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インドの投資環境

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第17 章 金融制度

金融制度

第17章

金融機関

1.

インドの金融機関は、銀行部門、ノンバンク金融機関(Non-Banking Financial Institutions)に大 別される。銀行部門はさらに指定商業銀行(Scheduled Commercial Banks)、地域銀行(Local Area Banks)、地域農村銀行(Regional Rural Banks)、協同組合信用機関(Credit Cooperatives)に分類さ れる(図表 17-1)。銀行部門の総資産をみると、指定商業銀行が圧倒的であり、そのなかでもイン ドステイト銀行(SBI:State Bank of India)をはじめとする国有銀行 21 行で構成される公営銀行 部門のシェアが大きい公営銀行は、指定商業銀行の総資産の65.8%を占めている(2018 年 3 月末 時点)。尚、インド政府は銀行の経営基盤の強化を目的に公営銀行の統合を進めており、2017 年 4 月には旧「ステイト銀行グループ」に属する5 行と Bharatiya Mahila 銀行がインドステイト銀行に 吸収合併された。同行は2018 年 3 月末時点で指定商業銀行の総資産の 22.6%を占めている(図表 17-2)。 図表 17-1 インドの金融機関(2018 年 3 月末) (注)地域農村銀行、農村協同組合信用機関の総資産は2017 年 3 月末の値。非預金受入型ノンバンクの総資 産は、単体での総資産50 億ルピー以上の機関のみの値

(出所)インド準備銀行「Report on Trend and Progress of Banking in India 2017-18」、「Statistical Tables Relating to Banks in India (STRBI) 2017-18 and Other Tables, 2017-18」より作成

総資産 (10億ルピー) 公営銀行

(Public Sector Banks, 21) 100,352 民間銀行

(Private Sector Banks, 21) 42,989 外国銀行

(Foreign Banks, 45) 8,676 小規模ファイナンス銀行

(Small Finance Banks, 6) 517 8 4,660 都市協同組合銀行

(Urban Co-operative Banks, 1,551) 5,632 農村協同組合信用機関

(Rural Co-operative Credit Institutions, 96,612) 10,379 全国農業農村開発銀行 (NABARD) インド輸出入銀行 (EXIM Bank) 全国住宅銀行 (NHB) 小規模産業開発銀行 (SIDBI) 預金受入型 (NBFCs-D, 108) 3,460 非預金受入型 (NBFCs-ND, 10,082) 19,300 銀行型 (Bank-PDs, 14) N/A 独立型 (Standalone-PDs, 7) N/A 業態 (英名・機関数) 銀行部門 (Banking Sector・ 95,640) 地域銀行

(Local Area Banks, 3) 地域農村銀行

(Regional Rural Banks, 56) 協同組合信用機関 (Credit Cooperatives, 98,163) ノンバンク金融機 関 (Non-banking Financial Institutions, 10,215) 全インド金融機関 (All India Financial Institutions, 4) 7,023 (4行合計) 指定商業銀行 (Scheduled Commercial Banks, 93) ノンバンク (Non-banking Finance Companies, 10,190) プライマリーディーラー (Primary Dealers, 21)

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インドの投資環境

図表 17-2 指定商業銀行の総資産ランキング(2018 年 3 月末)

(出所)インド準備銀行をもとに作成

中央銀行 (1)

インド準備銀行(RBI)は中央銀行として 1935 年に準備銀行法(Reserve Bank of India Act 1934) に基づき設立された。設立当初は民間銀行であったが、1949 年にインド準備銀行法の改正を受け 国有化された。1949 年銀行規制法により、銀行への規制、監督、検査の権限が付与され、銀行、 支店の新設には、いかなる場合も同行の許可が必要となった。

1994 年 11 月に、金融監督委員会(Board for Financial Supervision)がインド準備銀行内に設立 され、金融機関とノンバンク及びその他全ての金融組織を監督している。金融監督委員会の指導 のもとに、インド準備銀行にある個別の監督局15が金融機関を監督している。 2019 年 9 月時点の総裁はシャクティカーンタ・ダース(Shaktikanta Das)氏である。中銀の独 立性を巡りモディ政権と対立してきたウルジット・パテル前総裁が突然辞任したことを受けて、 2018 年 12 月に就任した。総裁任期は 3 年間である。ダース氏は財務次官出身であり、2016 年の 高額紙幣廃止を推進した一人である。モディ首相とは近い人物であるとされており、政府の介入 が強まることを懸念する声も出ている。尚、2019 年 6 月には副総裁のアチャリャ氏も辞任したが、 同氏も融資規制、ノンバンク支援等、様々な政策を巡り、介入を強める政府と対立していた。

15 銀行監督局(Department of Banking Supervision)、ノンバンク監督局(Department of Non-Banking

Supervision)、金融機関監督部(Financial Institutions Division)の 3 つ。

順位 和名 英名 分類 総資産

(兆ルピー)

1 インドステイト銀行 STATE BANK OF INDIA 公営銀行 34.5

2 HDFC銀行 HDFC BANK LTD. 民間銀行 10.6

3 ICICI銀行 ICICI BANK LIMITED 民間銀行 8.8

4 パンジャブ・ナショナル銀行 PUNJAB NATIONAL BANK 公営銀行 7.7

5 バロダ銀行 BANK OF BARODA 公営銀行 7.2

6 アクシス銀行 AXIS BANK LIMITED 民間銀行 6.9

7 カナラ銀行 CANARA BANK 公営銀行 6.2

8 バンク・オブ・インディア BANK OF INDIA 公営銀行 6.1

9 ユニオン・バンク・オブ・インディア UNION BANK OF INDIA 公営銀行 4.9

10 産業開発銀行 IDBI BANK LIMITED 公営銀行 3.5

152.5

上位10行シェア 63.2%

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第17 章 金融制度

商業銀行 (2)

商業銀行は、公営銀行(Public Sector Banks、21 行)、民間銀行(Private Sector Banks、21 行)、 外国銀行(Foreign Banks、45 行)、小規模ファイナンス銀行(Small Finance Banks、6 行)に分類 される。

公営銀行であるインドステイト銀行は、単体で34.5 兆ルピーの総資産規模を有するインド最大 手の銀行である。同行は 1806 年にインド初の銀行として設立されたカルカッタ銀行(Bank of Calcutta)、1921 年に設立されたインド帝国銀行(Imperial Bank of India)を前身とし、1955 年に政 府の経済開発方針に基づき国有化された。インドステイト銀行は、その関連銀行5 行16と「インド ステイト銀行グループ」を形成していたが、2017 年 4 月、政府の主導により、関連銀行 5 行と公 営銀行であるBharatiya Mahila 銀行を吸収合併した。 背景には、インド政府による不良債権問題への取り組みの強化がある。当局は2015 年以降、銀 行に対する検査を厳格化して貸出債権の区分を見直すとともに、引当金の積み増しを指示した。 結果、公営銀行部門ではインフラ関連プロジェクトを中心に不良債権が大幅に増加し、不良債権 比率は2015 年 3 月末の 4.96%から 2016 年 3 月末の 9.27%へと急上昇、2018 年 3 月末も 14.58% と高水準を維持している。報道によると、政府当局は他の公営銀行についても統合を進める方針 であり、インド政府により2018 年 9 月にバロダ銀行(Bank of Baroda)による Dena Bank 及び Vijaya Bank の吸収合併も発表されている。更にインド政府は 2017 年以降、公営銀行の不良債権処理を 促すため、2 年間で 2.11 兆ルピー(3 兆円強)の公的資金を投入する計画を発表し実施してきた。 2019 年 9 月にも新たに 7,000 億ルピー(約 1 兆円)の投入を公表した。

民間銀行は伝統的民間銀行(Old Private Sector Banks)と呼ばれる 12 行と、1993 年以降に設立 された新民間銀行(New Private Sector Banks)9 行によって構成される。外国銀行支店は国内銀行、 民間銀行と同等の業務を行うことが認められている。日本のメガバンク 3 行もインドにおけるフ ルバンクライセンスを取得し支店を展開しているものの、進出日本企業への融資や貿易金融が中 心で、リテール業務は行っていない。小規模ファイナンス銀行は、政府の金融包摂政策の一環と して、金融サービスへのアクセスに制約がある層(地方部、低所得者)に対してサービスを提供 している。 非銀行金融機関 (3)

非銀行金融機関(Non-banking Financial Institutions)には、国策的な融資を提供するための政府 系金融機関である「全インド金融機関」(All India Financial Institutions)、非銀行与信機関であるノ ンバンク(Non-banking Finance Companies)、国債引き受けを行う政府公認のプライマリーディー ラー(Primary Dealers)が含まれる。全インド金融機関には中小企業向け融資を目的に設立された 小規模産業開発銀行(SIDBI:Small Industries Development Bank of India)、農業、地方開発向け融 資を目的に設立された全国農業農村開発銀行(NABARD:National Bank for Agriculture and Rural Development)、貿易金融を行うインド輸出入銀行(EXIM Bank)、住宅金融を提供する全国住宅銀

16 State Bank of Bikaner and Jaipur、State Bank of Hyderabad、State Bank of Mysore、State Bank of

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インドの投資環境

行(NHB:National Housing Bank)の 4 行がある。

尚、2018 年秋には大手ノンバンクである IL&FS(インフラストラクチャー・リーシング・アン ド・ファイナンシャル・サービシズ)や、DHFL(デワン・ハウジング・ファイナンス)の債務不 履行が相次いだ。ノンバンク業界の流動性不安が顕在化し業界全体として株価の下落や格付けの 引き下げが続く中、多くのノンバンクにとっては銀行融資や CP 発行を通じた資金調達環境が悪 化、結果として自動車ローン等の貸し渋りが深刻化している。 金融包摂政策 (4) モディ政権は地方や低所得者層の金融アクセスの確保、いわゆる「金融包摂」(financial inclusion) に注力しており、2014 年 8 月に「Pradhan Mantri Jan-Dhan Yojana」(PMJDY)と呼ばれる口座開設 政策を開始した。この制度により、国内の全ての銀行窓口で簡易な書類手続きにより、貯蓄口座 の開設、生命保険・損害保険の購入、当座貸越など基本的な金融サービスを受けることが可能に なった。その結果、2014 年に 52.8%であった 15 歳以上の人口の口座保有比率は、2017 年には 79.8% に高まっている(図表17-3)。 図表 17-3 アジア諸国の口座保有比率(15 歳以上人口比、2017 年) (出所)世界銀行より作成

金融市場

2.

インド準備銀行は、リーマンショックを契機とする世界同時不況への対応として政策金利(レ ポ金利)を急速に引き下げ、2009 年 4 月から 2010 年 2 月までの期間は 4.75%の低水準を維持し た。その後2010 年 3 月以降は、インフレ圧力の高まりを受けて金融引き締めに転じ、2011 年 10 月には8.50%と、早いペースで引き上げた。 2015~2018 年半ばまで、物価が安定的に推移するなかで景気刺激を目的に利下げ局面が続いた が、景気の堅調な拡大や物価上昇が続いたことから、2018 年後半は二度にわたって利上げが行わ れた。しかし、2019 年以降は、景気減速の懸念が高まっており、2 月、4 月、6 月、8 月、10 月と 98.2% 85.1% 81.0% 80.2% 79.8% 48.4% 31.8% 30.0% 25.6% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 日本 マレーシア タイ 中国 インド インドネシア フィリピン ベトナム ミャンマー

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第17 章 金融制度 利下げが続いている。直近では 2019 年 10 月の金融政策決定会合において、5.40%から 5.15%へ と25 ベーシスポイント(0.25%)の引き下げを決定した。背景として、特に都市部での消費需要 の減少や自動車販売台数の減少など、各セクターの需要が弱く、加えて消費者物価指数上昇率が 目標の範囲内(4%±2%以内)に留まっていることが挙げられる。尚、金融政策のスタンスは 2019 年6 月に「中立(Neutral)」から「緩和的(Accomodative)」に変更されている。 図表 17-4 政策金利(INREPO)の長期推移(2001 年 4 月-2019 年 8 月) (出所)インド準備銀行(RBI)より作成

資本市場

3.

株式市場 (1)

資本市場の規制・監督機関であるインド証券取引委員会(Securities and Exchange Board of India) は、投資家が金融上の不正行為から保護されるよう、市場を監督する権限を与えられている。損 害を受けた投資家は、関係する株式市場について、インド証券取引委員会に書面で報告すること により、救済を求めることができる。投資家保護のためのインド証券取引委員会の規制に加えて、 1956 年会社法(Companies Act, 1956)及び 1956 年証券契約(規制)法(Securities Contracts (Regulation)Act, 1956)には、投資家の利益保護のための規定が含まれている。対内証券投資に ついては、海外機関投資家に対して発行市場及び流通市場で取引される証券に対する投資が許可 されている。2014 年 6 月より、従来 3 つに区分されていた海外投資家のカテゴリーが「外国ポー トフォリオ投資家」(Foreign Portfolio Investors:FPI)という新たなカテゴリーに統一され、制度 の簡素化が図られた。FPI によるインド企業への出資比率は 10%を超えてはならず、当該企業に 他の海外投資家が出資している場合には、海外投資家合計で出資比率が24%を超えてはならない ことから、依然として規制の強い市場である。尚、2019 年 3 月末時点で 59 ヵ国 9,390 件の FPI が 登録されている。 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 (%) 期間内最低値 2009/04-2010/02 期間内最高値 2008/07-2008/09 2015年以降 利下げ局面が続く

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インドの投資環境

インドには数多くの証券取引所が存在するが、時価総額が大きいボンベイ証券取引所(Bombay Stock Exchange:BSE)、ナショナル証券取引所(National Stock Exchange:NSE)が主要な取引所 である。ボンベイ証券取引所の上場企業数は5,484 社、時価総額は 140.98 兆ルピー(約 214 兆円)、 ナショナル証券取引所の上場企業数は1,905 社、時価総額は 139.76 兆ルピー(約 212 兆円)であ る(2019 年 8 月末時点)。特に海外投資家にとっては、インドの浮動株比率の低さが投資拡大の 妨げになっていることから、2019 年 7 月、政府はインド証券取引委員会に対し、浮動株比率の下 限を25%から 10%程度引き上げることを検討するように指示したと報じられている。

ボンベイ証券取引所が公表する「S&P BSE SENSEX」はインドを代表する株価指数である。ボ ンベイ証券取引所に上場する代表的な 30 銘柄の時価総額加重平均指数であり、1978~1979 年の 時価総額を100 として算出される(図表 17-5)。 図表 17-5 株価指数(SENSEX)の推移 (出所)ボンベイ証券取引所より作成 債券市場 (2) インド準備銀行、インド証券取引委員会に拠れば、2019 年 3 月末のインド国内市場の債券発行 残高は、連邦政府債59 兆ルピー、州政府債 28 兆ルピー、社債 31 兆ルピーであった(図表 17-6)。 また、図表17-7 は 2019 年 6 月末時点でのインド国債の最終利回りを示している(いずれも償還 まで1 年超の債券が対象)。インドの債券市場においては、伝統的に国債などの公債が大部分を占 めているが、これは恒常的な歳入不足を補うために国債が発行され、それが国内市場で消化され る仕組みが作られていたためである。 インドでは、非居住者の債券投資に対する規制が設けられる一方で、国内の金融機関に対して は一定割合の国債保有を義務づけるなどの政策が採られてきた。国債の保有比率をみると、商業 銀行が首位(34%:2019 年 3 月末)であるが、これはインド準備銀行の定める法定流動性比率 (Statutory Liquidity Ratio:SLR)規制により、銀行は負債の一定割合を政府債で調達する義務を

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 (SENSEX index) (暦年)

(7)

第17 章 金融制度 課せられているためである。SLR は近年引き下げが続いており、2019 年に入ってからも、年初の 19.50%から 1 月中旬には 19.25%へ、4 月には 19.00%、7 月には 18.75%へと変更されている。 また、インド企業は社債ではなく、銀行借入や株式による資金調達を選好してきた経緯があり、 社債の発行による長期資金の調達が必要な場合も公募ではなく私募が選ばれてきたため、国内社 債市場の発達が遅れたといわれている。2018 年度のインド企業による社債公募は 25 件、合計調 達金額は3,668 億ルピー(約 5,569 億円)と、上場企業数を考えると低い水準にある。 尚、インドは国債発行を中心として財政赤字をファイナンスしており、ほぼ全額を国内で消化 している。インド準備銀行は2015 年 12 月に「債務調達戦略」(Debt Management Strategy)を公表 し、2055 年までに合計 45 兆ルピーを政府債で調達する考えを示した。 図表 17-6 インド債券市場の残高推移 (出所)インド準備銀行、インド証券取引委員会より作成 図表 17-7 インド国債のイールド・カーブ(2019 年 6 月末) (出所)インド準備銀行、インド証券取引委員会より作成 23 26 33 37 42 45 49 54 59 6 7 9 11 13 16 21 24 28 9 11 13 15 18 20 24 27 31 0 10 20 30 40 50 60 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 (兆ルピー) 国債(T-Bill除く) 州政府債 社債 6.0 6.2 6.4 6.6 6.8 7.0 7.2 7.4 0 5 10 15 20 25 30 35 40 (%) (残存期間:年)

図表  17-2    指定商業銀行の総資産ランキング(2018 年 3 月末)

参照

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