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民事執行・保全法 講義レジュメ 白鴎大学 2009 年度前期(担当:和田直人) 【講義の概要】 1.講義の内容 :民事執行手続・民事保全手続の基本的な流れ、および、民事救済法法学における重 要なエッセンスについて理解を深めることを目的とする。なお、講義の必要な範囲 で、民事訴訟法(判決手続)の論点についても解説を加えることになる。 ⇒対象となる主立った法律 ①民事執行法 ②民事保全法 2.テキスト等について (1)テキスト 井上治典・中島弘雅編『新民事救済手続法』法律文化社 (2)判例集 ①伊藤眞・高橋宏志・高田裕成『民事訴訟法判例百選(第 3 版)』有斐閣 ②伊藤眞・上原敏夫・長谷部由起子編『民事執行法・保全法判例百選』有斐閣 (3)参考書 −主として、執行・倒産領域について− ①中野貞一郎『民事執行法』青林書院 ②中野貞一郎『民事執行法・保全法概説(第 2 版増補 2 版)』有斐閣 ③上原敏夫・長谷部由起子・山本和彦『民事執行・保全法』有斐閣アルマ ④福永有利『民事執行法民事保全法』有斐閣 ⑤和田吉弘『基礎からわかる民事執行法民事保全法』弘文堂 3.講義に関する情報について :担当者の HP から配信する。 http://homepage3.nifty.com/office-wada/ 4.オフィスアワー :木曜 5限

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5.講義のスケジュール 講義のおおまかなスケジュールは下記のとおり。(若干変更される可能性がある) 回 月日 曜日 時限 講義のテーマ テキスト 1 4月10日 金 4 ガイダンス・序論 3∼27頁 2 4月17日 金 4 強制執行の開始要件 90∼104頁 3 4月24日 金 4 差押え(1) 105∼115頁 4 5月1日 金 4 差押え(2) 105∼115頁 5 5月8日 金 4 不動産の換価・配当(1) 116∼151頁 6 5月15日 金 4 不動産の換価・配当(2) 116∼151頁 休 5月22日 金 4 担当者出張のため休講 − 休 5月29日 金 4 スポーツ大会のため休講 − 7 6月5日 金 4 動産に対する強制執行 116∼151頁 8 6月12日 金 4 配当・買受人の地位 151∼157頁 9 6月19日 金 4 債権執行 158∼169頁 10 6月26日 金 4 作為・不作為請求権等の執行 170∼179頁 11 7月3日 金 4 執行過程における不服申立て 180∼194頁 12 7月10日 金 4 民事保全手続(1) 69∼89頁 13 7月17日 金 4 民事保全手続(2) 69∼89頁 14 補講日 講義のまとめ 6.成績評価について :学期末テストの成績のみに基づいて評価する (レポート・平常点による加算措置の予定はない)

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【第 1 講 序 論 −民事執行・民事保全とは?−】 1.具体例を通して、手続のイメージをつかむ >>設問 01<< X は友人である Y に 100 万円の金銭を貸していたが、Y がいっこうに返済してくれ ないので、Y を相手に貸金返還請求訴訟を提起し、勝訴判決を得た。 この金銭をめぐる紛争は、判決言い渡し後いかなる展開をみせると考えられるか? (1)自力救済の禁止 (2)裁判を受ける権利の保障と国家救済(権利の確定・実現プロセス)の必要性 (3)救済の態様 ①債務の本来的内容である給付の実現 例)契約上の債務 →債権者が債務の本来の内容である給付義務を強制的に実現し、任意に履 行されたと同じ結果を債権者に得させる ②本来の給付にかえての代替的給付 :本来の給付が困難または不可能であったり、当事者間の関係から他の給付で もよい特別の事情がある場合には、たとえば、金銭給付にかえて債務者の所 有する現物を給付したり、引渡しが不能なときに代償請求をするというよう なことも考えられる。 ③原状回復 :他人の侵害行為によって生じた違法な結果を事実行為によって取り除き、元 の利益状態を回復させる救済の態様 ④金銭賠償 :他人に与えた損害を金銭で填補させる救済方法 ※懲罰的損害賠償をめぐる議論 >>設問 02<< 甲土地所有者の A と乙土地所有者の B との間には、甲土地と乙土地の境界の位置を 巡る争いが生じているが、B は乙土地を C に売却しようと準備を進めている。このよ うな場合に、A は、自らの所有権を守るために、どのような措置を講じることができる だろうか。

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2.それぞれの手続の相互関係と実体法の位置づけ

それぞれの手続の相互関係

保 全

確 定

実 現

権 利

民事保全

手続

民事訴訟

手続

民事執行

手続

民事実体法

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【第 2 講 民事執行の開始要件】 >>説問 03<< ① X が Y の財産に対して強制執行を行うためには、どのような条件が整っている 必要がありますか?(債務名義・執行文という概念を用いずに説明してください。) ② 債務名義とは何ですか?また、債務名義を取得する方法にはどのような手続があ りますか? ③ Y は X より土地を賃借し、その上に建物を建てて生活していた。 しかし、X・Y 間の土地賃貸借契約が終了した後も Y は本件土地を明け渡さない ため、X は Y に対し、家屋収去土地明渡請求訴訟を提起し、訴訟は X 勝訴に終 わった。 以上のケースにおいて、Y から家屋を譲り受けた Z が存在する場合、X・Y 間の 訴訟の判決の効力は Z との関係でいかなる扱いをうけるのか? ④ ③の場合において、既判力と執行力は、それぞれどのような効力を有するのか? Z が X に対して新たな借地権を主張する場合を念頭に考えてみてください。 (中野貞一郎『民事裁判入門』261 頁ケース 24 も参照) ⑤ 執行文とは何ですか?また、執行正本とはどのようなものですか? <参考文献> ①和田吉弘『基礎からわかる民事執行法・民事保全法』(弘文堂)14 ∼ 49 頁 ②福永有利『民事執行法・民事保全法』(有斐閣)41 ∼ 77 頁 ③執行百選9:最(1 小)判昭 48 年 6 月 21 日民集 27 巻 6 号 712 頁(新堂幸司解説) ④執行百選 11:最(1 小)判昭 53 年 9 月 14 日判時 906 号 88 頁(高橋宏志解説) 1.民事執行手続とは? 【民事執行手続のフロー】 債権者 X1 X2 X3 二 配 債務名義 重 当 執行文 差 要 押 求 申立て 差押え 換価(売却) 配当(満足) 競売開始決定 売却の準備 配当表の作成 △請求異議の訴え ↑ 売却の開始 配当の実施 △執行文付与に △開始決定に対する異議 売却許可決定 ↑

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2.民事執行手続の開始 (1)民事執行開始の要件 (ⅰ)民事執行が申立てられるのはどのようなときか? (ⅱ)民事執行の対象物は? →金銭執行と非金銭執行 (ⅲ)民事執行は誰が行うのか? →執行裁判所と執行官 (ⅳ)どのような条件が整えば民事執行を行うことが可能か? →債務名義付与機関と民事執行機関との峻別 (2)債務名義とは? :強制執行によって実現されるべき請求権の存在・範囲、その当事者ならびに責 任財産の範囲を公証した文書のこと (3)債務名義の種類(民執法§ 22) ①確定判決(1 号) ②仮執行の宣言を付した判決(2 号) ③抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(3 号) ④仮執行の宣言を付した支払督促(4 号) ⑤訴訟費用の負担の額等を定める裁判所書記官の処分(4 号の 2) ⑥金銭の支払いを目的とする公証人が作成した公正証書(5 号)=執行証書 ⑦執行判決のある外国裁判所の判決文または仲裁判断(6 号) ⑧確定判決と同一の効力を有するもの(7 号) (5)支払督促 :簡易に債務名義を獲得するための手続 →債権債務の存在について争いがないような場合 ※手続の流れについてはスライド参照 3.執行力と執行文 (1)執行力とは? :民事裁判等によって認められた権利内容を国家機関によって強制的に実現し うる効力のこと。また給付請求権の内容を強制執行によって実現できる効力の こと(新法律学辞典(第 3 版)) (2)執行力がおよぶ範囲 ⇒ 既判力の範囲に準ずる...

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設問 03 ③ 家屋収去土地明渡請求権 甲 乙 α:甲→乙の家屋収去土地明渡請求権 α β:甲→丙の家屋収去土地明渡請求権 β 家屋売却 丙 ①そもそも既判力(の人的範囲の拡張)とは…? ②執行力の及ぶ範囲の拡張 (3)執行文とは? :債務名義の執行力の現存およびその範囲(特に執行当事者を公証する文言)、 を記載した文書のこと ※債務名義が仮執行宣言付支払督促と仮差押え・仮処分命令の場合以外は全ての 債務名義に執行文が必要 (4)執行文の機能 :債務名義の執行力の有無を確認 =強制執行は「執行文の付与された債務名義の正本」に基づいて直ちに実施さ れる(民執法§ 25) (5)執行文の付与(民執法§ 26 条①) ①執行証書以外の債務名義 →事件の記録の存する裁判所書記官に対して執行文付与の申立て ②執行証書の場合 →執行証書の原本を保存する公証人に対して執行文付与の申立て (6)執行文付与の要件 ①形式・内容ともに有効な債務名義が存在し、その執行力が存続していること ②債務名義に表示された請求が債権者の証明すべき事由の到来にかかるときは 債権者がその事実が到来したことを証明する文書を提出したこと

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【第 6 講 差押え】 テキスト 105 ∼ 115 頁 >>説問 07<< ① 差押えはなぜ必要なのか? ② 差押えの対象となる財産はどのようなものか?また差押えができない財産にはどの ようなものがあるか? ③ 差押えによって、どのような効力が発生するのか? <参考文献> ①執行百選 25:最(1 小)判昭 53 年 6 月 29 日民集 32 巻 4 号 762 頁(福永有利解説) ②執行百選 26:東京地判昭 33 年 7 月 19 日判時 164 号 31 頁(萩澤達彦解説) ③執行百選 53:札幌高決昭 57 年 12 月 7 日判タ 486 号 92 頁(慶田康男解説) ④執行百選 57:最(2 小)判昭 34 年 8 月 28 日民集 13 巻 10 号 1336 頁(出口雅久解説) ⑤執行百選 58:東京高決昭 58 年 4 月 26 日下民 34 巻 1 ∼ 4 号 178 頁(日比野泰久解説) 1.差押えの意義 債務者の債務不履行 ⇔ 自力救済の禁止 ⇔ 強制執行の必要性 ↓ 債務者の財産の取上げと売却 = 差押え (1)差押えとは? :執行機関が債務者の財産または担保目的物の処分権を自らの手に収納して、債 務者又は所有者による処分を制限する行為のこと(中野・双書 92 頁) →民事執行手続の第一段階の執行行為としてなされる eg.民執法§ 122 条① :「動産に対する強制執行は、執行官の目的物に対する差押えにより開始 する」 民執法§ 143 :「金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権は、執行 裁判所の差押命令により開始する」

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2.差押えの対象 −総論− (1)差押えの対象=責任財産 :執行開始の段階で債務者に属する財産 (2)外観主義 :差押えにあたって、執行機関は所有権の実体的な帰属を調査することなく、債 務者の責任財産であると認められる一定の外観があるだけで差し押さえてよい ①登記簿謄本が提出された不動産 ②債務者が占有する動産 ③債務者の財産として債権者が占有する動産、第三者が任意に提出する動産 (3)第三者異議の訴え(民執§ 38) :差し押さえられた財産が債務者の責任財産でない場合の不服申立て 3.不動産の差押え (1)不動産に対する執行方法 ①強制競売 :差し押さえた不動産を売却して、その代金を債権の満足にあてる場合 ②強制管理 :差し押さえた不動産を管理して、そこから得られる収入をもって債権の満足 にあてる場合 ⇒債権者は、いずれを選んでもよく、また併用してもよい(民執§ 43 ①) (2)申立て :執行対象となる不動産所在地を管轄とする地方裁判所が執行裁判所 ①強制競売の場合 :執行正本のほか、登記簿謄本、公課証明などが必要(民執規§ 23、23 の 2) ②強制管理の場合 :申立書に、収益の給付義務を負う第三者を表示し、給付義務の内容を記載し なければならない(民執§ 63) ※債権者が収益権を有さない場合、収益を生じる見込みのない不動産に対し ては強制管理は禁止される(参考文献④参照)

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(3)開始決定 ①強制競売の場合 :申立てが適式であった場合、執行裁判所は不動産を差し押さえる旨の宣言を した強制競売開始決定をする(民執§ 45 ①) ↓ 債務者への開始決定の送達と差押えの登記嘱託(→登記官) ②強制管理の場合 :強制管理の申立てを認めるときは、執行裁判所は強制管理決定をする。 ⇒不動産を差し押さえる旨の宣言 ⇒債務者に対する収益の処分の禁止 ⇒収益の給付義務を負う者に対する収益を管理人に給付すべき命令 (民執§ 93 ①) (4)船舶・航空機・自動車等を対象とする差押え :不動産に準じて扱われ、執行方法は強制競売に限られる(民執§ 112) 4.動産の差押え (1)差押えの対象 :不動産以外の有体物で、船舶等の差押えの方法によることのできない物 ※裏書禁止のない有価証券もこれに含まれ(民執§ 122 ①)、民§ 86 ③の無記 名債権のほか、株券、抵当証券、国債、手形、小切手なども、執行法上では、 動産執行による ⇔差押え禁止財産の除外(後述5.参照) (2)差押えの方法 ①動産執行の執行機関 =執行官 ②申立て =債権者は、差し押さえるべき動産の所在地の執行官に執行を申し立てる ③執行の方法 (ⅰ)債務者が動産を占有しているとき→執行官が当該動産を取り上げる →執行官は、差押えに必要な処分ができる(民執§ 122 ②) (ⅱ)債権者に所有権があっても、その物を第三者が所持している場合 →第三者が提出を拒まないときに差し押さえることができる(民執§ 124) →第三者が提出を拒むとき :債務者が第三者に対して有する返還・引渡請求権を差し押さえる =債権執行

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5.差押えの禁止 >>設問 08<< S は、個人で、ある発明を行い、これをもとにしていわゆるベンチャービジネスを 立ち上げることにした。S が A 有限会社を設立して、G 銀行に融資を求めたところ、 G 銀行は、S の発明を評価し、5000 万円の開業資金を無担保で A 有限会社に融資する ことに同意したが、貸付にあたっては、S の個人保証を徴求した。 ところが、案に相違して、A 社のビジネスは失敗に終わった。G 銀行は、S の保証 人としての責任を追及するため、S の財産に対して強制執行を行うことにした。この 場合に、G 銀行は、S の財産をどの範囲で差し押さえることができるか? (道垣内弘人・山本和彦・古賀正治・小林明彦『新しい担保・執行制度(補訂版)』 (有斐閣)172 頁より) (1)一般的な差押禁止 :債権者の満足と債務者の苦痛との調整 ①超過差押えの禁止 :差押えは債権の満足と執行費用の弁済に必要な範囲を超えてはならない ( 民 執 § 128・ 146) ※不動産執行における例外(cf.民執§ 73:超過売却の禁止) ②無益差押えの禁止 :債権者の満足に役立たない差押えは、禁止される(民執§ 129 ①) (2)個別的な差押禁止(民執§ 131) :債務者およびその家族の生活保障・生業の維持・職業活動の保障などの要請 (差押禁止動産の例) ①債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具 ②債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料 ③標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭 ④実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの ⑤債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具 ※ビデオ:動産執行の現場と差押禁止動産

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6.差押えの効力 >>設問 09<< 債権者Aが債務者Bの財産を差押えた後、Bはその差押え財産をCに譲渡して しまい、その後Bの他の債権者DがAの執行手続に配当要求してきた場合、Bの Cに対する処分の効力は、A・Dに対していかなる法的効力を有するのか? >>設問 10<< 債権者甲が債務者乙の不動産(土地・建物)を差し押さえた後に、債務者乙が当 該不動産を丙のために抵当権を設定した。 ①乙から丙への抵当権設定行為は甲に対していかなる効力を有するか? ②乙から丙への抵当権設定後に、乙の別の債権者である丁が当該不動産に対して、 二重差押えをした場合、丁の二重差押えと抵当権設定行為との関係はどうか? (1)総論 :差押えによって、債務者(担保物の所有者)は、差押財産の処分権を失う →財産の譲渡、担保権・用益権の設定の禁止 →所有権は債務者に帰属 (2)差押え物の使用・収益 :債務者は差押えの処分禁止の効力に抵触しないかぎりにおいては、差押物の使 用・収益を妨げられない。 ①動産の差押物につき、執行官が相当と認めるときは、差押債権者、第三者に保 管させることが可能 ②差押物を債務者に使用させることも可能(民執§ 46 ②、§ 123 ③④) ⇒債務者の搬出・処分により第三者の即時取得が問題となる場合(文献⑥) ※強制管理の場合 (3)相対的無効 :差押えを受けた債務者がその処分禁止に違反して差押財産を処分した場合、そ の処分は差押債権者には対抗できないが、執行以外の面、特に処分の当事者間 では有効である X −①差押え→ Y YのZに対する差押財産の処分について ↓②処分 →Xとの関係でYは対抗できない Z →Zとの関係では有効

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(4)平等主義 (⇔優先主義) ①総論 :わが国の強制執行手続は、差押債権者の開始した手続に便乗する債権者にも、 原則として差押債権者と同等の地位を与えている。 ⇒不動産執行における二重差押えの許容(民執§ 47 条・48 条) ⇒動産執行における二重差押えの禁止と手続の併合(民執§ 125) ②相対的無効との関係(⇒設問 08・09 ①) :相対的無効により債務者が処分を対抗できない債権者の範囲はどこまでか? α)差押え債権者および処分前に配当要求をした債権者にとどまる β)全ての債権者に対して対抗できない ※平等主義との調和の必要・詐害行為の可能性 ③個別的相対効と手続的相対効(⇒設問 09 ②) α)乙の抵当権設定は、甲の差押えには対抗できないが、丁の差押えには先行 しているので、甲の強制競売によって、売却代金に剰余が生じたときは、 抵当権者は丁に対して優先権を主張できる。(個別的相対効) β)甲の差押えの効力は、その執行手続が続行されているかぎり存続している から、その差押え後の抵当権の設定は、処分後に二重差押えをした丁にも 対抗できない。すなわち、甲の強制競売による売却代金は、丁に配当され る。(手続的相対効) (5)差押えの効力の発生時期 ①強制競売開始決定の債務者への送達 ②強制競売開始決定の登記簿への記載 ※①②のどちらか早い時期に、差押えの効力が発生する(民執§ 46 ①)

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【第 7 講 不動産の売却】 テキスト 116 ∼ 142 頁 >>説問 11<< D は、競売で家屋を購入しようと考え、裁判所に赴いたが、物件明細書等の書類だけ では、それぞれの家屋の様子がよくわからないし、また、不動産の専門家の意見も 聞 きたいと思っている。どうすればよいか? (道垣内弘人・山本和彦・古賀正治・小林明彦『新しい担保・執行制度(補訂 版)』(有斐閣)124 頁より) <参考文献> ①和田吉弘『基礎からわかる民事執行法・民事保全法』(弘文堂)85 ∼ 122 頁 ②福永有利『民事執行法・民事保全法』(有斐閣)112 ∼ 157 頁 ③執行百選 29:東京地決平 4 年 7 月 3 日判時 1424 号 86 頁(松丸伸一郎解説) ④執行百選 30:最(3 小)判平 9 年 7 月 26 日民集 51 巻 6 号 2645 頁(森田浩美解説) ⑤執行百選 33:福岡高決平元年 2 月 14 日判タ 696 号 218 頁(小川浩解説) ⑥執行百選 34:東京高決昭 57 年 3 月 26 日下民 33 巻 1 ∼ 4 号 141 頁(佐藤道明解説) ⑦執行百選 35:東京高決昭 59 年 10 月 16 日判タ 545 号 129 頁(福永浩之解説) ⑧富越和厚「民事執行実務における短期賃貸借の実情(上)(中)(下)」 NBL263 号・265 号 268 号 ⑨綿引万里子「『競売屋』・『占有屋』退治は成功したか」ジュリスト 927 号 64 頁 1.換 価 (1)換価の意義 :差押物を金銭化する国家の処分行為のこと。差押えに続く執行の第 2 段階 (2)不動産執行と担保権執行 :担保権執行は不動産執行(強制競売)に優先する ⇒現実に執行の対象となるような不動産は、たいてい担保価値いっぱいの担保 権が設定されている ⇒無担保債権者が配当にあずかる余地がない (3)不動産競売物件の流行(?) →地価高騰 →超低金利時代・不況を理由とする投資ブーム ⇒「安く」手に入る不動産競売物件への関心 ※たとえば、http://bit.sikkou.jp/・http://www.keibai.co.jp/のような不動産競売物件の 検索サイトも存在する。 ※物件明細書や3点セットなどの資料も上記サイト等から閲覧してみてほしい。

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2.不動産競売手続の流れ (中野・入門 307 頁を基に作成) 競売申立て ↓ 差押え ・競売開始決定 ・差押えの登記 ・執行官による現況調査(民執§ 57) ・評価人による評価(民執§ 58) ・物件明細書の作成(民執§ 62) ・売却条件の確定 ・売却基準価額(最低売却価額)の決定(民執§ 60) ・物件資料(いわゆる3点セット)の閲覧 換 価 ・売 却 →売却公告 →入札 ・配当要求・交付要求 ・売却許可決定 ・代金納付 ・買受人への移転登記 満 足 ・配 当 3.売却の準備 ⇒ 設問 11 (1)不動産の現況調査(民執§ 57 ①) :売却の対象となる不動産の形状・占有関係その他の現況についての調査 ⇒執行官が行う(執行官の注意義務につき、文献②(執行百選 30 事件)参照) (2)不動産の評価 :売却不動産の評価 ⇒評価人を選任して行う(民執§ 58 ①:不動産鑑定士が行うのが一般的) (3)売却基準価額(最低売却価額)の決定 :執行裁判所は、評価人の評価に基づいて売却基準価額を定めなければならない

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(4)物件明細書の作成(民執§ 62・民執規§ 31) ⇒物件明細書の法定記載事項 ①不動産の表示 ②売却後買受人が引き受けることになる負担 ③法定地上権の存在(その概要) ※文献⑥(執行百選 35 事件)も参照 (5)無剰余換価の禁止(民執§ 63) cf.無益差押えの禁止 :買受可能価額で差押債権者に優先する債権と手続費用を弁済して剰余を生じる 見込みがないときは、裁判所はその旨を債権者に通知しなければならない。 →差押債権者が手続の続行を望むときは、剰余の見込みがある旨を証明するか、 手続費用と優先債権額の合計額を超える額で自ら買い受ける旨を申し出て、 一定額の保証を提供しなければならない(民執§ 63 条②) 優先債権額+手続費用 ≧ 買受可能価額 < 債権者の買受額 (6)売却のための保全処分(民執§ 55・55 の 2) :不動産の交換価値を維持したままで売却を行うために必要な処分 →執行妨害のところで説明する ※価格減少行為につき文献①(執行百選 29 事件)参照 ※平 15 改正(要件緩和=「著しい」の文言からの撤廃) 4.売却の実施 (1)売却方法 ①期間入札:所定の入札期間に入札 ②期日入札:所定の入札日に入札 ③競り売り:競り売り期日に買受けの申出額を競り上げさせる方法 ④特別売却:上記①∼③が不成功に終わった場合の売却 ※現在の執行実務では、期間入札が原則的な売却方法 (2)一括売却(民執§ 61) :執行裁判所が相互の利用上不動産を他の不動産と一括して同一の買受人に買い 受けさせることが相当と認めるときに行われる →高額売却=債権者・債務者双方の利益/買受人の利便 例)敷地と敷地上の建物・宅地と私道・隣接地の不動産 ※抵当権実行との関係で民 389(平 15 年改正)も参照 ※文献⑤(執行百選 34)も参照のこと

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(3)買受の申出 ①買受申出資格:一般には制限がない(ただし、農地などにつき民執規§ 33) →債務者には申出資格がない(民執§ 68)cf.消除主義(後述) ※物上保証人・連帯保証人・負担部分のない連帯債務者・限定承認をした相 続人・債務者を代表取締役とする株式会社の買受資格は認められる ②買受申出の保証 →買受の申出をする者は、執行裁判所が定める額・方法による保証を提供しな ければならない(民執§ 66) =買受代金不納付の防止 ※入札の場合には、最低売却価額の 2 割が原則(民執規§ 39) →特別売却の場合は裁判所の裁量(民執規§ 51 ③) 5.売却許否決定 :売却に際して、裁判所は最高価買受申出人の決定後、売却決定期日を開いて、売 却の許可・不許可の決定を言い渡さなければならない(民執§ 69) (1)売却不許可事由 ①強制競売手続の開始・続行を妨げる事情の存在(民執§ 71 一) ②最高価買受申出人の買受無資格・無能力・代理人の無権限または買受申出人の 背後にある者の無資格(民執§ 71 二・三) ③売却場所の秩序を乱した者による買受の申出またはその者が背後にいる買受の 申出(民執§ 71 四イ・ハ) ④その競売手続において買受人になったにもかかわらず代金を納付しなかった者 による買受の申出またはその者が背後にいる買受の申出(民執§ 71 四ロ) ⑤不動産の損傷による最高価買受申出人の不許可の申出(民執§ 71 五) ⑥最低売却価額もしくは一括売却の決定、物件明細書の作成またはそれらの手続 に重大な誤りがあること(民執§ 71 六) ⑦その他売却手続に重大な誤りがあること(民執§ 71 七) 例)売却実施期日などの指定・公告・通知の不備・欠缺、物件明細書等の据え 置きの不備・欠缺、売却実施期日における手続の違法など (2)売却許可・不許可の決定

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6.売却と不動産上の権利の調整 >>説問 12<< S は、自宅を購入するに際し、G 銀行より住宅ローンの融資を受け、S 所有の自宅建 物及びその敷地について G 銀行のために抵当権を設定した。その後、その土地・建物 について A が第 2 順位の抵当権を取得し、さらに B が第 3 順位の抵当権を取得した。 しかし、折からの不動産価格の下落により、G 銀行が有する第 1 順位の抵当権の被担 保債権額だけでも抵当目的物の現在価値を上回るに至り、また、収入の減少から月々の ローン返済もままならなくなった。 そこで、S は、自宅建物及びその敷地の所有権を D に移転させ、さしあたり、月々 S が G 銀行に対して負うローン支払債務の 8 割を D が S に支払う旨が合意されたが、D は当該土地・建物について抵当権の負担を消滅させたいと考えている。 ① S は、やはりローンの支払いを遅滞するに至ったので、G 銀行は、上記抵当権を 実行しようとしている。このとき、D に対して何らかの通知をしなければならない か。 ② G 銀行が抵当権を実行しようとしないときは、D は、自らのイニシアティブで G 銀行の抵当権を消滅させる手続がとれるか。 (道垣内弘人・山本和彦・古賀正治・小林明彦『新しい担保・執行制度(補訂版)』(有 斐閣)82 頁) (1)消除主義と引受主義 ①消除主義:不動産上の負担を原則として売却によって消滅させ、買受人に負担 のない不動産を取得させる建前 ⇒買受人の地位安定・物件の高額売却 ②引受主義:不動産上の負担を原則としてすべてそのまま買受人に引き受けさせ る建前(ただし、その分だけ価格は安くなる) ⇒担保権者・用益権者の保護 ⇒日本法は、消除主義を基本としながらも、各権利の性質におうじて、引受主義 的要素もとり入れている

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(2)担保権・用益権等の処遇 ①抵当権・先取特権・使用収益権のない質権 :消除主義が適用され、差押債権者の権利に優先するものも、劣後するものも、つ ねに売却によって消滅する(民執§ 59 ①) ※差押債権者に優先する者には、不動産の売却代金から被担保債権額の全額(た だし、民§ 374・341 参照)について、優先的に配当される。 ※抵当不動産の任意売却時における抵当権の取り扱い ⇒ 設問 12 →滌除制度の見直しと抵当権消滅請求制度の導入 :増価競売制度の廃止(民§ 378) ②留置権・使用収益権のある質権 :引受主義が適用され、買受人が被担保債務を弁済する責めを負う(民執§ 59 ④) ③用益権 :差押債権者(仮差押債権者を含む)に対抗できる用益権は買受人に引き取られ、 対抗できない権利は売却により消滅する(民執§ 59 ②) ※対抗の可否は、民法上の原則(基本的には登記の先決関係)による。 >>説問 13<< 債権者 G(執行債権額 800 万円)が債務者 S の所有する賃貸マンションを差し押さえ た。登記をみると、H1 銀行が第 1 順位で被担保債権額 5000 万円の抵当権をつけており、 H2 信用金庫が第 2 順位で被担保債権額 1000 万円の抵当権をつけている。また、現況調 査によると、このマンションには、賃借人 M1・M2・M3 が住んでいる。売却許可決定 が確定し、買受人Zが代金 6200 万円を納付して所有者となった。 ① このケースにおいて、本件物件に設定されている抵当権はどのように取り扱われ るか? ② このケースにおいて、Zが入居者(M1 ∼ M3)に対して明渡しを請求したとき の法律関係はどうなるか? ③ 入居者らは、どの段階で誰に対して敷金の返還を求めることができるか。また、 敷金返還を確保するために、入居者らが執りうる手段はあるか? (中野・入門 310 頁(ケース 25)/道垣内弘人・山本和彦・古賀正治・小林明彦『新 しい担保・執行制度(補訂版)』(有斐閣)49 頁より)

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(3)短期賃貸借権 ⇒ 設問 13 ①抵当権設定行為と所有者の使用・収益の継続 →使用・収益権限には、賃貸権限も含まれる ⇔抵当権設定登記後の賃借権が、抵当権実行時の買受人に対抗できない(明け 渡さなければならない)のだとすれば、所有者の賃貸権限は実効性がなくな る(借り手がつかない) ※改正前民§ 395 条:短期賃貸借に限って賃借人を保護 =抵当権設定後の賃借権でも抵当権に対抗できる ②短期賃貸借保護の現状 −濫用的短期賃貸借− :濫用的な賃借権設定登記(仮登記)の問題(詳細は参考文献⑦参照) =利用の意思のない、形だけの占有を取得する者の存在 →競売金額の下落・不当な立ち退き料(抹消登記承諾料)の請求 ※実務における対策については参考文献⑧を参照 ③平 15 年改正による短期賃貸借制度(改正前民§ 395)の廃止 :抵当権に対抗できない賃貸借の賃借人で、競売手続開始前から抵当不動産たる 建物を使用収益していた者は、競売手続における買受人の買受けの時から 6 ヶ 月間明け渡しを猶予される(現行民§ 395 ①) ※例外の場合=民§ 387 ④敷金返還請求権の確保 :説例 12 のケースでは、Z が買い受けた時点で、S と M1 ∼ M3 との間の賃貸借 契約は終了し、これら入居者は明渡猶予期間を与えられているだけ →敷金返還請求の相手方は誰?(S or Z) →敷金返還請求権を被担保債権として、当該マンションに留置権を行使できる のか? cf.最判昭 43 年 11 月 21 日民集 22 巻 12 号 2765 頁 (4)法定地上権(民執§ 81) :土地及びその上の建物がともに債務者の所有物である場合に、土地または建物 についてのその一方または双方が差し押さえられ、売却の結果それぞれ所有者 を異にするにいたったときは、建物について地上権が設定されたとみなされる

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【第 9 講 代金の納付・配当 】 テキスト 143 ∼ 157 頁 <参考文献> ①和田吉弘『基礎からわかる民事執行法・民事保全法』(弘文堂)85 ∼ 122 頁 ②福永有利『民事執行法・民事保全法』(有斐閣)112 ∼ 157 頁 ③執行百選 48:最(2 小)判昭 62 年 12 月 18 日民集 41 巻 8 号 1592 頁(佐村浩之解説) ④執行百選 49:最(1 小)判平 10 年 3 月 26 日民集 52 巻 2 号 513 頁(田原睦夫解説) ⑤執行百選 51:最(2 小)判昭 40 年 4 月 30 日民集 19 巻 3 号 782 頁(目黒大輔解説) ⑥石渡哲「引渡命令の相手方についての法改正」執行百選 96 頁 1.代金納付 (1)代金納付の時期(民執規§ 56) (2)代金納付の効果(民執§ 79) (3)引渡命令(民執§ 83) :代金を納付した買受人(またはその一般承継人)は、申立てにより、引渡命 令を得ることができる。ただし、この申立ては、代金納付日から6ヶ月以内に しなければならない(民執§ 83 ②)。 → cf. 引渡命令と請求異議/引渡・明渡請求訴訟 → cf. 買受人のための保全処分(民執§ 77) 2.配当とは? :金銭執行の最後の段階として行われる、債権者の満足を目的とした金銭の交付。 3.配当に関する基本原理 :換価によって得た金銭が乏しくて、債権者達の債権および執行費用の額を全て 弁済できないときにどうするべきか? >>説問 14<< 債権者 A:600 万円、債権者 B:400 万円、債権者 C:200 万円に対して、債務者 Y の財産を換価して得られた売却金が 600 万円しかないとき、この売却代金は、全債権者 に対して、どのように配当されるべきか?(債権者 A、B、C は全て一般債権者)

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4.配当にあずかれる債権者 >>説問 15<< 配当に預かれる債権者は、具体的にどのような債権者か? ※配当等にあずかれるのは、差押え債権者だけに限らない。 → cf. 平等主義と優先主義/二重の執行申立てと配当要求 (1)有名義債権者:執行正本を有する債権者のこと →二重の執行申立て →配当要求 (2)無名義債権者:執行正本を有しない債権者のこと → (3)担保権者 ①担保権者のうち配当等にあずかりうるのは、換価の結果、その担保権が消滅 する者に限られる。 ②換価の結果、その担保権が消滅せず、買受人に引き受けられるもの、たとえ ば、留置権者は、配当等にあずかることができない ③換価の結果、消滅する担保権であっても、差押債権者に対抗できないもので あるときは、その担保権を有する者も、配当等にあずかることができない 5.配当の手続 (1)配当表の作成 :配当は、配当表と呼ばれる書面に基づいて実施される(民執§ 84 ①) →配当表は、配当を受けるべき各債権者から提出された債権計算書に基づいて、 配当期日に執行裁判所によって作成される(民執§ 85 ①、民執規§ 60)。 =原則として代金納付日から1ヶ月以内に執行裁判所によって開かれる(民 執規§ 59) (2)配当の実施

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【第 10 講 買受人の地位・執行妨害】 テキスト 151 ∼ 157 頁・63 ∼ 65 頁 >>設問 16<< 不動産の強制競売後もその不動産の占有を解除しない債務者(等)に対し、買受人 はどのような対応をすることが可能でしょうか。 <参考文献> ①執行百選 29:東京地決平 4 年 7 月 3 日判時 1424 号 86 頁(松丸伸一郎解説) ②執行百選 40:最(3 小)判平 9 年 7 月 26 日民集 51 巻 6 号 2645 頁(村上正敏解説) 1.不動産の強制競売の場合の代金の納付 :売却許可決定が確定すると、最高価買受申出人は、買受人となり、執行裁判所が 定める代金納付期限(民執 56 条)までに目的不動産の代金を納付しなければな らない(民執 78 条 1 項) →代金納付は、つねに一括払い(ただし、民執 82 条 1 項・2 項) →代金未納付の場合:売却許可決定の失効+保証の没収 2.買受人(最高価買受申出人)のための保全処分 :執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が、価格減少行為等をし、又は価格減 少行為等をするおそれがあるときは、最高価買受申出人又は買受人の申立てによ り、引渡命令の執行までの間、その買受けの申出の額に相当する金銭を納付させ、 又は代金を納付させて、次に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずることがで きる。 ①債務者又は不動産の占有者に対 する価格減少行為を禁ずる保全処分 ②当該価格減少行為等を 行う者・そのおそれがある者に対 する占有解除の保全 処分 ③執行官に不動産の保管をさせること ④価格減少行為を行う者・そのおそれのある者に対する不動産の占有の移転 の 禁止 ・不動産使用許可の禁止のための保全処分 3.代金納付の効果と引渡命令 (1)代金納付の効果(民執 79 条) :買受人は代金を納付すると、納付の時から目的不動産の所有権を取得する (2)引渡命令(民執 83 条)

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4.執行妨害 :債務者が執行を逃れるために責任財産をほかへ移動する、第三者が自らの利益を 得るために手続の進行を妨害するなど、救済手続の適正な進行を妨げる行為を執 行妨害という。 ※民事執行と執行妨害との闘い >>説問 17<< S は、G 銀行に対して債務を負っており、その担保として、自己所有の土地・建物に G 銀行のための抵当権を設定していた。その後、S は債務不履行に陥り、G 銀行は当該抵 当権の実行を申し立てようとしたが、S が2回目の不渡りを出した直後、当該建物には 誰かが住み着き、使用を始めた。G 銀行は、その者に任意の立ち退きを迫ったが、「自 分は S から賃借りしている」というだけで、名前等は一切明らかにしなかった。 G 銀行は、その者を退去させないと抵当権の実行がスムーズに進まないと思い、抵当 権の実行に先立って退去を求めたい。どのような方法をとることができるか。 (道垣内弘人・山本和彦・古賀正治・小林明彦『新しい担保・執行制度(補訂 版)』(有斐閣)95 頁より) >>説問 18<< G は、自己所有建物を S に賃貸していたが、賃貸借契約の期間が満了しても S が退 去しようとしない。そこで、G は、S に対して建物明渡しを求め、訴えを提起しようと したが、S は当該建物を複数の第三者に使用させており、自分は既に別のところに居住 していた。G は、当該建物の占有状況を確認しようとしたが、建物への立ち入りを妨害 され、また、建物から出てきた者はその氏名を語ろうとしなかった。それでも、G は、 様々なルートを使い、かなりの占有者を特定したが、占有者は刻々と入れ替わっている 様子でもあった。 また、ある日、それらの占有者と見られる者が、大型トラックでその建物に乗り付け、 多数の無価値と思われる動産を搬入していた。 以上のような状況で、G は当該建物の明渡しを得たいと思っているが、どのような方 法をとることができるか。 (道垣内弘人・山本和彦・古賀正治・小林明彦『新しい担保・執行制度(補訂 版)』(有斐閣)110 頁より)

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【第 11 講 債権執行】 テキスト 158 ∼ 169 頁 >>説問 19<< G 社は、S 社に対して、2000 万円の売掛代金を有している。ところが、S 社がその債 務の支払期限が到来しても弁済しないので、G 社は、S 社を相手方にして、2000 万円の 支払を求める訴えを提起し、勝訴の確定判決を取得した。しかし、それでも S 社は債 務を支払おうとしない。 そこで、G 社は、S 社の財産に対して強制執行を行うことにしたが、S 社の本社のあ る土地・建物については D 銀行が抵当権を設定しており、それに対して差押えをして みても無剰余となりそうである。もっとも、S 社は未だ支払停止の状態に至っているわ けではなく、他社に対する売掛債権等もかなり有しているようであるし、また、相当額 の預金もありそうである。ただ、売掛債権等の第三者が誰であるかは G 社にはよくわ からないし、取引先の金融機関も明らかではない。 このような場合に、G 社は、実効的な差押えをするために、どのような手段をとるこ とができるか。 (道垣内弘人・山本和彦・古賀正治・小林明彦『新しい担保・執行制度(補訂 版)』(有斐閣)140 頁より) <参考文献> ①和田吉弘『基礎からわかる民事執行法・民事保全法』(弘文堂)135 ∼ 162 頁 ②福永有利『民事執行法・民事保全法』(有斐閣)179 ∼ 195 頁 ③執行百選 65:最大判昭 45 年 6 月 24 日民集 24 巻 6 号 587 頁(河野正憲解説) ④執行百選 61:札幌高決昭 60 年 10 月 16 日判タ 586 号 82 頁(佐藤鉄男解説) ⑤執行百選 62:最(2 小)判昭 55 年 1 月 18 日判時 956 号 59 頁(長谷部由起子解説) ⑥執行百選 74:最(3 小)判昭 56 年 3 月 24 日民集 35 巻 2 号 271 頁(三輪和雄解説) 1.債権執行とは? :債務者が第三者に対して有する債権に対する執行のこと。 ※権利という無形の財産を執行対象とするため、不動産執行や動産執行とは様々 な点で異なる。 2.債権の差押え :債権執行では、執行裁判所の差押命令によって手続が開始する(民執§ 143) →申立書には ①債権者 ②債務者 ③債務名義 ④第三債務者と債権の種類 および額等の差し押さえるべき債権を特定するために必要な事項 を記載しな ければならない。

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3.差押えの効力 (1)関係人の地位 ①差押命令により、債務者は債権の取立てと弁済の受領だけでなく、債権の譲 渡や免除などの一切の処分を禁止される(民執§ 145 ①) →差押命令に反して、債務者が処分行為をしても、執行手続が続行する限り、 差押債権者と手続に参加するすべての債権者に対して対抗できない。 →被差押債権に関して契約書や預金証書等の債券証書があるときは、差押債 権者に引き渡さなければならない(民執§ 148) ②差押命令が送達されると、その時点で第三債務者は突如執行手続に巻き込ま れ、債務者に対する弁済を禁止される(民執§ 145 ①) →これに反して債務者に弁済しても、差押債権者から取立てを受ければ二重 に弁済しなければならない(民§ 481) →差押発効後に取得した債務者に対する反対債権をもって相殺しても、差押 債権者に対抗できない(民§ 511) ※第三債務者が差押前から有していた債権との相殺については見解が分か れる →通説は、両債権の弁済期の先後を問わず相殺適状に達しさえすれば差 押後の相殺を債権者に対抗しうるとする無制限説(参考文献②) (2)差押えの効力の客観的範囲 ①債権者は、執行債権の額を超える債権でも、その全部を差し押さえることが できる。ただし、執行債権と執行費用には一つの債権で十分であるのに、他 の債権まで差し押さえることはできない(民執§ 146) ②給料債権や賃料債権のように継続的給付に係る債権については、執行債権と 執行費用の額を限度として、1回の差押えが差押え後の給付にも及ぶ(民執 § 151)(参考文献③④) 4.換価 (1)差押債権者による取立て :差押債権者は、債務者に差押命令が送達された日から1週間を経過すると、 被差押債権を取り立てることができる(民執§ 155 ①) (2)第三債務者による供託(民執§ 156 ①) (3)取立訴訟 :被差押債権につき、債務名義が予め作成されていない場合には、差押債権者 は取立権の行使として、自ら第三債務者を被告とする被差押債権の給付を求 める訴えを提起することができる(民執 157) (4)転付命令 :被差押債権が一定の名目額(券面額)を持つ金銭債権である場合には、差押 債権者は、その債権を執行債権および執行費用の支払いに代えて自己に移転 する旨の裁判(転付命令)を執行裁判所に申し立てることができる(民執§

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【第 12 講 非金銭執行】 テキスト 170 ∼ 179 頁 >>説問 20<< S 社は、G 社に対して 1000 万円の債務を負っており、その債務の担保を目的として、S 社所有の大型パワーショベル(価額 800 万円)の所有権を G 社に移転した(譲渡担保)。 その後、S 社が上記債務について債務不履行に陥ったので、G 社は、当該パワーショベ ルを S 社が占有したままで建築会社である D 社に譲渡し、その譲渡代金をもって上記 債権の一部を回収した。 ところが、S 社は D 社に対して当該パワーショベルを任意に引き渡さないので、D 社 は、S 社に対して、当該パワーショベルの引渡しを求める仮処分を申し立て、その発令 を受けた。そこで、D 社は右仮処分命令に基づきパワーショベルの引渡しの強制執行を 行おうとしたところ、S 社は当該パワーショベルの所在を転々と移転し、現在それがど こに所在するのか分からない状態にある。 このような場合に、D 社はどのような手段をとりうるか? (道垣内弘人・山本和彦・古賀正治・小林明彦『新しい担保・執行制度(補訂版)』(有斐閣)155 頁より) <参考文献> ①和田吉弘『基礎からわかる民事執行法・民事保全法』(弘文堂)163 ∼ 172 頁 ②福永有利『民事執行法・民事保全法』(有斐閣)209 ∼ 218 頁 ③執行百選 87:最大判昭 31 年 7 月 4 日民集 10 巻 7 号 785 頁(越山和広解説) ④執行百選 89:最(2 小)判昭 41 年 3 月 18 日民集 20 巻 3 号 464 頁(林伸太郎解説) 1.「なす債務」とは? :作為・不作為を目的とする請求権のこと →直接強制によって実現することが不可能 :義務者の履行の意思に関わらず、執行機関がその権力作用に基づき、直接に 執行目的である利益状況を実現する執行方法のこと ①代替執行(民§ 414 ②本文、民執§ 171 ①) :債権者が自ら又は第三者により義務内容を実現できる旨の授権及びその費 用を債務者から取り立てうる旨の授権を執行機関から受けて、これに基づ き債権者又は第三者が執行目的である利益状況を実現し、それに要した費 用を債務者から取り立てる執行方法のこと ②間接強制(民執§ 172 ②) :債務者に対してその不履行に一定の不利益(金銭の支払等)を賦課してそ

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2.代替的作為請求権の執行 :その作為を債務者自身がするか、第三者がするかによって債権者の受ける給付 利益につき、経済的・法律的差異を生じさせない義務のこと (例) 建物の建築・修理、建物・地上物の取壊し・収去・撤去、物品の運送など →直接強制は不可能 or 困難 ⇒ 代替執行(民§ 414 ②本文、民執§ 171 ①) ※謝罪広告掲載は代替執行可能か?(参考文献②参照) 3.不代替的作為請求権の執行 :債務者自身がその行為をなすことによってのみ目的が達せられる義務のこと →第三者が債務者に代わってすることが不可能か、また、可能であるとしても債 務者自身がなす場合と同様な経済的法律的効果を得ることが困難な債務 (例) 芸能人の劇場出演義務、学者等の鑑定義務、財産管理の精算をなすべき義務、手 形その他の証券上に署名すべき義務など → 直接強制も代替執行も不可能=間接強制(民執§ 172)による 4.意思表示請求権の執行 (参考文献③参照) (例)移転登記手続きの意思表示 →間接強制では迂遠=意思表示の擬制(民§ 414 ②但書、民執 174) :判決だけで債務の内容を実現(「判決代用」) ※ただし、債務者自身が手形に署名する必要がある手形行為などの事実的 行為が要素となっている意思表示行為については、間接強制による。 5.物の引渡し・明渡しを目的とする請求権の執行 (1)直接強制の原則 :その物に対する債務者の占有を排除して、これを債権者に取得させる (民執§ 168(不動産の引渡し・明渡し)/民執§ 169(動産の引渡し)) (2)債務者以外の者が目的物を占有している場合 :その占有者に対する債務名義が必要(債務者に対する債務名義では執行不可) →設問 17 ※不動産明渡し執行における相手方不特定の問題 (執行妨害のところで述べる) (3)各執行方法の適用範囲の相対化

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【第 13 講 公害の差止め】 テキスト 170 ∼ 179 頁 >>説問 22<< 以下のそれぞれのケースにつき、X は誰に対してどのような請求をなすことが可能 か?また、それらはどのような執行方法によって実現されうるか? ① X は、隣接する Y 製材所の騒音に悩まされている。特に、ときおり夜間に聞こえ てくる音は睡眠を妨げるので深刻である。 ② X らは、主要国道に隣接する土地に住んでいるが、この国道を通行する自動車等 の騒音・振動・排煙による被害は深刻である。 (井上治典『実践民事訴訟法』(有斐閣)7 頁参照) <参考文献> ①執行百選 85:名古屋地判昭 60 年 4 月 12 日下民集 34 巻 1-4 号 461 頁(田頭章一解説) ②井上治典『実践民事訴訟法』(有斐閣)7 頁 ③竹下守夫「生活妨害の差止と強制執行・再論」判タ 428 号 27 頁 ④佐藤彰一「差止論が動いた」法律時報 73 巻 3 号 15 頁 ⑤井上治典・高橋宏志・塩崎勤・小山稔編「差止めと執行停止の理論と実務」 判例タイムズ 1062 号 ⑥阿部泰隆・淡路剛久『環境法(第三版)』有斐閣 1.不作為請求権の執行 :債務者の不作為(債務者が一定の行為をしないこと)を内容とする義務 ①積極的行為の禁止 ②受忍義務 ③一回的不作為義務 ④反復的不作為義務 ⑤継続的不作為義務 ⇒内容が多義的 (1)不作為義務違反が現に継続中である場合 :単なる不作為義務の違反ならば間接強制による (2)不作為請求の債務名義成立後の違反行為が違法な物的状態を残す場合 :違反結果除去の代替執行 (3)反復的・継続的な不作為義務の違反がある場合 :将来のための適当な処分(民§ 414 ③、民執§ 171 ①) ↓

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2.公害問題と民事訴訟・民事執行 ・公害対策基本法 ・廃棄物の処理および清掃に関する法律 公 害 環境法制による規制 ・産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備 の促進に関する法律 ・大気汚染防止法 公害の発生 ・水質汚濁防止法 etc. 民事訴訟による加害者の救済 ・信玄公旗掛松事件/足尾鉱毒事件/日立煙害事件 ・四大公害事件(水俣病・新潟水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそく) ・新幹線訴訟・国道訴訟・大阪空港事件・西淀川大気汚染訴訟 etc. 3.事後的な回復措置として :金銭賠償 → 損害賠償法理論の進展 ①過失理論の再構成 :回避可能性か予見可能性か? →中間責任・無過失責任法理の進展 ②権利侵害 :受忍限度論の提唱 ③事実的因果関係の証明:いわゆる蓋然性説・間接反証説の登場 →法的因果関係と科学的因果関係との切断 ④共同不法行為理論の発展 :四日市公害訴訟→西淀川(第一次訴訟)判決・川崎判決・倉敷判決 4.将来的な損害発生の回避として (1)金銭賠償の限界 :「被害が起きてから」の救済では遅い (2)差止めの必要性 ①公害防除施設の設置 ②操業の停止(短縮) など (3)抽象的差止めの可否 →設問 18 :X(ら)は、具体的にどのような請求をなしうるのか? ・具体化された差止め請求(上記(2))と抽象的な差止め請求 :誰が具体化することが妥当なのか?(参考文献③④参照) ※大阪空港事件判決(夜間飛行の差止め←請求棄却)

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【第 14 講 強制執行手続における不服申立て】 テキスト 180 ∼ 194 頁 >>説問 23<< ①執行過程のそれぞれの段階で、どのような再調整の機会(不服申立)が用意されて いるのか? ②執行手続において、不服申立てが果たすべき機能にはどのようなものがあるか? <参考文献> ①和田吉弘『基礎からわかる民事執行法・民事保全法』(弘文堂)57 ∼ 79 頁 ②福永有利『民事執行法・民事保全法』(有斐閣)77 ∼ 103 頁 ③執行百選 29:東京地決平 4 年 7 月 3 日判時 1424 号 86 頁(松丸伸一郎解説) ④執行百選 15:最(1 小)判昭 55 年 5 月 1 日判時 970 号 156 頁(上北武男解説) ⑤執行百選 16:最(2 小)判平 7 年 12 月 15 日民集 49 巻 10 号 3051 頁(上野泰男解説) ⑥執行百選 20:最(1 小)判昭 58 年 2 月 24 日判時 1078 号 76 頁(栗田隆解説) ⑦執行百選 49:最(1 小)判平 10 年 3 月 26 日民集 52 巻 2 号 513 頁(田原睦夫解説) ⑧執行百選 51:最(2 小)判昭 40 年 4 月 30 日民集 19 巻 3 号 782 頁(目黒大輔解説) 1.総 論 (1)不服申立て(再調整)の局面の具体相 (2)執行過程における不服申立手続の意義 2.執行文付与に対する異議 (1)異議の態様 ①執行文の付与を拒絶された債権者が異議を申し立てる場合 ②相手方債権者に対する執行文の付与に債務者が異議を申し立てる場合 (2)異議の手続

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3.不当執行に対する不服申立て (1)請求異議の訴え(民執§ 35) :債務者が当該債務名義上の請求権の存在・内容、または裁判以外の債務名義 の成立につき異議を主張して、債権者に対し当該債務名義による強制執行が 許されない旨の判断を求めて提起する不服申立手続 (2)第三者異議の訴え(民執§ 38) :執行手続において執行をなしうる財産は、債務名義上に表示された特定の請 求権に対応する義務につき、債務者の責任財産に属する範囲のものに限定さ れなければならない。ここでも執行機関は執行の実体的当否の精確な調査・ 判定を行うことはなく、対象が債務者の責任財産に属する外観を備えればそ れに対する執行が許されるという形式的処理をなす(外観主義)。このよう な外観に基づく執行が真実の権利関係と異なり自己の利益を害すると主張す る第三者が債権者を被告として、執行の不許を求めて提起する不服申立て 4.違法執行に対する不服申立て (1)執行抗告(民執 10) :執行抗告が認められるものは、個別的に規定される ①民事執行手続全体または特定の債権者との関係ないし執行救済を途絶させる 裁判 ⅰ)執行申立てや配当要求を却下する決定 →民執 14 ③、民執 45 ③、民執 51 ②、民執 105 ②、民執 145 ⑤ ⅱ)民事執行の手続を取り消す旨の決定 →民執 12 ① ②実態関係の変動ないし確定を生ずる裁判 ⅰ)売却の許可、不許可の決定(民執 74 ①(75 ②)) ⅱ)不動産引渡命令の申立てについての裁判(民執 83 ④) ③手続の中間的処分でも、関係人に重大な不利益を与えるおそれのある場合 ⅰ)売却、買受人のための保全処分の申立てについての裁判(民執 55 ⑤) ⅱ)強制管理決定(民執 93 ④) (2)執行異議(民執 11) :執行抗告の認められていない執行裁判所の執行処分あるいは執行官の執行 処分およびその遅滞に対して不服のある者(債権者、債務者または第三者) について認められる。 ※原則として、一審限りの期間の定めのない不服申立方法

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【第 15 講 民事保全手続】 テキスト 69 ∼ 89 頁 >>設問 24<< ①民事保全手続の「概要」を理解する ②民事保全手続が果たす機能は何か? :「暫定的な関係」の果たすべき意義・機能 <参考文献 −民事保全法の概説書等−> ①和田吉弘『基礎からわかる民事執行法・民事保全法』(弘文堂)194 頁以下 ②福永有利『民事執行法・民事保全法』(有斐閣)244 頁以下 ③瀬木比呂志『民事保全法』判例タイムズ社 ④中野貞一郎『民事執行・保全法概説』有斐閣双書 1.民事保全手続の概要 (1)民事保全制度の目的 :「前哨戦」としての民事保全/裁判までの間の「暫定的」な関係づけ eg.(正当性を欠く)リストラの問題 (2)民事保全手続の種類 仮差押え 民事保全手続 係争物に関する仮処分 仮処分 仮の地位を定める仮処分 (3)民事保全手続の性格・特徴 ①付随性(手続の重層性) ②暫定性 ③迅速性 ※オール決定主義(保 3 条) ④密行性

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(5)仮処分 ①係争物に関する仮処分 :保全されるべき権利が金銭債権以外の場合の仮差押え eg.処分禁止仮処分、占有移転禁止仮処分など ②仮の地位を定める仮処分 :本案の権利関係につき判決の確定までの仮の状態を定める措置を講じる措置 ※「満足的仮処分」ともいう。 eg.賃金の仮払いを命じる仮処分、建築工事続行禁止の仮処分など 2.「暫定的」な関係づけとしての意義・機能 (1)民事保全の要件 ①被保全権利(保全命令によって保護される権利)のあること a)仮差押え:被保全権利が金銭債権であること(保 20 条) b)係争物 :金銭の支払い以外の係争物に関する「給付」を目的とする請求権 であること c)満足的 :特に被保全権利の内容は問われない(②に吸収される) ②保全の必要性があること a)仮差押え:強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき(保 20 条) b)係争物 :現状の変更により債権者が権利を実現できなくなるおそれがある とき(保 23 条 1 項) c)満足的 :争いのある権利関係について債権者に生じる「著しい損害」また は「急迫の地位」を避ける必要のあること(保 23 条 2 項) ※以上の要件が「疎明」されたときに保全命令がくだされる。 (2)「暫定的な関係」が持つ意義・機能 ①民事保全の戦略的価値 →「仮処分の本案化」 ②民事保全手続による「交渉秩序」の回復 ※担保の提供

参照

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