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病院勤務助産師のキャリア開発に関する研究

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J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 16, No. 2, pp. 69-78, 2003. 2

病 院 勤 務 助 産 師 の キ ャ リ ア開 発 に関 す る研 究

-停 滞 とその打破

に焦点を当てて-Studies

on the

career

development

of midwives

working

in hospitals

- A focus

on their

stagnation

and

breakthrough-木 村 千 里(Chisato KIMURA)*1 松 岡 恵(Megumi MATSUOKA)*1 平 澤 美 恵 子(Mieko HIRASAWA)*2 熊 澤 美 奈 好(Minako KUMAZAWA)*3 佐 々 木 和 子(Kazuko SASAKI)*4 Iは じ め に わ れ わ れ は 先 行 研 究(木 村 他,2002)に お い て,職 場 で 自己 啓 発 の も とに十 分 に能 力 を発 揮 し え た と思 わ れ る病 院 勤務 助 産 師 の キ ャ リア を調 査 し,能 力 開 発 の 内 容 や 時 期 を明 らか に した。 井 上 (1993)は,従 業 員 の 業 務 力 向 上 を阻 害 す る要 因 と して,適 材適 所 に配 置 され て い な い状 態 や責 任 と権 限 が な い状 態,上 司 の あ り方,ト ー タ ル人 事 管 理 の 欠如 な ど を挙 げ て い る。 助 産 師 の キ ャ リア 開 発 に お い て も職 業 上 の伸 び悩 み,す な わ ち停 滞 が あ る こ と は当 然考 え られ る。職 業 上 の停 滞 を乗 り越 え るた め の個 人 お よび組 織 と して の 方略 を 明 らか に す る こ と は,助 産 師 に対 す る組 織 と して の 職 場 の働 きか け や,助 産 師個 人 の 対 処 を考 え る た め の ヒ ン トに な り,助 産 師 の 現 任 教 育 に とっ て も 重 要 な課 題 で あ る。 そ こで本 研 究 で は,先 行研 究(木 村 他,2002) の対 象者 に対 し,キ ャ リア 開 発 にお け る停 滞 の 時 期 や そ の契 機 とな る出 来 事,停 滞 を意 識 して乗 り 越 えて きた過 程 を調 査 し,各 人 に共 通 す る停 滞 の 内容 と時期,お よび停 滞 打 破 の 方 略 を明 らか に す る こ と を 目的 に した 。 【用 語 の 定 義 】 キ ャ リア開 発 個 々 の助 産 師 が 自己 の責 任 で社 会 の ニ ー ズ や 個人 の能 力 お よび 生 活(ラ イ フ サ イ ク ル)に 応 じて,仕 事 の あ り方 や 進 め 方 を計 画 し, そ の 目標 達 成 に必 要 な能 力 の 向 上 に取 り組 む こ と。

*1東 京 医 科 歯 科 大 学 大 学 院(Graduate School Tokyo Medical and Dental University) *2日 本 赤 十 字 看 護 大 学(Japanese Red Cross Colledge of Nursing)

*3亀 田 医 療 技 術 専 門 学 校(Kameda Institute of Nursing and Advanced Practice) *4日 本 看 護 大 学 校(National College of Nursing)

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停 滞 助 産 師 と して,あ る い は 管 理 職 と して在 職 中 に本 人 が苦 労 し,不 安 ・焦 り を感 じた り思 い悩 み,時 に は身体 症 状 を呈 す る な ど,職 業 上 伸 び悩 ん で い る状 態 。

II研

究 方 法

1.対 象 同質 対 象選 択 と し,対 象 を決 定 す る手 順 とし て 以 下 の(1)の条 件 の いず れ か に該 当 し,(2)の 条 件 を 満 た す こ とを選 択 基 準 と した。 ① 研 究 者 そ れ ぞ れ が,同 僚 ・先 輩 ・後 輩 ・教 え 子 な ど,実 際 に助 産 師 と して の活 動 内容 を知 っ て い る もの の 中 か ら職 場 で 自 己啓 発 の も と に能 力 を十 分 に発 揮 しつ つ仕 事 を継 続 して い る と考 え られ る助 産 師 を挙 げた 。 そ の具 体 的 条 件 とし て,以 下 の① ∼④ の 条 件 の い ず れ か に該 当 す る もの と した 。 ① 非 常 に意 欲 的 で あ り,か つ建 設 的 な 意 見 を も ち,職 場 の 改 革 の 推 進 役 で あ る こ と。 ② 院外 の全 国 的 規 模 で の 学 会,研 修 会,職 能 グ ル ー プ の メ ンバ ー で あ る こ と。 ③ 看 護 や助 産 学 に関 す る専 門 雑 誌 や学 会誌,ニ ュー ス レタ ー な ど に,積 極 的,か つ定 期 的 に 投 稿 して い る こ と。 ④ 職 場 に お け る管 理 的 役 割,も し くは教 育 ・指 導的 役 割 を経 験 して い る こ と。 そ れ らの助 産 師 に関 す る情 報 を研 究 グ ル ー プ 内 で持 ち寄 り,な ぜ 対 象 と した い の か を相 互 に 説 明 し,研 究 グ ル ー プ内 で 同 意 の得 られ た もの と した。 ② 対 象 の年 齢 は,キ ャ リアの 発 達 段 階 的 ア プ ロ ー チ(Schein ,1978/1991)を 参 考 に し た 。 す な わ ち,新 従 業 員 は仕 事 を通 して 自己 認 識 を獲 得 し,よ り明 白 な職 業 上 の 自己 イ メ ー ジ ー 自覚 され た才 能 と能 力,自 覚 され た 動 機 と欲 求,自 覚 され た態 度 と価 値-を 開 発 す るが,こ れ は助 産 師 に も該 当 す る内容 で あ る。 これ を踏 ま えて 対 象 の 年 齢 を,助 産 師 が 自己 の才 能 や能 力,動 機や 欲 求,態 度 や価 値 を認 識 で き,職 業 的 成 長 を客 観 的 に振 り返 り,あ る程 度 統 合 で きて い る と考 え られ る35歳 以 上60歳 未 満 と した。 以 上 の 対 象 選 択 基 準 を満 た し,か つ研 究 協 力 の 承 諾 が 得 られ た 病 院 勤 務 助 産 師16名 を今 回 の研 究 対 象 と した 。 2.デ ー タ収 集 期 間 平 成9年4月 上 旬 ∼8月 下 旬 。 3.デ ー タ収 集 1)方 法 半 構 成 的 面 接 法 で行 っ た 。 面 接 は,面 接 法 に習 熟 して い る5名 の 研 究 者 が 行 い,面 接 者(研 究 者)1人 につ き2∼4名 の対 象 者 の イ ン タ ビ ュ ー を担 当 す るか た ちで 行 っ た 。 面 接 は約1時 間 を予 定 し,プ ロ トコー ル を作 成 して2事 例 に予 備 調 査 を行 っ た 。 そ れ らの 事 例 の イ ン タ ビュ ー をテ ー プ 録 音 した もの を逐 語 録 と し,① イ ン タ ビ ュー の 実 際 的 な手 順 と内 容 を研 究 者 間 で 見 直 し,イ ン タ ビ ュ ー ガ イ ドの 一 部 修 正,② 助 産 師 で あ る研 究 者5 名 が 同職 者 で あ り,か つ研 究 者 自身 が 知 っ て い る 個 人 を対 象 に面 接 をす る とい う点 で,過 度 の巻 き 込 まれ や 参加 者 へ の 同 一 化 の 防 止 の 確 認,を 行 っ た。 面 接 内容 は,在 職 中 に本 人 自身 が 停 滞 した と考 え て い る 時期(入 職 後 の 勤 続 年 数)と 内 容,異 動 や 昇 格 な ど職 場 で の 立 場 が 変 化 した とき の意 識 や 役 割 の と ら え方,停 滞 を打 破 した 方 略 に つ い て で あ っ た。 2)倫 理 的配 慮 対 象 者 に は 書 面 と 口頭 で研 究 の 主 旨 と概 要 の 説 明 を行 い,回 答 の 拒 否 や 面 接 中 の 録 音 の 中止,逐 語 録 か ら内 容 除 去 が で き る こ と を保 証 し た。 ま た,録 音 内容 の秘 密 保 持 や,プ ラ イ バ シー を保 持 し,デ ー タ は研 究 目的 以 外 に使 用 しな い こ とを保 証 した。 4.分 析 逐 語 録 の 中 か ら対 象 者 の キ ャ リア 開 発 に お け る 停 滞 の 内容 を 表 す 句 ・文 章 を抽 出 し,入 職 後 の 経 験年 数 に合 わ せ て 事 例 ご とに経 時 的 に 図式 化 し, そ の句 ・文 章 を共 通 す る テ ー マ で 分 類 した 。 さ ら に,対 象 者 の停 滞 に対 す る対 処 の しか た の特 徴 な ど を記 述 的 に 分 析 し,共 通 す る要 因 を抽 出 した 。 以 上 の 内容 を,研 究 者 間 で見 直 した 。 70 日本助 産 学 会誌 第16巻 第2号(2003.2)

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病 院勤 務 助産 師 の キ ャ リア開 発 に関 す る研 究 III結 果 1.対 象 の 概 要 平 均 年 齢 は44.3(37∼58)歳,既 婚 者 は10名 で 全 員 に 子 ど もが お り,未 婚 者 は6名 で あ っ た 。 助 産 師 と し て の 経 験 年 数 は,平 均19.3(15∼33) 年,う ち 准 看 護 師 と し て の 勤 務 経 験 者 は2名 で, 経 験 年 数 は 平 均6.0(2∼10)年,看 護 師 と し て の 勤 務 経 験 者 は5名 で,経 験 年 数 は 平 均3.3(2 ∼7 .5)年 で あ っ た 。 職 位 は 婦 長 以 上 が9名,主 任 ・係 長 が3名,ス タ ッ フ が4名 で あ っ た 。 2.職 業 的 発達 に お け る停 滞 の時 期 と内 容(表1, 図1) 1)キ ャ リア5年 ご ろ まで キ ャ リア5年 ご ろ まで は,停 滞 の 自覚 が なか っ た 。 2)キ ャ リア5年 以 降11年 ご ろ まで の 停 滞 ① ラ イ フ イベ ン トに伴 う進 路 上 の迷 い(4名)-キ ャ リア5.00∼9.33年 助 産 師 と して ど う働 くか に関 して,勤 務 場 所 の 変 更 や 結 婚 問題,仕 事 と育 児 の両 立 な ど女 性 の 生 き方 と併 せ て考 え悩 ん で い た。 ② 責 任 の重 さ(4名)-キ ャ リア5.25∼10.50年 業 務 の 中 で責 任 あ る役 割 を与 え られ,責 任 を 負 う こ とに不 安 を感 じた り,心 身 と もに憔 埣す る な どの症 状 も出現 して い た。 ③ 業 務 や 仕 事 に対 す る 自信 の な さ,不 十 分 感(10 名)-キ ャ リア6.50∼10.63年 分 娩 件 数 の減 少,受 験 や 昇 任 試 験 の失 敗 に伴 う不 安 や 失 敗 感,自 己 の臨 床 能 力 の 限 界 を 自覚 す る こ と,自 分 の や りた い こ とに対 す る 自問 と 現 状 に対 す る不 十 分 感 が 含 まれ た 。 ④ 周 囲 か らの 否 定 的 フ ィー ドバ ッ ク(8名)-キ ャ リア6.75∼10.75年 上 司 や 同 僚 の業 務 変 革 に対 す る無 理 解 や 理 解 不 足,医 師 との 仕 事 上 の 関 係 や 調 整 に対 して悩 ん だ り苦 労 して い た 。 ⑤ 活 動 の 場 を変 え て 新 た に 見 え て く る 限 界(3 名)-キ ャ リア8.33∼11.33年 目 的 を も っ て変 化 を期 待 して 活 動 の場 を 変 え,そ こで 新 しい 学 び の 機 会 を得 る と同 時 に, 新 た な問 題 に も直 面 して い た 。 この問 題 に は, 施 設 の方 針 と 自分 の考 え との ギ ャ ップ,自 己 の 臨 床 能 力 の 限界 を 自覚 した こ とな どが 含 まれ た。 3)キ ャ リア11年 以 降の 停 滞 ⑥ 立 場 が 変 化 す る時 の不 安 や 苦 労(7名)-キ ャ リア11.33∼17.50年 同 じ施 設 内 で,産 科 も し くは産 科 関 連 病 棟 か ら一 般 病 棟 へ の 異 動 や,そ の 系 列 の 付 属 施 設 (学校)に 異 動 にな る な どの 立 場 の変 化 に伴 い, 嫌 悪 感 や 落 ち込 み,不 安 を感 じて い た 。 ⑦ 昇 格 に 伴 う 役 割 不 全 感(11名)-キ ャ リ ア 18.09∼22.50年 昇 格 に伴 い,医 師 や ス タ ッ フ との 関 係 調 整 や 婦 長 集 団 との関 係 調 整 か らス トレス を体 験 し た り,直 接 的 な ケ ア か ら遠 ざ か る こ と に よ って 孤 独 感 を体 験 し て い た。 これ らの 中 に は,停 滞 打 破 に至 らず 「現 在,取 り組 み 中」 で あ る と口述 した 者 が16名 中,2名 あ っ た。 さ らに,昇 格 に 伴 う役 割 不 全 感 に対 して対 象者 は,生 活構 造 の バ ラ ンス を調 整 した り,問 題 を肯 定 的 に と ら え て 取 り組 んだ り,取 り組 み の結 果,発 想 を転 換 し て お り,「 現 在,取 り組 み 中」 で あ る と口 述 した2名 は,停 滞 意 識 を もち つ つ も 自分 な りの 努 力 を行 って いた 。 3.停 滞 へ の 対 処 法 対 象 者 は職 業 上 の 停 滞 に際 して,苦 悩,ノ イ ロ ー ゼ状 態,孤 独 感,や る気 喪 失,「 つ ま らな い 」, 「嫌 に な る」,自 信 喪 失 な どの情 緒 的 反応 や,体 重 減 少,肩 こ り,吐 き気 な どの身 体 的 反 応 を体 験 し て い た 。 こ れ ら の 不 適 応 反 応 に対 す る対 処 行 動 は,以 下 の とお りで あ っ た(表2,図2)。 1)前 向 き な取 り組 み ① 自己 学 習,自 己 啓 発 対 象 者 は職 場 や 家 庭 の ス トレス に対 して,国 立 研 究 機 関 や 大 学 に進 学 した り自費 で 研 修 に参 加 し,主 体 的 に 自己 啓 発 活 動 を行 って いた 。 ② 生 活 構 造 の バ ラ ン ス調 整 対 象 者 は職 場 や 家 庭 の ス トレス に対 し て,仕 事 と家 庭 の両 立 の た め に努 力,趣 味 に よ る気 分 転 換,ま た,結 婚 や 育 児 を通 じた 医 療 関 係 以 外 の 家 庭 ・地 域 生 活 に お け る人 間 関 係 の 充 実 化 を 図 っ て い た。

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図1停 滞 の時期

表1キ ャ リア に お け る主 な停 滞

(注)項 目()内 は人 数 を表 し,代 表 的 な 口述 の みを記 載 した。 また,イ ンタ ビュ ーは保 健 婦助産 婦 看 護婦 法一 部 改正 前 に実 施 した ため, 「助 産師 」 とい う呼 称 では な く,そ の 口述の ま ま 「助産 婦」 とい う表 現 と した。

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病 院勤 務 助産 師 の キ ャ リア開 発 に関 す る研 究

図2停 滞 の自覚 とその反 応 ・対処行動

表2停 滞に対 する対処 法

注)① ラ イ フイベ ン トに伴 う進路 上 の迷 い,② 責 任の重 さ,③ 業務 や仕 事 に対す る 自信 の な さ,不 充 分感,④ 周 囲か らの否定 的 フ ィー ドバ ッ ク,⑤ 活 動 の場 を変え て新た に見え て くる限界,⑥ 立 場が変 化す る時 の不安 や苦 労,⑦ 昇格 に伴 う役 割不全 感

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③ 実 践 の積 み重 ね 対 象 者 は職 場 の ス トレ ス に対 して,時 間外 の 分 娩 取 り扱 い や 乳 房 治療 手 技 の継 続 な ど を行 っ て いた 。 ④ 変 化 の選 択 や安 定 の 選択 対 象 者 は職 場 や 家庭 の ス トレ ス に対 して,目 的 意 識 を も って再 就 職,勤 務 場 所 の変 更,ロ ー テ ー シ ョ ン希 望,新 し い仕 事 へ の チ ャ レ ンジ を 行 っ て い た 。 反対 に,現 状 維 持 を貫 く方 法 も採 られ て い た 。 2)思 考 や発 想 の 転換 ⑤ 肯 定 的 思考 対 象者 は職 場 の ス トレ ス に対 して,良 い ア ド バ イ ス を受 け入 れ た り,困 難 な体 験 や非 難 に対 して も意 味 を見 い だ して 受 容 す る な ど,肯 定 的 思 考 に よ って乗 り切 っ て いた 。 ⑥ 試 行 錯 誤 後 の 発 想転 換 対 象 者 は,職 場 にお い て発 見 した 問題 に対 し て種 々 の取 り組 み を通 して発 想 を転 換 し,自 己 の役 割 や 仕事 の 意 義 を見 つ め直 して い た。 3)社 会 的 サ ボ ー トの 活 用 ⑦ 良 き相 談 者 ・支 援者 の 活 用 対 象者 は職 場 や 家庭 の ス トレ ス に対 して,卒 業 校 の 教 員,上 司(先 輩),医 師 や 部 下 な ど, 良 き相 談者 ・支 援 者 を活 用 して い た。 ⑧ ネ ッ トワー キ ング 対 象 者 は,職 業 上 の 停 滞 や 伸 び悩 み に 対 し て,助 産 師 ネ ッ トワー ク の活 動 を 開始 し,助 産 師 同 士 の交 流 や 消 費 者 との交 流 を通 して助 産 師 の仕 事 を見 つ め 直 して いた 。 4)受 動 的 な研 修 参 加 対 象者 は職 場 の ス トレ ス に 対 して,「 逃 げ る よ うに」 とい う認 識 を も ちつ つ も他 者 に勧 め られ て 次 の ス テ ップ を探 るた め に研 修 に 出 て い た。 5)停 滞 意識 の 中 で の 試 行 錯 誤 昇 格 に伴 うス トレス に対 して,ま だ停 滞 中 とい う者 もあ った が,職 場 の 人 間 関 係 調 整 な ど前 向 き に取 り組 み,試 行 錯誤 の 段 階 で あ っ た。 以 上 の取 り組 み に よ って,対 象 者 は職 場 に お け る 自己 の役 割 を認 識 し,新 た な問 題 や テ ー マ を発 見 して そ れ に挑 戦 した り,仕 事 上 の 自信 や充 実感 を得 る な ど,停 滞 を乗 り越 え た体 験 や取 り組 み を 肯 定 的 に評 価 で きて い た 。

IV考

1.病 院 勤 務 助 産 師 の 停 滞 の 時 期 と内 容 1)キ ャ リア5年 ご ろ ま で 対 象 者 は キ ャ リア5年 ごろ まで,職 業 上,停 滞 の 自覚 が な か った 。 この結 果 に対 して は2つ の解 釈 が で きる と考 え られ る。 す な わ ち,1つ は対 象 者 の記 憶 が幾 分 か 希 薄 とな っ て い るた め に,キ ャ リア初 期 に お け る職 業 上 の停 滞 に対 す る 口述 が な され な か っ た とい う可 能 性 が あ る と考 え られ る。 こ の点 に 関 し て は,「 生 き られ た 生 」 と 「経 験 さ れ た 生 」 と 「語 られ た 生 」 を 区別 す るた め に忘 却 や 記 憶 の混 同 に よ る歪 み を少 な くす る工 夫 が 必 要 で あ っ た と考 え られ る(中 野&桜 井,1995)。 も う1つ の解 釈 と して は,停 滞 が な か っ た と い う こ とを,Schein(1978/1991)やKatz(1980)の 述 べ た キ ャ リア初 期 の 課 題 を ク リア で き,有 効 に組 織 的 社 会 化 を遂 げ て い た と推 察 で き る。 しか し, 今 回 は前 述 の よ うな 忘 却 や 記 憶 の混 同 に よ る歪 み を少 な くす る工 夫(研 究 参 加 者 に研 究 結 果 をチ ェ ッ ク して も ら うな ど)を 行 わ なか っ た た め,キ ャ リア初 期 に有 効 な組 織 的 社 会 化 を遂 げ て い た と は 断 言 で きな い と考 え られ た 。 2)キ ャ リア5∼11年 まで は じめ に,ラ イ フイ ベ ン トに伴 う進 路 上 の 迷 い と して,既 婚 者 も未 婚 者 もそれ まで に築 い て き た 「生 き 方」 や 「生 活 構 造 」 に疑 問 を感 じ た り,修 正 を強 い られ て い た 。 こ の時 期 は,経 験 年 数 か ら 考 え る と大 体20歳 代 後 半 か ら30歳 過 ぎ に相 当 す る。 この 時 期 の対 象者 の 課 題 は,成 人 期 最 初 に作 り上 げた 生 活 構 造 に 不安 を感 じ,自 分 の 望 みや 抱 負 を 自問 し,欠 陥 や 限界 を解 決 し,そ れ を修 正 す る こ とで あ っ た。 これ ら は,金 井(1997)に よ る 「ヤ ン グ の 課 題 」(20歳 代 の 課 題)やLevinson (1978/1992)に よ る 「大 人 の 世 界 へ は い る 時 期 (22∼28歳)」,「30歳 の 過 渡 期(28∼33歳)」 の 課 題 と も一 致 して い た 。 次 に,対 象 者 は ジ ョブ ・ロ ー テ ー シ ョン とい う キ ャ リア に お け る最 初 の 「変 化 」 に遭 遇 し,婦 長 代 行 業 務 や 外 来 を任 され る な どの 新 し い仕 事 内 容 の 責 任 の重 さ を負 担 と感 じて 不適 応 や 動 揺 を体 験 し て お り,こ れ ら も先 行 研 究 と一 致 し て い た 74 日本 助 産学 会 誌 第16巻 第2号(2003.2)

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病院 勤 務助 産 師 の キ ャ リア開発 に関 す る研 究 (Terborg,1977)。 この 時 期 は経 験 年 数 か らみ る と,キ ャ リア 中期 に含 まれ る。 対 象 者 は この 時期 に そ れ まで よ り も高 度 の 責 任 を引 き受 け,そ れ ら に対 処 す る こ と を要 求 され て お り,こ れ らの課 題 はSchein(1978/1991)の 提 示 した キ ャ リア 中期 の達 成課 題 とも一 致 す る もの で あ っ た。 一 方,ジ ョブ ・ロー テー シ ョン や ジ ョブ ・チ ェ ン ジ を体 験 せ ず,「 変 化 」 の な い ま ま現 状 を維 持 した 業 務 を遂 行 して い る と きに は,業 務 や 仕 事 に 対 す る 自信 の な さ を表 出 した り,不 十 分 感 を 自覚 し て いた 。 これ らは,仕 事 が ル ー テ ィ ン化 し,自 律 性 が 発 達 しに くい状 況 で あ った た め と考 え られ た 。 こ の よ う な状 況 は,Katz(1980)の 述 べ た キ ャ リア 中期 に お け る順 応(安 定 化 と標 準 化)が 著 し く進 ん だ 場 合 の 「タ ス ク行 動 の ル ー テ ィ ン 化 」 や 「自律 性 の 防 禦 」 な どの マ ンネ リの 自覚 と も一 致 して い た 。 上 述 の よ うに,対 象 者 は キ ャ リア5∼11年 に相 当 す る20歳 代 後 半 か ら30歳 過 ぎ に,「 ラ イ フ イ ベ ン トに伴 う進 路 上 の 悩 み 」,職 場 に お け る 「責 任 の重 さ」 や 「業 務 ・仕 事 に対 す る 自信 の な さ と不 十 分感 」 とい う 「家 族 ・自己 ・職 業 にお け る生 活 構造 上 の 役 割 に対 す る停 滞 」 を ほ ぼ同 時 期 に複 合 して 体 験 し て い た と解 釈 で きる。 さ ら に また,自 己 の仕 事 に対 す る取 り組 みや 課 題 を確 認 し,変 革 に 向 け て努 力 を して いた が,こ れ らの 「変 革 」 に対 して周 囲 か らの否 定 的 フ ィー ドバ ッ グ を体 験 して い た。 変 革 に つ い て は,そ れ が 社 会 的,組 織 的,あ る い は個 人 的 な レベ ル の う ち の ど の レベ ル に お け る変 革 で あ っ て も混 乱 や 不 安 を避 け る こ とは で きず,画 期 的 な改 革 を通 り抜 け よ う とす る組 織 内 の人 は あ る程 度 不 愉 快 な現 実 と取 り組 まな けれ ば な らな い(Tichy&Devanna, 1986/1988)。 キ ャ リア 中期 の成 功 や 失 敗 に伴 う感 情 の処 理 の 重 要 性(Schein,1978/1991)か ら考 え る と,こ の 時 期 は変 革 へ の 取 り組 み に対 す る組 織 や個 人 か らの 圧 力 に対 処 し,周 囲 の 人 との 関 係 を 調 整 す る 「人 間 関 係 調 整 能 力 」 を要 求 され る時 期 と も解 釈 で き る。 最 後 に,経 験 年 数 か らお お よそ30歳 代 前 半 に, 活 動 の場 を変 え た 取 り組 み で新 た に見 えて くる業 務 や 仕 事 上 の 限界 に直 面 して い た 。 これ ら は職 業 に就 い て以 来 初 め て の 離職 や転 職 時 に体 験 し,職 業 上 の 成 長 に対 す る新 た な 問題 や 課題 を 自覚 した もの で あ る と考 え られ た。 目 的 的 に離 転 職 す る こ と と同 様 に,新 しい 職 場 で 一 定 期 間 勤 務 した 結 果,新 た な 問 題 意 識 を もっ た り自 己 の 新 た な課 題 を発 見 す る こ とは,助 産 師 と して の職 業 的 成 長 の 1ス テ ップ と して 重 要 な段 階 で あ る と考 え られ る。 す なわ ち,職 業 的 自己 と現 実 の仕 事 との 関 係 が 吟 味 し直 され る とい う意 味 で は,職 業 的 な 発 達 上,必 要 な 自己 成 長 の1つ の ス テ ップ と も解 釈 で き,松 本&熊 谷(1995)の 主 張 と も一 致 して いた。 以 上 の こ とか らキ ャ リア5∼11年 の助 産 師 の 現 任 教育 へ の示 唆 と して,以 下 の2点 が挙 げ られ る。 1つ め と して,こ の時 期 は,「 家 族 ・自己 ・職 業 に お け る生 活 構 造 上 の 役 割 に対 す る停 滞 」 を複 合 し て 体 験 す る可 能 性 が あ る と認 識 して教 育 プ ログ ラ ム を検 討 す る必 要 が あ る。 具 体 的 に は,教 育 プ ロ グ ラム を計 画 す る際 に,家 族 の ラ イ フ サ イ ク ル上 の 問 題 や 個 々 の 助 産 師 の 自己 や 職 業 に お け る方 向 性 を踏 ま えて 責 任 や 権 限 の委 譲 や 異 動 を計 画 す る な ど,「個 」 に着 目 し,よ り個 人 的 状 況 を考 慮 しな が ら この 時 期 に あ る助 産 師 を指 導 ・援 助 す る必 要 が あ る。2つ め として,キ ャ リア5∼11年 は 「人 間 関 係 調 整 能 力 」 を要 求 され る時 期 で あ る とい う 認 識 の も とに,そ れ を促 す よ うな教 育 プ ログ ラム を計 画 す る必 要 が あ る。 す なわ ち,こ の時 期 に あ る助 産 師 の 現 任 教 育 に,感 情 処 理 や ス トレス処 理 な どの 社 会 的 ス キル の 訓 練 を体 験 学 習 な どの 方 法 で 取 り入 れ る こ と な どが 考 え ら れ る(Collett& Furnham,1995/2001;菊 池&堀 毛,1994)。 3)キ ャ リア11年 以 降 の 停 滞 対 象 者 は キ ャ リア11∼17年 ご ろ に,組 織 内 の 助 産 師 ・看 護 師 の 職 能 に ま た が る異 動 と い う ジ ョ ブ ・ロー テ ー シ ョン を体 験 し,今 まで の キ ャ リア を活 か せ ず,不 安 ・苦 労 を体 験 して お り,先 行 研 究(松 岡 他,1994)と も一 致 して い た。 次 に,キ ャ リア18∼22年 ご ろ に一 定 の昇 進 ・昇 格 を達 成 し な が ら階 層 の 次 元 を上 っ て い く際 に役 割 不 全 感 で 悩 ん で いた 。 これ らは いず れ も配 置転 換 に伴 う も の で あ り,Schein(1978/1991)の 組 織 の3次 元 モ デ ル の 「階 層 次 元 」,「職 能 の 次 元 」 で の キ ャ リ ア 分 化 に相 当 す る。 と りわ け,昇 格 に 際 して の 停 滞 は,助 産 師 で あ る管 理 職 と して の 停 滞 で あ る。 その 対 処 法 を み る と,「 生 活 構 造 のバ ラ ン ス調

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整 」,「肯 定 的 思 考 」,「試 行 錯 誤 後 の 発 想 転 換 」, 「停 滞 意 識 の 中 で の 試 行 錯 誤 」 と主 に個 人 の レベ ル で の努 力 が 占め て お り,社 会 的 サ ポ ー トが 活 用 され て い な か った 。 これ は助 産 師 が 管理 職 に就 い た場 合,そ れ に伴 う停 滞 へ の対 処 は 主 と して 個 人 的 レベ ル で の 努 力 を期 待 され,組 織 と して の サ ポ ー トが不 十 分 で あ る とい う現 状 を表 して い る と考 え ら れ る。Bridges(1980/1994)は,人 生 に お け る転 機 と移 行 過 程(ト ラ ン ジ シ ョ ン)は,「 何 かが 終 わ る時期 」,「混 乱 と苦 悩 の時 期 」,「新 しい 始 ま りの 時 期 」,を 経 て 進 行 す る と述 べ て い る。 この移 行 過 程(ト ラ ン ジ シ ョン)の 法 則 性 に従 え ば,異 動 や昇 格 と い う変 化 に伴 う停 滞 に個 人 レベ ル で 前 向 き に努 力 す る こ と は 「混 乱 と苦 悩 の 時 期 」 に相 当 し,役 割 に適 応 して い く とい う 「新 し い始 ま りの時 期 」 を迎 え るた め に必 要 な段 階 で あ り,重 要 な 取 り組 み で あ る と考 え られ る。 同 時 に,組 織 的 な取 り組 み と して,助 産 師 が 昇 格 し管 理 職 とな っ た後 の一 定 期 間 の 社 会 的 サ ポ ー トが必 要 で あ る こ とが考 え られ た 。 具 体 的 に は,助 産 師 で す で に管 理 職 に就 い て 時 間 的 経 過 を経 て種 々 の 体 験 を した者 を活 用 した メ ンタ ー シ ッ プや ピ ア・ サ ポー トを組 織 的 サ ポ ー トに組 み 込 んで い く こ と や それ が 不 可 能 な場 合,他 施 設 との 交 流 を含 め て 管 理 職 とな っ た助 産 師 を支 援 して い くシ ス テ ム の 構 築 が 必 要 で あ る と考 え られ る。 以 上 の こ とか ら,キ ャ リア11年 以 降 に助 産 師 が 異 動 や 昇 格 ・昇 進 な どの ジ ョブ ・ロー テ ー シ ョン を体 験 す る際 の 管 理 上 の示 唆 と して,以 下 の こ と が 重 要 と考 え られ た。 す な わ ち,個 人 レベ ル で は ロー テ ー シ ョ ン 前 のRJP(仕 事 の 現 実 を あ りの ま ま に事 前 に知 らせ る こ と)や ラ イ ン ・カ ウ ンセ リング,メ ン タ リン グ(師 に あ た る人 が 面倒 をみ る)な ど を主軸 に した 社 会 的 支 援(ソ ー シ ャル ・ サ ポ ー ト)を 活 用 して,個 別 の対 応 を行 う こ とが 必 要 で あ る と考 え られ る。 また,階 層 別 教 育 と し て は,「 管 理 者 教 育 」 や 「異 動 前 後 の 教 育 」 を ジ ョブ ・ロ ー テ ー シ ョンの タ イ ミン グ に合 う形 で計 画 した り,可 能 で あ れ ば ジ ョブ ・ロ ー テ ー シ ョ ン の 内容 を共 通 に す る 者 を 集 め て,「 集 合 教 育 」 や 「小 集 団 活 動 」 を計 画 ・展 開 す る こ とが 有 効 で あ る と考 え られ た。 2.停 滞 に対 す る対 処 法 1)前 向 き な取 り組 み 対 象 者 は停 滞 に対 して,「 自己 学 習 ・自己 啓発 」, 「生 活 構 造 のバ ラ ンス 調 整 」,「実践 の 積 み重 ね」, 「変 化 また は安 定 の 選 択 」 な どの 前 向 き な 取 り組 み に よっ て対 処 して い た 。 これ ら の意 欲 的 で 向上 心 に満 ち た対 処 法 は,田 尾(1996)の 述 べ た キ ャ リア発 達 に お け る プ ラ トー(高 原 状 態)を 打 破 し た り遅 らせ る方 法 と も一 致 して い る。 この よ うな 前 向 きな取 り組 み が で き る か ど うか と い う こ とに は,元 々 のパ ー ソナ リテ ィの影 響 が 大 きい と思 わ れ るが,こ の点 に関 し て は,今 後 さ ら に助 産 師 の 仕 事 の 継 続 や仕 事 にお け る行 動 とパ ー ソナ リテ ィ 特 性 との関 連 を検 討 す る研 究 が 必 要 で あ る と考 え られ る。 2)思 考 や 発 想 の転 換 対 象 者 は停 滞 に対 して,「 肯 定 的 思 考 」,「試 行 錯誤 後 の 発 想 転 換 」 な どの 思 考 や 発 想 の転 換 に よ っ て 対 処 し て い た 。Covey(1989/1998)は,病 気 や 災 害 に よ り物 事 の優 先順 位 が 変 わ る と きや, 新 しい 役 割 を引 き受 け る と き に多 くの 人 が 基 本 的 な考 え方 の 転 換 を経 験 す る と述 べ て い る。 本 研 究 の対 象 者 も人 間 関 係 に お け る停 滞 や 異 動,昇 格 と い う変 化 に際 し て同 様 の体 験 を して い た 。 この よ う な 思 考 や 発 想 の 転 機 に つ い て は 田 尾(1996) も,「 見 方 の 変 更 や 工 夫 」 を 含 む モ チ ベ ー シ ョ ン の 自 己 管 理 が プ ラ トー打 破 の手 段 とな る と述 べ て い る 。 3)社 会 的 サ ポ ー トの 活 用 対 象者 は停 滞 に対 して,「 良 き相 談 者 ・支援 者 」 と して卒 業校 の 教 員 や 上 司,医 師 な ど に相 談 した り,「 ネ ッ トワー キ ン グ」 に よ っ て 同 じ助 産 師 や 消 費 者 との活 動 を通 し て停 滞 を打 破 して いた 。 こ れ らは い ず れ も職 業 的 発 達 に必 要 な 社 会 的 サ ポー トで あ る と考 え られ た 。 職 業 的発 達 に対 す る社 会 的 サ ポ ー ト に つ い て は,LaRocco,House& Frenc(1980)が,職 務 ス トレス に対 す る上 司 や 同 僚 か ら の サ ポ ー トの 肯 定 的 影 響 を 述 べ,田 尾 (1996)は モ チ ベ ー シ ョ ン を 自己 管 理 す る 方 法 の 1つ と して 「ネ ッ トワー キ ング 」 の 重 要 性 を示 唆 し て い る。Bridges(1980/1994)は,職 業 生 活 な い し人 間 関 係 で 重 大 な トラ ン ジ シ ョン を経 験 し て い る と きに は 話 し相 手 が必 要 で あ り,ア ドバ イ 76 日本助 産 学 会誌 第16巻 第2号(2003.2)

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病 院勤 務 助産 師 の キ ャ リア開 発 に関 す る研 究 ス を も ら う こ と よ り も自分 の ジ レ ンマ や 感情 を表 現 す る こ との ほ うが 大 切 で あ る と述 べ て い る。 本 研 究 の対 象者 も相 談 者 ・支 援者 との 話 し合 い や 共 同作 業 を通 じて,自 分 に何 が起 こっ て い るか を十 分 理 解 し,体 験 の 意 味 を見 い だ した 結 果,停 滞 を 打 破 で きた もの と考 え られ た 。 4)受 動 的 な研 修 参 加 本研 究 対 象 者 の 中 に,「 責 任 の重 さ」 に対 して, 「勧 め られ て 逃 げ る よ うに研修 に出 た」 とい う口述 が1件 認 め られ た 。Nicholson&West(1988) は,異 動 や 昇 格 な どの変 化 が 仕 事 を どの よ う に変 え るか とい う こ と を 「ト ラ ン ジ シ ョ ン ・サ イ ク ル ・モ デ ル 」 に よっ て 提 示 し,そ の 中 で 変 化 に遭 遇 した とき の 不 適 応 の 反 応 と し て,「 恐 怖 」,「嫌 気 」,「準 備 不 足 」,「シ ョッ ク」,「拒 絶 」,「不 平 」 な ど を挙 げ て お り,「逃 避 」 も不 適 応 反 応 に 含 ま れ る と考 え られ る。 勧 め られ て 研 修 を受 け る こ と は単 な る逃 避 とは言 い難 いが,こ の よ うな ケ ー ス に対 す るサ ポー ト ・シ ス テ ム の構 築 が 今 後 の課 題 で あ る と思 わ れ る。

V結

職 場 にお い て 自己 啓 発 の も とに十 分 に能 力 を発 揮 し えた と思 わ れ る助 産 師 は,キ ャ リア5年 ご ろ まで に は停 滞 の 自覚 が なか った 。 また,キ ャ リア5∼11年 ご ろ に 「ラ イ フ イベ ン トに伴 う進 路 上 の悩 み」,「責 任 の 重 さ」,「業 務 や 仕事 に対 す る 自信 の な さ,不 十 分 感 」 とい う 「家 族 ・自己 ・職 業 とい う生 活 構 造 に お け る役 割 に関 す る停 滞 」 を体 験 して い た。 また この 時 期 に は, 変 革 を試 み た ときの 「周 囲 か らの 否 定 的 フ ィー ド バ ック 」,「活 動 の 場 を変 えて 新 た に見 えて くる業 務 や 仕事 上 の 限 界 」 を体 験 して いた 。 この よ う な 「家 族 ・自己 ・職 業 とい う生 活 構 造 にお け る役 割 に 関 す る停 滞 」 は個 人 的 な 要 素 が 強 く,そ れ を円 滑 に乗 り越 え させ るた め に は職 場 で の 「個 人 的 状 況 を よ り考 慮 した 指 導 や 援助 」 や コ ミュニ ケ ー シ ョ ンの 円滑 化 が 求 め られ る。 さ ら に,キ ャ リア11年 以 降 に 「立 場 が 変 化 す る 時 の 不 安 ・苦 労 」 や 「昇 格 に伴 う役 割 不 全感 」 な ど ジ ョ ブ ・ロ ー テ ー シ ョ ンに伴 う停 滞 を体験 して い た 。 これ ら に対 して は,ロ ー テ ー シ ョ ン前 の RJP(仕 事 の 現 実 を あ りの ま ま に事 前 に知 らせ る こ と)や ラ イ ン ・カ ウ ンセ リン グ,メ ン タ リン グ (師 に あ た る人 が 面 倒 を み る)な ど を主 軸 に し た 個 別 の対 応 や,ジ ョブ ・ロー テー シ ョ ンの タイ ミ ン グや 内容 を考 慮 した 「集 合 教 育 」 や 「小 集 団 活 動 」 が 効 果 的 で あ る と考 え られ る。 最 後 に,こ れ らの助 産 師 の キ ャ リア に お け る停 滞 の 内容 や それ らを打 破 した 方 略 は,経 験 年 数 に 応 じて停 滞 の時 期 と内容 を予知 した 対 策 を講 じ る な ど,病 院 助 産 師 の現 任 教 育 に活 用 で き る と考 え られ た 。

VI研

究の限界 と今後 の課題

本 研 究 で 明 らか に な っ た職 業 的発 達 上 の 停 滞 の 内 容 や それ らを打 破 した方 略 は,職 場 にお いて 自 己 啓 発 の も とに十 分 に能 力 を発 揮 し えた と思 わ れ る助 産 師 か ら得 られ た結 果 で あ る とい う限 界 を有 して い る。 また,こ れ らは社 会 的 要 因 や対 象 の パ ー ソナ リテ ィが 影 響 した可 能 性 も考 え られ るが, 今 回 は その 影 響 につ い て は言 及 で きな い 。 その た め,現 在 の 新 卒 助 産 師 の教 育 に この結 果 を適 用 す るた め に は,年 齢 層 や 職 位,職 場 で の役 割 な ど を 限 定 した 上 で前 向 きの デ ザ イ ン を検 討 す る必 要 が あ る と考 え られ る。 謝 辞 本 研 究 を 行 う に 当 た り,快 くイ ン タ ビ ュ ー に 応 じ て くだ さ っ た助 産 師 の 皆 様 に深 く感 謝 い た し ます 。 な お本 研 究 の 一 部 は,第12回 日本 助 産 学 会 学 術 集 会 に お い て 発 表 した 。 引 用 文 献 1)Bridges,W.(1980)/倉 光 修 ・小 林 哲 朗 訳(1994), 「ト ラ ン ジ シ ョ ン ー 人 生 の 転 機 」,15-38,東 京,創 元 社. 2)Collett,P.&Furnham,A.(1995)/長 田 雅 喜,平 林 進 訳(2001),仕 事 の 社 会 心 理 学(初 版),199-217, 京 都,ナ カ ニ シ ヤ 出 版. 3)Covey,S.R(1989)/ジ ェ ー ム ス ・J・ ス キ ナ ー,川 西 茂 訳(1998),7つ の 習 慣 初 版 第39刷,24, 東 京,キ ン グ ベ ア ー 出 版. 4)井 上 富 雄(1993),従 業 員 の 業 務 力 向 上 を 促 す も の ・ 阻 む もの"教 育 に 飽 和 点 な し"の 思 想 と体 制 を,日 本 実 業 出 版 社(第3刷),職 階 別 ・職 能 別 社 員 教 育 ・研

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修 の 考 え 方 と 実 際,84-87,東 京,日 本 実 業 出 版 社. 5)金 井 尋 宏(1997),キ ャ リア ・デ ザ イ ン 論 へ の 切 り ロ

ー 節 目 の デ ザ イ ン と し て の キ ャ リア ・プ ラ ン ニ ン グ の

す す め,ビ ジ ネ ス ・イ ンサ イ ト,5(1),34-55,現 代 経 営 学 研 究 学 会.

6) Katz, R. (1980), Time and Work : Toward an Integrative Perspective, in B. M. Staw & L. L. Cummings (Eds.), Research in Organizational

Behavior (pp.2, 116), Greenwich, Connecticut : JAI Press. 7)菊 池 章 夫,堀 毛 一 也(1994),社 会 的 ス キ ル の 心 理 学 100の リ ス ト と そ の 理 論,217-241,東 京,川 島 書 店. 8)木 村 千 里,松 岡 恵,平 澤 美 恵 子,熊 澤 美 奈 好,佐 々 木 和 子(2002),病 院 勤 務 助 産 師 の キ ャ リ ア 開 発 に 関 す る 研 究-能 力 開 発 に 焦 点 を あ て て 一,日 本 助 産 学 会 誌,16(1),5-14.

9) LaRocco, J. M., House, J. S., Frenc, Jr. J. R. P. (1980). Social support, occupational stress, and health, Journal of Health and Social Behavior,

21, 202-218. 10) Levinson, D. J. (1978)/“씎–ó(1992), ƒ‰ƒCƒtƒTƒCƒNƒ‹‚Ì•S—•Šw , 144-163, 11)松 本 卓 三,熊 谷 信 順(1995),職 業 ・人 事 心 理 学 初 版 第2刷,68-71,京 都,ナ カ ニ シ ヤ 出 版. 12)松 岡 恵,平 澤 美 恵 子,佐 々 木 和 子,熊 沢 美 奈 好,新 道 幸 恵,内 藤 洋 子(1994),卒 後 満5年 ま で の 助 産 婦 が 受 け る ソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト と バ ー ン ア ウ ト症 状 の 関 連,日 本 助 産 学 会 誌,8(1),23-31. 13)中 野 卓,桜 井 厚(1995),ラ イ フ ヒ ス ト リ ー の 社 会 学 初 版 第1刷,201-203,東 京,弘 文 堂.

14) Nicholson, N., West, M. (1988). Managerial job change: men and women in transition, Cambridge

university nress. 1-20.

15)Schein,E.H.(1978)/二 村 敏 子,三 善 勝 代 訳(1991), キ ャ リア ・ダ イ ナ ミ ク ス,38-50,東 京,白 桃 書 房. 16)田 尾 雅 夫(1996),モ チ ベ ー シ ョ ン 入 門,173-179,東

京,日 本 経 済 新 聞 社.

17) Terborg, J. T. (1977), Women in management ; A research review, Journal of Applied Psychology, 62, 647-664.

18) Tichy, N. M,Devanna, M. A.(1986)/小 林 薫 (1988),現 状 変 革 型 リ ー ダ ー 変 化 ・イ ノ ベ ー シ ョ ン ・ 企 業 家 精 神 へ の 挑 戦,79-85,東 京,ダ イ ヤ モ ン ド社.

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