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HOKUGA: Xの開発、製造したゲーム機を順次XからY、YからAに販売する旨の契約が締結に至らなかった場合においてYがXに対して契約準備段階に信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任を負うとされた事例

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Academic year: 2021

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全文

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タイトル

Xの開発、製造したゲーム機を順次XからY、YからAに

販売する旨の契約が締結に至らなかった場合において

YがXに対して契約準備段階に信義則上の注意義務違反

を理由とする損害賠償責任を負うとされた事例

著者

大滝, 哲祐

引用

北海学園大学法学研究, 44(2): 357-370

発行日

2008-12-25

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・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・ 資 料 ・・・・・・ ・・・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

︻ 事 実 の 概 要 ︼ ⑴ ゲ ー ム 機 等 を 販 売 す る 米 国 の 会 社 で あ る A は 、 平 成 八 年 頃 か ら 、 米 国 等 の カ ジ ノ で 普 及 し て い る パ イ ゴ ウ ︵ 九 ︶ と 呼 ば れ る ゲ ー ム に 用 す る を 自 動 的 に 整 列 さ せ る 装 置 ︵ 以 下 本 件 装 置 と い う ︶ 及 び そ の 専 用 ︵ 以 下 、 本 件 装 置 と 北研 44 (2・ )

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併 せ て 本 件 商 品 と い う ︶ を 開 発 す る こ と が で き る 業 者 を 探 し て い た と こ ろ 、 平 成 九 年 四 月 二 三 日 、 B を 通 じ て Y ︵ 被 告 ・ 控 訴 人 ・ 被 上 告 人 ︶ に 対 し 、 本 件 商 品 を 開 発 す る 業 者 を 手 配 し 、 A に 対 し て 本 件 商 品 を 供 給 す る こ と を 委 託 し た 。 こ れ を 受 け 、 Y は 、 同 年 五 月 、 X ︵ 原 告 ・ 被 控 訴 人 ・ 上 告 人 ︶ に 対 し 、 本 件 商 品 の 開 発 が 可 能 か ど う か を 打 診 し た 。 X は 、 本 件 商 品 の 開 発 は 可 能 で あ る と 判 断 し 、 本 件 商 品 の 開 発 、 製 造 等 の 発 注 が あ れ ば こ れ を 受 け る こ と と し た 。 そ し て 、 同 年 六 月 、 X は 、 Y 、 A 、 B と の 間 で 、 本 件 商 品 の 開 発 費 を 最 終 的 に A が 負 担 す る こ と を 前 提 に 、 X が 本 件 商 品 の 開 発 、 製 造 を 引 き 受 け る こ と が 合 意 さ れ た 。 ⑵ X は 、 平 成 九 年 八 月 六 日 、 本 件 装 置 の 試 作 一 号 機 を 完 成 さ せ 、 こ れ を Y 、 A の 代 表 者 に 示 し 、 動 作 確 認 を 経 て 、 こ れ ら の 者 の 間 で 開 発 の 続 行 が 合 意 さ れ た 。 X は 、 Y 及 び A か ら 、 そ れ ぞ れ 本 件 商 品 の 開 発 費 等 に 係 る 見 積 書 の 提 出 を 要 請 さ れ た が 、 本 件 商 品 の 直 接 の 取 引 相 手 は Y と す べ き で あ る と え 、 同 月 一 八 日 、 Y に 対 し 、 本 件 商 品 の 開 発 費 等 を 記 載 し た 見 積 書 ︵ 以 下 本 件 見 積 書 と い う ︶ を 提 出 し た 。 そ し て 、 X は 、 Y と の 間 で 本 件 商 品 の 開 発 に 係 る 契 約 書 を わ し た い と い う 要 望 が あ っ た が 、 Y は こ れ に 応 じ な か っ た 。 こ の た め 、 不 安 を 感 じ た X は 、 同 年 九 月 一 一 日 、 開 発 作 業 を 一 時 的 に 中 止 さ せ た と こ ろ 、 Y は 、 同 月 二 四 日 、 X に 対 し 、 九 開 発 費 支 払 い 確 認 書 と 題 す る 書 面 ︵ 以 下 本 件 支 払 確 認 書 と い う ︶ を 付 し た 。 ま た 、 X は 、 本 件 商 品 の 開 発 、 製 造 を 継 続 す る に は 銀 行 か ら 融 資 を 受 け る 必 要 が あ り 、 そ の た め に も Y か ら の 正 式 な 発 注 書 が 必 要 で あ る と し て 、 Y に 対 し て 発 注 書 の 発 行 を 要 求 し た 。 こ れ を 受 け 、 同 年 一 二 月 二 六 日 頃 、 Y は 、 X に 対 し 、 Y が X に 本 件 装 置 二 〇 〇 台 を 発 注 す る こ と を 提 案 し 、 本 件 装 置 を 正 式 に 発 注 す る こ と を 口 頭 で 約 し た 。 さ ら に 、 Y は 、 平 成 一 〇 年 一 月 二 一 日 、 発 注 書 と 題 す る 書 面 ︵ 以 下 本 件 発 注 書 と い う ︶ を 作 成 し 、 こ れ を X に 付 し た 。 そ の 後 、 Y は 、 A か ら の 具 体 的 な 発 注 が な い こ と を 理 由 に 、 X に 対 し て 納 入 ス ケ ジ ュ ー ル 等 を 示 さ な か っ た た め 、 X は 、 こ の Y の 対 応 に 憤 慨 し 、 同 年 六 月 四 日 、 Y に 対 し 、 本 件 商 品 の 契 約 締 結 の 見 込 み が 立 た な い の で あ れ ば 、 本 件 商 品 の 開 発 に こ れ 以 上 時 間 と 費 用 を 費 や す こ と は で き な い 旨 を 伝 え 、 し か る べ き 返 答 を 求 め た と こ ろ 、 Y は 、 同 月 一 六 日 、 X に 対 し 、 全 自 動 九 の 取 引 に つ い て と 題 す る 書 面 ︵ 以 下 本 件 条 件 提 示 書 と い う ︶ を 送 付 し 、 平 成 一 〇 年 七 月 か ら 平 成 一 一 年 四 月 ま で の 一 〇 か 月 間 本 件 装 置 を 毎 月 三 〇 台 発 注 す る こ と 、 そ の 単 価 北研 44 (2・ )

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を 三 〇 万 円 と す る こ と な ど を 内 容 と す る 提 案 を し た 。 ⑶ X は 、 同 年 七 月 ま で に 、 本 件 装 置 の 量 産 機 三 〇 台 及 び 専 用 三 六 〇 〇 組 を 製 造 し て 、 Y の 指 示 し た 場 所 に 搬 入 し 、 Y の 意 向 に 従 い 、 A あ て の 納 品 書 及 び 請 求 書 を 発 行 し た 。 さ ら に 、 X は 、 同 年 八 月 、 量 産 機 三 〇 台 を 製 造 し た 。 ⑷ 本 件 商 品 の 販 売 に 関 し て は 、 X 、 Y 、 A 及 び B の 間 で 、 X が B を 経 由 し て Y に 本 件 商 品 を 販 売 し 、 Y が こ れ を A に 販 売 す る と い う 取 引 の 流 れ が 合 意 さ れ た 。 そ の 上 で 、 上 記 四 社 は 、 同 年 七 月 一 日 、 九 の 条 件 合 意 書 と 題 す る 書 面 を 作 成 し 、 本 件 装 置 の 単 価 を 三 〇 万 円 又 は 三 一 万 円 と す る こ と 、 専 用 の 単 価 を 一 六 〇 〇 円 と す る こ と 、 代 金 は 、 当 該 月 に 納 入 し た に つ い て 当 該 月 内 に 支 払 う こ と と す る こ と な ど を 最 終 的 に 合 意 し た 。 さ ら に 、 X と Y は 、 同 月 中 に 、 上 記 合 意 を 踏 ま え 、 上 記 四 社 間 で の 契 約 ︵ 以 下 四 社 契 約 と い う ︶ を 締 結 す る こ と を 合 意 し た 。 そ の 後 、 四 社 は 、 四 社 契 約 の 具 体 的 な 条 項 を 検 討 し て 、 同 年 八 月 一 七 日 ま で に 、 そ の 案 文 が 完 成 し た 。 ⑸ 平 成 一 〇 年 八 月 一 七 日 、 四 社 契 約 締 結 の た め 、 X 、 Y 、 A が B の 事 務 所 に 集 ま っ た が 、 A が 、 突 然 、 既 に 製 造 済 み の 六 〇 台 を 含 め て 本 件 装 置 の テ ー ブ ル へ の 取 付 位 置 を 約 五 ㎝ 低 く す る こ と 、 の 投 入 口 を 広 く す る こ と な ど の 仕 様 変 を 要 求 し た こ と か ら 、 同 日 は 四 社 契 約 の 締 結 に 至 ら な か っ た 。 X は 、 A の 要 求 に 応 じ る た め に は 、 本 件 装 置 の 内 部 の 構 造 変 が 必 要 で あ り 、 基 本 設 計 か ら 修 正 す る 必 要 が あ る と 判 断 し 、 同 月 一 八 日 の 再 渉 に お い て 、 こ の 要 求 を 拒 絶 し た が 、 A は 、 仕 様 変 が さ れ な け れ ば 商 品 と し て 通 用 し な い と 主 張 し 、 Y も 、 こ の 要 求 に っ て 検 討 す る こ と も や む を 得 な い と の 態 度 を 示 し た 。 X は 、 A の 態 度 に 憤 慨 し 、 強 い 調 子 で A を 非 難 し て 席 を 立 ち 、 A も こ れ に 憤 慨 し て 、 Y ら の 取 り 成 し に も か か わ ら ず 、 滞 在 先 に 帰 っ て し ま っ た た め 、 上 記 渉 ︵ 以 下 本 件 四 社 渉 と い う ︶ は 決 裂 し た 。 同 月 一 九 日 以 降 、 X は 、 A の 要 求 に 応 じ る 方 向 で 検 討 を 行 う と と も に 、 Y 、 B と の 間 で 、 四 社 契 約 の 締 結 に 向 け た 渉 を 続 け た 。 し か し 、 最 終 的 に 、 X Y 間 の 四 社 契 約 を 前 提 と す る 渉 は 決 裂 し た 。 ⑹ そ こ で 、 X は 、 Y に 対 し て 、 主 位 的 請 求 と し て 、 Y と の 間 で 本 件 発 注 書 に 記 載 さ れ た 本 件 商 品 の 継 続 的 な 製 造 ・ 販 売 に 係 る 基 本 契 約 ︵ 以 下 、 本 件 基 本 契 約 と い う ︶ が 成 立 し て い た こ と を 前 提 と し て 、 同 契 約 の 不 履 行 に よ り 生 じ た 本 件 商 品 の 開 発 費 ・ 製 造 費 や 得 べ か り し 利 益 な ど 合 計 一 億 五 九 三 七 万 円 余 の 賠 償 を 求 め 、 予 備 的 請 求 と し て 、 同 契 約 が 成 立 し な か っ た と し て も 、 Y に は 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 北研 44 (2・ )

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務 違 反 が あ っ た と し て 、 同 額 の 賠 償 を 求 め た 。 ⑺ 第 一 審 ︵ 東 京 地 裁 平 成 一 四 年 一 〇 月 二 八 日 判 決 ︵ 金 融 ・ 商 事 判 例 一 二 七 四 号 三 一 頁 ︶ ︶ は 、 主 位 的 請 求 を 棄 却 し た が 、 X Y 間 の 本 件 取 引 の 渉 に お い て 、 Y は 、 終 始 一 貫 し て 、 X が Y に 本 件 商 品 を 製 造 販 売 し 、 Y が こ れ を C ︵ 筆 者 注: A の 代 表 者 ︶ に 販 売 す る と の 形 態 を 前 提 と し て 、 X の 実 質 的 な 取 引 及 び 渉 の 相 手 方 と し て 振 る 舞 っ て い た も の と い え 、 ⋮ 基 本 契 約 の 締 結 渉 が 最 終 的 に 決 裂 し た 経 緯 を 併 せ 慮 す る と 、 Y は 、 一 連 の 行 為 に よ っ て 、 X に 対 し 、 基 本 契 約 の 締 結 が 確 実 で あ る と の 信 頼 を 与 え て お き な が ら こ れ を 裏 切 っ た も の と 評 価 す る の が 相 当 で あ り 、 Y の か か る 行 為 は 契 約 締 結 上 の 信 義 則 に 著 し く 違 反 す る と い う べ き で あ る 。 と し て 、 ま た 、 本 件 取 引 に 関 す る X Y 間 の 渉 経 過 を 併 せ れ ば 、 Y は 、 信 義 則 上 、 遅 く と も 量 産 機 の 完 成 ま で に は 、 そ れ 以 上 の 改 良 要 求 事 項 が な い こ と を 確 認 す る 義 務 を 負 っ て い た も の と い う べ き で あ る か ら 、 突 然 の 仕 様 変 を 要 求 し た C の 行 為 は 、 X Y 間 に お い て は 、 信 義 則 上 、 Y の 行 為 と 同 視 す べ き で あ る 。 と し て 、 予 備 的 請 求 を 認 め 、 本 件 商 品 の 開 発 費 ・ 製 造 費 に 加 え 、 信 義 則 に 基 づ く 損 害 賠 償 と い う 局 面 に お い て は 、 基 本 契 約 が 締 結 さ れ た 場 合 に 準 じ 、 基 本 契 約 か ら 生 じ る で あ ろ う 拘 束 力 の 範 囲 内 で の 損 害 賠 償 を 認 め る の が 条 理 に 適 う と い う べ き で あ る 。 と し て 、 本 件 商 品 の 販 売 に よ り 得 ら れ た で あ ろ う 利 益 等 の 賠 償 を 認 め 、 Y に 一 億 三 二 一 九 万 円 余 の 支 払 い を 命 じ た 。 ⑻ こ れ に 対 し て 、 原 審 ︵ 東 京 高 裁 平 成 一 七 年 一 月 二 六 日 判 決 ︵ 金 融 ・ 商 事 判 例 一 二 七 四 号 二 七 頁 ︶ ︶ は 、 四 社 契 約 が 成 立 す る ま で に 至 ら な か っ た の は 、 A が 、 本 件 装 置 に つ い て 、 新 た な 改 良 要 求 を 持 ち 出 し た た め で あ り 、 Y に 関 し て は 、 A が 本 件 商 品 を 買 受 け る こ と を 承 諾 し な け れ ば 、 Y 単 独 で X と の 間 に 本 件 商 品 の 売 買 契 約 を 成 立 さ せ る 訳 に は い か な い 立 場 に あ る の だ か ら 、 Y が 、 単 独 で X と の 基 本 契 約 を 締 結 す る ま で に 至 ら な か っ た と し て も 、 契 約 渉 の 当 事 者 と し て 信 義 則 に 反 す る と ま で は 認 め る こ と が で き な い と し て 、 ま た 、 四 社 契 約 に お い て は 、 A も 、 Y と は 別 に 契 約 当 事 者 と し て の 地 位 を 有 し 、 契 約 締 結 渉 に 臨 ん で い た 以 上 、 A の 行 為 を Y の 行 為 と 同 一 視 す る こ と も 妥 当 と は い え ず 、 Y が 当 然 に A と 同 一 の 責 任 を 負 う べ き で あ る と す る こ と は で き な い と し て 、 Y の 控 訴 を 認 め 、 X の 主 位 的 請 求 と と も に 、 予 備 的 請 求 も 棄 却 し た 。 X 上 告 。 北研 44 (2・ )

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︻ 判 旨 ︼ 一 部 破 棄 差 戻 し X は 、 Y と の 間 で 本 件 商 品 の 開 発 、 製 造 に 係 る 契 約 が 締 結 さ れ ず に 開 発 等 を 継 続 す る こ と に 難 色 を 示 し て い た と こ ろ 、 Y は 、 X に 本 件 商 品 の 開 発 等 を 継 続 さ せ る た め 、 A か ら 本 件 商 品 の 具 体 的 な 発 注 を 受 け て い な い に も か か わ ら ず 、 Y が X と の 間 の 契 約 の 当 事 者 に な る こ と を 前 提 と し て 、 平 成 九 年 一 二 月 二 六 日 こ ろ 、 X に 対 し 、 本 件 装 置 二 〇 〇 台 を 発 注 す る こ と を 提 案 し 、 こ れ を 正 式 に 発 注 す る 旨 を 口 頭 で 約 し 、 平 成 一 〇 年 一 月 二 一 日 に 、 本 件 装 置 一 〇 〇 台 を 発 注 す る 旨 等 を 記 載 し た 本 件 発 注 書 を 付 し 、 同 年 六 月 一 六 日 に 、 本 件 装 置 を 一 〇 か 月 間 、 毎 月 三 〇 台 を 発 注 す る 旨 等 の 提 案 を し た 本 件 条 件 提 示 書 を 送 付 す る な ど し 、 こ の た め 、 X は 、 本 件 装 置 一 〇 〇 台 及 び 専 用 の 製 造 に 要 す る 部 品 を 発 注 し 、 専 用 を 製 造 す る た め に 必 要 な 金 型 二 台 を 完 成 さ せ る な ど 、 相 応 の 費 用 を 投 じ て 本 件 商 品 の 開 発 、 改 良 等 の 作 業 を 進 め 、 七 月 商 品 を 製 造 し 、 こ れ を Y に 対 し て 納 入 し た と い う の で あ る 。 こ れ ら の 事 実 関 係 に 照 ら す と 、 Y の 上 記 各 行 為 に よ っ て 、 X が 、 Y と の 間 で 、 本 件 基 本 契 約 又 は こ れ と 同 様 の 本 件 商 品 の 継 続 的 な 製 造 、 販 売 に 係 る 契 約 が 締 結 さ れ る こ と に つ い て 強 い 期 待 を 抱 い た こ と に は 相 当 の 理 由 が あ る と い う べ き で あ り 、 X は 、 Y の 上 記 各 行 為 を 信 頼 し て 、 相 応 の 費 用 を 投 じ て 上 記 の よ う な 開 発 、 製 造 を し た と い う べ き で あ る 。 そ う す る と 、 Y は 、 一 面 で 原 審 が 指 摘 す る よ う な 立 場 に あ っ た と し て も 、 A か ら 本 件 商 品 の 具 体 的 な 発 注 を 受 け て い な い 以 上 、 最 終 的 に Y と A と の 間 の 契 約 が 締 結 に 至 ら な い 可 能 性 が 相 当 程 度 あ る に も か か わ ら ず 、 上 記 各 行 為 に よ り 、 X に 対 し 、 本 件 基 本 契 約 又 は 四 社 契 約 が 締 結 さ れ る こ と に つ い て 過 大 な 期 待 を 抱 か せ 、 本 件 商 品 の 開 発 、 製 造 を さ せ た こ と は 否 定 で き な い 。 上 記 事 実 関 係 の 下 に お い て は 、 X も 、 Y も 、 最 終 的 に 契 約 の 締 結 に 至 ら な い 可 能 性 が あ る こ と は 、 当 然 に 予 測 し て お く べ き こ と で あ っ た と い う こ と は で き る が 、 Y の 上 記 各 行 為 の 内 容 に よ れ ば 、 こ れ に よ っ て X が 本 件 商 品 の 開 発 、 製 造 に ま で 至 っ た の は 無 理 か ら ぬ こ と で あ っ た と い う べ き で あ り 、 Y と し て は 、 そ れ に よ っ て X が 本 件 商 品 の 開 発 、 製 造 に ま で 至 る こ と を 十 認 識 し な が ら 上 記 各 行 為 に 及 ん だ と い う べ き で あ る 。 し た が っ て 、 Y に は 、 X に 対 す る 関 係 で 、 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 が あ り 、 Y は 、 こ れ に よ り X に 生 じ た 損 害 を 賠 償 す べ き 責 任 を 負 う と い う べ 北研 44 (2・ )

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き で あ る 。 本 件 四 社 渉 は 、 C ︵ 筆 者 注: A の 代 表 者 ︶ が 新 た な 改 良 を 要 求 し た こ と に 端 を 発 し て 決 裂 し 、 そ の 後 の X と Y と の や り と り の 中 で 四 社 契 約 の 締 結 に 向 け た 渉 が 最 終 的 に 決 裂 し た も の で あ る が 、 上 記 渉 決 裂 の 主 た る 原 因 は 、 Y に 本 件 商 品 の 開 発 業 者 の 手 配 を 委 託 し 、 終 始 Y に 本 件 商 品 の 開 発 に 関 す る 指 示 を し て い た A の 代 表 者 で あ る C が 時 機 に 後 れ た 改 良 要 求 を し た こ と に あ る と い う べ き で あ り 、 X に も 上 記 渉 決 裂 の 責 任 の 一 端 が あ る と し て も 、 上 記 渉 決 裂 の 経 緯 は 、 Y の 上 記 責 任 を 免 れ さ せ る こ と に は な ら な い 。 と 判 示 し て 、 原 審 の 判 決 の う ち X の 予 備 的 請 求 に 関 す る 部 を 破 棄 し 、 上 記 注 意 義 務 違 反 に よ っ て X に 生 じ た 損 害 及 び そ の 額 等 に つ い て に 審 理 を 尽 く さ せ る た め 、 本 件 を 原 審 に 差 し 戻 し た 。 ︻ 参 照 条 文 ︼ 民 法 一 条 二 項 ・ 四 一 五 条 ・ 七 〇 九 条 ︻ 研 究 ︼ 1. 本 判 決 の 意 義 本 判 決 は 、 Y が 四 社 契 約 の 当 事 者 で あ っ た も の の 、 X の 直 接 の 契 約 の 相 手 方 で な か っ た 点 と 、 四 社 契 約 の 渉 決 裂 の 主 な 原 因 が A に あ る 点 に 特 徴 が あ る 。 そ し て 、 本 判 決 は 、 Y が X に 本 件 商 品 の 開 発 等 を 継 続 さ せ る た め 、 A か ら 本 件 商 品 の 具 体 的 な 発 注 を 受 け て い な い に も か か わ ら ず 、 X に 本 件 発 注 書 や 本 件 条 件 提 示 書 を 付 し た た め 、 X が 相 応 の 費 用 を 投 じ て 本 件 商 品 の 開 発 等 を 進 め た こ と を 指 摘 し て 、 A か ら 本 件 商 品 の 具 体 的 な 発 注 を 受 け て い な い 以 上 、 最 終 的 に Y と A と の 間 の 契 約 が 締 結 に 至 ら な い 可 能 性 が 相 当 程 度 あ る に も か か わ ら ず 、 X に 対 し 、 本 件 基 本 契 約 又 は 四 社 契 約 が 締 結 さ れ る こ と に つ い て 過 大 な 期 待 を 抱 か せ た と 判 示 し た 。 こ れ に つ い て は 、 X も 、 Y も 、 最 終 的 に 契 約 の 締 結 に 至 ら な い 可 能 性 が あ る こ と は 、 当 然 に 予 測 し て お く べ き で あ っ た が 、 X が 本 件 商 品 の 開 発 、 製 造 に ま で 至 っ た の は 無 理 か ら ぬ こ と で あ っ た と し て 、 Y は 、 X に 対 し て 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 が あ り 、 X に 生 じ た 損 害 を 賠 償 す べ き 義 務 が あ る と 判 示 し た 。 こ の 損 害 賠 償 義 務 は 、 渉 決 裂 の 原 因 が 主 に A に あ り 、 同 じ く X に も 渉 決 裂 の 責 任 の 一 端 が あ っ て も 、 Y を 免 れ さ せ る こ と は で き な い と 判 示 し た 。 本 判 決 は 、 事 例 判 決 で あ る が 、 契 約 渉 の 不 当 破 棄 に 関 す る 最 高 裁 判 決 で あ り 、 契 約 の 直 接 の 相 手 方 で な い 者 ︵ 前 述 の 北研 44 (2・ )

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通 り 、 四 社 契 約 の 当 事 者 で は あ っ た ︶ で あ っ て も 、 そ の 者 に 契 約 が 成 立 さ せ る も の で あ る と 期 待 を 抱 か せ た 場 合 、 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 が あ る と し て 、 損 害 賠 償 責 任 を 肯 定 し た 点 に 意 義 が あ る 。 こ れ は 、 実 務 ・ 学 説 に お い て も 重 要 な 意 義 を 有 す る も の と 思 わ れ る 。 2. 判 例 ・ 学 説 ⑴ 判 例 本 判 決 の よ う に 契 約 渉 の 不 当 破 棄 が 問 題 と な っ た 判 例 は 、 下 級 審 段 階 の も の が か な り 1 ︶ 多 い 。 最 高 裁 段 階 の も の で は 、 ① 最 高 裁 昭 和 五 六 年 一 月 二 七 日 判 決 ︵ 民 集 三 五 巻 一 号 三 五 頁 ︶ 、 ② 最 高 裁 昭 和 五 八 年 四 月 一 九 日 判 決 ︵ 判 例 時 報 一 〇 八 二 号 四 七 頁 ︶ 、 ③ 最 高 裁 昭 和 五 九 年 九 月 一 八 日 判 決 ︵ 判 例 時 報 一 一 三 七 号 五 一 頁 ︶ 、 ④ 最 高 裁 平 成 二 年 七 月 五 日 判 決 ︵ 裁 判 集 民 事 一 六 〇 号 一 八 七 頁 ︶ 、 ⑤ 最 高 裁 平 成 一 八 年 九 月 四 日 判 決 ︵ 判 例 時 報 一 九 四 九 号 三 〇 頁 ︶ の 五 件 あ る 。 こ の う ち 、 本 判 決 と ⑤ 判 決 ︵ 下 請 業 者 が 施 工 業 者 と の 間 で 下 請 契 約 を 締 結 す る 前 に 下 請 の 準 備 作 業 を 開 始 し た 場 合 に お い て 、 施 主 が 下 請 業 者 の 支 出 費 用 の 補 て ん 等 の 措 置 を 講 ず る こ と な く 施 工 計 画 を 中 止 す る こ と が 、 下 請 業 者 の 信 頼 を 不 当 に 損 な う も の と し て 不 法 行 為 に 当 た る と さ れ た 事 例 ︶ は 、 契 約 の 直 接 の 当 事 者 で は な い 者 が 損 害 賠 償 を 求 め て 、 こ れ が 肯 定 さ れ た 判 決 で あ る 点 が 共 通 す る ︵ 両 判 決 は 共 に 損 害 賠 償 の 範 囲 等 を 審 理 す る た め に 原 審 に 差 し 戻 し た ︶ 。 そ の 一 方 で 、 契 約 渉 の 不 当 破 棄 に よ る 損 害 賠 償 責 任 の 法 的 性 質 に つ い て 、 ⑤ 判 決 が 不 法 行 為 責 任 と し た こ と に 対 し て 、 本 判 決 は 、 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 よ り 生 じ た 損 害 を 賠 償 す べ き 責 任 を 負 う と 述 べ る に 止 ま り 、 具 体 的 な 法 的 性 質 に つ い て 明 言 し て い な い 点 が 異 な る ︵ 法 的 性 質 に つ い て は 、 次 の ⑵ 学 説 で 後 述 す る ︶ 。 ⑵ 学 説 ま ず 、 本 件 で 問 題 と な っ た 契 約 渉 の 不 当 破 棄 は 、 契 約 締 結 上 の 過 失 の 問 題 の 一 類 型 と さ 2 ︶ れ る 。 そ の 他 の 類 型 に は 、 ① 契 約 の 不 成 立 ・ 無 効 の 場 合 、 ② 契 約 は 有 効 に 成 立 し た が 、 そ の 渉 の 段 階 で 不 正 確 な 説 明 が な さ れ た た め 、 相 手 方 が 抱 い た 給 付 に 対 す る 期 待 が 裏 切 ら れ た 場 合 ︵ 説 明 義 務 違 反 ︶ 、 ③ 渉 段 階 で の 一 方 当 事 者 の 過 失 に よ っ て 、 相 手 方 の 身 体 ・ 財 産 を 侵 害 し た 場 合 、 の 3 つ が あ る 。 契 約 締 結 上 の 過 失 の 法 的 性 質 に つ い て 、 債 務 不 履 行 責 任 、 不 法 行 為 責 任 、 信 義 則 に 基 づ く 法 定 責 任 と す る か で 争 い が あ る が 、 従 来 の 通 説 は 、 主 に 契 約 の 不 成 立 ・ 無 効 の 場 合 を 念 頭 に 置 い て 、 ① 信 義 則 を 理 由 と 北研 44 (2・ )

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す る 契 約 法 上 の 責 任 ︵ 一 種 の 債 務 不 履 行 ︶ で あ る と 3 ︶ す る 。 そ し て 、 契 約 締 結 上 の 過 失 に よ る 責 任 を 認 め る た め に は 、 ① 締 結 さ れ た 契 約 の 内 容 の 全 部 又 は 一 部 が 客 観 的 に 不 能 ︵ 原 始 的 不 能 ︶ で あ る た め に 、 そ の 契 約 の 全 部 又 は 一 部 が 無 効 で あ る こ と 、 ② 給 付 を な す べ き 者 が 、 そ の 不 能 な こ と を 知 り 又 は 知 る こ と が で き た こ と 、 ③ 相 手 方 が 善 意 ・ 無 過 失 で あ る こ と 、 の 三 つ の 要 件 を 満 た す 必 要 が 4 ︶ あ る 。 効 果 は 損 害 賠 償 で あ る が 、 そ の 範 囲 は 、 相 手 方 が そ の 契 約 を 有 効 で あ る と 信 じ た こ と に よ る 損 害 ︵ 信 頼 利 益 ︶ に 限 ら れ ︵ 目 的 物 を 検 に 行 っ た 費 用 や 代 金 の 支 払 い の た め に 融 資 を 受 け た 利 息 な ど ︶ 、 契 約 が 履 行 さ れ た な ら ば 受 け た で あ ろ う 利 益 ︵ 履 行 利 益 ︶ は 含 ま れ な い と す る ︵ 目 的 物 の 利 用 や 転 売 に よ る 利 益 5 ︶ な ど ︶ 。 次 に 、 契 約 渉 の 不 当 破 棄 が あ っ た 場 合 、 相 手 方 に 対 し て 賠 償 責 任 を 負 う 場 合 が あ る こ と は 学 説 上 異 論 が な い 。 判 例 も 賠 償 責 任 を 認 め て い る が 、 契 約 自 由 の 原 則 と の 関 係 で 問 題 と な る 。 な ぜ な ら ば 、 契 約 自 由 の 原 則 は 、 契 約 を 締 結 し な い 自 由 も 認 め ら れ る の で 、 渉 を 破 棄 し て も 何 ら 問 題 が 生 じ な い は ず だ か ら で あ る 。 そ れ に も か か わ ら ず 、 何 故 契 約 渉 の 不 当 破 棄 の 場 合 に 損 害 賠 償 義 務 が 認 め ら れ る の か 。 学 説 で は 主 に 次 の よ う な 五 つ の え が 示 さ れ て い る 。 第 一 に 、 単 に 契 約 渉 を 拒 絶 し た だ け で は 、 契 約 渉 の 際 に 生 じ る 注 意 義 務 違 反 を 基 礎 付 け る こ と は で き な い が 、 契 約 渉 の 際 に 事 実 上 渉 し た 内 容 を も っ て 契 約 が 成 立 す る と の 期 待 を 相 手 方 に 抱 か せ た と き は 、 こ の 者 に 何 ら か の 責 任 を 負 う べ き と 6 ︶ す る 。 そ し て 、 何 ら か の 責 任 を 負 う べ き 例 外 的 な 場 合 と は 、 ① 契 約 の 締 結 が 確 実 で あ る と 言 明 し て 相 手 方 を 信 頼 さ せ て お き な が ら 、 正 当 な 理 由 も な く 突 然 契 約 渉 を 打 ち 切 っ た 場 合 、 ② 契 約 渉 に 際 し て 、 相 手 方 の 誤 信 を 誘 発 し な が ら 、 そ れ を 矯 正 す べ き 何 ら の 措 置 も 講 じ な か っ た 場 合 、 で あ る と 7 ︶ い う 。 第 二 に 、 契 約 渉 の 開 始 か ら 契 約 締 結 ・ 契 約 成 立 ま で の 段 階 を 大 き く 三 段 階 に け て 、 第 一 段 階 は 、 当 事 者 の 接 触 は あ る が 、 具 体 的 な 商 談 は 始 ま っ て い な い 段 階 で あ り 、 第 二 段 階 は 、 契 約 締 結 準 備 段 階 で あ り 、 第 三 段 階 は 、 代 金 等 を 含 む 契 約 内 容 に つ い て ほ ぼ 合 意 に 達 し 、 正 式 契 約 の 締 結 日 が 定 め ら れ る に 至 っ た 段 階 で あ る と 8 ︶ す る 。 そ し て 、 第 一 段 階 で は 、 一 般 不 法 行 為 上 の 注 意 義 務 を 除 き 、 特 段 の 義 務 は 生 じ な い 。 第 二 段 階 で は 、 契 約 渉 当 事 者 に 信 義 則 上 課 さ れ る 義 務 が 開 示 義 務 を 中 心 と し た も の に な り 、 損 害 賠 償 の 範 囲 は 信 頼 利 益 に 限 ら れ る 。 第 三 段 階 で は 、 第 二 段 階 の 開 示 義 務 に 、 契 約 成 立 北研 44 (2・ )

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に 努 め る べ き 義 務 が 加 わ り 、 損 害 賠 償 の 範 囲 は 履 行 利 益 ま で 認 め ら れ る と 9 ︶ い う 。 第 三 に 、 わ が 国 の 判 例 は 、 契 約 の 不 当 破 棄 の 問 題 を 不 法 行 為 上 の 責 任 と 信 義 則 上 の 責 任 と い う 二 元 的 な 解 決 が 図 ら れ て い る と 析 し て 、 こ の え を 基 本 的 に 肯 定 し つ つ 、 ① 契 約 当 事 者 の 一 方 が 意 図 的 に あ る い は 積 極 的 に 契 約 の 成 立 を 阻 止 し た 場 合 に 、 不 法 行 為 の 要 件 で あ る 違 法 性 の 要 件 を 満 た し 、 そ の 責 任 が 発 生 し て 、 賠 償 の 範 囲 は 、 履 行 利 益 、 信 頼 利 益 と 概 念 を 持 ち 出 す 必 要 な く 、 契 約 の 不 当 破 棄 と 相 当 因 果 関 係 に あ る 損 害 と な る 、 ② 契 約 の 渉 が ま さ か 契 約 が 締 結 さ れ な い と は 予 想 す る こ と が で き な い 程 度 に 進 展 し て 、 相 手 方 が 契 約 の 成 立 を 信 頼 し て い た の に も か か わ ら ず 、 当 事 者 の 一 方 が 一 方 的 に 契 約 の 渉 を 破 棄 し た 場 合 、 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 に 基 づ く 責 任 が 発 生 し て ︵ 責 任 を 負 う 者 の 帰 責 事 由 は 、 相 手 方 の 契 約 が 締 結 さ れ る と い う 信 頼 を 正 当 な 理 由 な く 裏 切 っ た こ と で あ る ︶ 、 損 害 の 範 囲 は 、 契 約 渉 が 破 棄 さ れ た こ と に よ っ て 無 駄 に な っ た 出 費 で あ る と 10 ︶ い う 。 第 四 に 、 契 約 渉 の 不 当 破 棄 を 誤 信 惹 起 型 ︵ 説 明 義 務 違 反 型 ︶ と 信 頼 裏 切 り 型 ︵ 誠 実 渉 義 務 違 反 型 ︶ に 類 し て 、 こ の う ち 誤 信 惹 起 型 は 、 ① 締 約 の 可 能 性 が あ る と 誤 信 さ せ た 場 合 、 ② 締 約 が 確 実 で な い の に 確 実 で あ る と 誤 信 し た 場 合 と い う 二 つ の 類 型 に け て 、 ② の 類 型 で は 、 誤 信 を 惹 起 ・ 維 持 す る 行 為 の ほ か 、 相 手 方 が 締 約 は 確 実 で あ る と の 誤 信 に 陥 っ て も や む を 得 な い こ と ︵ 信 頼 の 正 当 性 。 具 体 的 に は 、 渉 が 成 熟 し て 、 契 約 内 容 が 特 定 さ れ て い る こ と ︶ が 要 件 と さ れ ︵ ① 型 で は 、 渉 の 成 熟 は 要 件 と さ れ な い ︶ 、 効 果 も 締 約 は 確 実 で あ る と 誤 信 し た こ と に よ っ て 被 っ た 損 害 に 限 ら れ る と 11 ︶ す る 。 誤 信 惹 起 型 で は 、 不 法 行 為 責 任 が 認 め ら れ 、 信 頼 裏 切 り 型 で は 、 不 法 行 為 に よ る 処 理 が 可 能 で あ る と 指 摘 す る に 止 め る と 12 ︶ い う 。 第 五 に 、 判 例 の 価 値 判 断 は 第 二 の 説 の よ う に 段 階 を 通 じ て 行 っ て い る わ け で は な い と し て 、 そ れ は 、 帰 責 事 由 の 有 無 に か か わ ら ず 、 契 約 成 立 へ の 信 頼 を 惹 起 し た 当 事 者 が 正 当 な 理 由 な く 締 約 拒 絶 、 あ る い は 不 可 能 に し た ら 、 相 手 方 が 契 約 の 成 立 を 信 頼 し て 被 っ た 損 害 を 賠 償 し な け れ ば な ら な い と 13 ︶ い う 。 3. 検 討 ⑴ 本 判 決 に お け る 賠 償 責 任 の 判 断 基 準 本 判 決 で は 、 Y に 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 北研 44 (2・ )

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務 違 反 に よ る 賠 償 責 任 を 負 わ せ た 。 本 件 に お い て 、 こ の 賠 償 責 任 の 判 断 基 準 に つ い て ど の よ う な 判 断 を し た の か 。 第 一 審 で は 、 基 本 契 約 の 締 結 渉 が 最 終 的 に 決 裂 し た 経 緯 を 併 せ 慮 す る と 、 Y は 、 一 連 の 行 為 に よ っ て 、 X に 対 し 、 基 本 契 約 の 締 結 が 確 実 で あ る と の 信 頼 を 与 え て お き な が ら こ れ を 裏 切 っ た も の と 評 価 す る の が 相 当 で あ り 、 Y の か か る 行 為 は 契 約 締 結 上 の 信 義 則 に 著 し く 違 反 す る と し て 、 Y が X の 信 頼 を 裏 切 っ た こ と を 根 拠 に し て 、 賠 償 責 任 を 認 め て い る 。 こ れ に 対 し て 、 原 審 で は 、 Y が 、 単 独 で X と の 基 本 契 約 を 締 結 す る ま で に 至 ら な か っ た と し て も 、 契 約 渉 の 当 事 者 と し て 信 義 則 に 反 す る と ま で は 認 め る こ と が で き な い と し て 、 Y の 賠 償 責 任 を 否 定 し た 。 そ し て 、 本 判 決 は 、 Y が X に 対 し 、 本 件 基 本 契 約 又 は 四 社 契 約 が 締 結 さ れ る こ と に つ い て 過 大 な 期 待 を 抱 か せ た 結 果 、 X が 本 件 商 品 の 開 発 、 製 造 に ま で 至 っ た の は 無 理 か ら ぬ こ と で あ っ た と い う べ き と し て 、 Y に 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 に よ る 賠 償 責 任 を 負 わ せ た 。 こ の よ う に 、 本 件 に お い て は 、 Y の 賠 償 責 任 を 肯 定 ・ 否 定 す る に せ よ 、 信 義 則 を 根 拠 と し て 判 断 し て い る 。 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 に 基 づ く 賠 償 責 任 を 肯 定 し た 場 合 、 次 に 、 賠 償 責 任 が 発 生 す る 第 一 審 の 信 頼 を 与 え て お き な が ら こ れ を 裏 切 っ た 時 点 、 本 判 決 の 過 大 な 期 待 を 抱 か せ た 時 点 、 つ ま り 、 契 約 渉 が 進 展 し た に も か か わ ら ず 、 こ れ を 破 棄 し た 渉 の 相 手 方 に 損 害 賠 償 責 任 が 発 生 す る 時 点 は い つ か が 問 題 と な る 。 こ の 問 題 に つ い て 、 2 | ⑵ 学 説 の 第 二 の 説 に 基 づ い て 、 契 約 渉 が 未 だ 第 二 段 階 の 契 約 締 結 準 備 段 階 に 止 ま っ た と 解 し て 、 損 害 賠 償 の 範 囲 も 信 頼 利 益 に 止 ま る 可 能 性 が あ る と 示 唆 す る 見 解 が あ る ︵ 賠 償 の 範 囲 に つ い て は ⑶ で 論 14 ︶ じ る ︶ 。 ま た 、 第 二 の 説 に 基 づ く な ら ば 、 契 約 渉 が 第 二 段 階 に 進 展 し た 時 点 で 義 務 違 反 が あ り 、 損 害 が 発 生 し て い る な ら 、 そ の 後 、 契 約 渉 が 第 三 段 階 に 進 展 し た か 否 か を 問 わ ず 、 賠 償 が 認 め ら れ る べ き で あ る と し て 、 こ れ が 本 判 決 の 立 場 で あ り 、 2 | ⑵ 学 説 の 第 一 の 説 の 帰 結 で あ る と す る 見 解 が 15 ︶ あ る 。 本 判 決 は 、 契 約 渉 を 破 棄 し た 主 な 原 因 が A に あ る と し て い る こ と か ら 、 ま ず 、 契 約 渉 を 破 棄 し た 相 手 方 に 正 当 理 由 が な い 場 合 に 賠 償 責 任 を 認 め る 2 | ⑵ 学 説 の 第 五 の 説 と は 相 容 れ な い と い え る 。 本 判 決 を 2 | ⑵ 学 説 の 第 一 の 説 、 第 二 の 説 及 び 第 三 の 説 に 基 づ い て え る な ら ば 、 契 約 渉 は 、 正 式 契 約 を 待 つ ば か り の 段 階 で 破 棄 さ れ た と い え る ︵ 第 二 の 説 で 北研 44 (2・ )

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は 第 三 段 階 ︶ 。 そ の よ う な 段 階 で X の 基 本 契 約 な い し 四 社 契 約 成 立 に 対 す る 信 頼 を 損 な っ た こ と ︵ あ る い は X の 誤 信 を そ の ま ま に し て お い た こ と ︶ が 、 信 義 則 違 反 に 基 づ く 賠 償 責 任 を 肯 定 し た 時 点 で あ る と い 16 ︶ え る 。 ⑵ Y の 損 害 賠 償 に お け る 責 任 主 体 性 本 件 で は 、 Y は 、 四 社 契 約 の 契 約 当 事 者 で は あ っ た も の の 、 基 本 契 約 で は X と 直 接 の 契 約 当 事 者 関 係 に あ っ た と は 言 い 難 い 。 そ れ に も か か わ ら ず 、 本 判 決 は Y の 信 義 則 違 反 に 基 づ く 賠 償 責 任 を 肯 定 し た 。 こ れ は い か な る 理 由 に よ る も の だ ろ う か 。 第 一 審 は 、 Y は 、 信 義 則 上 、 遅 く と も 量 産 機 の 完 成 ま で に は 、 そ れ 以 上 の 改 良 要 求 事 項 が な い こ と を 確 認 す る 義 務 を 負 っ て い た も の と い う べ き で あ る か ら 、 突 然 の 仕 様 変 を 要 求 し た C ︵ 筆 者 注: A の 代 表 者 ︶ の 行 為 は 、 X Y 間 に お い て は 、 信 義 則 上 、 Y の 行 為 と 同 視 す べ き で あ る 。 と し て 、 信 義 則 上 、 A の 行 為 を X Y の 関 係 で Y の 行 為 と 同 視 し て 、 Y の 賠 償 責 任 を 肯 定 し た 。 こ れ に 対 し て 、 原 審 は 、 基 本 契 約 の 成 立 に 至 ら な か っ た こ と に つ い て 、 Y に は 契 約 渉 の 当 事 者 と し て 信 義 則 に 反 す る と ま で は 認 め る こ と が で き な い と し て 、 ま た 、 四 社 契 約 の 成 立 に つ い て は 、 A も 、 Y と は 別 に 契 約 当 事 者 と し て の 地 位 を 有 し 、 契 約 締 結 渉 に 臨 ん で い た 以 上 、 A の 行 為 を Y の 行 為 と 同 一 視 す る こ と も 妥 当 で な い と し て 、 Y の 賠 償 責 任 を 否 定 し た 。 本 判 決 は 、 ① 最 終 的 に Y と A と の 間 の 契 約 が 締 結 に 至 ら な い 可 能 性 が 相 当 程 度 あ る に も か か わ ら ず 、 上 記 各 行 為 に よ り 、 X に 対 し 、 本 件 基 本 契 約 又 は 四 社 契 約 が 締 結 さ れ る こ と に つ い て 過 大 な 期 待 を 抱 か せ た こ と 、 ② Y は 、 最 終 的 に 契 約 の 締 結 に 至 ら な い 可 能 性 が あ る こ と を 当 然 に 予 測 し て お く べ き で あ っ た こ と 、 ③ 契 約 渉 決 裂 の 主 た る 原 因 は 、 A の 時 機 に 後 れ た 改 良 要 求 を し た こ と に あ り 、 X に も 契 約 渉 決 裂 の 責 任 の 一 端 が あ る と し て も 、 Y の 賠 償 責 任 を 免 れ さ せ る こ と は で き な い こ と 、 を 慮 し て 、 Y の 賠 償 責 任 を 認 め た 。 第 一 審 と 原 審 は 、 信 義 則 を 根 拠 に 、 A の 行 為 が Y の 行 為 と 同 視 で き る か で 、 Y の 賠 償 責 任 を そ れ ぞ れ 肯 定 ・ 否 定 し て い る 。 本 判 決 は 、 Y が X に 基 本 契 約 又 は 四 社 契 約 の 成 立 に つ て 過 大 な 期 待 を 抱 か せ た こ と を 理 由 に Y の 賠 償 責 任 を 肯 定 し て お り 、 渉 破 棄 の 責 任 が 主 に A に あ り 、 X に も 責 任 が あ る に し て も 、 Y の 賠 償 責 任 は 免 れ な い と し て い る 。 つ ま り 、 第 一 審 と 原 審 の よ う に A と Y の 行 為 が 同 視 で き る か 否 か で 、 Y の 賠 償 責 任 を 判 断 す る の で は な く 、 Y の 行 為 が X に 基 本 契 約 又 北研 44 (2・ )

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は 四 社 契 約 の 成 立 に つ い て 過 大 な 期 待 を 抱 か せ た こ と を 根 拠 に し て 、 Y の 賠 償 責 任 を 肯 定 し て い る の で あ る 。 そ し て 、 A と X に 契 約 渉 の 破 棄 に つ い て 責 任 が あ っ て も 、 Y が 賠 償 責 任 を 負 う と す る の で あ る 。 2 | ⑴ 判 例 の ⑤ 判 決 も 、 前 述 し た よ う に 、 直 接 の 契 約 当 事 者 で は な い 者 か ら の 損 害 賠 償 請 求 を 肯 定 し て い る ︵ 不 法 行 為 責 任 に よ る ︶ 。 こ の 二 つ の 判 例 の 動 向 か ら 、 契 約 の 締 結 に 対 し て イ ニ シ ア テ ィ ヴ の な い 者 ︵ 場 合 に よ っ て は 、 当 事 者 で も な い 者 ︶ で あ っ て も 、 そ の 渉 経 過 に よ っ て は 、 相 手 方 に 対 し て 信 義 則 上 の 注 意 義 務 を 負 う こ と が 17 ︶ あ る と い う 、 責 任 主 体 を 拡 大 す る 方 向 を 見 て 取 れ る 。 ⑶ 損 害 賠 償 の 範 囲 本 判 決 は 、 Y の 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 に よ る 損 害 賠 償 を 認 め た が 、 具 体 的 な 損 害 賠 償 の 範 囲 に つ い て は 、 原 審 に 差 し 戻 し て い る 。 こ こ で は 、 若 干 で は あ る が 、 損 害 賠 償 の 範 囲 に つ い て 論 じ る こ と に す る 。 第 一 審 は 、 信 義 則 に 基 づ く 損 害 賠 償 と い う 局 面 に お い て は 、 基 本 契 約 が 締 結 さ れ た 場 合 に 準 じ 、 基 本 契 約 か ら 生 じ る で あ ろ う 拘 束 力 の 範 囲 内 で の 損 害 賠 償 を 認 め る の が 条 理 に 適 う と い う べ き で あ る 。 と し て 、 本 件 商 品 の 販 売 に よ り 得 ら れ た で あ ろ う 利 益 ま で の 賠 償 も 認 め て い る 。 し か し 、 契 約 渉 の 不 当 破 棄 に よ る 損 害 賠 償 の 範 囲 で 、 第 一 審 の よ う に 履 行 利 益 ま で 認 め た も の は ほ と ん ど 18 ︶ な い 。 し た が っ て 、 判 例 は 、 原 則 と し て 損 害 賠 償 の 範 囲 を 信 頼 利 益 に 限 定 し て い る 。 本 判 決 で は 、 X が 過 大 な 期 待 を 抱 い た 結 果 、 無 理 か ら ぬ こ と で あ っ た 本 件 商 品 の 開 発 費 ・ 製 造 費 が 損 害 賠 償 の 範 囲 に な る か ら 、 損 害 賠 償 の 範 囲 と し て は 、 信 頼 利 益 に 限 ら れ る と え ら れ る ︵ よ り 正 確 に い え ば 、 X が 契 約 成 立 を 信 頼 ︵ あ る い は 誤 信 ︶ し た こ と と 因 果 関 係 の あ る 損 害 の 範 囲 と な る ︶ 。 本 判 決 に お い て 、 具 体 的 な 損 害 賠 償 の 範 囲 を 慮 す る 要 素 と し て 、 ① X も 、 最 終 的 に 契 約 の 締 結 に 至 ら な い 可 能 性 が あ る こ と は 、 当 然 に 予 測 し て お く べ き こ と で あ っ た こ と 、 ② 契 約 渉 決 裂 の 主 た る 原 因 は 、 A の 時 機 に 後 れ た 改 良 要 求 を し た こ と に あ り 、 X に も 契 約 渉 決 裂 の 責 任 の 一 端 が あ る こ と 、 が え ら れ る 。 こ れ ら の 要 素 は 、 多 く の 契 約 渉 の 不 当 破 棄 の 事 案 に 用 い ら れ る 過 失 相 殺 の 際 に 慮 さ れ る と 思 わ 19 ︶ れ る 。 ⑷ お わ り に 本 判 決 は 、 事 例 判 決 で あ り 、 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 に よ り 損 害 賠 償 責 任 を 負 う 従 来 の 判 例 の 理 解 を 進 展 さ せ る も の で は な い 。 し か し 、 第 一 審 ・ 原 審 の よ 北研 44 (2・ )

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う に 、 契 約 に 直 接 の 相 手 方 に な ら な い 者 の 賠 償 責 任 を 、 契 約 の 直 接 の 相 手 方 と な る は す で あ っ た 者 と 同 視 で き る か で 否 か で 判 断 す る の で は な く 、 契 約 の 直 接 の 相 手 方 で な い 者 で あ っ て も 、 相 手 方 に 契 約 の 成 立 に つ い て 過 大 な 期 待 を 抱 か せ た 場 合 、 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 が あ る と し て 、 損 害 賠 償 責 任 を 肯 定 し た 点 に 意 義 が あ り 、 こ の 点 で 重 要 な 判 決 と い え る 。 1 ︶ 判 例 の 析 に つ い て は 、 円 谷 峻 契 約 締 結 上 の 過 失 森 泉 章 [ 編 集 代 表 ] 現 代 民 法 学 の 基 本 問 題 中 ︵ 第 一 法 規 、 一 九 八 三 年 ︶ 一 八 三 頁 、 同 新 ・ 契 約 の 成 立 と 責 任 ︵ 成 文 堂 、 二 〇 〇 四 年 ︶ 、 島 岡 大 雄 当 事 者 の 一 方 が 過 失 に よ り 契 約 締 結 に 至 ら な か っ た 場 合 の 賠 償 責 任 判 例 タ イ ム ズ 九 二 六 号 ︵ 一 九 九 七 年 ︶ 四 二 頁 が あ る 。 2 ︶ 契 約 締 結 上 の 過 失 に つ い て は 、 北 川 善 太 郎 契 約 締 結 上 の 過 失 契 約 法 体 系 刊 行 委 員 会 [ 編 ] 契 約 法 体 系 ︵ 契 約 論 ︶ ︵ 有 閣 、 一 九 六 二 年 ︶ 二 二 一 頁 、 円 谷 ・ 前 掲 ︵ 脚 注 1 ︶ 、 本 田 純 一 契 約 締 結 上 の 過 失 理 論 に つ い て 遠 藤 浩= 林 良 平 = 水 本 浩 [ 監 修 ] 現 代 契 約 法 体 系 第 1 巻 現 代 契 約 の 法 理 ⑴ ︵ 有 閣 。 一 九 八 三 年 ︶ 一 九 三 頁 、 潮 見 佳 男 契 約 締 結 上 の 過 失 谷 口 知 平= 五 十 嵐 清 [ 編 ] 新 版 注 釈 民 法 ︹ 補 訂 版 ︺ ︵ 有 閣 、 二 〇 〇 六 年 ︶ 九 〇 頁 な ど が あ る 。 3 ︶ 我 妻 榮 債 権 各 論 上 巻 ︵ 民 法 講 義 1 ︶ ︵ 岩 波 書 店 、 一 九 五 四 年 ︶ 三 九 ∼ 四 〇 頁 。 4 ︶ 我 妻 ・ 前 掲 ︵ 脚 注 3 ︶ 四 〇 頁 。 5 ︶ 我 妻 ・ 前 掲 ︵ 脚 注 3 ︶ 四 〇 頁 。 6 ︶ 本 田 ・ 前 掲 ︵ 脚 注 2 ︶ 二 一 〇 頁 。 7 ︶ 本 田 ・ 前 掲 ︵ 脚 注 2 ︶ 二 一 〇 頁 。 8 ︶ 本 恒 雄 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 を 理 由 と す る 損 害 賠 償 責 任 が 認 め ら れ た 事 例 判 例 評 論 三 一 七 号 一 八 八 頁 。 9 ︶ 本 ・ 前 掲 ︵ 脚 注 8 ︶ 一 八 八 頁 。 10 ︶ 円 谷 ・ 前 掲 ︵ 脚 注 1 ︵ 新 ・ 契 約 の 成 立 と 責 任 ︶ ︶ 一 九 三 ∼ 一 九 五 頁 。 な お 、 円 谷 教 授 は 、 ① ② を 通 常 型 の 契 約 渉 打 ち 切 り と し て 、 さ ら に 、 契 約 渉 の 相 手 方 か ら ノ ウ ・ ハ ウ ︵ ト レ ー ド ・ シ ー ク レ ッ ト ︶ や 営 業 上 の 秘 密 を 知 る た め の 見 せ か け の 契 約 渉 が 開 始 さ れ 、 目 的 を 達 成 す る や 渉 を 打 ち 切 る よ う な 場 合 を 背 信 型 の 契 約 渉 打 ち 切 り と し て 類 さ れ て い る ︵ 一 七 三 頁 ︶ 。 11 ︶ 池 田 清 治 契 約 渉 の 破 棄 と そ の 責 任 ︵ 有 閣 、 一 九 九 七 年 ︶ 二 五 頁 以 下 、 三 三 一 頁 以 下 。 12 ︶ 池 田 ・ 前 掲 ︵ 脚 注 11 ︶ 三 二 〇 、 三 四 〇 頁 。 13 ︶ 戸 田 知 行 契 約 締 結 拒 絶 と 信 義 則 法 律 時 報 六 〇 巻 五 号 一 〇 五 頁 。 14 ︶ 野 澤 正 充 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 と 損 害 賠 償 請 求 の 可 否 最 三 判 平 成 19 ・ 2 ・ 27 N B L 八 北研 44 (2・ )

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五 五 号 一 九 ∼ 二 〇 頁 。 15 ︶ 池 田 清 治 ゲ ー ム 機 を 順 次 販 売 す る 連 鎖 的 な 契 約 が 成 立 し な か っ た 場 合 の 契 約 準 備 段 階 に お け る 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 私 法 判 例 リ マ ー ク ス 三 六 号 ︵ 二 〇 〇 八 年 ︶ 三 二 頁 。 な お 、 池 田 教 授 は 、 2 | ⑵ 学 説 の 第 四 の 自 説 を 展 開 し て 、 誤 信 惹 起 型 の ② 締 約 が 確 実 で な い の に 確 実 で あ る と 誤 信 し た 場 合 の 類 型 で あ り 、 そ し て 、 本 判 決 は 、 こ の 類 型 で 初 め て 責 任 を 肯 定 し た 最 高 裁 判 決 で あ る と さ れ る ︵ 三 二 頁 ︶ 。 16 ︶ な お 、 事 案 は 本 件 と 異 な る が 、 2 | ⑴ の ① 判 決 は 、 密 接 な 渉 を 持 つ に 至 っ た 当 事 者 間 の 関 係 を 規 律 す べ き 信 義 衡 平 の 原 則 に 照 ら し 、 ⋮ 信 頼 に 対 し て 法 的 保 護 が 与 え ら れ な け れ ば な ら な い も の と い う べ き で あ る 。 と し て 、 信 頼 保 護 を 重 視 し て い る 。 17 ︶ 野 澤 ・ 前 掲 ︵ 脚 注 14 ︶ 二 〇 頁 。 18 ︶ 下 級 審 の 判 例 ︵ 大 阪 地 裁 平 成 二 年 一 〇 月 一 二 日 判 決 ︵ 判 例 時 報 一 三 七 六 号 九 一 頁 ︶ ︶ で は 、 手 形 割 引 が 問 題 と な っ た 事 例 で 、 損 害 賠 償 の 範 囲 と し て 得 べ か り し 利 益 ま で 認 め た も の が あ る 。 し か し 、 平 の 見 地 か ら 、 過 失 相 殺 の 規 定 を 類 推 し て 九 割 減 額 し た 。 19 ︶ な お 、 本 判 決 の 差 戻 し 判 決 で は 、 信 頼 利 益 と 履 行 利 益 と い う 言 葉 を 用 い ず 、 契 約 準 備 段 階 で の 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 行 為 と 相 当 因 果 関 係 の あ る 損 害 と い う 判 断 の 枠 組 み を 用 い て 、 当 事 者 の 一 方 の 行 動 を 信 頼 し て 本 件 商 品 を 開 発 、 製 造 し た こ と に よ り 生 じ た 損 害 に 限 ら れ 、 契 約 が 成 立 し 、 売 買 代 金 債 権 が 発 生 す る こ と を 前 提 と す る 代 金 は 、 こ れ に 該 当 し な い 旨 を 判 示 し た よ う で あ る ︵ 過 失 相 殺 二 割 ︶ ︵ 野 澤 正 充 契 約 準 備 段 階 で の 信 義 則 上 の 注 意 義 務 違 反 と 損 害 賠 償 の 範 囲 東 京 高 判 平 成 19 ・ 9 ・ 26 差 戻 し 控 訴 審 判 決 N B L 八 七 一 号 五 ∼ 六 頁 ︶ 。 野 澤 教 授 は 、 こ の 差 戻 し 判 決 を 、 実 質 的 に は 信 頼 利 益 の 賠 償 を 認 め る も の で あ り 、 こ れ ま で の 瑕 疵 担 保 責 任 ︵ 民 法 五 七 〇 条 ︶ に お け る 損 害 賠 償 を 中 心 に 論 じ ら れ て き た 信 頼 利 益 が 、 そ の 主 戦 場 を 、 契 約 準 備 段 階 で の 注 意 義 務 違 反 を 理 由 と す る 損 害 賠 償 の 領 域 に 移 す 契 機 と な る も の で あ り 、 そ の 意 義 は 決 し て 小 さ な も の で は な い 。 と 評 し て い る ︵ 五 、 七 頁 ︶ 。 な お 、 こ の 差 戻 し 判 決 は 、 再 度 上 告 さ れ て い る 。 ※ 本 稿 は 、 横 浜 国 立 大 学 民 事 法 研 究 会 ︵ 二 〇 〇 八 年 六 月 二 四 日 開 催 ︶ で の 報 告 を 踏 ま え て 執 筆 さ れ た も の で あ る 。 北研 44 (2・ )

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