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精神疾患に対するスティグマへのアクセプタンス&コミットメント・セラピーによる介入の効果検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-18 332

-精神疾患に対するスティグマへの

アクセプタンス&コミットメント・セラピーによる介入の効果検討

○津田 菜摘1)、武藤 崇2) 1 )同志社大学心理学研究科、 2 )同志社大学心理学部 【問題・目的】 本研究の目的は,アクセプタンス&コミットメン ト・ セ ラ ピ ー(A c c e p t a n c e a n d C o m m i t m e n t Therapy;ACT)の精神疾患に対するスティグマへ与え る影響を顕在的・潜在的指標を用いて検討することで あった。精神疾患に対するスティグマは,精神疾患を 持つ人の社会復帰を妨げるなどの問題を引き起こすた め,問題視されてきた。Masuda et al. (2007) では, 教育的介入では心理的柔軟性が高い群のみでしかス ティグマ減少がみられなかった。一方でACT介入では 心理的柔軟性の高低に関わらずスティグマが減少した ことが報告されている。このことから,スティグマへ の介入にはACTが適していると考えられる。しかし, これまでのACTを用いたスティグマ介入の研究におい て,潜在的指標による効果測定を行ったものはみられ ない。スティグマなどの社会的にセンシティブな内容 については,顕在的指標では正確な測定が行われない という可能性がある。そこで,正確なスティグマの測 定には,潜在的指標の利用が必要であると考えられ る。 【方法】 実験参加者 Masuda et al. (2007) に従い,心理学 を専攻する学部生を対象として,授業内で参加者募集 を行った。心理的柔軟性の高低によるスティグマ減少 の違いを測定するために,スクリーニングを実施し た。スクリーニングでは,Acceptance and Action Questionnaire-II (以下,AAQ-II; 嶋ら, 2013) を使 用した。AAQ-IIは合計得点が高いほど心理的柔軟性が 低いことを示す尺度である。AAQ-IIの標準化された平 均値-1SD以下の者をAAQ低群 (n=53), 平均値+1SD以上 の者をAAQ高群 (n=29) として設定した。 指標 ( 1 ) 顕在的指標:日本語版LINKスティグマ尺 度(スティグマ尺度;下津ら, 2006) を使用した。ス ティグマ尺度は, 4 件法を用いた,12項目で構成され る質問紙尺度であった。

( 2 ) 潜 在 的 指 標:Single Category- Implicit Association Test (SC-IAT;Karpinski et al., 2006) を使用した。SC-IATは,中央に提示された刺激 語が,画面上部の左右に提示されたカテゴリーのう ち,どちらに当てはまるかを選択させるコンピュータ 課題である。本研究で用いたカテゴリーと刺激語の選

定は津田・武藤(2018)に従った。また,得点の算出 については,Greenwald, Nosek and Banaji (2003) に従った。 介入内容 介入内容は教育的介入と,ACT介入の 2 つ を使用した。教育的介入では,心理教育を中心とし て,精神疾患についての情報を提示することを主目的 とした。一方,ACT介入では,心理的柔軟性を向上さ せることを主目的とし,体験的なエクササイズを含め て実施した。両群のプロトコルは共に,Masuda et al. (2007) において使用されたものを和訳して使用 した。和訳・使用については,第一著者に同意を得 た。両群共に,介入前後のアセスメント(Pre, Post) を含めて,最大 3 時間のプロトコルであった。 手続き 参加者には 3 時間の介入と,フォローアップ (FU)の合計 2 回実験室に来室させた。介入では,ACT 介入と教育的介入群にランダムに振り分けられた。実 験は,最大10名の参加者を実験室に来室させ,集団形 式で実施した。まず,参加者には,コンピュータ課題 と質問紙への回答を行わせた。次に,介入(教育また はACT)を実施した。最後に再度コンピュータ課題と 質問紙への回答を行わせた。また, 1 カ月後以降にFU として,コンピュータ課題と質問紙への回答を行わせ た。FUでは, 1 〜 2 名が同時に回答を行った。本研究 は, 2 (介入方法:教育,ACT)× 2 (心理的柔軟性: 高,低)× 3 (時期:Pre, Post, FU)の 3 要因混合 デザインであった。 倫理的配慮 本研究は同志社大学「人を対象とする研 究に関する倫理審査委員会」の審査を経て、承認を得 た上で,実施した(申請番号:17010)。 【結果】 潜在的スティグマを有しているという前提の確認 潜 在的指標によってスティグマを有しているかを検討す るために,SC-IATの D スコアに対して, 1 サンプルの t 検定を実施した。その結果,心理的柔軟性高群のFU 時点以外は 0 から有意な差があることが示された(心 理的柔軟性高群-ACT実施: t (11)=1.51, n.s. ; 心理 的柔軟性高群-教育的介入実施: t (12)=1.90, n.s. )。 介入のスティグマへの影響の検討 次に, 2 つの介入 によるスティグマ減少効果を検討するために,顕在 的・潜在的指標の得点を用いて,介入方法(ACT,教 育)・群(心理的柔軟性高,低),時期(Pre, Post,

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333 -FU)による三要因の分散分析を実施した。その結果, 顕在的・潜在的指標ともに,時期(Pre, Post, FU) の 主 効 果 が み ら れ た( 顕 在 的 指 標:F (2, 124) =12.59, p <.01,潜在的指標:F (2, 124)=11.93, p <.01)。 顕在的・潜在的スティグマの関係の検討 顕在的・潜 在的スティグマの間には,群,時期に関わらず相関は みられなかった。 【考察】 本研究の目的は,ACT介入によるスティグマ減少効 果を,顕在的・潜在的指標を用いて検討することで あった。その結果,顕在的・潜在的指標共に,時期の 主効果しかみられなかった。そのため,介入前後にお けるスティグマ減少は介入内容や,心理的柔軟性の高 低に関わらず,同程度であることが示された。本研究 の結果は,Masuda et al. (2007) の結果を一部支持 していた。 また,顕在的・潜在的指標の間に相関がみられな かったことから,顕在的スティグマと潜在的スティグ マは,異なるスティグマを測定していることがわか る。顕在的指標において,社会的望ましさの影響を受 けている可能性があるため,今後も潜在的指標を用い た測定を行う必要がある。 一方で,心理的柔軟性の高低によって顕在的・潜在 的スティグマに有意差がみられていないことから, Masuda et al. (2007) で測定されたスティグマの特 徴とは異なることが明らかになった。本結果が文化差 によるものなのか,尺度の違いによるものであるかは 今後検討の余地があるだろう。 本研究の限界点として,対象群に教育的介入を用い たことが挙げられる。これにより,時期の主効果によ るスティグマ減少が,どの程度意味のある減少かは不 明である。今後は,精神疾患に関する情報を与えない 統制群を用いて,研究を行う必要性が示唆された。 【主な引用文献】

Masuda, A., Hayes, S. C., Fletcher, L. B., Seignourel, P. J., Bunting, K., Herbst, S. A., ... & Lillis, J. (2007). Impact of acceptance and commitment therapy versus education on s t i g m a t o w a r d p e o p l e w i t h p s y c h o l o g i c a l disorders. Behaviour research and therapy, 45 (11), 2764-2772.

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