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女性ファッション雑誌の表紙における色彩分布の特徴

(2014 年 8 月 4 日受付;2014 年 11 月 14 日受理)

河本 直樹#

京都文教大学

Color Distribution Features in the Cover of Female Fashion Magazines

Naoki KAWAMOTO#

Kyoto Bunkyo University, Kyoto, Japan

―― 要 旨 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 女性ファッション雑誌の表紙における色彩分布の特徴を調べた.表紙の画像データから得られる 9 個の特徴量を用いて,クラスタ分析を行い,雑誌を分類した.その結果,まず女性ファッション雑 誌の表紙は,他のジャンルの雑誌とは明らかに区別されることがわかった.また女性ファッション 雑誌は,対象とするファッション系統によってそれぞれ特徴的な表紙を有することもわかった.ま た,因子分析によって特徴量を要約し,4 個の因子(あざやかさ,明るさ+細かさ,多色相性,トー ンコントラスト)を得た.ティーン系の雑誌では「明るさ+細かさ」および「多色相性」の因子得 点が高いこと,モード系の雑誌では「多色相性」の因子得点が著しく低いこと,ストリート系の雑 誌では「トーンコントラスト」の因子得点が高いことなどがわかった.また,平均彩度と平均明度 については雑誌による差異が明確であったが,色相についてはほとんど差異がなく,女性ファッシ ョン雑誌の表紙の平均色相はどれも赤からオレンジの領域にあることがわかった. キーワード:女性ファッション雑誌,表紙,色彩分布 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― (Journal of the Japan Research Association for Textile End-Uses, Vol.56, pp.163–171, 2015) 1.緒 言 近年,インターネットやスマートフォン等の普 及により,ファッションに関する情報源は多様化 しているが,それでもなおファッション雑誌を情 報源として利用している女性は多い.女子学生を 対象とした 2011 年の渡辺の調査においても,ホー ムページやブログ(47.7%),テレビ(51.1%)等 のメディアを大きく引き離し,雑誌を情報源とし て利用する女子学生は約9割(90.4%)に達してい る1).インターネット等の情報に比べ,ファッショ ン雑誌はターゲットとなる読者層を絞り込むこと でより細分化されたものとなっているため,読者 は自分の必要とする情報や自分の嗜好傾向にあっ た情報を手早く確実に入手することができる.こ の利点がファッション雑誌の存続に寄与している と渡辺は述べている 2).現在,そのような状況か ら,女性向けファッション雑誌は非常に数多くの 種類が発行されている. ところで,雑誌の表紙は,購入者や読者にとっ て,直観的にその雑誌のイメージを取得できるた め,購入や閲覧時の検索,あるいは購入意思決定 の際の重要な指標となる.したがって,表紙のデ ザインや色彩が,それぞれの雑誌のイメージに合 っているか,想定している読者の嗜好に合ってい るか,あるいはそもそも各雑誌の表紙にはデザイ ンや色彩において明確な特徴が存在し,差別化さ れているのか,といった視点での検証は,上に述 べたように多種多様なファッション雑誌が並存し 資 料

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ている現状をふまえると有効であると考えられる. そこで本研究では,そのような検証の基礎とな る知見を得るために,女性ファッション雑誌の表 紙から得られる画像特徴量,特に色彩分布に関す る特徴量を抽出し,各雑誌の特徴や雑誌間の相違 について検討した.もちろん雑誌の表紙には,そ の雑誌のイメージを表現するキャッチコピーや組 まれている特集記事の見出し等の文字情報,ある いはその雑誌の専属モデルの写真等といった,明 らかに有意味なメッセージ的要素も含まれるが, 本研究では表紙に使用されている色やその分布な ど,客観的かつ統計的に処理できる要素のみを取 り扱うものとした. 2.方 法 2-1 試料 2014 年 3 月時点で刊行中の女性ファッション雑 誌の中から,Table 1 に示す 20 誌(1 列目の 1~20 行に記載)の表紙画像を試料として用いた.これ ら 20 誌の選出理由は,発行部数がある程度多いこ と 3),そしてファッションの系統がなるべく多岐 にわたるように配慮したこと3-8)である.また年齢 層は主に 10 代から 20 代をターゲットにしている と思われるものを選んだ.各雑誌とも 2013 年 4 月 号から 2014 年 3 月号までの 12 号分を分析対象と した.ただしその中で,大部分がモノクロ写真と なっている号,男性アイドルの写真を大きく掲載 している号など,明らかに通常と大きく異なる例 外的な表紙となっている号がいくつかあった.そ のような例外的な号の表紙を分析に含めると,そ の雑誌が本来もっている特徴が薄められたり歪め られたりするものと考え,それらは分析対象から 除いた.具体的には,『CanCam』の 2013 年 7 月号 および 2014 年 3 月号,『non・no』の 2014 年 2 月 号,『SCawaii!』の 2013 年 4 月号と 9 月号および 2014 年 2 月号,『SPUR』の 2013 年 7 月号,『ViVi』 の 2013 年 4 月号を例外的な表紙と判断した. また女性ファッション雑誌の表紙の特徴を検討 するうえで,比較のために他のジャンルの 12 誌を 分析対象に加えた.比較用の 12 誌は Table 1(1 列 目の 21~32 行に記載)に示すように,自動車雑誌 3 誌,ビジネス雑誌 3 誌,料理雑誌 3 誌,男性フ ァッション雑誌 3 誌とした.これら 12 誌の中には 週刊や隔週刊のものもあるが,いずれの場合も, 2014 年 3 月時点における直近 12 号分を対象とし た.Table 1 の 2 列目に,各雑誌のジャンルを,女 性ファッション雑誌(F),自動車雑誌(A),ビジ ネス雑誌(B),料理雑誌(C),男性ファッション 雑誌(M)として示した. 2-2 特徴量の抽出 コンピュータに取り込まれた各雑誌の表紙画像 はほとんどの場合長方形であるが,2 次元フーリ エ変換の処理をしやすくするために,全て 256× 256 画素の正方形画像となるようにサイズ変換を 施した.このサイズ変換を行うことによってタテ ヨコ比は変わるが,表紙全体の色彩分布から受け る印象はほとんど変わらないものと考えた.次に 各画素の RGB 値を,sRGB 規格で与えられる三刺 激値を用いて近似的に CIELAB 表色系の L*,a* b*の値に変換し,さらに a*,b*の値からメトリック クロマ C*とメトリック色相角 h も算出した. 各表紙画像に対して,全画素における L*の平均, a*の平均,b*の平均,C*の平均を求め,それぞれ L* ave, a*

ave,b*ave,C*aveとした.また L*の標準偏差,C*の

標準偏差を求め,それぞれ L* std,C*stdとした.ま たメトリック色相角 h については,50 階級(階級 幅 7.2 度)のヒストグラム Hi(i=1,2,・・・50)を求 め,その中から最頻値となる階級 imode を検出し た.そしてその階級に含まれる画素数の全画素数 に対する割合,すなわち Himode/ΣHiを算出し,そ の値を hshareとした.ここでは,ΣHi=2562である. hshareはその表紙画像における最頻色相が表紙全体 の中で占める面積割合を表す.さらに,この色相 ヒストグラムを正規化したもの,つまり Hi/ΣHi を P(i=1,2,・・・,50)とし,そのエントロピーを次i 式(1)により求め,その値を Hentとした. H���� �log50 � P1 �∙ logP� �� ��� �������������1� 式(1)で log50 で割っているのは,エントロピー 最大の場合に Hent=1 となるようにするためであ る.Hentは色相ヒストグラムの散らばりの度合を 表し,例えば全画素がひとつの階級に集中した場 合は Hent=0,逆にすべての階級に均等に分布した 場合は Hent=1 となる. また,表紙画像における色彩分布の空間的な細 かさを定量化するために,まず,L*,a*,b*の各成 分画像について 2 次元フーリエ変換を施し,3 成 分について得られたパワースペクトルを加算した. これを f(u,v)(u,v はそれぞれ水平方向,垂直方向 の空間周波数)とする.f(u,v)から次式(2)により, 極座標形式で表したときの原点からの距離 r につ いての成分和 f(r)を求めた.

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Table 1 Average values of color distribution features of the covers for 32 magazines.

(F:female fashion, A:automobile, B:business, C:cooking, M:male fashion)

Title (Publisher) Genre L*

ave a*ave b*ave C*ave L*std C*std hshare Hent HLratio

CanCam (Shogakukan) F 61.48 10.55 12.04 23.08 28.04 21.11 0.115 0.862 0.126

egg (Taiyoh Tosho) F 62.82 15.04 8.77 22.94 26.27 18.24 0.121 0.816 0.097

FUDGE (San-ei Shobo) F 63.65 13.54 4.28 20.60 25.14 17.48 0.183 0.776 0.086

GINZA (Magazine House) F 67.80 6.54 3.92 14.94 30.17 20.75 0.222 0.794 0.099

JILLE (Futabasha) F 66.38 10.80 6.72 19.80 27.91 22.95 0.105 0.871 0.091 JJ (Kobunsha) F 68.73 12.18 5.15 20.24 25.98 20.29 0.112 0.850 0.113 mina (Shufunotomosha) F 62.61 10.08 5.13 18.24 26.93 17.19 0.108 0.834 0.084 mini (Takarajimasha) F 64.00 12.18 3.41 17.23 29.46 20.69 0.110 0.895 0.099 nicola (Shinchosha) F 68.11 10.98 2.23 22.21 28.33 21.68 0.088 0.921 0.154 non・no (Shueisha) F 62.73 12.79 9.09 21.34 28.37 19.62 0.127 0.807 0.107

pichilemon (Gakken Publishing) F 68.23 9.38 4.38 18.53 27.18 15.74 0.078 0.902 0.116

Popteen (Kadokawa Haruki Jimusho) F 69.45 14.14 8.19 21.64 24.15 17.55 0.122 0.804 0.118

Ranzuki (Bunkasha) F 68.18 7.53 6.23 18.64 27.01 17.02 0.104 0.880 0.122 SCawaii! (Shufunotomosha) F 62.23 13.99 6.86 19.36 27.70 19.28 0.131 0.793 0.102 Seventeen (Shueisha) F 63.10 12.96 6.40 20.90 27.47 16.86 0.097 0.855 0.078 Soup. (JackeMedia) F 68.77 8.49 3.40 19.31 25.32 19.56 0.103 0.868 0.120 SPUR (Shueisha) F 64.62 9.13 4.91 19.12 26.68 18.21 0.128 0.854 0.096 Sweet (Takarajimasha) F 69.19 14.23 6.97 20.28 25.66 19.89 0.130 0.809 0.130 ViVi (Kodansha) F 58.70 15.95 7.72 24.91 25.29 18.28 0.127 0.804 0.102 Zipper (Shodensha) F 66.38 14.89 10.62 29.79 26.87 26.76 0.105 0.899 0.134 bestcar (Kodansha) A 53.80 10.59 9.18 23.88 30.34 24.99 0.085 0.936 0.216 CARandDRIVER (Diamondsha) A 59.51 6.49 3.62 18.29 31.48 21.67 0.107 0.894 0.079 CARtop (Kotsu-Timessha) A 54.49 14.75 8.04 26.65 29.13 30.31 0.117 0.910 0.125

BIGtomorrow (Seishun Shuppansha) B 60.74 4.23 8.72 18.82 33.86 23.79 0.109 0.898 0.246

diamond (Diamondsha) B 60.75 11.25 14.05 27.13 31.24 26.94 0.250 0.759 0.144

PRESIDENT (Presidentsha) B 48.73 3.16 2.58 14.83 32.07 13.07 0.144 0.794 0.184

eiyotoryori (Joshi Eiyo Daigaku) C 69.13 10.33 18.51 26.21 24.50 22.85 0.165 0.773 0.073

lettuceclub (Kadokawa Shoten) C 60.56 18.18 24.20 37.70 26.61 27.71 0.148 0.807 0.135

orangepage (Orangepage) C 61.49 12.47 22.85 35.82 26.90 27.10 0.144 0.809 0.106

Men'sJOKER (KK-bestsellers) M 56.96 2.91 1.75 11.21 34.73 15.18 0.122 0.881 0.066

MEN'SNON・NO (Shueisha) M 53.48 3.89 3.85 19.03 29.24 17.56 0.134 0.847 0.057

POPEYE (Magazine House) M 60.68 -0.93 3.75 15.97 26.76 15.18 0.256 0.743 0.106

f�r� � � f�u, v� ���,����� ������� ������������������������ 画像サイズは 256×256 であったため,u,v の最 大値は 128 となり,r の最大値は 181 となる.さ らにこの f(r)から次式(3)による HLratioを求める. HL������ � f�r� ��� ������ ���� � f�r� �� ��� ������������������� HLratioは,パワースペクトルについて,高空間周 波数領域と低空間周波数領域との比をとったもの であり,ここではその境界となる空間周波数 r'= 10 とした. 以上により得られた 9 個の値,すなわち,L* ave, a*

ave,b*ave,C*ave,L*std,C*std,hshare,Hent,HLratioを

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2-3 特徴量の有意性の検討 前節で述べた表紙画像の特徴量について,同じ 雑誌でも月(号)によってさまざまな値をもつの か,それとも同じ雑誌であれば一定の傾向があり, 他の雑誌とは有意な差が存在するのか,という点 をまず確認する必要がある.そこで,各雑誌の 12 号分の中での変動を誤差(級内変動)とみなし, それに対して雑誌間の変動(級間変動)が有意に 大きいかどうかを,分散分析によって確認した. 女性ファッション雑誌とそれ以外の雑誌とでは明 らかに差があると予想されたため,ここでは女性 ファッション雑誌 20 誌だけの特徴量データを用 いて分散分析を行えば充分であると考えた. 分散分析の結果,L* aveを除いた他のすべての特 徴量について危険率 5%で有意,さらにそのうち, a*

ave,b*ave,C*ave,C*std,hshare,Hent,HLratioの 7 特

徴量については危険率 1%で有意であることが確 認された.また,L* aveについても,有意確率は 11.3%で,やや有意傾向は見られたため,これ以降 の分析では,L* aveも含めた 9 特徴量すべてを用い ることとした.また,この分散分析の結果から, 各雑誌の表紙はそれぞれ一定の色彩的傾向を有す ることが確認されたと考えられるので,雑誌ごと に 12 号分のデータをまとめて平均値を求め,それ を各雑誌の基本データとした.女性ファッション 雑誌だけでなく,それ以外の 12 誌についても同様 に基本データを求めた.全 32 誌の基本データを Table 1(3~11 列目)に示す. 3.結果と考察 3-1 表紙の特徴量による雑誌の分類 ここではまず全 32 誌の基本データを用いてク ラスタ分析を行った.特徴量によってデータのス ケールが異なるため,特徴量ごとに正規化を行っ た後,Ward 法によるクラスタ化を行った.この分 析には統計ソフト SPSS(ver.21)を利用した. 得られたデンドログラムを Fig.1 に示す.4 個の クラスタ分類(①~④で示す)でみると,クラス タ①に属するのはすべて女性ファッション雑誌で あり,また 20 誌のうち『GINZA』と『Zipper』の みを除く 18 誌がこのクラスタに含まれているこ とがわかる.クラスタ②はメンズファッション雑 誌を主とするクラスタとなっているが,女性ファ ッション雑誌の『GINZA』はここに含まれている. またクラスタ③は料理雑誌を主とするもの,クラ スタ④は自動車雑誌を主とするものとなっている. 女性ファッション雑誌の『Zipper』はこのクラスタ

Fig.1 Result of cluster analysis for 32 magazines.

④に属しており,表紙の色彩的特徴としてはむし ろ自動車雑誌に類似していることを示唆している. ビジネス雑誌は複数のクラスタにまたがっており, 一定の傾向をもたないようである. 上述の分析から,雑誌のジャンルごとにそれぞ れ特徴的な表紙を有すること,また,中でも特に 女性ファッション雑誌の表紙は特徴的な傾向をも

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つことがわかった.そこで次に,そのような女性 ファッション雑誌群の中で,それぞれの雑誌がど のような特徴をもち,どのように分類されるのか を詳しく検討するために,さらに下位のクラスタ までを対象として,ファッション系統との関連な どもふまえながら考察する.なおファッション系 統の分類や呼称はそもそも流動的なものであり 9) 参照する文献や情報源によってそれぞれ微妙に異 なるため,ここでは原則として,栗田の論文 5) にお ける分類および呼称を使用した.ただし,本研究 の試料として用いた女性ファッション雑誌 20 誌 のうち,栗田の論文で分類対象として扱っていな いものが 4 誌(『FUDGE』『GINZA』『SPUR』『Sweet』) あったため,それらについては他の文献3)4)等を参

照し,なるべく一般的と思われる呼称を用いた. 具体的には,『FUDGE』『GINZA』『SPUR』の 3 誌 は(それぞれ個性があり,一括するのはやや無理 があるが)モード系あるいはハイエンド系といわ れ る こ と が 多 く , こ こ で は モ ー ド 系 と し た . 『Sweet』は,2007 年頃から新たなファッション系 統として注目され出したスイート系 10) のファッ ションに対応した雑誌で,今回の 20 誌の中ではこ の 1 誌だけだが,ここではスイート系とした.そ の他の 16 誌は栗田の分類にしたがい,『egg』 『Popteen』『Ranzuki』『SCawaii!』の 4 誌をギャル 系,『CanCam』『JJ』『ViVi』の 3 誌をお姉系,『mina』 『non・no』の 2 誌をカジュアル系,『JILLE』『mini』 『Soup.』『Zipper』の 4 誌をストリート系,『nicola』 『ピチレモン』『Seventeen』の 3 誌をティーン系 とした. Fig.1 をあらためてみると,前述のクラスタ① (女性ファッション雑誌 18 誌を含むクラスタ) は,ひとつ下の階層で二分される.その二分され たうちの最初のクラスタには 7 誌が属しているが, ここにはギャル 系とされる『 SCawaii!』『 egg 』 『Popteen』およびお姉系とされる『ViVi』の 4 誌 が含まれており,ギャル系・お姉系を主とするク ラスタと考えられる.スイート系の『Sweet』も系 統としてはギャル系・お姉系にやや近いとも考え られるため,これも含めると 7 誌中 5 誌がそれら の系統の雑誌ということになる.そして次のクラ スタには 11 誌が属しているが,ここにはストリー ト系 4 誌のうちの 3 誌である『Soup.』『JILLE』 『mini』や,ティーン系の 3 誌である『ピチレモ ン』『nicola』『Seventeen』などが含まれている.し たがって,ストリート系とティーン系の混在する クラスタになっているといえる.一方,モード系

とされる『FUDGE』『SPUR』『GINZA』の 3 誌はす べて別々のクラスタに分類されていることから, これらは類似の傾向をもたず,それぞれが個性的 な表紙を有することがわかる.特に『GINZA』は上 位クラスタである女性ファッション雑誌の群にも 含まれていない.また『Zipper』はストリート系と されるが,他のストリート系雑誌とはかなり異な る特徴をもっていることもわかる. 以上のように,ここで行った表紙の色彩的特徴 による分類の結果は,これまで行われてきたよう な読者層にもとづいた分類 3-8)と一致する部分が 多いが,中には異なるものもある.つまり,同じ ファッション系統に属するとされている雑誌でも, 表紙の印象としては異なる場合や,逆に,異なる ファッション系統の雑誌でも,表紙の色彩分布と しては似ている場合もあるということである.そ こで次節以降では,この分類結果を,具体的に各 表紙の画像特徴量との関連において考察していく ことにする. 3-2 表紙の平均色における各雑誌の特徴 本節ではまず,各雑誌の平均色を比べてみた. Fig.2(a)は,横軸に a* ave,縦軸に b*aveをとった色度 平面に,全 32 誌の基本データをプロットしたもの である.図中のアルファベットは Table 1 に記載 した各雑誌のジャンルを示している.ジャンルに かかわらず,表紙の平均色はほぼすべての雑誌に おいて,a* ave>0 かつ b*ave>0 の第 1 象限に位置し ており,赤~黄の色相であることがわかる.その 中で,男性ファッション雑誌(M)は 3 誌とも原点付 近に位置しており,平均色が無彩色に近いものと なっている.逆に料理雑誌(C)は a* ave,b*aveともに 大きく,高彩度の暖色系が多く使用されているこ とが推察される.そして女性ファッション雑誌(F) のほとんどはそれらの中間の色度位置にあり,や や右下あたりの a* ave>b*aveの領域に集中している ことから,やや赤みが優勢であることがわかる. Fig.2(b)は女性ファッション雑誌 20 誌について同 様にプロットし,図中に各雑誌名も記載したもの である.20 誌がほぼ右上がりに並んでおり,彩度 の違いはあるものの,色相方向にはあまり変化が ないことがわかる.『CanCam』のみ,やや黄みが 優勢となっている. 次に Fig.3(a)は,横軸に C* ave,縦軸に L*aveをと った彩度-明度平面に,全 32 誌の基本データをプ ロットしたものである.図中の記号は Fig.2(a)と同 様である.料理雑誌(C)は C* aveが大きく高彩度であ

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Fig.2(a) Average color (a* and b*) for 32 magazines. (F:female fashion, A:automobile, B:business, C:cooking, M:male fashion)

Fig.2(b) Average color (a* and b*) for 20 female fashion magazines. ること,男性ファッション雑誌(M)は C* ave,L*aveと もに小さく低彩度かつ低明度であること,自動車 雑誌(A),ビジネス雑誌(B)は彩度は中程度であるが L* aveが小さく低明度であることなどが明らかにみ てとれる.そしてこれら他ジャンルに比べ,女性 ファッション雑誌(F)は全体的に高明度領域に集 中している.Fig.3(b)は,女性ファッション雑誌 20 誌について同様にプロットし,図中に各雑誌名も 記載したものである.まず,『ピチレモン』『nicola』 などのティーン系や,ギャル系 4 誌の中でもティ ーン向けの『Ranzuki』『Popteen』などが特に高明 度に位置していることから,ターゲットとする読 者の年齢層と表紙の平均明度にはある程度の関連 が認められる.ティーン系でも『Seventeen』はそ れほど高明度ではなく,前者 2 誌とは少し異なっ

Fig.3(a) Average color (C* and L*) for 32 magazines. (F:female fashion, A:automobile, B:business, C:cooking, M:male fashion)

Fig.3(b) Average color (C* and L*) for 20 female fashion magazines. ているが,これは『ピチレモン』や『nicola』がロ ーティーン向けであるのに対して,『Seventeen』は ミドルティーン向けであることが関係しているか もしれない.『Popteen』や『Ranzuki』もミドルテ ィーンの年齢層が主な対象だが,これらはギャル 系の雑誌ということで,明るく元気な印象の表紙 となっていることが考えられる.ストリート系の 『Soup.』,お姉系の『JJ』,スイート系の『Sweet』 もかなり高明度の位置にある.これら 3 誌はファ ッション系統はそれぞれ異なり,共通性はないが, 実際の表紙を見ると,ほぼ毎月(毎号),背景に白 無地を使っていることが共通している.そのため に平均色の明度が高くなっているものと思われる. ストリート系の『Zipper』が特に高彩度に位置して いるが,その他のストリート系である『JILLE』

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『Soup.』『mini』などはやや低彩度となっている. 次いで,『ViVi』『CanCam』『egg』などのお姉系や ギャル系とされる雑誌もやや高彩度となっている が,同じギャル系やお姉系でも『SCawaii!』や『JJ』 などはやや低彩度側に位置している.『SCawaii!』 はギャル系の中でも大人ギャルといわれる少し大 人っぽいファッションを対象としているため,表 紙の色彩分布もやや落ち着いたものとなっている ことが考えられる.モード系の『FUDGE』『GINZA』 『SPUR』などはどれも中~低彩度側に位置し,中 でも特に『GINZA』の平均彩度は低い. 3-3 因子分析による特徴量の要約 本節では,平均色だけでなく,2-2 で述べた 9 個 の画像特徴量をすべて考慮したうえで女性ファッ ション雑誌の表紙がどのような特徴にもとづいて 分類され得るかを検討する.そこでまず,20 誌× 9 特徴量の基本データを用いて因子分析を行い, 画像特徴量の要約を試みた.SPSS(ver.21)を使用 し,因子抽出の方法には主成分分析を用いた.第 5 主成分で固有値が急減し,かつ 1 未満となるた め,第 4 主成分までを採用し,バリマックス回転 を行った.回転後の因子負荷量を Table 2 に示す. 各因子の解釈は以下のとおりである.まず第 1 因 子(寄与率 29.88%)は,a*

ave,b*ave,C*aveの因子

負荷量が大きい.前節でみたとおり,ほとんどの 雑誌の平均色が a*

ave>0 かつ b*ave>0 の範囲にあっ

たことを考えれば,a*

ave,b*aveの値と C*aveの値と

は必然的に正の相関をもつことになる.結局,第 1 因子は「あざやかさ」の因子と考えればよい.次 の第 2 因子(寄与率 19.90%)は,L* aveと HLratioに 強く関連し,ともに正の負荷量となっている.本 来,L* aveと HLratioとは独立であるはずだが,女性 ファッション雑誌の表紙においては,これら 2 特 徴量間に相関があったことを示している.すなわ ち,平均明度の高い雑誌は,高空間周波数成分の 割合が多い傾向にあるといえる.ここではこれを 「明るさ+細かさ」の因子としておく.第 3 因子 (寄与率 19.74%)は,hshare,Hentの 2 特徴量に強 く関連し,Hentでは正の負荷量,hshareでは負の負荷 量となっている.したがって,表紙内における色 相の種類が多く,最頻色相の占める面積割合が少 ないほど,この因子の得点は高くなる.すなわち, 第 3 因子は「多色相性」の因子と考えられる.最 後の第 4 因子(寄与率 16.83%)は,L* stdと C*stdに 強く関連し,ともに正の負荷量となっていること から,これは明度や彩度に関する変動の大きさ, すなわち「トーンコントラスト」の因子と考えら れる.ここで得られた 4 つの因子は,今回分析対 象とした 20 誌によるデータに基づくものであり, その信頼性や普遍性については今後確認していく 必要があるが,この 20 誌にはさまざまなファッシ ョン系統のものが含まれることから,一定の普遍 性はあるものと考えられる. 次に,これら 4 因子について,各雑誌の因子得 点を算出し,Fig.4(a)および(b)のようにプロットし てみた.まず Fig.4(a)は,横軸に第 1 因子「あざや かさ」,縦軸に第 2 因子「明るさ+細かさ」をとり, 該当する位置に各雑誌名を記したものである.こ れは前出の Fig.3(b)と類似の傾向となるが,縦軸が 単なる平均明度ではなく,「明るさ+細かさ」の因 子得点となっているために若干異なる布置となる. 例えば『nicola』『Popteen』『Ranzuki』などのティ ーン系あるいはティーン向けのギャル系雑誌は, 平均明度が高いことに加え,表紙に複数名のモデ ルを配したり,多量の文字情報を掲載していたり する.そのため,明るくにぎやかな印象となって いる場合が多く,第 2 因子の得点が特に高くなっ ていると考えられる.『Zipper』は,第 1,第 2 の 両因子得点とも非常に高く,これら 2 因子におい て,かなり特徴的な表紙を有するものであること がわかる.次に Fig.4(b)は,横軸に第 3 因子「多色 相性」,縦軸に第 4 因子「トーンコントラスト」を とり,各誌をプロットしたものである.『nicola』 『ピチレモン』などのローティーン系の雑誌では 多色相性の因子得点が高く,『GINZA』『FUDGE』 などのモード系の雑誌では低くなっている.また 『Zipper』『mini』『JILLE』などのストリート系の雑 誌ではトーンコントラストが大きいが,同じスト リート系でも『Soup.』ではあまり大きくない.モ ード系の『GINZA』と『FUDGE』は,ともに多色 相性は小さく,いわゆるシンプルな表紙となって いるが,トーンコントラストにおいてはこれら 2 誌は対照的である.『GINZA』は多色相性は小さい が,トーンコントラストは大きいことから,シン プルだがメリハリの効いた色彩分布になっている ことが多いと考えられる.第 3,第 4 因子におい ては,『GINZA』は非常に特徴的な表紙を有するも のと考えられる. 4.結 言 本研究では,女性ファッション雑誌の表紙の色 彩分布から得られる種々の画像特徴量を用いて, 各雑誌の特徴や差異について検討した.その結果,

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Table 2 Rotated factor matrix for 9 color distribution features.

Color distribution features Factor 1 Factor 2 Factor 3 Factor 4 L* ave -0.437 0.826 0.049 -0.148 a* ave 0.797 -0.149 -0.085 -0.323 b* ave 0.818 -0.088 -0.047 0.076 C* ave 0.913 0.191 0.214 -0.059 L* std -0.287 -0.159 0.042 0.903 C* std 0.453 0.489 -0.003 0.651 hshare -0.129 -0.051 -0.954 0.160 Hent -0.141 0.318 0.852 0.331 HLratio 0.193 0.821 0.286 0.078 Rate of contribution(%) 29.88 19.90 19.74 16.83

Fig.4(a) Factor scores (Factor 1 and 2) for 20 female fashion magazines. 女性ファッション雑誌の表紙は,他ジャンルの雑 誌とは異なる特徴をもち,表紙だけで明らかに差 別化されていることがわかった.また,女性ファ ッション雑誌の中でも,「あざやかさ」「明るさ+ 細かさ」「多色相性」「トーンコントラスト」とい う 4 因子において,それぞれの雑誌ごとに特徴が みられ,いわゆるファッション系統との関連もあ る程度みられた.一方,色相方向については明確 な差異は存在せず,どの雑誌も平均としては赤か らオレンジの範囲にあった.したがって,数多く ある女性ファッション雑誌の中で,表紙の印象を 際立たせるためには,色相方向で変化をつけるの が最も有効な手段となり得るが,もちろん,ただ 単に目立つだけではなく,読者に好印象を与えら れなければ意味はない.今回は,表紙画像の色彩 分布の物理量と,雑誌のジャンルやファッション

Fig.4(b) Factor scores (Factor 3 and 4) for 20 female fashion magazines. 系統との関連を検討するにとどまったが,今後こ れをふまえて,各雑誌がターゲットとする読者層 の女性たちがどのような表紙を好むのかについて 主観評価を行うなどの検討が重要であることは言 うまでもない.また,今回分析対象とした雑誌(20 誌+12 誌)は,なるべく偏らないように幅広く選 定することを目指したものであるが,もちろん万 全ではあり得ず,緒言にも述べたように,他にも 数多くの雑誌が存在する.したがって,本研究結 果の妥当性については,さらに多くの雑誌を用い た分析等によって検証していく必要があり,これ も今後の課題としたい. 引用文献 1) 渡辺明日香;女性ファッション誌ランキング, “大学ランキング 2013 年版”,朝日新聞出版,

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p.194-197(2012) 2) 渡辺明日香;ファッションを伝達するメディ ア,“ストリートファッション論”,産業能率 大学出版部,p.138-158(2011) 3) 日本雑誌協会 Web サイト;印刷部数公表,2014 年 3 月 14 日閲覧 4) 中島ゆう子;情報インプット手法編,“売れる ファッションの見つけ方・つくり方”,繊研新 聞社,p.90-150(2012) 5) 栗田宣義;「ファッション系統」の計量社会学 序説,武蔵大学総合研究所紀要,18:127-157 (2008) 6) 松谷創一郎;差異化コミュニケーションはど こへ向かうのか,“文化社会学の視座”南田勝 也,辻泉編,ミネルヴァ書房,p.245-272(2008) 7) 田喜知久美;男女ファッション誌 実用カジ ュアル詰め込み型が人気,日経エンタテイン メント,2011 年 9 月号,日経 BP,p.49-50(2011) 8) 苫米地香織;ファッション誌の使えるポジシ ョンMAP,ファッション販売,2014 年 6 月 号,商業界,p.87(2014) 9) 渡辺明日香;ファッションビジネスのしくみ と変容,“ストリートファッション論”,産業 能率大学出版部,p.41-78(2011) 10) 柴田祐加子;コラムマンスリーファッション レポート,2007 年 10 月,伊藤忠ファッショ ンシステム Web サイト,2014 年 5 月 20 日閲 覧 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― Abstract

The author has investigated color distribution features in the cover of female fashion magazines. Using nine features derived from the image data of the cover, cluster analysis was performed to classify the magazines. In terms of the features of the cover, the female fashion magazines were found to be clearly distinguished from those of the other genres. It was also found that each female fashion magazine had distinctive cover depending on the fashion type of the magazine. Furthermore, factor analysis was performed to summarize the image features, and four factors, “average saturation”, “average lightness and fineness”, “multi-hue”, and “tone contrast”, were obtained. Scores for “average lightness and fineness” factor and “multi-hue” factor were high for most teen’s magazines. Scores for “multi-hue” factor were significantly low for most mode magazines, and scores for “tone contrast” factor were high for most street fashion magazines. The female fashion magazines were distinguished clearly in terms of the average saturation and the average lightness of the cover, but there was no little difference for average hue. The covers of most female fashion magazines had similar average hue ranging from red to orange.

(Received August 4, 2014; Accepted November 14, 2014) Key words: female fashion magazine, cover, color distribution

Table 1    Average values of color distribution features of the covers for 32 magazines
Table 2    Rotated factor matrix for 9 color distribution features.

参照

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