(座長:真鍋先生) 後半の 3 題は、真鍋が担当させていただきます。時間の関係上、早速始めさせていただきます。 4 番目、「小規模診療所の立場から」を比留間医院の比留間先生、よろしくお願いいたします。 【スライド1】 比留間医院の比留間と申します。私は今、 診療所の仕事をしていまして、西武新宿線の 花小金井駅の近くの普通の町医者です。内科、 小児科と血液内科を標榜しておりますが、実 際には0~100 歳までの感冒様疾患が多く、あ とは予防接種などをやっております。慢性疾 患では血液疾患は少なくて、多くは生活習慣 病を診させていただいております。 私は駒込病院輸血・細胞治療科で働いてお りましたので、輸血の怖さを大変よく知って いるつもりです。先ほど藤田先生が、そろそろ在宅で輸血をやったらどうかというお話だったかと 思いますが、現状ではとても怖くてできません。 ただ、これから20 年、30 年後には、団塊の世代の方たちが人生の最後を終えるころ、毎年50 万人近くの方が、人生最後の療養の場がもはや病院にはありません。どこで診るかというと、在宅 で診るしかないということで、今、在宅医療の意義が高まり、地域包括ケアシステムの構築が叫ば れているところです。今後、在宅で輸血をせざるを得ない状況が来るだろうということで、どうや ったら診療所あるいは在宅で安全な輸血ができるかについてお話ししたいと思います。
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4)小規模診療所の立場から
比留間医院比
留 間 潔
【スライド2】 ここに診療所、在宅輸血の問題点をあげま す。まず輸血の適応の問題があります。主治 医は輸血の適応基準を正確に理解しているか、 そして、適正な輸血療法をどうやって周知す るのかという問題です。また、輸血検査に関 しましては、厚生労働省の指針には、クロス マッチは「特別な事情のない限り、患者の属 する医療機関内で行う」とあります。先ほど のアンケート調査では、診療所でもクロスマ ッチを行っているとありましたが、適切にで きているのかという問題があります。 実際には輸血検査を外注している場合があると思いますが、本来輸血検査は、適合血を選択する ための検査であって、ただ不規則抗体がこうでした、クロスマッチはこうでしたでは、ほとんど無 意味です。安全な適合血を選別し指示できる検査をしない限り、輸血検査とは言えません。ですか ら、このような外注検査で輸血をやっているようでは、輸血の安全性確保ははなはだ危ういもので す。 【スライド3】 次に輸血用血液をどのように安全に搬送す るのかという問題があります。それと、輸血実 施時にはダブルチェックを誰がするのか、針刺 しは誰がするのかということですね。さらに、 患者の状態の観察は誰がどのようにするのか 等、問題山積ということです。一番問題なのは、 在宅で輸血副作用が発生したときに、緊急対応 ができるかということだと思います。【スライド4】 嘆いてばかりもいられませんので、何か論点 を考えるためにいい資料はないかということ で、米国血液バンク協会のテクニカルマニュア ル最新版(17 版)を見ましたが、家庭輸血(home transfusion)のことは少ししか書かれていま せん。 ここでは、家庭輸血するために考慮すべきこ ととして、まず家庭内の責任ある成人が必要で あろうとしています。これは患者を同定するた めとか、問題があったら医療従事者を呼び出す ために必要ということです。 それと、主治医に直ちに連絡が取れて、場合によっては救急車をすぐに呼べること、輸血副作用 歴がある患者はすべきではないこと、医療廃棄物を適正に処理できること等が示され、かなり慎重 な態度を取っています。 【スライド5】 さらにもう1 つ、カナダの指針が非常に論点 整理にはいいのではないかと思いましたので、 ここでご紹介させていただきます。 カナダはご存じのように、薬害エイズ以降、 それまで赤十字社がやっていた血液事業を、人 員もろとも国家が買収して、全部公営化になっ ています。血液製剤は全部無償で医療機関に届 けられるわけです。そういうことで、行政がか なり関与しています。 こ れ は カ ナ ダ の ノ バ ス コ シ ア 州 で 作 っ た
『Guidelines for Home Transfusion』です。こと細かにいろいろなことが書かれてありますので、 わが国の在宅輸血の安全を考える上で、非常に参考になるのではないかと思って紹介します。 【スライド6】 まず、基本方針として病院に行ける患者は家 庭での輸血は避けるということです。 次に適応基準として、病院輸血で重篤な副作 用がなかったこと。ただし、発熱等の対処可能 な副作用なら許容されます。緊急事態で病院に 搬送できない場合はやむを得ないとされます。 あとは、患者さんが、意識があり、協力的で、 身体症状に適切に対処できること、症状が安定 していること、そして血管が確保されているこ とが必要です。
不規則抗体がある場合は、完全な適合血がBlood Transfusion Service(BTS)より供給されるこ と。この場合のBTS というのは後で説明しますけれども、血液製造者ではなく主に病院の輸血部門 がこれに相当すると思います。 それと不規則抗体がある場合についての規定があります。必ずしも全ての主治医が不規則抗体の 意味を理解しているとは思えませんので、この場合、主治医が血液病理学者および病理学者にきち んと相談できる体制があることが必要です。 【スライド7】 除外基準が示されています。まず、緊急時の 急速輸血や消化管出血です。こういった場合は、 やはり病院に搬送して輸血を行うべきです。 次に重篤な副作用がある場合です。発熱がある 場合でも緩和ケアの患者さんにおいては協議 の上、輸血が行われてもよいとしています。顆 粒球輸血は在宅でやってはいけない。不規則抗 体がある場合には、血清学的に解決していない 場合はやるべきではないとされています。最後 に、週末は避けるということで、具体的なこと まで示されています。
【スライド8】 このカナダの在宅輸血を成功させるために、 非常に重要なシステムがありますけれども、そ の1つはCapable Adultです。これは適訳がなか なか難しいですが、「患者付添責任者」と訳さ せていただきました。もちろん患者家族でいい のです。要するに、患者さんが選んだ自分の輸 血を見守ってくれる人です。 ところで、この指針にはPatient という言葉 が消えて、Client になっていますので、カナ ダの患者さんは我慢しなくてよくて、お客様対 応になっているということでしょうね。ちょっと余計なことに感心しました。Capable Adultは患 者さんによって選ばれた19 歳以上の成人です。それと、精神的、肉体的に問題がなくて、いざと いうときに患者さんを救急施設に搬送するための手続きが取れるということが示されています。 あと、輸血検査のために、主に看護師が採血に来たときは居合わせること。輸血前、輸血の間、 輸血後24時間は患者さんにずっと付き添うこと。副作用があったら、当然主治医に連絡すること。 こういったことを行うのがCapable Adult です。Continuing Care という公的な介護サービスがあ りますけれども、そこの介護士ではないということが明記されていますので、主に家族、親戚、あ るいは友達に当たると思います。 それともう 1 つ重要なのは、Care Coordinator の制度がしっかりしていることです。これも「医 療調整者」と訳させていただきましたけれども、在宅輸血の全過程を調整する公的介護施設の職員 ということになります。 【スライド9】 カナダの在宅輸血をまとめさせていただき ました。診療所の主治医が患者さんに輸血を指 示する場合は、主治医は、まずCare Coordinat or に輸血オーダーを出します。このCare Coor dinator は非常に大事な役割をしています。 Care Coordinator は輸血看護師が配置され ているService Provider を見つけて、そこに 輸血指示を出します。そのほか、同意書、輸血 適応基準も含む全般的な輸血手順を主治医に 確認し情報提供します。要するに事務手続きを すべて主治医に指示し、その作成を支援してくれるのです。 それで、この輸血指示を任されたService Provider の看護師が活躍するわけです。看護師はま ず患者の家庭へ採血に行きます。家庭に行ったときには、Capable Adultが必ず付き添っています。
その検体は主に病院のBlood Transfusion Service(輸血部門)に届けられて、ここで輸血検査を します。
次に、看護師はBlood Transfusion Service に準備された血液を取りに行きます。運搬には搬送 箱、温度計、温度管理の方法、記録方法などの規定が定められています。そのようにして患者の家 庭に輸血用血液を搬送し、看護師が針を刺して輸血をします。その後はCapable Adult がずっと付 き添って、何かあったらすぐ看護師に連絡して、場合によっては主治医を呼び出すという対応が取 られているわけです。 血液センターは、この病院に血液を供給するだけで、検査などには携わっていません。米国もそ うですけれども、病院の BTS はわが国の大学病院などの輸血部門とは異なり、製造業者としての業 務も行っているので、輸血検査と血液製剤供給サービスを他の施設に提供できるのだと思います。 わが国ではこういうサポート施設が直ちにはないので、なかなかカナダのような整備された在宅輸 血は困難かもしれません。 【スライド10】 ところで当診療所ではまだ輸血を実施した ことがありません。ただし、輸血の必要を迫ら れた症例は1例ありました。その症例報告です。 73 歳の男性で主訴は歩行困難です。既往歴 は胃癌全摘術を51 歳のときに受けています。5 年前に自宅の階段を滑り落ちてから徐々に歩 行困難になって、1カ月前から起立不能、日常 動作でも息切れが生じ、奥さんに付き添われて 車椅子で当院を受診されました。 理学所見に関しましては、顔面は蒼白という より土気色、眼瞼結膜は貧血様、起立不能、膝蓋腱反射、アキレス腱反射は消失という状態であり ます。あと、酸素飽和度もちょっと落ちていましたが、バイタルサインはまあまあで、血圧は維持 されていました。 血算を調べると、ヘモグロビン2.8g/dL と、検査が間違っているのではないかと思うぐらいの数 値で、赤血球数が58 万/μLでした。あとは、MCV が大きく、血小板も減っていました。 これは私の診療所では限界があり、近くの病院にすぐに紹介したのですが、今、満床で引き受け られないから、しばらくそちらで診ておいてくれと言われ、非常に心細い思いをしました。でも、 病院も本当に過重労働の状態になっていますから、こういうケースはどんどん増えてくると思いま す。 ただ、症状の進行が極めて緩徐であり、問診から胃癌全摘をしており、神経症状があり大球性貧 血なので、骨髄異形成症候群なども否定できませんが、ビタミンB12 欠乏性貧血を強く疑いました。 そこで、ビタミンB12 を皮下注し、取りあえず毎日来てもらいました。その後、外注検査でビタミ ンB12 欠乏だということが明らかになりました。
ビタミンB12皮下注によって、約1カ月で、ヘモグロビンが9.7g/dLまで改善しました。こういう 場合、血小板はものすごい動きを示します。2週間で、3万4,000/μL が66万7,000/μL にまでなり ました。その後、正常に近づくということで、ヘモグロビンも今では12 g/dL ぐらいを維持してい ます。神経症状もよくなって、今では杖をついて自分で歩けるようになり、今でも通院されておら れます。この間、入院および輸血は一切なしでした。 本症例は輸血をしても不適切とは言えない重度の貧血です。しかし、基本的に輸血は最後の手段 としてその適応基準を考えることが大切です。一つの目安として厚生労働省の血液製剤使用指針な どに準じた適正使用を守っていくべきであり、それをどうやって在宅輸血に求め、維持するのかに ついても、大きな課題であろうということで報告させていただきました。 【スライド11】 最後にまとめます。在宅輸血を安全に適正に 行うためには、やはりガイドラインを作成すべ きと思います。その場合、輸血・細胞治療学会 が中心になって、介護関係、在宅医療関係の学 会とともに、さらに行政も関与すべきと思いま す。在宅輸血は実際にはすでに予想以上に実施 されていますので、このまま放置しておくわけ にいかないと思います。 あと、手続きの透明化が非常に大事です。診 療所は医師1人でやっている場合も多いので、 個人の判断や責任に委ねず公にする必要があるのです。手続きを透明化して、標準化した医療を浸 透し、さらに医師の負担を軽減するためには、Care Coordinator のような職種の支援が必要と思 います。 わが国では2000年に介護保険制度ができてから、まだ13 年ですけれども、よく発展してきたと 思います。これはケア・マネジャーが中心的な役割をして大きく貢献しているからではないでしょ うか。在宅輸血においてもケア・マネジャーが関与する方法を考える必要があろうかと思います。 あとは、何と言っても安全な血液製剤の供給が重要です。血液製剤を供給するだけではなく、輸 血検査をして適合血を責任を持って在宅に届けるという組織をどうやって成長させるか。カナダの ように病院輸血部門に期待したいのですが、わが国の場合、それは無理でしょう。やはり血液セン ターだと思います。血液センターは合理化で検査業務を圧縮することを控え、自らが製造した血液 製剤は自らが検査をして、適合血を選別し、利用者が本当に安全に使える血液を責任持って供給す るという姿勢が望まれるわけです。これまで我が国の輸血医療をよく支えてきた実績のある血液セ ンターに期待を込めて、僭越ながら言わせていただきました。 今、外注検査センターは非常に成長してきて、クロスマッチもやるようになってきています。も し、外注検査センターの中で、輸血医療に一肌脱ごうじゃないかと、こういった気概のある方がい て頑張ればよいと思うのですが、血液製剤の管理の問題で薬事法の壁があります。 あとは、適合血選択が困難な場合は、輸血認定医が対応できるかどうかですけれども、こういっ たシステムも考える必要があります。 輸血実施者は、やはり診療所の医師だけでは無理だと思います。訪問看護ステーションシステム も成長していますので、輸血実施看護師を育成して、看護師が輸血実施の中心的な役割を果たすこ とも考える必要があります。 以上、簡単にまとめさせていただきました。どうもご清聴ありがとうございました。 (座長:真鍋先生) 比留間先生、どうもありがとうございました。問題点の指摘、カナダでの現状、在宅輸血の現状、 わが国の在宅輸血の提言ということをご講演いただきました。フロアのほうから、せっかくですの で1 つだけ何か質問はありますか。 では先生、先ほどカナダの実例のほうで、その責任者になるときに、教育とか訓練というのはある のでしょうか。 (回答:比留間先生) 特別の教育はなく、一般的には患者さんの家族がなると思います。カナダの Home Transfusion のガイドラインに Capable Adult の義務が明示されていますので、それを説明して、24 時間いて くださいとか、採血の時はいてくださいとかが説明され、その説明がちゃんと理解できるかどうか を Care Coordinator が判断するのだと思います。 (座長:真鍋先生) 先生は、前は都立病院でご活躍されて、今は医院のほうで診療されていますけれども、実際に患 者さんのほうから、先生のところで輸血をしたいとか、在宅を希望するという要望があったときに、 現時点では先生はどういう回答をされますでしょうか。 (回答:比留間先生) 今回お示ししたような制度ができるのを待てないので、もし本当に私の診療所あるいは在宅で輸 血をしたら、病院でするより患者さんがより幸福になると思ったら、私の判断で輸血するかもしれ ないですね。そのときには、血液センターに多くのことをかなりお願いすることになると思います。 (座長:真鍋先生) はい、ありがとうございました。
(座長:真鍋先生) では、引き続き5 番目です。「臨床検査技師の立場から」、社会保険中央総合病院 臨床検査部、 鈴木先生、よろしくお願いします。 【スライド1】 ご紹介ありがとうございます。 では、始めさせていただきます。 【スライド2】 社会保険病院については、社会保険庁問題 や年金資産整理の観点から廃止を含めた議論 がありましたが、平成23 年 6 月に成立した 法律により、平成 26 年 4 月からは、独立行 政法人地域医療機能推進機構を構成する病院 として新たにスタートします。当院も、東京 山手メディカルセンターと名前が変わります。
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5)臨床検査技師の立場から
社会保険中央総合病院 臨床検査部鈴
木 克
【スライド3】 当院の概要です。診療科は 15 科、東京都の 第 2 次救急指定病院で、輸血管理料Ⅱを 2011 年7 月より取得しております。血液製剤の年間 使用量のうち、外来輸血は血液内科が多く、赤 血球製剤は約500 単位、血小板製剤は約 2,000 単位使用しております。ちなみに当院の赤血球 製剤(RCC)の在庫は、A 型と O 型が 4~2 単 位、B 型と AB 型は 2 単位です。 【スライド4】 入院輸血も重要ですが、特に外来輸血「安全 に、なるべく早く、確実に輸血を実施する」こ とがポイントです。 では、「安全に」からお話しいたします。 【スライド5】 技師の立場からすると、血液型・不規則抗体 スクリーニング検査、交差適合試験をしっかり 実施しなければいけません。指針からの抜粋で すが、「患者(受血者)については、不適合輸血 を防ぐため、輸血を実施する医療機関で責任を 持って以下の検査を行う」とあります。ABO 血 液型検査では、オモテ検査とウラ検査が一致し ている場合には血液型を確定することができる が、一致しない場合にはその原因を精査する必 要があります。【スライド6】 また、血液型の検体は、同一患者、同一検体 の二重チェックを行うとあります。Rho(D)抗原 の検査については、抗D 試薬を用いて Rho(D) 抗原の有無を検査いたします。 【スライド7】 次に、不規則抗体スクリーニング検査です。 間接抗グロブリン試験を含む方法で実施します。 不規則抗体が検出された場合は、同定試験を行 います。同定された抗体が37℃で反応する臨床 的に意義(副作用を起こす可能性)のある不規 則抗体の場合には、患者にその旨を記載したカ ードを常時携帯させることが望ましいとありま す。 また、臨床的に意義のある抗体は、Rh,Duffy、 Kidd、Diego、S,s,Kell、M(37℃で反応)など があります。 【スライド8】 ここまで血液型・不規則抗体スクリーニング 検査を実施しましたら、輸血が必要な場合には 交差適合試験を行います。同時に血液型・不規 則抗体を検査しますが、頻回に輸血を行う患者 においては、1 週間に 1 回は不規則抗体スクリ ーニング検査を行うことが望ましいとありま す。 また、交差適合試験の検体は、ABO 血液型検 査検体とは別の時点で採血した検体を用いて 検査を行います。採取時期は、過去3 カ月以内 に輸血歴、または妊娠歴がある場合や不明な患者は、輸血予定日前3 日以内に採血します。 輸血用血液の選択は、ABO 血液型は同型の血液を用います。Rho(D)陰性の場合は、ABO 血液 型が同型で、かつRho(D)陰性血を用います。患者が臨床的に意義のある不規則抗体を持っている 場合は、対応抗原陰性血を用います。 【スライド9】 交差適合試験は、主試験と副試験があり、主 試験は必ず実施します。試験に用いる術式とし ては、ABO 血液型の不適合を検出でき、37℃ で反応する臨床的意義のある不規則抗体を検 出できる間接抗グロブリン試験を含む方法で 行います。緊急時の輸血では、患者血液型の確 定前にはO 型の赤血球を使用し、血液型確定後 にABO 同型血の使用を原則とします。 【スライド10】 当院での実例です。 採血の取り間違いです。入院時の採血でO 型 Rho(D)陽性でした。手術前(副腎腫瘍)の交差 適合試験検体の血液型がA 型 Rho(D)陽性でし た。看護師に確認したところ、同室の別な患者 がA 型 Rho(D)陽性であったことがわかり、取 り間違ったことが判明しました。 他人の保険証で受診した例です。前回値がO 型 Rho(D)陽性でしたが、入院時の血液型が A 型 Rho(D)陽性でした。再度、採血をした結果 がA 型 Rho(D)陽性でした。前回値がおかしいのか主治医に確認したところ、他人の保険証を使用 していたことがわかりました。 このような事例からも、同一患者からの異なる時点での 2 検体で二重チェックを行う必要があ ります。
【スライド11】 以上が主に検査の内容でしたが、安全に輸血 を行うためには、輸血前にこれらを実施します。 説明と同意(informed consent)を行います。 患者または家族が理解できる言葉で、輸血療法 に関わるこれらの項目を十分に説明し、同意を 得た上で同意書を作成し、一部は患者に渡し、 一部は診療録に添付します。 輸血用血液の保存では、赤血球製剤は2~6℃、 新鮮凍結血漿は-20℃以下、自記温度記録計と 警報装置が付いた輸血用血液専用保冷庫で保 存します。血小板製剤は、できるだけ速やかに輸血しますが、保存する場合は20~24℃の室温で 水平振盪しながら保存します。 【スライド12】 このような自記温度記録計と、警報装置が付 いた輸血用血液専用保冷庫や血小板振盪器で 保存をします。 【スライド13】 輸血用血液の保管は、輸血部門で集中的に管 理し、実際に使用するまで室温には置かず、で きるだけ早く使用します。 【スライド14】 また、輸血用血液の外観検査も重要です。こ れは血小板製剤で、左側が通常の製剤です。製 剤をゆっくり撹拌したときに、渦巻き状のパタ ーン、スワーリングが見られます。しかし、右 側の細菌汚染があるような製剤では見られま せん。 【スライド15】 こちらは赤血球製剤です。低温で繁殖するエ ルシニア菌(Yersinia enterocolitica)が混入し ている製剤が左側で、バッグの色とセグメント の色が異なっています。このように外観検査で 明らかにおかしい血液製剤は出庫してはいけ ません。 【スライド16】 患者の観察を輸血前、輸血開始直後に実施し ます。特に ABO 型不適合輸血では、輸血開始 直後から血管痛、不快感などの症状が見られる ので、輸血開始後5 分間はベッドサイドで患者 の状態を確認します。また、輸血開始後 15 分 経過した時点での患者の確認も大切です。
【スライド17】 輸血終了後には再度、患者名、血液型などを 確認し診療録に記録し、輸血終了後も患者を継 続的に観察することが可能な体制を整備する とあります。 また、医療機関は指針に従って輸血前後の感 染症検査を実施し、検査を実施しない場合は、 輸血前後の患者血液を保存するとあります。 【スライド18】 これは当院で運用している副作用確認用紙 です。輸血終了後に、医師が副作用の有無をチ ェックします。副作用があった場合には、下の 表を記載して輸血検査室まで届けます。 【スライド19】 次は、「なるべく早く」をお話しします。 【スライド20】 もちろん安全が第一ですが、外来輸血はスピ ードも重要です。 当院は血液内科の患者が多く、疾患としては、 骨髄異形成症候群、再生不良性貧血の患者がほ とんどです。外来体制は、入院輸血も可能です が、ほとんどの患者は外来輸血を希望されます。 輸血前、輸血中に感染症などによる発熱などの ときには、即入院可能な体制です。 当院の例です。不規則抗体陽性の患者で、も ともと入院時に抗E(ラージ E)抗体が同定さ れていました。その方が血液内科を受診し、当日に赤血球濃厚液の依頼がありました。在庫の製剤 の中にラージE 抗原陰性血があるか調べてみたところ 2 単位ありましたので、約 1 時間で準備で きました。 【スライド21】 このような不規則抗体陽性の患者が外来輸 血をする場合、前もってわかっていればある程 度対応できますが、当日の輸血ですと因子指定 血の発注は難しいです。 最近は候補血というものがあり、血液センタ ーで1 次検査(自動検査機器)を完了している が、まだ因子が確定できていない血液のことを いいます。90%以上は因子が確定できているよ うですので、急ぐ場合には候補血の使用もよい と思います。ただし、交差適合試験が陰性であ ることは確認します。 そして、当日発注の濃厚血小板ですが、血液センターに在庫があるのか、納品時間がいつになる のか、血液センターとの連携が重要です。幸いに東京都では当日発注が可能ですが、その他の地域 では難しいです。
【スライド22】 最後に、「確実に輸血を実施する」をお話し します。 【スライド23】 確実に輸血を行うためには、電子機器による 確認、照合を併用することが望ましいと指針に もありますが、照合システムを使用しなくても 輸血は実施できてしまうので、用紙運用などの 確認、照合も重要です。 【スライド24】 輸血の準備は、写真のように複数準備するの ではなく、原則として1 回に 1 患者ごと行いま す。そして、患者氏名、血液型などのチェック 事項の各項目を2 人で照合確認します。 【スライド25】 どの製剤がどの患者に使用されたかを調べ るために、血液製剤使用に関する記録を 20 年 間は保存します。 【スライド26】 当院の外来輸血で困ったことは、他院からの 血液製剤の持ち込みがありました。当院の輸血 マニュアルには記載がありませんでしたので、 他院から持ち込まれた血液製剤は原則使用し ないと改訂する予定です。 そして、TRALI 等の対応をどうするか。幸 い当院では経験していませんが、必ずしも外来 輸血中に発症するわけではないため、患者への インフォームドコンセントと医療機関の連携 が重要です。 【スライド27】 最後に、いつもお世話になっている当院のス タッフです。
【スライド28】 ご清聴ありがとうございました。 (座長:真鍋先生) 鈴木先生、どうもありがとうございました。 臨床検査技師の立場ということで、ガイドラインに沿って、検査から輸血の実施までご講演いた だきました。フロアからご質問等ありますでしょうか。 では先生、1 つだけ。抗体があったときに 1 次スクリーニングで抗血清を自分のところでもやっ たほうがいいといいますが、ある程度の規模の施設でないと、値段が高いのでそろえられないもの があります。最低でもこれぐらいの種類は置いておくというのは、どういう種類がありますか。 (回答:鈴木先生) 最低でも。 (座長:真鍋先生) はい、全部は買えないので。 (回答:鈴木先生) Rh 式血液型の抗血清だけは、そろえておいたほうがいいと思います。 (座長:真鍋先生) はい、ありがとうございます。 総合討論もありますので、引き続き 6 番目のほうに移らせていただきます。鈴木先生、どうも ありがとうございました。 (座長:真鍋先生) 「輸血・細胞治療学会の立場から」、慶應義塾大学 輸血・細胞療法センター、半田先生、よろ しくお願いします。 【スライド1】 私のお話は、「輸血・細胞治療学会の立場か ら」ということで、特に外来輸血という題で すが、在宅を基本にしてお話ししたいと思い ます。 【スライド2】 実際に、実態はどうかということです。先 ほど鈴木先生のアンケート調査がありました が、幸い私どもの学会で、2011 年、1 年間、 虎の門病院の牧野茂義先生が中心になってア ンケート調査をされました。その実態を提示 いたします。学会の立場からということです が、残念ながら学会では、この課題に対して 何ら対応は取っていません。今日は、皆さま 方からお聞きしたいろいろなご指摘事項等々 を学会としてどういうかたちで対応していく か、考えたことについて簡単にお話ししたいと思います。
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6)輸血・細胞治療学会の立場から
慶應義塾大学 輸血・細胞療法センター半
田 誠
【スライド3】 これが、毎年、学会で行っていますアンケー ト調査です。国の委託事業で、だいたい1 万施 設に発送しまして、4 割弱、3,700 あまりの施 設から回答がありました。そのうち 97 施設に おいて、介護施設・在宅での輸血の経験がある とお答えになりました。これが病床数です。中 小あるいは無床診療所の割合が書いてありま す。 特にベッドを持っていない施設においては、 在宅は46 のうち 36。ほとんど在宅あるいは介 護施設で輸血を行っているということです。規模が大きくなると在宅は少なくなります。これは病 診連携でやられているのではないかなと推察いたします。 スライドで見ていただければわかると思いますが、これは日本全体を表しているものではありま せんが、先ほどの鈴木先生のアンケートよりも n 数が多いということもありますから、これを見 た限りは、わが国では在宅の輸血が一般に行われているかなと思います。かなりのインパクトとい いますか、無視できない輸血が行われていると考えていいのではないかと思います。 【スライド4】 実際に、輸血用血液製剤は3 種類ありますけ れども、どの程度の輸血件数があるかというこ とです。赤血球が8 割近くを占めています。こ れは件数です。577 件数のうち、469 件が赤血 球です。 私個人の見解では、血小板とか血漿を在宅で 投与するセッティングは本当にありえるのか と思います。いろいろ考えましたけれども、私 の想像というか、自分自身の知識等々ではちょ っとあり得ないことですが、実際は血小板と血 漿が在宅で使われているようにお答えになっています。ですから、これはどういうセッティングな のか、ちょっとわかりませんけれども、一応こういうデータです。 血小板、血漿は、200 床以下で使われています。0 床、あとは中小規模の施設が全部です。例え ば、血漿を投与している8 件のうち、6 件は無床の診療所です。血小板にしても、13 件のうち 10 件は無床施設で血小板輸血が行われているという、そういう実態があります。 【スライド5】 交差適合試験の実施に関してです。これは安 全性を担保する一番重要なポイントの1 つにな ります。300 床以上、1~299 床、0 床です。自 院で実施されているということですが、規模が 小さくなると自分のところではされずに外注 する。これは当然、期待したとおりのデータで す。ごく少数ですが未実施と答えられたところ もあるということで、これは安全性という意味 から危惧されるデータではないかなと。 【スライド6】 輸血後の患者観察に関しましても、「病院内 と同様」「不十分」「行ってない」それぞれの回 答数です。さすがに「行ってない」という回答 はなかったのですが、非常に自信のない「不十 分」という回答が、当然規模が小さくなると多 くなるということです。 輸血後の副作用対応策に関しましても、「病 院と同様」が少なくなって、無床の診療所にお いては、「連絡をもらう」あるいは「未決定」 と回答された施設が多かったです。 【スライド7】 全部まとめて課題として、今まで演者の方々 が述べられたとおりです。 輸血の適応・セッティングは、どういうもの があるのか。リスクとベネフィットが医療の原 則ですが、例えば緩和ケアに絞ってみた場合、 一定のリスクを容認するということは緩和ケ アの原則です。例えば麻薬はどうでしょうか。 副作用が100%出るような薬は、一応緩和ケア のところでは使われています。抗癌剤しかりで す。輸血は、抗癌剤、麻薬に比べると、たぶん 副作用はずっと少ないと思います。ですから、こういうセッティングが本当にあるのかどうかとい うことです。 藤田先生が冒頭に言われた、MDS の患者さんで一部そういう場合があり得ると思います。それ から外国の事例もあるということです。ですから、輸血の適応ということをまず考えなければいけ
76 ません。血小板輸血を本当に在宅でやる適応があるのかというところですね、そういうところもた ぶんあると思います。 安全性の担保は、先ほどいろいろな方が述べていますが、保存(温度)条件、輸血検査(適合性)、 副作用監視体制を在宅でできるのかということです。法令遵守は、薬事法・特定生物由来製品(IC 取得、記録保存)、輸血療法の実施基準(通知)、これは局長通知になりますので努力義務というこ とです。法令遵守という立場からすると、非常におぼつかないところがあります。診療報酬も当然 手が掛かるということからも十分ではないと思います。検査、器具、人員も必要としますから、実 際になかなか難しい問題があります。以上がたぶん当面の課題だと思います。 【スライド8】 学会の果たす役割はどうかというと、まずは 基準作りです。抑制的ではなくて、ある程度を 推進すべきであるということであれば、実施基 準、必須要件というものを設定する。もちろん これは、リスクとベネフィットを勘案してのこ とだと思います。 学会ができることというのは、先ほど比留間 先生がご指摘になったように、在宅あるいは緩 和のソサエティーと一緒にそういうものを作 っていく。もちろん行政も連携する。そういう 意味で学会は、それだけのことがやりやすいということはあります。従って体制づくりは、カナダ の例もあったと思いますが、診診連携、病診連携をつくって、基幹病院との間でのインタラクショ ンというものをちゃんと担保するということ。それから、施設基準や監査体制というものをある程 度設定する。日本輸血・細胞治療学会では、I&A(inspection(点検)して accreditation(認証)する システム)という制度がありますので、そういうものを使うこともできるだろうと考えます。 そして重要なポイントは、輸血研修、教育の推進ということで、チーム医療の推進です。まさに 在宅でしたら、看護師さん、臨床検査技師さん、薬剤師さん等々でチームをつくって、そういうも のをやっていくことになると思います。 ですから、抑制的に行くのか、推進するかということが、今後の一番基本的な問題だと思います けれども、学会の果たす役割としては、私としてはまずはこの 3 つを一応提示させていただきた いと思います。以上です。 (座長:真鍋先生) 半田先生、どうもありがとうございました。 学会の立場ということで、アンケート調査の結果、それから課題・問題点、今後の学会の対応に ついてご講演いただきました。もしご質問がありましたら、総合討論のほうで質問をしていただき たいと思いますので、よろしくお願いします。 (座長:小山先生) それでは、時間がちょっと過ぎておりますけれども討論をしたいと思います。2 つあって、小規 模病院と在宅と別にしたほうがいいと思いますので、まず小規模病院での輸血ということの観点で、 少しいろいろお話をさせていただきたいと思います。 まず、先ほど途中まで言い掛けておりましたけれども、血液センターの高橋先生でしたね、どう ぞ。小規模というよりも、初めて輸血をする施設に対しては、いつもいろいろな情報提供に行って いるというお話でしたけれど。 (高橋先生) 多くは輸血を経験されたドクターが個人医院を開いて、大学の患者さん、QOL も含めて、外来 あるいは入院させて輸血するということは言われます。私はもう大学で麻酔医もやっているので経 験豊富だよと、そういうドクターがほとんどですが、まったく経験されていない方も中にはおられ ます。いわゆる輸血をしなければいけない、末期ですけれども輸血でQOL 高める行為もあるんだ ということを言われるケース、そういったこともあります。ですから、ご決断される例もあります。 (座長:小山先生) 輸血の適応というところで、少し問題点があるということですね。 (高橋先生) はい。 (座長:小山先生) 先生は、実際に回ってみて、特に19 床以下という表現を使っておられましたけれども、輸血施 設は診療所、あるいはそういう施設があるわけですけれども、何が一番問題であるとお考えですか。 (高橋先生) いろいろ施設基準、あるいは在宅の輸血基準があいまいな中で、ジャッジが私ではできないので、 ルールだけを説明しますけれども、最終的に輸血をするという先生もおられます。そのバックアッ プが全部できていないとわれわれは考えますので、そういったところのジレンマがございます。 (座長:小山先生) 小規模のところでは、おそらく先生 1 人で決められるというところに大きな問題点があると思 います。ここら辺は、比留間先生、あるいは半田先生のご意見を伺いたいと思います。いかがでし ょうか。
78 79 (比留間先生) 私の診療所でも医師は私一人ですので、輸血に限らず判断に悩むことがあります。例えば喘息発 作の治療でも、どこまでどのようにここで治療すべきかということなど、悩むことが多いのです。 副作用が不可避的な輸血においてはましていわんやというところです。やはり、医師一人の判断や 責任に委ねない、なんらかの基準、方法を策定し、それを医療現場に浸透させる仕組みづくりが必 要です。このまま現状を放置することはできないと思います。 (座長:小山先生) 半田先生、いかがですか。 (半田先生) そうですね、やはり適応ですね。在宅でやるその適応というのは本当にあるのかどうかという、 根本的な問題です。ですから、本当に緩和医療的なそういうものが、あるいは遠隔地とか、本当に 物理的な問題とか、非常に限られたセッティングであれば、その適応はあるのではないかと私個人 的には思っています。それ以外のところは、きちんと熟考されてやられているのかと、ちょっと疑 ってしまうようなところもあるので、やはりちゃんと切り分けて、適応を考えてやっていただくと いうことが、まず一番重要なポイントだと思います。 輸血の適応があるかどうか。リスクとベネフィットはきちんと整備されて、患者あるいは在宅者 の同意が取れているというのは基本的なことだと思うので、そういう根本的な、理論の根本からも う一度やっていかないといけないかなと思います。ただし、自分自身は経験がないので、それ以上 のことはちょっとあれですけれど。はい。 (座長:小山先生) そこのところが、おそらく血液センターとすると、欲しいと言われたら拒否はできないわけです ね。どうですか、そこら辺。 (高橋先生) その危険性を強調しますけれども、最終的にはドクターの判断に委ねる。QOL の改善というこ とを非常に強調されるドクターがおられまして、そういった医療について明確にやっていただけれ ばと存じます。 (座長:小山先生) 藤田先生は、諸外国の話をされましたけれども、日本の特に外来での輸血に、何かこう大きな問 題点などもございますでしょうか。 (藤田先生) 外国の論文はたくさん読んだわけではありませんが、やはりケアが充実している環境で行われて いるので、患者さんや家族が安心して受けられる環境ができているところで行われていて、それら が多く報告されていると考えております。 一方で日本の現状は、論文とか学会の抄録で判断するのはなかなか難しいところでありますが、 まだ未熟な点があって、改善しなければいけないことが多々あるのではないかと感じました。 (座長:小山先生) 必要なことは必要と考えてよろしいですか、外来での輸血というのは。 (藤田先生) そうですね、入院の患者さんだけではなくて、外来でも通院できる病気の患者さんは、数の問題 もありまして、病院の体制やマンパワーの問題もあって、外来輸血をせざるを得ない。輸血のたび に1 日入院するということも考えられないわけではないですが、現状の医療環境にはそぐわない、 外来で受ける。先ほども、在宅ということもありましたけれども、病院の中で外来輸血をする患者 さんの基準というのも考えていかないと。 (座長:小山先生) 金子先生、ちょっと小児科は特殊なように思うのですが、小児とすると、クリニックではなかな か難しいと考えてよろしいですか。 (金子先生) そうですね、今考えている小児の在宅輸血は、ほとんどが終末期に近いものですから、クリニッ クでやるには長時間かかるということで、その間のお子さまの安静を保つためには、家族からも協 力していただかなければいけないですし、本当に家族の負担が大きいのです。またクリニックに、 それだけをするスペースを取っていただけるかという問題があって、なかなか難しいかなと思いま す。 終末期は、あまり適応がないと言っても、われわれは輸血の基準を下げて出血死させるわけにい きませんから終末期にも血小板輸血はします。貧血に関しては、普段Hb が 7g/dL 前後で輸血はし ていますが、それを5g/dL とか 4g/dL を切るころに終末期に関しては基準を下げるというふうに して。努力はしますが、やはり貧血のために心不全になるというのは避けたい。親の心情を考える と、それは避けたいと思っています。逆に、そのあたりを判断するのも難しいかなと思います。
(座長:小山先生) はい、ありがとうございます。クリニックあるいは小規模での輸血の場合には、それなりの教育 を受けた方が、それなりの基準を持ってやっていただくということが一番大事なのかなということ です。 まだまだ大きな問題もあると思いますが、時間も押しておりますので、後半の在宅のことについ ては真鍋先生にお願いします。 (座長:真鍋先生) 在宅輸血ですけれども、まず鈴木先生が検査技師なので鈴木先生に伺いたいのですが、比留間先 生が講演しましたカナダのプロトコルですね、実際、日本である程度整備されて、基幹病院とか中 規模以上の施設で地域の医療連携があるときに、そちらのほうの検査を依頼されて、それを実際や るときには対応できるかどうかというのは、どう考えていますか。 (鈴木先生) 現状ですと、かなり厳しいと言わざるを得ないです。技師の立場からすると、しっかりとした検 査をして、患者さんに輸血をしていただきたいのですが、現状ですとちょっとなかなか人的問題も ありますし。あと、血液の搬送をどうするかですね。そちらのほうも現状を考えると、血液センタ ーさんにお願いしたほうが一番、比留間先生がおっしゃったようにいいのかなという気は、皆さん の講演をお聞きしてそう思いました。 (座長:真鍋先生) 半田先生にご質問ですけれど、学会として今の輸血同意書は、原則的に医療機関で輸血するため の同意書になっています。在宅で、この同意書で対応ができるかどうかというのは、どうお考えに なっていますか。 (半田先生) もう一度、すみません。 (座長:真鍋先生) 在宅輸血に関しての輸血同意書は、今現状のガイドラインに載っている同意書で対応できるかど うかということですね。実際に副作用が出て、緊急対応ができなくて、それこそ患者さんが亡くな ることもありますし、その辺はどうお考えになっていますでしょうか。 (半田先生) 基本的には同意書に関しては、それぞれの要件というものが、同意の原則が述べられていますの で、たぶん変わらないと思います。繰り返しになりますけれど、在宅の場合、リスクをどれぐらい のむかという状況が出た場合には、当然緩和というところから輸血は容認できる可能性はあると思 います。 ただ、本当に個人でやるというのはなかなか難しいので、やはり病診連携とか診診連携、カナダ の事例なども比留間先生がご紹介されましたが、そういうものを作っていくということが一番適切 な対応ではないかと思うので、例えば学会というものがあるとすれば、それには力になれるという か、そういうところは学会を利用して体制を立てたり、行政はどのように関与する、あるいは基準 を作ったりすることはできるのではないかと思います。 ただし、実態もよくわかっていないと思いますし、そういうところも早めに明らかにして、在宅 医療学会とか緩和ケアの学会等々と協力するというのは、方向性としてはいいのではないかと思っ ています。 (座長:真鍋先生) ありがとうございます。藤田先生のほうで、今、日赤で在宅輸血が行われていますが、問題点は 先ほどいろいろ指摘されたと思っています。今後、明日でも明後日でも、日赤が供給して在宅輸血 が実際に行われているということがありますが、その辺に関して、先生のお立場としてどう考えて おられますでしょうか。 (藤田先生) 開業医の先生の立場でいうと、医院側が訪問医療をしている立場なら、MDS になってしまう、 造血器疾患になった場合、輸血ができないということで放置することは、なかなか人道的にできな いと思います。1 つの例を出しましたけれども、今後、在宅輸血をせざるを得なくなることを考慮 して、安全に輸血する方法を考えていかなければいけないと思います。 その中で、輸血検査、どこでどのように行うか?また、搬送はどのようにするかなど大きな課題 ですが、いずれも法令遵守の立場でいうと、なかなか決まらない問題が入っているのではないかと いうことで、行政の方にも問題解決、どのような方法かわかりませんけれども、解決の糸口にして いただきたいなと思います。 (座長:真鍋先生) はい、ありがとうございました。 そろそろお時間でありますが、まだまだ議論は尽きないところですけれども、各立場の先生にご 講演いただき、問題提起していただきました。今回なかなか難しいテーマで、まとめることは難し いなという話を座長のほうでしていたのですが、今後、専門学会やいろいろな輸血関係の研修会等 で、こういうことが議論され、患者さんのためにいい医療、輸血ができることを目指していただき たいと思っております。 本日は、お忙しいところご講演いただきまして、ありがとうございました。最後に先生方に盛大 な拍手をお願いいたします。
演者の先生方、座長をされた先生方、誠にありがとうございます。時間内にきっちり終わって、 活発な議論ができたと思います。 今回のテーマを通じて、あまり自分のところと関係ないと思うかもしれませんけれども、輸血 医療の安全を考える上では大事なテーマであっただろうし、今後の日本の将来にとって、小規模 診療所、在宅に関して、輸血をどのように考えていくかということを、この会場の皆さまととも に考えることができたと思います。 今日、議論した内容を各病院に、職場に持ち帰って議論していただいて、日常の輸血診療に生 かすところは生かしていただきたいし、またこういう意見があるということがございましたら、 事務局等にも教えていただきたいと思います。 また、今日参加されている方に、この輸血療法研究会で今後どのような課題を取り上げてほし いかということもアンケート調査しておりますので、事務局または、世話人に、その意見を伝え ていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。 本日は、お忙しい中、参加していただきましてありがとうございました。第 12 回の輸血療法 研究会は、これで終了したいと思います。ありがとうございました。