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腐食センターニュースNo.056( )

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腐食センターニュース No. 056 2011 年 4 月 36

ACMセンサの利用例

辻川 茂男

1.住宅内部位での環境腐食性調査 この調査1)は栃木県下都賀郡野木町にある鉄鋼系工業化住宅(1985 年 4 月竣工,家族 5 人が居住) において、1994 年 9 月 26 日から開始した。 (財)日本建築センターの助成をえ、(社)プレハブ建築協会の当時の幹事社であった積水ハウス株式会 社のご好意に恵まれることができた。 住宅平面図を図 1 に示す。( )内に示した site 番号 1~10 にはACMセンサおよび亜鉛めっき鋼板 試験片を設置し、このうち*を付した 6 sites,1:浴室壁内,4:浴室天井裏,5:厨房床下,6:小屋 裏(2 階押入天井裏),7:南面和室床下,および 10:屋外においた測定器格納用「犬小屋」の軒下(直 接雨が当たらない),には温・湿度センサも併せて設置した-これら 6 部位では付着物量Ws も決定で きる。 図1. 調査住宅の平面図,1 階(上)・2 階(下). ACM センサは site 1~10 のすべてに設置, 温・湿度センサは*を付した6 部位に設置-これら部位で付着物量が測定できる. 1)元田 慎一,ほか 3 名:材料と環境,47,651~660(1998).

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腐食センターニュース No. 056 2011 年 4 月 37 付着物量Ws の測定 図2 には、1996 年 8 月 10,11,12 日の 3 日間でのA CMセンサ出力 I(上図)と相対湿度 RH(下図)との経 時変化を示した。site10(屋外,○)において出力I は毎 日の正午前後にもっとも小さく、真夜中の零時頃最大にな る。これはRHの変化によく対応している。これに比べて site 5(厨房床下,×)は出力I・RHとも変動が小さい。 図3 はセンサ出力IとRHとの関係図で、図中に記入し た右上がりの曲線群は海塩付着量Ws を変えたときの実測 値(較正曲線)で、たとえば「0」を付したそれは Ws= 100g/m2「-1」は 10-1g/m2のときの値である。この図中に 図2 のデータを記入すると、site10 のそれはWs=10-3g/m2 とWs=10-2との間にならびsite 5 のそれはWs=10-4g/m2 とWs=10-3g/m2との間にならぶ。 これらデータと較正曲線との比較により、Ws 値は site10 で約 3×10-3g/m2,site 5 では(3~4)×10-4g/m2 と推定され、後者は前者の1/10 である。 図2 1996 年 8 月 10 日,11 日,12 日における ACM センサ出力Iと相対湿度RHの経時変化. site10 は屋外のひさし下,site 5 は台所床下. 図 3 にはその他部位でのデータも記入されている。

site 5 と同じ床下部位である site 7(+)はほぼ同位置にプロットされ、これらの延長低RH側にsite 1 (◆,浴室壁内)がある。しかし、天井裏にあるsite 4(□)・site 6(▲)の ACM センサ出力は 10-4 μA 未満でWs は 1×10-4g/m2未満である*1 図3 ACM センサ出力Iと相対湿度RHとの関係. 図 4 部位ごとに測定された付着物量Ws の経時変化. 右上がりの実線は海塩付着量Ws を変えて測定した site 1*(1995 年 10 月末から)を除いて初期の測定不備が 較正曲線,site10 のデータ(○)はWs=10-3~10-2g/m2 あり、1994 年 11 月末と 1995 年 4 月末にフィルターの site 5 のそれはWs=10-4~10-3g/m2,に入っている. 性能改善を実施している. *1 site 4 のセンサ出力は設置開始後 4 年 10 ヶ月を経た 1999 年 7 月にはじめて検出され始めた。 元田 慎一,ほか 3 名:第 131 回腐食防食シンポジウム資料,p.1(2001 年 6 月).

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腐食センターニュース No. 056 2011 年 4 月 38 10-4μA 超の有意な出力が検出された 4 部位については 3 年間のWs の経時変化が図 4 のように求め られた。 開始 200 日内の初期挙動に不備が認められ、これらには簡易型フィルター(フィルター1,1994 年 11 月 30 日から),高性能フィルター(フィルター2,1995 年 4 月 27 日から)、の取り付けにより改善 されたとみられる。これには以下の事情が参考になる。ACM センサは垂直にのみ取りつけているのを ただ一例水平にも取り付けたsite 1(1995 年 10 月 25 日から)では約 120 日後(1996 年 2 月下旬)か らWs 値が増加し始め、約 170 日でほぼ定常的付着量 6×10-4g/m2となった。 住宅内部位では付着物量が定常値に達するのに170 日(1/2 年)も要するという事実は“新しい” 発見であった,たとえば1 年や数年の実曝露試験ではこの期間を除いて試験期間とせねばならない*2 *2 これらに比べて屋外では降雨により洗い流された付着物は 5 日(静岡県清水市)、2 日(沖縄県西原町) 経てば元の定常値を回復する,材料と環境,43,550(1994). 2.腐食速度

各部位での普通鋼の腐食速CR (Fe)(mm/y)は ACM センサ出力から求めた日平均電気量Q(C/day) から求めた。両者の関係式は

log CR (Fe)= 0.379 log

Q

-0.723 である*3 めっき亜鉛の腐食速度CR (Zn)(mm/y) はめっき鋼板試験片を設置(曝露)していた 9 部位におい て求めた。以下では各部位4 試験片の最大値をとりあげる。 曝露期間は3 年間であるが、付着物量が定常値を示した 2.42 年で腐食量を除しCR (Zn)を算出してい る。 以上のCR (Fe)とCR (Zn)とを文献値と比較した。 図5 は一般的な屋外曝露試験結果である。図中 (+) 印で表示されている F. C. Porter による marine(海 洋環境)でのデータを除外してえた回帰式は右上がりの実直線で示され以下の式で表される。

log CR (Fe) = 1.438+1.062 log CR (Zn) (2)

図6 は、本調査でえたCR(Fe),CR(Zn)の値(Nogi town)を、住宅分野での報告値(San-in District) と比較したもので、右上がりの実直線は上記の(2)である。屋外値では野木( )と山陰( )とは よく合っている。住宅内部位では山陰(○)データは回帰式まわりに分布するがややばらつきが大きく、 野木(■)データはCR (Zn)が回帰式より低めである。

*3 その後に公表した下記論文では,0.379 を 0.378 に,0.723 を 0.636 に修正している. 押川 渡,ほか 3 名:材料と環境,51,398-403(2002).

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腐食センターニュース No. 056 2011 年 4 月 39 図5 同一屋外地点に曝露された普通鋼とめっき亜鉛との 図 6 住宅分野で測定された普通鋼とめっき亜鉛の腐食 腐食速度の関係. 速度の関係.山陰地方(○, )と本調査(■, ). 右上がりの直線は+印を除いたデータの回帰線. 回帰線は図 5 と同じ. 上記山陰地方でえられたデータを同様に表示したものを図7 に示す。この図において仮想的な標準地 域屋外での腐食速度,鋼材αS=0.05mm/y,めっき亜鉛αZ=11gm-2y-1,およびそれらの1/7 と実測 値との比較を強調しているのは、屋内部位は屋外の 1/7 以下とする建築分野で定着してきた経験則を 視るためである。 住宅屋内外における鋼材・めっき亜鉛の腐食速度 αs=0.05mm/y, αz=11gm-2y-1. 図7 山陰地方の 5 住宅で測定された鋼材(普通鋼)とめっき亜鉛との 腐食速度2)3)の,標準的屋外腐食速度(鋼材α s ,めっき亜鉛αz )との比較.

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腐食センターニュース No. 056 2011 年 4 月 40 ・屋外部位では住宅B においてCR (Zn) (B″)がαzの約2.5 倍とやや大きい。 ・床下部位でのCR (Zn) が住宅 B,C,D,E でαz/7 を大きく超えている。 ・その他の屋内部位でαz/7 を大きく超えるのは住宅 E の一部位のみである。 以上のような特徴がよみとれCR (Zn) に経験則からのずれがあることがわかる。 脚注 2)石本 徳三郎:日本建築学会大会学術講演梗概集,No.1223,p. 445(1986). 3)石本 徳三郎,宮下 優:日本建築学会大会学術講演梗概集,No.1183,p. 365(1987). 上記経験則の観点から本調査対象の部位毎の腐食速度をみてみよう。表14)の最左欄にsite 1~10,そ の右にCR (Fe)を示した。 部位別係数 B( ) CR (10) /CR ( ) = ・ = BX( ) ・BK( をこのように分解できる標準部位 が存在するとき、標準部位での露出度係数BX =CR (10)/ CR ,BK =1,である。 =2,3 と 8 での BX( ) はそれぞれ 7.0,7.2 と 6.7 であるから平均値 6.97 で経験則の 7 にも等しいとみなせる。すなわちこれら 3 部位を標準部位とみなす。部位係数 BK( = CR /CR であるからCR として =2,3,8 の 3 者の平均値 3.73μm/y を用いて最右欄のよ うに算出した。 屋内標準部位での腐食速度CR =CR (10)/BX は BX が大きいほど小さくなる,この意味 では遮蔽度係数と解釈したい。住宅が雨・付着物などの侵入を遮蔽する機能度である。部位係数 BK( =CR /CR が 1 より大きく低下している和室床下( 7 ; 0. 67)・台所床下( 5 ; 0. 79) では耐食措置を厚くするために、たとえば最下階の柱脚部の係数を0.7 としている。 4)腐食防食協会編:住宅の腐食・防食Q&A,丸善,p. 22(2004).

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腐食センターニュース No. 056 2011 年 4 月 41 同様分野での適用例として以下の報告をあげる: 川口洋充,辻村太佳夫:ACM型腐食センサで測定した屋外暴露試験場の環境腐食性,第 48 回材料と 環境討論会講演集,p. 89(2001). 友浦誠一郎,横谷伸一:3棟の鉄鋼系工業化住宅各部における5年間の環境測定と暴露試験および ACMモニタリング結果,材料と環境2007 講演集,p. 335(2007).

辻川茂男名誉教授内閣総理大臣賞受賞について

辻川茂男東大名誉教授は、原子力災害の防止および安全の向上に対する顕著な功績が認められ、昨年 7 月 1 日の国民安全の日に総理大臣官邸において平成 22 年安全功労者表彰を受けられました。 辻川名誉教授は永年に亘り、経済産業省の原子力発電関係の委員会委員としてご活躍されるとともに、 腐食防食協会においても原子力発電関連の防食に関する研究およびご指導を通じて、その安全確保に貢 献されてきておられます。 心からお祝い申し上げるとともに、今後ともますますご活躍されることを祈念致します。

参照

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