調査内容
調査の背景・概要
国内のスキー・スノーボード人口は、1998年に1,800万人に達したが、その後減少を続け、2015年には740
万人とピークの4割強に減少している。一方で中国では近年スキーヤーが増加しており、2016年には1,000万
人を超えたとする報告書もある。
冬季オリンピック・パラリンピックが2018年にピョンチャン、2022年に北京で開催されることが決まっており、更には
札幌市で2026年の冬季オリンピック・パラリンピック招致を進めていることから、今後東アジアを中心にアジア圏で
冬季スポーツ人口が増加する可能性がある。
北海道では2016年4月に
北見工業大学が冬季スポーツに特化した研究センターを設立
。また、名寄市など
冬季スポーツに関するイベント・合宿の誘致や選手育成の取り組みを積極的を進める自治体があり、こうした
大
学、自治体と協力して製品開発を進める企業もある。
本調査では、キープレイヤーとなる大学、企業、行政、競技団体等へのヒアリング等を行い、
北海道内外の冬
季スポーツに関する取り組みを連携、加速させることによる地域経済活性化の可能性と、その原動力なる産
学官の冬季スポーツ研究開発拠点を北海道に構築する可能性について取りまとめる。
日本国内で冬季スポーツの取り組みを進める下記の機関にヒアリング
調査を実施
• スキー用具メーカー、スポーツ関連食品企業等・・・10社程度
• 大学、自治体等公的機関・・・・・・・・・・・・・・・・・・10機関程度
• 冬季スポーツ関係競技団体、独立行政法人等・・・4機関程度
日本のスキー・スノーボード人口
中国のスキー人口
出典:(公財)日本生産性本部「レジャー白書2016」
道内自治体、国内競技団体等の取り組みを把握するとともに、
その取り組みと連携可能な企業・大学の技術を整理。
冬季スポーツによる地域経済活性化の可能性と、産学官連携の
研究開発拠点を北海道に構築する可能性について取りまとめる。
出典:Laurent Vanat
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事例
ブレイン(株)【千歳市】と北見工業大学による
ブーツパーツ「ステルステック」の共同開発
ハウスメーカーのブレイン(株)は北見工業大学と共同でスキーブーツ
用のパーツ「ステルステック」を開発。
ステルステックをスキーブーツのソール(靴底)に装着することにより、
ターンがズムーズに行えるようになり、滑走タイムの向上が見込まれ
る。2016年に特許を取得。
事例
北見工業大学「冬季スポーツ科学研究推進センター」
同センターは2016年に設立。アスリートの競技力向上と冬季スポーツの発展を通じた
地域の活性化を目指している。地域と密着し工学的視点から冬季スポーツの研究に取り
組む世界的に前例のない研究組織として注目を集めている。主にスキーとカーリングの
研究に取り組んでおり、日本を代表するアスリートが同大学のサポートを得ている。
カーリングでは、氷を擦るスイーピングの力を計測・記録することができるブラシを開
発。また、ストーンを投げる「ショット」に関するデータをクラウドサーバに集積し、
認知科学や人工知能を利用した分析を行っている。昨年の世界選手権で準優勝したロ
コ・ソラーレ北見は同大学の研究成果をトレーニングに活用している。
スキー競技では、国内で数台しかない研究設備(シミュレーター)を導入、工学的手法
を用いて、滑降タイムを短縮するスキーブーツを設計・開発とブーツのカスタマイズ用
パーツの製品化に取り組むほか、テレビの映像から世界トップレベル選手のターン動作
を解析、3D CADモデルで再現する新たな技術の開発にも取り組んでる。
北海道内の企業・大学では、すでにスポーツ関連の製品開発および研究が行われており、また、特徴的な冬
季スポーツ関係の取り組みを進める自治体があり、その一例を紹介する。
【事例紹介】北海道内のスポーツ関連の取組み(1)
事例
道内スキーメーカー (株)小森スキー製作所【札幌市】
日本の老舗スキーメーカーカザマで板の開発を行っていた小森英男氏が
設立した札幌のスキーメーカー。
完全オーダーメイドのブランド「KEI-SKI」に加え、大手スポーツ用品
店との日本の雪質に合わせたスキー板の開発、新ブランド立ち上げなど
積極的に研究開発に取り組んでいる。
代表取締役 小森 英男 氏
90年代前半にカザマのスタッフとしてスロヴェニア代表
チームに帯同し、ワールドカップ選手のスキープロダク
トを担当。97年にカザマの仲間たちとKEI-SKIを立
ち上げる。2013年には安倍首相が訪露の際にプー
チン大統領に贈呈したスキー板を製造。
事例
事例
北海道・名寄市「ウインタースポーツコンソーシアム」
(独)日本スポーツ振興センターの事業で北海道が受託。名寄市を拠点
に有能な冬季ジュニアアスリートを組織的に発掘・育成し、日本代表
選手へと引き上げる事業。
名寄市は、五輪金メダリストの阿部雅司氏を常勤職員(特別参与)とし
て雇用し、上記コンソーシアム事業を中心に冬季スポーツイベント・
合宿の誘致を積極的に行う。
名寄の特産物であるもち米の「高カロリーかつ消化に良い」という
特徴を活かしたスポーツ食を開発中。
名寄市で積極的に誘致しているスキー、マラソン等のスポーツイベ
ントでPRを行うなど、同市のスポーツ振興施策と連動した取り組
みによって、首都圏や海外への販路拡大を目指す。
(株)名寄振興公社【名寄市】によるアスリート向け
「もち米スイーツ」の開発
【事例紹介】北海道内のスポーツ関連の取組み(2)
事例
美深町「エアリアルプロジェクト」
(※)エアリアル
約55mの助走路で加速し高さ2m~4.2m
の台からジャンプ、空中の宙返りや捻りを
行い、その演技で得点を競う種目
美深町では(独)日本スポーツ振興センターと連携したタレント発掘・
育成事業を実施。同町で盛んなトランポリンの選手をエアリアル(※)
の選手へと転向し、五輪選手の輩出を目指す。
全日本選手権の開催に加え、合宿誘致にも取り組んでおり、平昌五輪
の直前にスイス、カナダ、ベラルーシといった強豪国が同町で調整の
ための合宿を行う。
(株)アミノアップ化学【札幌市】の機能性食品素材
「オリゴノール」のアスリート向け展開
事例
オリゴノールは北海道庁の食品機能性表示制度”ヘルシーDo”に認定
され、機能性表示食品として「運動で生じる身体的な疲労感を軽減す
る」と表示でき、アスリート向けサプリメント素材としてプロ選手も
使用。
北海道を代表する機能性食品素材メーカー。代表的な製品としては
ライチ由来低分子化ポリフェノール「オリゴノール」など。