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アクティブ・シティズンシップと学校カリキュラム : スコットランド独立住民投票に向けて

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-1-

<論文>

アクティブ・シティズンシップと学校カリキュラム

- ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票 に 向 け て -

柿 内 真 紀

Active Citizenship and the School Curriculum:

Preparing the way for the Scottish Independence Referendum in 2014

KAKIUCHI Maki

キ ー ワ ー ド : ス コ ッ ト ラ ン ド , ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ , 住 民 投 票 , 政 治 的 リ

テ ラ シ ー , 学 校 カ リ キ ュ ラ ム

Key words: Scotland, active citizenship, referendum, political literacy, school curriculum

1 . 背 景

2014 年 9 月 18 日にスコットランドでは,イギリス1か ら の 独 立 を 問 う 住 民 投 票 が 実 施 さ れ る こ と に な っ て い る 。 イ ギ リ ス は イ ン グ ラ ン ド , ウ ェ ー ル ズ , ス コ ッ ト ラ ン ド , 北 ア イ ル ラ ン ド で 構 成 さ れ た 連 合 王 国 で あ り ,ス コ ッ ト ラ ン ド の 人 口 は 現 在 約530 万人で,イギリスの約 8.7% を 占 め る 。 ス コ ッ ト ラ ン ド の 歴 史2を 振 り 返 れ ば ,1707 年のイングランドへの併合以来,イン グ ラ ン ド に 従 属 し な い 立 場 を 目 指 し て 進 ん で き た と 言 っ て も 過 言 で は な い 。1997 年の住民投票 で は , 課 税 権 を 持 つ ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 の 復 活 が 決 ま り , 分 権 へ の 大 き な 一 歩 を 踏 み 出 し た 。 こ れ ま で も ス コ ッ ト ラ ン ド の ア イ デ ン テ ィ テ ィ は 多 く の 場 で 表 明 さ れ て き た 。2012 年夏のロ ン ド ン オ リ ン ピ ッ ク に お け る ,「Team GB」と銘打ったイギリス選手団には,イングランド,ウェ ー ル ズ , ス コ ッ ト ラ ン ド , 北 ア イ ル ラ ン ド か ら な る 4 つ の ナ シ ョ ナ ル な 立 場 で は な く , ひ と つ の イ ギ リ ス と し て 結 束 し よ う と い う 動 き が 表 出 さ れ て い た 。 し か し な が ら , 周 知 の よ う に サ ッ カ ー の ワ ー ル ド カ ッ プ で は イ ギ リ ス は 1 つ の チ ー ム で は な い 。 異 な る サ ッ カ ー 協 会 を そ れ ぞ れ が も ち , 予 選 で も 個 別 に 代 表 チ ー ム を 送 る 。 ロ ン ド ン オ リ ン ピ ッ ク で は 結 局 , 統 一 チ ー ム の 結 成 が 断 念 さ れ , イ ン グ ラ ン ド と ウ ェ ー ル ズ 出 身 の 選 手 の み で 構 成 さ れ る こ と に な っ た 。 そ こ に は , 譲 れ な い ア イ デ ン テ ィ テ ィ が み て と れ る 。 さ て , 冒 頭 で 述 べ た 独 立 を 問 う 住 民 投 票 ( 以 下 , 独 立 住 民 投 票 ) で は , 今 回 初 め て ,16~17 歳 が 有 権 者 に 加 え ら れ た 。そ れ は ス コ ッ ト ラ ン ド の 若 年 層 の ア ク テ ィ ブ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ3育 成 に 向 け た 教 育 の 成 果 を 問 う 機 会 と な る 。 そ こ で , 本 稿 で は ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 構 成 要 素 の な か で も 政 治 的 リ テ ラ シ ー に 注 目 し ,そ れ が16~17 歳の年齢層を含む中等教育 段階 4の 学 校 カ リ キ ュ ラ ム の な か で ど の よ う に 捉 え ら れ よ う と し て い る の か ,ま た 住 民 投 票 ま で の 残 さ れ た 期 間 に 考 察 す る べ き 課 題 と は 何 か を 析 出 す る こ と を 試 み る 。

<論文>

アクティブ・シティズンシップと学校カリキュラム

-スコットランド独立住民投票に向けて-

柿内真紀

Active Citizenship and the School Curriculum:

Preparing the way for the Scottish Independence Referendum in 2014

KAKIUCHI Maki

キーワード:

スコットランド,アクティブ・シティズンシップ,住民投票,政治的リテラ

シー,学校カリキュラム 

Key words: Scotland, active citizenship, referendum, political literacy, school curriculum

<論文>

アクティブ・シティズンシップと学校カリキュラム

- ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票 に 向 け て -

柿 内 真 紀

Active Citizenship and the School Curriculum:

Preparing the way for the Scottish Independence Referendum in 2014

KAKIUCHI Maki

キ ー ワ ー ド : ス コ ッ ト ラ ン ド , ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ , 住 民 投 票 , 政 治 的 リ

テ ラ シ ー , 学 校 カ リ キ ュ ラ ム

Key words: Scotland, active citizenship, referendum, political literacy, school curriculum

1 . 背 景

2014 年 9 月 18 日にスコットランドでは,イギリス1か ら の 独 立 を 問 う 住 民 投 票 が 実 施 さ れ る こ と に な っ て い る 。 イ ギ リ ス は イ ン グ ラ ン ド , ウ ェ ー ル ズ , ス コ ッ ト ラ ン ド , 北 ア イ ル ラ ン ド で 構 成 さ れ た 連 合 王 国 で あ り ,ス コ ッ ト ラ ン ド の 人 口 は 現 在 約530 万人で,イギリスの約 8.7% を 占 め る 。 ス コ ッ ト ラ ン ド の 歴 史2を 振 り 返 れ ば ,1707 年のイングランドへの併合以来,イン グ ラ ン ド に 従 属 し な い 立 場 を 目 指 し て 進 ん で き た と 言 っ て も 過 言 で は な い 。1997 年の住民投票 で は , 課 税 権 を 持 つ ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 の 復 活 が 決 ま り , 分 権 へ の 大 き な 一 歩 を 踏 み 出 し た 。 こ れ ま で も ス コ ッ ト ラ ン ド の ア イ デ ン テ ィ テ ィ は 多 く の 場 で 表 明 さ れ て き た 。2012 年夏のロ ン ド ン オ リ ン ピ ッ ク に お け る ,「Team GB」と銘打ったイギリス選手団には,イングランド,ウェ ー ル ズ , ス コ ッ ト ラ ン ド , 北 ア イ ル ラ ン ド か ら な る 4 つ の ナ シ ョ ナ ル な 立 場 で は な く , ひ と つ の イ ギ リ ス と し て 結 束 し よ う と い う 動 き が 表 出 さ れ て い た 。 し か し な が ら , 周 知 の よ う に サ ッ カ ー の ワ ー ル ド カ ッ プ で は イ ギ リ ス は 1 つ の チ ー ム で は な い 。 異 な る サ ッ カ ー 協 会 を そ れ ぞ れ が も ち , 予 選 で も 個 別 に 代 表 チ ー ム を 送 る 。 ロ ン ド ン オ リ ン ピ ッ ク で は 結 局 , 統 一 チ ー ム の 結 成 が 断 念 さ れ , イ ン グ ラ ン ド と ウ ェ ー ル ズ 出 身 の 選 手 の み で 構 成 さ れ る こ と に な っ た 。 そ こ に は , 譲 れ な い ア イ デ ン テ ィ テ ィ が み て と れ る 。 さ て , 冒 頭 で 述 べ た 独 立 を 問 う 住 民 投 票 ( 以 下 , 独 立 住 民 投 票 ) で は , 今 回 初 め て ,16~17 歳 が 有 権 者 に 加 え ら れ た 。そ れ は ス コ ッ ト ラ ン ド の 若 年 層 の ア ク テ ィ ブ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ3育 成 に 向 け た 教 育 の 成 果 を 問 う 機 会 と な る 。 そ こ で , 本 稿 で は ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 構 成 要 素 の な か で も 政 治 的 リ テ ラ シ ー に 注 目 し , そ れ が16~17 歳の年齢層を含む中等教育段階4 の 学 校 カ リ キ ュ ラ ム の な か で ど の よ う に 捉 え ら れ よ う と し て い る の か , ま た 住 民 投 票 ま で の 残 さ れ た 期 間 に 考 察 す る べ き 課 題 と は 何 か を 析 出 す る こ と を 試 み る 。

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2 . ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票

イ ギ リ ス で は 2010 年総選挙の結果,ハングパーラメントとなり,保守党と自民党の連立政 権 が 誕 生 し た 。1997 年から続いた労働党からの政権交代である。しかしながら,スコットラン ド で は 政 党 ご と の 獲 得 議 席 数 が イ ギ リ ス 全 体 と ま っ た く 異 な り , ス コ ッ ト ラ ン ド 選 出 議 席 数59 の う ち ,保 守 党 は 1 議席を確保したにすぎず,労働党が圧倒的な強さを見せる傾向5は 続 い て い る 。労 働 党 大 敗 と い う 選 挙 結 果 は ,主 に イ ン グ ラ ン ド の 結 果 で あ る( 表 1 )。ス コ ッ ト ラ ン ド で は 各 党 と も に 議 席 数 に 変 化 は な い 。 こ こ に も ス コ ッ ト ラ ン ド の 独 自 性 が あ る 。 < 表 1 > 主 要 政 党 別2010 年総選挙結果6 <表2>スコットランド議会政党別議 席 数7 ( ) 内 は 前 回 比 。 ( 総 議 席 数 129) ( 注 )SNP( Scottish National Party) ス コ ッ ト ラ ン ド 国 民 党

ま た ,復 活 し た ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 で は ,1999 年の第 1 回選挙以来,表2のような各党 の獲 得 議 席 数 結 果 と な っ て い る 。現 在 ,2007 年に僅差で第 1 党となったスコットランド国民党(以 下 ,SNP)が政権を握って 2 期 目 であ る。 2011 年 の議 会 選 挙で 過半 数 を 占め 躍進 し た SNP は, か ね て か ら の 党 是 で あ る イ ギ リ ス か ら の ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票 に 向 け て , さ っ そ く 歩 を 進 め る こ と と な っ た 。 と こ ろ で , ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 の 復 活 は 簡 単 で は な か っ た 。 ス コ ッ ト ラ ン ド の 分 権 確 立 の 過 程 や ス コ ッ ト ラ ン ド 政 府 の 位 置 づ け に つ い て は ,山 崎(2011),富田(2002),渡辺(2001)の先行研 究 が 詳 し い 。1979 年に実施された住民投票(投票率 63.3%)では,賛成 51.6%,反対 48.4%で あ っ た が ,絶 対 得 票 率40%の条件が満たされていなかったため見送られた。その後,1997 年総 選 挙 で ブ レ ア 労 働 党 政 権 が 成 立 し ,同 年 再 び 住 民 投 票( 投 票 率60.2%)がおこなわれ,賛成 74.3%, 反 対25.7%で賛成多数となり,スコットランド議会のおよそ 300 年ぶりの復活が決まった。議 会 復 活 に あ た り ,ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 棟 も 新 し く 建 設 さ れ る こ と に な り ,当 初 2001 年完成予 定 の と こ ろ ,ス ペ イ ン の 著 名 建 築 家 の 設 計 の も と ,工 期 の 遅 れ や 予 算 の 大 幅 な 増 額 を 伴 い な が ら , 2004 年に完成した。議会棟はエリザベス女王がエディンバラ滞在中の住居であるホーリール ー ド 宮 殿 の 正 面 に 建 つ 。完 成 か ら ま も な い2005 年 3 月に筆者が訪問した際には,議会棟内オープ ン ・ ス ペ ー ス ( 写 真 1 ) に , ビ ジ タ ー に も ス コ ッ ト ラ ン ド の 歴 史 や 行 政 の し く み が わ か る よ う な 展 示 や パ ン フ レ ッ ト が 置 か れ て お り , 会 議 場 ( 写 真 2 ) の 見 学 が 可 能 で あ っ た 。 ま た , 議 会 棟 に 続 く 周 辺 の 壁 面 に は , ス コ ッ ト ラ ン ド の 文 化 ・ 社 会 を 象 徴 す る 人 び と の こ と ば を 刻 ん だ プ レ ー ト が デ ザ イ ン さ れ て い た 。 新 し い 議 会 棟 は ま さ に 分 権 の 表 象 と し て 建 ち , こ こ で ス コ ッ ト ラ ン ド の 政 治 が 再 び お こ な わ れ る こ と を 訪 問 者 は 学 び , 実 感 で き る 場 所 と な っ て い た 。 総議席 内 イングランド 内 スコットランド 保守党 307(+97) 298(+92) 1(0) 労働党 258(-91) 191(-87) 41(0) 自民党 57(-5) 43(-4) 11(0) 民主統一党 8(-1)   SNP 6(0) 6(0) その他 14(0) 1(+1) 合計 650 533 59 1999 2003 2007 2011 労働党 56 50 46 37 SNP 35 27 47 69 自民党 17 17 16 5 保守党 18 18 17 15 緑の党 1 7 2 2 社会主義者党 1 6 0 0 その他 1 4 1 1

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-3- < 写 真 1 > 議 会 棟 内1 階オープン・スペース <写真2>スコットランド議会棟内本会議 場8 さ て , 今 回 の 住 民 投 票 の 実 施 に 向 け て ,2012 年 10 月にキャメロン・イギリス首相とサモン ド ・ ス コ ッ ト ラ ン ド 首 相 ( 首 席 大 臣 ) が 「 エ デ ィ ン バ ラ 合 意 」 に 署 名 し た 。 そ し て ,「 1998 年 ス コ ッ ト ラ ン ド 法 」 の 規 定 に 従 い , ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 の 賛 否 を 問 う 住 民 投 票 の 実 施 に 必 要 な 立 法 措 置 を 行 う 権 限 を イ ギ リ ス 議 会 か ら ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 へ 移 譲 す る こ と を 目 的 と し た 「 枢 密 院 令 」が ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 と イ ギ リ ス 議 会 に 提 出 さ れ ,2013 年 2 月に承認された。これ に よ り , ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 と 政 府 が 住 民 投 票 の 実 施 権 限 を 持 つ こ と に な っ た の で あ る ( 自 治 体 国 際 化 協 会 ロ ン ド ン 事 務 所2013,石見 2013)。 ス コ ッ ト ラ ン ド 政 府 は ,2012 年 1 月から 5 月にかけて,独立住民投票に関するコンサルテー シ ョ ン を お こ な い , 一 般 市 民 や 団 体 な ど か ら 意 見 を 募 っ て い る 。 コ ン サ ル テ ー シ ョ ン 文 書 は9 項 目 か ら な り ,16~17 歳の投票権についての質問項目が含まれている。26,000 件余りの回答 を も と に し た 分 析 結 果 報 告 書 は「 エ デ ィ ン バ ラ 合 意 」の 直 後 に 出 さ れ て い る 。そ の 後 ,16~17 歳 に 投 票 権 を 付 与 す る 案 は 「 ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票 ( 選 挙 権 ) 法 案 」 に 盛 り 込 ま れ ,20133 月にスコットランド議会に上程された。同じく「スコットランド独立住民投票法案」が上 程 さ れ ,住 民 投 票 の 期 日 を2014 年 9 月 18 日に設定することを提案し,こうして 16~17 歳への 投 票 権 拡 大 と 投 票 日 が 確 定 し た 。

で は ,こ こ で コ ン サ ル テ ー シ ョ ン の 分 析 結 果 報 告 書(The Scottish Government Social Research 2012)から,16~17 歳の投票権拡大についてみてみよう。16~17 歳に投票権を拡大することに 賛 成 だ と し た の は56%で,反対は 41%である。賛成の理由にはその年齢は結婚や軍への入隊が 認 め ら れ て い る こ と や , 何 よ り も 住 民 投 票 の 結 果 と と も に 生 き て い く の は 若 年 層 で あ り , 彼 ら も ス コ ッ ト ラ ン ド の 将 来 が ど う な っ て ほ し い か に つ い て 意 志 表 示 す る 権 利 が あ る べ き だ と い う も の で あ る 。 ま た , 住 民 投 票 だ け で は な く , 他 の 選 挙 で も 有 権 者 と す る べ き だ と い う 意 見 や , 他 の 選 挙 で 拡 大 さ れ る の で あ れ ば ,住 民 投 票 で も そ う す る べ き だ と い う 意 見 が あ っ た 。一 方 で , 反 対 の 理 由 に は , こ れ に は 政 治 的 意 図 が あ る こ と ,16~17 歳はそのような重要な決断をするに は ま だ 充 分 な 人 生 経 験 が な い こ と や 成 熟 し て い な い こ と な ど が あ っ た 。 注 目 す べ き は , 賛 成 の 理 由 の ひ と つ に あ げ ら れ た , 住 民 投 票 後 の ス コ ッ ト ラ ン ド で 生 活 し て い く の は 彼 ら で あ る と い う 点 で あ り , ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ が 求 め ら れ る こ と が 暗 示 さ れ て い る 。 そ し て , 住 民 投 票 に 参 加 す る に は 政 治 的 リ テ ラ シ ー が 必 要 と な る 。 「 エ デ ィ ン バ ラ 合 意 」 の 後 , ス コ ッ ト ラ ン ド 政 府 は 独 立 後 の 将 来 像 を 具 体 化 す る 文 書 を 次 々 < 写 真 1 > 議 会 棟 内 1 階オープン・スペース <写真2>スコットランド議会棟内本会議 場8 さ て , 今 回 の 住 民 投 票 の 実 施 に 向 け て ,2012 年 10 月にキャメロン・イギリス首相とサモン ド ・ ス コ ッ ト ラ ン ド 首 相 ( 首 席 大 臣 ) が 「 エ デ ィ ン バ ラ 合 意 」 に 署 名 し た 。 そ し て ,「 1998 年 ス コ ッ ト ラ ン ド 法 」 の 規 定 に 従 い , ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 の 賛 否 を 問 う 住 民 投 票 の 実 施 に 必 要 な 立 法 措 置 を 行 う 権 限 を イ ギ リ ス 議 会 か ら ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 へ 移 譲 す る こ と を 目 的 と し た 「 枢 密 院 令 」が ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 と イ ギ リ ス 議 会 に 提 出 さ れ ,2013 年 2 月に承認された。これ に よ り , ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 と 政 府 が 住 民 投 票 の 実 施 権 限 を 持 つ こ と に な っ た の で あ る ( 自 治 体 国 際 化 協 会 ロ ン ド ン 事 務 所2013,石見 2013)。 ス コ ッ ト ラ ン ド 政 府 は ,2012 年 1 月から 5 月にかけて,独立住民投票に関するコンサルテー シ ョ ン を お こ な い , 一 般 市 民 や 団 体 な ど か ら 意 見 を 募 っ て い る 。 コ ン サ ル テ ー シ ョ ン 文 書 は9 項 目 か ら な り ,16~17 歳の投票権についての質問項目が含まれている。26,000 件余りの回答 を も と に し た 分 析 結 果 報 告 書 は「 エ デ ィ ン バ ラ 合 意 」の 直 後 に 出 さ れ て い る 。そ の 後 ,16~17 歳 に 投 票 権 を 付 与 す る 案 は 「 ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票 ( 選 挙 権 ) 法 案 」 に 盛 り 込 ま れ ,20133 月にスコットランド議会に上程された。同じく「スコットランド独立住民投票法案」が上 程 さ れ ,住 民 投 票 の 期 日 を2014 年 9 月 18 日に設定することを提案し,こうして 16~17 歳への 投 票 権 拡 大 と 投 票 日 が 確 定 し た 。

で は ,こ こ で コ ン サ ル テ ー シ ョ ン の 分 析 結 果 報 告 書(The Scottish Government Social Research 2012)から,16~17 歳の投票権拡大についてみてみよう。16~17 歳に投票権を拡大することに 賛 成 だ と し た の は56%で,反対は 41%である。賛成の理由にはその年齢は結婚や軍への入隊が 認 め ら れ て い る こ と や , 何 よ り も 住 民 投 票 の 結 果 と と も に 生 き て い く の は 若 年 層 で あ り , 彼 ら も ス コ ッ ト ラ ン ド の 将 来 が ど う な っ て ほ し い か に つ い て 意 志 表 示 す る 権 利 が あ る べ き だ と い う も の で あ る 。 ま た , 住 民 投 票 だ け で は な く , 他 の 選 挙 で も 有 権 者 と す る べ き だ と い う 意 見 や , 他 の 選 挙 で 拡 大 さ れ る の で あ れ ば ,住 民 投 票 で も そ う す る べ き だ と い う 意 見 が あ っ た 。一 方 で , 反 対 の 理 由 に は , こ れ に は 政 治 的 意 図 が あ る こ と ,16~17 歳はそのような重要な決断をするに は ま だ 充 分 な 人 生 経 験 が な い こ と や 成 熟 し て い な い こ と な ど が あ っ た 。 注 目 す べ き は , 賛 成 の 理 由 の ひ と つ に あ げ ら れ た , 住 民 投 票 後 の ス コ ッ ト ラ ン ド で 生 活 し て い く の は 彼 ら で あ る と い う 点 で あ り , ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ が 求 め ら れ る こ と が 暗 示 さ れ て い る 。 そ し て , 住 民 投 票 に 参 加 す る に は 政 治 的 リ テ ラ シ ー が 必 要 と な る 。 「 エ デ ィ ン バ ラ 合 意 」 の 後 , ス コ ッ ト ラ ン ド 政 府 は 独 立 後 の 将 来 像 を 具 体 化 す る 文 書 を 次 々

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と 出 し て い る 。2013 年 2 月に「スコットランドの未来:住民投票から独立,そして成文憲法の

制 定 へ(Scotland’s Future: from the referendum to independence and a written constitution)」と題す

る 政 策 文 書 を 発 表 し ,さ ら に 11 月には「スコットランドの未来:独立スコットランドのガイ ド

Scotland’s Future: Your Guide to Independent Scotland)」を出した。後者は 650 頁のボリューム

が あ る 。 そ の 後 は 独 立 後 のEU 加盟や通貨ポンドについて,具体的な状況が関係者・機関の交 渉 に 応 じ て 報 道 さ れ て い る 。 上 記 の 文 書 を 含 め て , 独 立 住 民 投 票 に 至 る タ イ ム ラ イ ン や 重 要 な 文 書 は す べ て ス コ ッ ト ラ ン ド 政 府 が 開 設 し て い る ウ ェ ブ サ イ ト(http://www.scotreferendum.com/) に 掲 載 さ れ て お り , 情 報 は い つ で も 引 き 出 す こ と が で き る 状 況 に な っ て い る 。 ま た , 独 立 に 反 対 す る グ ル ー プ (「Better Together」),SNP がベースとなる賛成するグループ (「Yes, Scotland」)がそれぞれキャンペーンをおこなっている。前者は保守党,労働党,自民 党 が 支 持 を し て お り ,SNP との対立の構図は容易に想像できる。図1と図2はキャンペー ン用 パ ン フ レ ッ ト で あ る 。 各 ウ ェ ブ サ イ ト で は 連 日 の 意 見 表 明 , ソ ー シ ャ ル ・ メ デ ィ ア に よ る コ メ ン ト 発 信 等 の ネ ッ ト ・ キ ャ ン ペ ー ン が 展 開 さ れ て い る9。 ま た , 学 校 用 教 材 パ ッ ク の 配 布 な ど , 16~17 歳へと拡大された有権者を意識した活動をおこなっている(TESS 13 September 2013)。

< 図 1 >Better Together <図2>Yes Scotland

こ の よ う に , こ の 2 年 間 は 独 立 住 民 投 票 に 向 け て , 手 続 き が 法 的 ・ 行 政 的 に も 急 速 に 進 み , 住 民 へ 向 け て の さ ま ざ ま な 文 書 や 情 報 が 発 信 さ れ 続 け て い る 。 あ ら た に 投 票 権 が 与 え ら れ た 16~17 歳の層もこの環境のなかにいることになる。果たして,彼らはどのように受けとめてい る の だ ろ う か 。話 題 に し て い る の だ ろ う か 。こ れ ら の 問 い に は 後 節 で 紹 介 す る 2013 年に実施 さ れ た 意 識 調 査 結 果 が 手 が か り に な る 。 さ て , 学 校 カ リ キ ュ ラ ム で は ど の よ う な 対 応 が さ れ て い る だ ろ う か 。 独 立 住 民 投 票 に 参 加 す る に は 政 治 的 リ テ ラ シ ー が 必 要 と な る 。 そ こ で 次 節 で は , 学 校 カ リ キ ュ ラ ム お い て , 政 治 的 リ テ ラ シ ー を ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 育 成 の 素 材 と し て ど の よ う に 捉 え て い る か に つ い て 検 討 す る 。

3 . ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 育 成 と 学 校 カ リ キ ュ ラ ム

ス コ ッ ト ラ ン ド の 学 校 カ リ キ ュ ラ ム は ,「 卓 越 へ の カ リ キ ュ ラ ム 」 (CfE: Curriculum for

と 出 し て い る 。2013 年 2 月に「スコットランドの未来:住民投票から独立,そして成文憲法の

制 定 へ(Scotland’s Future: from the referendum to independence and a written constitution)」と題す

る 政 策 文 書 を 発 表 し ,さ ら に 11 月には「スコットランドの未来:独立スコットランドのガイ ド

Scotland’s Future: Your Guide to Independent Scotland)」を出した。後者は 650 頁のボリューム

がある。その後は独立後のEU(欧州連合)加盟や通貨ポンドについて,具体的な状況が関係者・機 関の交渉に応じて報道されている。上記の文書を含めて,独立住民投票に至るタイムラインや重要な 文 書 は す べ て ス コ ッ ト ラ ン ド 政 府 が 開 設 し て い る ウ ェ ブ サ イ ト(http://www.scotreferendum.com/) に 掲 載 さ れ て お り , 情 報 は い つ で も 引 き 出 す こ と が で き る 状 況 に な っ て い る 。 ま た , 独 立 に 反 対 す る グ ル ー プ (「Better Together」),SNP がベースとなる賛成するグループ (「Yes Scotland」)がそれぞれキャンペーンをおこなっている。前者は保守党,労働党,自民党 が支持をしており,SNP との対立の構図は容易に想像できる。図1と図2はキャンペーン用パンフ レットである。各ウェブサイトでは連日の意見表明,ソーシャル・メディアによるコメント発 信 等 の ネ ッ ト ・ キ ャ ン ペ ー ン が 展 開 さ れ て い る9。 ま た , 学 校 用 教 材 パ ッ ク の 配 布 な ど ,16~17 歳 へ と 拡 大 さ れ た 有 権 者 を 意 識 し た 活 動 を お こ な っ て い る (TESS 13 September 2013)。

< 図 1 >Better Together <図2>Yes Scotland

こ の よ う に , こ の 2 年 間 は 独 立 住 民 投 票 に 向 け て , 手 続 き が 法 的 ・ 行 政 的 に も 急 速 に 進 み , 住 民 へ 向 け て の さ ま ざ ま な 文 書 や 情 報 が 発 信 さ れ 続 け て い る 。 あ ら た に 投 票 権 が 与 え ら れ た 16~17 歳の層もこの環境のなかにいることになる。果たして,彼らはどのように受けとめてい る の だ ろ う か 。話 題 に し て い る の だ ろ う か 。こ れ ら の 問 い に は 後 節 で 紹 介 す る 2013 年に実施 さ れ た 意 識 調 査 結 果 が 手 が か り に な る 。 さ て ,学 校 カ リ キ ュ ラ ム で は ど の よ う な 対 応 が な さ れ て い る だ ろ う か 。独 立 住 民 投 票 に 参 加 す る に は 政 治 的 リ テ ラ シ ー が 必 要 と な る 。 そ こ で 次 節 で は , 学 校 カ リ キ ュ ラ ム お い て , 政 治 的 リ テ ラ シ ー を ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 育 成 の 素 材 と し て ど の よ う に 捉 え て い る か に つ い て 検 討 す る 。

3 . ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 育 成 と 学 校 カ リ キ ュ ラ ム

ス コ ッ ト ラ ン ド の 学 校 カ リ キ ュ ラ ム は ,「 卓 越 へ の カ リ キ ュ ラ ム 」 (CfE: Curriculum for

と 出 し て い る 。2013 年 2 月に「スコットランドの未来:住民投票から独立,そして成文憲法の

制 定 へ(Scotland’s Future: from the referendum to independence and a written constitution)」と題す

る 政 策 文 書 を 発 表 し ,さ ら に 11 月には「スコットランドの未来:独立スコットランドのガイ ド

Scotland’s Future: Your Guide to Independent Scotland)」を出した。後者は 650 頁のボリューム

がある。その後は独立後のEU(欧州連合)加盟や通貨ポンドについて,具体的な状況が関係者・機 関の交渉に応じて報道されている。上記の文書を含めて,独立住民投票に至るタイムラインや重要な 文 書 は す べ て ス コ ッ ト ラ ン ド 政 府 が 開 設 し て い る ウ ェ ブ サ イ ト(http://www.scotreferendum.com/) に 掲 載 さ れ て お り , 情 報 は い つ で も 引 き 出 す こ と が で き る 状 況 に な っ て い る 。 ま た , 独 立 に 反 対 す る グ ル ー プ (「Better Together」),SNP がベースとなる賛成するグループ (「Yes Scotland」)がそれぞれキャンペーンをおこなっている。前者は保守党,労働党,自民党 が支持をしており,SNP との対立の構図は容易に想像できる。図1と図2はキャンペーン用パンフ レットである。各ウェブサイトでは連日の意見表明,ソーシャル・メディアによるコメント発 信 等 の ネ ッ ト ・ キ ャ ン ペ ー ン が 展 開 さ れ て い る9。 ま た , 学 校 用 教 材 パ ッ ク の 配 布 な ど ,16~17 歳 へ と 拡 大 さ れ た 有 権 者 を 意 識 し た 活 動 を お こ な っ て い る (TESS 13 September 2013)。

< 図 1 >Better Together <図2>Yes Scotland

こ の よ う に , こ の 2 年 間 は 独 立 住 民 投 票 に 向 け て , 手 続 き が 法 的 ・ 行 政 的 に も 急 速 に 進 み , 住 民 へ 向 け て の さ ま ざ ま な 文 書 や 情 報 が 発 信 さ れ 続 け て い る 。 あ ら た に 投 票 権 が 与 え ら れ た 16~17 歳の層もこの環境のなかにいることになる。果たして,彼らはどのように受けとめてい る の だ ろ う か 。話 題 に し て い る の だ ろ う か 。こ れ ら の 問 い に は 後 節 で 紹 介 す る 2013 年に実施 さ れ た 意 識 調 査 結 果 が 手 が か り に な る 。 さ て ,学 校 カ リ キ ュ ラ ム で は ど の よ う な 対 応 が な さ れ て い る だ ろ う か 。独 立 住 民 投 票 に 参 加 す る に は 政 治 的 リ テ ラ シ ー が 必 要 と な る 。 そ こ で 次 節 で は , 学 校 カ リ キ ュ ラ ム お い て , 政 治 的 リ テ ラ シ ー を ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 育 成 の 素 材 と し て ど の よ う に 捉 え て い る か に つ い て 検 討 す る 。

3 . ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 育 成 と 学 校 カ リ キ ュ ラ ム

(5)

-5- Excellence)と 呼ば れ る ,2010 年か ら 導 入 さ れ た 新 し い カ リ キ ュ ラ ム の 考 え 方 ( 構 成 ) で あ る 。 イ ン グ ラ ン ド の ナ シ ョ ナ ル ・ カ リ キ ュ ラ ム と 異 な り , 学 校 と 教 師 に 大 き な 裁 量 を 与 え る も の で あ り , 学 校 ご と に カ リ キ ュ ラ ム づ く り が お こ な わ れ る 。CfE を中心に,教員研修プログラム, 評 価 , 学 校 視 察 等 を 担 う た め に2011 年に関連機関を統合して発足した Education Scotland のウ ェ ブ サ イ ト10に は ,多 く の 情 報 が 掲 載 さ れ て い る 。そ れ に よ る と ,CfE のねらいは「3~18 歳を 対 象 に 一 貫 し た , よ り フ レ キ シ ブ ル で 豊 か な カ リ キ ュ ラ ム を 提 供 す る こ と に よ っ て , ス コ ッ ト ラ ン ド の 教 育 に お け る 変 容 を 達 成 す る こ と 」 で あ る 。 ま た カ リ キ ュ ラ ム の 目 的 は 4 つ の 能 力 (capacities)の形成にある。それらは,「成功する学習者」「自信を持った個人」「責任ある市民」 「 効 果 的 な 貢 献 者 」 で あ る 。 カ リ キ ュ ラ ム の 枠 組 み は , 学 習 者 を 中 心 に 置 き , 期 待 さ れ る 学 習 と 進 展 と し て の 「 経 験 と ア ウ ト カ ム 」が 上 記 の 4 つ の 能 力 を 形 成 す る べ く 計 画 さ れ ,構 成 さ れ る(The Scottish Government 2008)。「経験とアウトカム」が展開される領域として,「表現芸術」「言語」「健康と福利」「数 学 」「 宗 教 と 道 徳 教 育 」「 科 学 」「 社 会 科 」「 技 術 」 の 8 領 域 が 示 さ れ て い る 。 こ の 領 域 の な か に ア ク テ ィ ブ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ を 捉 え よ う と す る と ,「 言 語 」と「 社 会 科 」で 触 れ ら れ て い る11。 前 者 で は 現 代 外 国 語 を 学 習 す る こ と に よ り , よ り 異 な る 考 え 方 を 知 る こ と が で き , そ れ が ア ク テ ィ ブ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ に つ な が る と す る 。後 者 で は ,「 ア ク テ ィ ブ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 促 進 は , 参 加 を 可 能 に し , 奨 励 す る ス キ ル と 知 識 を 子 ど も た ち や 若 者 が 身 に つ け る に あ た っ て , 社 会 科 の 学 習 の 中 心 的 特 色 と な る 」と す る 。こ の「 社 会 科 」領 域 に 位 置 す る 教 科 に「 現 代 科(Modern Studies)」がある。スコットランドでは 1960 年代から,歴史と地理の教科に政治的リテラシー を 含 め た 教 科 と し て 中 等 教 育 段 階 で 導 入 さ れ , 義 務 教 育 修 了 時 や 高 等 教 育 へ の 進 学 に 関 わ る 資 格 試 験12の 教 科 と し て も 採 用 さ れ て き た (Maitles 2008)。独立住民投票への参加で求められる 政 治 的 リ テ ラ シ ー の 視 点 か ら , こ こ で は こ の 「 現 代 科 」 に 注 目 し て お き た い 。 で は ,CfE 導入後に発行されたアクティブ・ラーニングのための S1~3(中等教育 1~3 年)

用「 現 代 科 」の テ キ ス ト ブ ッ ク『Third Level, Modern Studies & Citizenship』Carson, P. & Morrison, I. 2012)から,社会科領域の「経験とアウトカム」に組み込まれる政治的リテラシーが実際の 教 材 で は ど の よ う に 展 開 さ れ て い る の か み て み よ う 。 こ の テ キ ス ト は ,「1. そうするには」「2. だ れ の 権 利 ? 」「3. チョコレートの暗い一面」「4. 国際問題」「5.メディアを読みとる」「6. 現 代 科 で リ サ ー チ 」の 6 章構成で,「経験とアウトカム」で示された枠組みにおける各章の位置づ け が 最 初 に 示 さ れ て い る 。 独 立 住 民 投 票 に 向 け た 政 治 的 リ テ ラ シ ー に 関 連 す る の は1,2,5 章 で あ る 。1 章には「誰が決める?」「民主主義社会の生活」「スコットランド議会議員のしごと」 「 ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 と イ ギ リ ス 議 会 」「 行 動 す る 民 主 主 義 」,2 章には「権利と義務」「スコッ ト ラ ン ド で は 何 歳 に な っ た ら 何 が で き る か ? 」「 権 利 が ぶ つ か り あ っ た ら 」「 権 利 を 行 使 で き な い と は ? 」「 事 例:誤 審 」「 若 者 の 権 利 保 障 の た め に ス コ ッ ト ラ ン ド が お こ な っ て い る こ と と は ? 」, 5 章には「事実か,それとも意見か?」「メディアを通してみてみると」「放送とソーシャル・ メ デ ィ ア 」「 ソ ー シ ャ ル・メ デ ィ ア は い か に 説 得 力 が あ る か 」「2011 年の暴動におけるソーシャ ル・ メ デ ィ ア の 役 割 」13の 各 節 が 含 ま れ て い る 。1 章は基礎知識の学習,2 章は権利の理解であ る 。 そ し て , 先 述 の よ う に , 独 立 住 民 投 票 に 関 す る 多 く の 情 報 が さ ま ざ ま な メ デ ィ ア で 発 信 さ れ る 環 境 に い る16~17 歳を念頭にこのテキストの利用を考えれば,5 章は政治的リテラシー を 習 得 す る た め の 重 要 な 位 置 を 占 め る と 言 え る 。

政 治 的 リ テ ラ シ ー は ま た ,「 シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の た め の 教 育 」(Education for Citizenship)の中

と 出 し て い る 。2013 年 2 月に「スコットランドの未来:住民投票から独立,そして成文憲法の

制 定 へ(Scotland’s Future: from the referendum to independence and a written constitution)」と題す

る 政 策 文 書 を 発 表 し ,さ ら に 11 月には「スコットランドの未来:独立スコットランドのガイ ド

Scotland’s Future: Your Guide to Independent Scotland)」を出した。後者は 650 頁のボリューム

がある。その後は独立後のEU(欧州連合)加盟や通貨ポンドについて,具体的な状況が関係者・機 関の交渉に応じて報道されている。上記の文書を含めて,独立住民投票に至るタイムラインや重要な 文 書 は す べ て ス コ ッ ト ラ ン ド 政 府 が 開 設 し て い る ウ ェ ブ サ イ ト(http://www.scotreferendum.com/) に 掲 載 さ れ て お り , 情 報 は い つ で も 引 き 出 す こ と が で き る 状 況 に な っ て い る 。 ま た , 独 立 に 反 対 す る グ ル ー プ (「Better Together」),SNP がベースとなる賛成するグループ (「Yes Scotland」)がそれぞれキャンペーンをおこなっている。前者は保守党,労働党,自民党 が支持をしており,SNP との対立の構図は容易に想像できる。図1と図2はキャンペーン用パンフ レットである。各ウェブサイトでは連日の意見表明,ソーシャル・メディアによるコメント発 信 等 の ネ ッ ト ・ キ ャ ン ペ ー ン が 展 開 さ れ て い る9。 ま た , 学 校 用 教 材 パ ッ ク の 配 布 な ど ,16~17 歳 へ と 拡 大 さ れ た 有 権 者 を 意 識 し た 活 動 を お こ な っ て い る (TESS 13 September 2013)。

< 図 1 >Better Together <図2>Yes Scotland

こ の よ う に , こ の 2 年 間 は 独 立 住 民 投 票 に 向 け て , 手 続 き が 法 的 ・ 行 政 的 に も 急 速 に 進 み , 住 民 へ 向 け て の さ ま ざ ま な 文 書 や 情 報 が 発 信 さ れ 続 け て い る 。 あ ら た に 投 票 権 が 与 え ら れ た 16~17 歳の層もこの環境のなかにいることになる。果たして,彼らはどのように受けとめてい る の だ ろ う か 。話 題 に し て い る の だ ろ う か 。こ れ ら の 問 い に は 後 節 で 紹 介 す る2013 年に実施 さ れ た 意 識 調 査 結 果 が 手 が か り に な る 。 さ て ,学 校 カ リ キ ュ ラ ム で は ど の よ う な 対 応 が な さ れ て い る だ ろ う か 。独 立 住 民 投 票 に 参 加 す る に は 政 治 的 リ テ ラ シ ー が 必 要 と な る 。 そ こ で 次 節 で は , 学 校 カ リ キ ュ ラ ム お い て , 政 治 的 リ テ ラ シ ー を ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 育 成 の 素 材 と し て ど の よ う に 捉 え て い る か に つ い て 検 討 す る 。

3 . ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 育 成 と 学 校 カ リ キ ュ ラ ム

ス コ ッ ト ラ ン ド の 学 校 カ リ キ ュ ラ ム は ,「 卓 越 へ の カ リ キ ュ ラ ム 」 (CfE: Curriculum for

Excellence)と 呼ば れ る ,2010 年か ら 導 入 さ れ た 新 し い カ リ キ ュ ラ ム の 考 え 方 ( 構 成 ) で あ る 。 イ ン グ ラ ン ド の ナ シ ョ ナ ル ・ カ リ キ ュ ラ ム と 異 な り , 学 校 と 教 師 に 大 き な 裁 量 を 与 え る も の で あ り , 学 校 ご と に カ リ キ ュ ラ ム づ く り が お こ な わ れ る 。CfE を中心に,教員研修プログラム, 評 価 , 学 校 視 察 等 を 担 う た め に2011 年に関連機関を統合して発足した Education Scotland のウ ェ ブ サ イ ト10に は ,多 く の 情 報 が 掲 載 さ れ て い る 。そ れ に よ る と ,CfE のねらいは「3~18 歳を 対 象 に 一 貫 し た , よ り フ レ キ シ ブ ル で 豊 か な カ リ キ ュ ラ ム を 提 供 す る こ と に よ っ て , ス コ ッ ト ラ ン ド の 教 育 に お け る 変 容 を 達 成 す る こ と 」 で あ る 。 ま た カ リ キ ュ ラ ム の 目 的 は 4 つ の 能 力 (capacities)の形成にある。それらは,「成功する学習者」「自信を持った個人」「責任ある市民」 「 効 果 的 な 貢 献 者 」 で あ る 。 カ リ キ ュ ラ ム の 枠 組 み は , 学 習 者 を 中 心 に 置 き , 期 待 さ れ る 学 習 と 進 展 と し て の 「 経 験 と ア ウ ト カ ム 」が 上 記 の 4 つ の 能 力 を 形 成 す る べ く 計 画 さ れ ,構 成 さ れ る(The Scottish Government 2008)。「経験とアウトカム」が展開される領域として,「表現芸術」「言語」「健康と福利」「数 学 」「 宗 教 と 道 徳 教 育 」「 科 学 」「 社 会 科 」「 技 術 」 の 8 領 域 が 示 さ れ て い る 。 こ の 領 域 の な か に ア ク テ ィ ブ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ を 捉 え よ う と す る と ,「 言 語 」と「 社 会 科 」で 触 れ ら れ て い る11。 前 者 で は 現 代 外 国 語 を 学 習 す る こ と に よ り , よ り 異 な る 考 え 方 を 知 る こ と が で き , そ れ が ア ク テ ィ ブ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ に つ な が る と す る 。後 者 で は ,「 ア ク テ ィ ブ・シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 促 進 は , 参 加 を 可 能 に し , 奨 励 す る ス キ ル と 知 識 を 子 ど も た ち や 若 者 が 身 に つ け る に あ た っ て , 社 会 科 の 学 習 の 中 心 的 特 色 と な る 」と す る 。こ の「 社 会 科 」領 域 に 位 置 す る 教 科 に「 現 代 科(Modern Studies)」がある。スコットランドでは 1960 年代から,歴史と地理の教科に政治的リテラシー を 含 め た 教 科 と し て 中 等 教 育 段 階 で 導 入 さ れ , 義 務 教 育 修 了 時 や 高 等 教 育 へ の 進 学 に 関 わ る 資 格 試 験12の 教 科 と し て も 採 用 さ れ て き た (Maitles 2008)。独立住民投票への参加で求められる 政 治 的 リ テ ラ シ ー の 視 点 か ら , こ こ で は こ の 「 現 代 科 」 に 注 目 し て お き た い 。 で は ,CfE 導入後に発行されたアクティブ・ラーニングのための S1~3(中等教育 1~3 年)

用「 現 代 科 」の テ キ ス ト ブ ッ ク『Third Level, Modern Studies & Citizenship』Carson, P. & Morrison, I. 2012)から,社会科領域の「経験とアウトカム」に組み込まれる政治的リテラシーが実際の 教 材 で は ど の よ う に 展 開 さ れ て い る の か み て み よ う 。 こ の テ キ ス ト は ,「1. そうするには」「2. だ れ の 権 利 ? 」「3. チョコレートの暗い一面」「4. 国際問題」「5.メディアを読みとる」「6. 現 代 科 で リ サ ー チ 」の 6 章構成で,「経験とアウトカム」で示された枠組みにおける各章の位置づ け が 最 初 に 示 さ れ て い る 。 独 立 住 民 投 票 に 向 け た 政 治 的 リ テ ラ シ ー に 関 連 す る の は1,2,5 章 で あ る 。1 章には「誰が決める?」「民主主義社会の生活」「スコットランド議会議員のしごと」 「 ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 と イ ギ リ ス 議 会 」「 行 動 す る 民 主 主 義 」,2 章には「権利と義務」「スコッ ト ラ ン ド で は 何 歳 に な っ た ら 何 が で き る か ? 」「 権 利 が ぶ つ か り あ っ た ら 」「 権 利 を 行 使 で き な い と は ? 」「 事 例:誤 審 」「 若 者 の 権 利 保 障 の た め に ス コ ッ ト ラ ン ド が お こ な っ て い る こ と と は ? 」, 5 章には「事実か,それとも意見か?」「メディアを通してみてみると」「放送とソーシャル・ メ デ ィ ア 」「 ソ ー シ ャ ル・メ デ ィ ア は い か に 説 得 力 が あ る か 」「2011 年の暴動13に お け る ソ ー シ ャ ル・メ デ ィ ア の 役 割 」の 各 節 が 含 ま れ て い る 。1 章は基礎知識の学習,2 章は権利の理解である。 そ し て ,先 述 の よ う に ,独 立 住 民 投 票 に 関 す る 多 く の 情 報 が さ ま ざ ま な メ デ ィ ア で 発 信 さ れ て い る 環 境 に い る16~17 歳を念頭にこのテキストの利用を考えれば,5 章は政治的リテラシーを習得 す る た め の 重 要 な 位 置 を 占 め る と 言 え る 。

(6)

-6- 心 の 1 つ で も あ る 。 そ れ は イ ン グ ラ ン ド の シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 の 基 盤 を つ く っ た ク リ ッ ク (Crick, B.)が本来は政治教育の促進を唱えていたことにもみてとれる(Crick2001=2011)。スコ ッ ト ラ ン ド で は ,上 記 の ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 復 活 後 ,「 シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の た め の 教 育 」を 考 え る ワ ー キ ン グ グ ル ー プ が 発 足 す る14。 イ ン グ ラ ン ド の シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 の 反 映 と も 言 え る が , 分 権 が 契 機 と な っ た こ と は 否 め な い (Kitayama 2008)。スコットランドの場合,イングラ ン ド の シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 と 異 な り ,教 科 と し て 独 立 さ せ て い な い カ リ キ ュ ラ ム の 特 質 か ら , 「 シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の た め の 教 育 」はCfE においても領域横断的に組み込まれる。もちろん「現 代 科 」 に も 組 み 込 ま れ て い る 。 Education Scotland は 2013 年 6 月に,住民投票に向けて 16~17 歳にどのような配慮が必要か に つ い て 「 政 治 的 リ テ ラ シ ー と ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票 」15と 題 す る 文 書 を 出 し , そ の な か で 今 後 発 行 す る ブ リ ー フ ィ ン グ を 参 照 す る よ う に 示 し て い る 。 そ し て 8 月に「CfE:政治的 リ テ ラ シ ー 」(Education Scotland 2013)を発行している。今回の独立住民投票のためだけでは な い が , 出 さ れ た タ イ ミ ン グ は ま さ に 16 歳~17 歳の投票を考慮したものである。ブリーフィ ン グ で は ,CfE で形成を目指す上述の4つの能力すべてに政治的リテラシーは関係することが 述 べ ら れ , 効 果 的 な 学 習 方 法 と し て , 討 論 , デ ィ ベ ー ト , 投 票 , ト ピ ッ ク ・ ワ ー ク と 学 際 的 な 学 習 , 個 別 リ サ ー チ と 省 察 , 訪 問 や 来 訪 者 と の パ ー ト ナ ー シ ッ プ の 活 用 ,「 学 習 者 の 声(Learner Voice)」を提示している。さらに,選挙は生きた材料になることが述べられ,そのなかで 2014 年9 月の独立住民投票について触れて,16~17 歳が投票できることは,その年齢集団に政治 的 リ テ ラ シ ー を 発 達 さ せ る に は ま た と な い 機 会 で あ る と し て い る 。 住 民 投 票 で は あ る が , 投 票 権 の 年 齢 引 き 下 げ は ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 育 成 を 政 治 的 リ テ ラ シ ー の 観 点 か ら 高 め る 何 ら か の ヒ ン ト と 効 果 を 学 校 教 育 に お い て も た ら す 可 能 性 が あ る 。 近 藤 (2013)によれば,オーストリアでは国政選挙の最低投票年齢が,戦後の21歳から, 1949年に20歳,1968年に19歳,1992年には18歳に,2007年には16歳にと,段階的に引き下げら れ た こ と が 政 治 教 育 の 発 展 に と っ て 決 定 的 な 意 味 を も っ た と 考 え ら れ , カ リ キ ュ ラ ム 改 革 を 迫 る こ と に も な っ た と い う 。 そ れ に は 隣 国 ド イ ツ の 先 進 的 な 政 治 教 育 か ら 学 ぶ こ と も 多 か っ た 。 ド イ ツ の 場 合 , 連 邦 政 治 教 育 セ ン タ ー を 持 つ な ど , 政 治 教 育 の 歴 史 と 蓄 積 は 深 く , 学 校 へ の 教 材 提 供 も な さ れ て い る 。 ま た , 政 治 教 育 機 関 と 学 校 が 連 携 し て 進 め る 教 育 プ ロ グ ラ ム 「 ジ ュ ニ ア 選 挙 」 な ど の 蓄 積 も あ る ( 近 藤2007,2005)。学校で習得する政治的リテラシーが,卒業後 の 社 会 で 継 続 的 に 活 用 で き , 地 域 や 社 会 に 自 分 自 身 が 関 わ っ て い る の だ と い う 参 加 へ の あ る 種 の 達 成 感 を 持 た せ る も の と し て 目 指 さ れ る な ら ば , ス コ ッ ト ラ ン ド に お い て も , 今 回 住 民 投 票 に 参 加 す る16~17歳が,投票後に自分たちの参加が意味のあるものであったと認識できるよう な 結 果 が ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 育 成 の 成 果 と し て 問 わ れ る 。 同 時 に そ れ は 上 述 のCfE の 目 的 で あ る 4 つ の 能 力 形 成 に 該 当 し , 投 票 ま で の 過 程 は 意 味 を 持 つ 。 こ の 点 に お い て , ユ ー ス・パ ー ラ メ ン ト(Scottish Youth Parliament)16な ど 学 校 外 の さ ま ざ ま な 場 で お こ な わ れ る 教 育 や 学 習 と と も に ,学 校 と い う 場 や 教 師 の 役 割 は 大 き い と 言 え る 。今 後 ,2014年9月の投票日お よ び そ の 後 に お い て , 「 現 代 科 」 で 捉 え ら れ て い る 政 治 的 リ テ ラ シ ー に 組 み 込 ま れ た 教 材 な ど そ の 実 際 を み る 必 要 が あ る 。

4 . 独 立 住 民 投 票 に 向 け て

投 票 日 ま で 半 年 あ ま り と な っ た 今 ,研 究 者 組 織 も さ ま ざ ま な 関 連 教 材 を 提 供 し て い る(TESS

6 December 2013 & 17 January 2014)。賛成・反対の各キャンペーンも熱を帯びている。しか し な が ら , 冬 休 み 明 け の 教 室 で は 次 の よ う な 日 常 が あ っ た と い う 投 稿 が 『 タ イ ム ズ 誌 教 育 ( ス コ ッ ト ラ ン ド ) 版 』 に 掲 載 さ れ て い る (TESS 24 January 2014)。 そ れ は ,S4(中等教育 4 年)の ク ラ ス で 「 さ あ 君 た ち , 今 年 の 重 要 な イ ベ ン ト は 何 で し ょ う ? 」 と い う 教 師 の 問 い か け に , ど れ ほ ど ヒ ン ト を 出 し て も 住 民 投 票 と い う 答 え が 思 い 浮 か ば な い 生 徒 た ち の 姿 で あ る 。 教 師 が 問 い か け た 生 徒 た ち は 投 票 日 ま で に16 歳を迎えて有権者となる 22 人であるのに,である。後述 の 調 査 で は 94%が住民投票のあることを認識していたとなっているが,実際にはこの投稿のよ う な 教 室 の や り と り も 現 実 で あ ろ う 。 し か し 残 さ れ た 期 間 は 短 い 。 4 月 に は イ ー ス タ ー 休 暇 が あ り , 7 月 か ら 夏 休 み が 始 ま る 。 8 月 中 旬 か ら の 新 学 年 開 始 後 の 1 ヶ 月 後 が 投 票 日 で あ る 。 ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票 に 関 連 し た14~17歳を対象とする若年層の意識調査がおこなわ

れ て い る (TESS 13 September 2013 & 6 December 2013)。実施したのは,エディンバラ大学を 中 心 と す る 共 同 研 究 グ ル ー プ(AQMeN: Applied Quantitative Methods Network)である。このグル ー プ は 独 立 住 民 投 票 の た め の 若 年 層 向 け の 教 材 も こ の 調 査 結 果 を も と に 作 成 し , 学 校 で 利 用 で き る よ う に 公 開 し て い る 。 で は , 意 識 調 査 結 果 概 要 (AQMeN 2013)から,住民投票までに考 察 す べ き 課 題 を 取 り 出 し て み る こ と と す る 。調 査 は2013年5月に,スコットランド議会8選挙 区 均 等 に イ ン タ ビ ュ ー 方 式 で 実 施 さ れ , 1018人が回答している。94%が2014年に独立住民投票 が 実 施 さ れ る こ と を 知 っ て お り ,「 ス コ ッ ト ラ ン ド は 独 立 す る べ き か ? 」の 回 答 は ,「 は い 」(20.9%), 「 い い え 」(60.3%),「まだ決めていない」(18.8%)となっている。全体の67.2%,また「ま だ 決 め て い な い 」 層 に 限 れ ば88.0%が「最終決断前にもっと情報がほしい」と回答しており, 調 査 時 点 で は 意 志 決 定 に は ま だ ま だ 情 報 不 足 で あ る こ と が わ か る 。 「 住 民 投 票 に 参 加 す る か ど う か 」に つ い て は ,69.1%が肯定的で,12.8%が否定的となっている。調査結果概要では若年 層 の 約3分の2が投票に行くことに確信をもっているとしているが,「どちらでもない」が17%あ り , 今 後 の 学 校 で 展 開 さ れ る 関 連 す る 授 業 等 に よ っ て , こ の 層 が ど ち ら の 傾 向 に 向 か う の か , 否 定 的 な 層 は 変 化 す る の か は 注 目 す べ き 課 題 と な る 。 「 住 民 投 票 に つ い て だ れ か と 話 を し た こ と が あ る か 」( 複 数 回 答 )に つ い て は ,両 親(55.5%),友人(50.0%),クラスの人たち(54.7%), 誰 と も 話 し て い な い (11.0%)であった。「一般的に政治動向にどのくらい関心があるか」に つ い て は , 「 か な り 」 と 「 ま あ ま あ 」 関 心 が あ る と 回 答 し た の は59.0%で,「まったくない」7.8%であった。調査結果概要では,一方で「自分に近いと思う政党はどれか」という質問 に 58.8%が「ない」と回答していることに注目し,政治動向への関心は政党支持によるとは思わ れ な い こ と を 挙 げ て い る 。 こ こ で 注 目 し て お き た い の は , 「 最 終 決 断 前 に も っ と 情 報 が ほ し い 」 や , 投 票 へ の 参 加 を 肯 定 的 に 考 え る 割 合 が ど ち ら も7割近いことである。この層はオープンで,積極的に参加しよう と し て い る 。 模 擬 選 挙 で は な い 実 際 の こ の 住 民 投 票 に 参 加 で き る こ と は , や は り マ ン(Munn, P.) が 指 摘 す る よ う に , ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ に 最 も 効 果 的 な ア ク テ ィ ブ ・ ラ ー ニ ン グ の ひ と つ で あ る (Munn 2010)。そして,今回の住民投票は学校のカリキュラムと実際の生活が つ な が る チ ャ ン ス で も あ り ,前 述 の よ う に 学 校 や 教 師 の 役 割 が 問 わ れ る こ と に な る 。と こ ろ で , 行 政 サ イ ド は 教 師 が 中 立 な 立 場 に あ る こ と を 強 く 求 め ,教 員 組 合(EIS)はそれに応答して教師 は 中 立 で あ る こ と に 自 信 が あ る と し て い る (TESS 13 September 2013)。政 治 的 リ テ ラ シ ー の 取 り 扱 い が 簡 単 で は な い こ と は 日 本 で も 同 じ で あ る 。 清 田 (2012)が指摘するように,しかし「毒抜 き 」 さ れ た カ リ キ ュ ラ ム は 意 味 が な い 。 政 治 的 リ テ ラ シ ー を 取 り 扱 う こ と に ど れ だ け 教 師 が 自

(7)

-7- 心 の 1 つ で も あ る 。 そ れ は イ ン グ ラ ン ド の シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 の 基 盤 を つ く っ た ク リ ッ ク (Crick, B.)が本来は政治教育の促進を唱えていたことにもみてとれる(Crick2001=2011)。スコ ッ ト ラ ン ド で は ,上 記 の ス コ ッ ト ラ ン ド 議 会 復 活 後 ,「 シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の た め の 教 育 」を 考 え る ワ ー キ ン グ グ ル ー プ が 発 足 す る14。 イ ン グ ラ ン ド の シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 の 反 映 と も 言 え る が , 分 権 が 契 機 と な っ た こ と は 否 め な い (Kitayama 2008)。スコットランドの場合,イングラ ン ド の シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 教 育 と 異 な り ,教 科 と し て 独 立 さ せ て い な い カ リ キ ュ ラ ム の 特 質 か ら , 「 シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の た め の 教 育 」はCfE においても領域横断的に組み込まれる。もちろん「現 代 科 」 に も 組 み 込 ま れ て い る 。 Education Scotland は 2013 年 6 月に,住民投票に向けて 16~17 歳にどのような配慮が必要か に つ い て 「 政 治 的 リ テ ラ シ ー と ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票 」15と 題 す る 文 書 を 出 し , そ の な か で 今 後 発 行 す る ブ リ ー フ ィ ン グ を 参 照 す る よ う に 示 し て い る 。 そ し て8 月に「CfE:政治的 リ テ ラ シ ー 」(Education Scotland 2013)を発行している。今回の独立住民投票のためだけでは な い が , 出 さ れ た タ イ ミ ン グ は ま さ に 16 歳~17 歳の投票を考慮したものである。ブリーフィ ン グ で は ,CfE で形成を目指す上述の4つの能力すべてに政治的リテラシーは関係することが 述 べ ら れ , 効 果 的 な 学 習 方 法 と し て , 討 論 , デ ィ ベ ー ト , 投 票 , ト ピ ッ ク ・ ワ ー ク と 学 際 的 な 学 習 , 個 別 リ サ ー チ と 省 察 , 訪 問 や 来 訪 者 と の パ ー ト ナ ー シ ッ プ の 活 用 ,「 学 習 者 の 声(Learner Voice)」を提示している。さらに,選挙は生きた材料になることが述べられ,そのなかで 2014 年9 月の独立住民投票について触れて,16~17 歳が投票できることは,その年齢集団に政治 的 リ テ ラ シ ー を 発 達 さ せ る に は ま た と な い 機 会 で あ る と し て い る 。 住 民 投 票 で は あ る が , 投 票 権 の 年 齢 引 き 下 げ は ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ の 育 成 を 政 治 的 リ テ ラ シ ー の 観 点 か ら 高 め る 何 ら か の ヒ ン ト と 効 果 を 学 校 教 育 に お い て も た ら す 可 能 性 が あ る 。 近 藤 (2013)によれば,オーストリアでは国政選挙の最低投票年齢が,戦後の21歳から, 1949年に20歳,1968年に19歳,1992年には18歳に,2007年には16歳にと,段階的に引き下げら れ た こ と が 政 治 教 育 の 発 展 に と っ て 決 定 的 な 意 味 を も っ た と 考 え ら れ , カ リ キ ュ ラ ム 改 革 を 迫 る こ と に も な っ た と い う 。 そ れ に は 隣 国 ド イ ツ の 先 進 的 な 政 治 教 育 か ら 学 ぶ こ と も 多 か っ た 。 ド イ ツ の 場 合 , 連 邦 政 治 教 育 セ ン タ ー を 持 つ な ど , 政 治 教 育 の 歴 史 と 蓄 積 は 深 く , 学 校 へ の 教 材 提 供 も な さ れ て い る 。 ま た , 政 治 教 育 機 関 と 学 校 が 連 携 し て 進 め る 教 育 プ ロ グ ラ ム 「 ジ ュ ニ ア 選 挙 」 な ど の 蓄 積 も あ る ( 近 藤2007,2005)。学校で習得する政治的リテラシーが,卒業後 の 社 会 で 継 続 的 に 活 用 で き , 地 域 や 社 会 に 自 分 自 身 が 関 わ っ て い る の だ と い う 参 加 へ の あ る 種 の 達 成 感 を 持 た せ る も の と し て 目 指 さ れ る な ら ば , ス コ ッ ト ラ ン ド に お い て も , 今 回 住 民 投 票 に 参 加 す る16~17歳が,投票後に自分たちの参加が意味のあるものであったと認識できるよう な 結 果 が ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ 育 成 の 成 果 と し て 問 わ れ る 。 同 時 に そ れ は 上 述 のCfE の 目 的 で あ る 4 つ の 能 力 形 成 に 該 当 し , 投 票 ま で の 過 程 は 意 味 を 持 つ 。 こ の 点 に お い て , ユ ー ス・パ ー ラ メ ン ト(Scottish Youth Parliament)16な ど 学 校 外 の さ ま ざ ま な 場 で お こ な わ れ る 教 育 や 学 習 と と も に ,学 校 と い う 場 や 教 師 の 役 割 は 大 き い と 言 え る 。今 後 ,2014年9月の投票日お よ び そ の 後 に お い て , 「 現 代 科 」 で 捉 え ら れ て い る 政 治 的 リ テ ラ シ ー に 組 み 込 ま れ た 教 材 な ど そ の 実 際 を み る 必 要 が あ る 。

4 . 独 立 住 民 投 票 に 向 け て

投 票 日 ま で 半 年 あ ま り と な っ た 今 ,研 究 者 組 織 も さ ま ざ ま な 関 連 教 材 を 提 供 し て い る(TESS

6 December 2013 & 17 January 2014)。賛成・反対の各キャンペーンも熱を帯びている。しか し な が ら , 冬 休 み 明 け の 教 室 で は 次 の よ う な 日 常 が あ っ た と い う 投 稿 が 『 タ イ ム ズ 誌 教 育 ( ス コ ッ ト ラ ン ド ) 版 』 に 掲 載 さ れ て い る (TESS 24 January 2014)。 そ れ は ,S4(中等教育 4 年)の ク ラ ス で 「 さ あ 君 た ち , 今 年 の 重 要 な イ ベ ン ト は 何 で し ょ う ? 」 と い う 教 師 の 問 い か け に , ど れ ほ ど ヒ ン ト を 出 し て も 住 民 投 票 と い う 答 え が 思 い 浮 か ば な い 生 徒 た ち の 姿 で あ る 。 教 師 が 問 い か け た 生 徒 た ち は 投 票 日 ま で に16 歳を迎えて有権者となる 22 人であるのに,である。後述 の 調 査 で は94%が住民投票のあることを認識していたとなっているが,実際にはこの投稿のよ う な 教 室 の や り と り も 現 実 で あ ろ う 。 し か し 残 さ れ た 期 間 は 短 い 。 4 月 に は イ ー ス タ ー 休 暇 が あ り , 7 月 か ら 夏 休 み が 始 ま る 。 8 月 中 旬 か ら の 新 学 年 開 始 後 の 1 ヶ 月 後 が 投 票 日 で あ る 。 ス コ ッ ト ラ ン ド 独 立 住 民 投 票 に 関 連 し た14~17歳を対象とする若年層の意識調査がおこなわ

れ て い る (TESS 13 September 2013 & 6 December 2013)。実施したのは,エディンバラ大学を 中 心 と す る 共 同 研 究 グ ル ー プ(AQMeN: Applied Quantitative Methods Network)である。このグル ー プ は 独 立 住 民 投 票 の た め の 若 年 層 向 け の 教 材 も こ の 調 査 結 果 を も と に 作 成 し , 学 校 で 利 用 で き る よ う に 公 開 し て い る 。 で は , 意 識 調 査 結 果 概 要 (AQMeN 2013)から,住民投票までに考 察 す べ き 課 題 を 取 り 出 し て み る こ と と す る 。調 査 は2013年5月に,スコットランド議会8選挙 区 均 等 に イ ン タ ビ ュ ー 方 式 で 実 施 さ れ , 1018人が回答している。94%が2014年に独立住民投票 が 実 施 さ れ る こ と を 知 っ て お り ,「 ス コ ッ ト ラ ン ド は 独 立 す る べ き か ? 」の 回 答 は ,「 は い 」(20.9%), 「 い い え 」(60.3%),「まだ決めていない」(18.8%)となっている。全体の67.2%,また「ま だ 決 め て い な い 」 層 に 限 れ ば88.0%が「最終決断前にもっと情報がほしい」と回答しており, 調 査 時 点 で は 意 志 決 定 に は ま だ ま だ 情 報 不 足 で あ る こ と が わ か る 。 「 住 民 投 票 に 参 加 す る か ど う か 」に つ い て は ,69.1%が肯定的で,12.8%が否定的となっている。調査結果概要では若年 層 の 約3分の2が投票に行くことに確信をもっているとしているが,「どちらでもない」が17%あ り , 今 後 の 学 校 で 展 開 さ れ る 関 連 す る 授 業 等 に よ っ て , こ の 層 が ど ち ら の 傾 向 に 向 か う の か , 否 定 的 な 層 は 変 化 す る の か は 注 目 す べ き 課 題 と な る 。 「 住 民 投 票 に つ い て だ れ か と 話 を し た こ と が あ る か 」( 複 数 回 答 )に つ い て は ,両 親(55.5%),友人(50.0%),クラスの人たち(54.7%), 誰 と も 話 し て い な い (11.0%)であった。「一般的に政治動向にどのくらい関心があるか」に つ い て は , 「 か な り 」 と 「 ま あ ま あ 」 関 心 が あ る と 回 答 し た の は59.0%で,「まったくない」7.8%であった。調査結果概要では,一方で「自分に近いと思う政党はどれか」という質問 に 58.8%が「ない」と回答していることに注目し,政治動向への関心は政党支持によるとは思わ れ な い こ と を 挙 げ て い る 。 こ こ で 注 目 し て お き た い の は , 「 最 終 決 断 前 に も っ と 情 報 が ほ し い 」 や , 投 票 へ の 参 加 を 肯 定 的 に 考 え る 割 合 が ど ち ら も7割近いことである。この層はオープンで,積極的に参加しよう と し て い る 。 模 擬 選 挙 で は な い 実 際 の こ の 住 民 投 票 に 参 加 で き る こ と は , や は り マ ン(Munn, P.) が 指 摘 す る よ う に , ア ク テ ィ ブ ・ シ テ ィ ズ ン シ ッ プ に 最 も 効 果 的 な ア ク テ ィ ブ ・ ラ ー ニ ン グ の ひ と つ で あ る (Munn 2010)。そして,今回の住民投票は学校のカリキュラムと実際の生活が つ な が る チ ャ ン ス で も あ り ,前 述 の よ う に 学 校 や 教 師 の 役 割 が 問 わ れ る こ と に な る 。と こ ろ で , 行 政 サ イ ド は 教 師 が 中 立 な 立 場 に あ る こ と を 強 く 求 め ,教 員 組 合(EIS)はそれに応答して教師 は 中 立 で あ る こ と に 自 信 が あ る と し て い る (TESS 13 September 2013)。政 治 的 リ テ ラ シ ー の 取 り 扱 い が 簡 単 で は な い こ と は 日 本 で も 同 じ で あ る 。 清 田 (2012)が指摘するように,しかし「毒抜 き 」 さ れ た カ リ キ ュ ラ ム は 意 味 が な い 。 政 治 的 リ テ ラ シ ー を 取 り 扱 う こ と に ど れ だ け 教 師 が 自

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