JSM Mycotoxins is issued twice a year, one volume a year, by the Japanese Society of
Mycotoxicology and the purpose of the journal is to publish results and technical
information regarding mycotoxins. JSM Mycotoxins publishes Reviews, original results
(Research Papers, Technical Notes, Notes, and Letters), Proceedings of special lectures,
symposia, and workshops of the meeting of Japanese Society of Mycotoxicology
www.jstage.jst.go.jp/browse/myco
Japanese Society of Mycotoxicology
(http://www.jsmyco.org/MYCONTENTS/Eng/index_eng.html)
O O O OMe H H O O O OH N H COOH O O O Cl OHAn overview of toxicity of trichothecene
mycotoxins, T-2 toxin and deoxynivalenol:
Involvements of their oxidative stress and
apoptosis effects
Hirokazu Tsubone, Masakazu Hanafusa
JSM Mycotoxins
, 66(2):129-143 (2016)
レビュー
www.jstage.jst.go.jp/browse/myco/-char/ja/トリコテセン系カビ毒(
T-2
トキシンおよびデオキシニバレノー
ル)の毒性評価:酸化ストレス・アポトーシスの役割
局
博一
1
,花房
真和
1
1東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター 生体影響評価研究室 (〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1) 要旨 トリコテセン系カビ毒の毒性をT-2トキシンおよびDONを中心にして 述べた.これらのトキシンは急性影響および慢性影響として,生体の形 態や機能に対して広範囲の毒性をもたらす.in vitro
,in vivo
の多くの実 験系で濃度・用量依存性の細胞障害や臓器障害が報告されている.アポ トーシスが広範囲の器官,細胞系列において観察されており,細胞障害 における酸化ストレスの役割が注目されている.近年,トリコテセン系 カビ毒によるアポトーシスの発現メカニズムや酸化ストレス障害が詳 しく調べられている.アポトーシスを起こす機序として,リボソーム− MAPK(JNK/p38),DNA損傷,デスリセプター/カスパーゼ-8の各経路 を介する経路が考えられている.1.
毒性の全身影響(概観) トリコテセン系カビ毒は100
種類以上存在すると される.代表的なトリコテセン系カビ毒として,T-2
トキシン,HT-2
トキシン,シルペントリオール,4,
15-
ジアセトキシシルペノール(DAS
),ジアセトキ シスカーペノール,デオキシニバレノール(DON
), ニバレノール(NIV
),アセチルデオキシニバレノー ルなどが知られている1).また大環状トリコテセン として,サトラトキシンG
,バッカリンなどが知ら れている2).これらのカビ毒のうち,毒性が明瞭で 曝 露 リ ス ク が 高 いT-2
ト キ シ ン,HT-2
ト キ シ ン,DON
およびNIV
については,国内で流通している 主要な食品目の汚染実態調査が継続的に実施され ている3),4). 高濃度のトリコテセン系カビ毒に曝露された動 物は急性影響として下痢,嘔吐,白血球増加,出血 を引き起こす5),6).慢性曝露影響では食欲低下,体 重減少,栄養効率の低下,神経内分泌系変化,免疫 系変化6),7)をもたらす.マウスにおけるT-2
トキシン のLD50
(mg/kg
)は10.5
(経口投与),5.2
(腹腔内 投与),2.1
(皮下投与),4.2
(静脈内投与)とされる5). 多くのカビ毒はその一定量の摂取によって食欲 低下と体重減少を起こす6),7).ブタはDON
に対して マウス,家禽,反芻動物よりも感受性が高いと言わ れる7).T-2
トキシンを15 µg/kg
あるいは83 µg/kg
の 濃度で含有する餌を18
日間与えられたブタにおけ る増体率は15 µg/kg
では対照群に比べて影響がみら れなかったが,83 µg/kg
では有意な増体率の低下 (対照群に比べて約70.9%
)が生じるという報告が ある8). カビ毒を摂取した動物では,中枢神経,肝臓,造血 組織,消化器,循環器など全身の様々な臓器組織に おいて酸化ストレスが関与すると思われる障害(傷 害)が観察されている.著者らはT-2
トキシン(0.02
,0.1
,0.5 mg/kg
)をラットに皮下投与後,48
時間後 における血清の活性酸素(d-ROMs
)および血清抗 酸化能(BAP
)を測定したところ,用量依存性に活 性酸素が有意に増加することを明らかにしている (図1
).このことから,T-2
トキシンを投与された動 物では全身レベルで酸化ストレス状態が高まるこ とが示唆される.なお,投与後48
時間では血清抗酸 化能(BAP
)の増加が見られていないが,投与直後 の1
時間ではBAP
の増加が0.5 mg/kg
の濃度で観察 されている(未発表データ).T-2
トキシンおよびDON
は動物の体内で速やかに 代謝されることが知られている.イヌを用いた実験 キーワード アポトーシス;酸化ストレス; 毒性;トリコテセンカビ毒 連絡先 局 博一,東京大学大学院農学生命 科学研究科附属食の安全研究セン ター 生体影響評価研究室, 〒113-8657 東京都文京区弥生 1-1-1 電子メール:aahiro@mail.ecc.u-tokyo. ac.jp (2016年6月8日受付, 2016年6月29日受理)図1 T-2トキシン投与後48時間における血清の活性酸素(d-ROMs)および抗酸化能(BAP)の変化
d-ROMsはderivatives of reactive oxygen metabolites,BAPはbiological antioxidant potentialを表す.T-2トキシ ン0.02 mg/kg,0.1 mg/kg,0.5 mg/kgをWistarラット(雄)に皮下投与した.controlは溶媒のみを投与. データは平均値±標準偏差(n=5)で示す.*: P < 0.05 v.s. control,**P < 0.01 v.s. control(Dunnett’s test)
では,静脈内に
0.4 mg/kg
の用量で投与されたT-2
ト キシンの多くはHT-2
トキシンに代謝され(fm
;薬 物代謝割合(fraction metabolized
)=
約83.6%
),血 液のT-2
トキシンとHT-2
トキシンの半減期はそれぞ れ約5.3
分,19.6
分とされる9).ニワトリの静脈内にT-2
トキシン0.5 mg/kg
を投与した実験では,T-2
ト キシンの半減期は約17.3
分,HT-2
トキシンの半減期 は33.6
分であった10).またT-2
トキシン2.0 mg/kg
を12
時間おきに経口投与したときのT-2
トキシンの半 減期は約23.4
分であり,定量限界を超えるHT-2
トキ シンは検出されなかった10).DON
については,マウス(雌,B6C3F1
)にDON
を5 mg/kg b.w.
の用量で単回経口投与した場合,投 与後15
∼30
分で血漿,脾臓,肝臓,肺,腎臓の濃度 が最高になり,120
分以内に75
∼95%
の減少が生じ るとされる11).4.2 mg/kg
(餌)の濃度でDON
が含 まれる餌を経口投与されたブタでは血清DON
濃度 が4.1
時間で最高になり,吸収されたDON
は5.8
時間 で排出される11). 仔豚に250 µg/kg
あるいは750 µg/kg
の用量でDON
を静脈内に投与後30
分における臓器組織内,体液中 のDON
濃度は腎臓,腸間膜リンパ節,筋肉,胃,脾臓 で高く,腸管,胆汁,肝臓,血漿にも認められたが, 脳各部位,舌,軟口蓋,扁桃,咽頭粘膜,胸腺,甲状 腺,食道,副腎では検出限界以下であったと報告さ れている12).著者らが行ったDON
(0.1
∼2 mg/kg
) のラットへの皮下投与後の血中DON
濃度の動態に 関する実験では,測定を行った30
分,60
分,120
分,180
分の間では,投与後30
分で血清濃度がピークを 示し,180
分ではほとんど消失する濃度レベルにま 0 100 200 300 400 500d-ROMs
䠆 䠆䠆(U.CARR)
0 1000 2000 3000 4000BAP
(μmol/L)で減少することが示されている(図
2
).T-2
トキシンやDON
の体内代謝は急速であるが, 細胞,組織,臓器の病理学的変化や機能的変化はト キシンの投与後数時間を経て明瞭になり数日間以 上にわたって生じることが多い.T-2
トキシンやDON
の細胞構成成分への直接作用のほか,遺伝子発 現の修飾,酵素機能への影響を通じて蛋白合成阻害 やアポトーシスが誘導されるため,これらのトキシ ンの急性影響はトキシンが体内から消失した後で も一定期間にわたって進行するものと思われる.2.
血液および造血器系影響T-2
トキシンやDON
を摂取した動物では血液中の 赤血球,白血球,血小板の減少が生じる.この原因 としては,これらのカビ毒が循環血液中の血球に直 接作用して破壊することと,骨髄における血球前駆 細胞から成熟細胞への産生阻害の2
つの要因が存在 する13).骨髄では多能性幹細胞などの不全による再 生不良貧血が生じる13).骨髄のような細胞分化,再 生が盛んな組織ではカビ毒の影響を受けやすいと 考えられる.10 ppm
のレベルでT-2
トキシンを含む低蛋白餌 (蛋白量6%
)を与えられたマウスの赤血球新生は2
週間以内に阻害され,赤血球数は6
週までに36%
に まで減少するが,8
週になると45%
まで回復する.蛋 白量が16%
の餌やバランスの良い天然成分を含む 餌ではこのような貧血性変化がみられないことか ら,T-2
トキシンの赤血球新生の抑制効果は一過性 であり,餌の内容によっても影響を受けることが報 告されている13),14). 高用量(10 mg/kg
)のT-2
トキシンを単回経口投 与されたマウスの血液では,投与後の最初の観察時 間である6
時間ですでに顕著な白血球数減少,24
時 間以降には血小板数の減少が観察されている15).白 血球の減少の大部分はリンパ球である.造血組織で ある骨髄においては骨髄球の著明な減少が投与後6
時間で認められ,骨髄球のうち幼若顆粒細胞,赤 芽球およびリンパ球で減少が明瞭であり,成熟顆粒 細胞では有意な変化は観察されなかった15).骨髄に おけるTUNEL
陽性細胞(アポトーシス細胞)の増 加およびPCNA
陽性細胞の減少が,投与後6
時間で 観察されている15).これらの造血機能の変化はT-2
トキシンの投与による貧血や免疫機能低下の発現 の基本的な原因になっていると思われる.DNA
合成および蛋白合成の抑制が脾臓,胸腺およ び骨髄で認められる16).T-2
トキシンのin vivo
毒性 試験では,白血球の減少がブタでは0.03 mg/kg b.w.
の3
週間経口摂取で生じ13),17),18),サルでは0.1 mg/
kg b.w.
の15
日間摂取で生じている13),19).JECFA
(2001
)では上記のブタの実験結果に基づいてT-2
ト キシンの暫定耐容一日摂取量(PMTDI
)を0.06 µg/
kg/day
に設定している20),21).in vitro
実験観察で は,T-2
トキシンによるヒト血球毒性は10
-7M
よりも 低いレベルで現れる(NOAEL=10
-10M
)13).DON
の造血器影響はT-2
トキシンよりも弱いことが述べ られている13). 図2 デオキシニバレノール(DON)の⾎中濃度の推移 DONを0.1 mg/kg,0.5 mg/kg,1 mg/kg,2 mg/kgの量で成熟ラット(Wistar,雄)に皮下投与した際の 投与前,投与後の血清濃度の継時的変化を示す.データは各投与量につき4匹のラットの平均値で示す. 0 200 400 600 800 1000 before 30 60 120 180 (ng/mL)Serum
concentration
of
DON
2 mg/kg 1 mg/kg 0.5 mg/kg 0.1 mg/kgTime after administration
T-2
トキシンは血液凝固系に作用することが報告 されている22).ウサギにT-2
トキシン(0.5 mg/kg
) を耳静脈投与した後6
時間で,凝固因子VII
,VIII
,IX
,X
およびXI
が約40%
減少した.しかしながら,48
時間以降は増加を示している.血小板数の変化は96
時間まで認められず,ビタミンK
の補給による各 凝固因子への効果は観察されなかった.プロトロン ビン時間は投与後54
時間以降までは影響がみられ ず,54
時間以降は短縮する結果が得られている.T-2
トキシンによる急性影響では,皮下や消化管などに 出血がみられることがあるが,上記の凝固因子への 影響が要因になっているものと思われる.3.
消化器系影響 消化管内に取り込まれたトリコテセン系カビ毒 の多くは消化管内の微生物の働きによって脱エポ キシ化などの化学的な修飾を受け弱毒化するが,カ ビ毒が直接作用する消化管粘膜には炎症性変化(充 血,出血,潰瘍)が生じる.DON
やT-2
トキシンは 消化管における膜透過性,膜輸送,サイトカイン産 生,IgA
産生,粘液分泌,マクロファージの貪食性 に影響を与える23),24). 消化管の細胞レベルおよび臓器レベルの実験系 におけるDON
の作用が明らかになっている.新生 仔 ブ タ の 空 腸 上 皮 細 胞 に 由 来 す る 培 養 細 胞 系 (IPEC-J2
)を用いたin vitro
実験と5
週齢ブタの回 腸ループを用いたin vivo
実験でDON
の作用効果が 調べられている25).細胞培養開始後24
時間の新し い細胞層にDON
(0.01
∼10 µg/mL
)を作用させる と,DON
濃度が0.25 µg/mL
といった低濃度から細 胞の有意な生存性低下が生じたが,21
日間培養を行 い分化が進行した細胞ではDON
濃度10 µg/mL
でも 細胞の生存性に有意な低下は認められなかった.ま た,これらの培養細胞にサルモネラ菌(Salmonella
Typhimurium
)を作用させたときの菌の細胞内へ の侵入数は培養24
時間の細胞ではDON
濃度0.1µg/
mL
で,21
日間培養の細胞では0.75µg/mL
で有意な 侵入菌数の増加がみられた.一方,回腸ループを用 いた実験では,回腸内に①DON
(1µg/mL
)のみ, ②サルモネラ菌(4×10
8CFU/mL
)のみ,③DON
(1µg/mL
)+サルモネラ菌(4×10
8CFU/mL
)を注 入し,回腸組織における炎症性サイトカインおよび ケモカインのmRNA
の発現量を無処置の回腸ルー プ組織と比較した.上記③の結果では,炎症性サイ トカインのうち,IL-1
β,IL-6
,IL-12
,TNF
α,IFN
γ およびケモカインのIL-8
,MCP-1
の発現はDON
単 独あるいはサルモネラ菌単独に比べて有意に増加 することが示された.サルモネラ菌単独作用でもこ れらのサイトカインやケモカインの増加が生じる がDON
が共存することによって,それらの増加の程 度が数倍上昇している.これらの実験結果から,DON
は消化管における病原性微生物の侵入を容易 にし,腸管炎症を招きやすくする性質があることが 示唆される.15 µg/kg
あるいは83 µg/kg
といった低濃度のT-2
ト キシンを含む餌で18
日間飼育したブタにSalmonella
Typhimurium
を経口接種して,5
日後の腸管におけ るサルモネラ菌の増殖度を調べた実験では,腸管内 におけるサルモネラ菌数は対照群に比べてT-2
トキ シン群で減少する傾向があり,盲腸では有意な減少 が示されている8).一方,ブタ由来の一次肺胞マク ロファージおよび腸上皮細胞を用いたin vitro
の実 験では,いずれの細胞においてもT-2
トキシンの作 用によって細胞の生存性は低下した.肺胞マクロ ファージでは1 ng/mL
で,未分化腸上皮細胞では2.5
ng/mL
,分化した腸上皮細胞では15 ng/mL
で有意 な細胞生存性の減少が示されている8).in vivo
実験 では,前述したように低濃度のT-2
トキシン混餌摂 取によって腸管内のサルモネラ菌数は減少する傾 向があるが,腸管上皮細胞を用いたin vitro
の実験 では,Salmonella Typhimurium
の細胞侵入性増大 がT-2
トキシン濃度2.5 ng/mL
以上から観察されて いる8).低濃度域では腸管内では様々な感染防御機 構や弱毒機構の働きが,トキシンの毒性を上回る可 能性が考えられる.4.
免疫系影響 高濃度トリコテセンは骨髄,リンパ節,脾臓,胸 腺,消化器粘膜など活発に細胞分裂を行っている組 織 に 強 い 傷 害 を も た ら す こ と で 免 疫 抑 制 を 起 こ す5).循環白血球の減少,リステリア菌やサルモネ ラ菌に対する抵抗性の減弱,抗原に対する抗体反応 の減弱をもたらす6).一方,低濃度トリコテセン曝 露の場合は逆にある種の病原体に対する抵抗性を 高め,血清IgA
レベルを上昇させ,様々な免疫関連 遺伝子の急速かつ一過性のアップレギュレーショ ンを起こすことも知られている6).免疫システムの 中心である白血球(マクロファージ,B
細胞,T
細 胞)はトリコテセンの影響を受けやすい.げっ歯類 およびヒトのリンパ球におけるトリコテセンの抑 制的影響は大環状トリコテセン>Type A
トリコテ セン>Type B
トリコテセンの順に高いと言われる.T-2
トキシンやDON
に曝露された動物ではB
細胞 やT
細胞の濃度依存性の減少または増加が認められ る6).低用量のトリコテセンは炎症前駆物質,Th1
・Th2
サイトカイン,COX2
,誘導型NO
合成酵素に関連した遺伝子発現をアップレギュレートする.した がってトリコテセンの白血球(免疫)影響は低用量 域では促進的であり,用量が増すにしたがって白血 球のアポトーシスとそれによる免疫抑制がもたら される6).
DON
は細胞内のリボソームに結合することでMAPK
(mitogen-activated protein kinase
)を活性 化し,結果的に蛋白合成阻害,免疫変化,アポトーシ スの発現に関与する6),26).すなわち,トリコテセン系 カビ毒で誘発されるアポトーシスや炎症性変化を 起こす遺伝子発現には“ribotoxic stress response”
が引き金となって生じると考えられている.
DON
を 実験動物に投与するとリンパ組織では投与後の早 期(1
∼2
時間)と移行期(4
∼8
時間)に前炎症性サイ トカインのmRNA
発現が誘導されることが知られ ているが,その上流域における作用メカニズムがマ ウスを用いたin vivo
の実験系で研究されている27). この研究ではマウスの脾臓においてMAPK
のJNK
とp38
のリン酸化がDON 1 mg/kg
以上(∼100 mg/
kg
)の単回経口投与後15
分(JNK
,ERK
)あるい は15
∼30
分(p38
)をピークとして生じることを明 らかにしている.このようなMAPK
活性化はTNF-
α,IL-1
β,IL-6
といった前炎症性サイトカインmRNA
の増加(早期1
∼3
時間,ピーク2
∼4
時間)に先行して生じている27).リボゾームと
MAP
キナーゼの間の中間経路には
PKR
(double-stranded
RNA-dependent protein kinase
)とHck
(Src
ファミリー チロシンキナーゼ)が関与する可能性が示唆されて いる6),26),28). 免疫機能を担っている細胞を用いたin vitro
実験 が多くなされている26),29),30).最近のRAW264
(マ ウスマクロファージ由来)およびTHP-1
(ヒト単球 由来)を用いた研究では,iNOS
発現に関与するLPS
(10 ng/mL
)への6
時間作用下で刺激されたNF-κB
レポーター活性はDON
によって濃度依存性に明瞭 な減少(62.5 ng/mL
で有意差)を示し,同様にTLR2
のリガンドであるPAM3CSK4
で刺激されたNF-κB
レポーター活性もDON
によって濃度依存性に減少 (125 ng/mL
で有意差)することが示されている30). また,THP-1
を用いた実験では,LPS
(100 ng/mL
) で刺激されたNF-κB
レポーター活性をDON
,NIV
,T-2
トキシン,HT-2
トキシンの4
種類のトリコテセン 系カビ毒の間で比較している.いずれのカビ毒にお いてもNF-κB
レポーター活性は濃度依存性に抑制 されることが示されている.NF-κB
レポーター活性 がおよそ40
∼50%
に低下する濃度は,DON
とNIV
で125 ng/mL
,T-2
トキシンで10 ng/mL
,HT-2
トキ シンで4 ng/mL
である.HT-2
トキシンは1 ng/mL
に おいても明らかなNF-κB
レポーター活性の抑制を 生じている30).これらの実験結果は,DON
やT-2
ト キシンなどのトリコテセン系カビ毒は免疫系細胞 に作用してiNOS
,IFN-
βといった炎症性シグナル 伝達や感染防御に関わるシグナル伝達を低濃度レ ベルから抑制する性質があることを示唆する.5.
中枢神経系影響T-2
トキシンを含む混餌を妊娠期の母マウスに摂 取させると,胎仔あるいは分娩後の仔マウスの脳の 神経細胞の一部にアポトーシスが生じることが明 らかになっている31),32),33),34),35),36).T-2
トキシン2 mg/kg b.w.
を妊娠期のマウスに経口投与して妊娠8.5
日から16.5
日で胎仔の中枢神経毒性を調べた研 究では,妊娠13.5
日で脳室周囲に膨潤あるいは核崩 壊を起こした神経細胞(アポトーシス細胞)が観察 されている32).T-2
トキシンやDON
は脂質親和性が あり,胎盤と胎仔の血液脳関門を通過して中枢神経 細胞に作用することが考えられる.T-2
トキシンは60s
リボソームサブユニットのペ プチジルトランスフェラーゼ(peptidyltransferase
) サイトに結合し,それを抑制することでJNK/p38
MAPKs
の活性化(ribotoxic stress response
)を起 こし,結果的に蛋白合成抑制やアポトーシスをもた らすことが示唆されている33),37).T-2
トキシンを投 与された胎仔脳では脂質代謝関連酵素遺伝子発現 が抑制されるとともに酸化ストレスマーカーであ るHO
(heme oxygenase
)-1
が上昇(12
時間)する.T-2
トキシンの投与後12
時間でMEKK1
遺伝子発 現の上昇,24
時間でc-jun
遺伝子発現の上昇が生じ る38).このような結果から胎児脳におけるアポトー シス発現にはMAPK-JNK-c-jun
経路が働く可能性 が示唆されている33),38). 中枢神経系毒性は誕生後の仔マウスにおいても 一定期間認められることがT-2
トキシンの発達期曝 露影響評価によって明らかになっている34),35),36). これらの研究では妊娠マウスの妊娠6
日目から分娩 後21
日目まで0
,1
,3
,9 mg/kg
のT-2
トキシンを含 む混餌を母マウスに投与(経胎盤・経乳曝露)して いる.母マウスでは1 mg/kg
以上で胸腺重量(絶対・ 相対重量)の低値が示され,仔マウスでは出生後21
日目(離乳時)で3 mg/kg
より胸腺のリンパ球ア ポトーシスの増加と胸腺重量の低値(雄)が認めら れた.また離乳時の仔マウスでは海馬顆粒細胞層下 帯においてアポトーシスの増加が3 mg/kg
より認め ら れ た.海 馬 歯 状 回 で は ア ポ ト ー シ ス に 加 え て ニューロン新生が抑制されることが明らかになっ ている.ニューロン新生が盛んな海馬顆粒細胞層下帯では,
type-2
前駆細胞を標的としたニューロン新 生が抑制され,9 mg/kg
ではtype-2
前駆細胞に加え てtype-1
幹細胞が減少しており,酸化ストレス上 昇,幹細胞因子の減少,グルタミン作動性入力及び コリン作動性入力の減少といった複数の機序によ り,これらの分化段階が異なる顆粒細胞におけるア ポトーシスが誘導されたと考えられている34),35). フザリウム属の菌が産生するカビ毒による中枢 神経毒性作用はフモニシンB1
によっても生じるこ とがよく知られている.フモニシンB1
においても神 経細胞に酸化ストレスをもたらすことが知られて いる39).6.
循環器系影響 トリコテセン系カビ毒による循環器影響は他の 臓器影響に比べて注目されていないが,1980
年代よ りT-2
トキシンが実験動物の心血管系において機能 的,形態的変化をもたらすことが報告されている. ラットの摘出心へのT-2
トキシンの作用によって心 臓の収縮性の変化,心電図変化に加えて心筋組織の 変化が生じる40).形態的変化では,致死量に相当す る2-3 mg/kg
の腹腔内投与を受けたラットの心臓で は斑状出血,顕著な浮腫と単核球の浸潤,壁内冠血 管の腫大と細胞肥大が認められた.0.3 -0.5 mg/kg
のT-2
トキシンの5
∼10
日間反復投与後,1
∼2
ヶ月目 では主に心内膜下の細胞浸潤や繊維化がみられ,電 子顕微鏡所見では,巨核を有す非特異的細胞肥大, ミトコンドリアの集簇,過収縮を示す筋繊維などの 異常が,また小血管においても平滑筋組織の増殖性 変化などが観察されている40).T-2
トキシンによる心血管系の機能的変化では,0.5-2 mg/kg
のラットへの静脈内投与によって6
∼8
時間にわたって持続する血圧上昇と不整脈が出現 する41)こと,同様に1-2 mg/kg
のT-2
トキシンの皮下 投与によって血圧と収縮期左室内圧が上昇する42) ことが報告されている. ラットの自由行動下で心電図を連続記録した実 験では,T-2
トキシン0.1 mg/kg
および0.5 mg/kg
の 皮下投与後,約8
時間後から洞性徐脈,第2
度房室ブ ロックや心室期外収縮などの不整脈が頻繁に出現 するようになり,少なくとも3
日間は持続すること がわかっている43).このような不整脈はDON
では0.5-2.0 mg/kg
の皮下投与で投与後10
∼20
時間で生 じる44).上記のT-2
トキシンおよびDON
による心電 図変化に並行してQRS
持続時間の延長(T-2
トキシ ン),PR
間隔とQT
間隔のそれぞれの延長(DON
)が 観察されている.T-2
トキシンの実験では,心室期 外収縮を除くこれらの多くの心電図変化は自律神 経遮断薬によって消失することから,自律神経系機 能の変化が大きく関与しているものと考えられて いる.しかしながら心室頻拍や孤発性の心室期外収 縮は自律神経遮断薬の投与によっても減少しない ことから,これらの不整脈の発現はトキシンの心筋 への直接作用による効果が反映されている可能性 が高い.一方,in vitro
の実験では,新生仔ラット由 来の培養心筋細胞を用いて心筋の電気的興奮性を 調べた実験45)では,DON
(50
∼200 mg/L
)の作用 によって活動電位持続時間(APD
)が延長すること や最大脱分極速度(Vmax
)の低下が示されている. 上記のYarom
らはT-2
トキシンをラット摘出心臓に 与えることによって用量依存性に心筋収縮力が低 下することを述べている.このような実験結果は,DON
などのトリコテセン系カビ毒は心筋への直接 作用によって心臓の正常な機能に対して阻害的な 影響を及ぼすことを示唆する.7.
酸化ストレス・アポトーシス作用T-2
トキシンやDON
の作用によって造血組織,中 枢神経細胞および各種培養細胞において酸化スト レスが関与するアポトーシスあるいはDNA
傷害が 生じることが明らかになっている33),46),47),48),49), 50),51),52).Hela
細胞にT-2
トキシン(10 ng/ml
)を作用させ た実験では,作用後30
分でROS
産生の増加とそれに 続く脂質過酸化増大,2
時間でDNA
傷害が生じるこ とが報告されている47).細胞はアポトーシス像を示 し,ミトコンドリア経路のアポトーシスに関連するBax
,Bcl-2
,チトクロームc
の増加に次いでカスパー ゼ-9, -3, -7
の活性化が生じ,カスパーゼ依存性AIF
経路の関与も認められている47). 細 胞 の ア ポ ト ー シ ス に は 主 に デ ス リ セ プ タ ー (FAS, TNF receptor
)を介する経路とMAPK
ファ ミリーを介する経路があることが知られている.前 者はカスパーゼ-8
活性化→カスパーゼ-3
活性化に よるミトコンドリア障害を経由しないアポトーシ スと,カスパーゼ-8
活性化→ミトコンドリア阻害作 用(チトクロームC
放出)→カスパーゼ-9
活性化の 経路によるアポトーシスとがあると考えられてい る47),53),54).一方,MAPK
ファミリー(ERK, JNK,
p38
)のうち,JNK
(c-jun
アミノ末端キナーゼ)とp38
を介した経路によりアポトーシスが誘導される ことも示唆されている55),56),57).T-2
ト キ シ ン は 細 胞 内 で は リ ボ ソ ー ム のpeptidyltransferase
に 結 合 し てribotoxic stress
response
を起こすことによって,JNK/p38 MAPK
ヒト
T
型リンパ球培養系を用いた実験において,カ ス パ ー ゼ-3
活 性 化 作 用 お よ びJNK
活 性 化 作 用 を 各種トリコテセン系カビ毒の間で比較した成績で は,両 者 の 活 性 化 作 用 は,シ ル ペ ン ト リ オ ー ル (scirpentriol
)>ニバレノール(nivalenol
)>アセ チルデオキシニバレノール(acetyldeoxynivalenol
)>HT-2
トキシン>T-2
トキシンの順に高くなってい る37)(トキシンの種類は著者が主なものを抜粋).T-2
トキシンおよびDON
によるカスパーゼ-3
の増加 はアポトーシスに関連して多くの実験で認められ ている52),54),58),59),60).なお,T-2
トキシンのラット 皮膚への作用ではTNF-
αmRNA
の発現が作用後3
時 間で増加することから,皮膚細胞のアポートシス にTNF receptor
を介する機序の関与が推測されて いる62). ラット胎児脳では,T-2
トキシン2 mg/kg
の投与後12
∼24
時間で酸化ストレス関連遺伝子(HO-1
)の 増加,MEKK1
発現遺伝子の増加,ミトコンドリア 関連遺伝子(NADH-dehydrogenase
,チトクロー ムオキシダーゼ)発現の抑制がみられることから, 酸化ストレスによりMAPK-JNK-c-jun
経路を介し たアポトーシスが生じることが示唆されている38). なお,ラット胎児脳ではカスパーゼ-3, -8, -9
の遺伝 子発現変化は認められなかったが,TIMP-3
遺伝子 発現の増加が12
時間後に,カスパーゼ-2
の増加が24
時間後に観察されたことから,胎児脳におけるア ポトーシスにはTNF
リセプター経路が関与する可 能性も示唆されている38).DON
やT-2
トキシンの細胞作用によってROS
が 増加する知見は多くの研究で示されており33),50), 51),63),作用後1
時間以内といった早い段階からROS
の増加が観察されている51),63).ヒトの採血で得ら れたリンパ球にDON
を作用させたin vitro
研究で は,6.25 ng/mL
の濃度ですでに6
時間後には核崩壊 (小核)を伴ったDNA
傷害とともに,酸化ストレス を示す過酸化脂質(MDA
反応)の有意な増加,抗 酸化能に関与する還元型グルタチオン(GSH
)の減 少と酸化型グルタチオン(GSSG
)の増加が観察さ れている50).GSH
の減少はT-2
トキシンにおいてもHela
細胞などへの作用後4
時間でみられ,MDA
の増 加も8
時間で観察されている48). 細胞内における酸化ストレス制御因子として,ASK
ファミリーが関与する可能性が考えられてい る.
MAPK
カ ス ケ ー ド(MAP3K
→MAP2K
→MAPK
)の最上流であるMAP3K
はASK
(apoptosis
signal-regulating kinase
)ファミリーと呼ばれる ストレス応答分子から構成され,そのうちASK1
は 酸化ストレスセンサーのような役割を担っている と考えられている64).T-2
トキシンやDON
がこのよ うな細胞内ストレス感受性サイトに作用する可能 性もあると思われる.培養細胞(
Hela
細胞,Bel-7402
細胞,Chang
肝 細胞)を用いたin vitro
実験では,カスパーゼ-3
の増 加,GSH
の増加,MDA
の増加が認められたことか ら,T-2
トキシンは酸化ストレスをもたらし,アポ トーシスを誘導することが報告されている48).カス パーゼ-8
およびカスパーゼ-9
の活性も上昇すること から,上記のin vitro
実験で観察されたアポトーシス はおそらくミトコンドリア作用によるものと考え られている.一方,抗酸化防御遺伝子を制御するJunD
を過剰発現させた細胞ではT-2
トキシンによ る細胞生存率が高くなることが報告されている48). 遺伝子発現解析による実験では,酸化ストレス関連 遺伝子の発現上昇と同時に抗酸化作用やアポトー シスに対して保護的に働くSOD
,カタラーゼ,グル タチオンリダクターゼ,グルタチオンペルオキシ ダーゼ(GPx
),VEGF
遺伝子発現の増加がマウス脳 やラット胎児脳で見られている38),65).PC 12
培養 細胞を用いたDON
の作用効果に関するin vitro
研究 では,DON
は低濃度域(125
∼1000 ng/mL
)では ミトコンドリア傷害を伴うアポトーシス細胞が濃 度依存性に増加するが,高濃度(2000 ng/mL
)で はアポトーシスの割合が減少し,アポトーシスによ らない細胞死(LDH
の増加を伴う)が増加すること が報告されている66).8.
ミトコンドリア影響 著者らは高感度分析装置を用いて,ラット新生仔 由来の一次培養心筋細胞の酸素消費速度(OCR
)に 及 ぼ すT-2
ト キ シ ン お よ びDON
の 作 用 を 観 察 し た67).その結果,T-2
トキシンでは6×10
-5µM
以上の 濃度で,DON
では0.78 µM
以上の濃度で24
時間作用 後に測定したOCR
(pMoles/min
)が有意に減少す ることが明らかになった.また,電子伝達系を抑制 するオリゴマイシン(ATP
合成酵素阻害薬)や逆に 電子伝達系を活性化するFCCP
に対する反応性もT-2
トキシンでは6×10
-5µM
以上,DON
では0.78µM
あ るいは3.13 µM
の濃度で低下することが示された. さらに,上記のOCR
の減少は,抗酸化剤であるカタ ラーゼあるいはアスコルビン酸を含む培養液での 共培養によって明瞭に抑制されることが明らかに なった67).これらの実験結果は,T-2
トキシンやDON
が細胞に直接作用した場合,何らかのメカニズ ムによってミトコンドリアの電子伝達系(好気的呼 吸)を低濃度レベルで抑制しうること,またその抑 制には酸化ストレスが関与していることが示唆される.この実験ではミトコンドリア起源アポトーシ スの原因となるチトクローム
c
の放出が生じている かどうかは不明であるが,細胞の呼吸代謝バランス (好気的/嫌気的代謝)が大きく影響を受けること で様々な機能障害が誘発される可能性があること を示唆する. ヒト結腸癌由来培養細胞(HCT116
)にDON
(100
µM
)を作用させた実験54)では,DON
によってミト コンドリアにおけるPTP
(permeability transition
pore
)の開存促進,ミトコンドリア内膜電位の減少, スーパーオキシドアニオンの生成とチトクロームc
のサイトゾルへの放出といったミトコンドリア依 存のアポトーシス経路が誘導され,同時にカスパー ゼ9
およびカスパーゼ3
の活性化が生じることが報 告されている.DON
によるPTP
の開存促進はカス パーゼ群の阻害剤(ZVAD
)によってほぼ完全に抑 制され,細胞核のアポトーシス変化は抗酸化剤(N-Acetyl Cysteine
)によって抑制される54).細胞か らミトコンドリアのみを分離してDON
の作用を調 べた実験では,ミトコンドリア膜の脱分極およびマ トリックスの腫大が生じなかったことから,DON
の ミトコンドリア作用は直接効果ではなく,遺伝子毒 性の結果とみられている54).PTP
はサイトゾルと ミトコンドリア・マトリックスとの間でH
+が出入 りする通路であるが,サイトゾル側からミトコンド リア・マトリックス側へのH
+移動が促進される形 でPTP
の 透 過 性 が 高 ま る 場 合 は,ATP
合 成 酵 素 (Complex V
)部位におけるミトコンドリア膜間ス ペースからマトリックス側への濃度勾配に依存し たH
+の移動が抑制され,結果的に電子伝達系の流れ が阻害される可能性も考えられる. 一方,PTP
の開存性が不整脈の誘発にどの程度 関与するかは不明であるが,心筋アポトーシス変化 などを通じて心室機能に影響することが考えられ る68).ROS
はミトコンドリア内膜陰イオンチャネル (IMAC
)の膜電位に影響を与えることが示唆されて いる.IMAC
の抑制は不整脈の発現を防ぐ作用があ ることから68),マイコトキシン作用下でROS
などに よりIMAC
が活性化する場合には,不整脈が誘導さ れやすくなる可能性も考えられる9.
その他の影響 1)家畜への影響 家畜・家禽においては,ヒトと同様に嘔吐,消化 器障害,免疫機能低下が生じるが,そのほか生産性 低下,増体率低下,造血器影響,催奇形作用(脚異 常)や皮膚影響などが生じる69),70).カビ毒の摂取 は直接的な臓器影響のほかに,感染症や他の疾患に 対する罹患感受性の増大が生じることが知られて いる24),70).1
ヶ月齢のブタにDON
(1 mg/kg
)を静脈内投与 して急性影響を観察した実験では,投与直後から投 与後3
時間にかけて,唾液分泌亢進,嘔吐,下痢な どの症状が観察されている71).投与後6
時間目およ び24
時間目の臓器所見では,脾臓,扁桃,リンパ節, 胸腺などのリンパ組織におけるアポトーシスの増 加がみられ(リンパ球のアポトーシスは24
時間>6
時間),肝臓ではクッパ―
細胞の活性化と,肝細胞 索から剥離したアポトーシス肝細胞などが投与後6
時間で強く認められている(6
時間>24
時間).ま た,脾臓,胸腺,腸間膜リンパ節で炎症性サイトカ インであるIL-6
,IL-1
βの有意な増加または増加傾 向が観察されている71). カビ毒による生殖細胞への影響も調べられてい る.ウシの大型卵胞から摘出した顆粒細胞を2
日間 培養後,FSH
とIGF1
を加えた培養液にDON
または α- zearalenol
を添加して,さらに2
日間培養した実 験では,0.33 µM
のDON
でエストラジオール産生の 減少,3.3 µM
のDON
ではさらにプロジェステロン 産生の減少と顆粒細胞数の減少が認められている. α- zearalenol
では,0.31 µM
でエストラジオール産 生の増加が観察された72).一方,ブタ卵母細胞に3 µM
のDON
を作用させた実験では,卵母細胞の成 熟抑制,染色体の配列変位,DNA
メチレーション増 加,アポトーシスの増加が認められている73). ラットの卵巣顆粒膜細胞にT-2
トキシンを24
時間 作用させた実験では,1 nM
の濃度から濃度依存性に 細胞生存性低下,抗酸化機能の指標であるSOD
,GSHPx
,カタラーゼのそれぞれの活性低下,およ びROS
の増加とアポトーシス細胞の増加が認めら れている74).これらの実験結果は,T-2
トキシンは 生殖細胞においても酸化ストレスによって細胞の 生存性や細胞保護機能に影響を及ぼすことを示唆 している. 一般的に,T-2
トキシン,DON
,アフラトキシンB1
,オクラトキシンA
,DAS
など多くのカビ毒では, それらのカビ毒の複合作用は相乗的ないし相加的 に現れることが知られている70).T-2
トキシンとDON
が共存する場合には,ブタの増体効果に関して 相乗的な抑制影響が生じる70). 2)自律神経機能影響 カビ毒の多くは病理組織学的変化のほかに,生理 的活動にも影響をもたらす.DON
(0.5-2.0 mg/kg
) およびT-2
トキシン(0.1-0.5 mg/kg
)のラットへの 皮下投与によって自律神経機能の変化が生じるこ とが心拍変動解析(HRV
)によって示されている.DON
の皮下投与後90
分をピークにLF
パワー(交感 神経+副交感神経),HF
パワー(副交感神経)のい ずれも用量依存性にパワー値の低下が観察される が,自律神経バランス(LF/HF
比)の観点では90
分 目にもっとも副交感神経>交感神経となる43),44).T-2
トキシンの投与では,0.5 mg/kg
でLF
パワー,HF
パワーの低下が認められている.トリコテセン 系カビ毒の摂取によって嘔吐を生じるヒトやブタ などの動物種では,自律神経機能の変化が生じてい る可能性が推測される.T-2
トキシン混餌(3
∼12
mg/kg
)を5
日間経口自由摂取したラットの実験で は,摂取期間中および摂取期間後の心拍数レベルお よび体温レベルの変化とそれらの指標の日周リズ ムの変化が4.5 mg/kg
以上の濃度で生じることが明 らかになっている4).このことから一定濃度のT-2
ト キシンやDON
は生体の形態学的変化のみならず生 理的な恒常性維持機構にも影響を及ぼすことを示 唆される.10.
まとめT-2
トキシンおよびDON
による毒性影響は全身の 広範囲の臓器,器官にわたって認められ,造血組織, 脳神経組織,肝臓などでアポトーシスが比較的早期 に現れることが明らかになっている.両トキシンに よるアポトーシスの発現機序の概要を図3
に示す. また,低濃度域のT-2
トキシンおよびDON
の作用効 果に関するin vivo
実験系およびin vitro
実験系を用 いた過去の主な研究結果のリストを表1
に示す.細 胞を対象にしたin vitro
実験では,低濃度レベルで影 響が現れている. 多くの研究において,細胞障害に酸化ストレスが 関与していることが両トキシンに共通して認めら れる.毒性影響はin vitro
の細胞レベルの実験とin
vivo
の生体レベルの実験とで異なる.免疫系に関し ては低濃度曝露の場合,in vitro
実験では概ね一貫し て抑制影響がみられるが,in vivo
では低濃度領域で 免疫系が刺激を受け活性化する場合がある.しかし ながら,高濃度域では免疫系の強い抑制が共通して 生じている. 図3 T-2トキシンおよびデオキシニバレノール(DON)によるアポトーシス発現の想定メカニズムBensassi, F. et al.(2012),Pestka J. J. et al.(2004,2008),Baltriukiene, D et al.(2007),Chaudhary, M. et al.(2010), Sehata, S. et al.(2004),Doi, K. and Uetsuka, K.(2011),Mishra, S.(2014),Wang, X. et al.(2016)を参考にして作成した.
DON
DNA damage
Caspases activation
Mitochondrial alterations
PTP opening
Bax cooperationCytochrome c release
Caspase-9 activation
Caspase-3 activation
DNA damage (DNA fragmentation)
Apoptosis
Superoxide anion ↑ Mitochondrial transmembrane potential ↓Caspase-8
Death receptor (FAS, TNFR)
Fetus brain
T-2 toxin
MAPK family
JNK
C-jun Oxidative stress䠄ROS䠅60s ribosome subunit
䠄peptidyltransferase䠅
ERK P38
ASK 䠄MAP3K family䠅 ASK1-Trx complex (oxidative stress sensor)
ASK1 activation + TRAF2/6 ASK1
Cellular
proliferation
Apoptosis↑(Caspase-3 activation )
Protein synthesis↓
Immune response changes
Ribotoxic stress
Bid/Bcl
AIF release
表1 比較的低濃度(⽤量)のT-2トキシン,DON,DASの毒性実験結果の概要
(A) Comparison of haematotoxicity and myelotoxicity of some trichotecenes13)
Study Critical effect LOAEL/NOAEL Reference
DON Human haematopoiesis in vitro Cytotoxicity < 10-7 M Froqueto et al. (2001)75) T-2 toxin Human haematopoiesis in vitro Cytotoxicity < 10-10 M Froqueto et al.
(2001)75) T-2 toxin Pig, 3 weeks, subacute Reduced number of leukocytes 0.03 mg/kg bw/d/LOAEL Rafai et al.
(1995)18) T-2 toxin Monkey (15 days of exposure
by gavage) Leukopenia 0.1 mg/kg bw/d LOAEL
Rukmini et al. (1980)76) DAS Human haematopoiesis in vitro Cytotoxicity < 10-9 M Froqueto et al.
(2001)75) DAS Human, phase I evaluation Myelosuppression 7 mg/m2 (0.18 mg/kg bw/d)
Parent-Massin and Parchment (1998)77)
(B) Toxicological effects of T-2 toxin and deoxynivalenol(DON) on organs and cellular components
Study Critical effect LOAEL Reference
T-2 toxin
Pathology in pregnant mice provided with toxin-contaminated diet
Low weight of thymus ≧1ppm Shibutani M. (2014)34)
T-2 toxin
Pathology in offspring from mice provided with toxin-contaminated diet Inhibition of hippocampal neurogenesis, apoptosis of thymus lymphocyte ≧3 ppm (NOAEL= 1 ppm; TDI=0.28 µg/kg b.w./day, UF=500) Tanaka T. et al. (2015)36) Shibutani M. (2015)34) T-2 toxin Pathophysiology in rats provided with toxin-contaminated diet for 5 days
Alterations in heart rate, body temperature, and their rhythmicity ≧4.5 ppm (NOAEL=3 ppm; TDI=0.4 µg/kg b.w./day, UF=500) Tsubone H. (2016)4) T-2 toxin
Body weight gain in pigs provided with
toxin-contaminated diet for 18 days
Reduction of weight gain 83 ppb (83 µg/kg) Verbrugghe E. et al. (2012)8)
T-2 toxin Pathophysiological changes in vivo
Alteration in autonomic nervous system, Increase in arrhythmia
≧0.1 mg/kg b.w. Ngampongsa S. et al. (2012)43)
T-2 toxin Cytotoxicity in vitro
Increases in oxidative stress, DNA damage, and mitochodrial apoptogenic factors
10 ng/ml (Hela) Chaudhari M. et al. (2009)47) T-2 toxin Mitochondrial function in vitro Inhibition of oxygen
consumption rate ≧6×10-5 µM
Ngampongsa S. et al. (2013)67) T-2 toxin Cell viability in vitro Inhibition of survival rate
62 ng/mL (Chang liver), 125 ng/mL (Bel-7402), 1000 ng/mL (Hela)
Zhuang Z. et al. (2013)48)
T-2 toxin Cell viability in vitro Decrease in cell viability
≧1 ng/mL (porcine alveolar macrophage), ≧2.5 ng/mL (undifferentiated intestinal epithelium) Verbrugghe, E. et al. (2012)8) T-2 toxin,
HT-2 toxin Cell viability in vitro Apoptosis
≧100 nM (human cells) for T-2 toxin >1 µM (human cells) for HT-2 toxin
Königs M. et al. (2009)78)
T-2 toxin Cell viability in vitro
Decrease in cell viability with ruduction of SOD, GSHPx, and catalase activities, and increase in ROS
≧1 nM
(ovarian granulosa cells)
Wu J. et al. (2013)74)
DON Cell function in vivo Activation of MAPK
≧1 mg/kg b.w.
(spleen cells in mice with oral adminsitration)
Zohou H. R. et al. (2003)27)
(A)はParent-Massin, D. et al. 2004.から引用した.(B)は本レビューによるまとめ
LOAEL:最小毒性量(lowest-observed-adverse-effect level),NOAEL:無毒性量(No observed adverse effect level), UF:不確実性係数(uncertainty factor) トリコテセン系カビ毒によるアポトーシスが造 血組織,消化管,肝臓,脳組織など広範囲の器官に わたって観察されている.アポトーシスの発現には 遺伝子影響が関与するが,そのメカニズムはミトコ ンドリア依存性の経路とミトコンドリア非依存性 の経路とが重なり合い,またアポトーシスカスケー ドの上流では,リボソーム
-MAPK
の活性化が関与 する経路とDNA
傷害あるいはデスリセプター/カ スパーゼ8
の活性化が引き金として関与する経路が 報告されており,それらの経路の重要性は細胞ある いは臓器によって異なる.アポトーシスは細胞分裂 が盛んな組織(骨髄,胸腺,脾臓,腸管上皮など) で生じやすく,また培養細胞においても分化が進ん だ細胞よりも未分化の細胞で生じやすい.また,濃 度が高い場合には,細胞のアポトーシスのほかに一 般毒性としての細胞壊死が生じる.経口曝露実験で は,餌の内容や消化管内微生物叢によっても毒性効 果が影響を受ける可能性がある.経口投与されたT-2
トキシンが経胎盤性に胎仔に移行し,胎仔およ び新生仔の脳の一部(ラット終脳,マウス海馬)に アポトーシスやニューロン新生抑制が生じること は注目に値する.低濃度曝露では,これらの形態学 的変化は一過性であるとされるが,神経発達が遅延 することにより何らかの機能的な変化が遺残する 可能性も否定できない. トリコテセンの化学構造としてC-8
官能基が異な るT-2
トキシン(タイプA
)とDON
(タイプB
)との 間で毒性を比較した場合,T-2
トキシンはDON
に比 べて明らかに毒性が強いという違いはあるものの, 毒性の定性的な面では両トキシンの間で明瞭な相 違を積極的に示すデータは見当たらない.また両ト キシンによる酸化ストレスがトリコテセン化学構 造のどの部分で誘起されるのかに関しても共通構 造であるエポキシ環の関与も含めて詳細がわかっ ていない.一方,ミトコンドリア活性が高い細胞やDNA
合成・蛋白合成が盛んな細胞ではこれらのトキ シンによる酸化ストレスを受けやすいことが毒性 発現の基本に存在するものと思われる.謝 辞
本論文内容の一部には厚生労働科学研究費補助 金(食品の安全確保推進研究事業)(H22-
食品-
一般-008
;H25-
食品-
一般-009
)による研究成果が含ま れる.DON Pathophysiological changes in vivo
Alteration in autonomic nervous system, Increase in arrhythmia
≧0.5 mg/kg b.w. Ngampongsa S. et al. (2011)44)
DON Mitochondrial function in vitro Inhibition of oxygen
consumption rate ≧0.78 µM
Ngampongsa S. et al. (2013)67) DON Mitochondrial function in vitro Apoptosis, release of
cytochrome c 100 µM
Bensassi F. et al. (2012)54) DON Cell viability in vitro Apoptosis, mitochondrial
damage ≧125 ng/mL (PC12)
Wan X. et. al. (2016)66) DON Cell function in vitro
Decrease in cell number, decreases in estradiol and progesterone production
3.3 µM Pizzo F. et al. (2015)72)
DON Cell viability in vitro
Inhibition in maturation of porcine oocyte, Apoptosis with chromosome misalignments and DNA methylation
3 µM (porcine oocyte) Han J. et al. (2016)73)
DON Cell viability in vitro DNA damage ≧6.25 ng/mL (human lymphocytes)
Yang W. et al. (2014)50) DON Cell function in vitro
Inhibition of NF-κB reporter activity in RAW264 cells with PAM3CSK4-stimulation
≧125 ng/mL Sugiyama K. et al., 2010
DON, NIV, T-2 toxin, HT-2 toxin
Cell function in vitro
Inhibition of NF-κB reporter activity in THP-1 cells with LPS-stimulation ≧125 ng/mL (DON, NIV) ≧10 ng/mL (T-2) ≧1 ng/mL (HT-2) Sugiyama K. et al., 2016
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