2004年10月15日発行
株式会社 半導体理工学研究センター
Semiconductor Technology Academic Research Center (STARC)
No.
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CONTENTS
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STARCシンポジウム2004報告
・ポスターセッション
・最先端研究報告(プロセス・デバイス)
・最先端研究報告(システム)
共同研究グループ便り/黒田研究グループ
共同研究グループ便り/中島研究グループ
共同研究グループ便り/浜口研究グループ
カルチャミックスのメソドロジ開発室の現状紹介
・次世代統合設計フローの開発を目指す ZDフローチーム
・次世代統合設計フローの開発を目指す Pegasフローチーム
・メソドロジの基盤を支える解析 ANAチーム
・明日のサインオフを科学する SOHOチーム
・SOC設計環境を支える ライブラリチーム
学会報告/第30回ESSCIRC報告
AP-ASIC2004報告
Embedded Technology 2004/組込み総合技術展の紹介
STARCニュースのバックナンバーは、 STARCホームページ『http://www.starc.or.jp』 からご覧いただけます。STARCシンポジウム2004は、新横浜国際ホテル南館で9 月9日(木)、10日(金)に開催され、過去最多の376名の方々 にご参加いただきました。本シンポジウムは経済産業省およ び文部科学省よりご後援を、多くの団体より協賛をいただき、 多くの大学およびSTARC株主会社の方々のご協力の下、実 施されました。 今年のシンポジウムテーマは2004年度からの国立大学法人 化に伴い、大学と産業界の関係のさらなる発展を視野に、「大 学と産業界の新たなる関係の構築」とプログラム委員会で決 定いたしました。プログラム編 成および当日の技術セッション の座長にはSTARC株主会社の 方々にご尽力いただき、STARC 全員が結集して、快適な2日間 のシンポジウムを過ごしていた だけるよう運営にあたりまし た。 9月9日(木)13:00から、下 東社長の開会の辞、ご来賓の経 済産業省福田秀敬氏よりご挨拶 をいただき、講演が開始されま した。基調講演は、東京工業大 学副学長の下河邊明先生が「国 立大学法人化とこれからの産学 連携」と題し、東京工業大学で の法人化の具体例をお話いただ きました。招待講演として産業 技術総合研究所の内山耕氏が社 会経済ニーズに基づく研究方法 論を「産学連携の谷間にひそむ 悪夢に立ち向かう新しい研究方 法論−第2種基礎研究−」と題 して講演されました。 一方、半導体産業界からは10 日 に 、 S T A R C 取 締 役 で あ り SNCC2(Semiconductor New Century Committee 2)討議で は主査としてご活躍された松下 電器㈱宇野正氏が「半導体産業 界の方向と大学への期待−第2 次SNCC提言から−」と題して 発表されました。その後、下東 社長のSTARC活動紹介、福岡 システムLSIカレッジ副校長の 平川和之氏より「SoC教育の現状と将来」と題してアジア地 域のSoC教育の現状紹介とLSIカレッジでの活動紹介があり ました。シンポジウムの締めくくりは、スタンフォード大学 Richard. B. Dasher教授が「Implementing New Patterns of
U n i v e r s i t y - I n d u s t r y Collaboration in Japan : lessons from the U.S.」と題して米国で の産学連携の現状紹介と提言を 流暢な日本語でお話いただきま した。 新しい制度を発足させた大学 からの情報発信、対応する半導 体産業界の将来構想、アジア、 米国の現状など新たなる関係の 構築に向け、基調情報が伝達さ れると同時に、会場からも博士 課程卒業者の就職を積極的にな ど企業への要望も含む多くの討 論がなされました。 シンポジウムの初日、恒例の 大学若手研究者によるポスター セッションがありました。大学 との共同研究テーマから提案の あった31名の若手研究者が各自 2分間という短い時間で、各自 のポスター概要を述べ、その後、 会場に移動し、ポスターを前に して熱心な討論がなされていま した。多数の方々にご出席いた だきましたレセプションでは、 6名の若手研究者がプレゼンテ ーション技術を副賞とともに表 彰され、記念に下東社長と一緒に写真に収まっていました。 年々、プレゼンテーションの技術が向上し、いずれも甲乙つ けがたい発表となっていました。 昨年度から開始されました共同研究賞表彰も、レセプショ ンの新たな行事となっています。今年は2003年度終了した共 同研究テーマから、システム分野 早稲田大学 笠原先生 (客員研究員:高橋主査(富士通)、高山氏(松下電器)、安 川氏(東芝))、プロセス・デバイス分野 東京大学 尾嶋先 生(客員研究員:臼田主査(東芝)、劉氏(沖電気)、丹羽氏 (松下電器))の2先生が受賞されました。受賞の際には、研 究テーマでご苦労いただきました客員研究員の方々も壇上に
大学と産業界の新たなる関係の構築
STARCシンポジウム2004報告
STARCシンポジウム2004報告
来賓挨拶 福田氏 基調講演 下河邉氏 招待講演 内藤氏 招待講演Ⅰ 宇野氏 活動紹介 下東社長 共同研究表彰システム分野 右から 下東社長、笠原先生、 高山客員研究員(松下電器)、 安川客員研究員(東芝) 共同研究表彰プロセス・デバイス分野 右から 下東社長、尾崎先生、 臼田客員研究員主査(東芝)、 劉客員研究員(沖電気) 招待講演Ⅱ 平川氏 招待講演Ⅲ R.B.Dasher氏 ポスターセッション会場風景 レセプション会場あがっていただき、先生とともに受賞の喜びをお話いただき ました。 シンポジウム2日目の技術セッションは、今後、発展が期 待されているユビキュタス技術を生体認証(瀬戸氏(日立)、 森氏(富士通))と近距離データ通信(黒田先生(慶応大学)) の面から、並列のセッションでは、ユビキュタスシステムを 支えるユビキュタスハードウエア技術をモバイル用電池 近 藤氏(松下電池工業)、有機ELディスプレイ 柴田氏(三洋 電機)、CMOSイメージセンサ 吉村氏(ソニー)の面から 将来を見据えてお話いただきました。その後、仕様設計セッ ションでは、UML(Unified Modeling Language)利用ポイン ト 田中氏(東芝)、UMLと検証 中田氏(富士通)、設計 方法 高田先生(名古屋大学)と経験と今後の新しい高位設 計方法をお話いただきました。新デバイスセッションでは Sub10nmCMOSデバイス 最上氏(日本電気)、新世代ゲー トスタック 芝原先生(広島大学)、サブ10nmデバイスモデ ル 小川先生(神戸大学)と最近の話題と将来についてお話 いただき、4セッションを2並列で行いました。Up-to-date な話題であり、講演後、講演者と熱心に討議する姿がありま した。 大学およびSTARC株主会社からの多大なご協力に支えら れた2日間のシンポジウムとなりました。2005年は関西での 開催を予定しております。ぜひ、多数の方々のご参加をお願 い申し上げます。 (宮本俊介) 界面制御された高信頼性Cu合金薄膜 の開発 バンク構成レジスタファイルを用いた スーパスカラプロセッサの研究開発 ポスターセッションは31件の発表があり、学生による2 分間/件のショート・プレゼンテーションが行われまし た。2分間という短い時間で、各自のポスター概要を述べ、 いかに研究を効果的にアピールするかの難しいプレゼンテ ーションですが、わかってもらうための努力と真剣な姿が ありました。その後、場所を移して、ポスターを前にして の熱心な討論が行われました。どのポスターの学生も意欲 的に取り組んでいる姿勢が伺えました。また何より若い研 究者と研究テーマ内容について真摯な対話ができたことは 刺激でもありとても楽しい時間になりました。ぜひ、次の 時代を担い世界をリードする仕事に取り組んでいただきた いと心からお願いする次第です。 審査員による投票の結果は、最優秀賞は徳永和宏君(東 京大・桜井研)「Dual-VTH、dual-VDD、dual-Wを使った 低消費電力ライブラリに関する考察」、優秀賞は野口宏一 郎君(神戸大・永田研)「オンチップ信号モニタ回路の構 成 と 評 価 」、 村 地 勇 一 郎 君 ( 金 沢 大 ・ 吉 本 研 )「 サ ブ 100mW・MPEG2MP@HL動きベクトル検出プロセッサ」、 特別賞は小高剛君(早稲田大・笠原研)「OSCARチップマ ルチプロセッサ上でのデータローカリティを考慮した MPEG2エンコード」、前田志君(広島市大・マタウシュ研) 「バンク構成レジスタファイルを用いたスーパスカラプロ セッサの研究開発」、和田真君(東北大・小池研)「界面制 御された高信頼性Cu合金薄膜の開発」が受賞しました。 将来の研究を担う学生諸君は、企業の最先端の技術者か らの厳しいコメントや優しいアドバイスをもらい、今後の 研究に生かせていきたいと語っていました。 (平田雅規)
ポスターセッション報告
●特別賞 和田真君 (東北大・小池研) ●特別賞 OSCARチップマルチプロセッサ上でのデータ ローカリティを考慮したMPEG2エンコード サブ100mW・MPEG2MP@HL 動きベクトル検出プロセッサ ●特別賞 小高剛君 (早稲田大・笠原研) ●優秀賞 村地勇一郎君 (金沢大・吉本研) オンチップ信号モニタ回路の 構成と評価 Dual-VTH、dual-VDD、dual-Wを使った 低消費電力ライブラリに関する考察 ●優秀賞 野口宏一郎君 (神戸大・永田研) ●最優秀賞 徳永和宏君 (東京大・桜井研) 徳永君のプレゼンテーション 表彰式 受賞の皆さん▲ 前 田 志 君 ︵ 広 島 市 大 ・ マ タ ウ シ ュ 研 ︶2つのセッションで、ユビキタスハードウェア技術に関し て3件、新デバイスに関して3件の計6件の最新の研究報告 がなされた。 ユビキタスハードウェア技術のセッションでは、近藤氏 (松下電池工業)が「モバイル機器用電池の技術動向」と題 して、これまでの電池の進化、今後の技術動向や性能向上の 可能性について講演された。モバイル機器用電池には高エネ ルギー密度、コンパクト、急速充電などの要求があり、これ に答える電池として、小型二次電池のうちでもリチウムイオ ン電池の生産量が急速に伸びている。その高エネルギー密度 化は著しく、90年代初めに190Wh/lであったエネルギー密度 は現在490Wh/lにまで達しており、今後電極材料などの開発 によりさらに高密度化が期待される。また、モバイル用燃料 電池も、現状、既存の電池の1/3程度の性能だが今後大幅な 向上が期待されることなどが紹介された。柴田氏(三洋電機) は「有機ELディスプレイの開発動向」と題して、有機ELの これまでの進化、今後の技術動向について紹介された。有機 ELは、高コントラスト、高視認性、高速応答で、視野角の 制限なく、薄型のディスプレイを実現できる技術として次世 代ディスプレイの有望な候補となっている。現状パッシブ方 式あるいは、ポリシリコンTFTを用いたアクティブ方式の 小型のディスプレイとして商品化されているが、今後、燐光 材料を用いた高輝度化、トップエミッション構造の採用、ア モルファスSi-TFTを用いた大面積化などにより、大型・高 解像度のディスプレイとしての開発が進んでいくことが期待 される。吉村氏(ソニー木原研究所)からは、「高機能 CMOSイメージセンサとその応用」と題して、複数のフレー ムメモリと演算部を画素単位で実装し、受光中の輝度の時間 的変化を10000フレーム/秒 以上の高速に検出することの 出来るCMOSイメージセンサ と、その応用技術として実時 間三次元計測や時間変調パタ ン認識を用いたID認識や並 列光空間通信についてデモを 交えた講演があった。 (西川 哲)
最先端研究報告 プロセス・デバイスⅠ
(ユビキタスハードウェア技術セッション)
新デバイスのセッションでは、最上氏(日本電気)が「Sub-10nm CMOSデバイス実現への挑戦」と題して、Sub-新デバイスのセッションでは、最上氏(日本電気)が「Sub-10nm CMOSの開発の現状と課題について講演された。微細加工や プロセス上の工夫によりゲート長5nmのバルクCMOSFETの 正常動作を確認したが、DIBLの低減、寄生抵抗の低減、ゲ ート容量の向上などの改善が必要であり、さらに微細化を進 めると、ゲート長3∼4nm以下ではS・D間の直接トンネル 電流が課題となる。Si-LSIのさらなる高性能化のためには、 ダブルゲートなどの新デバイス構造、面方位制御技術、Ge 基板技術、プロセス歪技術、歪Si基板技術などの新材料、新 プロセスの導入が求められている。芝原助教授(広島大学) からは「新世代ゲートスタック(メタルゲート/high-K絶縁 膜)の開発動向」と題して、メタルゲート技術の最近の開発 動向が紹介された。ポリシリコンの空乏化対策、ポリシリコ ン/high-K絶縁膜で見られるフェルミレベルピニングの回避 策としてメタルゲートを導入する動きがあるが、メタルゲー ト普及の鍵は仕事関数変調技術の成熟にあるとし、仕事関数 変調技術の例として、フルシリサイド(FUSI)ゲートでの ドーパントのパイルアップ、Moへの窒素添加、high-K絶縁 膜との組み合わせなどの研究動向を紹介された。小川教授 (神戸大学)は「サブ10nm世代のデバイスモデリング」と題 して講演された。電子デバイスの高性能化はデバイスサイズ の縮小により達成されてきた。真空管から現在のULSIまで の100年の歴史の中で100万分の1の縮小が達成されており、 さらにその縮小が続いている。デバイスサイズが数10nm以 下なるとMOSFETのゲートのトンネリングリークやS・D間 のトンネリングなどの量子効果が問題となってくるとし、自 ら開発された非平衡グリーン関数法を用いる二次元量子輸送 解析モデリングの概要、ゲー ト 長 1 0 n m の ダ ブ ル ゲ ー ト MOSFETに適用した結果、 バンド構造や散乱モデルを取 り込んだ量子輸送理論による ナノ構造デバイス汎用シミュ レータの開発概要などについ て紹介された。 (西川 哲)最先端研究報告 プロセス・デバイスⅡ
(新デバイスセッション)
近藤正嗣氏(松下電池工業) 「モバイル機器用電池の技術動向」 柴田賢一氏(三洋電機) 「有機ELディスプレイの開発動向」 吉村真一氏(ソニー木原研究所) 「高機能CMOSイメージセンサと その応用」 最上徹氏(日本電気) 「Sub−10−nmCMOSデバイス 実現への挑戦」 芝原健太郎氏(広島大学) 「新世代ゲートスタック(メタルゲー ト/high-k絶縁膜)の開発動向」 小川真人氏(神戸大学) 「サブ10nm世代のデバイス モデリング」本セッションでは計3本の講演が企画された。最初の論文 でバイオメトリクス(生体認証)技術を俯瞰し、2番目の論 文で最も広まっている指紋認証技術を原理から製品まで紹介 し、3番目の論文で近距離データ通信技術としてUWBおよ びチップ間通信について概説している。いずれも来るべきユ ビキタス時代に必須となる要素技術である。以下、順に内容 を要約する。日立製作所の瀬戸洋一氏による「ユビキタス時 代のバイオメトリック技術」では、元々拇印を捺す習慣のあ った日本が指紋認証の発祥の地といえることから始まり、指 静脈認証や顔認証などを例に取りプライバシーやシステム攻 撃の検討、標準化の必要性が述べられた。耐タンパ性の研究 が産学連携の格好のテーマになり得ることが提案され参考に なった。またプライバシーに関わる技術などに関し日本では オープンな議論が難しくヨーロッパなどをウォッチしている 実情が紹介され印象に残った。富士通研の森雅博氏による 「指紋認証技術の現状と将来」では、実績・認証精度の高 さ・小型・低コスト・処理の軽量などの特長により指紋認証 が国内市場で約80%、世界市場で52%の市場占有率を獲得し ていることが述べられた。光学式と静電容量式の2種類の指 紋センサ、認証性能指標、特徴点抽出アルゴリズムなどの技 術説明に続き、ノートPCや携帯電話、ICカードへの展開例 が紹介された。実用化の課題としてガイダンスや使用者の慣 れなどが大きい要素であると言われたことが興味深かった。 慶応大学の黒田忠広教授による「ユビキタスコンピューティ ングのための近距離データ通信技術」では、注目されている UWB(Ultra Wide Band)技術についてアプリケーションか らパルス方式vs.マルチバンド方式の標準化の争いまでドラ マチックに紹介された。さらに、チップ間通信の重要性を説 きWSC(Wireless Superconnect) 技術の候補として容量結合とインダ クタンス結合の2方式につき利害得 失を解析し、インダクタンス結合方 式の要素技術に展開された。これま でDRAM混載やSiP、コンボメモリ など腕力で処理してきた課題をエレ ガントに解決する技術候補として注 目される。 (益子耕一郎)
最先端研究報告 システムⅠ
(ユピキタス技術セッション)
本セッションではシステムレベルの設計技術に関する報告 が3件あった。田中利一氏(東芝)は「SoC時代のシステム設 計技術−UMLを利用するポイント」と題して、UML(Unified Modeling Language)利用の利点を述べた。組み込みシステ ムは開発規模が増大化するとともに開発期間の長期化が問題 となっている。納期遅延の原因は仕様書の不備や曖昧さであ ると指摘して、これらの問題を解決するためにユーザ視点か らの要求分析・設計を重視した開発手法について概説され た。SW技術者とHW技術者がUMLなどを利用して、効率的 にコミュニケーションを図ることにより作業の後戻りが大幅 に減少したと報告した。続いて中田恒夫氏(富士通研究所) は「UMLによる仕様記述を起点としたLSI検証手法」と題し て、UMLによる検証事例を発表した。システムLSIの大規模 化による設計危機が叫ばれて久しいが、それを解決するため の上流設計はなかなか普及していないのが現状である。この 原因は上流設計EDA技術者がLSI設計技術者の求める価値を 提供してことであると指摘して、仕様書をどう書くか、どの ように利用するかにフォーカスし、仕様書のあり方から説い た。提案する手法により携帯電話向け画像処理LSIへの適用 例を紹介して、UMLによる仕様書をもとに作業した結果、バ グ数が激減して、ファーストシリコンで動作したと報告した。 高田広章教授(名古屋大学)は「システムレベルの仕様設計 から実装へ−ソフトウェア技術サイドからの一提案−」を発 表した。ハードウェアとソフトウェアをシステムレベル言語 により一体記述する手法について紹介した。システムレベル 記述においては、並列動作する複数の機能ブロックとその間 を結ぶ通信プリミティブをC言語で記述して、またそれらの 構成を指定する構成記述を用意する。合成ツールによりHW、 SW、インタフェースの実装記述が生成される。実装記述に 対して性能見積もりを行い、必要であればHWとSWの分割 を変更して再試行する。最後に産学 連携についての提言をいただいた。 組み込みシステムの分野はこれまで 大学側に研究者が少なく、産学連携 研究が活発ではなかったが、今後は 産学連携を促進して企業ニーズを取 り込んだ研究を進めていきたいと締 めくくった。 (平田雅規)最先端研究報告 システムⅡ
(仕様設計セッション)
高田広章氏(名古屋大学) 「システムレベルの仕様設計から実装へ −ソフトウェア技術サイドからの一提案−」 中田恒夫氏(富士通研究所) 「UMLによる仕様記述を起点とした LSI検証手法」 田中利一氏(東芝) 「SoC時代のシステム設計技術 −UMLを利用するポイント−」 瀬戸洋一氏(日立製作所) 「ユビキタス時代の バイオメトリック技術」 森雅博氏(富士通研究所) 「指紋認証技術の現状と将来」 黒田忠広氏(慶応大学) 「ユビキタスコンピューティングの ための近距離データ通信技術」研究室紹介
2000年にスタートしたばかりの駆け 出 し の 研 究 室 で す ( h t t p : / / w w w . kuroda.elec.keio.ac.jp/)。第一期生の 3人の学生は、今年、博士課程の1年 生になりました。修士と学部の3学年 に各5人ずつ学生がいます。さらに、 社会人ドクターが1人と、中国および インドからの留学生が修士課程に各2 人ずつ加わり、総勢23人の学生が狭い 研究室に溢れています。 研究テーマは、インタフェースです。 とくにワイヤレスとブロードバンドと ヒューマンコンピュータインタラクシ ョン(HCI)を追究しています。ワイ ヤレスでは、短距離データ通信が対象 です。STARCとのUltra Widebandに 関する研究プロジェクト「ユビキタ ス・コンピューティングのための低コ ストで低電力な短距離ワイヤレス接続 技術」(図1)は、その代表的なプロ ジェクトです。さらに短距離では、パ ッケージ内に積層実装された チップ間を磁界結合や電界結 合を利用してデータ通信する 無線インタフェースの研究を しています。チャネル当たり 1Gb/sの通信が実現できてい ます。ブロードバンドでは、 40Gb/s CMOSシリアルリン ク用トランシーバや10Gb/s 用CMOSイコライザの研究を しています。HCIでは、遺伝 的アルゴリズムを使って人間 の顔を検出・識別する画像認 識技術を研究しています。こ うしたインタフェースは、ユ ビキタス情報化社会を実現す るための重要な技術になると 考えています(図2)。Know Whatから
Know Whoへ
集積回路にとって、以前は、スケー リ ン グ の ノ ウ ハ ウ が 重 要 で し た (Know how to make)。ですから職人 集団の組織化が有効でした。最近では、 何を作るかが、より重要だといわれています(Know what to make)。未来 を的確に描けるビジョナリと問題を解 決できるソリューションプロバイダが キーパーソンです。これからは、シス テムがさらに複雑で広範な技術分野に 及びますから、誰と協働するかが重要 になると、私は考えています(Know who to collaborate with)。大きなプロ
黒田研究グループ
テーマ名●ユビキタス・コンピューティングのための低コストで低電力な 短距離ワイヤレス接続技術 研究代表者●慶應義塾大学 理工学部電子工学科 教授黒田 忠広
(くろだ ただひろ) LNA sliding timing controller template pulse buffer txdata rxdata clkin clkin power switch reset switch RFin clkout OFF TS RST 高速同期獲得 アルゴリズム generator 成果①:パルス生成回路不要(UWBST2003発表) 成果②:電源をON/OFFすることによりLNAを低電力化(ISCAS2004発表) 成果③:テンプレートパルスの効率化(特許1件申請中) 成果④:高速同期獲得アルゴリズムの提案 (UWBST&IWUWBS2004発表、特許2件申請中) 成果⑤:CMOSトランシーバーの試作と実測評価 成果⑥:UWB用チップ搭載型アンテナの検討①
②
③
④
⑤
⑥
後列左から 善積(M2)、原田(M1)、寺田(M2)、溝口(D3)、三浦(B4)、窪山(M1)、 古川(M2) 前列左から 森客員研究員(富士通)、太矢客員研究員主査(沖電気)、黒田教授、眞田助教授、 山谷客員研究員(松下電器)、益子上級研究員(STARC) 図1:STARC共同研究“ユビキタス・コンピューティングのための低コストで低電力な 短距離ワイヤレス接続技術”の成果共同研究
グループ
便り
ジェクトを組織してその成果を社会に 生かすことのできるオーガナイザとプ ロデューサが活躍するのではないでし ょうか。
融合と連携を目指して
現代の複雑な集積システムは、20世 紀の古典的な学問分野では十分に対応 できません。学問融合が求められる新 しい時代に入っています。ナノテクノ ロジ、生命学、ロボット工学、感性工 学など、集積回路の対象は急速に拡大 しています。異分野技術の融合と連携 がますます重要になると思います。こ の問題は誰に聞けばいいのか?との問 いに答えるというのが、大学の研究室 に求められる新しい役割だと思いま す。 わたしたちの研究テーマでも、学問 融合が求められています。例えば、 Ultra Widebandやチップ間無線通信 の研究では、電磁気学、電子回路工学、 集積回路工学、物性デバイス工学、情 報通信工学の総合学問が求められま す。あるいは、ブロードバンドでは、 デバイス性能を最大限に引き出すアナ ログ・デジタル混載回路と集中・分布 定数回路の設計技術が重要です。また、 HCIでは、遺伝的アルゴリズムをハー ドウェアとソフトウェアの両面から総 合最適化することで、初めてリアルタ イムの顔認識システムを低価格で実現 することができます。 学生たちは、こうした融合と連携の 大切さを、産学連携の共同研究の場で、 実社会の現実問題に取り組みながら学 んでいます。産学連携のもたらす重要 な成果の一つに、人材育成があると実 感しています。半導体産業は、これま でに類がないほど成長速度の速い分野 ですから、若い人たちの活躍に期待す るところは非常に大きいです。 STARCプロジェクトで育てていた だいた研究室の学生が、来春社会に巣 立ちます。最後になりましたが、温か く ご 指 導 を し て い た だ き ま し た STARC研究員のみなさまに、厚くお 礼を申し上げます。 沖電気工業㈱ シリコンソリューションカンパニ デザイン本部 RF商品開発部太矢 隆士
従来、ディスクリート部品主体で 構成されてきたワイヤレス機器にも 半導体集積回路が多用されるように なり、最近ではワイヤレス機能のワ ンチップへの集積も実現されていま す。半導体の微細化、高集積化によ る処理の高度化により、ワイヤレス 機器に用いられる通信方式も、集積 回路化に適した新規技術を取り込ん だ方式が規格化されるようになって きています。パルスベース無線方式 はこのような次世代のワイヤレス通 信方式のひとつで、低コスト、低消 費電力で短距離ワイヤレス信号伝送 を実現する技術として期待されてい ます。この分野では、海外各種機関 での開発が先行しており、日本の産 業界でも独自の取り組みが望まれて います。 黒田研究グループではパルスベー ス無線方式について早期から着目 し、開発を進めてきました。パルス ベース無線を半導体として実現する ために必要な技術要素として、高 速・広帯域回路技術、信号処理技術 の2つの側面から研究を進めていま す。研究開始当初から黒田先生、眞 田先生のご指導のもと、学生の方々 の主体的な活動により早期に実験シ ステムを立ち上げ、試作チップの設 計、信号処理方式の提案などの研究 活動が着実に進行し、すでに研究成 果については国際学会、国内学会等 で発表され注目されています。この 研究で得られる回路技術や信号処理 技術は次世代のワイヤレス応用分野 に広く適用できるものと期待してい ます。客員研究員主査からのコメント
考えるモノ、話すモノ 人間とコンピュータの 快適なインタフェース <ブロードバンド> コンピュータを 見えなくする <ワイヤレス> 超低電力 <ヒューマンコンピュータ インタラクション> 低コスト 基幹網:アップグレーディング インターネット アクセス網:ダウンサイジング ウエアラブル、インプランタブル端末 高性能 サーバ 図2:ユビキタス情報化社会(LSIの観点から)ソフトウェア・ハードウェア・コデザインの枠組みの 中で、最も軽視されているものは何か。この研究を始め るにあたって最初に考えたのはこのポイントでした。共 同研究者の高田先生とディスカッションを繰り返すうち に浮かび上がってきたのは、ソフトのハード化に力点が 置かれているため、コデザインの両輪の一つであるソフ トウェアの設計、とくに性能に関する設計支援が不十分 であるという結論に達しました。つまりハードウェアの 性能検証は綿密に行われているのに対し、ソフトウェア の性能検証は精度にもまた検証コストにも大きな不備が あるというのが我々の問題意識でした。 我々の研究は、これらのソフトウェア性能検証に関す る不備の解消を目的として行っています。まずSpecCで 記述されたソフトウェアを、実際にRTOS(ITRON)の 制御下で効率的に実行できるコードに自動変換するシス テムを開発しました。 次にコードの性能を正しく検証するための cycle accuratesimulator(CAS)の高速化を、計算再利用とい う技術を用いて行い、代表的な CAS である Simple Scalar5倍以上の高速化を達成しました。また並列処理 によってさらに高速化する手法も研究しています。 また割込みによる性能低下をできるだけ正確に見積も るために、キャッシュへの悪影響が最大となる割込みポ イント(複数)を高速に探し出すアルゴリズムや、多数 の最悪ポイント候補の中から真の最悪ポイントを高速に 発見するアルゴリズムの開発も行っています。
中島研究グループ
テーマ名●SpecCによるソフトウェア記述の性能検証システム 研究代表者●豊橋技術科学大学大学院 情報工学系 教授中島 浩
(なかしま ひろし) 共同研究者●名古屋大学大学院 情報科学研究科 教授高田 広章
(たかだ ひろあき)研究概要の紹介
後列左から 五十嵐客員研究員主査(東芝)、近藤客員研究員(ルネサス)、綱川客員研究員(ソニー)、 G.J.バーカ客員研究員(シャープ) 前列左から 高田教授(名古屋大学)、中島教授共同研究
グループ
便り
株式会社東芝 セミコンダクター社 システムLSI設計技術部
五十嵐 真悟
昨今、携帯電話や情報家電などに代表されるマイ コン組込み機器においては、高機能化、高性能化が 進むと同時にTTM短縮への要求が高まっています。 このような状況下での開発期間短縮の手段として、 高速なハードウェア/ソフトウェア協調シミュレーシ ョンに対する期待が高まっています。一方、従来の シミュレーション環境では、正確さとシミュレーシ ョン速度のトレードオフが存在するため、正確なら 遅い、速いなら不正確なシミュレーションしかでき ませんでした。 上記のような産業界の状況を鑑みて、中島研究グ ループでは高速なハードウェア/ソフトウェア協調シ ミュレーション環境に関する研究を行っております。 この環境は、正確さと高速性のトレードオフを高い レベルで解決したマイクロプロセッサのCAS(Cycle Accurate Simulator)とSpecCによる動作仕様記 述からターゲットソフトウェアへの自動変換システ ムの2本の柱から構成されています。 前者は、命令レベルのシミュレーションを“先行 実行”し、その結果を利用してパイプラインレベル の“詳細実行”の計算量を大幅に削減するという技 術をベースに、従来技術に比べ大幅な高速化がなさ れました。後者は、SpecC言語で記述された動作モ デル上でのハードウェア/ソフトウェアの分割が確定 した後に、ソフトウェアに割り当てられた部分を自 動的にμITRON上のタスクに自動変換することを可 能としました。この2本の柱を組み合わせることで、 正確かつ高速なシステム全体のシミュレーション環 境を早期に構築することが可能となります。 また、この環境をベースとして分散環境でのマル チCPUのシミュレーション環境や、ソフトウェア実 行時の最悪性能検証などの研究も進んでおります。 今後は、さらなる完成度の向上やドキュメント整 備などを進めて、産業界での利用を目指して行く予 定です。客員研究員主査からのコメント
これらの設計支援ツールの多くは、単純に実装すると 非常に長い時間となるので、高速化にはさまざまなアイ デアが必要です。この研究では、学生諸君からも沢山の アイデアが提供されており、プロジェクト終了後も積み 残したアイデアに基づく設計ツールの高速化や効率化に 取り組んで行くつもりですので、研究に興味を持たれた 企業の方々はぜひ声をかけてください。 中島研究室(豊橋技術科学大学)のメンバー 後列左から 中田(D1)、久野(M1) 前列左から 小西(M1)、中島教授、Rahman(D1)、高崎(M2) 高田研究室(名古屋大学)のメンバー 後列左から 飯山(D3)、宮本(M1)、本田(D3) 前列左から 高田教授、冨山講師フォーマル機能検証にむけて
設計される回路の規模が増大にする につれて、機能検証の工程が設計工程 に占める割合が無視できないほど大き くなりつつあります。設計回路の機能 検証を、高い精度で確実に、また相反す る要求ですが、できるだけ短時間で収 束させる手法が必要になってきていま す。本研究で、私たちはこの設計回路 の機能検証問題に取り組んでいます。 私たちが採用しているアプローチは フォーマル検証です。フォーマル検証 には依然として障壁が高い印象がつき まとっていますが、入出力に期待され るパタンの系列を記述して、それを調 べる、という手順は、基本的にこれま でのシミュレーションに基づく方法と 同じです。かつてPhDをとらなければ 書けないなどといわれていた仕様記述 も、実用性を意識した新しい記述言語 がつぎつぎと発表され、標準化も進ん できました。これらの言語はシミュレ ーションと組み合わせて用いることも 意識して設計されているため、しだい に設計者にとっても身近なものとして 浸透しつつあるようです。 フォーマル検証には計算量の壁の問 題が常につきまとってきました。これ は、すべての起こりえる場合を網羅的 に調べようとするところからきていま す。近年では、二分決定グラフやブー ル式の充足可能性判定を利用したアル ゴリズムが開発され、自動抽象化技術 なども導入されて、適用可能規模もか なり大きくなってきました。しかし、 本質的に計算量が大きな問題であるこ とには違いなく、アルゴリズムのさら なる改良もさることながら、どのよう にフォーマル検証技術を組み合わせて 適用するかという点について、工夫を 重ねていく必要があると思います。共同研究の概要と成果
モジュール間のインターフェース設 計は、とくにコーナーケースと呼ばれ る発見の難しい誤りが発生しやすい個 所で、設計資産の再利用を考えると、 厳格な設計検証を必要とする場面にも なっています。この共同研究で私たち が取り組んでいるのは、このインター フェース部分へのフォーマル検証技術 の適用です。 本研究の目的であるブロックモジュ ール(設計資産)のインターフェース に対するフォーマル検証の全体の枠組 みを図に示しています。フォーマル検 証を行うためには、まず、計算機で処 理することができるような形態で、仕 様を記述することが必要です。インタ ーフェースのプロトコルは、自然言語 と典型的な動作を取り出したタイミン グチャートを使って記述されている場 合が多く、これを仕様記述言語で記述 する必要があります。 仕様記述言語としては、富士通と日 立で開発された Componet Wrapper Language(CWL)を用いることにしま した。この言語は正規表現をベースに して、並列動作の記述能力など、イン ターフェースプロトコルを記述するた浜口研究グループ
テーマ名●設計資産間のインタフェースに関する仕様記述と検証技術に関する研究 研究代表者●大阪大学大学院 情報科学研究科 助教授浜口 清治
(はまぐち せいじ) 後列左から 湯井客員研究員(沖)、浅野客員研究員(ルネサス)、岩下客員研究員(富士通研)、 小澤上級研究員(STARC) 前列左から 松島(M2)(大阪電通大)、北嶋先生(大阪電通大)、浜口助教授、垣内(D2)共同研究
グループ
便り
めの特有の言語構造を持っています。 インターフェースプロトコルとして は、標準的に用いられているAMBA AHBを、実用性も備えた例題として 取り上げることにしました。 具体的に仕様を記述する作業を進め ると同時に、仕様記述言語CWLその ものの形式的な意味付けを行うことに しました。数学的に厳密な意味を与え るということで、こう書くといかめし い感じなってしまいますが、要は言語 で書かれた記述を見た際に、どのよう な動作に対応させればよいかを、正確 に決めるということです。CWLの場 合は、複数の有限オートマトンが通信 線で結合されている動作モデルに対応 させることにしました。 さらに、他の仕様記述言語を取り上 げて、とくに動作モデルとの対応を中 心に、比較作業を行ってきており、こ れまで PSL(Property Specification Language), temporal-e, SVA(System Verilog Assertion)について見てきま した。これらの標準化が進められてい る仕様記述言語(アサーション記述言 語)の記述能力は、言語理論的なレベ ルの比較では、相互にあまり差がない ようです。しかし、パイプライン的な 動作などを直接的に記述するための構 文を持っていないため、CWLと比べ た場合、インターフェースプロトコル の記述には工夫が必要になると考えて います。 通常、仕様記述に対してさらに検証 を行う、ということはあまりありませ ん。まず、仕様記述と設計を、シミュ レーションやフォーマル検証によって 比較して、問題が発生した場合に、仕 様記述と設計について再検討する、と いう手順が踏まれることが多いためで す。しかし、インターフェースプロト コルでは、とくにエラー発生時の動作 などの記述が複雑であり、また、各種 命令を種々の動作の集まりとして一括 して記述しているため、相互の命令の 干渉などを調べる必要があります。そ こで、私たちは、CWLで記述した AMBA AHBの仕様記述を動作モデル へ変換し、これに対して、デッドロッ クなどが起こらないかなどの検証を行 うことにしました。 AMBA AHBのインターフェースに は仮定するマスターの数、スプリット されたトランザクションの再開処理順 序など、いくつかのパラメータがある のですが、実用的な範囲のパラメータ に関しては現実的な時間で仕様記述の 検証を終えることに成功しています。 予想外だったのは、一般には検証が 難しいとされている、アウトオブオー ダーの再開処理順序を仮定した仕様記 述の方が検証が容易だったことです。 これは、インターフェース規格にはハ ザードの処理に関する制約がないため、 仕様記述にも含めていないことと、イ ンオーダ処理では順序を記憶しておき、 チェックする機構が必要なためです。 現在、本研究は最終の段階にさしか かっています。共同研究員の方から提 供していただいたAMBA AHBインタ ーフェースを含む回路をターゲットに して、仕様記述から得られた動作モデ ルからモニタ回路を生成するプログラ ムを開発し、フォーマル検証の実験に とりかかっています。 インターフェース部分の設計は、そ の複雑さから、フォーマル検証の適用 が効果的であると期待される場面です。 本研究を通じて、より効果的なイン ターフェースプロトコルのフォーマル 仕様記述・フォーマル検証手法を提示 できれば、と考えています。 ㈱富士通研究所 ITメディア研究所 CAD研究部
岩下 洋哲
設 計 資 産 ( I P ) の 有 効 利 用 は 、 システムLSIの設計効率改善に欠か すことのできない要素です。ところ が現在そのIP利用においてインタ ーフェースにまつわる検証の工数が 設計効率改善の一つの障害になって います。例えば、利用実績のある IPでも新しい環境の中では新たな 障害が表面化する場合や、IP自体 に問題がなくてもIPの使い方を間 違える場合があります。そのため、 新規設計の工数はIPを利用した分 だけ削減できたとしても、検証の工 数はそれほど削減できないのが現状 です。 浜口研究グループでは、フォーマ ル検証技術を用いて、仕様記述手法 と検証手法の両面からこの問題に取 り組んでいます。仕様記述について は、IP作成者と利用者の間で誤解 の生じる余地のない、フォーマルな 記述方法が必要です。検証手法につ いては、仕様記述に矛盾がないか、 IP単体の動作が仕様を満たしてい るか、単体検証済みのIPを組み合 わせたシステムがうまく動作する か、といったことを確実に検証する 方法が求められています。 フォーマル検証は本質的に計算量 の大きい問題ですから、どれだけ現 実の問題を扱えるかが重要です。本 研究ではすでに、AMBA AHBのよ うに一般的な、かつ検証の難しいプ ロトコルを例題とした仕様記述とフ ォーマル検証の適用成果がいくつか 報告されています。本研究は最終年 度となりましたが、現実問題に対し てフォーマル検証技術をどこまで役 立てることができるのか、今後も大 いに期待しています。客員研究員主査からのコメント
用化にはなくてはなりません。EDAベンダのトップマネー ジメントを巻き込み良好な関係を持っています。年2回のト ップマネージメントをいれたMRM(Management Review Meeting)と毎週の定例技術者会議を持ち、我々の設計メソ ドロジと整合のとれたEDAツール開発を働きかけています。 最後に、忘れてはならないのが書記の大野さんです。 STARCのなかで最も多くの人が勤務し、それぞれ出身母体 が違うことで複雑になっている書記業務を一手に引き受けて います。
室長の雑感
メソドロジ開発室の特徴 を一言で言えば、カルチャ ミックスです。現在、8社 から出向者が集まっていま す。いままでは、お互いコ ンペティタとして個々に技 術開発を行っていたもの が、全員でやれるところは 全員でやるということで集まり、日本共通、標準技術を開発 しています。従来日本の会社では会社ごとの開発カルチャの 違いなどを感じることなどほとんどなかったのですが、ある 日突然8社ものカルチャがミックスして、ひとつのゴールに 向かって業務遂行することは、多くの戸惑いもありますが、 非常にチャレンジングでエキサイティングです。このカルチ ャミックスがプロ野球界のライフドア、楽天と同じく、半導 体業界に新風を送りこむのではないかと思っています。 さらに、現在8社、STARCクライアントは11社なので、 あと3社から出向者を集め、カルチャオールミックスといき たいものです。大野さんの独り言
「派遣社員の大野です。 文系の道を歩んできたの で、STARCに派遣された 当初は、室員との会話が全 然かみ合わず悩んだもので す。気が付けば、もう1年 4ヶ月もSTARCにいます。 ところで先日、ビルの清 掃員の方から『大野さんて50代(年齢が、の意)でしょ』と話 しかけられ、えらくショックを受けました。私が50歳だった ら西口室長と同世代じゃん。ぶつぶつぶつ・・・・(怒)。」カルチャミックスのメソドロジ開発室
メソドロジ開発室 室長西口 信行
西口(室長) 大野さん(書記)設計技術開発部メソドロジ開発室
メソドロジ開発室は2003年4月にSTARC設計技術開発部 に設立されました。そこでシステムLSI設計のシリコンイン プリメンテーションにおける設計メソドロジSTARCAD-21 を開発中です。STARCAD-21は、システムLSIの機能検証済 みのハードウェア記述言語(RTL)からマスクデータのもと になるレイアウトデータ(GDS2)までの設計(RTLtoGDS2) を対象としています。LSIのプロセステクノロジが90nm世代 になり、このシリコンインプリメンテーションはタイミング、 シグナルインテグリティ、製造性、信頼性、テスト容易性な どを考えて、総合的な全体最適化をする必要があります。こ のような考えなしでは、複雑なシステムLSIのファーストシ リコンでの完動はありません。我々は、常に全体最適を追求 し、技術開発を行っています。 また、今年4月に第1版である基本設計メソドロジを STARCクライアント各社にリリースしました。これを実際 のシステムLSI設計に使ってもらうべく、技術移管、技術サ ポートを開始しました。STARCクライアント11社が実設計 に適用を始めることによりSTARCAD-21はディファクトス タンダードになる第一歩を踏み出しました。 2004年1月から9月までは特別プロジェクトとして、第1 版の実証として、実際の32ビットRISC CPUコアのシリコン インプリメンテーションを行いました。現在ASPLAで試作が 完了し、組み立て中です。よい結果を待っているところです。 このように、新規技術開発と実用化を両輪にして日々の業 務を行っています。チーム編成
メソドロジ開発室ですが、現在(2004年10月1日)、8社よ り31名のフルタイムの出向者が開発、技術移管の業務遂行中 です。5つのチームから構成されています。まず設計フロー を開発するチームが2つ(ZDチーム、Pegasチーム)があり ます。これは主に使うEDAツールを提供するベンダで分か れています。これを縦串として、横串に、解析ツールの評価 を行うチーム(ANAチーム)、サインオフ・ハンドオフの基 準の考え方を開発するチーム(SOHOチーム)、ライブラリ 開発環境を開発するチーム(LITチーム)の3つがあります。 今回は5チームそれぞれ個性のある紹介をしてもらいます。 また、開発業務を加速するために、業務委任、請負を3社 (5名)の設計会社に発注しています。これら5名の方々も 日々がんばって我々に協力してくれています。 さらにEDAベンダとの協調は設計メソドロジの開発、実鴨野 豊 早いもので、'03.05に赴任しいろいろな イベントをこなして1.5年経ちました。い つも、開発スケジュールに追われて走り続 けている日々が続いていますが、この間多 くの方のご協力を得て、何とか無事にプロジェクトの成果を 出してきています。これからも、全力で仕事を進めていきま すのでよろしくお願いいたします。 田中 美宏 ZDフローのRTLからフロアプラン作成 まで(Phase1)を担当しています。現在、 フロアプラン作成はツールが人間の能力に 追いついておらず、時間がかかる工程とな っています。まずは、自動化部分の比率を増やして、TAT 短縮をはかり、さくっとフロアプランができる手法の開発を 目指します。引き続き、皆様のご支援とご指導をよろしくお 願いいたします。 木村 一成 ZDフローのフェーズ3を担当していま す。フェーズ3は設計の最終段階の微細化 で問題となる物理現象(X-Talk,EM,IR-Dropなど)と製造性(DFM)を考慮して設 計を収束させるフェーズです。これからの私たちのために、 ツールと微細化による挙動を見極めて、効率のよい設計メソ ドロジーをコンソーシアムのメリットを生かして提供してい きたいと思います。 田口 美智子 2004年8月よりメソドロジ開発室ZDグ ループに参加しております。今までフロー 開発の経験がなく、まだまだ勉強中ですが、 頑張っていきたいと思いますので、今後と もよろしくお願いいたします。
次世代統合設計フローの開発を目指す ZD設計フロー 開発チーム
チームリーダ鴨野 豊
ZDフローチームメンバーの紹介
本チームは、90nm世代設計メソドロジ開発プロジェクトSTARCAD-21の二つあるフロー開発チームのうちの CADENCE社 SoC Encounterベースの設計フロー開発を以下に自己紹介している8名にて担当しています。チーム構 成員の平均年齢は他のチームより高い(おじさん <1名を除く> チーム)≒(落ち着いて仕事をする人が多い)?と 評されています。チーム一丸となってSoC設計の課題解決を着実にこなしていきますので、成果にご期待ください。 中森 勉 ZDの階層部分とフロー全体を担当して います。 階層設計は解決しなければなら ない課題が多いですが、それだけにやりが いがあります。日々の開発では、自分がク ライアントの立場だったらどう思うかを常に考えるよう心掛 けています。 よろしくお願いします。 樋口 隆史 ZDフローのPhase2を担当しています。 Timing Closureの高性能化・高効率化と処 理TAT短縮は、Timing Driven設計が始ま ってからの永遠の課題ですが、クライアン ト各社様/EDAベンダとともに地道な開発を行い、前日比 100ps以上のSetup改善フロー、1コマンド一発Holdfixフロー を目指しています。今後とも、引き続きご支援、ご鞭撻をよ ろしくお願いいたします。 姉崎 陽 ZDフローのタイミング検証関連を担当 しています。遅延計算、STA、X-talk解析 が、フローの中で期待したとおりに動作す るかという観点から評価・確認していま す。データ依存が大きく網羅が難しいので、クライアント各 社様には問題例などをご提供いただけると大変ありがたいで す。よろしくお願いいたします。 吉永 和弘 2004年9月21日付けでZD設計フロー開 発チームに配属になったばかりの新参者で す。低消費電力関係を担当します。電力を 正しく見積もり、減少させていくにはいろ いろな課題をクリアしていかなければなりません。何とぞよ ろしくお願いいたします。 (ZDの名前の由来は、Zero Defectを目指すところからきています。 ちなみに、米国カリフォルニア州ナパバレーにはワインナリー“ZD WINE”があります。)■Pegas設計フロー 米国Synopsys社のGalaxy Design Platformをベースにし、SoC設計のインプリメンテーション における課題(Timing, Area, Power, SI, DFM, DFT)を統合 して解決し、設計生産性を飛躍的に高める設計フローの開発 を目指しています。また、開発した技術をクライアント各社 に展開し、活用していただくことにより、日本の半導体設計 の競争力強化に寄与することを最終の目的としています。 ■開発紹介と特長 昨年の10月に集結し、ゼロからの出発で したが、以来1年間で、基本設計フローV1.0β、V1.0、階層 設計フローV1.5の3つのリリースを完了し、加えて、実証プ ロジェクトにおけるCPUコアの90nm実設計など、加速的に 開発を進めています。特長とするCheck&Go(予測と予防)、 SDCドリブン等、設計生産性を高める技術を開発し、フロー 搭載を実施しています。 ■チーム紹介 Pegasチームは7社8名で構成し、平均年齢 33歳という若い(?)構成であり、能力を十二分に活かした開 発とともに、お互い切磋琢磨しつつも、和気あいあいと活動 しています。また広範囲な設計フローの開発に適した、各種 のスキルを保有した個性的な人材が揃っており、以下設計工 程の順にメンバーを紹介します。 舩崎 健治:論理合成&テスト設計&フォーマル・ベリフ ィケーション担当。DFTを含む論理合成技術を中心に Timing設計技術を開発。 板津 和茂:Timing設計(配置ベース)&Timing検証、お よび、Performance Prototypingの物理合成環境開発を 担当。 廣田 勝久:デザインプランニング(フロアプラン)担当。 担当分野の技術開発の経験も長く、経験を活かした次世 代環境開発を目指す。 藤井 力:レイアウトにおける各種最適化技術開発を担 当。とくにTiming,XtalkおよびIR-DROP/EM課題を総 合的に解決する最適化環境開発に注力。 近 藤 大 輔 : D F M ( 配 線 に お け る デ ザ イ ン ル ー ル 、 MetalFillなどプロセス境界に直結した業務)を担当。 90nm世代の複雑なプロセス制約を満足させる配線環境 開発を実施。 鈴木 聡明:本年8月より参画した、期待の新人。Pegas フロー全体のValidationおよびレイアウトにおける Timing設計環境開発を担当。 椿 尚之:本年10月より参画。V2.0 に向け開発加速を含め、新たなフ ロー技術の開発チャレンジへの強 力な援軍として期待。Physical系 を担当予定。 ■おわりに 風土・文化の異なる各社のエンジニアが、一つ の目的のために、それぞれの能力を発揮し開発することによ り、スキルや業務推進能力および風土・文化が融合され、メ ンバー一人一人にとっては次のステップへの大きな財産・経 験となっています。チームとして、大きな開発成果を出し、 クライアント各社に技術提供するとともに、メンバー一人一 人の更なる成長を支援するチーム運営を推進していきたいと 思います。 (たぐち)
次世代統合設計フローの開発を目指す Pegas設計フロー 開発チーム
チームリーダ田口 浩文
後列左から 近藤、板津、廣田、鈴木 前列左から 舩崎、田口、藤井 余談・・ "Pegas"の名前:EDA業界に馴染 みの深い米国シリコンバレーに近 い、ナパバレーにあるワインナリー "CLOS PEGASE"から名前をつけた (右図)。プロジェクト発足時のディ ナーで飲んだのがきっかけ。 和気あいあい:若手メンバー主体な ので打ち上げは焼肉が多い。またラーメン好きが多く、 近くの揚州商人、ラーメン博物館、そして少し離れたラ ーメン甲子園への遠征も多い。世界に通用するエンジニ アになるべく、チームとして外国語鍛錬にも励んでいる。 (習得方法および言語はさまざまだが……)メソドロジの基盤を支える解析“ANA”チーム
チームリーダ奥野 祐史
解析チーム(通称“ANA”チーム)はSTARCAD-21の設 計フローや、サインオフフローの基盤となる各単位ツールの 評価と、精度、性能の改善を図っていくチームです。当チー ムは、大きく分けて、設計時にLSIの性能や諸現象を解析す るツール郡とクロック信号の設計に用いられるCTSツールを 扱っています。 ●課題 LSIのテクノロジノードの微細化に伴うセルの遅延時間の高 速化や製造ばらつきの増大、低電圧化によるクロストークや 電源変動の影響の増大などにより、計算精度がより必要とな る一方、物理現象の諸問題の解析が困難になってきています。 クロック設計に関しては、LSIの低電力化の要求に伴い、 ゲーテッドクロック構造や、複数電源化等、クロック信号の 構成が複雑化しています。このように最新のテクノロジノー ドのLSIの設計に対応するため、各ツールは日々性能の向上 と、新たな機能が必要になってきます。しかしながら、現在 存在するツールは充分な機能、性能を持っていない場合が多 く、ツールの評価および改善が必要になってきます。 ●活動 昨年度は、解析ツールに関しては、STARCAD-21を構成 しているクロストーク解析、遅延計算、LPE、IR-drop等の 解析ツールの評価を行い、主にそれぞれの精度を明らかにし ました。また、CTSに関しては、主に機能面の評価を行いま した。 今年度は、昨年度実施した解析ツールの精度とCTSの機能 の評価結果をサインオフ基準の決定とインプリメンテーショ ン時のハンドオフ基準の決定に反映させることと、クロスト ーク解析の悲観性の削減、信号線EMの設計手法、LPEの精 度やクロストークの影響を考慮したフローティングメタルの 挿入手法、動的IR-drop解析ツールの評価、階層設計や複数 電源にわたるクロック設計手法の改善等を行っていく予定で す。 扱う分野は多方面に渡りますので、他のチームと分担して、 活動を進めています。メンバーからのひとこと
◆奥野 祐史 リーダの奥野です。私たちのチームはおそらくメソドロジ 室の中では最も平均年齢の若い元気のあるチームです。 STARCの成果がユーザの皆様のお役に立てることを願って います。 ◆寺山 俊明 日々の業務に追われている中で、チーム員との会話を大切 に楽しく仕事ができています。メリハリをつけて計画的に仕 事をこなすことが次の目標です。担当はSignal EMとハンド オフ基準作成です。 ◆雨河 直樹 クロストーク解析担当の雨河です。入社後実働2年で出向 して参りました。これまでは、勢いだけのチカラワザで業務 に励んでいましたが、今後は、STARCのアカデミズムを吸 収し、メソドロジ室の現実主義と融合させて、成果を出して いきたいと思っています。フットサルとお酒と電気工学をこ よなく愛しています。どうぞよろしく。 ◆小島 直仁 CTS担当です。Pegasフローチームと連携して作業を進め ています。仕事は、量、質ともに厳しいですが、メソドロジ 室の開放的な雰囲気が性にあっており、結構楽しくやってお ります。 ◆高田 敏承 STARCには8月に来て2ヶ月ほどで、まだまだ不慣れな 点も多いですが、これから少しずつ成果を出していけるよう 頑張りたいと思います。これからよろしくお願いします。 ◆坂田 和之 STARCには優秀な人達がたくさんいるので、日々成長で きてうれしいです。趣味は、山でマウンテンバイク、テニス と散歩。メインは散歩。新たな趣味にプログラミングを入れ たいと思っている今日この頃です。 ◆浅井 一行 早いもので出向から1年が経ちました。ようやく基盤とな るメソドロジもできつつあり、担当であるクロック自動レイ アウト技術に関して課題抽出と今後の検討を始めた段階です が、今後よりよいメソドロジを開発するため一生懸命頑張り たいと思います。ご指導のほどよろしくお願いします。 後列左より 寺山、雨河、小島、高田 前列左より 坂田、奥野、浅井SOHOチーム唯一?の良心と皆さんからの人望が厚いのが チュウちゃんこと、山本宙さんです。某姐さんのバックアッ プもしながら、電源ノイズ関連を担当しています。電源ノイ ズといっても幅が広いですが、静的なIRドロップ解析と電源 EM解析から始まって、最近はダイナミックなチップ内部の 電源ノイズ解析を担当しています。これらをサインオフ基準 にどのようにつなげるかが今後の腕の見せ所となっています。 某姐さんの懐刀として、最近SOHOチームに加わったのが メソドロジ開発室で一二を争う若者である鍋嶋大輔さんで す。2時間超の通勤時間をもろともせず、日夜サインオフ基 準導出のためのデータ収集および分析に勤しんでおります。