理の容器として 利用 さ れている .蟹は死んでも甲羅を残すというわけか. ちなみに脚殻や破損した甲羅は無料あるいは2
-3
円/kg
で殻加工 業者に引き取られている .(昔
は捨て場に困 ってい た代物 ! )38
境 港 市 に お け る ペ ニ ス ワ イ ガ ニ の 水 揚 げ と 加 工 産 業図3 か に 身 の 処 理 加 工 (株 式 会 社 門 永 水 産 )
A かにを茄でる釜, B 胸部,
c
脚の細い先端( 指節) を圧縮ローラーに 差し 込んでいるところ, D lnlじく脚部の身採り作業( 右下は取 り出された脚 身= 榛肉 ), F 11同(頭
本 尾 j羊・山本達雄 この機械を使うとスピーデイかつ衛生的でしか m
・
1 も抜き身率が高いとの説明があった. 実際,脚部 副I
で最も大きい長節からだけでなく,時にはそれよ 酢 I り先端の腕節,前節からの肉がつながって出てく るのを見るとこの機械による抜き身の効率の良さ に感嘆する. この工場では押し出された形の良い最高品質のも のを「棒肉J,篠肉の少々くずれたものを「精様J, 形の大きくくずれたのを「精肉」と呼んでいた . ⑤ “落し身機" による胴身採り 胴( 頭胸部) を機械で圧縮等しながら自動的に 肉片を採り出し,1 - 3 m m
のメッシュを備えた回 転ドラムを通過させて殻などの雑物を取り除く. 胴からの肉は「落し身」と呼ばれ,品質的には劣 り,グラタンやコロッケの風味原料に利用される. ⑥“カニエキス濃縮装置" による茄で汁の有効利用 年間およそ280
トン出る茄で汁を減圧しながら55.C
で濃縮して ,かに風l床を生かした天然調味料 として食品メーカーに出荷している. ⑦ “かに殻排出機" による加工場外への殻搬出 曲がりくね ったトンネル状のベルトコンベアか らなる排出機に身を取り去 った後の脚や再利用さ2
) 北 陽 冷 蔵 株 式 会 社 ( 〒684-0034
境港市昭和町
12-27)
冷蔵会社として 昭和42
年に創業された同社は市 内では最大手とのこと . 工場内に入る前の衛生管 理は前社と概ね同様で、厳重であ った. 白衣に着替 えた後,同社製造部の足立哲夫部長と竹中弘治総 務部長の案内で加工場内を見て回 った (4
月
30
日)
. 見学はほぼ図4の下から上に向か った)11貢序 で行われた. ここでは下記のように各工程の自動 化が一段と進んでおり ,整然とした流れ作業が印 象的だ、 った( 図5
- C ) . 工場脇に市場での入札が 終わ ったばかりの新鮮なかにが永詰めにされて冷 蔵室への搬入を持っていた( 図5 -A ). ① “自動脱甲機" による甲羅はがし (図5 - B ) 同社の新鋭装置ですべて自動的に生がには甲緩」
周 障 室口
品
︹
坦
図4 加工処理工場の工程見取り図 (北陽冷蔵株式会社資料より)39
を剥がされ,みそ( 内蔵) ,!!I!.
が除去され半身に なる . 生の状態で脱甲するのは前社同様,みそを 有効活用するためである. こ こでも甲羅はグラタ ン容器に利用されていた. ② “密封ボイル機" によるかに茄で 最初に60.C
の低温で 7 分間茄でる . これによ っ て血液成分を除去し変色防止が可能となる由 . そ の後100.C
で5 - 6
分間茄でる .2
段階で茄でる のは同社独特とのこと . いずれも水2 トンに対し て食塩30
kg を混入した塩水で茄でている. 't(iJで 揚がったら直ぐに冷やしており ,そのことにより 味の品質を良好に保つとともに,身が殻から抜け 出易くなる. ③ “脚 ・つめカ ッ ト機" による脚,つめ (鉄脚), 胴の切り分け (図 5 -D ) カッ ト機に行くベルトコンベアに半身がにを乗 せてやれば自動的に脚,親つめ (鉄),胴 (頭胸部) に切り分けられて出てくる( 図5 - E , F ). ④“自動様肉採り機" による脚からの肉採り( 図 5 - G )40
境港市におけるベニズワイガニの水揚け、と 加工産業図5 かに身の処理加工( 北陽冷蔵株式会社 )
A 屋外に緩まれ冷蔵庫への入庫を待つかに, B 甲羅を剥がし内蔵, EEJを除去する “自動脱甲機",
c
加工場内, 0 半身 のかにを "脚 ・つめカy ト機" へのベルトコンベアに 乗せているところ, E I百lカγト機から 出てきたつめ (鉄l,F I百lカ本尾洋・山本達雄 41 れない破損甲羅を乗せてやれば,それらは工場の 天井付近を通って外に運びだ される仕掛けにな っ ている . 入手が要ら ずスピーデ イで衛生的である. なお,この工場でかに殻の利用率はグラタン容器 用( 図5 -
H )
として20% ,残 り8 0 % は別会社に よるキチン ・キトサン精製用とのことである. 加工工場での営業の難しいことのlつに原料が にの仕入れ量と操業手順との兼ね合いがあると聞 かされた. ベニズワイガニの身には水分が多いか ら一旦凍結すると解凍時には身( 肉) がばさばさ して風味が損なわれる. 従 って原料の長期保存を 目指した冷凍確保は 出来ない. この工場では原料 がにを- O .5"C の冷蔵庫に貯蔵しているが,それ が可能な期間はせいぜい2 - 3 日とのこと . 原料 の買い付け量と加工手順のタイミングが難しい所 以である . 面白いことに原料の鮮度が良過ぎると 抜き身 (棒肉) が滅り , くずれ身が多くなるとの ことで,その時は幾分鮮度調節する( 落とす) と のことである . 新鮮過ぎてもいけな いとは本当に この加工商売は難しい もんだな ーと痛感した. ここでは30 kg 入りケースを 1 日に 700倒処理し ている . 1 ケースから 7 kg の肉が採れ,内 1. 5 kg が最高級の俸肉とのこと. それにたずさわる加工 場従業員は95名 (ほとんど女性) で勤務時間は 8 時から 4 時半までである . 年間 7 万ケース分を処 理している. なお,境港市におけるべニズワイガニの加工及 び生鮮用の年間の取扱量は2.8-3 .0万 トンで,そ の内, 山陰沖産が1.6万トン,輸入がにが0 .6万 ト ンで,残りの6 - 8 千 トンは北海道, 111形,新潟 県から陸送されてきている .3
かに殻加工工場 上述の門永水産からさほど遠くない同じ竹内団 地にある 三栄工業株式会 社 ( 干684-0046 境港市 竹内団地217) を訪れた. はじめに事務所で松本 達夫副社長から以下の会社業務に関する説明を受 けた (3月13日) .
かに殻を原料にしてキチン (Chitin),キトサ ン (C hitsan) を製造している業者は境港市にこ の会社も合めて4 社あり,いずれも 14年ほど前か らかに殻加工の操業を行っている . 境港市で、のキ チン ・キトサン製造産業の起こりは, 鳥取大学の 平野茂博教授がかつてその化学処置の方法を発 明 . 開発してそのノウハウを関係者に教えたことに よるとのことである. 同教授は化学薬品で処理す れば“廃物" のかにの殻も立派な製品になること を見いだしたのである . 平野教授の指導の下,殻 の有効利用 が急速に普及してい ったのもベニズワ イガニ水揚げ高日本ー を誇る境港ならではのこと である . ここに産学一体となった素晴らしい姿を 見ることが出来る . さて,蟹の殻にはタンパク質とカルシウムとキ チンがほぼ3 分の l づっ含まれている. そこで殻 からキチンを得るには以下の化学処理を施すこと になる (図6
上).①
3 - 1 0 % の熱水酸化ナトリウム (80-900C ) で 2 - 5 時間煮る . それにより,脱蛋白処理が行わ れる.②
5 - 7 % の塩酸で室温下で 1 - 3 時間処理する ことにより脱カルシウムがなされ,残った物質と してのキチンが得られる . ③46 - 4 8 % の熱波水酸化ナトリウ ム (85-950C ) で8- 20時間処理 して脱 アセチル化 を行う. これ により最終製品のキトサンが得られる . こ こまで の収率はベニズワイガニの場合で,殻湿重量から キトサン乾燥重量で10 - 12 % である. 現実 に,現 在1 ケースのかに (30 kg 入り ) から 5 - 6 kg の 乾いたかに殻が得られ,そこから最終的に 500-700g のキトサ ンが生産されている. 材料の状態 にもよるが,通常一つの行程でほぼ5
日を要して いる. かに殻は本来廃棄物であり,取り扱いに人件費 がかかるので原則的に無料で引き取 っているそう である . 目下,韓国,中国,インドネシア ,イ ンドでも キチンないしはキト サ ンをカニや養殖エピの殻をf
吏って製造しているとの ことであ る. しかしなが ら,その製品の純度に関し ては日本製の方が抜群 にょいとのことで, 時には輸入製品を再度精製し なおして販売すること もあ るとの話だ った. こ の かに殻処理に関する限り ここ境港市にある4社 で日本での生産量の大部分 (およそ8 0 % ) を占め42
境港市におけるべニズワイガニの水似げと加T
産業 ているそうである( 県外には他に千葉県に「共和 テクノス」等があるに の昨l羅や脚がストックされていた( 図7 -A ) .原料
がただとは結構な商売ですねと水を向けたら,も ともと厄介ものの廃物で あ り, それでいて取り扱 いに人件費がかかるから ,工場としては笑際それ でも収支とんとんとの厳しい答えが返 ってき た. その後,谷 口佳弘 研究員の案内で工場を見学し た ( 3 月 13日 4月 30日). : I場 裂 手 の 入 り 口 に は抜き身工場から搬入されてきたベニズワイガニ 原料カニ般中の含有率 (% ) (乾織状態) H 2階 脱タンパク処理 時水量化ナトリウム水湾海, 3 - 5 %, 80-90'C, 3時間 脱アセチル化処理 温水薗化ナトリワム水湾海, 4 6-48 %, 85-95'C, 8-20時間f
乏医)
図6 上 キ チン ・キトサ ン製造工程図 脱カルシウム処理 希塩破水港湾, 5-7 %,室温,2時間 C H,
O H 日 正J " r、
町
一 、 '¥. I ー¥. O H 1. い H N H,
キ卜サン
下 キ チ ン ・キ卜サ ン製造設備配置図 (上下 とも三栄工業株式会社資料より ) 1階本 尾 洋 ・山本達雄 43 最初に工場の
3
階まで上り ,そこから順次│経り ながら,かに殻からキチン,キトサンを製造する 工程を見学した. が,強アルカリ,強酸での化学: 処理 ・反応工程であるため , ほとんどは密閉され た容器内での無人の化学処理であり,外観からは 理解しづらかったのが率直な感想であった . そこ でそ れらの工程を要約して模式的に示したのが図 6下である .婆するに最初にアルカリで蛋白質を, 次いで酸でカルシウムを除去し,残ったのがキチ ン,それを必要に応じて脱アセチル化処理して最 後にキトサンを得る( 図6.
図7-B.
c.
D)
というわけである. 昔は ,食べた後のカニの殻は畑の肥料にする程 度で,それも時には悪臭を放つので嫌われものの 存在 だったとは松本さんのお話. それが今で は時 代の最先端を行くバイテクの“立役者" というわ けである. 人間の英知の素晴らしさに感心しなが ら工場を後にした. 現在,キチンやキトサンは機能 ・栄養補助食品, 化粧品,抗I草i
・防臭素材,農薬,縫合糸 ,人工皮 膚な ど様々な分野の製品に使用 されて我々の生活 に大変役立っている. とりわけキチンは生体によ く適合し ,それを使用した製品は以下のような医 学上の特長を備えている( 矢吹.1994).
①生体内の酵素 リゾチームで最終的に分解消滅す る. ②生体親和1性があり ,生体との馴染みがよ い. ③傷 口の治癒促進効果があり,傷跡もきれいであ る. ④治癒中に人工皮府はj(lli青タンパク質の吸着能が よく, 生体との馴染みが よく,沈痛 j上J(lL効果が 認められる. 未利用の巨大なバイオマスのさらなる高度な応 用に向けて「キチン ・キトサン学会」もH下年結成 されたと聞く (本部: 横浜市). 最近は捨てるものすべてに分別収集がなされ, 図7 かに殻加工工場 (三栄工業株式会社)A
屋外の原料のか に殻,B
脱アセチル化処理後のキトサ ン (脱水ホ yパーで),C
.,IH
来上がった白い フレーク状のキチン, 0 粉砕 された 白色粉末状のキ トサン44
境港市におけるべニズワイガニの水揚げと加て1車業 そのことが常識化しつつあ るので,ここで1つ 提 案をしたい. かに ・えびを大量に扱う料亭,ホテ ル, レストランではかにの甲羅,脚を分別して特 定ごみ( 資源ごみ) として出すということである . そうすれば蝦蟹好きの 日本人が大訟に消賞' した田 中の殻が回収され,キチン,キトサンがより安価 で大量に生産され,人間生活に大いに役立ち ,同 時に生ごみ対策にも 一役買うことになると思う. い か が で し ょ う か ? 謝 辞 工 場 で の 詳 し い 説明を して下さった株式会社門 永水産の松本勝志常務取締役と岸本泰宏氏,工 程 カ 二 に 関 す る 図 書 の 紹 介 を詳しく説明しかっ資料の引用を快諾された北陽 冷蔵株式会社の足立哲夫取締役部長と竹中弘治総 務部長,そして説明とキチン/ キトサン資料の提 供 をして下さった三栄工業株式会社の松本達夫副 社長並びに谷口佳弘研究員に厚くお札を申し上げ、 ます.参考文献
農林水産省統計情報部.1997
平成8
年i
係業 ・主主殖業 生産統計年報.pp.90-9
1. 矢 吹 実 .J994.
キチン,キトサンのはなし.i
支報堂 出版.140 pp.
( 本尾 洋 : 京都府水産事務所 山本達雄: 鳥取県境港水産事務所)『
続“越前がに" の世界
ーその生活史と生態 一』
会員の今依氏が勤務されている制井県水産試験 場が編集し,福井県から発行された冊子である . 前にも同名で刊行され,本誌2
サ(1992)
で紹介 したが,その改訂版にあたるもので,手干名の到に " 続" がつけてある. 日本は1996
年に国連海洋法条約に批准したこと により,ズワイカ、、ニのi魚、獲日l
能量の設定,生物資 源の保護や管理する義務などを負うことになっ た. こうした背民の中でズワイガニを漁獲する立 場から専門家もI魚業者もこれまでの取り組み方に ついて考え[ 1 ' ( してゆく必要性が生じてきたわけで、 ある . そこで,この冊子ではズワイガニについて のこれまでの生物学的な事項に最近の知見を加 え, さらに資源管理の取り組み方などについても 新しい記述を加えてまとめである. 内容は前回と同様に11 に項目分けし,カラー写 真や灰l
を添えながらの解説である. 前半は生活! 主 や生態など生物学的な知見 を,後半は漁獲量や資 源保護に関しての事項が記述されている. このうKensaku Muraoka: Reference book for crab
福 井 県 水 産 試 験 場 編 集 福井県