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業績尺度の利用に見られる現状--日米経営の比較(2・完)---香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

芥 川 大 ; : : 経 済 μ命i設 第61{幸治1IJ 1992"12 )j:'5-88

業績尺度の利用に見られる現状

一一日米経営の比較

(2

・完〉一一

田 中 嘉 穂

1 はじめに一問題提起 2 アメリカにおける業績尺度の利用 (1) 調査の趣旨と概要 (2) 一般的な業績尺度 (3) 調査結果の集計 (4) 業績尺度の重要性に見られる特徴 (5) 業績尺度の種類および報告頻度に見られる特徴 (6) 管理階層別の利用に見られる特徴 (7) アメリカの業績尺度の利用に見られる特徴(以上前号) 3 わが国における業績尺度の利用(以下本号) (1) 調査の趣旨と概要 (2) 代表的な業績尺度 (3) 調査結果の集計 (4) 業績尺度の重要性に見られる特徴 (5) 各管理階層での業績尺度に見られる特徴 (6) 日本の業績尺度の利用に見られる特徴 4 むすびーわが国の財務尺度の利用 3 わが国における業績尺度の利用 本節では,アメリカの実態と較べて,わが国の会社の実態がどのような特徴 にある

?

r

うかがうために,調査報告書『業績評価会計の国際比較に関する実 証的研究』で報告された調査データを詳細に検討することとしたい。 (25) 兼子春三,岩崎功,前掲答。

(2)

-56- 香川大学経済論議 748 (1) 調査の趣旨と概要

この報告書において, ["本調査の目的は, ぃ業績評価のための測定指標の日 本企業の動向を観察するとともに,アメリカ合衆国のNAAの調査報告書James B Edwards,“The Use of Performance Measures" NAA 1986にある調査結果

と比較することで日米の類似点及び相違点を明らかにし,日本的特徴を浮き彫 りにすることである。したがって,本調査もNAAが行った調査方法にできるだ け忠実にしたがっている。」とあるように,エドワース?とよる調査結果との比 較を考慮、しながらわが国の実態が調査されている。しかし,双方の調査方法に は各所に徴妙なずれがうかがえるから,以下において,わが国の調査経過の紹 介を兼ねてそれも確認しておきたい。 調査対象としたサンプルの概要と回答の回収状況は図表

6

のようである。お そらくわが国の上場会社を中心として,それと同じ資本系列にあったりなかっ たりする若干の準上場会社を含む母集団を念頭においてその傾向をうかがおう としたものと思われる。エドワースの調査より集計会社数が多くなっている。 なお,

7

4

社の業種分類と会社規模は図表

7

のようである。 調査の実施時期の記述は見られないが,報告書の公表時期から推して1988年 頃であろう。 調査は,アメリカの場合と違って,いずれの会社にも同じ設問でなされたも のと思われ,そこでの調査事項は,ほぼェドワーズの調査に照応してつぎのよ うである。

A

代表的な業績尺度のうち各社が利用する尺度について,つぎの属性が 図表6 サンフ。ルと回収状況 会社概要 サンフ。ル社数附 集計会社数陶 回収率 上場会社 150 ( 75) 60 ( 81) 400% 本社が長野県にある資本金 50 ( 25) 14 ( 19) 280% l億円以上の会社 言 十 200 (100) 74 (100) 370% L一一一一 (26) 兼子春三,岩崎功,前掲香, 12ベージ。

(3)

749 業績尺度の利用に見られる現状 -57ー 図表7 集 計 会 社 の 業 種 と 規 模 業種 集計会社数附 資 本 金 集計会社数 水産 1 ( 1) 500億円以上 6 ( 8) 建設 5 ( 7) 100"'500億円未満 21 ( 28) 製 造 57 ( 77) 50"'100

"

12 ( 16) 商 業 5 ( 7) 5"'50

"

21 ( 28) 銀行 1 ( 1) '" 5

"

10 ( 14) その他 5 ( 7) 不明 4 ( 5) 計 74 (100) 言十 74 (100) 尋ねられる。 ① 報告頻度(その選択肢は,必要時,

1

日毎

1

週毎,

1

月毎,四 半期毎,半年毎,

1

年毎〉 ② 報告階層(その選択肢は,親会社,取締役会,事業部門,職能部 門,地域部門,工場,部門,センター〉 ③ 相対的な重要度(重要度のランク・スケールは

1'

"

'

-

'

1

0

であり,

1

1

J

は最低の重要度,

1

1

0

J

は最高の重要度を示す〕

B

代表的な業績尺度のうち,過去に利用していたが現在は利用していな いものおよび中止した理由。 C 代表的な業績尺度のうち,現在は利用していないが将来利用すること を考慮中のもの。 D 業績尺度のリストにない尺度を利用している場合,その指標名,算 式,報告頻度,報告階層,重要度。

E

現在利用している業績尺度のうち重要度の高い尺度を

1

0

個あげて,そ の指標名,報告頻度,報告階層,重要度。 F 業績尺度のリストにない尺度で,過去に利用していたが現在利用して いないものがあれば,その指標名,中止した理由。 G 業績尺度のリストにない尺度で,現在利用していないが将来利用する ことを考慮中のものがあれば,その指標名,算式など。 やはり,わが国での代表的な業績尺度の利用状況をうかがうために,また

(4)

-58- 香川大学経済論叢 750

B"-'G

の設問へはそれほど回答が多くないことを考慮に入れて,統計的な概要 が知れる

A

の調査結果を検討することにしたい。

(

2

)

代表的な業績尺度 調査票に掲載される

1

4

4

個の業績尺度のリストは,

iNAA

調査報告書, (に解 説:拙稿注〉してあるもの,及び

NAA

のアンケートの測定指標として記載しで あるものを原則として選定し

ζ

むとされるが,正確にいうと,付表1(前号掲 載〕にある各尺度の番号

1"

-

'

1

0

2

(エドワーメの調査尺度〉から

5

2

84

9

5

9

6

1

0

,1

1

0

2

を除いて,新たに

1

0

3

"

-

'1

5

0

を加えた合計

1

4

4

個が調査対象とされて いる。 ちなみに,種類別の尺度数をエドワースの調査リストと比較しておくと,つ ぎのようである。兼子,岩崎は,エドワーメが彼の報告書で一般的な尺度であ るとして解説しているにもかかわらず,彼が調査しなかった尺度を加えて調査 を実施したといえよう。 [エドワーズの調査] [兼子,岩崎の調査] 流動性 回転率・回転期間 収益性 安全性 市場活動 調達活動 人的資源 物価変動 将来性 製造活動 言 十 2個 6

1

5

5

1

0

1

2

5

2

1

0

2

個 (27) 兼子春三,岩崎功,前掲設, 13ベージ。

3

1

0

1

9

1

0

1

8

5

5

4

1

5

5

5

1

4

4

個 (28) ェドワーズの尺度リストから 6伺を調査対象から除いて調査されている趣旨はとくに説明が なく,不明である。

(5)

751 業績尺度の利用に見られる現状 にny J V (白調査結果の集計 調査結果は,つぎのような各種の集計表にまとめられ,原則として,エド ワーズの方式にならってわが国の単純集計と米国のそれとが丁寧に対比されて いる。 ① わが国の

1

4

4

個の業績ー尺度の採用率とその順位およびそれらの日米対

② 各業績尺度の重要度の平均点数とその順位およびそれらの日米対比 ③ 各業績尺度の採用率順位と重要度の平均点数順位との比較,およびそ れらの日米対比 ④ 各業績尺度の採用率と重要度を勘案した総点数の順位 (2種の方式に よる〉およびその日米対比 ⑤ 各業績尺度の報告頻度およびその日米対比 ⑥ 各業績尺度が報告されるもっとも代表的な管理階層およびその日米対

⑦ わが国の尺度リスト以外で利用されている尺度の指標名,報告階層, 報告頻度,重要度および米国のリスト以外で利用されている尺度の指標 名,重要度 ⑧ 業種別にまとめた,もっとも重要な尺度

1

0

個の指標名,報告頻度,重 要度の日米対比 ⑨ これまで利用したことがあるが,現在は採用を中止した尺度とその中 止理由の日米対比 ⑩ 米国で新たに導入を計画している尺度名 ⑪ これから必要になると思われる尺度名の日米比較 ⑫ わが国の業績報告書の書式サンフ。ノレ 日米対比した集計値にもとづいて,

7

ページ弱にわたる分析結果がまとめら れているが,とくに業績尺度の利用に関する統計からうかがえる特徴の分析は 必ずしも詳細でなく,一部の集計に関する言及にとどまっているといえよう。 この種の調査としては,かなり丁寧な調査がなされているにもかかわらず,尺

(6)

-60ー 香川大学経済論議 752 度の利用状況の全体を見ないのはし、かにも残念に思われる。今後のため,現時 点で指摘しうる事実の確認をまとめておくことが好ましいであろう。

(

3

)

-1

管理階層および尺度の重要性について エドワーズの調査において,各尺度が報告される管理階層の共通理解の中身 が必ずしも明らかでないと述べたが,兼子,岩崎ではこの状態をいくらか緩和 するため,調査票で各階層がつぎのように定義されている。 取 締 役

I

常務会などを含む広い意味です。」 事業部門

I

製品・商品別の事業部制をいし、ます。」 職能部門購買部・販売部などの職能部門をいいます。」 地域部門

I

本支庖・地域別事業部制をし、います。」 工 場

I

工場単位の業績評価として使用する場合をいし、ます。」 部 門し、わゆる原価計算における部門別計算単位(コストセンター を含む)をし、b、ます。」 センター

I

フ。ロフィットセンターや投資センターをし、し、ます。」 エドワースにおいては各階層の経営職能的な違いがまったく説明されていな いため,兼子,岩崎のこの説明との対比も暖昧にならざるをえないが,集計値 からある解釈を導くために誤解を恐れず両者の関係をひとまず図表1(前号掲 載〉のようなイメージで受け止めておくことにしたい。 また,わが国の調査では,上述のように,各尺度の有用性に関するランクづ けがェドワーズの場合と若干違っているが,比較の障害となるほどではないで あろう。 さらに,兼子,岩崎では,各尺度の有用性と採用率の両方を勘案する総合的 な重要性は,

I

採用率×有用性の平均点」によっているが,それは事実上エド ワースの採用した

3

つの方式のうち第三の方式(前号

2(

3

)

-2

の③〉と同じで あり,比較のうえでとくに障害とはならない。ただ,われわれは,エドワーズ の調査尺度を総合的な重要性のIJ聞によって

A

B

C

3

つのグ、ノレープに分け (29) 各報告階層の説明は,兼子春三,岩崎功,前掲脅, 90ベージからの引用。

(7)

753 業績尺度の利用に見られる現状 -61-たが,兼子,岩崎では調査常となる尺度数が相違するため若干の工夫をして 同様のグループ分けを試みた;その結果,実際に採用されている尺度

1

3

8

個は, つぎのようにグルーフ。化されることとなった。

A

グ、ループ:重要性の点数順位で

1"

-

'

4

3

位(点数で

6

2

4

9

"

-

'1

8

0

9

)

4

3

B

グ〉レ}プ:重要性の点数順位で

4

4

"

-

'

9

6

位(点数で

1

7

9

9

"

-

'

4

7

6

)

5

4

個 Cグループ:重要性の点数順位で

9

8

"

-

'

1

3

7

位(点数で

4

7

5

"

-

'1

4

)

4

1

(

3

)

-2

調査結果のまとめ こうしてわが国の会社を調査した結果を図表2と同じ形式でまとめると,図 表

8

のようである。以下で,この表からどのような特徴がうかがえるかを検討 することにしたい。 (4) 業績尺度の重要性に見られる特徴 はじめに全体を概観すると,ぜんぶで

1

4

4

個の代表的尺度について調査をし たところ,いずれの会社にも採用されていない尺度はわずか6個(各尺度の採 択率は

9

5

.

.

8

%=

1

3

8

/

1

4

4

個〉であり,いっそう多様な尺度が利用されている様 子である。 6個の中には安全性,物価変動の尺度が含まれている。また,各担 で利用される尺度数は,

1

0

"

-

'

5

0

個未満を利用する会社が全体の

7

8

.

.

4

%(=58/

7

4

社〉であり,全体的には「 ー企業当り平均採択個数は

3

3

個であっ芯」総じ ていえば,各社の一般的な傾向は,よく知られた尺度のなかから重視すべき尺 度を選択的に選び,各社の事情に応じていっそうバラエティに富んだ尺度群を 個性的,重点的に利用しているといえよう。 このような多様な利用の様相を,各社が重視している尺度の面から見ると, 典型的にはどのような特徴がうかがえるであろうか。重要性が高いとされる

A

(30) ここでの総合点数の計算は.:r:.ドワーズの重要性の総合点数の計算式「採用率x(有用性の平 均点

x

10)J にならっている。 三つのグ)レープへの分け方は,両調査による重要性の比較レベルを揃えるために,わが国の 会社十で、笑際に採用されている尺度138{障を総合点数の多い!僚に並べ,そのなかでエドワーズの調 査でも採用されている91個の尺度をチzックし,前の節2(3)ー2で行ったように各グ〉レープの 分かれ目になる上位から30番目, 66位番目の尺度を確認する。確認した尺度が138個全体のなか で・第何位に相当するかによってグループ分けした結果が,本文に掲載したものである。 (31) 兼子春三,岩崎功,前掲書, 16ベージ。

(8)

-62- 香川大学経済論議 754 図表8 日本の報告階層別の尺度 報 告 階 層 種 類 ABC 報 告 尺 度 報告頻度 重(採。有) 親会社(基礎的尺度:5個,製造活動の尺度なし〕 収益性 C 17)総資本残余純利益率 月次 132 (123“135) C 15)残余当期純利益 月次 135 (131・135) 安全性 B 108)一株当りキャッシコ・フロー 半年次 65 ( 65・69) 市場活動 C 119)販売資産効率 月次 137 (131・138) 将来性 C 145)固定資産支出自由裁量支出割合 月次 136 (123" 138) 取締役(基礎的尺度:54個,製造活動の尺度:5個〕 流動性 A 1)流動比率 半年次 11 ( 5" 112) A 2)酸性試験比率 半 年 次 21 ( 15・109) C 103)当座資金滞留期間 月次 98 ( 86 " 122) 回転率・ 回転期間 A 8)総資本回転率 半年次 10 ( 7, 69) A 3)棚卸資産回転率 半年次 19 ( 19“56) A 5)売上債権回転率 半年次 20 ( 19“60) A 7)悶定資産問転率 半年次 30 ( 25' 104) A 112)自己資本回転率 半年次 37 ( 32・100) A 6)売上僚機滞留日数 半年,月 12 ( 11' 69) 次 A 111)売上能力利用度 月次 13 ( 18, 9) A 4)棚卸資産在庫日数 月次 17 ( 17・49) B 110)営業循環期間 月次 76 ( 71 " 104) 収益性 A 16)総資本利益率 半 年 次 9( 9' 27) A 19)普通株一株当り当期純利益 半年次 24 ( 26・18) A 116)普通株配当率〔配当性向〕 半年次 31 ( 33" 25) B 115)株価収益倍率 (PER) 半年次 55 ( 50・83) B 21)株価投資利回り 半年次 91 ( 91・74) C 18)普通株持分利益率 半年次 119 (123" 2) ーー・』値ーー.ーー---司司----・・・・・・ A 13)売上総利益率 月次 2( 3" 14) A 14)営業利益率 月次 4 ( 5・ 9) A 28)全部原価計算営業利益 月次 7 ( 10, 7) A 33)セグメント別差益 月次 28 ( 30・20) B 113)総資本利益率分解図表 年,月次 93 ( 91・79) 必要時 C 114)利子支払古nJ総資本純利益率 年,半年 122C117" 116) 月次

(9)

755 業 績 尺 度 の 利 用 に 見 ら れ る 現 状 fnv J。 報告階!回 種 類 ABC 報 告 尺 度 報告頻度 重(採・有〉 安全性 B 105)負債倍率 e 半半H年年K次次 lll7n71 ((( 62 113 21140S29〉) 〉 A 11)自己資本比率 A 10)負債比率 A 106)支払利子率 半年次 42 ( 39“112) B 104)負債構成比率 年 半 年 次48 ( 42" 116) B 9)固定負依適合倍率 半年次 51 ( 44・109) ...・畠・----・畠ーーーーーーー C 12)支払利子控除前純利益対支払利子倍本 四半期次 102 ( 86 ' 126) 市場活動 A 94)損益分岐点売上高 半年次 18 ( 19' 42) B 125)目標達成点売上高 半年次 88 ( 80“116) ー---ーーーー自由・・ー・ A 117)売上増加率 月次 2 ( 3, 14) A 38)売上高実績率 月次 5 ( 8, 9) A 126)販売費率 月次 22 ( 22刷 49) A 37)販売数量実績率 月次 35 ( 33刷 60) B 122)単位当り限界利益差異 月次 60 ( 61刷 37) B 35)市場規模変動率 月次 63 ( 61自 60) 調達活動 A 131)買掛偵ー務支払日数 半年次 41 ( 40 ' 100) B 130)仕 入 値 引 返 品 率 月次 69 ( 65" 79) 人的資源 A 132)従業員一人当り売上高 半年次 6 ( 2 60) A 133)従業員一人当り付加価備 半年次 14 ( 14" 60) A 134)従業員一人当り人件費 半年次 15 ( 13" 79) A 135)従業員一人当り営業利益 半年次 25 ( 29" 20) 物価変動 C 138)現在原価利益対燈史原価利益比率 必要時 131 (131 " 133) 将来性 A 141)新製品売上構成比率 半年次 33 ( 35“ 27) B 22)固定予算による損益計算苫 半年次 50 ( 55" 9) B 23)掴定予算による貸借対照表 半年次 68 ( 71" 42) B 25)蝉力性予算による損益計算書 半年次 81 ( 86" 20) B 26)郵力性予算による貸借対照表 半年次 89 ( 91・ 69) C 24)回定的現金予算 半年次 104 ( 91 " 112) C 143)試験研究成予算白由裁量支出割合 半年次 121Cl17" 112) ..・ーーーー・..ー・・・曲・・ー・・--- -B 27)磁力性現金予算 月次 96 (103“ 27) 製造活動 [製造統括指標 (3個) ] B 149)総合生産性比率 月 次 73 ( 71' 93) C 42)生産組合せ差異 月 次 106 ( 91 ' 122) ---曹司ー, ー値ー曲・回・--- -C 46)帰属原価収益性 必 要 時 134 (131 " 134) -・・--- ---・4・..朝司P・ーーー...・a・ーーー値ーーー・白幽晶・・ーーー・・・“・・・・・・・・・ -・・--- ---値ーーーー・・・・・・・・・・・

(10)

-64- 香川大学経済論叢 756 報告階層 種 類 ABC 報 告 尺 度 報告頻度 重(採・有〕 [直接材料費差異(1個)J C 86)補修費差異 月次 108 ( 91 " 130) 開w.__ーーーーー・・・自由畠自司副』・・・・・・・・・--司a明圃・--・.-.---ーー ---甲車ー,司司ーー,ーー [製造間接費差異 cl個)J C 91)指図書別製造間接費差異 月次 111 (112・74) 地域部門(基礎的尺度なL, 製 造 活 動 の 尺 度 個 ) │製造活動

I

C

I

f直接材料費差異 cl個)J C I 85)減損発生差異 月次 110 (103" 116) 事業部(基礎的尺度:16伺,製造活動の尺度 5偲〕 収益性 A 31)限界利益 月次 8 ( 11・ 9) A 30)製造貢献差益 月次 38 ( 40リ 27) B 34)セグメント別営業利益 月次 44 ( 46・27) B 29)薗接原価計算営業利議 月次 46 ( 46" 49) B 32)短期業績差益 月次 66 ( 71・37) 市場活動 A 93)損益分岐点販売s: 半年次 43 ( 44.. 49) A 124)変動費率 月次 33 ( 35・27) A 120)売上貢献利益額 月次 40 (43" 37) B 36)市場占有率変動率 月次 45 ( 48.. 20) B 92)単位当り限界利益 月次 61 ( 65凶 14) C 118)受注残滞留日数 年,月次 99 ( 91・104) 将来性 B 142)新製品利益構成比率 半年次 52 ( 55.. 14) '司司・,ーー白 幽ー・--- -B 97)回収期間法 必要時 53 ( 51.. 42) B 100)内部利子率法 必要時 75 ( 75.. 74) B 98)正味現在価値法 必要時 96(103" 27) C 144)社員訓練波予算自由裁f孟支出割合 半年次, 114(103・130 必要時 製造活動 【製造総括指標 (3個)J A 41)売価生産額実績率 月次 27 ( 28・49) B 44)利益センター別責任利益 月次 47 ( 59・ 3) C 150)製品別作業生産性増加率 月次 105(103“ 93) -・・・・・・---帽ー・・ー-ーーー・・・ [製造間接1!l差異 (2個)J B 90)製品別製造間接星空差異 四半期次 92 ( 80・129) B 75)現実的操業度差異 月次 67 ( 65・74) センター(基礎的尺度偲,製造活動の尺度なし)

l

市場活動│ C ト ー 産 貢 献 利 益 率 月次 137 031 . 1.38)

(11)

757 業績尺度の利用に見られる現状 -65-報告階層 報 告 尺 度 報告頻度 重(採・有〉 工 場(基礎的尺度:3個,製造活動の尺度:27個〕 回転本1 回転期間 C 109)棚卸資産ABC分析 月次 102 ( 86・126) 調達活動 B 128)発注後納入日数 月次 95 ( 91" 93) C 129)期限到来後納入日数 月次,必 124 023" 60) 要時 製造活動 f製造統括指標 (2個)J A 40)生産量実績率 月次 23 ( 24・37) B 43)コスt,センター別責任原価 月次 54 ( 55・37) [直接材料費差異(9個)J A 47)材料価格差異 月次 15 ( 15, 56) A 48)材料消費数量差異 月次 26 ( 26・60) A 50)材料消費歩留差異 月次 39 ( 38, 49) B 81)仕損品発生差異 月次 58 ( 55" 56) B 49)材料混合差異 月次 62 ( 59・83) B 82)作業屑発生差異 月次 64 ( 61" 83) B 54)製品別材料費差異 月次 80 ( 78・83) B 51)材料変更差異 月次 89 ( 91“69) C 83)残材発生差異 月,週次 114 (103・131) -・・----ー自国軍ーー..明---司" f蹟接労務費差異 (8個)J C 58)作業組合せ差異 半年次 109 012・42) C 61)統計的習熟曲線と実際習熟度との差異 四半期次, 128 023ω122) 必要時 ---_.峰・ー---ーー A 57)作業時間差異 月次 32 ( 30" 56) A 56)貸率差異 月次 36 ( 37・49) B 65)製品別労務費差異 月次 78 0 5・104) B 59)作業能率差異 月次 86 ( 91“ 8) C 63)作業5J1j労務費差異 月次 99 (103・42) C 60)作業変更差異 年,半年 129 031' 4) 月次 ,,---ー・・・・岨晶・・ー--- -・岨‘・・・・・b白幽幽白圃晶恒国圃』自専----

-t

製造間接費差異 (8倒)J B 67)変動間接費予算差異 月次 70 ( 65・83) B 147)二区分法間接費差異分析法 月次 70 ( 65凶 83) B 89)作業別製造間接費差異 月次 79 ( 80・27) B 70)固定間接費操業度差異 月次 82 ( 80“83) B 76)正常操業度差異 月次 84 ( 80, 93) B 69)画定間接費予算差異 月次 87 ( 86" 60) C 72)遊休能力差異 月次 107(112・18) C 80)機械要素変更差異 月次,必 117 (112" 116) 要時

(12)

-66- 香川大学経済論叢 報告階層│種 類 IABC 758 報 告 尺 度 報告頻度│ 重(採・有) 職能部門(基礎的尺度 5個,製造活動の尺度・ 4個〕 市場活動 調達活動 人的資源 物価変動 製造活動 B 1 123)販売混差異 B 1 39)売上品構成差異 B 1 127)主要品仕入価格騰資倍率 B 1 136)従業員退職率

c

1 137)物価変動修正売上高増加率 B [製造総括指標c1個)J 146)生産量差異 │月次 f製造間接費差異 (3伺)J B 1 78)工作技術変更差異 C I 77)設備組合せ差異 C 1 79)作業ノレート変更差異 部 門(基礎的尺度なし,製造活動の尺度:12個) 製造活動 月次 月次 月次 49 ( 51“ 25) 72 ( 75・20) 半年次 1 56 ( 51“ 74) 74 ( 78・27) 年 半 年I126 023' 93) 月次 82 ( 80" 83) nun4nL マ t A A ワ “ 唱 t -T B A q u q u nununu q o n V 噌 i n u u n 汐 唱 i 唱 E A 時 時 時 要 要 要 必 必 必 C f製造総括指標c1個)J 45)投資センター別責任投資利益率 │半年次 [直接材料授差異 (3個)J

c

1 87)J)f,価回収差異 C C B C C 次 次 白川白川 寸 ﹂ 、I J 異 一 個 国 間 異 臭差一 3 異 差 差 差費一(骨一自費費 時 以 料 一 異 資 務 務 料 材 一 差 務 労 労 材 別 一 費 労 別 別 別 番 一 務 別 制 脅 業 関 一 労 相 明 替 図 作 指 一 接 職 交 指 の の 一 直 前 山 心 。 F h d F h J v -﹁ t L 戸 内 V ハh u n n v 127 031" D 四半期次I129 031" 4) 113(112' 93) 118(117.' 93) 月次 1 59 ( 51 . 1.03) 月次 I 122 (117・116) 月次,必1132 023" 135) 要時 半年,四I124 (123ゎ 60) 半期次 月次 月次 年,半年 月次 月次 57 ( 49 " 100) 84 ( 91十 4) 116 (117・27) 120 (117・104) 1 -製造間接授差異 (5個)J C 1 88)タイプ別製造間接費差異 B B C 71)製造間接費配賦不足 148)三区分法間接費差異分析法 74)理想的操業度差異 C 68)変 動 間 接10':(能率差異

(13)

759 業績尺度の利用に見られる現状 報 告 尺 度 報告頻度 利用なし(基礎的尺度:5個,製造活動の尺度:1個) 安 全 性 20)普通株簿価 不採用 107)優先株簿価 1/ 物価変動 139)物価変動法人税影響度 1/ 140)資産騰貴率 1/ 将 来 性 99)超過現在価値指数法 1/ 製造活動 t製造間接'1!l差異c1個)J 73)年次期待操業度差異 1/ グゾレープの尺度は,種類別にはつぎのような分布にある。 基礎的尺度 ::

36/84=43%

回転率・回転期間

8/10=80%

人 的 資 源

4

/

5=80

流 動 性

2

/

3=67

収 益 性

9/19=47

市 場 活 動

8/18=44

安 全 性

3

/

8=38

調 達 活 動

1

/

5=20

将 来 性

1

/

14= 7

物 価 変 動

0

/

2= 0

製造活動の尺度

7/54=13%

直接材料費差異

3/14=21%

製造総括指標

2/10=20

直接労務費差異 製造間接費差異

2/11=18

0/19= 0

-67ー 重(採"有〉 不採用 1/ 1/ 1/ 1/ 1/ 各尺度の種類によって利用される尺度数が異なっているため一様には評価し にくいが,重要性の高い尺度は各種にまたがっており,重点とする尺度が多方

(14)

-68ー 香川大学経済論議 760 面にわたって配置されていることがわかる。しかし,それぞれの方面で重視さ れている程度は片寄っており,たとえば基礎的尺度と製造活動の尺度を見る と,明らかに基礎的尺度のウェイトが高い。製造業が集計会社の77%であるこ とを考慮しでも,この差はかなり歴然としているといえよう。わが国の会社 は,製造活動における財務指標の利用を基礎的尺度ほどには重視しておらず, 財務尺度を,製造活動のように限られた職能領域のためというよりは,全社的 な方針の検討や判断のために利用することを重視する傾向があるといえるので あろうか。この様相をさらに各種類ごとにうかがうと,回転率・回転期間,人 的資源,流動性の指標がとくに重視されており,アメリカの状況と傾向的には 似ているようである。ただ,人的資源の指標は,ヱドワーズの調査では取り上 げられていないため比較できないが,少なくともわが国では,人を中心とした 生産性なり人件費水準がきわめて重視されている。これと反対にほとんど重視 されていない指標を見ると,将来性,物価水準,製造間接費差異がある。全社 および各部門の計画や将来の発展に対する備えを表す将来性の指標が,あまり 重視されていないのは予想外の感を拭えないが,計画のための各種の財務的手 法が多くの会社で一般化するまでにいたっていないことを反映しているのであ ろうか。 多様な利用の様相を報告階層別にうかがうと,つぎのようである。 親 会 社

0

/5= 0%

取 締 役 :

3

1

/

59=53

地域部門

0

/1= 0

事 業 部

6/21=29

センター

0

/1= 0

工 場

6/30=20

職能部門

0/9=0

部 門 :

0/12= 0

採用される尺度は,取締役,事業部,工場,職能部門および部門などに分散 して用いられるが,親会社,地域部門,センターで固有に報告される尺度がほ

(15)

761 業績尺度の利用に見られる現状 -69-とんどない。職能部門,部門といった比較的低い階層でも利用されているが, 全体的には,取締役にかなりの尺度数が集中している。米国におけるむしろ中 位の方で広く利用されているのとは対照的であるとさえいえよう。重視されて いる尺度を見ると,その利用は,取締役,事業部,工場にむしろ限定的であ り,なかでも取締役に集中している。総じていうと,わが国では,財務尺度の 利用が,アメリカに比較して,管理の権限・責任の委譲にしたがって分散的に 行われるよりも,むしろ集権的な使い方にウェイトがおかれているようである。 報告頻度別の利用を見ると,つぎのようである。 年 次

0/1=0%

半 年 次 :

2

1

/

39=54

四半期時

0

/5= 0

月 次 :

22/84=26

週 次

0

/1= 0

日 次:報告尺度なし 必 要 時

0

/8= 0

財務尺度の報告頻度は,不定時になされるケースもあるが,大半が月次と半 年次の定時報告に集中している。アメリカで不定時の報告を含めて比較的多様 な頻度で報告されていた様相と較べて,利用形態がかなり相違している。わが 国の利用頻度は,月次の利用が多いという点は共通しているが,明らかに半年 次,月次が主流であって総じて報告間隔が聞いており,週次,日次で頻繁に報 告するケースはほとんど見当らない。わが国の財務尺度の報告は,作業者層あ るいは下位の管理者層における経過的な当座管理のために用いるというのでは なく,むしろ中長期の方針や判断の手掛かりとして活用することにウェイトが あるといえるのではなかろうか。重視する尺度が,月次よりも半:年次の方に多 くなっていることからもこのことがうかがえよう。 総じていえば,わが国でも多様な尺度を重}点的に使って会社の諸側面をノ《ラ ンスよく管理しようとされるが,具体的な利用の形態となると,アメリカの会 社の事情とかなり相違している。わが国では,各財務尺度は,部門管理者がた

(16)

-70ー 香川大学経済論叢 762 とえば製造活動のように限られた領域の職能を管理するために,あるいは経過 的な当座管理を行うためにかなり頻繁に利用するというよりは,むしろ全社的 な管理責任者が中長期的な視野で市場環境への適応策や全社的な管理体制を方 向づけるために半年次,月次に利用されるという使い方に重点があるように思 われる。

(

5

)

各管理階層での業績尺度に見られる特徴 とのような全般的特徴を背景として,個々の尺度は,どのような配慮のもと に利用されているであろうか。各管理階層ζとに尺度利用の特徴をうかがうと つぎのようである。 (5)-1 親会社の特徴 親会社に報告される固有の尺度は

5

つあるが,し、かなる配慮からそのような 利用がなされるかは必ずしも明らかでない。 親会社へは,おそらく月次,半年次,年次の決算諸表類が報告されるであろ うから,それを補足する意味で,月次に総資本残余純利益率(採用は2社の み),残余当期純利益(採用は

1

社のみ),販売資産効率(採用は

1

社のみ),固 定資産支出予算自由裁量支出割合(採用は2社のみ〕といった,部分経営の業 績にかかわると見られる実績や予想、の値が報告されるようであるが,いずれも 数社における特殊な事例である。親会社の資本参加を背景にして,半期決算に かかわる一株当りキャッシュ・フローといった安全性指標を利用するケースが いくらか目立っている。 いずれにしても,決算諸表以外に親会社へ財務指標が系統的に報告されるこ とはあまり多くないようである。 (5)-2 取締役の特徴 取締役への報告が典型となる尺度は,全体の

42% (=58/138

個〉もあり,ア メリカの

13%(=12/91

個〉の事情とはかなり相違している。そこでの尺度は多 様であって,それがどのような視点から利用されているかは必ずしも明快にう かがえないが,ほぼつぎのような点に管理の重点があると思われる。 ① つぎのようないくつかの尺度ク、ループは,事業を継続,発展させるのに

(17)

763 業績尺度の利用に見られる現状 n/ a , , 必要な資金の調達を有利に運ぶための金融市場への配慮で『あったり,有利 な調達源泉の選択やタイミングを図るためのものと思われる。 普通株一株当り当期純利益率 普通株配当率 株価収益倍率 株価投資利回り 普通株持分利益率 支払利子率 普通株一株当り当期純利益率,普通株持分利益率(採用は

2

社のみ),株 価収益倍率の動向は,自社の公開株式の市場株価における評価に影響する と見られるであろうし,普通株配当率,株価投資利回りは自社の配当の有 利さの程度や趨勢をうかがう指標となるであろう。 また,支払利子率は,調達した利付負債の利子負担の軽重を測るから, それによって従来の傾向や将来の見通しが検討されるであろう。 これらは半年ごとに確認され,取締役レベルにおいて,投下運用資金の 資本費負担にω関する配慮、や政策が討議されていることを反映しているもの と思われる。この点は,基本的にアメリカの事情と変らないようである。 ② 二つ自の尺度群はかなり多様であるが,投下資金を半年間運用すること からえられる投資利回りを堅持するという立場から,全般的な政策討議や 実績評価をすることに係わりがあるものと思われる。 固定予算による損益計算書 固定予算による貸借対照表 弾力性予算による損益計算書 弾力性予算による貸借対照表 固定的現金予算 総資本利益率分解図表 総資本利益率 利子支払前総資本純利益率

(18)

-72ー 香川大学経済論議会 総資本回転率 棚卸資産回転率 売上債権回転率 固定資産回転率 損益分岐点売一上高 目標達成点売上高 新製品売上構成比率 試験研究費予算自由裁量支出割合 764 半年ごとに予定財務諸表が準備されるようであり,間定予算による損益 計算書,弾力性予算による損益計算書,また固定予算による貸借対照表, 弾力性予算による貸借対照表は,それぞれ予定損益計算書や予定貸借対照 表の作成にかかわっており,固定的現金予算は一種の予定資金計算書であ るといえよう。 このような予定財務諸表の編成過程あるいは業績評価の過程においては さまざまな尺度を使った検討がなされるであろうが,おそらくこれまで デュポン方式として知られている総資本利益率分解図表(総資本利益率を 頂点とする関連指標の分析体系〉あるいはそれに近いものを念頭におい て,各種指標の系統的な分析が行われるのではなかろうか。総資本利益 率,利子支払前総資本純利益率(採用は

3

社のみ〉によって,運用資金全 体に対する利回りが評価され,また,売上債権回転率,棚卸資産回転率, 固定資産回転率などの各資産項目別の循環と,全体の総資本回転率がし、ず れも重視されているところから,資本利益率に影響する要素の一つである 資本の高い循環効率を実現する社内体制の確立も,取締役階層における主 要な検討事項になっているようである。資本利益率に影響するもう一つの 要素は,売上高利益率で表わされる業務の投入・産出の効率尺度である が,その系列にある尺度は本節④で見るようにむしろ月次サイクノレでいっ そう頻繁に管理されており,半年次に利用されるのは,目標達成点売上高 の実現可能性,新製品売上構成比率や試験研究費予算自由裁量支出割合

(19)

765 業績尺度の利用に見られる現状 -73-(採用は3社のみ〉など将来に対する備えに関する事項であったり,ある いは損益分岐点売上高による売上リスクの吸収余力の確認であったり,ど ちらかといえば経常的な業務効率というより,経常的活動の備えや余力と いった体質的な側面が注目されているようである。 ③ つぎの第三グループは,事業の継続を妨げる不安定な経営構造とならな いよう,ほほ半年次に予定または実績の貸借対照表の全体的バランスを見 直すことに関連している。 買掛債務支払日数 負債倍率 自己資本比率 負債比率 負債構成比率 支払利子控除前純利益対支払利子倍率 自己資本回転率 流動比率 酸性試験比率 固定負債適合倍率 つは各種の負債,資本の構成が考慮されている。利息負担のない営業 負債については,買掛債務支払日数など債務の状態を確認し,利付負債に ついては,負債比率,支払利子控除前純利益対支払利子倍率などでその借 入余力をうかがいながら,負債構成比率が考慮されるようであり,また, 自己資本については,負債倍率,自己資本回転率などでその安全性や運用 効率を勘案しながら,自己資本比率が検討されるようである。 とうした構成比に加えて,資産と負債・資本とのバランスも考慮されて いる。酸性試験比率,流動比率によって,短期の支払義務とその支払手段 とのパランスに関する不安要因がチェックされ,固定負債適合倍L率によっ て,機械,建物,関連会社株式など長期滞留資産がすべて自己資本でまか なわれることは難しいとしても,不足分が長期借入金,社債など固定負債

(20)

一74一 香川大学経済論叢 766 でまかなわれているかどうかの長期の不安要因がチェックされている。 このような貸借対照表の構造的なバランスの検討は,さまざまなプロ ジェクトや経常活動を継続した累積結果が経営構造に査みを生じさせない かを年次,半年次に確認し,全社的な検討を加えるためのものと見られよ う。 ④ 第四のグループとして,経常的な業務活動の月次の予算執行経過に関す る尺度がまとまっている。そこでは,全社や各セグメントの利益業績,製 品市場と販売活動,運転資金などの管理へ利用の視点がおかれているよう である。そのような尺度にはつぎのようなものがある。 売上総利益率 営業利益率 全部原価計算営業利益 セグメント別差益 売上増加率 売上高実績率 販売費率 販売数量実績率 単位当り限界利益差異 市場規模変動率 売上能力利用度 売上債権滞留日数 棚卸資産在庫日数 当座資産滞留期間 弾力性現金予算 利益業績に関するものとしては,全社や各セグメントの売上総利益率, 営業利益率,全部原価計算営業利益,セグメント別差益,単位当り限界利 益差異などの各種利益率や利益額に関するものがあり,全社的に月次の予 算執行経過を確認し,必要な措置が検討されるようである。

(21)

767 業績尺度の利用に見られる現状 -75-販売活動の業績に関するものとしては,市場規模変動率や売上増加率に よっておそらく自社のシェアの変化が追跡され,また売上能力利用度は最 大売

t

可能高に対する売上余力を確認するものとして,さらに販売費率, 売上高実績率,販売数量実績率は販売活動の予算執行業績を評価するもの としてかなり重視されている。 月次の予算管理の 環としては,このほかに金融資産や営業循環資産の 円滑な循環を管理することも含まれるようである。売上債権滞留日数や棚 卸資産在庫日数を含む営業循環期間,および当座資産滞留期間の変化の確 認は,弾力性現金予算による資金収支の管理とも関連して,全体として運 転資金の管理がなされているものと思われる。 これらの指標は,月次管理の指標として利用されるばかりでなく,おそ らく同じ取締役階層において半年次の管理サイクルにも利用されているで あろう。 ⑤ どちらかといえば経営を総括して見ょうとするこれまでの尺度とやや系 統の異なる尺度として,つぎのような従業員一人当りの尺度がある。おそ らく経営に動機を与え,それを動かしているのは人や組織であるとの見方 に立ち,半年次に集団としての会社組織とその構成員との聞に介在して微 妙に動揺しうる緊張関係の成行きが観測されているのではないか。 従業員一人当り売上高 従業員一人当り付加価値 従業員一人当り人件費 従業員一人当り営業利益 従業員一人当り売上高,従業員一人当り付加価値,従業員一人当り営業 利益は,従業員が総じてその会社業績に貢献している程度や傾向を示唆す るものとされるであろうし,従業員一人当り人件費は,その従業員の会社 への貢献に対して会社が報いる経済的福祉を示唆するものとされるであろ う。いずれも重要視されており,人間を中心とした生産性向上の努力とそ れへの報酬のバランスがどのような状態にあるかを推察し,会社構成員の

(22)

-76- 香川大学経済論議 768 紐帯を図ることが意図されているものと思われる。 このほかにもいくつかの利用が見られ,たとえば現在原価利益対歴史的原価 利益比率(採用は

1

社のみ〉はむしろ特殊な事例のようであるし,総合生産性 比率,生産組合せ差異,補修費差異,指図書別製造間接費差異(採用は 4社の み),帰属原価収益性(採用は l社のみ),仕入値引・返品率は,製造活動や購 買活動の管理に対する重点が個々の会社で異なっていることを示唆していると いえよう。 取締役の階層では,事業資金の調達への配慮,投資利回りや資本回転率から 見た効率的な全社体制の確立,資産・負債・資本の健全でバランスのとれた経 営構造,会社と従業員との無理のない緊張関係の持続が中長期的な視野から半 年次に見直されており,同時に,月次には業務活動と運転資金の予算執行経過 が確認され,取りうる措置が全社的に検討されて、いるようである。総じていえ ば,予算管理の統括本部的な役割が強調されているように思われる。 (5)-3 地域本部の特徴 地域部門を持つ会社が少なかったのか,この階層に報告される尺度は減損発 生差異(採用は

5

社〉のみである。とれから指摘しうるほどの特徴はうかがえ ない (5)-4 事業部の特徴 事業部レベルに報告される尺度もある程度数がまとまっている。そこでは, 当該事業部の将来の発展に対して新たなプロジェクトを提案することおよび事 業部予算の利益目標を月々達成しつづけることのこつが管理の重点になってい るようである。 ① 事業部の立場から,市場環境が変化しでも将来の成長性や収益性を確保 するため,必要に応じて新たな中長期策の提案がもとめられ,またすでに 実施した中長期策が着実に実行されているかどうかが半期ごとに確認され ている。そのような指標としてつぎのようなものが利用されている。 新製品利益構成比率 回収期間法

(23)

769 業績尺度の利用に見られる現状 内部利子率法 正味現在価値法 社員訓練費予算自由裁量支出割合 -77-回収期間法,正味現在価値法,内部利子率法は,提案された長期投資プ ロジェクトの経済性を評価するものであり,事業部にとって必要とされる 新たな政策や戦術が不定期に検討されるようである。新製品利益構成比 率,社員訓練費予算自由裁量支出割合は,事業内容の新旧交代が円滑に軌 道にのっているかどうかを見るものといえよう。事業部は,自らの事業分 野の中長期の発展に対して権限・責任を行使することがもとめられている ようであり,投資プロジェクトの検討が取締役の階層で行われているアメ リカの場合とやや対照的な印象を与えている。 ② 全体としては,つぎのような経常業務の遂行に関連する尺度がある程度 まとまっている。半年次に設定される利益の予算目標が月々し、かに達成さ れるかが,事業部の立場から評価されている。 限界利益 製造貢献差益 セグメント別営業利益 直接原価計算営業利益 短期業績差益 売上貢献利益額 利益センター別責任利益 製造貢献差益,売上貢献利益額,利益センター別責任利益は,それぞれ 事業部内の製造部門,販売部門あるいは何らかの利益責任を課される組織 単位の収益性を測る尺度であり,事業部内の各営業区分や部門が当該事業 部にどのように貢献しているかが評価されるのであろう。 また,全社の立場から各事業部の利益責任がし、かに果たされているかが 評価されている。事業部の限界利益は全社利益への追加分を表わす1でhあろ うし,短期業績差益は,当該事業部が裁量権限を行使しうる範間内での固

(24)

-78- 香川大学経済論叢 770 有の利益責任を表わすであろう。また直接原価計算営業利益,セグメント 別営業利益は,当該事業部が本社費などの共通費をどこまで負担しえてい るかが確認され,また同業他社との比較で事業部の収益性が評価されるも のといえよう。いずれも各事業部の月々の利益責任を相対的に評価するも のとして利用されるであろう。 ③ 月々の予算執行経過は,利益の観点から総括的に見られるだけでなく, つぎのように製品市場や生産活動における主要な利益影響要因との関連で いっそう具体的な問題の所在が追究,確認されるようである。 損益分岐点販売量 変動費率 市場占有率変動率 単位当り限界利益 受注残滞留臼数 売価生産額実績率 製品別作業生産性増加率 現実的操業度差異 月次の市場占有率変動率の変化によって同業他社との競争状態がうかが われ,受注残滞留日数などで関連事業分野における市況が観測されるであ ろう。そのような月々の売上経過との関連で,半年次の損益分岐点販売量 への到達可能性がうかがわれるであろう。 他方,生産活動では,売価生産額実績率,製品別生産性増加率によって 生産量の実績が考慮され,原価サイドでは,変動費率,単位当り限界利益 によって変動費の具体的な消費効率が,現実的操業度差異によって固定費 の利用効率が配慮されるようである。 これらは,いずれも事業部の利益を左右しうる影響要因であって,利益 業績の内容を評価する際に具体的な手掛かりを提供しうるものとなるであ ろう。 間接費については製品別製造間接費差異が四半期に報告されているが,その

(25)

771 業績尺度の利用に見られる現状 -79ー 趣旨は必ずしも明らかでない。 事業部管理者の課題は,総じて,当該事業部の中長期プロジェクトを提起す ることおよび事業部の予算利益目標を実現しうるように部内の業務活動を月次 サイクルで方向づけることにあるといえそうである。 (5)-5 センターの特徴 センターでは,販売資産貢献利益率が月次に報告されているが,そこでは指 摘しうるほどの特徴はうかがえない。 (5)-6 工場の特徴 工場レベルでの尺度もある程度まとまっている。各尺度は,およそ生産量実 績の管理,製造直接費や製造間接費の予算管理,材料の購買管理のために報告 されているようである。 ① 工場では,まず生産量実績に対する評価や検討がなされ,さらに生産力 に生ずる余裕を有効に利用するため全体的な操業状態が確認されるようで ある。そのための指標はつぎのようである。 生産量実績率 固定間接費操業度差異 正常操業度差異 遊休能力差異 月次の生産量実績率はいわば各種製品生産量の予算達成率であるとい え,当初予算の生産量が達成されているかどうか予算との講離が関われて いる。また,生産量実績の結果,月次の固定間接費操業度差異,遊休能力 差異,正常操業度差異によって生産力にどの程度の余裕や遊休を生ぜしめ ているかが掌握され,予算期間の未経過月に対する取組みの方向が検討さ れるであろう。 ② もっとも大きな尺度グループは,製造直接費の予定実績差異(予算実績 差異か原価計算的な差異〉の発生原因や製造間接費の予算実績差異を確認 するものであり,差異発生全体の状況に応じた方針や措置が月次に検討さ れるようである。このような差異発生の状況は,各作業職場ごとに把握さ

(26)

-80ー 香川大学経済論議 772 れることが少なくないであろう。コスト・センター別責任原価,作業別労 務費差異,作業別製造間接費差異は,工場で発生する原価が何らかの作業 職場あるいは作業区分ごとに掌握され,それらの全体を見ながら各部署に 応じた措置が検討されるものといえよう。その指標はつぎのようである。 コスト・センター別責任原価 材料消費数量差異 仕損品発生差異 作業屑発生差異 製品別材料費差異 残材発生差異 作業組合せ差異 統計的習熟曲線と実際習熟度との差異 作業時間差異 賃率差異 製品別労務費差異 作業能率差異 作業別労務費差異 作業変更差異 変動間接費予算差異 二区分法間接費差異分析法 作業別製造間接費差異 固定間接費予算差異 機械要素変更差異 まず直接材料費については,材料消費数量差異で数量差異全体を掌握 し,必要に応じて仕損品発生差異,作業屑発生差異,残材発生差異で材料 歩減の主な原因ごとに発生額を確認し,また材料混合差異の確認などに よって月次の措置が考慮されるであろう。 直接労務費については,賃率の動揺で発生する賃率差異を把握しなが

(27)

773 業績尺度の利用に見られる現状 -81-ら,必要に応じて作業組合せ差異(採用は4社のみ),作業変更差異(採用 は

1

社のみ〉により作業者の配置替えや異動の影響が確認されるようであ る。また,製品単位当り作業時間の月々の動揺による作業時間差異はまず 全体として把握され,作業能率差異,必要であれば統計的習熟曲線と実際 習熟度との差異(採用は

2

社のみ〉などにより差異発生の影響がいっそう 具体的に検討されるようである。 直接費の差異は,各社の場面によって製品別材料費差異,製品別労務費 差異も管理情報として利用されている。 製造間接費は,その配賦差異全体を二区分法間接費差異分析法などで発 生要因別に分析し,そのうちとくに予算差異は,変動間接費予算差異,固 定間接費予算差異など各費目グループや各費目ごとに月次管理に適用され るのであろう。機械要素変更差異(採用は

4

社のみ)の内容は必ずしも明 らかでない。 ③ 残った尺度は,いず、れも材料の購買管理に利用されるものといえよう。 とくに材料のサプライヤーからの購入価格や調達納期が管理されるようで ある。 材料価格差異 材料変更差異 発注後納入日数 期限到来後納入日数 材料価格差異は,月々の調達価格の変動が原因で生ずる購入額の変化分 であり,材料変更差異は,代用材料を調達することから生ずる購入額の変 化分であると見られ,異常値が生じたことに対する事態が確認され,購買 活動の方針や措置が検討されるものと思われる。 また,材料の供給業者からの発注後納入日数や期限到来後納入日数(採 用は

2

社のみ〉が月次に確認され,納期遅れが生産活動への障害とならな いよう必要な措置が検討されるようである。 (5)一7 職能部門の特徴

(28)

-82ー 香川大学経済論叢 774 職能部門へもいくつかの尺度が報告されているが,それらがどのような管理 を意図しているかは必ずしも明らかでない。主な理由の

1

つは,その部門がい かなる職能を担当するかによって必要な尺度が違うとし、う事情によるのではな かろうか。 ① 一つの尺度グループは,販売職能を分担する部門にかかわりがあると思 われ,販売部門の立場から全社あるいは所属事業部の限界利益に対する影 響要因の業績をいっそう具体的に分析するものと思われる。 売上高構成差異,販売量差異は,当該事業部の製品ライン別の限界利益 を要因別に分析したものと思われ,製品の売上実績が予算から主席離する場 合に,それが限界利益に与える影響をうかがうものであろう。また物価変 動修正売上高増加率(採用は

2

社のみ〉は,実質的な売上高の増減を確認 することによってその分析を補強するものといえよう。 ② 製造職能,購買職能に関連する部門には,製造活動や購買活動の業績に かかわる尺度が報告されるであろうが,各社の個別の事情によってその在 り方は一様でないように思われる。 製造部門にかかわるものとして,生産量差異が月次に,従業員退職率が 半年次に報告されている。工作技術変更差異,作業ルート変更差異,設備 組合せ差異は,必要に応じて製品設計,作業手IJ国,工程設計の変更の間接 費への影響などが確認され,経常的な分析を補強するのであろうか。 毎月の主要品仕入価格騰貴倍率は,仕入価格の実績の傾向や将来の動向 を予測するものであろう。 販売職能,製造職能,購買職能のいずれに用いられる尺度にしても,あまり 重要性の高いものはなく,この階層に独立の権限・責任が付与されているとい うよりは,上位階層との緊密な協力関係を保ちながら,上位階層での分析を補 完するものとして実施されているのではなし、かという印象である。 (5)-8 部門の特徴 部門レベノレでの報告を典型とする尺度は,大半が原価差異に関するものであ り,予算原価や標準原価に対する実施責任が十分果たされていない箇所が確認

(29)

775 業績尺度の利片jに見られる現状 -83-されるのであろう。 ① 各部門での原価差異は,計算

t

集計することができるもっとも小さな管 理単{¥[ (部門,職場,作業,交替制,指凶書など)によって,各費目の実 績を月次に掌握するものと思われる。 材料費では,作業別材料費差異(採用は

4

社のみ),指図書別材料費差異 (採用は

3

社のみ〕により消費量差異の明細が検討されるようである。会ネj によっては,原価回収差異(採用は

1

担のみ)のような特殊な例も見られる。 労務費については,職場別労務費差異,交替制別労務費差異(採用は3 社のみ),指図書別労務費差異(採用は

2

社のみ〉によって作業時間芹:異の 明細が把握されている。 製造間接費は,差異総額としての製造間接費配賦過不足が,三[){分法間 接費差異分析払ーなどを適用して要因別分析がなされるが,その適用は各十

l

で異なっており,必要に応じてタイプ別製造間接費差異(採用は

2

社の み),変動間接費能率差異(採用は3社のみ),理想的操業度差異(採用は

3

社のみ〉などが分析されるようである。 部門レベノレにおいては原価責任が問われるのが通例であろうが,会社に よっては投資責任センター別責任投資利益率(採用は

1

社のみ)が半今J次 に報告される例が見られる。 総じていうと,部門レベルでの尺度もあまり重視されておらず,原価差異分 析は,工場レベルで行われることが主流であって,部門レベルで町の分析は,広 く実施されるというよりは,各社の事情によって実施されたりされなかったり しており,実施される場合でもその方法は一様でないといえそうである。典型 的とされるような系統的取組みはあまりはっきりしていない。

(

6

)

わが国の業績尺度の利用に見られる特徴 これまで見たわが国の主要な会社が利用する財務尺度の典型的な様相をまと めると,図表

9

のような表に要約することができるであろう。このような表か らうかがえるわが国の財務尺度の利用には,つぎのような特徴がうかがえると いえるのではなかろうか。

(30)

-84- 香川大学経済論叢 図表9 日本の財務業績尺度の利用 階 層 中・長期課題

1

短期課題 親会社 │配当支払の安全性など: 丁 斗 (半年次 取締役 │金融市場や資金調達源!全在および各セグメント l 泉への配慮(半年次の営業利益業績(月次〉 全般的な投資利益率と!市場動向と販売活動 収主主性の体質(半年次): (月次〉 全般的な資本循環 i運転資金の経過確認 ( 半 年 次 月 次 〉 資産・負債・資本の構 造(半年次) 一人当り生産性と人件 費(半年次 地 域 本 部 不 明

i

事業部 │投資プロジェクトの収!事業部の段階的利益業績! センター 工場 益 性 ( 必 要 時 月 次 〉 事業の新旧交代の経過

i

販売実績と生産実績を表! ( 半 年 次 わ す 主 要 指 標 の 月 次 経 過 !

i

(月次〉 │不明

!生産量達成率と操業度差! 異(月次) 直接材料費,直接労務費 製造間接費の差異(月次〉 。材料価格差異,調達納期,

i

の指標(月次) 職能部門│実質的売上高増加率 !売上高の限界利益への影! 部門 ( 年 , 半 年 , 月 次 響 ( 月 次 〕 従業員退職率 !生産量の限界利益への影 (半年次 響(月次) 設計・技術の変更によ! る差異(必要時 原価回収差異 !直接材料費,直接労務費

T

(四半期次) 製造間接費の差異明細 タイプ別製造間接費差(月次) 異(半年,四半期次) 理想的操業度差異 (年,半年,月次〕 投資センター別責任投. 資利益率(半年次 776 当座対応

(31)

777 業絞尺度の利用に見られる現状 -85ー ① 財務尺度が利用されるのは,管理階層的には親会社から部門にいたるま で広い階層にまたがっているといえるが,ある程度典型的な利用パターン がうかがえるのは,ほぼ取締役から工場にいたる階層までであるといえる であろう。親会社,職能部門,部門における尺度は,一般的に重要性がl白 いとされる尺度ではなく,むしろ各社に固有の必要性による特殊な利用が なされているといった傾向がうかがえるようである。財務尺度の利用が, 経営幹部ないしは取締役から工場にいたる上位または中位の階層を中心と して行われるというこのような特徴は,日米の経営でだいたい共通してい るように思われる。 ② しかし,財務尺度の利用頻度という点から見ると,わが国の財務尺度が 報告される報告間隔は,米国のそれよりかなりゆったりしているといえよ う。米国では四半期次,月次,週次,日次などが主な利用頻度であるが, わが国の場合は専ら半年次,月次に利用されている。わが国では,少なく とも財務尺度の利用は,それを当座的な経営活動の経過管理のために利用 することは一般的でない。むしろ財務尺度は,下位の管理者や作業現場が 直接に分担している当座管理や業務活動を誘導するのに必要な重点や方向 を提示するために,より緩やかな管理のサイクルで諸指標を総括的に検討 することが重視されるようである。 ③ また,わが国の財務尺度の利用に見られる取締役から工場レベルにいた る階層での権限・責任の分散は,米国のそれよりも集権的に展開されるよ うである。財務尺度の利用がより集権的になされるか分散的になされるか は,利用される業績尺度いかんによるというより,尺度の利用を動機づけ ている管理上の必要性のいかんによるものといえよう。財務尺度の利用面ー からうかがえるわが国の管理が,実際に米国よりも集権化しているという のであれば,それはいかなる事情によるかが関われよう。欧米の会社に較 べてわが国の会社がいかなる特徴を備えているかを経済人類学的な観点か ら多面的に見るフィールドワークがわれわれには興味深く思われる。それ によると,わが国の産業界を特徴づけている

3

つの大きな特徴の

1

つとし

(32)

-86ー 香川大学経済論叢 778 て,

I

引傾向的には日本の会社の事業範囲は欧米に較べていっそう狭 い 匂と指摘されている。「日本の会社の専業度,すなわちある特定の事 業に集中している程度を,欧米の会社と比較しながら数字で示すことは難 しご乙という事情をあげながらも,統計データ,日本でのケーススタ ディ,日本人の思考傾向などを勘案して,わが国にはそのような原則的傾 向があると推察している。 このような日本の会社の傾向は他の面への波及効果が少なくなく,社内 組織と産業界におよぼす影響として

3

つが指摘されている。

t

f

1

は,

I

噂。業化は企業内の労働者を同質化するという当然の結末」である。 第

2

は,

I

“"社内の管理において財務との数字がそれほど重視されなく なるという点であ

Z

」第

3

は,

I

専業化は,会社間の相互依存性を非常に 強めるという結果をもたら主」とする諸点である。ここに会社の専業化 の傾向が会社内外へ広く影響を及ぼしていることがうかがえるが,本論で は管理方式への影響を推察できれば十分である。わが国の会社が,新規事 業による多角化を必要!とする場合でも,自社内における多角化を回避し, 専業化した独立の子会社を設立するやり方を好み,結果として,特定のあ るいはその延長上にある事業分野に同質化した内容で自抵の事業を継続す る傾向があるとすれば,会社の主体性を確保する管理方式は,分権化によ る間接的な統括よりも,集権化を基点とする統括の方が実施しやすいであ ろう。日本における特定事業への専業度と欧米における社内での多角化と の相違がどの程度のものであり,それが他へどの程度波及しているかはな お立証の努力を要する事柄であろうが,かなりの波及効果がうかがわれる ほどの違いがあるとすれば,わが国の会社は,米国より同質化した事業分 (32) Rodney Clark 'The .!apanese Company" Yale University Press, 1979. p.55端信行訳『ザ・ ジャパニーズ1 カンパニー』ダイヤモンド社,昭和56年, 11ベージ (33) Rodney Clark.op. cit . p 55端信行訳,前掲11J, 11ベージ。 (34) Rodney Clark.op cit, p 63端信行訳,前掲書.23ベージ。 (35) Rodney Clark.op cit, p.63端信行訳, iIIJ掲番, 24ページ。 (36) Rodney Clark.op cit, p.64 端信行訳,前掲~~. 24ベージ。

(33)

779 業績尺度の利用に見られる現状 -87-野を集権化して管理する傾向があり,財務尺度の利用にその管理方式の違 いが反映し,それが日米の違いの一部を構成していると推論しでも大きな 誤りではないであろう。わが国で,全社あるいはセグメントに適用される 一般的尺度の多くが取締役階層に集中して,事業部や工場に権限・責任を 委譲する部分が相対的に少なく,また当座管理がいっそう下位に委譲され ているように思われるのは,財務尺度が,下位階層をも含めて集権的に管 理されており,そのような管理に適用されていることによるといえるので はなかろうか。

4

むすび一一一わが国の財務尺度の利用 財務的業績尺度の利用についてこれまで見た統計は,必ずしも十分なサンプ ル数にもとづくものではなく,また,調査の方法についてもいくつかの疑問が あった。しかし,業績尺度の社内的な利用を確かめようとするこの種の試みは 先駆的なものであり,貴重な試みと受け止めるべきであろう。ここでえた暫定 的な結論は,いずれも集計会社の単純集計にもとづいており,細部のうがった 解釈に囚われず日米で対照的と思われる基礎的な傾向の指摘にとどまる限り, ほほ大規模な会社の傾向であると見ていいのではなかろうか。 日米ともに管理指標としての財務尺度の利用は,工場レベル以との階層で利 用されることが主流のようであり,それより下位の階層では,わが国の場合は 各社の必要に応じて補完的に利用されるにとどまっている。 財務尺度が利用される階層は,日米でそれほどの違いはないと思われるが, 相対的な違いの一つは,各尺度の利用の仕方にあるようである。米国では,財 務尺度は,全社的な管理の指標としても,また製造活動のように限られた職能 部門の管理指標としても用いられ,両者に重点の差はうかがえない。しかし, わが国では,もちろんこの両面に用いられるが,どちらかといえば全社的な管 理のために活用することが重視されている。また,このような傾向と緩く関連 していると思われるが,米国での財務尺度の利用は,わが閣の場合より利用の サイクルが短く,月次サイクルでの利用を中心としながら四半期次 日次のサ

(34)

r t ; h u e t p t t B A r t -0 9 l t t e t i t e r i 4 -88- 香川大学経済論叢 780 イクルで用いられることが多く,中長期から当座的な課題の検討にいたるまで 広範囲に適用されている。わが国では,やはり月次サイクルでの利用を中心に しながらも専ら半年次,月次で利用されており,当座管理で適用されることは ほとんどない。むしろ当座管理が取組むべき重点や方向を示唆するととにその 役割がもとめられているといえよう。 もう一つの相対的な違いは,米国では,取締役の権限・責任がク、ループ,事 業部,センター,工場など比較的上・中位の各階層に委譲されており,それに 応じて尺度が分散的に活用されているようである。しかし,わが国では,管理 の権限・責任は取締役に比較的集中しており,相対的に事業部以下に委譲され る部分が少なくなるが,当座的な管理はいっそう下位の階層に委譲されている ようである。財務尺度は,取締役を中心とした下から上までの集権化した管理 体制を前提として,下位に委譲した当座管理を誘導するために利用されている。 とくに財務尺度の利用における日米の違いに注目してきたが,その違いはあ くまでも相対的なものであって,これを絶対的なものと受け止めるべきではな い。類似と違いを含めて,なお尺度利用の特徴とその意味について検討を重ね る必要があるように思われる。

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