凍結防止剤散布時の熟練オペレーターと未経験オペレーターの視線挙動
高橋尚人
*1、徳永ロベルト
*1、佐藤賢治
*1、切石亮
*2 1.研究の目的 凍結防止剤散布では、気象観測、路面温度予測手法の 開発など散布の効率化に向けた様々な取り組みがされて きた。しかし、最終的には、オペレーターが現地で路面 状態を判断しながら散布作業を行っており、適切かつ正 確な散布を行う上で、オペレーターの果たす役割は大き い。しかし、オペレーターの高齢化が進み、人員の確保・ 育成が難しくなっている1)(図 1、表 1)。 有効な研修プログラムの開発・提供、経験のない作業 員でも適切な散布が可能な支援技術の開発などが必要で あるが、このためには、経験を積んだ作業員と初心者お よび未経験作業員の散布作業の違いや、ITS を活用した 支援技術が散布作業にどのような影響を与えるかを理解 する必要がある。 2 つのグループ(たとえば、初心者と経験者、研修受 講の有無など)を比較するため、視線挙動に関する研究 が数多く行われてきた 2)、3)、4)。本研究では、アイトラッ キング装置を用い、凍結防止剤散布時の熟練作業員と経 験のない作業員の視点挙動、散布作業時に前方路面状態 を情報提供した場合の両者の視点挙動を比較した。 2.研究の手法 (1)試験装置 アイトラッキング装置(Tobii 社、グラス 2)を使用 した(図 2)。HD ビデオ(1,920×1,080 ピクセル)画像 と被験者の視点が 0.04 秒間隔で記録される。 (2)被験者 国道の維持管理を担当している作業員 11 名が実験に 参加した。うち 5 名は 2 年以上の散布オペレーター経験 があり、6 名はオペレーターの経験がない。 本論文では、前者を「熟練オペ」、後者を「未熟オペ」 と称する。熟練オペの平均年齢は 49.4 才(標準偏差 10.48 才)、未熟オペの平均年齢は 45.3 才(標準偏差 14.28 才) だった。 なお、アイトラッキング装置のキャリブレーションが 難しいことから、眼鏡を使用していないか、コンタクト レンズで視力矯正している作業員から被験者を選定した。 (3)試験実施場所とコース設定 当所所有の苫小牧寒地試験道路(延長 2,700m)で試験 を行った。直線区間に延長 400m の試験区間をいくつか設 定した。試験区間は、「重点散布区間(路面凍結が発生し やすい区間)」を模したもので、試験区間中に延長 100m の湿潤または凍結路面を作成した(ターゲット区間とい う)。ターゲット区間以外は乾燥路面を維持した。 (4)試験車両 凍結防止剤散布車を使用し、試験時は 30km/h で走行 した。オペレーター席(助手席)の前景を図 3 に示す。 *1 国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所 *2 国土交通省北海道開発局札幌開発建設部 項目 件数 オペレーターの確保 41 オペレーターの育成 33 維持管理費 22 機種規格および装置 20 機械台数 15 業持機械 10 機械本体 8 特になし 7 その他 2 計 158 表 1 除雪機械に関する問題点1) 図 2 アイトラッキング装置 0.4 0.8 0.4 15.7 17.2 7.1 23.6 21.8 22.1 30.3 21.4 23.6 27.2 31.3 32.4 2.7 7.4 14.4 0 20 40 60 80 100 1998 2004 2009 -20 21 - 30 31 - 40 41 - 50 51 - 60 61 -(%) 年齢 (年) 図 1 除雪オペレーターの年齢構成の推移1)キロポスト標:コース脇に 100m 間隔で設置されている 散布制御装置:散布量設定と散布作業を開始・停止する 野 帳 :試験区間の位置が示されている。被験者 は、ターゲット区間の出現位置、散布し た場合には散布量を野帳に記録する。 タブレット PC:情報提供実験時に自動で起動し、前方の 路面状態を画像と音で知らせる(図 4)。 情報提供実験時以外は作動しない。 (5)作業課題 凍結防止剤散布車が試験道路を周回する間に、被験者 は以下の作業課題を行った。 課題 1:路面状態を目視判別し、野帳に記録する。 課題 2:課題 1 に加え、散布作業(散布量の設定と散 布の開始・停止)を行う。 課題 3:タブレット PC が前方路面状態に関する情報 を提供している状況で課題 2 を行う。 散布量は、湿潤路面に対して 20g/m2、凍結路面に対し ては 30g/m2を設定した。 (6)試験手順 被験者は、最初に本実験の目的、内容、手順、個人情 報保護に関する事項及び安全確保に関する留意点につい て説明を受け、実験同意書に署名するとともに、年齢、 散布オペレーター経験年数等を記入した。次に、被験者 はアイトラッキング装置を装着してキャリブレーション を行う。その後、被験者は、自然な視線挙動を取り戻す 時間を考慮して 5)歩いて凍結防止剤散布車に向かい、試 験を開始した。 熟練オペは重点散布区間を熟知している状況を再現 するため、熟練オペには試験手順等の説明時に試験区間 の位置を知らせた。未熟オペは凍結防止剤散布車に乗り、 野帳を見た時に初めて試験区間の位置を知る。 なお、熟練オペ、未熟オペともにターゲット区間の位 置は事前には知らされなかった。 3.試験結果 課 題 実 施 中 の 被 験 者 の 視 線 挙 動 を よ り よ く 理 解 す る た め 、タ ー ゲ ッ ト 区 間 の 前 後 各 100m を 含 む 計 300m 区 間 の 視 点 デ ー タ を 分 析 対 象 と し て 抽 出 し た ( 図 5)。視 点 デ ー タ の 取 得 例 と し て 、熟 練 オ ペ が 課 題 1 を 行 っ た 際 の 視 点 デ ー タ を オ ペ レ ー タ ー 席 前 景 に 重 ね た も の を 図 6 左 に 示 す 。 被 験 者 は 、 前 方 路 面 に 主 に 注 意 を 払 っ て お り 、 時 折 、 野 帳 と 制 御 装 置 を 見 て い た こ と が 分 か る 。 被 験 者 が 課 題 実 施 時 に ど こ を 見 て い た か 分 析 す る た め 、被 験 者 の 前 景 を 3 つ の エ リ ア に 分 け( 図 6 右 ) 、 被 験 者 ご と に 、 課 題 実 行 時 に 各 エ リ ア を 見 た 割 合 を 求 め た ( 表 2) 。 図 3 オペレーター席の前景 キロポスト標 タブレットPC 野帳 散布制御装置 図 4 タブレット PC 画面表示例 (右は凍結路面接近時) 図 5 視点データの分析対象区間 L = 100m (乾燥) -100m 0m 100m 200m 散布車 L = 100m ターゲット区間 (湿潤または凍結) L = 100m (乾燥) データ分析対象区間 L = 300m
(1)課 題 1: 路 面 の 目 視 判 別 表 3 に 、 課 題 1 実 施 時 の 被 験 者 が 各 エ リ ア を 見 て い た 割 合 を 集 計 し た 結 果 を 示 す 。 表 3 に は 、t 検 定 を 行 っ た 結 果(p 値 )も 示 し て い る 。p 値 が 0.05 よ り 小 さ な 値 と な っ た 場 合 、 両 者 ( 表 -2 の 場 合 、 熟 練 オ ペ と 未 熟 オ ペ が 各 エ リ ア を 見 て い た 割 合 ) に は 有 意 ( 有 意 水 準 5%) な 差 が あ る こ と を 意 味 す る 。 熟 練 オ ペ は 、未 熟 オ ペ よ り も 路 面 を 多 く( 66.4% 対 52.6%) 、 野 帳 ・ タ ブ レ ッ ト PC を 少 な い 割 合 ( 26.5%対 41.3%) で 見 て い た 。 し か し 、 検 定 の 結 果 、 両 者 に は 有 意 な 差 が 見 ら れ な か っ た 。 散 布 制 御 装 置 見 た 割 合 は 、 熟 練 オ ペ と 未 熟 オ ペ の 間 で ほ と ん ど 差 が な か っ た 。 (2)課 題 2: 路 面 の 目 視 判 別 お よ び 散 布 作 業 表 4 に 、課 題 2 実 施 時 の 視 点 の 集 計 結 果 を 示 す 。 路 面 と 野 帳・タ ブ レ ッ ト PC を 見 た 割 合 に は 、熟 練 オ ペ と 未 熟 オ ペ の 間 に 大 き な 差 が 見 ら れ 、 検 定 の 結 果 か ら も 有 意 な 差 が 確 認 さ れ た 。 散 布 装 置 を 見 る 割 合 は 、 未 熟 オ ペ の 方 が 若 干 高 か っ た が 、 統 計 的 な 有 意 差 は 見 ら れ な か っ た 。 表 3 課題 1 実施時の視点の比較 エリア 熟練オペ 未熟オペ 差 t 検定 (p 値) 1. 路面 66.4 % 52.6 % 13.8 % 0.080 2. 散布制御装置 7.1 % 6.1 % 1.0 % 0.725 3. 野帳・タブレットPC 26.5 % 41.3 % -14.8 % 0.076 (単位: %) 1 2 3 1 2 3 1 2 3 No.1 68.2 7.3 24.5 59.5 14.1 26.4 69.3 8.2 22.5 No.2 78.7 9.8 11.5 52.3 14.4 33.3 38.0 9.5 52.5 No.3 76.1 7.3 16.6 49.9 6.4 43.7 60.1 2.8 37.1 No.4 49.1 10.9 40.0 60.0 7.5 32.5 27.2 21.4 51.4 No.5 59.7 0.0 40.3 49.9 7.9 42.2 61.6 8.3 30.1 66.4 7.1 26.5 54.3 10.1 35.6 51.3 10.0 38.7 10.9 3.8 11.8 4.5 3.5 6.5 15.9 6.1 11.8 No.6 63.3 8.8 27.9 44.1 16.9 39.0 55.7 16.1 28.2 No.7 63.0 3.7 33.3 35.6 14.7 49.7 52.8 12.2 35.0 No.8 53.8 0.0 46.2 37.6 15.5 46.9 57.5 8.1 34.4 No.9 34.2 10.3 55.5 31.0 10.6 58.3 41.4 9.9 48.7 No.10 54.6 11.7 33.7 38.6 11.7 49.7 43.2 10.1 46.6 No.11 46.8 1.8 51.4 33.2 13.9 52.9 43.0 15.5 41.5 52.6 6.1 41.3 36.7 13.9 49.4 48.9 12.0 39.1 10.0 4.4 10.2 4.2 2.2 5.9 6.6 3.0 7.2 平均 標準偏差 課題 エリア 熟練オペ 平均 標準偏差 課題1 未熟オペ 課題2 課題3 表 2 課題実施時に被験者が見ていたエリアの集計 0 270 540 810 1080 0 480 960 1440 1920 (pixel) (pixel) 1. 路面 2. 散布制御装置 3. 野帳・タブレットPC 0 270 540 810 1080 0 480 960 1440 1920 (pixel) (pixel) 図 6 視点データのプロット例(左)、前景のエリア分け(右)
表 5 に 、 熟 練 オ ペ と 未 熟 オ ペ の 課 題 1 と 課 題 2 実 施 時 の 視 点 の 集 計 結 果 を 示 す 。 熟 練 オ ペ は 、 道 路 を 見 る 割 合 が 課 題 1 の 66.4%か ら 54.3% に 減 少 し 、 12.1%の 減 を 示 し た 。 一 方 、 散 布 制 御 装 置 を 見 る 割 合 は 3.0%、 野 帳 ・ タ ブ レ ッ ト PC を 見 る 割 合 は 9.1%増 え た 。未 熟 オ ペ も 同 様 の 傾 向 を 示 し 、路 面 を 見 る 割 合 は 15.9%減 り 、 一 方 、 散 布 制 御 装 置 を 見 る 割 合 は 7.8%、 野 帳 ・ タ ブ レ ッ ト PC は 8.1%増 え た 。 課 題 2 で は 、 課 題 1 と 比 べ 、 熟 練 オ ペ 、 未 熟 オ ペ と も に 路 面 を 見 る 割 合 が 減 り 、 散 布 制 御 装 置 と 野 帳・タ ブ レ ッ ト PC を 見 る 割 合 が 増 え た 。こ れ は 、 課 題 1 と 比 べ て 、散 布 量 の 決 定 、散 布 作 業 の 開 始 ・ 停 止 な ど の 作 業 項 目 が 増 え た た め と 考 え ら れ る 。 検 定 の 結 果 、 熟 練 オ ペ は 課 題 1 と 課 題 2 の 視 点 に は 有 意 な 差 が な く 、 未 熟 オ ペ は 全 エ リ ア で 有 意 な 差 が 認 め ら れ た 。 視 線 挙 動 の 面 か ら 、 散 布 作 業 が 加 わ る こ と に よ る 影 響 は 未 熟 オ ペ の 方 が 熟 練 オ ペ よ り も 大 き い こ と が 分 か る 。 (3)課 題 3: 路 面 の 目 視 判 別 お よ び 散 布 作 業 ( 情 報 提 供 あ り ) 表 6 に 、課 題 3 実 施 時 の 視 点 の 集 計 結 果 を 示 す 。 各 エ リ ア を 見 る 割 合 は 、 熟 練 オ ペ と 未 熟 オ ペ の 間 に は ほ と ん ど 差 が 見 ら れ ず 、 検 定 の 結 果 か ら も 有 意 な 差 は 見 ら れ な か っ た 。 表 7 に 、 課 題 2 と 課 題 3 実 施 時 の 視 点 の 集 計 結 果 を 示 す 。 未 熟 オ ペ は 課 題 2 と 比 べ 、 路 面 を 見 る 割 合 が 12.2%増 え 、 野 帳 ・ タ ブ レ ッ ト PC を 見 る 割 合 が 10.3%減 り 、 両 項 目 で 有 意 な 差 が 認 め ら れ た 。 散 布 制 御 装 置 を 見 る 割 合 は 若 干 減 っ た が 、 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 路 面 を 見 る 割 合 が 増 え 、野 帳・タ ブ レ ッ ト PC を 見 る 割 合 が 減 っ た の は 、 課 題 3 に お い て 前 方 の 路 面 状 態 に 関 す る 情 報 を 提 供 し た 結 果 ( 効 果 ) と 考 え ら れ る 。 し か し 、 散 布 制 御 装 置 を 見 る 割 合 は さ ほ ど 変 化 し な か っ た 。 前 方 の 路 面 状 態 に 関 す る 情 報 提 供 は 、 路 面 判 別 を 助 け る の に 有 効 だ が 、 散 布 制 御 装 置 の 操 作 に は 関 係 が な い か ら と 考 え ら れ る 。 以 上 の こ と か ら 、 未 熟 オ ペ が 散 布 制 御 装 置 の 操 作 に 慣 れ る た め の 研 修 を 実 施 し た り 、 散 布 制 御 装 置 を 見 な く て も 散 布 作 業 が 可 能 な 音 声 コ ン ト ロ ー ル な ど の 技 術 開 発 に よ り 支 援 す る こ と が 可 能 と 考 え ら れ る 。 他 方 、 熟 練 オ ペ は 、 課 題 2 と 比 べ て 視 点 の 割 合 が ほ と ん ど 変 化 し な い 結 果 と な っ た 。 原 因 を 考 察 す る た め 、熟 練 オ ペ が 課 題 2、課 題 3 で 野 帳・タ ブ レ ッ ト PC を 見 た 割 合 を 図 7 に 示 す 。 被 験 者 は 、 課 題 3 実 施 時 に 野 帳 ・ タ ブ レ ッ ト PC を 見 る 割 合 が 減 っ た が 、 被 験 者 No.2 と No.4 は 野 帳 ・ タ ブ レ ッ ト PC を 見 る 割 合 が 増 え て 50%を 超 え た 。こ の 2 名 の 被 験 者 は タ ブ レ ッ ト PC に 気 を と ら れ て し ま っ た と 考 え ら れ る 。 表 5 課題 1 と課題 2 実施時の視点の比較 エリア 課題1 課題2 差 t 検定 (p 値) 熟練オペ 1. 路面 66.4 % 54.3 % 12.1 % 0.155 2. 散布制御装置 7.1 % 10.1 % -3.0 % 0.245 3. 野帳・タブレットPC 26.5 % 35.6 % -9.1 % 0.241 未熟オペ 1. 路面 52.6 % 36.7 % 15.9 % 0.004 2. 散布制御装置 6.1 % 13.9 % -7.8 % 0.030 3. 野帳・タブレットPC 41.3 % 49.4 % -8.1 % 0.042 注:太字はp 値<0.05を示す 表 6 課題 3 実施時の視点の比較 エリア 熟練オペ 未熟オペ 差 t 検定 (p 値) 1. 路面 51.3 % 48.9 % 2.4 % 0.776 2. 散布制御装置 10.0 % 12.0 % -2.0 % 0.550 3. 野帳・タブレットPC 38.7 % 39.1 % -0.4 % 0.958 注:太字はp 値<0.05を示す 表 7 課題 2 と課題 3 実施時の視点の比較 エリア 課題2 課題3 差 t 検定 (p 値) 熟練オペ 1. 路面 54.3 % 51.3 % 3.0 % 0.746 2. 散布制御装置 10.1 % 10.0 % 0.1 % 0.996 3. 野帳・タブレットPC 35.6 % 38.7 % -3.1 % 0.665 未熟オペ 1. 路面 36.7 % 48.9 % -12.2 % 0.003 2. 散布制御装置 13.9 % 12.0 % 1.9 % 0.184 3. 野帳・タブレットPC 49.4 % 39.1 % 10.3 % 0.001 注:太字はp 値<0.05を示す 表 4 課題 2 実施時の視点の比較 エリア 熟練オペ 未熟オペ 差 t 検定 (p 値) 1. 路面 54.3 % 36.7 % 17.6 % 0.000 2. 散布制御装置 10.1 % 13.9 % -3.8 % 0.074 3. 野帳・タブレットPC 35.6 % 49.4 % -13.8 % 0.008 注:太字はp 値<0.05を示す
課 題 3 で 被 験 者 No.2 と No.4 を 除 い て 集 計 を 行 っ た 結 果 を 表 8 に 示 す 。 熟 練 オ ペ も 未 熟 オ ペ と 同 様 の 傾 向 を 示 し 、野 帳 ・タ ブ レ ッ ト PC を 見 る 割 合 が 減 り 、 路 面 を 見 る 割 合 が 増 え 、 検 定 の 結 果 で も 有 意 な 差 が 認 め ら れ た 。 前 方 の 路 面 状 態 に 関 す る 情 報 提 供 は 、 熟 練 オ ペ ・ 未 熟 オ ペ の 両 方 に と っ て 散 布 作 業 時 の パ フ ォ ー マ ン ス 向 上 に 役 立 つ と 考 え ら れ る 。 し か し 、 試 験 の 結 果 、 こ の よ う な 支 援 技 術 が 熟 練 オ ペ の 散 布 作 業 に 悪 影 響 を 与 え る 可 能 性 が あ る こ と も 確 認 で き た 。 ITS 技 術 を 活 用 し た 支 援 技 術 の 導 入 に あ た っ て は 、 既 存 の 作 業 員 が 新 技 術 に 慣 れ る た め の 期 間 を 設 け た り 、 新 技 術 に 関 す る 研 修 の 実 施 が 必 要 に な る と 考 え ら れ る 。 4.まとめ 本研究では、未熟オペに対する研修の実施や、ITS 技 術を活用した散布支援技術の開発に貢献するため、熟練 オペと未熟オペの路面判別、凍結防止剤散布作業時(情 報提供なし・あり)の視線挙動を調べた。試験の結果を 要約すると以下のとおり。 (1) 課題 1(路面判別)では、熟練オペの方が未熟オペ より路面を多く、野帳・タブレット PC を少ない割 合で見ていたが、両者の視線挙動には有意な差がな い。 (2) 課題 2(路面判別と散布作業)では、課題 1 に比べ、 熟練オペ・未熟オペともに路面を見る割合が減り、 散布制御装置、野帳・タブレット PC を見る割合が 増えた。課題 1 に比べて作業負荷が増えたためと考 えられる。作業負荷の増による視線挙動への影響は、 未熟オペのほうが大きい結果となった。 (3) 課題 3(前方路面状態に関する情報提供ありで課題 2 を行う)では、未熟オペは路面を見る割合が増え、 野帳・タブレット PC を見る割合が減った。情報提 供は、未熟オペの散布作業に良い影響を与えたと考 えられる。熟練オペも同様の傾向を示したが、タブ レット PC に気をとられたと考えられる熟練オペも いた。支援技術の導入にあたっては、既存作業員が 新技術に慣れるための期間を設けたり、研修の実施 が必要になると考えられる。 (4) 前方路面状態に関する情報提供は路面判別支援に は有効だが、散布制御装置の操作の支援には有効で はなかった。情報提供の有無にかかわらずオペレー ターは散布制御装置を一定の割合で見ており、散布 制御装置を見る時間を減らすには、音声コントロー ルなどの技術開発による支援が可能と考えられる。 図 7 熟練オペが課題 2 と課題 3 で野帳・タブレット PC を見ていた割合
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5
課題 3 22.5 課題 2 33.3 課題 3 52.5 課題 2 43.7 課題 3 37.1 課題 2 32.5 課題 3 51.4 課題 2 42.2 課題 3 30.1 課題 2 26.4 50 40 30 20 10 0 60 野帳・ タ ブ レット PC を見て いた割合 (% ) 被験者 課題 表 8 課題 2 と課題 3 実施時の視点の比較 (課題 3 で被験者 No.2 と No.4 を除いて集計) エリア 課題2 課題3 差 t 検定 (p 値) 熟練オペ 1. 路面 54.3 % 63.7 % -9.4 % 0.003 2. 散布制御装置 10.1 % 6.4 % 3.7 % 0.241 3. 野帳・タブレットPC 35.6 % 29.9 % 5.7 % 0.089 未熟オペ 1. 路面 36.7 % 48.9 % -12.2 % 0.003 2. 散布制御装置 13.9 % 12.0 % 1.9 % 0.184 3. 野帳・タブレットPC 49.4 % 39.1 % 10.4 % 0.001 注:太字はp 値<0.05を示す
今後、効果的な散布支援技術の検討に向け、オペレー ターの視点挙動と判断・操作の関連性を明らかにしてい きたい。 参考文献 1) 国土交通省 冬期道路交通の確保のあり方に関す る検討委員会提言、持続的な冬期道路交通確保をめ ざして~連携と協働~、平成 25 年 5 月、 http://www.mlit.go.jp/common/000997537.pdf 2) 丹治和博、金田安弘、福澤義文、加治屋安彦:アイ カメラによる冬期道路での視程の急変について、寒 地技術論文・報告集、Vol.12 - No.1、CTC96-I-054、 pp.331-337、1996
3) Muttart, J.W., Fisher, D.L. and Pollatsek, A. Comparison of Anticipatory Glancing and Risk Mitigation of Novice Drivers and Exemplary Drivers When Approaching Intersections in a Driving Simulator, TRB 93rd Annual Meeting Paper #14-5698, Transportation Research Board, Washington D.C., 2014.
4) Theiss, L., Swindell, S., Gillette II, G.F. and Ullman, G.L. Improved Business Driveway
Delineation in Urban Work Zones, Texas A&M Transportation Institute, Texas Department of Transportation and Federal Highway
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5) Nasiopoulos1, E, Risko, E. F., Foulsham, T. and Kingstone, A. Wearable computing: Will it make people prosocial?, British Journal of Psychology, Volume 106, Issue 2, pp. 209–216, 2015