May
変わる,かわる,ことばほ変わる−
一英語の語源と由来一
菅 沼
惇日 次
1… Volkmarさんほ豆腐が好き−Sie m6gen t6fu
2.ドイツ語m6genと舌英語magan
3…‘m6gen’が−・体「好きだ」とは? 4… 「力」を表す英語
5.現代英語may
6.Sielieben t6fu
1.Volkmarさんは豆腐が好き−
Sie m6gen t6fu”今は昔,ほんとにもう劇昔前のことだ,ドイツ語の外国人教師VolkmaIさん が香川大学に赴任し,学食をよく食べては吾々日本人教師をつかまえて,日本 語の勉強をしていたのは。又日本人の吾々はドイツ語の勉強をさせていただい たものである。彼は旅行が好きだったようで,そんな話が多かったようだが, 私は余りそんな話は馬耳東風だったようだ。−・番感心したのは体が赤く,薄着
であり,豆腐が好きなことと,ドイツ
語の機微に触れることができることで あった。彼は豆腐ほ.食事の−・番後で食べるのだ。デザートか何かのように(糊 麻豆腐なら私もそうする)。そこで「豆腐が好きですね。」と言ってやろうと 思って,英語は“Youliket6fu.”だから,と,それならドイツ語では“Du(え1−と1ik。をドイツ語にするとIickenとかあるかな?−後で辞書1)を引いてみると
やはり1icken等ない。ところがである,現代英語の1ikeは古期英語のIician,注1)相良守峯編『木村・相良独和辞典』197514,博友社。
1icanに始まるのであるから,Anglo−Sa2mDi’cti’onaT・y2)のIicanの項を引いてみ
ると∴驚いたことに(何∴驚く必要はない),昔々のドイツ語にはそれがあった
のだ。0.HGer1ich6n,Gothleikanと語源記載が付記されている。−
でほ仕方なかった。)じゃ,その後が,loveの方のIiebenで行こう。“Duliebst
t6f。,Ha,ha”すると彼「Du3)でない。Sie4)です。」そうだな,まだそこまで親し
くなかったか!?「liebenではない。Siem6gent6fuです。」(このIiebenについて
ほ後述する。)私ほ.この[m¢g∂n]という語音を耳にした瞬間体が躍るような感動
を受けた。そこで私は透かさず“‘M6gen’ist‘magan’in alten Englischen,
oder‘may’inmodernEnglischen:’とか言っていた。彼も“Ja,ja”とか言って
いたが,誰しも母国語やその周辺の,しかも語源のことは仲々どうしようもな
い。豆腐のデザ・−・トが終わると二人はそれぞれ研究室へ分かれた。ドイツ語語
源辞典5)を引くとやはり‘may,との連なりがあった。(実はこのVolkmaIさんと
の話はもっとずっと早く−・話にしようと思っていたのであるが,本当に−・昔
経ってしまった。Wordsworthもこれ程まで永くは心に暖めなかっただろう。)
2”ドイツ語m6gen と舌英語magan
ドイツ語m6genは次例のように「好む」の意味の本動詞としても,又,可儲
性・許可・願望を表す助動詞として使われる。
(1)aいSie些迫gihnnichtmehr木村・相良独和辞典
(彼女はもう彼を好きではない。)
bn Eigentlichm6chteichlieberBierドイツ語会話Ⅲ.p60白水臥
(本当は僕はビ1−ルの方がいい。)注2)Toller,T N(ed)AnAnglo−Sa2:OnDictionary OUP19724
3)このDuは舌英語ではt)uと言い,[d]対[0]はGermanic内での子音推移で第 二次子音推移と呼ばれるもの。もっと遡ると第一次子音推移があり,印欧祖語と ダルマソ祖語の間でのことで,丁度ここでLatinでは「汝」はTuなので古英語 Duと対応し,[t]対[0]となり,その一例である。 4)注3のようにDuは面白味が包まれているが,このSieは異様である。なお著者 は,小六の頃「滋」という名前の旧制高校生の兄が「Sieちゃん」と言われるんだ という話を問いた思い出のことばでもある。 5)β乙〃旭〃βαS〃β7血乃カ∽∂r孟g′・あ〟Cゐかわ」舅y〝‡OgOgまe dめ・deα如ゐ♂乃ぶ夕γ■αC・ゐ♂
Wien,USW,1963mt)gen;Das gemeingermVer・d(Prateritoprasens)mhd
mugenahdmugan,gOtmagan,englmayc.Ihr Frauenzimmer kann’s auch nicht,und mag nicht,ll.9−10,
para,20,Am16”Juni,DieL,eidendesJungenWerthers
(貴方の相手の婦人もできません。お望みでもありません。)
(2)a.・”Es聖些Sein”,Sagteich;l・5・para10,Am12Augnop,Cit
(それはそうかもしれない,と僕は言った。)
b.
:er m6chtemichihr gleich machen”l.last,para.8,Am10
Sept.op.cit
(彼が私を彼女のようにして下さるように。)
c.Meine Mutter m6chtemich gerninAktivitat haben,SagSt Du:
ll.5−6,paraり1,Am20hJuli.OPcit (母が僕を活躍させたがっていると君は言う。)
d.Ich m6chtemir oft die Brust zerreiBen,ll1,para1,Am 27
Oktober,OPci’t (僕はしばしば胸を引き裂きたくなる。) ドイツ語m6genはさすがに「心の動き」をよく表す言葉である。為に会話の 中でもよく料理・食事の場面でが,その機微を感じとれるし,又「心の名作」 『若きヴュルテルの悩み』など打って付けで,例を引いてみた。 古期英語maganの方はどうであろうか?これも現代英語にない本動詞とし ての用法と助動詞としての用法があるが,両者共に,現代ドイツ語と違って, 「能力」と「可儲性」に満ちている。次のような例である。
(1)a,.f)acw聡8he・:Hu嬰里ghe■?Hicwa∋don p紀t he welmihte.6)
Cg乃XXIX_6(Thensaidhe:Howishe?Theysaid that hewaswell)
注6)これに対応しているVulgateLatin版の箇所を掲げておく。
Sanusne est!inquit:辿,inquiunt:
即ちⅤLatinはsanus,即ち「健康な」(これは又sanatoriumの大元の語でもある が)を使っている。そしてそれをOEはma≡gで表していたのである。さすがに
OEmaganが人の生気の元力をもつことが,よく解るであろう。maganはbe
strong,bein good healthなのである。又もうー・つの語Ⅴalet,これはvalereの3 単現で,Valereはbestrongのこと,英語valid,invalid,Valueの大元の語である。
b。f)u nimst・・・Of eallum mettum,8e to mete magon,in to ae,・・・ Gβ乃.ⅤⅠ_21
(Thou…takest of a11foods,that are good for food,in to thee,)
(2)a.,Heo8a fleah ut「ne型塾堕findan hwaer heo hire fot asette,
Gg花ⅤⅠⅠⅠ_9
(She then flew out and could not find where she should set her
foot,)
b.We ne magon drincan pis wzeter for his biternysseExodXV−24
(We cannot drink this water forits bitterness)
c.hu辺窒息lCwitan poetic hyt agan sceal∼GenlⅩV−8
(how canIsee thatIshallpossessit?)
この(1)a.についてほ注6)に別記した通りであるが,人体の本質的「力」「素 力」を意味するmaganの好例であり,(1)b… の方ほ「食べ物としての素力」を 示したものである。又(2)の方は能力・可能性で,現代英語ではcanに置きかえ られうる助動詞の方の例である。 このように現代ドイツ語と古期英語とでほ大きく「願望・好み」と「能力」 という対照をなしている。ただ現代ドイツ語の辞典にも第一・義に古用法として の「∼できる」を書き置いてはいるし,又それらの源流的ゴート語(Gothic)
のmaganや古ノルド語(01dNorse)のmega共に‘beable’の意味であったの
である7)から,やはり本源的には「力」であったのだ。ということは又ドイツ語
が後世に用法に推移があったことになる(勿論現代英語に至る迄にほ古英語も そうであったが)。 3..‘m6gen’が一体「好きだ」とは? ドイツ語m6genが,しかし,まあ−・体全体「好きである」とほ.何だろうか?m6genは辞典を引くと次のような記載がある8)。
1..(古)∼できる。 2.可能性:∼かしれない。‥・6..隣望(多くは接続 注7)千種良一・著1989『ゴート語の聖畜』大学書林”Gordon,Eh V(Rev by AR Taylor,197411)AnIntroducti’ontoOldNorseClarendon 8)坤 Cよf法で)∼したい。 7りVtet∼:或物を好む。
この最後の用法がSie m6gen t6fu.なのである。これを一寸英訳してみると *You mayto董u.と非文になる。そしてこの「好む」というドイツ語m6genの 意味ほずっとゲルマン語の祖先へ遡ってもなく,ただあるのは.「∼できる」と いう意味だけだということほ上の2..で述べた。 それで結局この「∼を好む」というm6genの意味はドイツ語内での後世での
発現だということになる。ドイツ語愛好学なおまだ去り難いが,ドイツ語に余
り紙面をとり過ぎるのが本意でないので,しかしなお大事なことは下に注記し て,ここまでにしておく。 4..「力」を表す英語そうだ,舌英語maganもドイツ語m6genも兎に角本来「∼できる」という意
味で結局「力」であったのだ。それで関係語に色々「力」を意味するものがあ る。(1)soplice purhstrange嘘出he hiscealforl紀tan,ExOdVI−1
(truly throughastIOng force he shal11et them go,)
(2)a・・・・;PeNemrothwaes地盤oneorpanGenlX−8(MSC)
(・・・;the Nimrod wasmightyon the earth.)
b.Ic eom zelmihtig God:Gen XVII−l
(Iam the AlmightyGod:)
先ず元々の古期英語の時からmaganの関係語にmiht(力)やmihtig,
zelmihtigがある。現代英語になってもそれらほmight,mighty,almightyとして 注9)この発現がどういうふうにして起こったかは一つの研究テー・マとなろう。門外洪 の著者にしても現時点で二つのことが考えられそうである。ここに注記して今後 の研究の為のビーコンとしておく。 i)助動詞m6genからの出発:これは願望から「気がすゝむ」となり「好きにな る」であるが,又形式的には本動詞の脱落はどうか?それらをHierist die Weinkarte Welchem Wein m6chten Sie haben’?(独会話Ⅲ opcit)等の文例 で実験してみよ。ii)本動詞m6genからの出発:「∼できる」の能力から,次第に「できる」のだか
ら「好きになる」へと成長したのか?Mod E can「できる」はOE cunnan 「知っている」からの発現であること等考えてよいか?
残って居り,トランプ遊びでスペ・−ドのワンが日本語でも「世界一・」のオール
マイティと言って使われている。又mightyほ有名な諺Thei)enismightier
than the sword(文は武より強し.)の中に入っている。
又「メイン1ェザェント」(mainevent)とか催し物や会議等の中でも最も大
事なものを「メインほ.・‥だ」とか言って使われるmainがある。チ1−フ
(chief)はまた別の使われ方があり,又本来語でもないし,更に何と言っても 「力強い」感じ十分なのがやほりメインだということになるようだ。5..現代英語may
上でドイツ語mdgenの意味の飛躍的大変化のことを見た。言葉というものは 人間と同じように,生まれて,生きて,変化して,時に滅びたり又生き残った りする。栄枯盛衰あり,下剋上もある。英語mayはどうだっただろうか?ドイ ツ語m6genのようにロマンチックな大飛躍はしなかったものの,これも又変化 したのである。may,Can,muSt三つ巴の彩なす競い合いの中でである。 現代英語では大体,mayは可能性・許可等,Canは能力・可儲性・許可等, mustは必要・義務・必然性等の意味で,しかも全て助動詞として次の例のよ うに使われている。(1)a.He may come
b.You may comein
(2)a.Can you swiml?
b..Can the news be true? (3)a,りWe must eat tolive‖
b.The news must be true。
古期英語においては,maganは上に2において述べた通り能力・可■能性で使 われていた。それでは現代英語のmayの仕事はどうやっていたかというと,そ れは次の例のようにmotan(現代英語のmustになったもの)がしていたのであ る。
(1)Of aelcum treowe aisesorcerdesau望坦堕etanGenⅠⅠ−16
(Ofeachtree ofthis orchard thou mayesteatl)
ingehydes godes r yfeles ne et 6u;GenⅠIN17(of the tree of the
knowledge ofgood and evilthoushallnot eat;)の「特別な木からはいけな
い」のである。そして現代英語のmustの役目はsculan(be obliged to)がして
いた。
そしてCunnarl(現代英語canの元)は何をしていたかというと,次例のよう に‘know’乃至‘know how to’の役目をしていたのである。
(2)a.NuAdam望些yfel「god,SWaSWaureSum,Gen・III−22
(Now Adam knows eviland good,just as one of us,)
b.Pa cwoe8he:迦ge Laban,…?Hicw2edon p(et hihyne
CuaOnh G銑吼XXIX_5
(Then said he:Doyou know Laban/?Theysaid that theyknew
bim..)
(3)pahe axode hwzet h.y望望週英Sii2i2P;hiandswarodonlCWaedon:
We synd scephyrdas,8ine peowas,…Gen.XLVII−3
(Then he asked what theyknew how to make:they answered and
said:We are shepherds,thine servants,…‥)
こうしてmaganは主にcanの意味で,mOtanは主にmayの,そして
cunnanは主にknowの意味で使われていたものが,段々と時の移り変わりに
従って今では現在のmay,Can,muStの意味になってしまっているのである, mayの「力」も殆んど消え失せてしまって。 6” Sie[ieben t6fu 時々この世の中は人が入れ替わる。外国人教師は殊にそうである。Volkmar さんはかなり永い間居たが,又その代わりにVothさんが来た。彼は言語学者だ ということで誇済も聞いたし,又インフォーマソトとしてのアンケートに訪ね たりもした10)。その折Siem6gent6fu。の話をしてSieliebent5fu。はいけないの かも尋ねてみたら,又々驚いた。Sieliebent6fuでよいとのことだった。こう 注10)拙論1987d「coMP→±WH設定への根拠について」香川大学教育学部『研究報 告』第Ⅰ部第71号関係。ヒト なると「他人の言うことは信じられん。」とかいうことはよくあることだとい
うことになる。「人間の言語文化」として色々と特別にでき上がっている「言い 方」もあるが,それはそれ,ただ言語的にというか「実直」にと言うか,何もで き上がっていない,そのままの言葉もある筈である。(特に外国語教育の面で は戦前的偶像崇拝主義と戦後の自由奔放さの差に.は著しいものがある。)その 他お茶,お撃等々も私は無手勝の自己流で,プロを恐れず崇めずで,楽しむ性 癖があるようだ。 引 用 文 献 1.BibliotecadeAutoresCristianos(ed)1982Bi’bliaSacrai’uTtaVulgatamClementiamu MateoInurria,Madrid
2.Crawford,S.J,(ed.)1922The OldEnglish Vers・ion ofThe Heptateuck
OUP
3.Goethe,.IいW.Dib Leiden desJungen Werthers.Naito,W(ubersetzt u小erlautert)1959,Shinseido
4.岩崎英二郎1963.『ドイツ語会話Ⅲ』白水社
5.相良守峯編197514.『木村・相良独和辞典』博友社
参 照 文 献
1.千種虞−・1989。『ゴート語の聖書』大学書林
2。Dudenverlag1963DUDEN Das・Herkunftw∂rterbuch.Die Etymologie
derdeutschenSprache小Wienusw
3..Gordon,EⅤ。(rev‖by A R Taylor,197411)AnIntroduc・tion to Old
NorseClarendon
4.菅沼 惇1989d「coMP→±WH設定への根拠について」香川大学教育
学部『研究報告』第Ⅰ部第71号.