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インドネシアにおける政策動向と課題 環境汚染対策の現状 1 インドネシアにおける政策動向と課題 1.1 政策動向と課題インドネシアでは 法律により国家開発計画の策定が義務づけられている 現行の長期開発計画は2005 年から2025 年の20 年間であり 中期開発計画は2015 年から2019 年を対

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インドネシアにおける政策動向と課題、環境汚染対策の現状

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インドネシアにおける政策動向と課題

1.1 政策動向と課題 インドネシアでは、法律により国家開発計画の策定が義務づけられている。現行の長期開発計 画は2005年から2025年の20年間であり、中期開発計画は2015年から2019年を対象とした、長期開 発計画の第三フェーズである。地方政府も、長期及び中期開発計画など国家の計画と整合性をと りつつ、環境政策を策定する義務がある。 2004年からのユドヨノ大統領は、任期満了(2期10年間、2004-2014、3選禁止)により2014 年10月に退任し、後任はソロ市長とジャカルタ市長を務めたジョコ・ウィドド氏が国民の直接選 挙を経て2014年10月に大統領に就任した。ジョコ・ウイドド大統領は、ソロ市などで行政改革を 進めたことで有名となり、庶民派大統領といわれている。専門家を内閣に多く登用し、実行型の 政府とみなされており、現行の中期開発計画は新大統領の施政方針をもとに策定されている。 インドネシア政府は、1999年から行政活動の目標を最も効率的かつ効果的に達成すること、お よび汚職の抑止を目的とした行政評価システムSAKIPを導入している。SAKIPは米国の「政府業 績責任法(GPRA)」をモデルとしている。また、国・地方ともSAKIP情報による業績予算への移 行が2004年に行われ、政府の年次財政報告にも業績達成状況が含まれている。 このように、インドネシアの政策動向をみるとき、SAKIPとリンクしている国および地方政府 が策定する開発計画は、基礎情報の一つである。以下に国、省の開発計画を軸に、政策動向につ いてふれる。 1.2 国の政策方針

国家中期開発計画 2019(Sustainable development in the national development plan RPJMN 2015-2019, BAPPENAS, 25 March 2015)の冒頭では、次のような記述がある。 • 2004 年から 2013 年の過去 10 年間、インドネシアの経済成長率は 4.5-6.5%を維持し、貧困 率は 16.6%から 11.3%に改善し、失業率は 9.8%から 5.7%に改善した。 • 今後の課題としては、未だ貧困層の人々が多く、格差(所得格差と地域格差)も発生して いるため、経済成長は今後とも維持する必要がある。但し、成長戦略は同時に天然資源や 環境へ負荷を与えること、および従来は経済成長や人間活動の生態系へ与える影響につい て考えることが少なかったことを留意する必要がある。 このような視点のもとに、中期開発計画 2015-2019 では、政策と戦略を進める規範(standard) を、①人間と社会の質の向上、②成長や効率化の取り組みでは低所得者への配慮、③生態系を守 り環境容量を維持できる範囲での企業活動、としながら、優先政策としては、 • 人間開発(教育、保健、住宅、精神・個性) • 食料とエネルギーの確保、海洋国家としての環境整備

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2 • 所得格差、地域間格差の解消 が挙げられている。この政策方針のもとに、省庁再編も行われ、2省が新設、7省の統合と分 割が行われた(詳細は、インドネシア「法の執行体制」の詳細情報参照)。 1.3 環境林業省実行プログラム 以上の環境保全と森林関係の政策の実施は、環境林業省開発戦略計画 2015-2019 では、①行政 の汚職撲滅と信頼性の確保、②国際競争力の強化、③戦略的な施策の実行、をベースとしつつ、 表1の実行プログラムにより実施する、とされている。 表1の P1~P13 の実行プログラムは S1~S3の戦略方針により分類し、マトリックスとして 整理され、環境林業省の開発戦略計画 2015-2019 として詳細な一覧表(Kementerian Lingkungan Hidup dan Kehutanan RENSTRA 2015-2019, p34 - p56, 2015.)にまとめられている。一覧表には各実 行プログラムを構成する諸施策毎に、達成目標の数量化指標も示されており、行政評価システム SAKIP とリンクしている。 表 1 環境林業省開発戦略計画 2015-2019 の実行プログラムと責任担当局 実行プログラム名 環境林業省責任担当局 天然資源と生態系の保全(P1) 天然資源・生態系保全総局 流域と保護林域の保全(P2) 流域と森林保護総局 持続可能な森林と林業の育成(P3) 持続可能な林業総局 社会林と環境パートナーシップの育成(P4) 林業・環境のパートナーシップ総局 人材育成(P5) カウンセリング局・人材開発部 気候変動対策(P6) 気候変動対策総局 環境法令および森林法令の適正執行(P7) 環境林業法令施行総局 環境・森林に係る研究開発(P8) 研究・開発・イノベーション局 森林・環境の管理システム(P9) 森林計画・環境管理総局 環境の汚染・劣化対策(P10) 環境の汚染・劣化対策総局 廃棄物管理と有害廃棄物管理(P11) 廃棄物・有害廃棄物管理総局 環境・森林プログラムの説明責任強化(P12) 監督局 プログラム支援・管理(P13) 官房局 その目標達成状況は、行政評価報告書(LAKIP)として公表される。表1には各プログラムの責 任部局も明示されている。 以下に大気、水質、廃棄物などの項目別に各実行プログラムを構成する施策、課題にふれる。

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インドネシアにおける環境汚染対策の現状

2.1 大気汚染対策 大気汚染対策は、優先政策の「健康」に配置され、全ての州で大気質の改善を目指す対策を強 化することとされている。実行プログラム(P10)を構成する施策は、 • 2019 年までに大気汚染排出負荷量を 2014 年度レベルから 15%削減する。 • 全国 45 市において、大気汚染モニタリング体制を強化し、大気質は大気環境基準の適合を 目指す。 • 全国 45 市での「グリーン交通」を奨励する。 などが挙げられている。グリーン交通(Green transportation)は公共交通機関、自転車の利用や 徒歩を優先するという意味である。 煙霧対策

煙霧対策は、環境汚染対策実行プログラム(P10)を構成する施策の一つとして挙げられて いる。シンガポール、マレーシアなどへも移流する PM2.5 濃度の高い煙霧の発生抑止対策 はスマトラ、カリマンタン、スラウェシにおいて実施し、内容としては、原因となってい る野焼きによる森林火災や泥炭地火災(hotspot)への対策強化と、高濃度の煙霧により発 生する患者数を減らす取り組み強化が挙げられている。また煙霧による森林火災や泥炭地 火災からの炭酸ガス発生量が大きいため、煙霧対策は気候変動対策プログラム(P6)のな かの施策としても挙げられている。

インドネシアは、国境を超えるヘイズ(煙害)汚染に関する東南アジア諸国連合の越境煙 霧汚染 ASEAN 協定(2002 年に ASEAN 諸国すべてが調印)を唯一批准しなかったが、2014 年9月に最後の批准国として批准している。 鉛による大気・土壌汚染への対策 • 有鉛ガソリンは 2001~2007 に全国的に撤廃され、2007 年以降も大気中の鉛濃度調査が継 続されたが、沿道では環境基準値を超えない低い値となっている。 • 2001 年頃から、産業廃棄物由来と考えられる鉛の高い濃度が、西ジャワ州ボゴール、バン テン州スルポンなどで観測され、調査の結果 2004 年に、自動車の廃バッテリー処理から の鉛飛散が原因であることが判明した(インドネシア環境省、SLHI2013(環境年報 2013)、 Kasus Cinangka p162-p166、2014)。その後、2010 年から土壌汚染調査や近隣住民への健 康調査が実施され、学童の血液中鉛が平均で 36ng/dl(WHO 勧告値 10ng/dl)の高い値を示 していた。土壌汚染調査の結果、特に高濃度の汚染土地に対しては、回復処理なども行わ れている。スラバヤ、メダンなどほかにも同様な調査が行われた。このような B3廃棄物 による大気と土壌汚染などを背景に、実行プログラム(P2)を構成する施策として、15 の州で B3管理の強化を実施するとされている。

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4 2.2 水質汚濁対策 水質汚濁対策では、15 の優先流域を設定し対策として以下があげられている。 ①河況係数を改善する。 ②汚濁負荷は 2019 年までに 2014 年度の 30%を削減する。 ③流域の廃棄物管理を強化し、水環境への廃棄物と排出汚濁負荷量を削減する。 ④水質モニタリング、排水規制を強化し BOD、COD および大腸菌などの水質を改善する。 河況係数(river regime coefficient)は河川における1年間の最大流量と最小流量の比であり、値 が1に近いほど、河川の流量変動が少なく、利水治水が容易とされている。 これらの対策は実行プログラム(P10)を構成している。 15 の取り組み優先河川流域とは、チタルム(西ジャワ州)、チリウン(西ジャワ州、ジャカルタ 市)、セラユ(中部ジャワ州)、ブンガワンソロ(中部ジャワ州、東ジャワ州)、ブランタス(東ジ ャワ州)、チサダネ(西ジャワ州、バンテン州)、カプアス(西カリマンタン州)、シアック(リア ウ州)、ムシ(南スマトラ州、ベンクル州)、アサハン-トバ湖(北スマトラ)、ジェベネラン(南ス ラウェシ州)、サッダン(南スラウェシ州)、モヨ(西ヌサテンガラ州)、ワイ スカンプン(ランプ ン州)、リンボト湖(北スラウェシ州)である。 2.3 廃棄物対策、B3(有害、危険、有毒)廃棄物対策 廃棄物対策は優先政策「健康」に位置づけられ、主に実行プログラム(P11)に各種施策が挙げ られている。政策の実施という表現よりも、法令に従って実施する許可・登録、認可のような規 制に係る義務的事務が多い。次に示す(1)~(6)の廃棄物対策が、実行プログラム(P11)を 構成している。 (1)固形廃棄物(Sampah)の管理 ・廃棄物は 2019 年までに、発生源で 1.25 億トンの削減、全国 380 市では 2014 年度廃棄物量に 比べ、20%を削減する。 ・廃棄物の削減はリサイクルセンターの処理能力強化によっても行う。 など 10 種類の施策がリストアップされている。 (2)B3廃棄物管理 ・廃棄物情報管理システム関係は2種類の施策 ・法令基準への適合管理関係は3種類の施策 (3)B3廃棄物、非 B3廃棄物の確定(Verification)管理 ・ライセンス付与など 11 種類の施策 (4)B3廃棄物、非 B3廃棄物の検証管理

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5 ・B3および非 B3廃棄物の監視など3種類の施策 (5)B3廃棄物による汚染対策と緊急対応 ・B3廃棄物による回復事業など5種類の施策 (6)固形廃棄物(Sampah)、廃棄物および B3廃棄物管理への技術支援および管理 ・各廃棄物部門のガバナンス強化や行政評価(SAKIP)関係の施策(1種類) 2.4 エネルギー確保、自然生態系保全など 優先政策4の「エネルギーの確保」の施策には、森林域におけるバイオマス生産、小規模水力 発電開発、森林保護区域における地熱発電の開発、一般廃棄物や B3廃棄物をエネルギー源とし て再利用すること、優先政策6の施策には天然資源と環境の保全、災害管理が挙げられている。 2.5 その他の取組 そのほか、食料確保(優先政策3)、観光振興(優先施策5)、森林利用組織のガバナンス強化 (優先政策8)、違法伐採撲滅(優先政策9)についてもそれぞれ実行プログラムが設定されてい る。 10 番目の実行プログラム(P10)のなかには、ADIPURA(県/市などの環境表彰事業)、PROPER (情報公開と企業の環境管理評価格付け事業)のような非規制的な環境省プログラムが含まれて いる。 2.6 政策動向の課題 以上のような、行政評価の適用を前提とした、環境保全行政、林業行政に係る政策方針の設定、 総合的体系的な行政活動計画の内容は、全体として優れたものである。 新しい環境林業省では、従来の環境部門と林業部門の職員間で、戦略計画策定にあたっての協 議が行われる過程で、職員の意識改革も進んだ可能性がある。インドネシア政府が行政評価モデ ル SAKIP を導入した目的も、行政活動が効果的に行われるとともに、行政活動の国民への透明性、 行政活動内容の改善、そして職員の意識改革をねらってのことと考えられる。 SAKIP でも当然のことながら、数量化指標による成果の把握が計画されている。環境行政その ものは、基本的にデータ行政といって良い部分がある。インドネシアの現状をみると、例えば工 場排水の流量測定が、法律的に義務づけられているにも関わらず、その測定を確実に行っていな い企業が少なくない。河川流量や雨量も、定期観測が行われていない河川が多い(国としての河 川流量年報、雨量年報が刊行されていない)。 SAKIP で目標設定し、ある河川、湖沼、内湾への流入汚濁負荷量を削減しても、流量データが 無ければ汚濁負荷量の計算は困難であり、少なくとも、この部分は書きっぱなしの計画表となっ

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6 てしまう。

流量は一例であるが、大気汚染対策においても共通する事項であり、環境行政の基本的な分野 で不足しているデータの有無の確認と、不足欠落している場合は充足するための技術協力も重要 と考えられる。

参照

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