理 学 療 法 学 第
33
巻 第2号62
〜
68
頁 (2006年 )研 究 報 告
脳
卒
中後
上
肢 運 動 麻 痺
に
対 す
る
鏡 像
を
利 用
した
治療
の
効
果
ラ
ンダ
ム
化
ク
ロス
オ
ー
バ
ー
研
究
*手
塚
康 貴
1)#藤
原
求 美
D
小 川
真
司
1)徳永奈穂 子
1)松 尾
篤
2)徳久謙太郎
3)勝
山
真 介
1)菊 池 佳 世
1)市
川
章 子
1 )太
田
忠 信
1
) 要 旨上
肢
は 下 肢 に 比べ巧緻 性 を
必要 と
さ れ,脳 卒 中後 上 肢 運 動 麻 痺
に対 し
ても
,
近 年 様
々な
アプロー
チ が 工 夫,
考
案 さ れてい る。
本
研究
の 凵的
は,
幻 肢
に対
し て考 案 され
たMirror
Therapy
(
以下
,
MT
)
の脳 卒
中 亜 急 性 期 上 肢 運 動 麻 痺 に 対 す る 効 果 を検
証す
る ことであ
る。研 究
デザ イン に は ラ ン ダ ム化
クロスオー
バー
手 法
を使
川 した。
脳卒
中患 者
15
名
を ランダムにMT
群
9
名
,対 照 群
6
名
に割 り付 け
た。MT
群
は非麻 痺
側の鏡像
を 注 視 し な が ら,
麻痺 側
の他 動
運動 を実 施
し,
コ ン トロー
ル治療
は鏡 を使 用
せず
にMT
群
と同
じ他
動
運動
のみ を 実 施 し た。
手 関 節・
手 指 機 能 評価
に はFugl
−
Meyer
Assessment
scale を使 用
し,
介 入 前
後
に各 群
の評 価
を実 施
し た。
MT
群 で は介
入前 後
で 明 ら か な改 善
が認
め られた
。対 照 群
で は有 意 な改 善 を
認
めず
,
MT
へ の クロ スオー
バー
後
も有 意
な改 善
が な かっ た。
MT
に よ る視 覚 的 錯 覚 が 脳 卒 中 後
上肢 運 動
麻 痺
に対
して効 果
的であ ることが 示 唆 さ れ た。
キ
ー
ワー
ド脳 卒 中
,
Mirror
Therapy
,
ラン ダム化
は じ め に脳 卒 巾片 麻 痺
(以
下,
片 麻痺 ) 患 者
の上肢 運 動 麻 痺
に 対 す る神 経 筋
再教 育
は,
容 易
にその効 果
を期待
でき
るも
ので はない という印象
が強
い。神 経 筋 再 教 育
に よ る痙 縮 の増 強
や人 為 的
な産 物 と
し ての共 同 運 動 出 現
の報 告 もあ
る1)。
上 肢 に 期待
さ れ る機 能 水 準
は下肢
よりも
は る か に高
度 で あ り, 上 肢 が 関与 す
る動 作
は より複 雑
で巧緻 性
を 要 す るも
のが多
いと
さ れ る2)。 そのた
めにF.
肢 運動 麻 痺
の機 能 的 回 復 は ド肢 よ り も 悪 く3)4),
リハ ビ リ テー
シ ョ*
Effecz of Mlrror Thcrapy for Patients wit丘1 Post
−
Stroke Paratysisoi Upper Limb Randomized Cross℃ver Study
−
⊥)医療法人生長会 府中病院 リハ ビリ テー
ション科 〔〒594−
oe76 大 阪府和泉市肥 予 町1−
10.
17)Yasuki Tezし1ka
,
RPT.
Motomi Fujiwara,
RPT,
Kaye Kikuchi,
RPT,
Shinji Ogaw 註
,
RPT,
Nahoke Tokunaga.
OTR,
Akiko Ichikawa,
OTR
,
Tadanobu Ota,
MD,
Shinsuke Katsuyama、
N’
ID;Departmentof Rehabilitation Medicine
,
Fuchu Hospita12 ) 畿 央 大 学 健 康 科 学 部 理 学療法学科
Atsushi Matsue
,
RPT :Department of Physicat Thcrapy,
FacuLtyof Hca比h Sciences
,
Kio University3) 医 療 法 人 友 紘 会 西 大 和 リハ ビリテ
ー
ション病院Kentaro Tokuhisa
、
RPT;Department of Rehabilitation,
NishiyamateRchabititation IlospituL 茸
E
・
mait:y−
tczuka@seichokaLor.
jp
(受 付 囗 2005年4月28日/受理 日 2006 年1 月 26 「
1
) ンを受
け た に も 関 わ らず 実 質 的
な 回復 を示
し たも
の は12
%のみであっ た と す る 報 告 tt) や多 く
とも30
%を超 え
るこ と は ない とす
る もの も あ る3)。
麻痺 自体
の同復 促 進
の困難 性
は も ちろん,
痛
み や筋
緊張
へ の配慮
が 不卜分
で あっ た り,
拙 劣 な 他 動 操 作 に よっ ては 運 動自
体 が 逆効
果 とな
るD こ と な ど か ら も,
片 麻 痺
上 肢の治
療
は容 易
で はない と考
え られる。
その よう
な 状 況で,
特
に近 年
上肢
運動 麻 痺
に対
して,
様
々 なアプロー
チ が 展 開 さ れ 報 告 さ れて いる。非 麻 痺 側
の使 用
を抑 制
し麻 痺
側 上 肢の強制
的使 用
を促 す も
の や,
竃気 刺
激 を併
用 し た 運 動 な ど に 関 し て は高
いエ ビデ ン ス レベルが示
さ れている6)7)。
Ramachandran
は鏡 像
を利 用
し た訓 練
(
鏡治 療
,
Mirror
Therapy
:以 下MT
)
を最 初
に提
唱 し た s)。
1995
年
に幻 肢 痛
に対 す
る有 効 性
を報 告
し,
さ ら に 脳 卒中 後 上 肢 障 害
に対 す
るMT
の応 用
を報 告
して い る9〕。
MT
は 鏡 を 用い た視 覚 的 錯 覚
を利用 す
るも
の である。
身
体 前 方
の正中矢 状 面付 近
に立てた鏡
に非 障 害
側の上 肢 を映
し,
鏡 像 を注 視 す
ることで,
そ
の存 在
や運 動
を障 害 側
上 肢の そ れ と錯 覚
させ るも
の であ
る。
さ らに幾
つ か の先
行
研究
に おいて,脳 卒 中 後
の上肢 運 動 麻 痺
に対 す
るMT
の効
果 が示
さ れ てい る。Altschuler
ら
は,
9
名
の慢 性 期
脳 卒 中後 ヒ肢 運
動
麻痺
に対
する鏡 像を利 用し た治 療の効 果 63片 麻 痺 患 者
に対 し
て クロ ス オー
バー
研究
を実
施 し,
その有 効 性
を報 告
し た]o)。
Sathian
ら は,
発 症 後6
ヶ月の片
麻 痺 患 者
にMT
を実 施
し機 能
的 な 回復
を報 告
し たll}。Stevens
らも 同様
に慢 性 期 片麻 痺 患 者
2
名
で の効 果
を報
告
し てい る 12)。
いず
れ も 慢 性 期で のMT
実 施であり
,
少 数 例
の研 究
であ
る。
我
々も
,
ユ9
名
の慢 性 期 片 麻
痺
患 者
に対
して,
主に ホー
ムエ ク サ サ イズ と して数 ヶ月のMT
を実 施
し た。 そ の結
果, 上 肢機
能
障害
の改 善
を認
め,
加
えて感 覚 障 害
の有 無
や左 右 麻 痺
側の相 違
が 治療 効 果
に影 響
を及
ぼす
可能
性
を報
告 し た13)。
これ ら先
行研
究の問 題 点
と して は,
群 研 究 あ
るいは ラ ンダム化
研 究の不
足 が挙 げ
られ,
MT
の有 効 性 を
一
般 化 す る た めの 十 分 な 根 拠 が 見当
た ら ないttそ
こ で本研 究
で は,MT
の有 効 性
を症 例研 究
レベルか ら
ではな く
,
群 研
究
と して,
ま たラ ン ダ ム化
や クロス オー
バー
手
法 を用い て調べ るこ と と し た。
その 目的
は,
MT
が脳 卒
中後
嘔急
性期
か ら回復 期
の ヒ肢
・
手 指 機 能
回復
に おいて,
コン ト ロー
ル治療
に比較
して有 効
か どう
かを
明 らか に す ること であ る。
対 象
お よ び方 法
L
対 象
回復 期 リ
ハ ビ リ テー
シ ョ ン病 棟 入 院 中
あ るいは 入 棟予
定
の片 麻 痺 患 者
とし た。
研究 参 加
基 準 は,
発 症 後3
カ 月 以 内,
明
ら か な高 次 脳 機 能 障 害
な し, ユ2
段 階片 麻 痺
回復
グレー
ドが
6
以
下の症 例 と
し た。
さ ら に 本 人 お よ び家
族
に本 研 究
へ の参 加
の承 諾 を 得 ら れ た 症 例 を 対象
と し た。
全
対 象 者
は脳 卒 中後 片 麻 痺 患 者
15
名 (
男 性
6
名
,
女
性
9
名
,
48
〜
78
歳
,
平 均63.
7
±9
.
8
歳 )であっ た。
障 害
側の内訳
は,
右 麻 痺
9
例,左
麻痺
6
例 で あり
,
発症
か ら の日数
は,
平 均
34.
9
±14.
1
日 で あっ た(
表
1
)
。
2
.
研 究
デ ザ イン無作 為 割 り付
け に よ る クロ スオー
バー
デ ザ イン 14}⊥5)を採
用 し た。
対象
者 を 無 作為
にMT
群 と対 煦
群の2
群
に分
けた。
割
り付
け は治 療
・
評価
に関 与
しな
い1
名 が 管 理
し た。 コ ンピュー
ター
を利 川
して区 問 [
O
,
1
]
の擬 似
一
様
乱 数 を発 生 さ せ,
0
,
5
以 下でMT
群,
0
.
5
より大 きけ
れ ば対 照群
と し た14 )。
両 群
の第
1
介 入 期 後
,
クロ スオー
バー
に よ り介
入方法
を交 代
させ た第
H
介 人期 を設 け
るこ と と した。
第1
介 入 期 と第
H
介入 期
の問
に休
止期
間は設 け な かっ た(
図
1
)
。3
.
介 入方 法
1
)
MT
実 施
の た めに,
ミラー
ボッ クス(
以.
ド,MB
)
を作
成 し た。
MB
は,
ダンボー
ル箱
の一
側 面
に 両手 を
入 れ る 穴 を あけ
,
さ らに ヒ面 巾 央
の・
部 を
切 除 し, 正 巾矢
状 面
で両 手
の問
に鏡 を 設 置
でき
る よう
に し た。
両手
を挿
入す
る と,一
側 手
の鏡 像 が 反 対 側 手
の位 置
に重
なり
,
鏡
像
が あ た か も実 物
とし て錯 覚
でき
る よう
に 鏡 を揖
いた(
図
2
)
。2
)
MT
群
は,
MB
内
で非 麻 痺 側 手
の自動
運動
を 行 い,
その鏡像
を注 視
し た。
運 動
は手
関節
掌背
屈,手 指
の屈 仲
,
母指 外 内 転
,
対 立 運 動 な ど
13
種 類
と し,各
20
回 を セラ ピス トの号 令
に合
わせ て行
っ た。
何 の運
動
を1
〜
2
秒
と し,
所 要 時
間は10
分 か ら15
分とし た。
麻 痺 側 手
はセ ラ ピ スト
による他 動 運 動 を行
い , 鏡の裏
で非 麻 痺
側 と同
じ運動 を非 麻 痺 側 壬
の動 き
に 同期
さ せ た。
表1 症 例 紹 介 年 齢 性 別 麻 痺 側 発 症か ら手 指
明ら かな
筋 緊 張 の「
1
数
Grade
感覚 障 害
(MAS ) 病 巣 症 例
A1
症 例 A2 症例A3
症 例A4
症例 A5 症 例A6
症 例 A7 症 例 A8 症 例 A9 症例 B⊥ 症例 B2 症 例 B3 症 例 B4 旋 例 B5 症 例B6
632682736718781 557576756674756性 性 性 性 性 性 性 性 性 性 性 性 性 性 性 女 男 女 男 男 男 女 女 男 女 女 女 男 女 女 左 左 左 左 右 右 右 右 右 左 左 右 右 有 右625511492044082
552353152324223
166354443363434
十 十 十 十 十 Dl1001211212020 視 床 視 床/後頭 葉 被 殻 脳 幹 脳 幹 放 線冠 被 殻ttt放線 冠 被 殻 梶 状 核 被殻/尾状 核ノ放 線冠 被 殻〆放 線 冠 被 殻/尾状 核/放 線冠 被 殻 視 床淡
蒼球
被 殻 症 例A1
〜
A9
:MT
群.
症 例 B1〜
B6 :対 照 群.
手指Grade
:ヒ田 に よ る12
段
階片 麻 痺 機 能グ レー
ド,
64 理 学 療 法 学 第
33
巻 第2号・
人院 患 者
・
発症 後
3
ケ月 以 内・
高 次 脳 機 能 障 害
なし・
片 麻 痺
回復
Grade
6
以 下 参 加 〈 n=
15
>鳳
国
」 [剛
鴇
α
凹
翫
国
][
第
H
介 入期
]
「
陛
」 ド’
1
1
ランダム割 付l
I−__
一
_
_一
一
一
_一
一
一一
1MT
群
〈 n=
9
>(
鏡 像
注視
+非 麻痺
側 他 動 運 動)
介
入4Lt
継 続
*)
全員 解
廾 〈 n=
3
> 1_一
一
一一
対 照
群<n
二
6
>(
非 麻 痺側 他
動 運 動のみ)介
入4
週継 続
く n=
6
>*
)
全員 解
析1
操 作 交
代
1
}
操 作
交代
l
I−一一
一
”一
_
一
_一
一
_
一
_一
_
一一
_
一
一胴
r_
_一
_
_−
1−,
一
_
_一
一
_一
一
_一
_
一
_
一■
一
一
,一
_
一
__
一
_
一一
MT
な し(
非 麻 痺
側他
動 運 動のみ)参 加
〈n=
5
> 不 参 加 : <n二
4 >(
4
名
とも本 人希
望のた め)
介
入3
〜
4
週継 続
: 〈 n=
3
>*
)解 析
せ ず継 続
不 可〈n
ん
2
>(
2名 とも退 院
のた め)
MT
実
施(
鏡 像
注視
+非 麻 痺 側 他
動 運 動)
参
加 〈n;
6 >介
入3
〜
4
週 継 続
*
)全 員 解析
< n=
6
> 図1
ランダム化クロ スオー
バー
デ ザ イン の フロー
チャー
トMT
群 は操 作 交 代 後の第且介 入 期で6名が脱 落し た た め解 析に至っていない.
図2 Mirror Therapy 場面 左 :鏡に映っ た右 手の鏡 像が 左手の位 置と 重 なりあっ てい る.
右 :鏡の裏でセラ ピストが 左 手に対 して他 動 運 動を おこなっ てい る.
脳 卒 中 後ヒ肢運動 麻痺に対 する鏡 像を利 用し た治 療の 効 果
65
3
) 対 照群
は鏡
を使 用
せず
に,
非 麻 痺 側
に同 期
さ せて麻
痺
側の他動
運動
を行
っ た。
交絡 因子
と考
え ら れる他 動
運動
の影 響
を取 り除 く
た め,
対 照 群
の麻 痺 側
にお
い ても
MT
群
と同様
に他 動 運 動
を実 施
した。4
) 両群
とも第
1
介
入期 間
は4
週 聞
とし,
第
H
介
入期
は退 院 時期 な
どの関係
より
,
3 〜
4
週 間
とし
た。5
)研 究 期 間 中
は通 常 訓 練 を 継 続 し
た。そ
の訓 練 内 容
に は規 定
を設
けず
,
各担 当
セ ラピス ト に よっ てプロ グラム通 り
に実施
し た。4
.
評 価
手
の運 動 機 能 評 価 と
し て,
Fugl−Meyer
Assessment
scalel6>(
以 下,
F
−
M
scale)の手 関 節
および手指
の項 目
を使
用 した。
手
関節
の掌 背
屈,
手指
の集
団 屈伸
,
母指
と 示指
での ピンチ, ボー
ル握
り な ど全
12
項 目の運動 を
用 い てス コア化
(0
点
か ら24
点
) し た。
評価
はMT
に直
接 関 わ ら ないセ ラピス トが 行い,
各 介
入 期 聞前
後 にF−
Mscale
を実 施
し た。
各
対象
者
に 対 す る 評仙
セ ラ ピス ト は常
に 同一
であ り,
対 象 者
がMT
群
あ るいは 対 照群
で あ る か はマ ス ク化 し た。
5
.
統 計
処 理群 間 比 較 に は
Mann
−
Whitney
U
−
test
を 」月い,
介 入 前 お よ び介
人後
の群問
に 差 が あ る か どう
か を分 析
し た。
群内
比 較 にはWHcoxon
の符 弓
』
付
順位
検
定
を行
い,
各
群 に お け る 介 入 効 果 を 分 析 した。
結
果1
.
割 り当て対 象 者
15
名
は,
MT
群9
名
,
対 照
群6
名
に そ れ ぞ れラ ンダム に分 け
ら れ た(
表
1
,
2
)
。
男 性
6
名 中
,
対 照
群に割
り 当て ら れ たのは1
名の み であっ た。
発 症 か らの 日数 は対 照
群で約
8
日短
かっ た。
MT
群 と対 照
群の介 入 前
に おけ
るF
−
Mscale
は有
意 差 を認
め な かっ た。
MT
群の対 象 者
は,
第
1
介
人 期終 了 後
にコ ン トロー
ル治 療
へ移 行 す
る予 定
で あっ た が,
対 象 者
の同 意
が得
ら れず
,
ま た早 期
退院
の影響
に より
3
名
の みがコ ン トロー
ル表
2
症 例分類
治 療
へ の移 行
を行
え た。
し た がっ て,
MT
群の第
且介 入
期
の分 析
は 実施
し な かっ た。
図
1
に研 究
全体
の フロー
チャー
ト1 η を示 す
。2
.
第
1
介
入期
MT
群
の介人 前
は中央 値
5
点 (
最 高
12
点
,
最 低
0
点)
,
介 人 後
は中 央 値
12
点 (
最 高
19
点
,
最低
2
点 )
であ
っ た。対 照 群
の介 入 前
は巾 央 値
4
点 (
最 高
8
点
,
最 低
2
点 )
,
介 入 後
は中 央値
5
点
(
最 高
16
点
,
最 低
2
点
)であ
った
。第
1
介 入 期
で の改 善
(介 入 前後
の差 )
とし
ては,
MT
群
で 中央 値
6
点 (
最 高
11
点
,
最 低
2
点 )
,
対
照群
で中 央 値
1
点 (
最 高
8
点
,最低
0
点
) であ
っ た。最 高
11
点
の改 善
を示
し たの は,
発 症 後
14 日の感 覚 障 害
のな
い右 麻 痺 症
例であっ た。
MT
群
の 最 小変 化 (
2
点 )
は2
症
例 に 認め,
いず
れも左 麻 痺
で感 覚 障 害
のあ
る症
例 で あっ た。
全 く変
化
しな かっ た症 例
は2
症 例
であ り
,
いず
れも対 照 群
の右
麻 痺 症 例 で あっ た。
Malln−Whitney
U−
test
で は,MT
群
と対 照群
の 間 に有
意
な差
は 認 め られ な かっ た (p=
0
.
086
)
.
Wilcoxon
の符
号 付 順 位 検 定 で は,
MT
群の介
人 前 後 で 有 意 な 改善
を 認 め(
p‘0.
008
)
, 対 照 群の介
入前 後
で は有 意
な改 善
は 認 め ら れ な かっ た(
p=
0
.
066
)
(
図3
)
。
3
.
第
且介
人期
対 照 群の
第
H
介
入 期(
MT
実施
)
での改 善
(
介
入前 後
の差)
は,
中 央 値2
,
5
点 (最 高14
点,
最 低0
点 )であっ た。
第
H
介
入期 前後
の群内
比較
に おい て有
意 な 改善
を 認 め な かっ た(
p≡
0
.
068
)。
最 も 大 き な 改善 (
14
点)
を 示 し たの は,
発 症 後32
日の感 覚 障 害の ない右 麻 痺 症 例で あ り,
この症 例
の第
1
介
入期
(コン トロー
ル治 療 )
での 改善
は1
点
であっ た。
MT
による変化
を認
め な かっ た 症 例 は2
例 あっ た(
図4
)
。
考
MT 群 対 照 群 total 総 数 (人数 ) 性 別 (男 性) (女性) 麻 痺側 (右 ) (左 ) 平 均 年 齢 (歳) 発 症か らの口数 (口) F.
M * scale *F.
M
scale : 9 〔5) (5) (4) 64.
6± 10,
0 38.
3± ⊥6、
5 5 (O−
12) 6 (1) (5) 〔4) (2) 63,
7± 1α3 29.
7±8.
24 (2−
8) 15 (6) 〔9) 〔9) 63.
7± 9,
8 34.
9 ± 14.
⊥ 5 (0−
12) 巾 央f
直 (最 低f
直一
最 高frE
)察
群 内 比
較
でMT
群 だ け が有
意 な 改善
を 認 め たこ と は,
MT
の片 麻痺
L
肢 機 能 改 善
に対 す
る有 効 性
を示 唆
してい る。
急性 期
ま た は 亜 急性 期
において,
MT
群で は自
然 囘復
に加
えて,
鏡に よる視 覚
的錯 覚
の影 響
が加
わる。
今
回 の研 究
で は,
対 照 群
は鏡
を使 用
しな
い状 況
でMT
群
と同
じ他 動
運動
を実 施
しているた め,
両
群の違い は非 麻 痺
側の鏡像 注 視
,
つ まり視 覚 的 錯 覚
の有 無
の み という
こ と にな
る.
: し た がっ て,
今 回 示 唆 さ
れ たMT
の有 効 性
は,
「
鏡
に よ る視 覚 的錯 覚 」
が急 性 期
ま たは亜急 性 期
の片 麻
痺
上肢 機 能
の改善
に有 効
であっ た と言
い換
える ことができ
る。 こ の錯 覚
は,
「
麻 痺 し
た手 が 動
い て い る」 あ
る い は「
ス ムー
ズに動
い てい る」
という も
の であ り
,
リ ア ル な 運動
イ メー
ジの生成
が推 察
さ れ る。
こ の よう
な 運動
イ メー
ジの利 用
が効 果 的
であ
る こと は,
様
々な先 行 研 究
に66
理 学療法学 第33
巻 第2
号 Fug卜Meyer assessment soale 20 15 10 5MT
群
* o 介入前 介入後一
e一
症 例 A1 + 症 例 A2 + 症 例 A3 → ←症 例 A4 → ← 症例 A5 + 症 例 A6−
→一
症 例 A7一
日一
症 例 A8−
◇一
症 例 A9 FugトMeyer assessment Scale 20 15 10 5 0対 照群
e
r
v
a
介 入 前 介 入後 →一
症 例 Bl+
症例 B2−
e一
症例 B3→ ← 症例 B4 → ← 症 例 B5−
●一
症 例 B6 図3
第1
介人期の比較* p<
0
、
05Wilcoxon
signed rank test F嵋 トMeyeraSS3ssment scale 20 15 10 5 0一
一P−一
症例 B1−一
一一
一
一
症例 B2−−
e−一
症例 B3一
ラ←一
症 例 B4一
引←一
症例 B5−
●一
一
症例 B6・
K)一・
中央値 図4 対 照 群の第1
・
ll
介 入 期 破線一
一
一
一
は 中 央 値の 変 化 を 示 す.
よっ て示
さ れている12)18〕19 }。MT
介 入
を操 作 交 代
に より他 動 運 動 介 入
へ と移 行 す
る こ と は困難
であっ た。
被検 者
の心 理面
か ら考
えると,
研
究 目的
であ
る介 入
を一
般 的介 入
へ と移 行 す
る こと は,
ク ロ スオー
バー
研 究
の難
しい点
であ
る と思
わ れ る。今 回
は片
側の み の不 完
全 な操 作 交 代
と なり
,
クロ ス オー
バー
デザ イ
ン自体
の利 点
であ
る介 入 時 期 効 果
励 の否 定
は不 可
能
とな
っ た。対 照 群
の操 作 交 代 後
のMT
実 施 効 果
は有
意
な改 善
とはな
らな
か っ たが,
個 別 症 例
とし て は,
操 作
交代 後
に著 明 な改 善 を認
める に至
った も
のもあ
った
。 こ れも
,
あ
る種
の症 例
に対 す
るMT
の有 効 性 を 示 唆 し
て い るも
の と考 え
る。我
々 は先 行 研 究
において,
MT
の効
果
が より顕 著
に現
れ る症 例 と
し て,左 麻 痺
,
感 覚 障害
のな
い ことを 報 告
してき た
13)。 し か しな
が ら,
今
回の研
究
で は,
MT
に より著 明
な改 善 を
示 した2
症
例 はいず
れも右 麻 痺
であ り
,
全 く効 果 を認
め な かっ た左 麻 痺 症 例 も
存在
した
。 この こと
より
,
先 行 研 究
13〕と同様
の麻 痺 側
によ る優位 性
は再 認で き な かっ た。
理由
と して考
え ら れ ること
は,
先 行研 究
が自然
回復 期 を過
ぎ た慢 性 期 症 例
が対 象
であ
った
こと に対
し て,
本 研 究
は自然
回復
の要 素 と
MT
効
果の両方
を 反映
してお り,麻 痺
側 に 関 係 なく
生 じ る自然
回復 も含
め た効
果判 定 を実 施
し てい る た め証 明
が困 難
であ
っ たと推 測
す
る。
感 覚 障 害
の有 無
に 関 しては先
行
研 究 と 同様
で あり
,感
覚
障害
が ない場
合 に著
明 な改 善
を 示 し,感 覚 障 害
が あ る 場合
に は変 化
し ない傾向
がう
か がえ
た。
急
性 期
,
亜 急性 期 あ
るい は 回復 期
の介
入研 究
は自然 回
復
との区別
が困 難
で あ る た め,介
入の効 果 判 定
は容 易
で は ない。
今
回の研 究で も,
群 間 比較
で は有 意
な 差 を認
めず
,
ま た対 照 群
の群 内
比較
に おい て,
有 意 差
は認
め ら れ ない まで も あ る程 度
の改 善
が み ら れ た。
これ は自然 回復
と考 え
る のが妥
当
である。
い
く
つ かの先 行 研 究
の よう
に慢 性 期 片 麻 痺 患 者
へ のMT
の効 果
を考
え る場 合
,
運 動 麻 痺
の自然 回復
の要 素
は排 除
さ れ,
いわゆ る「
学 習
さ れ た麻 痺 (
learned
paraly−
sis
)
」
20)「
学 習 さ れ
た不 使 用 (
learned
non−
use)」
6)という
二次 的 障 害
の影 響
が大 きな 要 素
とな
る。 これ ら は「
動
かな
い」
という
フ ィー
ドバ ッ クを受 け
るうち
にそ
の こ とを学 習 し
てし ま
い,
運 動麻 痺 が助 長 し
たか
の ような状 態
を
旱 してい る可 能性
があ
る という も
の であ
る。今 回
の亜急 性 期 片 麻 痺 患 者
の場 合
で は,
発 症
か ら の期 間
を考 え
れば
,
機 能 障 害
に占
め る二次 的 障 害
の要 素
が大 きな も
の と は言
い難
い。し
たが
っ て,
明
らか な改 善 を示 し
た症 例
に 関 して は,
MT
に よ る刺 激
が運 動麻 痺
の改 善
に何
らかの影響 を与 え
たも
のと
し て捉 え
ら れ る。MT
の運 動 麻 痺
に対 す
る効 果 を判 定 す
る た め に は,
自
然
回復
と従 来
の訓練 効
果 を考慮
し たト で,
急 性 期
か らの適切
な介
入を考 え
ていく
必要
が あ る。
ま
た, 二次
的障害
へ の効 果 を考 え
る た め に は,
慢 性 期 症 例 を対 象 と
し た研
究 も進
め る 必 要 が あ り,MT
介
入の適
切 な 時 期 も検
討 さ れ るべき
で あ る。
さ ら に ,症
例数 を増
や し た 研究
に よ り,脳 卒 中後上肢 運 動 麻 痺に対 する鏡 像 を利 用 した治 療の効 果 67
麻 痺 側
,
障 害
の状 態 な
どMT
の真
の適 応 を判 別 し
,
そ
の実 施 方 法
を検 討す
る こ とも今 後
の課 題
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