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Journal of the Japanese Association for Petroleum Technology Vol. 80, No. 1 Jan., 2015 pp Lecture Received August 25, 2014 a

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石油技術協会誌 第 80 巻 第 1 号 (平成 27 年 1 月)19 ∼ 26 頁 Journal of the Japanese Association for Petroleum Technology

Vol. 80, No. 1(Jan., 2015)pp. 19∼26

講   演

Lecture

1. は じ め に

2007 年,石油資源開発㈱と三菱商事㈱は共同で,イン ドネシア東ジャワに位置するカンゲアン鉱区に資本参加す ることにより,50%の権益を Energi Mega Persada(EMP) 社から取得,以降現地操業会社 Kangean Energy Indonesia Ltd.(KEI)社をオペレーターとして,探鉱・開発・生産 事業を鋭意進めている。カンゲアン鉱区は,陸上(島)か ら水深 1,000 m の海域まで多様な地表条件の元,生産中の ガス田,既発見未開発構造,そして多数のプロスペクト・ リードが存在し,探鉱から生産まで多様なインベントリー が組み合わさった複合型プロジェクトとなっている。探鉱・ 開発対象となる貯留岩も,砂岩・石灰岩からフラクチャー 型貯留岩まで多様性に富み,まさに総合的な技術力が求め られる。

2. カンゲアン地域の油ガス田と石油地質

カンゲアン鉱区は,1980 年に前オペレーターの ARCO 社(2000 年に BP 社に吸収合併された)がこの一帯を鉱 区取得した後,数度の鉱区部分放棄を経て,現在のよう な Pagerungan ガス田などがあるメイン鉱区と 4 つの飛び 地に分かれている(図1)。Pagerungan ガス田は 1985 年 に発見され,1994 年から生産を開始,ジャカルタに次ぐ 大都市スラバヤに向け,総延長 427 km × 28″の東ジャ ワ 海底ガスパイプラインによって送られており,発電や工業 用に用いられている。生産開始からすでに20 年を経過し

インドネシア,カンゲアン鉱区における探鉱開発

一丸 裕二

**

・井上 久隆

***

(Received August 25, 2014; accepted November 18, 2014)

Exploration and development of Kangean block, East Java, Indonesia

Yuji Ichimaru and Hisataka Inoue

Abstract: JAPEX and Mitsubishi Corporation jointly acquired an indirect 50% working interest in the Kangean

PSC Block in 2007, and are actively conducting the exploration, development and production of the block through the operating company Kangean Energy Indonesia Ltd.(KEI). The block has a diverse inventory comprising producing fields, an undeveloped discovered field, numerous prospects and leads. The structural geology of the Kangean area is essentially the same as the East Java and Madura Island area to the west, and is divided into three provinces, Northern Platform, Central High and Southern Basin. The petroleum system is common to the East Java area; two petroleum systems have been identified. One is a thermogenic oil and gas system with Pre-Ngimbang and Ngimbang formation source rocks, and another is a biogenic dry gas system with methane accumulations in the shallow horizons.

After JAPEX and Mitsubishi entered the project, KEI has commenced the development of TSB (Terang, Sirasun and Batur) gas field. The Terang gas field has been developed as the Phase I development of TSB gas field, commenced production in May 2012 and produces around 300 MMscfd of gas.

Among the tasks for promising inventories that will be critical to sustain the development of the Kangean Block, the two projects will be technically interesting; one is the West Kangean appraisal drilling, and another is an exploration drilling of South Saubi prospect. The reservoir of the West Kangean gas field are fractured limestone of the Ngimbang formation, DFN (Discrete Fracture Network) geological model has been established, and reservoir simulation has been conducted to optimize the number and location of wells. The South Saubi Prospect is the largest structure in the Kangean Block inventory, and its play type (Reef buildup of Kujung limestone) is the same as the Banyu Urip oil field in East Java.

Keywords: Kangean, KEI, Biogenic gas, TSB, Terang, West Kangean, DFN, South Saubi, Reef buildup

平成26 年 6 月 4 日平成 26 度年春季講演会地質・探鉱部門シンポジウ

ム「世界の石油探鉱の今と,近未来に向けてすべきこと」にて講演 This paper was presented at the 2014 JAPT Geology and Exploration

Sym-posium entitled Worldwide Oil & Gas Exploration – Present Status and Our Planning in the Near Future held in Niigata, Japan on June 4, 2014.

** 石油資源開発㈱ Japan Petroleum Exploration Co., Ltd.

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ているが,これまでに 1.2 TCF 以上のガスを生産し,すで

に減退しているものの 2021 年まで生産を継続できる見通

しである。Pagerungan ガス田の南北に位置する Sepanjang および Pagerungan Utara Offshore(PUO)油田は,いずれ

もマージナルな規模であったが,各々2 ∼ 4 年間 生産を 継続し,現在は休止している。そして,2012 年 5 月から 生産開始し,現在の主力ガス田であるTerang ガス田は, 連続するSirasun・Batur ガス田と共に TSB ガス田と呼ば れる。現在,第 2 次開発としての Sirasun・Batur ガス田の 立ち上げに向け準備中であり,2018 年のガス生産開始を 予定している。次に,カンゲアン島西海岸沖で発見された West Kangean ガス田は,石灰岩フラクチャー貯留岩であ り,生産能力の不均質性を定量的に評価し,今後評価井の 掘削を計画している。そして, 残存するプロスペクト・リー ドの中でも群を抜いて大規模な未試掘構造 South Saubi は, 約 950 m の大水深域に位置しているが,成功すればこのプ ロジェクトのゲームチェンジャーと成り得るため,早期の 試掘実行が望まれている。 2.1 地質構造 カンゲアン地域の地質構造は,西方の東ジャワ∼マドゥ ラ島から連続する基本的な地質構造区分を保持しており, 北から,北部プラットフォーム地域,中央隆起帯,南部 堆積盆の3 つの地質構造区に区分される(図 2)。北部プ ラットフォーム地域(Northern Platform)は,中新世以 降のインバージョンの影響が小さく,構造変形および堆 積量が少ないが,PUO 油田(石灰岩リーフ)が成立し ており,油ガスのキッチンが存在している(一丸ほか, 2010)。中央隆起帯(Central High)は,インバージョンの 影響を最も強く受け,現在もカンゲアン島などの島々を形 成しているが,隆起以前には 沈降域であったことが中新 世以前の堆積量から推定される。隆起に伴う褶曲により, Pagerungan ガス田,West Kangean ガス田などの背斜構造

が形成されている他,PUO 油田と同じプレイの Sepanjang 油田も存在する。南部堆積盆(Southern Basin)は,インバー ジョン以降に急速に沈降した地域であり,中新統以新の若 い堆積物が厚く堆積する。中新統の石灰岩ビルドアップが 特徴的に発達するが,構造変形は比較的少ない(図 3)。 2.2 石油システム カンゲアン地域の地質層序は,東ジャワ陸域,さらに はスマトラ∼ジャワ地域の堆積盆と共通した(Doust and Summer, 2007),いわゆる第三系堆積盆であり,白亜系基 盤と傾斜不整合で接し,暁新統以新の堆積物から成ってい る。暁新世∼前期始新世は,リフトによって形成されたグ ラーベン群を埋めるように,河成∼デルタ成堆積物が発達 するが,後期始新世になると海進の影響を受け始め石灰岩 が発達,以降は海水準変動に影響されながら,海成の石灰 岩・砂岩・泥岩が発達する(図4)。 このような地質状況で,カンゲアン地域では2 つの石 油システムが確認されている。1 つは,東ジャワ地域に おける普遍的な根源岩である暁新統∼下部始新統の Pre-図 1 カンゲアン鉱区と油ガス田分布 2 カンゲアン鉱区周辺の地質構造区分 3 カンゲアン地域の南北地質断面図

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Ngimbang 層,および上部始新統の Ngimbang 層の石炭 および泥質岩を根源岩とする熱分解起源の油ガスシステ

ムであり,主にNgimbang 層砂岩・石灰岩を貯留岩とし

て,Pagerungan ガス田深層,West Kangean ガス田,PUO 油 田,Sepanjang 油 田 が 確 認 さ れ て い る(Phillips et al., 1991)。なお,東ジャワ陸上で大規模な油ガス田が成立し ている漸新統∼中新統のKujung 層リーフ成石灰岩への集 積(Hakiki et al., 2012)は,カンゲアン地域では未発見で ある。そしてもう1 つは,中新統の Rancak 層石灰岩,鮮 新統のPaciran 層砂岩・石灰岩で確認されている微生物分 解によるバイオジェニックガス(ほとんどがメタンから成 るドライガス)システムであり,Pagerungan ガス田浅層,

TSB ガス田で確認されている(Noble and Henk, 1998)。カ ンゲアン鉱区の西方,マドゥラ島南方海域の浅層ガス田群 (Maleo ガス田,MDA ガス田など)も同じシステムである (Triyana et al., 2007)。このように,カンゲアン地域では 2 つの石油システムによって,探鉱開発対象は浅部から深部 まで多岐に及んでいる。

3. これまでの探鉱開発経緯と今後の展望

2007 年の石油資源開発㈱と三菱商事㈱の参入以降,マー ジナル油田の開発(Sepanjang 油田,PUO 油田),海域三 次元地震探鉱の実施(West Kangean ガス田),そして TSB ガス田の開発へと作業を進めて来たが,これらの中でも最 も重要なマイルストーンとなったのは,Terang ガス田の 開発(TSB ガス田 Phase 1 開発)である。 3.1 Terang ガス田の開発 TSB ガス田は,地下浅部の鮮新統 Paciran 層砂岩および グロビゲリナ(有孔虫)石灰岩にバイオジェニックガスが 集積した,北に湾曲しながら東西30 km にわたり連続す る雄大な背斜構造であり, 胴切り状に北東−南西方向の断

層によって分断されることでTerang, Sirasun, Batur の各構

造が独立したプールを形成している(図5)。これらの内, Terang ガス田は砂岩を,Sirasun・Batur ガス田はグロビゲ リナ石灰岩を主要な貯留岩としている。Terang ガス田の 砂岩は,上限およそ−600 m(水深 90 m)という浅深度に 図 4 カンゲアン地域の地質層序 5 TSB ガス田貯留層上限深度構造図

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あり,ガスコラムはおよそ110 m,孔隙率 40%前後,浸透 率は数百md オーダー(最大数ダルシー)というきわめて 良好な貯留岩性状を持つ固結度の弱い細粒砂岩である。7 層のサブレイヤーに区分されるが,一般に下位ほど貯留岩 性状が悪くなることから,最も良好な最上部のレイヤーを 仕上げ対象層とした(図 6)。 前 オ ペ レ ー タ ーARCO 社 は,1982 年 に Terang–1 で ガスを発見して以降,計3 坑を掘削していたが,今般の Terang ガス田開発では新たに 5 坑の生産井を掘削した。 これらは全てTerang 構造の頂部付近に配置され,水平掘 りによって最大150 m の仕上げ長を確保し,生産の経過 に伴う出砂を防ぐためにサンドスクリーン+グラベルパッ クにて仕上げられている(図7)。また,クリスマスツリー やマニホールドなどの生産施設を全て海底面に設置し,海 上の浮遊式生産施設(FPU:図 8)で処理を行う,いわゆ る海底仕上げ方式が採用された。FPU で処理されたガス は,再度海底のエクスポートパイプラインを通り,ホット タッピングで接続された東ジャワパイプラインへ送られて いる。 Terang ガス田は 2012 年 5 月 26 日から商業生産を開始し, 主に4 坑井からおよそ 300 MMscfd(日産 850 万 m3)のガ スを順調に生産中である。2014 年 8 月末現在で,累計生 産量は200 BCF を超え,現在は Sirasun・Batur ガス田の 開発(Phase 2 開発)に向けて準備中である。 このように,最新の開発テクノロジーを導入し,高い生 産能力を持つ坑井を仕上げ,これによって得られる収益に よって次の探鉱開発プロジェクトへつないで行くことが可 能となる。今後カンゲアン・プロジェクトが持続的発展を 遂げるためのインベントリーの中から,技術的にチャレン ジングな2 つのタスクについて触れる。 3.2 West Kangean ガス田の開発

West Kangean ガス田は 1988 年に West Kangean(WK)–1

で発見され,次いで掘削された WK-2 では 1 号井を上回る 高い生産能力が確認された(Siemers et al., 1992)が,続 くWK-3 では掘進中にガス徴があったにもかかわらず,テ ストで有効なフローが得られなかったことから,以降は既 発見未開発の状態である。東西・南北各々20 km に及ぶ 巨大なドーム状の4 ウェイクロージャーであり,構造はカ ンゲアン島陸域まで広がっているが,貯留岩はタイトなマ トリックスを持つフラクチャーの発達したNgimbang 層泥 質石灰岩であり,そのフラクチャー発達の不均質性のため に生産能力に大きな差が生じているものと考えられる。こ のため,次の坑井を掘削する前にまず三次元地震探鉱を実 施し,精度の高い断層フラクチャー分布のデータ取得を行 うことが不可欠と判断された。そこで,カンゲアン島陸域 を含めた大規模な震探取得を計画したが,最終的に政府の 許可が得られなかったため,海域のみについての三次元地 震探鉱を2008 年に実施した。この結果,中央部と南北に 3 つの極隆部が存在することが確認されるとともに,既存 の二次元地震探鉱でも解釈されていた北東−南西系の変位 の大きい断層群の他に,南北系の正断層が多く発達してい ることが明らかになった(図 9)。 また,取得されていたコアの詳細な観察と検討の結果, フラクチャーには大きく2 タイプあり,1 つ はストレージ (Storage)として機能するもの,つまりドロマイト化した ノジュール,スタイロライト,カルスト化した堆積面など に認められる微細なマイクロフラクチャーは,ガスを貯 留する機能を持つと考えられる。そしてもう1 つは,通路 (Conduit)として機能する,明瞭な開口部を持ったメガフ ラクチャーであり,良好な生産性を得るためには,このよ うなメガフラクチャーに坑井が遭遇すること,そしてメガ 図 6 Terang ガス田地質断面図 7 Terang ガス田生産坑井デザイン 8 Terang ガス田の浮遊式生産施設

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フラクチャーとストレージのマイクロフラクチャーが連結 したネットワークを形成していることが不可欠であると考 えられる(図 10)。例えば,WK–3 号がフローしなかった 理由は,メガフラクチャーの発達しないストレージのみの 部分に掘り込んだためと解釈される。 以上のことから,このような不均質性を持つ貯留層を 正しく評価し,最適な開発プランを策定するためには, フラクチャー発達の不均質性を定量的に数値化する DFN

(Discrete Fracture Network)モデルを作成し,フラクチャー

が有機的に連結・導通している領域(クラスター)を推 定することが重要と考えられた。DFN モデル作成の基本 は,スケールに応じた断層フラクチャー要素の認定であ り, それは,規模が大きく震探で認定されるサイスミッ ク断層(Seismic Fault),三次元地震探鉱データのアント トラック処理などから抽出されるサブサイスミック断層 (Sub-seismic Fault),そして FMI などのマイクロ比抵抗検

層やコアレベルで認定される天然フラクチャー(Natural Fracture)の 3 つの階層から成る。これらの中でも天然フ ラクチャー認定は最も技術を要するものであり,各坑井で 得られたフラクチャーの頻度,方向,サイズという「点」 のデータと,岩相やシーケンス,層厚といった面的なデー タとの相関を求め,確率論的(Stochastic)に拡張する手 法である。この作業は,米国の Golder Associates 社と共 同で行い,FracManTMと呼ばれるソフトウェアを用いて試 行錯誤を重ねながら天然フラクチャーモデルを構築した。 最終的に,これら3 つの階層の断層フラクチャーを合成す ることで,DFN モデルが完成する(図 11)。この DFN モ デルは,坑井のフローテストデータでキャリブレーション を行い,マッチングするよう貯留層パラメーターの調整を 行っている。 次に評価すべき内容はクラスターの分布である。フラク 図 9 West Kangean ガス田深度構造図 10 フラクチャー貯留岩の地質概念図 11 DFN モデルの構築コンセプト 12 クラスター分布解析結果

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チャーには開口しているものと閉じているものがあり,生 産性に寄与するものは当然開いたもののみである。した がって,そのような開口した断層やフラクチャーを特定す ることで,坑井を掘るべきスイートスポットが明らかにな る。図 12 は,現在の南北方向の主圧縮応力場という特性 を考慮して,その場合に開き得る断層フラクチャーのみを 抽出し,それらがどのようにつながっているかを示したも のである。この場合,少なくとも100 条以上の断層で切ら れている断層(図左)と,それらが連結している範囲(図 右)を示したもので,これをクラスターと呼ぶ。クラス ターは,断層やフラクチャーがネットワークとして有機的 につながっている空間であり,坑井を配置すべきエリアと 考えられる。例えば,既存坑井との関係を詳しく見ると, 成功した WK–1, 2 号はクラスターを通過しており,フロー しなかった WK–3 号はクラスターから逸れている。この ような差別的な状況は,複数のリアライゼーションによる DFN モデル群に共通して確認され,モデルの有効性を判 定するための重要な根拠の1 つである。 このようにして構築された DFN 地質モデルは,貯留層 シミュレーションのためにアップスケールされ,坑井数や その配置,累計生産量を向上させるためのフローレートの 最適化結果などから,経済性を得るための開発プラン策定 に資することができる。また,フラクチャー貯留層ネット ワークの広がりを確認するために実施されることが多い長 期フローテストについて,どの程度の期間が必要かについ ての指針を得ることが可能である。よって次のステップと して,このモデルの有効性を検証し,開発移行への最終投 資決定(FID)を行うための評価井掘削が必要であり,早 期の実施が望まれている。 3.3 South Saubi プロスペクトの試掘 South Saubi プロスペクトは,カンゲアン島の南方海域, カンゲアン鉱区の飛び地に位置し,水深約 950 m の大水 深域にある。構造は,Kujung 層石灰岩リーフのビルドアッ プが形成する,東西・南北に各々約10 km のドーム状の 4 ウェイクロージャーであり,二次元地震探鉱で明瞭に認定 される。地震探鉱断面では,シーケンス境界などのリーフ 内部構造が認められる他,リーフ上面へのオンラップも明 瞭である。 構造のおよそ 10 km 南方は,南部堆積盆の最 深沈降域となっており,この一帯がキッチンエリアとして 期待される。東ジャワ陸域のCepu 鉱区(ExxonMobil 社) で開発が進んでいるBanyu Urip 油田群は,近年のインド ネシアにおける大規模発見の筆頭に挙げられるが,South Saubi はこれと同じプレイである。東ジャワ陸上からマ ドゥラ島,そしてカンゲアン島に東西 500 km 以上にわた るRMK(Rembang-Madura-Kangean)インバージョン隆起 帯の南側は,深い沈降域になっている。Banyu Urip を始

めとして,東方へMudi, Sukowati, Jeruk, Madura BD と続

く Kujung リーフを貯留岩とする油田群は,全て隆起帯南 側の沈降域に存在していること(Kusumastuti et al., 2002) から,South Saubi などのカンゲアン地域のリーフにも油 ガス発見の期待が持たれている。 当地域の地震探鉱データから,South Saubi の両脇には やや小振りのリーフが複数存在しており,東方にはより大 規模なリーフが存在することが知られているが,このリー フに対して 1994 年に BP が ST Alpha-1 の試掘を行い,油 ガス徴を確認するもドライであった。この失敗要因として は,リーフを覆う泥質なシール層(下部 Cepu 層)が ST Alpha 構造を被覆しておらず,砂質な層準によって覆われ ているためシール能力に乏しく,油ガスがリークしたもの と考えられる。これは言い換えれば,South Saubi リーフ は先に溺れてしまったが,ST Alpha リーフは溺れずにそ の後も成長を続けたため,有効なシール層準に被覆されず, 油ガスをトラップできなかったということになる。 このように,南部堆積盆では未だ Kujung リーフ・プレ イでの発見がないため,特に油ガスの移動 集積をどのよ うに評価するかが最も重要なポイントとなる。図 13 は, 南部堆積盆での油ガス生成のタイミングを検討した例であ り,熱履歴シナリオの与え方で幾通りもの結果が得られる が,ここでは基本ケースとして想定した低い熱履歴を辿っ たケース(Base)を示した。また,逆に高い熱履歴を辿っ たケース(Reference)を図 14 に示す。図の左側は想定キッ チンでの油ガスの生成状況を5 Ma 毎に示したもので,左 が油,右はガスであり,ハッチ部は貯留岩である Kujung リーフが堆積した時期を示している。Base ケースにおい ては,油は 35 Ma 頃から生成開始し,ピークは 15 Ma 付 近であり,ガスは遅れて 25 Ma あたりから生成開始し, ピークは 5 Ma 以降となる。シール層が堆積する時間を考 図 13 油ガス生成のタイミング検討(低熱履歴ケース)

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慮しても,生成した油ガスは十分にトラップされ得ると 考えられる。一方,Reference ケースにおいては,油は 40 Ma 以前から生成開始しており,ピークは 25 Ma 付近,ガ スの生成も 40 Ma 頃から生成開始し,15 Ma あたりでピー クを迎え,以降も生成は継続する。すなわち,この場合に は,油はタイミングが合わずにトラップされず,ガスが主 体に集積することになる。このように一般に堆積盆モデリ ングでは,集積する炭化水素が油かガスかという点におい ては,根源岩能力よりもむしろ熱履歴の与え方が結果を大 きく左右する。 次に,移動集積を定量的に評価するため,南部堆積盆の 三次元堆積盆モデリングをPermedia 社の MPathTMという ソフトウェアを用いて実施した(石油資源開発・地球科学 総合研究所,2011)。MPathTMは,炭化水素の2 次移動の アルゴリズムにダルシー則を用いておらず,インベージョ ン・パーコレーション法を用いている点を最大の特徴とす る。この手法では,移動する炭化水素の移動率,圧力,そ の他の流体の特性は考慮せず,炭化水素の移動は地質的時 間スケールで考えた場合,一瞬に起こるものと考える。し たがって,炭化水素の移動は炭化水素の浮力と各セルに与 えられたキャピラリー・スレショールド圧力のバランスの みに左右されることとなる。この手法の最大のメリット は,ダルシー則を用いたシミュレーション・ソフトウェア に比べ,計算速度が極めて速い点にある。図15 に,Base ケースにおいて生成された油ガスがどのように移動集積し たかのシミュレーション結果について,貯留層上限(上) および根源岩層下限(下)の構造図に示した。図中の雲状 の線が移動経路を示し,各クロージャーには炭化水素飽和 度が示されている。このように,South Saubi リーフには 効率的に油ガスが集積していることが期待される一方, ST Alpha リーフへの移動は確認されるものの集積できず に逸散している。これは上位層のシール能力が弱いためで あることは言うまでもない。またSouth Saubi リーフの基 底部ではアーチ状の張り出しが形成されているため,東西 のキッチンエリアからの集積効率が高くなっていることも 好条件の1つである。なお MPathTMでは,各クロージャー への炭化水素の集積量からガスおよび油コラムを求めるこ とも可能であり,通常の容積法で計算した結果と近似した 値が得られている。

4. お わ り に

カンゲアン・プロジェクトでは,探鉱から開発・生産ま でさまざまなインベントリーについて,マーケティングの 動向と投資のタイミング,そしてパートナー各社の意向を 調整しながら進めて行く,高度なプロジェクトマネジメン トが求められる。TSB ガス田開発以降のシナリオをどう 描くか,また 2030 年の鉱区期限を見据え,そのシナリオ を如何に迅速に進められるかに,プロジェクトの命運がか かっている。そのためにも,堆積盆モデリングや地質モデ ル構築,貯留層シミュレーションによる生産予測などに よって,技術的な不確実性を低下させるために評価精度を 高めることが不可欠である。 図 14 油ガス生成のタイミング検討(高熱履歴ケース) 15 油ガスの移動集積シミュレーション結果

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謝 辞 本稿を投稿するに際し,シンポジウムでの講演の機会を 与えて頂いた石油技術協会の関係者各位に御礼申し上げ ます。また,公表を許可して頂いた石油資源開発㈱,三 菱商事㈱,三菱商事石油開発㈱,KEI,EMP,ならびにイ ンドネシア政府エネルギー鉱業省石油ガス庁 (Direktorat

Jenderal Minyak dan Gas Bumi : DirgenMIGAS),そして日

頃から助言を頂いている関係者諸兄に 厚く感謝致します。

引 用 文 献

Doust, H. and Summer, H.S., 2007 : Petroleum systems in rift basins - A collective approach in Southeast Asian basins. Petroleum Geoscience, 13, 127–144.

Hakiki, F., Sekti, R., Simo, T., Fullmer, S. and Musgrove, F., 2012 : Oligo-Miocene carbonate reser voir quality controls - depositional and diagenetic study of Banyu Urip field, onshore East Java, Indonesia. Proceedings of the 37th Annual IPA Convention, Indonesian Petroleum Association, IPA12-G-037.

一丸裕二・西田英毅・本多孝安・Sutanto, H., 2010 : インド ネシア国,東ジャワ・カンゲアン島周辺地域における油

ガスの移動集積メカニズム,平成 22 年度石油技術協会

春季講演会要旨集,004.

Kusumastuti, A., P. van Rensbergen and J. K. Warren, 2002 : Seismic sequence analysis and reservoir potential of

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Noble, R. A. and Henk, F. H. Jr., 1998 : Hydrocarbon charge of a bacterial gas field by prolonged methanogenesis: An example from the East Java Sea, Indonesia. Advances in Organic Geochemistry, 29, 301–314.

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石油資源開発・㈱地球科学総合研究所,2011 : インドネシ

ア国,東ジャワ・カンゲアン島周辺地域における石油シ ステム評価(フェーズⅡ),(財)石油開発情報センター

平成 22 年度産油国石油開発技術共同研究事業報告書.

Siemers, C. T., Deckelman, J. A., Brown, A. A. and West, E. R., 1992 : Characteristics of the fractured Ngimbang carbonate (Eocene), West Kangean-2 well, Kangean PSC, East Java Sea, Indonesia, Carbonate Rocks and Reservoirs of Indonesia. A Core Workshop, IPA Core Workshop Notes, 10-1, 10–40.

Triyana, Y., Harris, G.I., Basden, W.A., Tadiar, E. and Sharp, N.C., 2007 : The Maleo Field: An example of the Pliocene Globigerina bioclastic limestone play in the East Java basin - Indonesia. Proceedings of the 31st Annual IPA Convention, Indonesian Petroleum Association, IPA07-G-115.

参照

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