聴覚外耳道のアナログシ ミュレーション
石田
雅 。江谷
幸
-0吉
田
隆
・・副井
裕・戎谷
圭介
電気電子工学科
Ⅲ日本電気エンジエアリング
(株)(1991年9月 1日受瑚
Analog Simulation of Ear Canal
by
出
lasanlu hHIDA,Kouichi ETANI,・ Takashi YosHIDA,
Yutaka FuKUr and Keヽ
u上e EBIsuTANI Departlnent of EleCttical and ElectrOnic Engineeringネ
NEC Engne∝
illg CO.(Received Sф
l甑
ber l,1991)This papeF propOtts a novel ana10g siln■ lation of an eaF Calaali An canal generally has an acoltttic gah of about 10 dB Over he tteqttency r証 喀e of 2・5kH―z.Conttderれg
the ear canal to be― an acoustic tibe,we can be descFiged it in termslof the difference between soulld presstlre at he elltrance Of the canal alld tylnpalaic membrane.It is 説own ion the analogデbetweela theacOu.stic and ёlectrたal司産sten that the ear oanal 蕪鳩as 4n electrical lowpass filttr.In Particular,ve de'l three metllods,alirzirg the fundはot4 0f the car Caltali as sllow,bdow.
1)3 metl10S uSilag cascaded moduleS of first ol・ deF.
21 a lllethod usingt Ыquad ttlte■ 01■■it,
3)a methOd,Sing a lowoatt and a highpatt fitter.
石 田 雅・ 江谷幸―・ 吉 田 隆・ 副井 裕・戎谷圭介 :聴覚外耳道のアナログシミュレーション
1.ま
えが き 近年、ニューラルネ ッ トワークに代表 され る人間の脳 並びに、感覚器官等の情報処理に関する研究が高まって いる。 こうした人間カギ行 う情報処理手法 を学ぶことによ り、信号処理手法に何か新 しい方法が見いだされるので はないか と考えられ る。 ここでは、感覚器官の一つであ る聴覚器官に注 目し、特 にその うちの外耳を取 り上げる。 一般 に、聴覚器官 〔13,は外耳,中
耳,内
耳に分けられ る。音の信号は、外,中 ,内
耳を伝播 して大脳皮質の聴 覚中枢へ到遠 して音 として知覚 され る。外耳は耳介と外 耳道によって構成 されている。外耳道は音響工学的にみ ると一つの管(音響管)と見なされ、音響フ ィルタ(■ 'と して取 り扱われ るの力貰一般的である。 聴覚器官に関する研究は、 これまで数多 くなされてお り(5-2い 、中耳,内
耳に関するものが大多数である (5-le,16,1712い。 しか し、外耳に関 してはあ まり詳細 に 考察されていないようである。 対 珠 耳 珠 本論文では、一っの音響フィルタ と見な した外耳道に 対 し、機械ネ システムと電気系 システムとの顔推性 (Analogy)(ど 11よ り、低域通過 フィルタとして取扱いそ の実現回路 について考察 している。実現の方法として、 生理学データ41→ )による外耳道の音圧特性にもとづいて 以下のような手法を検討 している。1.折
れ線近似(逆 )による方法 2.ノヽイカッ ド型 フィルタ回路(22)を用いる方法3,低
域通過フィルタ特性 と高域通過フィルタ特性 を 合成 させ る方法 上記の各々の方法に対 し、計算機 シミュ レーションに より動作確認を行 い、生理学データと特性比較して有効 な動作領域並びに、特徴を明かにしている。2.聴
覚外耳のあ らまし (2) 聴覚器官の構造は図1に示す とお りである。聴覚器富 の聴覚を司 る部分は、外耳,中
耳,内
耳 と大別 され る。 本論文は、 その うちのタト耳に注目したものである。外耳 は、耳介 (音の集音,方
向感覚)と外耳道(音の伝音) 輪対
耳
甲
介
腔
「ig l
聴覚分構造 (つ鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
22巻
生理 学 デ ー タ 折れ 泳 近 似 か らなる管であ り、空気中を伝わつてきた者は外耳道 (直径 7mm,長さ 23-27mm,容積約 lml)を経 て、外耳と 中耳の境 に位置す る鼓膜(直径9nm,厚さ 0.lmⅢ)を振動 させ る。 機械系 システムと電気系システムとの類推性の関係を 用いると、 力(音響系では圧力)は電気系 における電圧 に対応 している。すなわち、生理学データとして得 られ ている 鼓膜上音圧/外
耳道人口音圧 特性 を電圧比特性 と見なせば、 それはフ ィルタ特性を表すことにな る。上 記の手法を用いて、機械系システムの音圧比特性 を電気 系システムにおけるフィルタ特性 と見な して、以後取 り 扱 うことにする。3.折
れ線近似による実現法 図2に示す外耳道の生理学データの音圧特性を一次要 素に分解 し、一次のカスケー ドモジュールを使用 して回 路の設計を行 う。ただ し、図2の音圧特性を、 1.8× 101 trad/Slか ら 2.3X104 trad/SI付 近で、最大 10dB程度 の共振特性を持つ低域通過フィルタ(LPF)と
みな し て設計する。本折れ線近似伝達関数T(S)は
6dB/。ct
-12dB/oct
(s+zl)2T(S)=K
とな り、 ここで (SIPl)(S・ P2)S Zl=8X108 Pl=1.6× 104 P2=2.4× 101 K=PI P26/Z12■ 3.46× 106 である。双一次伝達関数を満足するカスケー ルを用 いるために式(1)を書 き換 えると T(S)=(V1/Vin)(v2/Vl)(V3/V2)(Vout/V3)= Tl(S)TF(S)T4(S)T4(S)
l S+Zi S+Z〔 1SttPI SttPo SIP, SttP,
とな り、Tl(S),T2(S),T3(S),T4(S)そ れぞれの回路 を実現するために反転
OPア
ンプ回路を選ぶ とTt(S), T2(S)は双一次の伝達関数であるが、Tっ(S),T4(S)は、 一次の低域通過関数であるのでT(S)の
回路構成は、 図3のようになる。 また式(1)の伝達関数 を計算機 でシミ ュ レー トした結果は図4に示 している。 12dBノ/OCt
A
I 104 PI P? 5×101 10S
[rad//S 「ig.2
鼓 膜 上 音 圧 と外 耳 道 入 目音 圧 と♂ )音圧 比 及 び 折 れ 線 近 似 ドモ め 一 ︱ く ジュ136
石田 雅 。江谷幸―・吉田 隆・ 副井 裕・ 戎谷圭介 :聴覚外耳道のアナログシミュレーション 一般 に折れ線近似による実現は、設計は比較的容易で あるが、遮断特性が急lpkな場合特性関数が高次 にな るの で実現する回路構成 も複雑になる。今回は、4X10■ trad/sI(約6500〔HzI)付近での零点は無視 して2X104 trad/sI(約3500[Hzl)付近で最大 10dB程度の共振特性 を持つ低域通過 フィルタとみな して設計 している。 今回の結果の他にも多 くの伝達関数 を検討 してみた結 果、折れ線近似によるシミュ レーシ ョンでは設計 じやす いが、実現回路が複雑 にな りやすく、 また、図4からも わか るように外耳道の音圧特性 と比較すると、Q特
性が 満足で きないことがわかった。そこで、次 に、バイカ ッ ド型LPF回
路により、Q特
性を改善 したシミュ レーシ ヨンについて検討する。 Ts Ta 嶼 舶 口 く 製 百 煮 \ Щ 枷 引 饗 器 生 理 学 デ ー タ 理 論 値 \(
ノ(
ノ(
ジくFig 3
折 れ 繰 近 似 に よ る実 現 回路 [dB] 10 -5Fig.4
折 れ 線 近 似 に よ る シ ミュ レー シ ョン結 果鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
22巻
4‐ バィカッド型低城通過フィルタ回路による実現4, 1バ
ィカツ ド型低域通通フィルタ回路 図 5は、パィカッ ドL'F回
路を示 している。ここで、 伝達関数T6)(=V。
―Ⅲ/Vin)は
‐1/RIR4 81 C?T(9=
s'I(17,281)Sキ ユアRξ RR C1l Ce ωo2S■(al a′OSIωド
とな り、 ここで ωOP=-1/R3R18:Cど Q・ 温 H=Rむ′RI 例 え ば 、 CI=C倉=1,R4=1また 目 波 数 を ω―D=1とす れ!ふ 式(a)から RI■
/1,駐
=Q,11=1
とな り、バイカッド回路の重要な特徴である直交調整法 ができる。1)R,に
よつて与えられた周波数ω口に調整できる。2)Paに
よつて、すでに1調整された.ωoを
変化させ ずに、与えら│れたQの
調整ができる。3)す
でに調整されてしヽる0っ やQに
影響を与えな ぃで、RIによって回路の利得1を調整できる。 このように与えられた特性か らωじ、Q、Hが
得られ れば、簡単にバイカッド形LPF回
路による実Fjdができ る。A∪
vと ,i鵞
F驚 F嵐
平
評
35ぎ
1覇
継
:∴
[吊
ち
Fig. 5
バ ィ カッ ド型LPF箇
路 に よ る実現 回路138
石田 雅 。江谷幸―・ 吉 田 隆・ 副井 裕・ 戎谷圭介:聴覚外耳道 のアナログシ ミュレー シ ョン [dB] 10 生 理 学 デ ー タ 理 論 値 実 験 億(入力500mV)
嶼 舶 口 く 躙 鷲 ま \ 嬰 加 引 撃 終 -55X102 109 5X10' 10・ 5×
10・10S
Erad//sFig 6
バ イカ ツ ド型 二′PF回
路 に よ る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン結 果4, 2
能動素子 を用 いた実現 ゆ ―⊇ ① ここでは、国 2と 比較 して、 式(4)において のe=2× 101,Q=3,H=1と した。 この ときの伝進関数 T(S)│ま 3 9・f t,ir」 i達碑数 と 'ヽィカ ィド回路 にする実理 一般 に位相反転型の双二次伝達関数は次式で表される。 VO IS芝 +刑SIn
VI= S2+aS+b
⑬) 式(9)にお いて、 卜朋=0のとき、低B4x通過関数 卜れ=0のとき、帯域通過関数 m=n=0のとき、・高以通過関数m=0
の とき、伝送零点をもつ関数 である。 式(9)と生理学デ ータの音圧特性 より、各係数を以下の ようにお く。 とな り、 この伝達関数を計算機でシミユ レー トした結果 が図6である。式(4)と式(7)Ftよ り図5の回路の各素子 値を決定すると、次のようになる。胤乳誌辞
阿
'蜘
釧
I(め
図6で示されるように、 バイカッ ド型LPF回
路では 折れ線近似による実現 と比較すると、Q特
性の改善がみ られ実現回路の素子数も減少 した。次に、4X104 [rad/sI(約6500〔Hzl)付近での零点 と可聴周波数であ る20〔 KHz〕 付近 までを考慮するために、双二次の伝達関 数 とそれを満足す るバイカッ ド回路による実現方法を検 討する。lal ,罰=の0=2X104 ,nib=ω aゼ=4X10● a=a)。/Q=2X104/3.2■ 6.25X10` 鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
22巻
139 近の共振特性 をLPFで
実現 し、5X104 trad/sIをHPFで
実現 して、それを加算 した回路 によつて実現す る構成について検討する。6.
低以通過フィルタ回路 と高城通過フ ィルタ回路の 加算による実現6. 1
低城通過フ ィルタ回路 と高域通過フ ィルタ回 路 図2で示 される生理学デ ータの音圧特性 を実現するた めに、図9(a)の
ようなLPF特
性 と、同図(b)のHPF
の特性を加算すれば、同国(C)のような特性が得 られるこ とが推測される。 そこで、LPF回
路 とH P F tt17tを 図10の
回路による実現を考える。なお、LPF回
路 とHPF回
路はバイカッ ド回路で実現 し、 それぞれ図11,
図12の
ようにな り、 それぞれの伝達関数Tl(S),
TI(S)は 以下のようである。I⑩
上記の場 合、la―III<0と な るの で、 回路I韓成 は、
図7の点線 の よ うにな る。 各素子値 は、図7にお いて、 RI=16[KΩl , R4=Re=101(Ω I RT=145[Ωl, である。シミュ レーション結果は図8に示 されている。 双二次伝達関数 とバイカッ ド回路 による実現方法Iよ、 今 までの実現方法 と比較すると、Q特性 を満足で き、 ま た可聴周波数である20KHz付近 までも考慮 に入れ た周波数 特性が得 られることがわかつた。 しか し、生理学デ ータの音圧特性 と比較 してみると、 2×104「ad/S〕 と 5X10H trad/sI付 近の二箇所で共振特 性を示 していることがわかる。次に、2×104 trad/SI付 Ω 50 Ω Ω , ・l Ω nF
RI=1[KΩ ]Re=16 EKΩ
]R9=500[KΩ
]R4=R9=R,□
=1[KΩ ]R5=5[KΩ
]Rs=100[Iミ
Ω]R7=145こ
KΩ]Ra=10[KΩ ] Ci=C2=10[nF]
Al,A2,A9,A4:LF356(電
源電圧15[V])
R
140
石田 雅・江谷幸―・苦田 降 。副井 裕・戎谷圭介 :聴覚外耳道のアナログシミー■レーション -55X10?
F i tr, 8'f16)i VI =
VI ―G も '十aS+わh⑤
=+ニ
ーFS2 …1。1全 Sユ■(Di烈1)SiO,ど sEI(OL/QⅢ)SI■,hと S,IdS■っ また、図11.図
12と
式(1か。(10より、 o,d,e,fは 生 理 学 デ ー タ 理 論 値 其 数 値(入力50mv)
(11) 各係数 a,Ⅲ, ωl・2X.1,コ ーql,1 のヽ=6X101,ミ h=2,1=1
EdB]18
5 0 櫻 枷 巨 く コ 置 鉾 く 甫 ヽ胆 引 翌 野 競5X109 104
5×1l o4 1.05[rad/S]
双二次伝1達関数 によるシ ミュレーシ ョン結果6.2
低域通過フィルタ回路と高以通過フィルタ回 路による実現 式(12),(19)の両式と生理学データの音圧特とから (1う ―IS'lD
a・1/R15 dⅢ1/ri cI である。 沖=絲
, r6/■, 'e=前 '卜
幹
とおくことができ、各素子値を堅強
主
妄
索
機笙革
拝
十
,
と洪定する。図10の
実現回路の周1披敷特性ほ図13に
示されている。 図13で
示されているようにヽ このLPF回
路 とHPF箇
路の加算による実現方法は、今 までの実現方法 と比較すると、Q特
性も満足でき、可聴周波数を考慮に いれ.た、外耳連の音圧特性に近い周波数特性が得られた。(aう
LPF特
性
芽員チj芽:と―F356僻
ヨ躙毛庄15W],
鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第22巻
Fig. '
とPFと HPFの
加 算(o)(a)と
(b)の
加算特性
(b)HPF特
性LPF回
路HPF回
路Fig. lo LPF回
路 とHPO回
路 に よ る回 路 構 成142
石田 雅 。江谷幸―・ 吉田 隆・副井 裕・ 戎谷圭介 :聴覚外耳道 のアナ ログ シ ミュレーシ ョン尋
著え
鞭貫兆緯見概
│
Fi言
11 1ッ PF回
路ra ri=r4=4[Iミ Ω] ra=rs=2:Iミ Ω]
X・5=rら
=r7=re=r。
=ユ`lo工l EKΩ]Ci=CF=10[nF]
Al, A全,AI, A4:Iコ
F356(電
服電圧15[V])
鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
22巻
生 理 学 デ ー タ 理 詰 値 実 験 値(入力500mV)
5X102 1o9
5×10. 104
7.む
すび 以上、聴覚器官の一つである外耳道の アナログシミュ レーションについて述べた。本論文で考察、検討 した事 項についてまとめると以下のようになる。1)折
れ線近似による実現方法は、設計は容易であ るが特性関数の次数が高い場合は、実現回路の素 子数 も多 くなる傾向がある。2)バ
ィカッ ド型LPF回
路による実現方法は、折 れ線近似による実現方法 と比較すれば、回路の素 子数は少な く、Q特性 も改善され第1次共振周波 数付近 までは満足 される。3)双
二次の伝遠関数を実現するノヽイカッ ド形回路 の実現方法では、第1次の共振特性は満足 される。 バイカッ ド型LPF回
路 による方法 との相違は、 第1次共振周波数以降の領域 まで考慮 している点 である。 105 [rad//S]4)外
耳道の音圧特性は、生理学データより二箇所 で共振特性がみ られる。本特性 を実現するためのLP「
とHPFの
合成 による実現方法は、Q特
性 並び に、第1次,第
2次の共振特性を満足 してい る。 今後は、生理学データ上か ら得 られ る特性関数をもと に等価電気回路 を導出するとともに、 よ り新 しい等価団 路 について検討する。 さらに、中耳,内
耳等の聴覚器官 のアナログシミユ レーシ ョンについても考察 していきた いと考えている。 参考文献 1)切替,野
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ロナ社 (日本音響 学会編 )(1988). 5×104Fig 13 1,PF回
路 とHPF回
路 の 加 算 に 嵌 る シミュレー シ ョン結 果144
石田 雅`江谷幸―・ 吉田 隆・ 副井 裕・ 戎谷圭介 :聴覚外耳道 のアナログシ ミュレー シ ョン4)城 戸他: “基 礎音響工学
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