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目次要約本編第1部第2部第3部第7部資料編第 1 章調査目的 第 1 節調査目的 近年 再生可能エネルギーの導入 普及が進められており 再生可能エネルギー発電 設備の増大に伴って その出力変動の大きさから余剰電力が増大することが見込まれている このような余剰電力の有効利用には 蓄電池あるいは水素等へ

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平成25年度

特許出願技術動向調査報告書(概要)

電解式水素製造及びその周辺技術

平成26年3月

問い合わせ先

特許庁総務部企画調査課

技術動向班

(2)

第4部

第5部

第6部

資料編

要約

本編

第1部

第2部

第3部

第7部

第1章 調査目的

第1節 調査目的 近年、再生可能エネルギーの導入・普及が進められており、再生可能エネルギー発電 設備の増大に伴って、その出力変動の大きさから余剰電力が増大することが見込まれて いる。このような余剰電力の有効利用には、蓄電池あるいは水素等への変換によるエネ ルギー貯蔵技術が不可欠であるが、例えば、風力発電の場合には変動周期が数日と比較 的長く、蓄電池では容量不足になりがちであるため、水素に変換して製造・貯蔵する技 術が注目を集めている。また、最終的には海外の大規模再生可能エネルギー発電適地で、 再生可能エネルギーを水素等に変換して輸入する可能性がある。 今後、水素製造コストが化石燃料より高コストである等の課題に対して、水素製造シ ステムの低コスト化、液化システムの高効率化といった取組が期待されており、研究開 発がより活発化することが見込まれる。 我が国においては、2013 年 7 月に文部科学省「戦略的創造研究推進事業先端的低炭 素化技術開発(ALCA)エネルギーキャリアプロジェクト研究加速プロジェクト」およ び2013 年 10 月には経済産業省「未来開拓研究プロジェクト再生可能エネルギー貯蔵・ 輸送等技術開発」が開始され、2013 年 11 月には、第 1 回「エネルギー戦略協議会」が 開催され、水素に関連したエネルギー貯蔵・輸送技術を含むエネルギー分野の課題達成 について検討中である。 このような背景のもと、電解式水素製造及びその周辺技術に関する特許の動向を調査 し、特許情報から技術全体を俯瞰するとともに、市場環境ならびに政策状況、技術競争 力等の状況との関連を分析し、今後の電解式水素製造及びその周辺技術に関するわが国 の方向性等を明らかにする。それらの検討を通じて、電解式水素製造及びその周辺技術 に関するわが国企業や大学、研究機関等の技術開発、知的財産戦略等の支援に資するも のである。 第2節 技術概要 1.電解式水素製造及びその周辺技術の概要 本調査では、電解式水素製造及びその周辺技術を図 1-1 の技術俯瞰図に示すように、 (1)水電解による水素製造、(2)液化システム、(3)貯蔵システムを調査対象とし 分析を行った。「水電解による水素製造」として、アルカリ水電解、固体高分子型水電 解、水蒸気電解を対象とした。「液化システム」としては、ガス冷凍、磁気冷凍を対象 とし、「貯蔵システム」としては、液化、圧縮、吸蔵および有機ハイドライド・アンモ ニアによる貯蔵を対象とした。 電解式水素製造のための電力源として、再生可能エネルギーと余剰電力がある。また、 水素のエネルギー利用用途として、燃料電池自動車、定置式燃料電池、家庭用燃料電池、 水素燃焼タービンおよび水素ステーション、スマートグリッド対応があることを示した。

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第4部

第5部

第6部

要約

本編

第1部

第2部

第3部

第7部

ネ ル ギ ー 電

電解による水素製造

液化システム

ガス 冷凍 冷凍サイクル 圧縮機 熱交換器 膨張器 運転制御 磁気冷凍 磁気冷凍 機 熱 交換器 循環ポ ン プ 運 転制御

貯蔵

システム

液化に よる 貯 蔵 容器 ボイ ルオフ カ ゙ス 回収 タ ン ク 昇圧ポ ンプ 気化 器 有機ハ イドラ イド ,アン モニア による貯蔵 材料 水素添加 反応器 脱水素反 応 器 圧縮 によ る 貯 蔵 耐圧容器 プレクー ル設 備 充填機 圧縮機 器 蓄圧器 吸蔵 によ る 貯 蔵 吸蔵材料 低圧容器 減圧装置 圧縮機 ハイブリッ ド 容 器

課題

高効率 耐久性 低コス ト 安 全性( 漏洩) ア ル カリ水電解 複極 板 セパレ ー タ KO H 溶液 O 2 /H 2 O H 2 /H 2 O ア ノード 給電体 カソー ド 固体高分 子型水 電解 水蒸気電 解 複極 板 固 体高分 子電 解質 アノ ード カ ソード 給電体 純水 O 2 /H 2 O H 2 /H 2 O 複極 板 固 体酸化 物電解質 アノ ード カソー ド 給電 体 純水 O2 H2 /H2 O 副生水 素 生物学 的方法 水素発 酵 光合成 法 造法)

エネルギ

ー利用

(用途)

燃料電池 自動車 定置式燃 料電池 家庭用燃 料電池 水素燃焼 タービン 化 学工 業 原料 半 導体 プロセ ス フ ロー ト ガラス 製造 製 鉄焼 鈍工程 光 ファ イ バー製 造 発 電機 冷却ガ ス (※ 対象外の用途 ) 水素貯蔵 容 器 Li イ オ ン 電 池 燃料 電池 モー タ ー パワ コン 空気 水素ス テーション 水素貯 蔵容器 圧縮 機 充填機 蓄圧器 スマ ート ク ゙リッ ド 対 応 ネ ル ギ ー 電

電解による水素製造

液化システム

ガス 冷凍 冷凍サイクル 圧縮機 熱交換器 膨張器 運転制御 磁気冷凍 磁気冷凍 機 熱 交換器 循環ポ ン プ 運 転制御

貯蔵

システム

液化に よる 貯 蔵 容器 ボイ ルオフ カ ゙ス 回収 タ ン ク 昇圧ポ ンプ 気化 器 有機ハ イドラ イド ,アン モニア による貯蔵 材料 水素添加 反応器 脱水素反 応 器 圧縮 によ る 貯 蔵 耐圧容器 プレクー ル設 備 充填機 圧縮機 器 蓄圧器 吸蔵 によ る 貯 蔵 吸蔵材料 低圧容器 減圧装置 圧縮機 ハイブリッ ド 容 器

課題

高効率 耐久性 低コス ト 安 全性( 漏洩) ア ル カリ水電解 複極 板 セパレ ー タ KO H 溶液 O 2 /H 2 O H 2 /H 2 O ア ノード 給電体 カソー ド 固体高分 子型水 電解 水蒸気電 解 複極 板 固 体高分 子電 解質 アノ ード カ ソード 給電体 純水 O 2 /H 2 O H 2 /H 2 O 複極 板 固 体酸化 物電解質 アノ ード カソー ド 給電 体 純水 O2 H2 /H2 O 副生水 素 生物学 的方法 水素発 酵 光合成 法 造法)

エネルギ

ー利用

(用途)

燃料電池 自動車 定置式燃 料電池 家庭用燃 料電池 水素燃焼 タービン 化 学工 業 原料 半 導体 プロセ ス フ ロー ト ガラス 製造 製 鉄焼 鈍工程 光 ファ イ バー製 造 発 電機 冷却ガ ス (※ 対象外の用途 ) 水素貯蔵 容 器 Li イ オ ン 電 池 燃料 電池 モー タ ー パワ コン 空気 水素ス テーション 水素貯 蔵容器 圧縮 機 充填機 蓄圧器 スマ ート ク ゙リッ ド 対 応 図 1-1 電 解式水 素製造 及 びそ の周辺 技術に 関する 技術俯 瞰図

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第4部

第5部

第6部

資料編

要約

本編

第1部

第2部

第3部

第7部

技術分野別の技術概要を以下に示す。 (1)水電解による水素製造 ①アルカリ水電解 電解槽は、アノード、カソードの電極、アルカリ電解液及びアノードとカソードの 間に隔壁(セパレータ)があり、水素を酸素の混合を防止する構造となっている。 電極はアノード、カソードともニッケルメッキした鉄電極あるいはニッケル系金属 電極のようなニッケル系材料が使用されている。隔壁には従来アスベストが使用さ れていたが、ポリエステル系材料などを用いた多孔質膜が使用されるようになって いる。電解液には 25~30%の KOH 水溶液が使用される。常圧で動作する電解槽 の場合は、80℃程度で運転され、電解電圧は 1.8~2.1V、電解電流密度 0.2A/cm2 程度で、電解効率は70~80%程度の性能になる。 ②固体高分子型水電解 固体高分子型水電解は電解効率の向上、電解電流密度の向上を目指して1970 年代 にゼネラル・エレクトリックにより開発が開始された。日本では、1990 年台に WE-NET プロジェクトで開発が行われた。 電解質は、プロトン導電性のフッ素樹脂系イオン交換膜が用いられる。これが固体 高分子型の名前の由来であり、隔壁の役割も兼ねている。電極はアノード、カソー ドとも白金、白金系合金あるいは白金担持カーボン等白金系の材料が使用される。 電解電圧は1.6V 程度、電解電流密度 1.0A/cm2 程度で、電解効率は 90~91%程度 の性能になる。 ③水蒸気電解 水蒸気電解は700~800℃程度の水蒸気を電気分解して水素を製造する技術で、電 解質としてイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミックならなる固体 酸化物が使用される。高温であるため、低温動作の他の水電解システムに比べ高効 率が期待でき、電解電圧1.29~1.32V、電解電流密度 0.6 A/cm2 程度が試験データ として得られている。 高 温 ガ ス 化 炉 な ど の 外 部 か ら 高 温 熱 を 利 用 す る 場 合 に は 、 エ ネ ル ギ ー 効 率 は 95.7%、内部の熱で自立運転する場合には 93.2%が期待できる。 (2)液化システム 水素液化システムはガス冷凍と磁気冷凍がある。ガス冷凍サイクルは大型のプラン トですでに実績のある技術であるが、磁気冷凍は開発中である。ガス冷凍サイクルに は、シンプル・リンデ法、ブレイトン法およびクロード法があり、いずれも水素を低 温高圧の気体とした後、断熱膨張で液化する原理は共通している。磁気冷凍は特定の 磁性体を磁化すると発熱し、消磁すると吸熱する磁気熱量効果による。圧縮機が不要 でエネルギー損失が少なく、小型化が可能であるという特徴がある。 (3)貯蔵システム 水素貯蔵システムは、液体水素、圧縮水素、吸蔵水素、有機ハイドライド・アンモ

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第4部

第5部

第6部

要約

本編

第1部

第2部

第3部

第7部

ニアからなる。 ①液体水素 -253℃という極低温での貯蔵は、LNG(沸点-160℃程度)に比べ、さらなる高断 熱性構造が要求される。定置式と自動車搭載型が開発・検討されている。 ②圧縮水素 現在は、14.7MPa(145 気圧)~19.6MPa(193 気圧)の高圧でボンベや長尺容器 に充填して、トラック、ローダー、トレーラーで輸送している。しかしながら、自 動車の水素積載量は1 回の燃料補給で 500km 走行する条件を満たすのは 70.9MPa の水素ボンベの搭載の必要性が明らかになったので、70.9MPa ボンベの製作とそ の仕様の標準化が行われている。 ③吸蔵水素 水素を吸蔵する水素貯蔵材料は、一般に高圧ガス保安法で規制されない 1.0MPa 以下あるいはそれよりやや高い水素圧力下、室温程度の温度で、高い体積水素エネ ルギー密度を達成できる。逆に水素を放出するためにはエネルギーが必要で、たと えば燃料電池自動車では搭載している燃料電池の排熱で水素を放出させることが 想定されている。 ④有機ハイドライド・アンモニア 有機ハイドライド法は、水素をトルエンなどの芳香族化合物に水素化反応(水素貯 蔵反応)によって固定を行い、メチルシクロヘキサンなどの対応する飽和水素化化 合物として、常温・常圧の穏和な条件での液体状態で貯蔵・輸送を行い、使用場所 で脱水素反応(水素発生反応)によって水素を発生させるとともに、トルエンなど の芳香族化合物を回収して再利用する方法である。有機ハイドライトとしては、ベ ンゼンに水素付加を行ったシクロヘキサン、ナフタレンに水素付加を行ったデカリ ン等もある。 また、アンモニアは化学品や肥料の原料として大規模に製造されているが化合物中 の水素の割合(水素貯蔵率)が高いため、エネルギーキャリアの候補のひとつにな る。間接製造法と言われる水素と窒素からの合成、直接合成法と言われる窒素と水 からの合成の効率化や水素の発生反応となるアンモニアの分解が効率的に行える かが課題である。 2.電解式水素製造及びその周辺技術と応用産業 (1)水電解電力源 水電解用の電力源として、再生可能エネルギーである風力発電、太陽光発電、水 力発電および地熱発電等がある。電力単価の低い地域では系統電力余剰電力も水電 解用電源として考えられる。 (2)エネルギー利用 燃料電池自動車、定置式燃料電池、家庭用燃料電池、水素燃焼ガスタービンが水 素のエネルギー分野における最終利用先と考えられる。また、これらの需要家へ水素

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第4部

第5部

第6部

資料編

要約

本編

第1部

第2部

第3部

第7部

第2章 特許動向

第1節 調査方法 特許情報収集に使用するデータベースは、PatBase(アールダブリュエス グループ リ ミテッド、マインソフト リミテッドの登録商標)とした。調査対象は 2001 年以降に出 願され、2013 年 11 月 5 日時点で PatBase に収録されている特許であって、収録対象国 のいずれかにおいて、公開または登録されている特許とした。解析対象件数を表2-1 に 示す。 表2-1 解析対象件数(特許) 日本特許 外国特許 合計 解析対象(パテントファミリー単位) 4,016 4,556 8,572 注1)解析対象は、日本特許と外国特許の合計から重複を除いた件数(特許検索日:2013 年 11 月 5 日) 注 2)文献の統計的解析処理は、パテントファミリーを、これに一般的には複数含まれる特許公報単位に分 割して行う。つまり、パテントファミリー1 件に例えば 3 件の特許公報が含まれていれば 3 件の特許出 願として扱う。 第2節 全体動向 1.日米欧中韓への出願状況 2001~2011 年における日米欧中韓への出願件数は 7,847 件、その内、日本への出 願は 29.8%(2,342 件)を占めており、出願先国別の出願シェアでは最も多く、米国、 欧州への出願件数は日本よりやや少なく同程度であり、中国への出願件数は日本への 出願の約半分程度となっている。また、日本国籍出願人の出願は33.9%(2,661 件) を占めており、出願人国籍別の出願シェアでも最も多い。 日米欧中韓への出願件数は 2001~2003 年に増加傾向を示し、その後 2008 年までは 700~800 件程度で推移している。2001~2003 年の増加傾向は、日米欧国籍出願人の 出願動向による影響が大きい。中韓の国籍出願人の出願件数が増加し始めた時期は、 2006~2007 年以降とみられ、今後の動向が注目される。 図2-1 日米欧中韓への出願における出願先国別の出願件数 (出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 日本への 出願 2,342件 29.8% 米国への 出願 2,061件 26.3% 欧州への 出願 1,740件 22.2% 中国への 出願 1,095件 14.0% 韓国への 出願 609件 7.8% 合計 7,847件

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第4部

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要約

本編

第1部

第2部

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図2-2 日米欧中韓への出願における出願先国別の出願件数推移 (出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 注)2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していな い可能性がある。各年の出願先国の表示順は凡例の表示順と同様である。 図2-3 日米欧中韓への出願における出願人国籍別の出願件数 (出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 566 742 941 785 818 704 788 742 663 653 445 0 200 400 600 800 1,000 1,200 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出 願 件 数 出願年(優先権主張年) 出願先国 日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 優先権主張 2001-2011年 日本国籍 2,661件 33.9% 米国籍 1,925件 24.5% 欧州国籍 1,880件 24.0% 中国籍 444件 5.7% 韓国籍 443件 5.6% その他 494件 6.3% 合計 7,847件

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資料編

要約

本編

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図2-4 日米欧中韓への出願における出願人国籍別の出願件数推移 (出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 注)2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していな い可能性がある。各年の出願人国籍の表示順は凡例の表示順と同様である。 2.日米欧中韓相互の出願状況 日本国籍出願人の出願は、日本への出願の76.6%を占め、日米欧中韓の中で自国への 出願に占める比率が最も高い。 各地域間の出願収支を見ると、日本と他の地域との間では、欧州を除き、いずれも日 本からの出願件数が日本への出願件数を上回る(日欧相互の出願件数は同数)。また、米 国と欧州との間では、米国からの出願件数が欧州からの出願件数を上回っているが、差 は少ない。 米国と欧州、日本と欧州の相互で出願が活発に行われていることがうかがえる。一方、 中国と他の地域との間では、いずれも中国への出願件数が中国からの出願件数を相当数 上回る。 図2-5 日米欧中韓相互の出願件数(出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 1,795 372 224 183 87 209 1,018 380 202 116 224 366 995 192 103 5 16 5 416 2 44 78 22 26 273 65 211 114 76 28 出 願 先 国 日本 米国 欧州 中国 韓国 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 566 742 941 785 818 704 788 742 663 653 445 0 200 400 600 800 1,000 1,200 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出 願 件 数 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 優先権主張 2001-2011年

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第4部

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第1部

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3.出願人の状況 日米欧中韓への出願における出願件数ランキングでは、上位10 位に日本企業 3 社 が入っている。特に 1~2 位を占めている日本国籍出願人は、3 位以下との出願件数 の差が大きく、積極的に出願が行われている。 日米欧中韓への出願における出願件数ランキング 1 位のトヨタ自動車は、2001 年 以降、毎年の出願件数に変動があるものの、出願件数ランキング 2 位の本田技研工業 とともに毎年上位を占めている(図 2-1-23)。また、水素ガス製造メーカのエアープ ロダクツ・アンド・ケミカルズ(米国)、リンデ(ドイツ)、エア・リキード(フラン ス)が 10 位に入っている。なお、6 位のビック(フランス)は、2003 年に出願した 62 件を含む 1 ファミリーの存在が寄与している。 表2-2 日米欧中韓への出願における出願人別出願件数ランキング (上位10 者、出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 図2-6 日米欧中韓への出願における出願件数ランキング上位出願人の出願件数推移 (上位10 者、出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 注)2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していな い可能性がある。 順位 出願人 属性 件数 1 トヨタ自動車 企業 487 2 本田技研工業 企業 380 3 GM グローバル・テクノロジー・オペレーションズ(米国) 企業 214 4 フランス原子力・代替エネルギー庁(フランス) その他 146 5 リンデ(ドイツ) 企業 123 6 ビック(フランス) 企業 116 7 エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ(米国) 企業 115 8 豊田自動織機 企業 107 9 エア・リキード(フランス) 企業 105 10 ゼネラル・エレクトリック(米国) 企業 103 0 20 40 60 80 100 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 技 術 区 分 付 与 件 数 出願年(優先権主張年) トヨタ自動車 本田技研工業 GM グローバル・テクノロジー・オペ レーションズ(米国) フランス原子力・代替エネルギー庁 (フランス) リンデ(ドイツ) ビック(フランス) エアープロダクツ・アンド・ケミカル ズ(米国) 豊田自動織機 エア・リキード(フランス) ゼネラル・エレクトリック(米国) 優先権主張 2001-2011年

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第4部

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第6部

資料編

要約

本編

第1部

第2部

第3部

第7部

第3節 技術区分別動向 1.技術分野別の出願状況 全体の67.9%(5,327 件)が水素貯蔵システムに関する出願で、次いでアルカリ水電 解に関する出願が 20.8%(1,636 件)、固体高分子型水電解に関する出願が 13.4%(1,048 件)、水蒸気電解に関する出願が5.2%(406 件)、水素液化システムに関する出願が 1.2% (98 件)となっている。 各年の出願件数では、2003 年まで増加傾向にあった水素貯蔵システムは、2004 年以 降減少傾向となっている。2006 年以降アルカリ水分解に関する出願がやや増加傾向にな っている。水素液化システムに関する出願は低位で推移している。 日米欧中韓の出願人国籍別技術分野別では、水素貯蔵システムおよび固体高分子型水 電解の分野において、日本国籍出願人の出願件数が最も多い。その他のアルカリ水電解、 水蒸気電解および水素液化システムでは欧州国籍出願人の出願件数最も多い。アルカリ 水電解では、欧州、米国に次ぎ、3 位となっている。 図2-7 日米欧中韓への出願における技術分野別の技術区分付与件数 (出願、出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 1,636 1,048 406 98 5,327 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 アルカリ水電解 固体高分子型水電解 水蒸気電解 水素液化システム 水素貯蔵システム 技術区分付与件数 出願件数 7,847件

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要約

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第1部

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図2-8 日米欧中韓への出願における技術分野別の技術区分付与件数推移 (出願、出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 注)2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していな い可能性がある。 図2-9 日米欧中韓への出願における出願人国籍別技術分野別の技術区分付与件数 (登録、出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 0 100 200 300 400 500 600 700 800 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 技 術 区 分 付 与 件 数 出願年(優先権主張年) アルカリ水電解 固体高分子型水電解 水蒸気電解 水素液化システム 水素貯蔵システム 優先権主張 2001-2011年 102 165 23 13 717 150 66 34 7 579 141 89 57 11 367 41 24 8 1 143 62 19 4 156 50 9 3 2 101 技 術 分 野 出願人国籍 アルカリ水電解 固体高分子型水電解 水蒸気電解 水素液化システム 水素貯蔵システム 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

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2.個別技術分野における出願状況 ①アルカリ水電解 水素貯蔵システムおよび固体高分子型水電解の分野では、日本国籍出願人の出願が 最も多く、アルカリ水電解、水蒸気電解および水素液化システムでは欧州国籍出願人 の出願が最も多い。 日本国籍出願人の出願は、アルカリ水電解では、欧州、米国に次いで、3 位となっ ている。 日本国籍出願人は、水素貯蔵システムに次いで、固体高分子型水電解、アルカリ水 電解の順に出願が多いが、日本国籍出願人以外はいずれも、水素貯蔵システム、アル カリ水電解、固体高分子型水電解の順に出願が多い。 図2-10 日米欧中韓への出願におけるアルカリ水電解に関する 出願人国籍別の出願件数(出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 図2-11 日米欧中韓への出願におけるアルカリ水電解に関する 出願人国籍別の出願件数推移(出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 注)2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していな い可能性がある。各年の出願人国籍の表示順は凡例の表示順と同様である。 104 136 154 129 103 148 197 211 185 156 113 0 100 200 300 400 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出 願 件 数 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 優先権主張 2001-2011年 日本国籍 285件 17.4% 米国籍 439件 26.8% 欧州国籍 474件 29.0% 中国籍 135件 8.3% 韓国籍 118件 7.2% その他 185件 11.3% 合計 1,636件

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②固体高分子型水電解 2001~2011 年における日米欧中韓への出願件数は 1,048 件、その内、日本国籍出 願人の出願は 36.7%(385 件)を占めており、出願人国籍別の出願シェアで最も多い。 日米欧中韓への出願件数は 2001 年以降、一時期を除き、概ね 100 件前後で推移して いる。その中で日本国籍出願人の出願件数は、2007 年以降、増加傾向にある。 日米欧の国籍出願人の出願が大部分を占め、中韓の国籍出願人の出願は、まだ少数 である。 図2-12 日米欧中韓への出願における固体高分子型水電解に関する出願人国籍別の 出願件数(出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 図2-13 日米欧中韓への出願における固体高分子型水電解に関する 出願人国籍別の出願件数推移(出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 注)2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していな い可能性がある。各年の出願人国籍の表示順は凡例の表示順と同様である。 113 98 109 71 70 68 91 113 97 137 81 0 100 200 300 400 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出 願 件 数 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 優先権主張 2001-2011年 日本国籍 385件 36.7% 米国籍 174件 16.6% 欧州国籍 343件 32.7% 中国籍 69件 6.6% 韓国籍 36件 3.4% その他 41件 3.9% 合計 1,048件

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日本国籍 91件 22.4% 米国籍 70件 17.2% 欧州国籍 191件 47.0% 中国籍 31件 7.6% 韓国籍 8件 2.0% その他 15件 3.7% 合計 406件 ③水蒸気電解 2001~2011 年における日米欧中韓への出願件数は 406 件、その内、欧州国籍出願 人の出願は 47.0%(191 件)を占めており、出願人国籍別の出願シェアで最も多い。 日本国籍出願人の出願は22.4%(91 件)で、欧州に次いで、2 位となっている。 日米欧中韓への出願件数は 2001 年以降、増減を繰り返しながら、漸増傾向にある。 その中で2007 年以降は、欧州国籍出願人の出願動向による影響が大きい。 日米欧の国籍出願人の出願が大部分を占め、中韓の国籍出願人の出願は、まだ少数 である。 図2-14 日米欧中韓への出願における水蒸気電解に関する出願人国籍別の出願件数 (出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 図2-15 日米欧中韓への出願における水蒸気電解に関する出願人国籍別の出願件数推移 (出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 注)2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していな い可能性がある。各年の出願人国籍の表示順は凡例の表示順と同様である。 13 8 25 48 28 30 69 40 34 81 30 0 100 200 300 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出 願 件 数 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 優先権主張 2001-2011年

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日本国籍 32件 32.7% 米国籍 16件 16.3% 欧州国籍 45件 45.9% 中国籍 2件 2.0% 韓国籍 0件 0.0% その他 3件 3.1% 合計 98件 ④水素液化システム 2001~2011 年における日米欧中韓への出願件数は 98 件、その内、欧州国籍出願人 の出願は 45.9%(45 件)を占めており、出願人国籍別の出願シェアで最も多い。日 本国籍出願人の出願は32.7%(32 件)で、欧州に次いで、2 位となっている。 日米欧中韓への出願件数は 2001 年以降、増減を繰り返しながら、低位で推移して いる。その中で2005 年以降は、欧州国籍出願人の出願動向による影響が大きい。 日米欧の国籍出願人の出願が大部分を占め、中韓の国籍出願人の出願については、 2011 年に中国籍出願人の出願が 2 件あるのみである。 図2-16 日米欧中韓への出願における水素液化システムに関する出願人国籍別の 出願件数(出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 図2-17 日米欧中韓への出願における水素液化システムに関する 出願人国籍別の出願件数推移(出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 注)2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していな 13 4 6 15 16 8 8 12 1 10 5 0 25 50 75 100 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出 願 件 数 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 優先権主張 2001-2011年

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⑤水素貯蔵システム 2001~2011 年における日米欧中韓への出願件数は 5,327 件、その内、日本国籍出 願人の出願は 37.7%(2,006 件)を占めており、出願人国籍別の出願シェアで最も多 い。日米欧中韓への出願件数は 2001~2003 年に増加し、その後は減少傾向である。 2001 年以降、日米欧国籍出願人の出願動向、特に日本国籍出願人の出願動向による影 響が大きい。中韓の国籍出願人の出願は、近年、その存在が明確になってきており、 今後の動向が注目される。 出願人国籍別で見れば、吸蔵水素、圧縮水素、有機ハイドライド・アンモニアに関 する出願では、日本国籍出願人の出願件数が最も多い。特に、常温・常圧で水素を 輸送できることから注目を集めている有機ハイドライドの出願においては、日本国籍 出願人の比率は特に高い。 図2-18 日米欧中韓への出願における水素貯蔵システムに関する出願人国籍別の 出願件数(出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 図2-19 日米欧中韓への出願における水素貯蔵システムに関する 出願人国籍別の出願件数推移(出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 注)2011 年以降はデータベース収録の遅れ、PCT 出願の各国移行のずれ等で全出願データを反映していな い可能性がある。各年の出願人国籍の表示順は凡例の表示順と同様である。 日本国籍 2,006件 37.7% 米国籍 1,360件 25.5% 欧州国籍 1,087件 20.4% 中国籍 284件 5.3% 韓国籍 305件 5.7% その他 285件 5.4% 合計 5,327件 380 559 677 585 625 504 496 412 411 398 280 0 200 400 600 800 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出 願 件 数 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 優先権主張 2001-2011年

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図2-20 日米欧中韓への出願における水素貯蔵システムに関する構成別出願人国籍別の 技術区分付与件数(出願、出願年(優先権主張年):2001~2011 年) 110 164 19 350 1,055 599 29 81 19 41 163 840 373 32 145 8 9 201 623 194 56 9 11 11 36 178 52 6 5 1 4 16 194 99 10 12 8 19 199 62 5 構 成 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 圧縮水素 吸蔵水素 その他 不特定 有機ハイドライド 液体水素 アンモニア

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第3章 研究開発動向

第1節 調査方法 研究開発動向調査に使用するデータベースは、JSTPlus(独立行政法人 科学技術振興 機構の登録商標)とした。調査対象は、2008~2012 年発行の主要論文誌に掲載された 原著論文とした。 表3-1 解析対象件数(論文) 検索結果 解析対象 3,803 注:研究開発動向については、水電解分野(アルカリ水電解、固体高分子型水電解、水蒸気電解)の論 文発表件数を調査対象としており、特許動向の調査対象(上記に加えて、水素液化システム、水素 貯蔵システムを含む)とは異なることに注意を要する。 第2節 全体動向 2008~2012 年における研究者所属機関国籍別の水電解分野の論文発表件数は 387 件、 その内、欧州からの発表は34.4%(133 件)を占めており、最も多い。 推移をみると、2008~2010 年については増加し、2011 年は 2010 年とほぼ同じ水準 であったが、一転2012 年は減少となった。欧州からの発表による影響が大きい。 論文発表件数ランキングの上位6 位(7 者)には、欧州が 4 者、日本が 2 者、中国が 1 者入っている。 図3-1 研究者所属機関国籍別の論文発表件数 日本国籍 59件 15.2% 米国籍 68件 17.6% 欧州国籍 133件 34.4% 中国籍 39件 10.1% 韓国籍 19件 4.9% その他 69件 17.8% 合計 387件

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図3-2 研究者所属機関国籍別の論文発表件数推移 表3-2 研究者所属機関別論文発表件数ランキング(上位 6 位) 第3節 技術区分別動向 全体の35.9%(139 件)が固体高分子型水電解に関する発表で、次いで水蒸気電解に 関する発表が 34.1%(132 件)、アルカリ水電解に関する発表が 33.6%(130 件)であ り、3 者はほぼ同じ比率であった 。 推移を見ると、アルカリ水電解は期間を通して増加傾向であるが、水蒸気電解は 2010 年に、固体高分子型水電解は2010~2011 年に、ピークがある 。 特許動向と比べると、アルカリ水電解より出願が少ない、水蒸気電解、固体高分子型 水電解の発表が多い傾向にある。 図3-3 論文発表における技術分野別の技術区分付与件数 54 63 99 102 69 0 20 40 60 80 100 120 2008 2009 2010 2011 2012 発 表 件 数 発表年 研究者所属機関国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 発表年 2008-2012年 順位 研究者所属機関 属性 件数 1 デンマーク工科大学(デンマーク) 大学 12 2 フランス国立科学研究センター(フランス) 大学 11 3 ベオグラード大学(セルビア) 大学 9 4 九州大学 大学 7 4 清華大学(中国) 大学 7 6 東芝 企業 6 6 チュクロバ大学(トルコ) 大学 6 130 139 132 アルカリ水電解 固体高分子型水電解 水蒸気電解 発表件数 387件

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図3-4 論文発表における技術分野別の技術区分付与件数推移 また、いずれの分野でも、欧州からの発表が最も多く、日本からの発表は、固体高分 子型水電解で欧州に次いで 2 位、水蒸気電解およびアルカリ水電解の分野では、欧州、 米国に次いで 3 位となっている。 日本からの発表は、固体高分子型水電解の分野で最も多いのに対し、米国からの発表 は水蒸気電解で、欧州からの発表はアルカリ水電解で最も多い。 特許動向と比べると、欧州国籍のアルカリ水電解では出願件数も多く、論文発表件数 の動向と一致する。日本国籍の固体高分子型水電解でも、同様の傾向である。 図3-5 論文発表における研究者所属機関国籍別技術分野別の技術区分付与件数 0 10 20 30 40 50 2008 2009 2010 2011 2012 技 術 区 分 付 与 件 数 発表年 アルカリ水電解 固体高分子型水電 解 水蒸気電解 発表年 2008-2012年 14 25 21 21 18 30 59 41 41 10 14 16 3 7 9 23 34 15 技 術 分 野 研究者所属機関国籍 アルカリ水電解 固体高分子型水電解 水蒸気電解 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他

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第4章

市場環境

第1節 水素・燃料電池の導入シナリオ 水素の従来用途に対応した、小形の水電解式水素製造装置は販売されているが、エネ ルギー利用用途の水電解式水素製造装置の市場はまだ存在しない。 2015 年に燃料電池自動車が販売開始されるが、そこで急激に水素の需要が高まるわけ ではなく、燃料電池自動車および家庭用燃料電池等の販売量の増加に従い、2030 年以降 に現状の水素製造能力を上回る需要が生じると見られている。その時点で海外の再生可 能エネルギー発電適地で発電された電力から水電解により製造された水素が輸送される 必要性が生じる。 図4-1 燃料電池自動車と水素ステーションの普及に向けたシナリオ 図4-2 家庭用燃料電池の普及シナリオ

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第2節 再生可能エネルギーによる電解式水素製造 再生可能エネルギー発電の出力変動に対応可能な、水電解式水素製造装置の実証試験 が欧米を中心に行われている。発電方式とそれぞれの国、地域によって、必要とされる 技術が異なる。 欧米および日本で、各種再生可能エネルギーに対し、様々な設備構成で実証プロジェ クトが行われている。 各メーカの公表資料による水電解式水素製造装置のシェアは、フランス、米国、カナ ダの順であった。Proton Onsite(米)と神鋼環境ソリューション(日)は固体高分子型 水電解であるが、それ以外はアルカリ水電解である。水電解の方式別では、アルカリ水 電解が固体高分子型水電解を上回っている。 表4-1 再生可能エネルギーを利用した電解式水素製造の導入事例 図4-3 主な水電解水素製造装置メーカの実績 地域(プロジェクト名) 期間 主要設備 ドイツ Gut Dauerthal (Gas to Power ) 2011年運転開始 風力発電3台×2MW、水電解120 Nm³/h バイオマスガス化プラント1,540kW ノルウェーUtsira 島 2004-2008年 風力発電600kW×2、水電解10 Nm³/h、水素燃焼エンジン55kW、燃料電池10kW デンマーク Lolland島 2007年~ 風力発電、水電解装置、燃料電池コジェ ネレーション1.5kW フランス コルシカ島 (MYRTE) 2012年1月~ 太陽光発電560kW 水電解装置200kW 燃料電池200kW 米国 Colorado州 (Wind2H2) 2007~2010年 風力発電100kWと10kW、太陽光発電 10kW、水電解装置2.25kg/ day×2台お よび12 kg/day×1台 カナダ British Columbia州 (hydrogen asisted renewable power) 2010年9月~ 水力発電2.12MW 水電解装置320kW 燃料電池100kW 北海道 稚内公園新エネルギー サテライト 2005年~ 風力発電225kW、水電解装置3.5 Nm³ /h、燃料電池4.8kW、水素吸蔵合金 秋田県 仁賀保高原(風力発電機 利用水素発電システム実証試験) 2011年11月~2012年 3月 風力発電20kW、水電解装置、水素添加 装置、水素分離装置、有機ハイドライド (メチルシクロヘキサン)タンク90L、水素 混合燃焼ディーゼルエンジン3kW 100 100 500 500 1100 2000 3000 0 500 1000 1500 2000 2500 3000

Industrie Haute Technology (iht)(スイス) 神鋼環境ソリューション(日) NEL Hydrogen(ノルウェー) Wasserlekrolyse Hydrotechnik(独) Hydrogenics(加) Proton Onsite(米) Mcphy(仏) 累積出荷台数(台)

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第5章

政策動向

日本・米国・欧州・中国・韓国・カナダの各国・地域に対し、再生可能エネルギー、水 素、水の電気分解による水素製造の3 つの観点で政策、プロジェクトを整理した。 再生可能エネルギーに対しては、各国・地域とも導入目標を定め国家プロジェクトを立 ち上げ再生可能エネルギーシステムの構築を推進している。 水素に関しては、燃料電池自動車の導入に対する取り組みと関係が深く、2015 年の燃料 電池自動車普及開始をめざし、水素ステーションの建設計画が発表されている。日本・欧 州が積極的であり、米国はカリフォルニア州が計画を公表している。これらに比べ、中国、 韓国、カナダは活動が限定的である。 水の電気分解による水素製造については、日本では 1992 年にニューサンシャイン計画 の一環として水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)計画が開始され、 その中で電解式水素製造技術が研究開発された。しかしながら、WE-NET 以降、水電解に よる水素製造をテーマにした大規模な国家プロジェクトは日本では行われてこなかった。 これに対し、米国では2003 年から 2013 年の大統領の水素政策により、Wind2H2 プロジ ェクトによる風力発電からの水電解水素製造の実証や、DOE のプロジェクトにより水電解 による水素製造技術が継続して行われてきた。欧州においても、FP7 の FCH JU の水素エ ネルギー関係予算の約30%が水電解技術の開発に使用されてきた。さらに中国では EV863 プロジェクト、韓国では21st Frontier Program において、水電解による水素製造の技術 開発が開始されたという情報もある。以上のような状況から、日本でも 2015 年に再生可 能エネルギー貯蔵・輸送等技術開発およびエネルギーキャリアプロジェクトが開始された ところである。これらプロジェクトには、水電解による水素製造技術だけはなく、有機ハ イドライドや液体水素、アンモニア等をエネルギーキャリアとして含む総合的なプロジェ クトになっている。 表5-1 各国の政策動向(日本、米国、欧州) 日 本 米 国 欧 州 再 生 可 能 エ ネ ルギ ー の 利 用 拡大 ・FIT 導入:2012 年 ・2020 年目標:10 兆円市場 の創出 ・2030 年目標:25~30%以上 ・FIT 導入:州レベルで実施 2008 年(カルフォルニア州) ・2020 年目標:20% 2025 年目標:25% ・シェールガス革命により若干ト ーンダウン。 ・FIT 導入:1991 年(ドイツ) 2020 年目標:21% 2030 年目標:30%(ドイツ では 50% 水 素 の 利 用 拡 大 ・水 素 ステーション:1,000 箇 所(2025 年) ・燃料電池自動車導入 2015 年 ・燃料電池自動車 200 万台 (2025 年) ・カルフ ォルニ ア州 の水 素 ステ ーション:68 箇所(2015 年)、 100 箇所(2023 年) ・ドイツの水素ステーション: 50 箇所(2015 年)、400 箇 所(2023 年) 水素製造 の 支 援 ・1970 年代のサンシャイン計 以来、継続的なプロジェクト。 ・水電解法の大規模プロジェ クトは WE-NET 以来「再生可 能 エ ネ ル ギ ー貯 蔵 ・ 輸 送 等 技術開発」までなかった。 ・Wind2H2 や DOE による水電解 による水素製造プロジェクト。 ・シェールガス改 質 法 による水 素製造の支援(1.21 ㌦/GGE と いう価格目標) ・FP7(FCH JU)による推進 ・再 生 可 能 エネルギーから の 水 素 製 造 ( Power to Gas ) プ ロ ジ ェ ク ト 等 の 推 進。

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表5-2 各国の政策動向の(中国、韓国、カナダ) 中 国 韓 国 カナダ 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 利用拡大 ・2020 年目標:15% ・FIT 導入:2002 年 ・2012 年に RPS にシフト ・2020 年目標:6.08% ・FIT 導入:2006 年(オンタリ オ州) ・2020 年目標:90%(現状: 16.9%) ※ 京 都 議 定 書 か ら 脱 退 (2011.12) 水素 の 利 用拡 大 ・燃料電池自動車導入 2015 年 ・水 素 ステーション:4箇 所 あ るが、普及の動きはない。 ・燃料電池自動車 5 万台(2020 年) ・ 水 素 ス テ ー シ ョ ン : 43 箇 所 (2015 年)、168 箇所(2020 年) ※前大統領の政策 ・国 と し ての 燃 料 電 池 自 動 車 ・水 素 ステーションの普 及計画はない。 ・ブリティッシュコロンビア州 では、2014 年 までの予 定 で燃 料 電 池 バスの実 証 を 行っている。 水 素 製 造 の 支援 ・水電解による水素製造の技 術 開 発 が開 始 さ れたと こ ろ で あ る 。 ( EV 863 Project) ・水電解による水素製造の技術 開 発 が 開 始 さ れ た と こ ろ で あ る。 (21stFrontier Program 2003-2013 年) ・水 力 発 電 による電 力 を利 用 し た水 素 製 造 を積 極 的 に推進。

第6章

標準化動向

水素の市場として期待される燃料電池と燃料電池自動車の標準化の検討は、それぞれ IEC/TC105、ISO/TC22 で行われている。日本は、その中の WG で複数のコンビナの地位 を得て、主導的に推進することに成功している。また、水素の国際標準化については、 ISO/TC197 で検討されており、これまでに数々の国際標準が作られてきた。こちらでも日 本は、複数のWG でコンビナとなっている。燃料電池と燃料電池自動車と同様に主導的に 進められる体制となっており、成果が期待される。一方、水素関係の国際標準化はこれら の審議団体が METI(基準認証ユニット)の指導の下、連携を取り推進しているが成果を 上げ易くなっている理由の一つと考えられる。 水電解水素製造装置の安全・性能についてはすでに国際規格が作られている。また、水 電解水素製造装置の本体内部構造は標準化しない項目になる。基準化する項目とノウハウ として保有する項目を明確にすることは、国際競争力維持のための重要なポイントである。 有機ハイドライドのエネルギーキャリアとしての利用はまだ標準化の動きはない。有機 ハイドライドの技術は、特許面、実証事業の取り組みの面で日本が世界一であるので、日 本主導で標準化を推進すべきである。 日本において、国際標準に日本の国内基準を適合させるために、水素ステーションを初 めとした規制の緩和が必要とされている。そのための技術の裏付けを示すためのデータ収 集のための国のプロジェクトが行われており、試験のための施設も整えられている。その ような状況の中、平成 25 年6月に「次世代自動車の世界最速普及」が閣議決定され、今 後水素関係の規制緩和が短期間で推進されることになった。

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第7章

総合分析

第1 節 技術競争力・産業競争力 1.日本の技術競争力 アルカリ水電解の特許出願では、日本は欧州、米国に次いで3位であり、論文につい ても同様であった。日本では、アルカリ水電解による装置を開発販売している企業がほ とんどなく、国による研究開発プロジェクトの行われてこなかった影響が考えられる。

欧州では、DE NORA(伊)や BAYER(独)等のメーカやフランス原子力庁が上位出

願人となっている。米国では、ゼネラル・エレクトリックや GM グローバル・テクノロ ジー・オペレーションズなどである。日本の出願人は上位 10 位には含まれなかった。 注目特許を見た場合には、ゼネラル・エレクトリックの「電解質」に関する特許が被 引用件数で他を引き離し 1 位であり、技術的に注目されていることがわかった。また、 日本の企業では、旭化成ケミカルズ、東ソー、ペルメリック電極の「電極」に関する特 許の引用件数が多かった。 アルカリ水電解では、各地域の出願人のいずれもが「高効率化」を課題とした特許出 願が最も多く、その「高効率化」を「電解セル」あるいは「電極」構造を改善すること により対応しようとしている。一方、論文では「高効率化」を課題としたものが多いの は同じであったが、対応策として「電極」改善にしたものが多かった。先に述べた日本 の3 企業の特許は、「電極」に対応するものである。 電解式水素製造技術に類似した技術として、食塩電解があり、電解プラントとして旭 化成ケミカルズが世界シェアの1位である。隔膜についても旭化成ケミカルズが1位で、 旭硝子を加えると半分以上が日本のシェアとなり、技術ポテンシャルの高さが示されて いる。水電解において、水素発生極は食塩電解の電極が使用できる。酸素発生極は、食 塩電解では塩素の発生極に相当するので、いかに過電圧の低い酸素発生極を開発するか が問題になる。ただし、材料的には塩素の方が過酷であったため、今までのノウハウを 活かした材料選択の余地は広がるはずである。 海外のDE NORA(伊)も同様に食塩電解を手がけるメーカであり、日本の食塩電解 プラントメーカーであるクロリンエンジニアズの株式を 2010 年に三井物産から取得し て、51%の株主となっている。 固体高分子型水電解の特許出願では、日本、欧州、米国の順で日本の出願件数が最も 多かった。論文では、欧州、日本、米国の順であった。上位出願人として、本田技研工 業が 1 位、日立製作所 4 位、日立造船 6 位と優位性を示している。海外で電解装置メー カとして上位にあるのは、ITM パワーリサーチのみであった。他は研究機関や部品メー カである。 注目特許でも、この分野は日本国籍が多く、、本田技研工業、日立製作所、日立造船の 他、ニッポン高度紙工業、三菱商事等が含まれている。海外企業では、水電解装置メー カの Giner(米)やハイドロジェニクス(加)の特許が含まれている。 水素の輸送や水素ステーションにおける燃料電池自動車への水素燃料供給を考えた場

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田技研工業の特許はまさにこの分野の技術であり、太陽光発電と組み合わせて、水素ス テーションで水素を製造する実証事業が行われている。 固体高分子型水電解に使用される、プロトン交換膜は固体高分子形燃料電池と同じで あり、転用が可能であり、将来的に燃料電池が普及したときには量産効果でコストが下 がることも期待できる。高性能のプロトン交換膜が開発されれば、水電解の高効率化も 進むことになる。 水蒸気電解の特許出願では、欧州、日本、米国の順の出願件数であった。欧州、米国、 日本の順であった。この分野でも、近年日本では、国による研究開発プロジェクトが行 われてこなかった影響が考えられる。 出願件数第1 位は、フランス原子力庁で、フランスの研究機関であるフランス国立科 学センターも 4 位となっている。日本企業では、東芝、荏原製作所、日立製作所が含ま れている。米国企業としては、ブルームエナジー、イオン・アメリカ、ゼネラル・エレ クトリックが含まれる。いずれも固体酸化物形燃料電池も研究開発しているところであ る。 注目特許としては、以上の組織の他に、日本の産業技術総合研究所出願の特許が含ま れている。注目特許の内容は、固体電解質の変更による運転温度の 800~1000 レベル から 600 レベルへの低温度化を狙ったもの、シール等の電解セル構造の改良に係わる のものおよび反応後の水蒸気の熱量を回収し有効利用する技術が複数含まれた。これら 注目特許の内容はいずれの水蒸気電解の逆反応である固体酸化物燃料電池(SOFC)に も共通する内容で、日本の SOFC の技術ポテンシャルを適用することが可能である。 水素液化の特許出願では、欧州、日本、米国の順の出願件数であった。 水素液化の基本プロセスとして、シンプル・リンデ法、クロード法、ブレイトン法が 確立されており、液化分野の技術開発はそれらの改良になる。産業用ガスメーカー大手 である、リンデ、エア・プロダクツおよびエア・リキッドからの出願が多い。液化の効 率を上げるために、LNG 基地の冷熱を利用した特許が日本エア・リキッド、関西電力、 エア・プロダクツ等から出願されている。 水素の長距離輸送を液体水素タンカーで行うことを提案している川崎重工業からは、 水素消費地において、液体水素と窒素ガスを熱交換させることにより、液体水素から水 素ガスを発生させる水素気化時に得られた液体窒素を水素生産地まで輸送することが出 願されている。水素気化時と水素液化時で冷熱を循環利用することでエネルギーの有効 利用が可能になる。 磁気冷凍については、WE-NET プロジェクトにおいて、水素液化用に磁気冷凍材料が 検討された。しかしながら、1990 年以降、この分野の研究の中心が室温磁気冷凍の基礎 研究に移り、水素液化用の技術として研究開発は減少している。 水素貯蔵システムに関する特許出願では、出願人国籍別で、吸蔵水素、圧縮水素、有 機ハイドライドに関する出願で、日本が最も多い。上位出願人を見ると、日本のトヨタ 自動車、本田技研が上位にあり、自動車メーカと産業用ガスメーカー大手であるリンデ、 エア・プロダクツおよびエア・リキッドからの出願が多い。

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注目すべきは、有機ハイドライドで全出願の90%程度を日本企業が占めていることで ある。海外では米国のエア・プロダクツがDOE のプログラムの中で研究した N-エチル カルバゾールの基礎研究がある程度である。日本企業(個人含む)が上位出願人の5 位 までを独占している。これらは、トヨタ自動車、日立製作所、積水化学工業、JX 日鉱日 石エネルギー、市川勝東京農業大学客員教授である。これ以外に出願している企業とし て、千代田化工建設、フレインエナジーなどがあり、幅広く研究されている。その中で 先行しているのは、千代田化工建設で、2013 年に川崎市にトルエンに水素を添加してメ チルシクロヘキサン(MCH)を製造し、また逆に MCH から脱水素反応により、水素を 取り出す実証プラントを川崎市に建設した。 また、アンモニアについては、欧州に次いで日本が2 番目の出願数であった。エネル ギーキャリアとしての利用、およびアンモニア合成反応の低温化、エネルギー効率向上 に限った結果である。実際に再生可能エネルギー電源から電解により水素を作り、それ を窒素と反応させてアンモニアとして貯蔵・輸送する方法が出願されている。また、水 素ステーションにアンモニアをとして貯蔵しておき、アンモニアからの脱水素反応によ り燃料電池自動車に水素を供給する特許がトヨタ自動車から出願されている。 アンモニアの合成については、ハーバー・ボッシュ法(約250 気圧、400~450 )が 確立されており、ウインドファームなどの大規模再生可能エネルギー発電設備では対応 可能と見られている。つまり、海外の再生可能エネルギー適地から大量の水素をアンモ ニアとして輸送する用途にである。小規模な再生可能エネルギー電源の負荷変動対応に は、もう少し、低温・低圧な条件で合成できることが好ましく、ルテニウム系触媒を使 用したシステムが提案されている。また、常圧でアンモニアを合成する方法としては、 塩化物溶融塩中での電解合成が研究されている。また、アンモニアから水素を得る脱水 素反応には、アンモニア合成よりも難しい技術であり、ブレーク・スルーが必要とされ ている。水素添加反応の出願より、脱水素反応の特許出願が多い。 水電解用電源および水素の用途に関する出願では、再生可能エネルギーからの水素製 造に関しては、日本、欧州、米国の順で日本が多かった。電源の種類では、太陽光発電、 風力発電、水力発電の順で太陽光発電が多かった。また、水素を使用する側では、燃料 電池自動車が最も多く、定置式燃料電池、家庭用燃料電池の順であった。燃料電池自動 車が多いことに対し、水素ステーションの出願も多くなっている。水素ステーションの 分野では、日本の出願が最も多く、2 位は米国、3 位は欧州であった。一方、スマート グリッドへの対応は現時点では出願が少なく将来的なものと考えられている可能性があ る。全体的に現時点での市場の動向にあった技術開発が行われていると考えられる。

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2.日本の産業競争力 アルカリ水電解については、日本にはベンチャー企業のバンテックがあるが、それ以 外は海外の装置の輸入代理店が対応している。例えば、エア・ウォーター・ハイドロ社 がHydrogenics(加)から、水素パワー社が McPhy(仏)から電解装置の輸入販売を行っ ている。また、日本企業では荏原製作所が Hydrogen Technologies 社から技術導入し、 敦賀原子力発電所 1 号機用に 10.8m3/h の装置を納入したほか、36、160、254 m3/h の 3 件の実績を持っている。 日本の食塩電解関連企業として、旭化成ケミカルズ、クロリンエンジニアリング、ペ ルメリック電極等があり、技術を転用することで、今後市場に参入することが可能と考 えられる。食塩電解装置は、もともと大型化された技術であるので、水電解装置として も当初から大型化できる。 固体高分子水電解では、日本では神鋼環境ソリューションやジーエス・ユアサ・パワ ーサプライ等が5m3/h の装置の販売を行っている。用途は半導体製造用や研究用が多い。 神鋼環境ソリューションの製品は屋久島の水素ステーションに導入され、水力発電から 水素を発生する実証事業にも適用されている。アタカ大機は、水処理プラントメーカー でもあり、大型(100Nm3/h 以上)の固体高分子水電解装置も商品化している。また、 本田技研工業も太陽光発電と組み合わせて、水素ステーションで水素を製造する実証事 業を埼玉県庁で実施中である。 固体高分子水電解は、日本企業にとって実績のある技術であり、再生可能エネルギー と組み合わせた実証事業の機会があれば適用可能と考えられる。また、固体高分子形燃 料電池の技術・材料を取り入れることで、高性能化と低コスト化を実現できる。 水蒸気電解は、研究開発中の技術であるが、すでに世界に先駆け商品化された家庭用 燃料電池(エネファーム)の技術や、熱のカスケード利用のために開発が行われている 燃料電池コンバインドサイクルの技術を転用することができれば、世界に先駆けて実用 化できる可能性がある。海外における水蒸気電解は研究機関や大学が多いのに比べ、日 本では企業が行っているのが強みである。 水素の液化が工業規模で実現されたのは、米国では 1950 年代後半、欧州では 1966 年に、日本では 1978 年で、いずれも宇宙開発用ロケット燃料としてであった。米国で は 1970 年代には、工業用水素ガスの市場にも液体水素で供給されるようになり、工業 用ガスの 90%以上が液体水素で供給されている。 日本では、2006 年に大阪堺市の泉北コンビナート内に岩谷産業と関西電力グループが 共同出資する国内初の本格的商業液体水素プラントであるハイドロエッジの操業が始ま った。2009 年には岩谷瓦斯千葉(市原市)が、2013 年には山口リキッドハイドロジェ ンが操業を開始し、2015 年の燃料電池自動車普及開始に向け準備が進められている。ハ イドロエッジは、国内初の LNG 冷熱を利用した水素液化プラントであった。 水素貯蔵システムとしての用途は、水素ステーション、燃料電池自動車用や携帯機器 電源用燃料電池等があり、水素ステーション関係では産業用ガスメーカー、燃料電池自

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動車用では自動車メーカや自動車部品メーカが出願している。携帯機器電源用燃料電池 関連の特許ではビック(仏)は世界各国に出願していることもあり件数が多い。 これ以外の用途として、再生可能エネルギー電源から製造された水素を貯蔵・輸送す ることや海外からの水素輸送のための貯蔵システムが考えられる。これらの用途に対し ては、大量に輸送する必要性から、体積効率や重量効率の良い貯蔵手段が求められるた め、液体水素や有機ハイドライドが注目されている。特に有機ハイドライドは常温・常 圧で液体であり、ガソリン並みの安全性対応で済むため期待されている。 アンモニアも同様な用途で提案されているが、現状はフィジビリティ・スタディの段 階で、実証レベルの活動はない。 水電解用電源および水素の用途に関する出願では、再生可能エネルギーからの水素製 造に関しては、再生可能エネルギーの普及率を見た場合、日本は欧米に比べまだ低いの で、系統に対する再生可能エネルギー電源の影響が少なく必要性が低い状況にある。固 定価格買取制度が 2012 年に始まり、普及が加速されつつあり、北海道では系統の再生 可能エネルギー電源の受入能力が不足し、本州との間の系統を強化する必要性が求めら れるようになってきた。 一方、燃料電池自動車の普及を見越し、水素ステーションに関する出願もあるが、日 本の電力料金では電解式水素製造装置が導入される可能性は低いと考えられる。 注目特許においても、太陽光発電、風力発電に関係した電解式水素製造装置を含んだ システムとしての特許は、実証研究レベルの進んだ海外の企業出願のものが多い。

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第2節 日本が取り組むべき課題、研究開発・技術開発の方向性 提言1 アルカリ水電解は、我が国の食塩電解プラントおよび隔膜の技術ポテンシャルを活かし、ま た、固体高分子型水電解および水蒸気電解については、燃料電池の技術を活かし、高効率か つ低コスト化をめざした開発を推進すべきである。以上の3分野の研究開発に際しては、産 官学の体制を取り国が支援を行うべきである。 水電解による水素製造は歴史のある技術であり、その原理の発見は 1800 年に遡る。そ して 1902 年には 400 台の工業的水電解装置が稼働していた。固体高分子型水電解装置の 発明は1966 年であり、1972 年には固体酸化物水電解装置の開発が開始されている。 日本においては、1992 年にニューサンシャイン計画の一環として水素利用国際クリーン エネルギーシステム技術(WE-NET)計画が開始され、その中で電解式水素製造技術 の研究開発の取組がなされた。しかしながら、WE-NET 以降、水電解による水素製造をテ ーマにした大規模な国家プロジェクトは、日本では行われてこなかった。これに対し、米 国では2003 年から 2013 年の大統領の水素政策により、Wind2H2 プロジェクトによる風 力発電からの水電解水素製造の実証や、DOE のプロジェクトにより水電解による水素製造 技術が継続して行われてきた。欧州においても、FP7 の FCH JU の水素エネルギー関係予 算の約30%が水電解技術の開発に使用されてきた。さらに中国では EV863 プロジェクト、 韓国では21st Frontier Program において、水電解による水素製造の技術開発が開始され たという情報もある。以上のような状況から、日本でも 2013 年に再生可能エネルギー貯 蔵・輸送等技術開発が開始されたところである。(第5 節 政策動向) 水素のエネルギー用途の市場は、2015 年の燃料電池自動車の世界同時販売から活発化 すると予測されているが、本格的に燃料電池自動車が普及するのは 2030 年以降という見 方が優勢である。水素製造は当面、化石燃料からの水蒸気改質や鉄鋼業や食塩電解工業の 副生ガスで賄われる見込みであり、水電解による水素製造が必要とされるのは、やはり 2030 年以降と考えれれている(第 4 節 市場動向)。 このように本格的な市場形成がなされていない現状では、市場形成までの長期間、企業 が単独で継続的に技術開発に投資することは難しい。将来の市場形成を見越した技術開発 を推進するためには、投資の回収を常に図らねばならない企業とは違う立場にある国が、 積極的な寄与を果たす必要がある。また、その際には、日本が有する研究開発資源を最大 限に活用するべく、大学や研究機関を巻き込んでいくべきである。例えば、論文発表件数 ランキングで上位に入っている九州大学(表 3-1-2)は、水素エネルギー教育研究拠点と して水素エネルギー国際研究センターを有する他、官学連携として産業技術総合研究所と 連携して水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)において水素と材料に関わ る先端的な研究を進めており、継続的な技術開発に貢献できる体制を有しているといえる。 特許の面から、電解式水素製造を見た場合、日米欧中韓において地域別出願件数で日本 は固体高分子型水電解(1 位)、水蒸気電解(2 位)の分野での出願が多く優位である。一 方、アルカリ水電解(1 位)、水蒸気電解(1 位)では、特許件数において欧州が優位にあ

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