今、学問に何が起きているのか?
知の市場化:アカデミックな知への企業論理の浸透
⇔ 知のポストモダン的モメント
知のグローバル化:アメリカンな制度の支配
⇔ 知のポストコロニアル的モメント
知のデジタル化:人文書/教養読者層の崩壊
⇔ 知のポストグーテンベルク的モメント
知識の生産・流通のプラットフォームの地殻変動:
・グーグルによる全世界の知識のデジタル化(巨大な電子図書館)
・デジタル・アーカイブ、知識データベースの世界各地における発展
・Wikipedia などのインターネットにおける検索システムの発達
知の細分化と閉塞、全体を視る目の喪失
⇒学ぶ楽しさ、社会と未来への目をいかに回復するか?
‡:このマークが付してある著作物は、第三者が有する著作物ですので、同著作物の再使用、同著作物の二次的著作物の創作等に ついては、著作権者より直接使用許諾を得る必要があります。今、大学に何が起きているのか?
90年代以降の日本での大学の構造転換 1.制度改革 ①大綱化=教養部解体 ②大学院重点化 ③国立大学法人化 2.18歳人口の減少 ⇔ 大学数の増加 :質の低下(志願者マーケティング キャリアパスの崩壊) 世界的規模での大学間競争の激化(爆発する大学) ⇒ 「教養」の再構築? 「大学」の再定義 少なすぎる大学への公財政支出 教育機関への公財政支出の対GDP比(高等教育)(2006年)‡出典:OECD 「Education at a Glance 2009」 p.211、Chart B2.2. ‡出典:UNESCO 「Global Education Digest 2009」 p.11、FIGURE1
(used by permission of UNESCO) 地域別高等教育機関への入学者数(1970年~2007年)
大学の再定義へ
大学はすでに一度死んでいる。
→二度目の死と三度目の誕生へ向かうのか?
中世における大学の誕生
⇔ 都市間ネットワークの興隆(メディアとしての人)
近世における大学の死
⇔ 印刷術、専門学校、アカデミー、百科全書派
19世紀における大学の再生 ⇔ 国民国家/帝国主義
知識とは何か?
ネット情報をコピーしてレポートを作成する学生 十分な取材なしにネット情報を利用して誤報を引き起こした記者 ⇒厳格派:レポートや記事にネット情報を利用すること自体を禁止すべき? ⇔許容派:ネット検索と本や事典の引用の間に本質的な差はない?→
ネット情報は、知識の基盤たり得るか?
ネット情報と図書館の本は何が違うのか
作者性
:「誰かの知識」と「みんなの知識」
書物:各分野で定評のある、または定評を得ようとしている作者が、個人の書き 手としての社会的評価を賭けて出版。 ⇒責任の所在が個人 ネット:書かれていることが特定の個人がものだという観念を弱め、知識は「み んな」で作るものだという発想を強める。 ⇒責任が集合的に共有化 構造性
:要素を相互に結びつける構造こそ知識
知識:ばらばらな情報やデータの集まりではなく、様々な概念の内容や事象の記 述が相互に結びつき、全体として体系をなしている状態 (知恵の樹) • 事典編集の苦労=事項の重要度の比較、事項間の関連づけ • 図書館で多数の本を借り出して学ぶとき、個々の言葉の意味だけでなく、様々に絡まりあ う概念の広がりを構造的に把握している。 4情報検索から過去との対話へ
5ネット検索⇒知識の幹と枝の関係など何もわからなくても、知りたい事項の詳し
い情報を得ることができる。
=林檎の木がどの木で、その実がどの枝についているのか知らなくても、一瞬で林檎の実が手に 入る魔法。最後まで自分がどんな森を歩いているのかを知らないまま。 わたしは、ネット検索で瞬時にして 次々に必要な情報を次々に手に入れ ることで、緩やかに形成される知識 を失っているのかもしれない? 知識の発信者の激増 (Wiki YouTube Twitter)知識のコペルニクス的転回とは?
世界中のアマチュアが、専門家顔負けの情報を手にする時代だからこそ、情報を要素で消費する のではなく、相互に結びつけ、体系的な理解をしていくことが大切。新しい知は、過去の知との葛藤 の中から生まれ、日々の思考の積み重ねの中で作り変えられていく。未来のインターネットでは、い かに過去の知識との対話を媒介し、新たな理解の枞組作りを可能にしていくかが問われてくる。LATE SPECIALIZATION, EARLY EXPOSURE:
専門/教師と学生の出会いをいかに組織するか?
大学院修士
研究科・専攻でタテ割り
学部後期
学部・学科でタテ割り
学部前期
教養学部で一元化
2年 2年 2年横断型教育
プログラム
学術俯瞰講義
専門教師と学部
前期生の出会い
タテの学びとヨコの学びの
有機的構造化ー深く、広く
学術俯瞰とタテとヨコをつなぐ学
び
Early Exposure の実験としての学術俯瞰
個人の関心・実力にあわせた知識(→学び)の構造化
支援システムとしてのウェブサイトの戦略的活用
専門A
専門B
専門C
専門D
構造化された横断=統合
の学習経路
新しいリベラルアーツと専門知の結合
ネットのなかの東京大学
美馬秀樹(工学系)吉見俊哉(情報学環)
概 要
Ⅰ:知の構造化と構造化の技術
Ⅱ:ネット(ICT)と教育、研究
Ⅲ:ネットのなかの東京大学
Ⅳ:ディスカッション
爆発的増加
爆発的増加
• 約1900万 / 毎月6万
– 医学分野文献データベースに登録された
文献数(MEDLINE) / 毎月の増加数
爆発的増加
1 10 100 1,000 10,000 100,000 1,000,000 1900 1920 1940 1960 1980 2000 2020 学問における知識・情報の 幾何級数的な増大 -量の問題-出所:Chemical Abstracts Service
CVDの論文の数 Total:105,109(1901-2004) 7,553(2004)/ Year
• 約1900万 / 毎月6万
– 医学分野文献データベースに登録された
文献数(MEDLINE) / 毎月の増加数
爆発的増加
1 10 100 1,000 10,000 100,000 1,000,000 1900 1920 1940 1960 1980 2000 2020 学問における知識・情報の 幾何級数的な増大 -量の問題-出所:Chemical Abstracts Service
CVDの論文の数 Total:105,109(1901-2004) 7,553(2004)/ Year
• 約1900万 / 毎月6万
– 医学分野文献データベースに登録された
文献数(MEDLINE) / 毎月の増加数
知識の細分化
知識の細分化
約900
東京大学工学部の講義数
生物学 学問領域の細分化、用語整備の不備 従来の学問体系では 対応できない複雑な問題の登場 -質の問題- 数学 物理学 化学 生物学 ・ ・ ・ 昔 数学 物理学 化学 ・ ・ ・ 今 専門 分子 生物学 細胞 生物学 生態学 発生学 専門 細分化 異分野間 の関係知識の細分化
約900
東京大学工学部の講義数
生物学 学問領域の細分化、用語整備の不備 従来の学問体系では 対応できない複雑な問題の登場 -質の問題- 数学 物理学 化学 生物学 ・ ・ ・ 昔 数学 物理学 化学 ・ ・ ・ 今 専門 分子 生物学 細胞 生物学 生態学 発生学 専門 細分化 異分野間 の関係細分化の問題
細分化の問題
自動車
細分化の問題
自動車
社会
検索
検索
検索
apple
混沌とした知識を活用するためには
「知の構造化」が必要
「分野、組織、時勢を越えて、
知を活用できるようにする」
知の構造化の技術
膨大な情報を「分類」「抽象化」
「関連」の認識
-特徴をとらえる
抽象化
と知識活用の例
交通安全
電車/タクシーの運転状況のビデオ撮影
医療安全
抽象化
と知識活用の例
交通安全
電車/タクシーの運転状況のビデオ撮影
医療安全
手術状況のビデオ撮影
モニタリング
安全安心
知の構造化の技術
東京大学 美馬秀樹
関連性の認識を行う
文献1 ナノ粒子 チタニア 超臨界 サイズ ・・・・ 文献2 ナノ粒子 超臨界 発光 東北大 ・・・・ 重要な概念の 重なりから 関連性を推論 テキストを解析し、 重要な概念を抽出し 1. 知識を蓄積し、 2. 知識を分析・分類し、 3. 知識を可視化する。爬虫類
海綿動物
クラゲ、イソギンチャク、サンゴ
貝、イカ、タコ
ミミズ、ゴカイ
甲殻類
昆虫
クモ、サソリ
ウニ、ヒトデ、ナマコ
両生類
哺乳動物
鳥
バクテリア
スピロヘータ
細菌
藻類
アメーバ
鞭毛虫
蘚苔
銀杏、ソテツ
松
羊歯
菊
蘭
稲
麦
被子植物
裸子植物
カビ
酵母
きのこ
爬虫類
海綿動物
クラゲ、イソギンチャク、サンゴ
貝、イカ、タコ
ミミズ、ゴカイ
甲殻類
昆虫
クモ、サソリ
ウニ、ヒトデ、ナマコ
両生類
哺乳動物
鳥
藻類
アメーバ
鞭毛虫
バクテリア
スピロヘータ
細菌
蘚苔
銀杏、ソテツ
松
羊歯
菊
稲
麦
被子植物
裸子植物
蘭
カビ
酵母
きのこ
東京大学工学部講義の構造化
東京大学工学部講義の構造化
出展: MIMAサーチ(東京大学工学系研究科 工学教育推進機構) マテリアル 量子 機械 環境 社会基盤 生命・化学 数学 情報 工学基礎 物理 エネルギー 流体 電気、電子ネット(ICT)と教育、研究
検索ビデオ教材
実験・シミュレーション
分析
検索・探索
学習管理
ポートフォリオ・達成度管理
協調学習支援
コミュニケーション支援
ツール
マネージメント
コンテンツ
辞典・辞書
論文・文献・教科書
カリキュラム・シラバス
ネットのなかの東京大学
教育用コンテンツ
カリキュラム/シラバス
東京大学授業カタログ(http://catalog.he.u-tokyo.ac.jp/) OCW(Open Course Ware)(http://ocw.u-tokyo.ac.jp/)
工学教育推進シラバスNAVI(http://ciee.t.u-tokyo.ac.jp/snavi/) 教科書 進化する教科書(http://utht.t.u-tokyo.ac.jp/) 理想の教科書 … 研究用コンテンツ 各種資料、論文データベース GACoS(http://www.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/gacos/) 情報基盤センター図書館電子化部門(http://www.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/) 付属図書館(http://www.lib.u-tokyo.ac.jp/) … e-ラーニング教材 講義・講座アーカイブ 工学教育推進機構アーカイブ TODAI.TV(http://todai.tv/) etc.
WBT(Web Based Training)
HWB(http://hwb.ecc.u-tokyo.ac.jp/current/) Snowballs-協調型リテラシー学習支援システム
個別学習からヴァーチャル・コミュニケーションへ
学生生活支援
東大Navi(http://utnav.jp/)、UT-Life(http://www.ut-life.net/) …
理想の教科書
S
elf
N
avigati
o
n
W
eb-
Ba
sed
L
iteracy
L
earning
S
ystem
教科書部分
問題集
自分のアバターが常に表示される
たくさん正解すると雪玉をゲット
進化する教科書
背景
知識の爆発的増加
工学部/工学系の講義数 900/700
知識の繋がりの希薄化
分野細分化の悪影響
小中高から大学、社会
リアルタイム性
先端研究、社会情勢から教育への反映
量、質、スピード
知の構造化と教育
「広く、深く」
広い知識と深い理解
課題指向型、問題解決型
知の(時系列を含めた)管理
知識やニーズの変遷
知の循環
教育の効率化、高度化
知のつながり
他のデータベースや教材とのつながり
知識補助や達成度確認
知識の「循環」と「再利用化」
-継承と合成-宣言的知識
手続き的知識
知識の「循環」と「再利用化」
-継承と合成-宣言的知識
手続き的知識
項目A
項目
B
手続き的知識
継承
知識の「循環」と「再利用化」
-継承と合成-宣言的知識
手続き的知識
項目A
項目
B
手続き的知識
項目F
項目
D
項目
E
継承
合成
進化のプロセス
原理
基礎
応用
進化のプロセス
原理
基礎
応用
進化のプロセス
原理
基礎
応用
進化のプロセス
原理
基礎
応用
進化のプロセス
原理 基礎 応用合成の合成の継承の合成の
…
分野縦の軸と横の軸
被参照数の少ない項目の淘汰
知識循環の支援
選択
合成
可視化
創造
新たな 目次項目 の生成 関連の明確化 可視化 必要な 知識 を検索 分析 自律分散的に創造される 知識検索
分析
Wikiによる
個別項目の作成
MIMAサーチによる
構造化と検索
知識循環の支援
選択
合成
可視化
創造
新たな 目次項目 の生成 関連の明確化 可視化 必要な 知識 を検索 分析 自律分散的に創造される 知識検索
分析
Wikiによる
個別項目の作成
MIMAサーチによる
構造化と検索
ドラッグ&ドロップによる
選択と合成
新たな目次項目
の生成
進化する教科書
29講義
約240項目
ナノバイオ工学 リサイクリング工学 熱工学第二 反応工学II 技術者倫理 環境エネルギー政策論 原子力エネルギー工学 地球環境工学 環境健康リスク学 ナノ・マイクロ加工 エネルギー工学 メカノバイオエンジニアリング バイオ界面工学 熱・エネルギー工学 流れ学第一 物性物理学入門 科学技術社会特論 生体イメージング バイオテクノロジーⅠ エネルギー物質化学 環境エネルギー材料科学概論 未来エネルギー開発論 環境エネルギー経済学 宇宙推進燃料工学特論 分離工学Ⅰ 電力システム工学第1 ガスタービンA第一 環境・エネルギー概論 エネルギー工学 熱・エネルギー工学 環境工学概論 環境エネルギー政策論OCW:東大講義とMIT講義との関連
大学を越えた知のつながり
http://ciee.t.u-tokyo.ac.jp/