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バランスのよい4技能の習得をめざして―Dictoglossという言語活動を通して―-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学教育実践総合研究(Bull. Educ. Res. Teach. Develop. Kagawa Univ.),23:87−100,2011

バランスのよい4技能の習得をめざして

―Dictoglossという言語活動を通して―

竹中 龍範・小川 正晃

・山下 さゆり

・佐藤 梨香

** (英語教育講座)(附属坂出中学校)(附属坂出中学校)(高松市立古高松中学校) 760−8522 高松市幸町1−1 香川大学教育学部        *762−0037 坂出市青葉町1−7 香川大学教育学部附属坂出中学校 **761−0102 高松市新田町甲190−1 高松市立古高松中学校    

Towards Well-balanced Acquisition of the Four Skills of

English : Through the Dictogloss Procedure

Tatsunori Takenaka, Masateru Ogawa

, Sayuri Yamashita

and Rika Sato

**

Faculty of Education, Kagawa University, 1-1 Saiwai-cho, Takamatsu 760-8522

Sakaide Junior High School Attached to the Faculty of Education, Kagawa University,

1-7 Aoba-cho, Sakaide 762-0037

**Furutakamatsu Junior High School, 190-1 Ko, Shinden-cho, Takamatsu 761-0102

要 旨 コミュニカティブな英語教授法の枠組みの中で開発された指導法にdictoglossがあ る。これは,音声によって提示されたテキストを聴いたのち,メモを基にグループでそのテ キストの再生を行うという活動であるが,教師・生徒間,並びに生徒同士の相互交流を促し, 文法意識を高めさせる上で効果が期待されるタスク活動とされている。本研究は,これを中 学校において実践した結果を分析し,その成果,可能性を探ることを目的とする。 キーワード dictogloss 協同的学習 英文法学習 タスク活動 リスニング

1.はじめに

 近年,コミュニカティブな英語教授法が志向 される中でさまざまな指導法が開発されている が,その一つにdictoglossが挙げられる。これ は,従来よく行われてきた教師主導の説明型文 法指導(Focus on Formsと呼ばれる)とは異 なり,与えられた場面・文脈のもとにコミュニ ケーション,すなわち意味情報を伝達する活動 を行わせる中で学習者の意識を言語形式に向け させるフォーカス・オン・フォーム (Focus on Form)1)の指導法の一つとして開発されたもの である。  現在,このdictoglossを取り入れた英語教育 がいくつかの学校で行われているが,その活動 を行うためには一定の英語力が求められるため に,多くは高等学校における実践であり―例え ば,倉敷南高校は,文部科学省のSELHi研究指 定を受けてdictoglossを基盤に据えた4技能統 合型の英語授業を研究開発している (岡山県立

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pool their battered texts and strive to reconstruct a version of the text from their shared resources.

 d. Each group of students produces its own reconstructed version, aiming at grammatical accuracy and textual cohesion but not at replicating the original text.

 e. The various versions are analysed and compared and the students refine their own texts in the light of the shared scrutiny and discussion.

(Wajnryb, 1990, pp. 5-6) という手順で行われる。また,そのねらいとす るところは,

 ・to provide an opportunity for learners to use their productive grammar in the task of text creation;

 ・to encourage learners to find out what they do and do not know about English;  ・to upgrade and refine the learners use of

the language through a comprehensive analysis of language options in the correction of the learners approximate texts. (Wajnryb, 1990, pp. 6-7 [modified]) ということである。  このような性格をもつdictoglossは,先に注 記したフォーカス・オン・フォームの条件をほ とんど満たすものであるが,形式的には従来行 われてきたディクテーションに近いものである ために,時に誤ってこれと同一視されることが あるようである。  教師が読み上げるテキストを聴いてそれを再 生する作業という点では一般に行われるディク テーションと共通であるが,dictoglossではテ キストを分節して聞かせることはせず,全体を 普通の速度で通して聞かせるだけである。その ため,メモの内容は断片的情報にならざるを得 倉敷南高等学校(2009)参照)―,中学校にお ける実践は多くないようである。  本稿は,このdictoglossを中学校英語教育の 場で実践した結果を紹介し,その成果を分析し てこれに考察を加えることを目的とする。

2.Dictoglossとは

 Dictoglossとはすでに略述したようにフォー カス・オン・フォームの指導法として開発され たものであるが,聞き取ったテキストをグルー プで再生するタスク活動と,その再現テキスト をクラス全体で検討する誤答分析を通して,言 語形式を明示的に分析させることをねらった指 導法である。  その特徴は,主唱者であるRuth Wajnrybに よると,

  The dictogloss is a teaching procedure that involves the speedy dictation of a short text to a group of language students. The students take notes during the reading of the text and then, working in small groups, proceed to piece together the text as a cooperative endeavor. This is achieved by the pooling of the group s notes and the making of grammatical decisions about the text: specifically about word choice, sentence formation, and cross-sentence connections. Finally, after each group has produced its own version of the text, the whole class reconvenes and the groups versions are analyzed and corrected.

(Wajnryb, 1988, p. 35) というものであり,その指導は,

 a. A short, dense text is read (twice) to the learners at normal speed.

 b. As it is being read, the learners jot down familiar words and phrases.

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ず,それを総合するためには学習者の協同的活 動(グループ単位)により,文法やテキストの 結束関係についての知識を総動員してテキスト を組み立てることが必要となる。その再生テキ ストは逐語的に原文どおりであることは求めら れないが,そうして再生された各グループのテ キストは,クラス全体で比較分析されることに なる。  このように,dictoglossでは表現すべき内容 がディクテーションの形で与えられるために通 常の表現活動で生じうる回避(avoidance)2) 抑制することができるので,dictoglossは,テ キスト再生というタスクを通して文法知識を認 知的に定着させ,それを活性化することをね らった指導法であると言うことができる。さら に,Wajnryb(1990, p. 7)によれば,この方 法を継続的に用いることによって,総合的な聴 解力が伸暢し,ノートをとる技能も伸びるとい う副次的効果も期待される。  ただ,本研究におけるdictogloss活動では, 本来であればグループでのテキスト再生作業や クラスでの比較分析の段階において生徒同士, あるいは生徒対教師のやりとりは英語で行われ るべきところ,教師も生徒も日本人であるこ と,中学生という英語学習段階にあることとい う条件によって,これらの活動が日本語によっ て行われている。したがって,協同的学習の形 はとりながらも,そこにおける the dictogloss method provides language practice in text construction; [and it] has learners commu- nicate for a real purpose in order to perform a group task (Wajnryb, 1988, p. 36)とのねら いは捨象されている。

 なお,このdictoglossを行う際の時間配分 に つ い て Wajnryb は The primary factor in determining the length of time to be spent is how much attention you and the students wish to devote to the analysis and correction stage. と述べ,最後に行われる各グループの 再生テキストの分析と修正の段階にどの程度注 意を向けるかによるとしているが,一応の目安 として次のような配分を示している (Wajnryb,

1990, p. 22)。

Guideline to time allocation: Stage   Activity       Time  

1 Preparation 20 minutes 2 Dictation 5 minutes 3 Reconstruction 30 minutes 4 Analysis,

correc-tion, discussion 30-45 minutes  この時間配分の標準によると,1ユニットに 充てる時間は85分から100分ということになり, わが国の中・高等学校の英語授業では1コマの うちにこれを行うことは不可能である。した がって,全体の時間を圧縮する,あるいは,テ キストのトピックを前以て把握しておくこと, 未習語で文脈からの推測が難しいと思われる語 についてはその発音,意味をおさえておくこ と等の作業に充てるPreparationの段階は前時, あるいは,時間外の家庭学習によって対応する などの工夫が求められよう。  このようにdictoglossのねらい,指導手順, 時間配分などの点をおさえたうえで,香川大学 教育学部附属坂出中学校におけるdictoglossに よる英語指導の実践を取り上げ,その成果を分 析したい。なお,本実践は平成21年度より取り 組んだものであり,平成22年度は,その蓄積の 上に生徒の反応等のデータを得たので,ここに 本研究のまとめとして発表するものである。

3.Dictoglossによる授業実践

研究主題について  現行の中学校学習指導要領には外国語科の目 標について「外国語を通じて,言語や文化に対 する理解を深め,積極的にコミュニケーション を図ろうとする態度の育成を図り,聞くことや 話すことなどの実践的コミュニケーション能力 の基礎を養う。」とある。新学習指導要領では 下線部が「聞くこと,話すこと,読むこと,書 くことなどのコミュニケーション能力の基礎を 養う」と変わり,「読むこと」と「書くこと」

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が明示されている。これと,英語の授業時数が 週3時間から週4時間に増加することにより, 今まで以上に基礎力の見直しが求められている と考える。そこで,本校外国語科では,基礎力 の見直し,特に「書く力」の再育成を重視する ことで「バランスのよい4技能の習得」に焦点 を当てた研究を構想した。  現行の学習指導要領にある「聞くことや話す ことなどの実践的コミュニケーション能力」や それに対する意識は,現行の学習指導要領実施 以前よりもかなり高まったように思われる。今 回の学習指導要領改訂で求められる「書くこと」 と「読むこと」に重点を置くことが,今まで懸 命に取り組み,培われてきた「聞くこと」や「話 すこと」の軽視につながるものではない。今ま で培ってきたものを維持しつつ,さらに「書く こと」や「読むこと」のスキルアップをねらい ながら,バランスのよい4技能の習得をめざし たいと考える。もっとも,「書くこと」につな がる「聞く活動」,「話すこと」につながる「読 む活動」のように,4技能のつながりを大切に した取り組みでなければならない。これは週3 時間から4時間への移行に伴う英語教師の果た すべき使命とも思われる。  また,今回「バランスのよい4技能の習得」 をめざした授業を構築する上で中心に考えたい ことは,英語学習における「学び高め合う力」 である。この「力」を,外国語科独自にどのよ うなものか定義づけ,それをいかにして英語学 習に生かすことができるのか考えていきたい。  そこで,「学び高め合う力」とは何かを概念 規定するにあたり,これを「友との学び」と「自 己の学び」の2つに大別して考えた。  ○「友との学び」   この学び合う「力」は,「友だちと教え合 い,分かち合い,そして高め合う力」と捉え ることができる。「主体的に学び続ける集団 へのアプローチ」という附属坂出中学校全体 研究の視点を教科に置き換えれば,このよう な「力」になると考えた。授業形態としてペ アでの交流やグループでの交流が挙げられる が,いかに必然性のある効果的な交流をさせ るかが重要となってくる。   なお,この「友との学び」は,学校全体研 究の視点,そして研究メインテーマにつなが りをもたせるものであるとともに,外国語科 では,この「友との学び」が「協同的な学び」 の中での気づきの連鎖につながるものと考え る。  ○「自己の学び」   この学び合う「力」は「自分の中で,学ん だ知識を相互に結びつけられる力」と捉える ことができる。今まで獲得してきた知識をう まく結びつけ,今までの学びをさらに深めた り,また,その深い理解から新しい発想を生 み出したりする力と考えることができる。こ の力を引き出すためには,教師からの意図的 発問や効果的な題材選びが求められる。   この「自己の学び」は,教科研究の視点, そして研究サブテーマにつながりをもたせる ものであり,また,外国語科では,「語るこ と」による気づきの更新がこの「自己の学び」 の中に起こると考えている。  この2つの「学び」が有機的に機能するため には,生徒個々が今まで学び,身につけてきた ことを要約し,いかに再現し,再構成していく か,その展開を促すとともに,この個々の生徒 による「『自分』の中で語り・語らせる」個人 内活動の成果を表出する機会を,必然性のある 交流学習 (グループでの話し合い),また各グ ループの発表や説明の場をとおして提供するこ とが求められる。言い換えれば,「友との学び」 を授業の中で効果的に用い,生かすことによっ て,「自己の学び」が向上することにつながり, それがさらに「友との学び」の成果をいっそう 深めるスパイラルな発展につながるということ である。  この点をふまえ,外国語科の研究メインテー マとサブテーマとに,さらに,学校全体の研究 主題である「『学ぶこと』と『生きること』の 統合―主体的に学び続ける集団へのアプローチ ―」に外国語科として大きく迫るものとして, 近年,外国語教育の分野において注目を浴びて

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いる dictogloss という学習方法を実践し,一 定の成果を得たので,ここに報告したい。 研究の仮説と目的  Dictoglossという学習活動は,「バランスの よい4技能の習得」に効果があり,またその学 習過程で必然的に「学び高め合う力」を必要 とし,育成する。換言すれば,その学習活動を 行うことで,生徒が主体的に学ぼうとする必要 性を実感し,集団による学習に取り組むことに なる。そして,その活動を通して「習得につな がる学習方法」とはいかなるものかについての 認識を得,結果として,これが「バランスの よい英語4技能の習得」へとつながっていく。 Dictoglossという学習活動を通して,英語の総 合的な学力が身につく喜びと,友と学び高め合 う喜びを体感した「主体的に学び続ける集団」 が育成される。  本研究では,以上のことを明らかにしたい。 研究の内容  研究を進めるにあたり,以下の内容を柱とし た。  1 Dictoglossについて  2 外国語科カリキュラムの構造  3 Dictoglossを通しての「協同的な学び」  4 Dictoglossを通しての「語ること」 1 Dictoglossについて  現アメリカ大統領オバマ氏が,大統領就任演 説の中でこのように述べた。

 America. In the face of our common dangers, in this winter of our hardship, let us remember these timeless words. With hope and virtue, let us brave once more the icy currents, and endure what storms may come.  これを訳すと,「アメリカよ。共通の危機に 直面し,厳しい試練であるこの冬に,これら不 朽の言葉を忘れないでいよう。希望と美徳を もって,この氷のような冷たい流れ(時代)に, もう一度勇敢に立ち向かおう。そしてどんな嵐 が来ようとも耐えていこうではないか。」とな る。この和訳を,時間をあけて1ヶ月後に英訳 してみる。果たして同じ英文(または,ほぼ同 様の英文)となるか。  これは「復文法」という,昔の人たちが取り 組んだ英語学習法と言われている。この学習法 にはreading「理解・input」とwriting「表現・ output」が求められている。この方法をオバマ 大統領の就任演説の一節を用いて授業構築の 視点で考えると,readingの前に実際のオバマ 大統領のスピーチをlisteningし,またwriting の後で内容をイメージしながら同じように speakingも行う。もしこのような技能の習得と いう視点を重視し,中学生レベルに応じた学習 が行われるとしたら,新学習指導要領が求める 「バランスのよい4技能の習得」が実現できる のではないかと考える。そこで今回,外国語科 が取り組もうとしている学習方法がdictogloss (文章復元練習)である。これは,dictation(聞 き取り)から発展したもので,まとまりのある 文章をlisteningして,それを同意となる英文に 復元するのである。そこにはかなり正確に文意 を捉えるlistening skillと,捉えた内容を文意か ら逸れることなく正確に英文に起こすwriting skill(文法力・語彙力も含まれる)が試される。  Dictation は, to test one s ability to hear and write a foreign language correctly と定 義されており,通例,次のような手順で行われ る。  1) 教師がテキストを普通の速さで一通り (1回ないし2回) 読み聞かせる。この際 に生徒はメモを取ったりしない。  2) 次いで,教師は,テキストを意味のま とまりごとに数語ずつに分けてポーズを入 れながら読み上げ,句読点についての情報 も与える。生徒は,聞き取ったものをポー ズの間に書き写す。  3) 最後に,教師は,テキスト全体を普通 の速さで読み,生徒は書き取った内容を確

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認する。  これに対し,dictoglossとは,聞いたことを そのまま正確に書き記すdictationとは異なり, まとまりのある英文を聞き,文意を捉えイメー ジできたものを,同意となるように,または文 意から逸れることのないように英文に復元する ことである。そこには1つしかない正解を求め るdictationの活動にはない「幅広く自由に,自 分の捉えたイメージを表現 (具現化) する」要 素が含まれる。  その「復元」までの過程で,(listeningに際 して) 多くの情報量を含む英文を,たった2回 という情報把握の機会しか与えられないとし たら,英語を得意とする生徒でもなかなかひ とりでまとめきることはできず,生徒同士が 「支え助け合い,分かち合う」ことが必要とな る。意図的に学習ハードルを設定することで, dictoglossという学習法が,「主体的に学び高め 合う交流学習」を生み,バランスのよい4技能 の習得を目指した総合的な英語力の育成に効果 があるのではないかと考えた。  そこで,その検証のために,一定期間dicto- glossを用いた授業を行った後にアンケートを とり,生徒の感想をまとめた。自由記述欄の回 答の中から主だったものを取り上げ、この学習 法によって身につく「理解」の部分と「表現」 の部分とに分けて列挙する。  ○ Dictoglossという学習法によって身につ く「理解」の部分  ・細かい音まで意識して聞ける。耳だけでは 足りない部分があることがわかる。  ・分かったら,今まで知らなかった音が理解 できる。  ・音と音のつながりが分かるようになる。  ・メモを取るのが上手くなった気がする。  ・英語に耳を慣らすことができる。  ・自分のリスニング力がどれほどのものか分 かって楽しい。  ○ Dictoglossという学習法によって身につ く「表現」の部分  ・自分の文法力が鍛えられる。  ・忘れていた文法を思い出すことができる。  ・文法的なことを,より考えるようになる。  ・リスニング以外の普段の英文の文法に,気 をつけられるようになる。  ・細かいところや文法の見直しができる。  ・聞き取れないところも,文法的に考えてで きるので,文法とかの勉強になる。  ・リスニングやライティングなど,英語のす べての勉強ができる。  ・リスニングと文法の力をすごく使うから, いろいろ考えさせられる。  ・当然すべて聞き取れないが,文法から判断 したりするのが楽しい。  これらの生徒の感想からは,4技能(特に listeningとwriting)の学習に対する認識に大 きな変化があることが読み取れよう。 2 外国語科カリキュラムの構造  外国語科ではカリキュラムの構造として, 「共通Ⅰ」「共通Ⅱ」「シャトル」の各学習を次ペー ジの表のように考えている。 3 Dictoglossを通しての「協同的な学び」  Dictoglossという学習方法と学校全体研究の 柱となる「協同的な学び」(交流学習) とのつ ながりをさらに説明すると次のようなことにな る。  この学習法のキーワードは from Listen- ing to Reproducing (理解から再構築へ)で ある。ただしこの学習法を行い効果を生むため には,単元扱いではなく,3年間を通して計画 的におおよそ週1度のペースで継続し,トータ ルな英語基礎力を培う活動と捉えなければなら ないと考える。この学習法はListeningの段階 でも,Reproducingの段階でも,1人では完全 な答えを導き出すのが困難である。ただし,困 難ではあるが意欲をもって取り組める学習内容 レベルに設定することが肝要である。そこで少 人数(3∼4人)グループによる「支え助け合

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い」と「分かち合い」という視点をもって,よ り良い意見を出し合い,「必然的交流」が生ま れる学習にしていく。  英語の授業ではこれまで,ペア学習による会 話練習やグループ学習によるスキット作りな ど,「交流学習」は当たり前のように行われて きた。しかし,それらの学習は,学習課題の基 礎力を培った上での「展開」部分の活動であっ た。今回のdictoglossという学習法は,お互い の基礎力をぶつけ合う「ベース(基礎)」部分 の活動となる。交流学習が学力の定着に功を奏 し,それが学習意欲の向上につながっている か検証するために,生徒にアンケートをとり, dictoglossについての感想をまとめた。  ○ 必然的な「主体的に学び高め合う交流学 習」を通して  ・みんなと話し合って考えることができるか ら楽しい。  ・友達と話して,答えが出るから楽しい。  ・当然すべて聞き取れないが,友達と意見を 交換したりするのが楽しい。  ・他の人から新しい意見を言われて「はっ」 とするのが楽しい。  ・班員と話し合い,協力しながら勉強できる から楽しい。  ・分からなかったところが,話し合って分か るとうれしい。  ・班の人たちと話し合うことで,一つのリス ニングが聞き取れるので楽しい。  ・話し合いながら苦手な英語の勉強ができ, 分からないところもしっかり理解できるか ら楽しい。  生徒の感想からは,dictoglossを通しての交 流学習は,必然的で実りを感じる活動になって いることが読み取れる。  次に,実りある交流学習にするために生徒一 人ひとりのグループへの貢献度を自己分析さ せ,まとめた。ここにはさまざまな形での貢献 が見られるが,それをさらに貢献の度合いとい う基準から5段階評価とし,それぞれ生徒の自 己評価が与えられている。貢献度の高い順に並 べると次のような結果となった。  ○ 学習意欲の向上につながる交流学習での 「貢献」について  ・単語をポロッと・・・意味から考えたとき の文章的アドバイスを。(4−まあまあ貢 献) 内容と授業形態 学習の位置づけ 共通 Ⅰ  教科書を中心とした一斉授業。英語4技能を バランス良く学習する。  「言語材料の習得」と位置づける。基礎基本をしっかり身につけ,言語の知識理解を深め,「活 用」の段階へのベースとなる学習段階(期間) である。  Dictationの活動は「共通Ⅰ」と捉えている。 共通 Ⅱ  相手とのコミュニケーションを重視したALT とのTTの授業。Listeningやspeakingを中心と した授業内容となるが,このコミュニケーショ ンをより良いものにするためにlistening ability の向上が求められ,その向上のためにdictogloss の活動を行っている。  「言語材料の活用」と位置づける。習得した知 識理解をさらに深化させ,上手く授業の中で, また実生活の中で活用させる (できる) 段階と見 なしている。  Dictoglossの活動は「共通Ⅱ」と捉えている。 「探究」への段階を意識した学習段階 (期間) で ある。 シャトル  フランス語を言語材料として扱う。フランス 語講師を迎えてのTTの授業。新しい学習材料で あるため,習得は当然ながら,それを用いた簡 単なコミュニケーションを通しての活用,そし てブログ作成を通しての世界(フランス)への 発信(探究)。一連の流れをすべて網羅した学習 を行う。  「習得・活用・探究」すべてを含んだ学習段階 (期間)と位置づける。新しく学習するフランス 語とフランス文化。それらの探究には,「発信」 という位置づけもある。

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 ・正しい文法になるようにする。文体を整え る。(4−まあまあ貢献)  ・文章全体の意味をとらえる。(4−まあま あ貢献)  ・細かいところを聞き取る。(4−まあまあ 貢献)  ・全体的な文章の構成を作った。(4−まあ まあ貢献)  ・細かい英文の聞き取り。(4−まあまあ貢 献)  ・だいたいの意味の確認。(4−まあまあ貢 献)  ・細かいところと判断力!(4−まあまあ貢 献)  ・ 耳で聞こえたものをそのまま文にする。 (4−まあまあ貢献)  ・文章をつなぐ。(4−まあまあ貢献)  ・全体的に単語を書きまくって,文を作りや すくした。(3−少しだけ貢献)  ・自分の少ない情報を言ったり,文脈から判 断したりする。(3−少しだけ貢献)  ・みんながやっていたけど,たまに一文だけ 貢献している。(3−少しだけ貢献)  ・ 黒板に書いた。単語をポロポロ言った。 (3−少しだけ貢献)  ・前置詞が言えた。(3−少しだけ貢献)  ・日本語訳などで少し貢献ができ,たまに単 語もポロリと言えた。(3−少しだけ貢献)  ・多く単語を聞き取った。(3−少しだけ貢 献)  ・ みんなすごいから,それを褒めるとか・・・ (3−少しだけ貢献)  ・atやforとかの前置詞を出せた。(3−少し だけ貢献)  ・少しだけ単語を言えた。(2−貢献できず)  どのように自分がグループに貢献できている か考え,また,今後どのように貢献できるか考 え合わせることで,自分のグループへの関わり 方が以前よりも積極的になることがこのアン ケートからつかめた。 4 Dictoglossを通しての「語ること」  上にも述べたように,「自己の学び」の中に 今回の全体研究の大テーマである「語ること」 が含まれると考える。外国語科で定義する「語 ること」というのは,決して声に出して相手に 伝えることだけを意味しない。「自分と語り合 うこと」も「語ること」に含まれると考える。 生徒は今まで多くの知識を得て,理解を高めて きた。その知識・理解を目の前にある課題に照 らし合わせながら,課題克服にどう結びつけら れるか。その過程には「自分との語り合い」が 求められる。(課題と照らし合わせながら自分 と語り合うためには,教師の適切な,そして効 果的な題材選びが求められる。)当然,グルー プ学習のとき,自分の意見や答えを友だちに伝 え,グループとしての答えを導くときも,「語 ること」は必然となる。また,グループの導き 出した答えをクラス全体の前で発表するとき に,導き出した過程を語らせる。そのとき,生 徒一人ひとりが過去の記憶と対話し,共感し, 過去の学びの有用性に気づく。英語学習におけ る「意味化」が図られたと考えることができる 瞬間である。 実践事例 〔実践事例1 実施学年2年〕(共通Ⅰ) 単元名 「Dictationに 挑 戦! し っ か り 聞 き 取 り,英文を復元できるか?」 本単元の目標は,  ・英文の内容レベルや量はどの程度が適切か を見極めること。  ・「必然的交流学習」を生むために,自分ひ とりでは難しく,他の生徒との協力がない と課題解決できない出題レベルを探るこ と。  ・生徒一人ひとりの「貢献感」を感じ取らせ るよう,グループ内での活動の時に,役割 意識を持たせたり,活動後のアンケートで 貢献度チェックをしたりして,交流学習に 意味付け・価値付けをすること。  ・Dictoglossの活動につなげていくために, どのようなスキル養成が今後求められる

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か,生徒にしっかりと感じ取らせ,体感さ せること。 以上の4つであった。  「貢献感」を感じとらせることは,交流活動 への意欲的な態度につながり,「友への語り」 が増えることとなる。また,「友からの語り」 ももらい,今までに培った自らの英語スキルと の語らい,「自分への語り」も増えることとな る。これら「語り」を意識した「必然的交流」 学習を行い続けることが,英語学習における 「学びの意味の実感」となり,最終的に「学び の意味化」へとつながっていくと考える。 〔実践事例2 実施学年3年〕(共通Ⅱ) 単元名 「Dictogloss (Unit 6, 20th Century

Greats)」 本単元の目標は,  ・英文を聞いて内容を捉える中で,メモをと ることがどんなに重要か,また自分にあっ たより良い方法はないか,その視点に気づ かせること。  ・グループの友達と協力して英文に関する情 報を得たり,得られた英文の情報を分かち 合ったりして,聞いた英文と同じ内容の英 文を再構築させること。 以上の2つであった。  Dictoglossという活動は,情報としてまとま りのある英文を一斉に聞かせた後,文章復元ま でを4人グループで行わせる。その過程では, ひとりではまとめきれない情報量をもとに文章 を復元しなければならないため,交流学習の必 然性が生まれる。そこで,英文を聞いて復元す るために重要なメモに着目させ,そのメモをも とに文章復元する過程で「語り,語らせる」場 を設定する。そのとき,自分の能力に応じた, より良い方法に気づき,実際に試みることで, 学びの意味を実感できると考える。 〔実践事例3〕(シャトル学習) 単元名 「我々の身近な日本文化―世界へ発信―」 本単元の目標は,  ・英語を通じてフランス語を体感することが できる。  ・フランスの文化を様々な角度から体感する ことができる。  ・フランス語に英語との共通性を見いだすこ とができ,英語という教科へのアプローチ を他言語から図る。  ・フランスについての学習を通して,他の国 にも興味・関心を抱くことができる。  ・私たちの身近な特徴ある日本文化を班ごと に探し,ブログを通してフランス(全世界) に発信する。 以上の5つであった。  言語というのは根底でつながっているという ことをフランス語の学習を通して学べた。また フランス語の学習においては英語学習にはない 難しさがあるということも体感できた。現在, 「世界共通語」として英語が一番よく用いられ ているが,その理由に多少迫れたようにも思 う。フランス語の学習が,英語学習への意欲付 けにも大きく役立つことを実証できたように思 う。 成果と課題  平成21年度3年生で行ったdictoglossの感想 をまとめてみた。生徒の自己分析からは本研究 に示唆するところが多く読み取れるが,本研究 の成果を読み解く上で、特に下線(引用者)を 施したところに注目したい。 ①一人では絶対にできなかった。班のみんなで 協力したからこそ,たった2回でこれほどま で正確に聞き取ることができたのだと思う。 ②英文を聞いて一度日本語でメモをして,また 英文に直すのはすごくためになった。細かい ところは文法力で補っていくしかない。 ③自分が聞き取れなかった部分があっても,グ ループ活動だったから他の人の意見をヒント として考えると,だいたい分かってきた。こ の授業は書く力も身につくし,聞く力も身に つく。 ④メモしている間に次の文に行ってしまうの で,とにかくそれが難しかった。

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⑤結構楽しかった気がする。文法などもすべて 含めて勉強できるという点がとても魅力だ し,みんなで話し合えるのがとても良いと 思った。 ⑥今までリスニングテストを何度もしてきたけ れど,こうしてみると思っていたよりアバウ トに聞き取っていたんだなと思った。細かい 部分まで聞き取ることは難しいけれど,大切 だと思った。 ⑦楽しみながら実力をつけることができたと思 う。班で協力しながら行うことで,自分の分 からなかった部分を何とか知ることができた り,文法を教え合ったりすることができるの で,力が付く。 ⑧共同作業力のようなものが養われる。友だち の聞き取ったところと比較し,自分の苦手な ところが分かる。英語長期記憶力?みたいな のが養われる。 ⑨一人の力だったら,たぶん,ほぼ全滅。だか らグループでやる意義があると思う。 ⑩自分たちのためになる学習法だと思う。聞き 取る力も必要だし,聞き取ったものをきっち り英語に直す力も必要だから,難しいことだ けど必ず力になると思う。細かいところまで 意識して聞くようになり,また細かい文法も 意識するから大変良い。 ⑪細かいところまで聞き取れてないな∼,と思 いました。一人じゃ,なかなか聞き取れない ところや文章にしにくいところを,グループ の人が助けてくれたから,やりやすかったで す。テストでは必要なところだけは聞けてい たけど,本当に細かいところはダメでした。 またやりたいです! ⑫聞く事と書く事を同時にするので力になると 思う。一人じゃ,これだけの長い英文は無理 だろうけど,グループでできるので心強い。 ちゃんと文が作れたときに,リスニングがと ても理解できる! ⑬聞こえたままに書くと間違えてしまうことが ある。それを文法的に考えて直すことができ た。これからリスニングの聞き方が変わると 思う。 ⑭一度に聞きながら書くために,記憶力とかが 身につきそう。ただ,意味が合っているのに ×になるのは悲しい。ものすごく難しい! ⑮リスニング力がついたと思う。人間の耳っ て,けっこう適当ですね。 ⑯聞いて分からないところでも,文法的に攻め るのが楽しかった。大まかに分かってきて, 次に深いところまで考えるのが楽しかった。 ⑰一回聞いて,組み立てて,もう一度聞いたと き,リスニングが聞きやすくなって良いと 思った。 ⑱リスニングの練習にもなったし,ポイントを 押さえてそれを文章にすることで,[語と語 の]間にある聞き取れなかった短い単語を予 想したり,文法を見直したりする力がついた と思う。自分たちで一から創っていく感じが して楽しかった。 ⑲楽しいし,勉強できるし,良いと思う。毎回 やりたいと思う。リスニングが苦手なので, これで不十分なところを友だちと養えていけ て,すっごくいい! ⑳theやourがゴチャゴチャになってすべて完璧 な文を書くのが大変でした。でもグループの みんなが「it だったよ」とか順番を教えてく れて助かったです。おろそかだったリスニン グを見直さないといけないなと感じました。  概ね,生徒の感想は良いものであった。この 活動のもっとも良い点と感じるところは,普段 の授業の中でも,無理することなく,効果的に 取り入れることができることである。どのレベ ルで学習を進めていけばよいか,今後もっと調 べる必要を感じる。レベルの高い・低いは,ス ピードを速くしたり,英文の内容を難しくした りするのではなく,英文中の文と文,語と語の 「ポーズ(間)」をどれくらいあけるかで設定を 図りたいと考えている。  また,協同的学習における「貢献感」をテー マにグループ活動への主体的な取り組みを促す 視点をもって,今後さらに研究を進めていこう と考えている。そのため,その貢献度を生徒に 分かるように基準を設けて,目標設定できるよ

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うにするためには,「貢献」というものがどの ようなものか,もっと具体的な概念規定をする 必要があると思われる。  外国語科としては,このdictoglossという活 動を,生徒の学習意欲と学力を高め,さらに進 んだ段階の英語学習にも効果的な方法として授 業の中心に位置づけ,研究大テーマである「『学 ぶこと』と『生きること』の統合」に迫る足が かりにしたいと考えている。

4.分析と考察

 本実践によるdictoglossを用いた指導の成果 を分析するうえで,その観点として設定しうる 項目は次のようなものである。前節の実践報告 中に記された内容と重複する点もあるが,それ ぞれについてまとめておく。  1 意識的な文法学習  2 協同的学習  3 リスニング能力の伸暢  4 ノート・テイキングの技能向上 1 意識的な文法学習  Wajnryb(1990)の書名がGrammar Dictation となっているのはdictoglossというこの指導法 の名称が教師の間で未だなじみがなく,幾分 大仰に響くからとの理由によるようであるが (Wajnryb, 1990, p. 5),このgrammar dictation

との名称が示すとおり,これは文法を教えるた めにディクテーションの技術を用いたものであ る。したがって,まずはこれを文法指導・文法 学習の観点から分析することが必要である。  英語が音声によって伝えられるとき,そのス ピーチ・リズムは音楽のリズムのように強弱 の波に乗り,その強の部分にはメッセージの 内容を担う内容語 (content word:名詞,形容 詞,動詞など) が配されて文強勢 (sentence/ sentential stress) を受け,さらにその文強勢 が一定の時間間隔をおいて現れるという特徴 がある。したがって,そのリズムの谷間に入 る機能語 (function words:代名詞,冠詞等の 限定詞,助動詞,前置詞,接続詞など) は強勢 を受けず,明瞭には聞き取れない。そのため に,学習者のとるノートは内容語が中心になり (Wajnryb, 1989, p. 16),機能語の部分につい ては自分の文法力によって補うことが必要とな る。  この観点から生徒の感想を分析すると,「細 かいところは文法力で補っていくしかない。」 や,「細かい文法も意識するから大変良い。」を 始めとして, ・細かいところまで聞き取れてないな∼,と思 いました。 ・聞こえたままに書くと間違えてしまうことが ある。それを文法的に考えて直すことができ た。 ・聞いて分からないところでも,文法的に攻め るのが楽しかった。 ・theやourがゴチャゴチャになってすべて完璧 な文を書くのが大変でした。でもグループの みんなが「it だったよ」とか順番[語順]を 教えてくれて助かったです。 などという点において,上に記した英語のス ピーチ・リズムの特徴を明示的に教授しなくて も生徒が経験的に,帰納的に,且つメタ認知的 にそれを理解していることが読み取れる。あわ せて,教科書や参考書から学ぶ英文法のルール 学習とは異なり,音声によるインプットを通し て帰納的に文法の仕組みを読み解くということ ができている点でもその成果は大きい。 2 協同的学習  上位の生徒であってもこの方法によって当初 提示されたテキストを正確に再生することは難 しい。そこでグループ活動による協同的学習の 形が設定されるが,この形態による学習の促進 については多くの生徒が感想を寄せている。 ・一人では絶対にできなかった。班のみんなで 協力したからこそ,たった2回でこれほどま で正確に聞き取ることができたのだと思う。 ・自分が聞き取れなかった部分があっても,グ ループ活動だったから他の人の意見をヒント として考えると,だいたい分かってきた。 ・班で協力しながら行うことで,自分の分から

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なかった部分を何とか知ることができたり, 文法を教え合ったりすることができるので, 力が付く。 ・共同作業力のようなものが養われる。友だち の聞き取ったところと比較し,自分の苦手な ところが分かる。 ・一人の力だったら,たぶん,ほぼ全滅。だか らグループでやる意義があると思う。 ・一人じゃ,なかなか聞き取れないところや文 章にしにくいところを,グループの人が助け てくれたから,やりやすかったです。 ・一人じゃ,これだけの長い英文は無理だろう けど,グループでできるので心強い。 ・リスニングが苦手なので,これで不十分なと ころを友だちと養えていけて,すっごくい い! ・でもグループのみんなが「itだったよ」とか 順番を教えてくれて助かったです。 といった記述からは,協同的学習・グループ活 動による学習の促進が読み取れる。  このように,グループ活動によって学びの協 同化を図り,積極的になることが学習意欲の 向上につながることは言を俟たない。Wajnryb (1990:15)が

  Another factor worthy of consideration is the relationship of the group process to individual motivation. When learners offer their contribution to the group in the context of the reconstruction stage, they are making a commitment ― to the group,

to the task, and to the learning process (italics

mine).

  Inevitably, they will be affected by how the group responds to their efforts and energies, and by how the teacher (in the correction stage) responds to their group s efforts. A positive learning climate in the group is something that the teacher can subtly engineer, essentially by pre-emptive action: by carefully selecting the groups; by selecting the group s scribe ; by closely,

if unobtrusively, monitoring the groups interaction. The final stage of error analysis and correction again is something that should be conducted to maximize learning and encourage risk-taking. All this in effect means that the dictogloss procedure can capitalize on learners willingness to learn and allow the teacher to maintain learner motivation at a high and effective level. と述べているが,このアンケート結果もこれを 支持している。 3 リスニング能力の伸暢  Dictoglossが従来のディクテーションとは異 なって,リスニング能力の向上を主眼とするも のではないものの,そこに副次的にリスニング 能力の伸暢が期待されるとの点については, ・今までリスニングテストを何度もしてきたけ れど,こうしてみると思っていたよりアバウ トに聞き取っていたんだなと思った。細かい 部分まで聞き取ることは難しいけれど,大切 だと思った。 ・聞き取る力も必要だし,聞き取ったものを きっちり英語に直す力も必要だから,難しい ことだけど必ず力になると思う。細かいとこ ろまで意識して聞くようになり,また細かい 文法も意識するから大変良い。 ・細かいところまで聞き取れてないな∼,と思 いました。一人じゃ,なかなか聞き取れない ところや文章にしにくいところを,グループ の人が助けてくれたから,やりやすかったで す。 ・ちゃんと文が作れたときに,リスニングがと ても理解できる! ・リスニング力がついたと思う。人間の耳っ て,けっこう適当ですね。 ・theやourがゴチャゴチャになってすべて完璧 な文を書くのが大変でした。でもグループの みんなが「it だったよ」とか順番[語順]を 教えてくれて助かったです。おろそかだった リスニングを見直さないといけないなと感じ

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ました。 という感想が寄せられており,リスニングにお いては耳で音声を捕らえること(ボトムアップ 処理)と,情報処理を進めながら,文章内容に ついての知識,文法の知識を動員して欠落部 分を補い,さらに次に来る情報を予測するこ と(トップダウン処理)とが相互に作用して活 動が展開しているということの発見ができてい る。副次的効果とは言え,生徒の達成感に大き な実感を読み取ることができる。 4 ノート・テイキングの技能向上  この点についての感想は多くないが, ・英文を聞いて一度日本語でメモをして,また 英文に直すのはすごくためになった。 ・一度に聞きながら書くために,記憶力とかが 身につきそう。ただ,意味が合っているのに ×になるのは悲しい。 というような点は,意味を優先する,すなわ ち,メッセージの内容をまず理解してから英文 の再生に取り組むということで,伝えるべき内 容がすでに明確になっていれば,その分だけそ れをいかに伝えるかに集中することができるこ とになり,言語形式に対する意識がそれだけ鮮 明になることにつながる。それによって意識的 な文法学習が促進されることになって,本指導 法のねらいとするところとも合致するというこ とができよう。  また,メモを日本語で取るという活動も bilingualな状況下でのノート・テイキングのひ とつの方法として可能であろう。留学生の中に 授業中のノートを母語でとる学生がいるが,い ずれも意味情報を的確に処理していることを示 すものである。  以上,4つの観点から本実践の成果をまと めてみたが,時間配分のあり方などにおいて Wajnryb (1990) に示されたものとは異なるも のの,dictoglossにおいて期待される成果が中 学校段階においても得られることが示されたも のと考える。

5.おわりに

 本稿の「はじめに」に記したように,dicto- glossを行うためには一定の英語力が前提と なることはその活動内容から明らかであり, Wajnryb (1990, p. 21) が With regard to the age of the target learner, dictogloss is suitable for young adults upwards (that is, 15+) but is certainly not appropriate for younger children learning a second or foreign language. と述べ るとおりである。そのため,中学校においてこ れを実践するについてはどの学年から始めるの が適当かという問題が検討されねばならない。 あまりに早期の導入はまったく成果をもたらさ ないことも考えられる。  あわせて,このdictogloss活動に用いる教 材 が 備 え る べ き 条 件 と し てWajnryb (1989, 17-18) が挙げている Text Cohesion, Textual Cohesion, Conceptual Load or Propositional Weight, Lexical Load, Structural Focus, Ex- tension and Challenge との観点から,中学校 という学習レベルに適した教材によって行われ ているかどうかの再検討も求められる。  テキスト再生活動,誤答分析活動が英語で行 われることがインタラクションの促進につなが るという点を外してしまうと,タスク活動のね らいに副わない活動となることも考慮しておく べき問題である。  さらには,副次的効果とされるリスニング能 力の伸暢についても,このdictoglossを用いる ことによってそれがどの程度有効に働いている のかを別のリスニング・テストによって示すこ とが求められる。  いずれも今後の課題としつつ,dictoglossに 期待される教授効果をさらに追求していきた い。 付記  本研究の一部は,平成22年度香川大学教育学 部「学部教員と附属学校教員による共同研究プ ロジェクト」の研究補助金を得て行われたもの であり,本稿は,第11回学部・附属学校園教員

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合同研究集会(平成23年2月22日(火))にお ける発表をまとめたものである。  なお,本稿1,2,4,5節は竹中がまとめ, 3節は小川・山下・佐藤による実践を踏まえて 小川がまとめた。 注 1)フォーカス・オン・フォームは,言語形式と意 味の統合を促す指導法で,次の条件のいずれか, または,いくつかを含む。  (a)言語形式より先に意味に関わることを促すタ スクを設定すること  (b)特定の言語形式の使用が必須である,または, 使用すると自然に遂行できるタスクを用いる こと  (c)指導が邪魔にならないようにすること  (d)心的プロセス(「気づき」など)に配慮する こと  (e)学習者の必要性を分析した上で,目標とする 言語項目を選定すること  (f)中間言語の制約に配慮すること (白畑他,2010,p. 124に基づく) 2)第二言語/外国語学習者の言語使用における学 習方略(learning strategy)の1つ。自信を持っ て使用できない発音,語彙,構文などの使用を避 けることを言う。 (白畑他,2009,p. 30) 参 考 文 献 岡山県立倉敷南高等学校(2009)『岡山県立倉敷南高 等学校 スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ ハイスクール研究開発実施報告書 ∼Dictogloss による4技能を統合した指導方法∼ 研究成果 の共有と普及のために(資料編)』(岡山県立倉 敷南高等学校) 白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則(2009) 『英 語教育用語辞典』改訂版(大修館書店) 白畑知彦・若林茂則・村野井仁(2010)『詳説 第二 言語習得研究−理論から研究法まで−』(研究社) Wajnryb, R. (1988) The Dictogloss Method of Language Teaching: A Text-based, Communi- cative Approach to Grammar. English Teaching

Forum, Vol. 26, No. 3, pp. 35-38.

      (1989) Dictogloss: A Text-Based Approach to Teaching and Learning Grammar. English Teaching Forum, Vol. 27, No. 4, pp. 16-19.       (1990) Grammar Dictation. (Oxford

参照

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