J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 12, No. 2, pp. 45-55, 1999. 1
原
著
自然 流 産 を経 験 した 女 性 の ソー シ ャル サ ポ ー トを
測 定 す る質 問紙 の作 成(第1報)
-ソーシャルサポー
トの下位概念の検討-Development
of the Social
Support
Scale
for Women
Who Miscarried
(Part 1)
— Analysis of the Concept of Social Support —
田母神
裕
美
(Yumi TAMOGAMI)
要 約 本 研 究 で は,自 然 流産 を経験 した 女性 の ソー シ ャル サ ポ ー トを測 定 す る質 問 紙 を作 成 す る た め の第 一 段 階 と して,ソ ー シ ャル サ ポ ー トの 下位 概 念 を検 討 した 。 本 研 究 で はHouseが ソー シ ャル サ ポ ー トの 機 能 に関 して提 示 して い る枠 組 み(「 情 緒 的援 助 」,「評 価 的 援 助 」,「手 段 的 援 助 」,「情 報 的援 助」)を も とに演 繹 的 に概 念 枠 組 み を設 定 した。 自然 流 産 を経 験 した 女性 へ の 半構 成 的 イ ン タ ビ ュー(N=17)を 行 い,得 られ た デー タ を 内容 分 析 し た 結 果,ソ ー シ ャ ル サ ポ ー トの 下位 概 念 を 「自然 流産 の経 験 に対 す る情 緒 的 支 援 」,「身 体 的 安 楽 を保 っ た めの 手 段 の提 供 」,「自然 流産 の 経 験 に対 処 す る た め の 情 報 の提 供 」 と再 設 定 した 。 この うち,「 自然 流 産 の 経 験 に対 す る情 緒 的支 援」 に 含 まれ るカ テ ゴ リー で あ る 「プ ライ バ シー を尊 重 す る こ と」 は,自 然 流 産 な どの 喪 失 を経 験 した女 性 に特 有 の サ ポ ー トで あ る と思 わ れ た. 本 研 究 で 得 られ た デ ー タ か ら,ソ ー シ ャル サ ポ ー トの下 位 概 念 は互 い に独 立 した もの で は な く,相 互 に重 な り合 う部 分 が あ る こ とが 示 唆 され た。 キ ー ワー ド ソー シ ャ ルサ ポ ー ト,自 然 流産,妊 娠 初 期 の喪 失 AbstractThe purpose of this study was to clarify the concept of social support for women who miscarried.
The framework of this study was based on the model of House (1981) that formulated the four types of social support function (emotional support, appraisal support, instrumental sup-port and informational support).
The data were gatherd using the semi-structured interviews with 17 women who miscar-ried.
*日本 赤 十字 社 医療 セ ンタ ー (Japanese Red Cross Medical Center)
自然流 産 を経 験 した女 性 の ソー シャル サ ポ ー トを測 定 す る質 問紙 の作 成(第1報)
Content analysis conducted showed there could be three categories as social support "Giv-ing emotional support for the experience of miscarriage", "Giving means to keep physical comfort", and "Giving information to cope with the experience of miscarriage". "Paying respect to privacy", sub-category of the emotional support, is the peculiar support for women who experience loss like miscarriage.
The data suggested that three categories were not separated clearly, but overlapped each other.
Key Words social support, miscarriage, early pregnancy loss
I緒
言
1.は じめ に 自 然 流 産 は,全 妊 娠 の 約10%か ら15%に み ら れ1),2),産 婦 人 科 領 域 で は よ く遭 遇 す る症 候 で あ る。 妊 婦 は妊 娠 初 期 か ら胎 児 との 絆 を築 き始 め る が,自 然 流 産 に よ る妊 娠 の 突 然 の 終 結 は,女 性 に とっ て危 機 的状 況 を もた らす 出 来 事 で あ る。 自然 流 産 を経 験 した 女 性 の 心 理 的 側 面 に関 す る 研 究 は,米 国 で は1980年 代 か ら3)∼6),日本 で は 1990年 代 に な っ て行 わ れ 始 め た7)∼11)。こ う し た 研 究 に お い て 自然 流 産 後2週 間 の 女 性 に は,臨 床 的 に明 らか な抑 欝 状 態 を呈 して い る者 が 正 常 な経 過 の妊 婦 の3.4倍 とい う高 率 で あ った こ とが 指 摘 され て お り12),13),ケア 提 供 の 必 要 性 が 指 摘 され て い る。 一 方 ,自 然 流 産 を経 験 した 女性 の ケ ア の 現 状 に 目 を転 じ る と,自 然 流 産 の場 合 の 入 院 期 間 は非 常 に短 く,看 護 者 が ケ ア を提 供 す る場 面 は限 られ て い る。 この た め,対 象 者 が看 護 者 や 周 囲 の 人 び と に どの よ うな か か わ りを求 め て い るの か とい う こ とは十 分 に 把握 され て い な い。 これ まで に,自 然 流 産 を経 験 した女 性 の 悲 嘆 に は,対 象者 を取 り巻 くソ ー シ ャル サ ポ ー トが 関 係 して い る とい う研 究 結 果 が 報 告 され て い る14),15)。 しか し,こ れ らの研 究 で は,自 然 流 産 を経 験 した 女 性 に とっ て の ソー シ ャル サ ポー トは十 分 に概 念 化 され て お らず,質 問紙 の 信 頼 性,妥 当性 は検 討 され て い な い。 ソー シ ャ ル サ ポ ー トに 関 して は,看 護 学 の領 域 に お い て も信 頼 性,妥 当性 の 検 討 され た質 問紙 が 作 成 さ れ て きた16)∼20)。し か し,こ れ らの 研 究 の 対 象 に は 自然 流産 な どの喪 失 を経 験 した 女 性 は ほ とん ど含 まれ て い な い。 また,ソ ー シ ャル サ ポ ー トに つ い て の 理 論 を構 築 したHouse21)は,特 定 の 問 題 や,あ る状 況 に置 か れ て い る人 に 関 係 が 深 い サ ポー トで あ る と指 摘 し て い る。 この た め,今 回,自 然 流 産 を経 験 した女 性 の ソ ー シ ャル サ ポ ー トを測 定 す る質 問 紙 を作 成 し,信 頼 性,妥 当性 の検 討 を行 った 。 こ こで は,研 究 の 第 一 段 階 と して,ソ ー シ ャル サ ポ ー トの下 位 概 念 に つ い て 検 討 した の で報 告 す る。 2.研 究 目的 自然 流 産 を経 験 した女 性 に とっ て の ソー シ ャ ル サ ポ ー トの 概 念 を明 らか に す る。 3.用 語 の 操 作 的 定 義 1)自 然 流 産:妊 娠13週 未 満 の 自 然 流産 。 2)自 然 流 産 を経 験 した女 性:妊 娠13週 未 満 の 自 然 流産 を経 験 した 女 性 。 3)ソ ー シ ャル サ ポー ト:自 然 流 産 を経 験 した 女 性 が,悲 しみ や 将 来 の 妊 娠 に対 す る不安 な ど悲 嘆 の過 程 をた ど っ て い る時 に周 囲 か ら得 られ る と認 知 す る援 助 。 4.概 念 枠 組 み 本 研 究 の 概 念 枠 組 み は,Houseの ソ ー シ ャル サ ポ ー トに 関 す る理 論 に基 づ い て作 成 した 。 Houseは,社 会 学 的 な視 点 か ら ソ ー シ ャ ル サ ポ ー トに 関 す る理 論 を構 築 した 。Tilden22)は, Houseが ソー シ ャ ル サ ポ ー トの 構 造 化 を 行 っ た 点,そ して,こ れ まで の 理 論 家 が行 った 定 義 を再 定 義 した 点 に お い てHouseは 多 大 な貢 献 を し て い る,と 述 べ て い る。自然 流 産 を経 験 した女 性 の ソー シ ャル サ ポー トを測定 す る質 問 紙 の作 成(第1報) HouseはCobb, Kahn&Antonucciら が 行 っ た 定 義 を再検 討 し,ソ ー シ ャル サ ポ ー トの機 能 を 以 下 の4つ の 下 位 概 念 か ら構 成 され る と し,ソ ー シ ャル サ ポー トは対 人 的相 互 作 用 にお け る これ ら 4つ の サ ポ ー トの や り と りで あ る と定 義 した 。 1)情 緒 的 サ ポ ー ト:共 感,ケ ア リン グ,愛 情, 信 頼,関 心,傾 聴 2)評 価 的 サ ポ ー ト:肯 定,フ ィー ドバ ック,社 会 的 評 価 な どの 自 己 評 価 に 関 連 した 情 報 の 提 供 。 3)手 段 的 サ ポ ー ト:物 資,金 銭,労 働 力,時 間,環 境 の調 整 な ど,問 題 に直 接 働 きか け る手 段 の提 供 。 4>情 緒 的 サ ポ ー ト:ア ドバ イ ス,示 唆,指 示 等 個 人 的 問題 や 環境 か ら派 生 し て い る問 題 に対 処 す る た め の情 報 の 提 供 。 本 研 究 で は,Houseが ソー シ ャ ル サ ポ ー トに 関 して,包 括 的 な 枠 組 み を提 示 して い る と考 え, まず この4つ の 下 位 概 念 を も とに,演 繹 的 に 自然 流産 を経 験 した 女性 の ソー シ ャル サ ポー トの概 念 枠組 み を設 定 し,そ の 後,帰 納 的 に得 られ た デー タ を概 念 枠 組 み を も とに内 容 分 析 し,自 然 流 産 を 経験 した女 性 に と って,具 体 的 に どの よ うなサ ポ ー トが求 め られ て い るの か を明 らか にす る こ と と した。 Houseの 提 示 して い る ソー シ ャ ル サ ポ ー トの 機 能 を検 討 し,本 研 究 で は 自然 流 産 を経 験 した 女 性 に対 す る ソー シ ャル サ ポ ー ト とし て,以 下 の3 つ の 下 位 概 念 を仮 定 的 に 設 定 した 。Houseが 提 示 し て い る 「評 価 的 援 助 」 は,Houseも 述 べ て い る よ うに,他 の サ ポ ー ト と重 複 し て い る部 分 が 大 き い と考 え,本 研 究 で は この 援 助 は含 め なか っ た。 ① 自然 流 産 の経 験 に対 す る情 緒 的 援 助 ② 自然 流 産 の経 験 に 関連 して 必 要 と な った 手 段 の 提 供 ③ 自然 流 産 の 経 験 に 関連 した 個人 的,一 般 的 情 報 の 提供 また,こ れ らの 下 位 概 念 の 定義 と具 体 的 な 内 容 の 記述 は,デ ー タ収 集 を通 して行 う こ と と した 。 II研 究 方 法 1.研 究対 象 1)1996年5月 中旬 か ら7月 上 旬 に東 京 都 内 のA 総 合 病 院 で 自然 流産 を診 断 され,子 宮 内容 除 去 術 を受 け た女 性,13名 。 2)東 京 都 内 のA総 合 病 院 に入 院 中 の 褥 婦 で過 去 3年 以 内 に 自然 流産 の既 往 が あ る女 性 で,今 回 の分 娩,産 褥 の経 過 が 良好 で あ る対 象,4名 。 上 記 の対 象 は,自 然 流 産 後 間 もな い 女 性 と,あ る期 間 を経 過 して い る女 性 の両 面 か ら幅 広 い コ メ ン トを得 る こ とを 目 的 に設 定 した 。 2.研 究 期 間 1996年5月 中旬 か ら8月 中旬 。 3.研 究 方 法 上 記1)の 対 象 者 の入 院 中 の ケ ア に参 加 し,対 象 者 の退 院 後1週 間 か ら5週 間 の 間 に 半構 成 的 な イ ン タ ビ ュ ー を一 度 行 っ た。 上 記2)の 対 象 に は 産 褥5日 目 か ら7日 目 の間 に イ ンタ ビ ュー を一 度 行 った 。 イ ン タ ビ ュ ー の 内容 は対 象者 の 同 意 を得 て,テ ー プ に録 音 した。 デ ー タ の分 析 は,イ ン タ ビュー の 内容 を逐 語 的 に お こ し,ソ ー シ ャル サ ポ ー トの機 能 的 側 面 に関 して の対 象 者 の コメ ン トを コ ー ド化 し,本 研 究 の概 念 枠 組 み に基 づ い て カ テ ゴ リー化 した 。 分 析 は,指 導 者 の ス ーパ ーバ イ ズ を 受 けな が ら デー タ の解 釈 に合 意 を み る まで行 っ た。 4.倫 理 的 配 慮 自然 流 産 の経 験 後 間 もな い対 象 に も研 究 へ の 協 力 を依 頼 す る た め,研 究 者 が 対 象 者 の入 院 中 の ケ アの 一 部 に参 加 し,対 象 者 との信 頼 関係 を築 い た う えで 研 究 へ の協 力 を求 め た。 研 究 の 過 程 に お い て,対 象 者 に は 口頭 お よ び書 面 にて 研 究 の 趣 旨 お よ び,研 究 へ の協 力 は診 療 に は関 係 が な い こ と,い つ で も参 加 を中 止 で き る こ とを説 明 した 。 また,イ ンタ ビ ュー はA病 院 内 の 個 室 で 行 い,プ ラ イバ シ ー の配 慮 に 努 めた 。 日本 助産 学 会 誌 第12巻 第2号(1999.1) 47
自然 流産 を経 験 した女 性 の ソー シ ャルサ ポ ー トを測 定 す る質 問 紙 の作 成(第1報) III 研 究 結 果 1.対 象 者 の 背 景(表1) 17名 の対 象 者 全 員 か ら研 究 へ の 協 力 が 得 られ た。 対 象 者 の 年 齢 は25歳 か ら41歳 で あ り,平 均 33,6歳(SD=3.95)だ っ た 。 職 業 は 主 婦 が9名 (52.9%),有 職 者 が8名(47.1%)で あ る。 対 象 者 は す べ て 既 婚 者 で,核 家 族 世 帯 が16名(94.1 %),親 族 世 帯 が1名(5.9%)だ っ た 。 既 往 の 自然 流 産 は,今 回 の 自然 流産 を含 め,1 回 が14名(82.4%),2回 が3名(17.6%)で あ っ た。 対 象 者 の う ち,自 然 流 産 を経 験 した 時 点 で 子 ど もが い た対 象 者 は8名(47.1%)で あ っ た 。 また,不 妊 治療 後 の 妊 娠 で あ っ た対 象 者 は い な か っ た。 自然 流 産 の経 過 につ い て は,性 器 出血 や腹 痛 な どの 自覚 症 状 が あ り入 院,手 術 とな っ た対 象者 が 11名(64.7%),外 来 受 診 時 に超 音 波 検 査 で 自 然 流 産 の診 断 を受 け,自 覚 症状 が な く入 院 とな っ た 対 象 者 が6名(35.3%)で あ った 。 2.ソ ー シ ャル サ ポ ー トの 下 位 概 念 概 念 枠 組 み で設 定 した3つ の ソー シ ャル サ ポ ー トに関 して,表2の よ う に分 類 され る内 容 が 得 ら れ た 。 これ を も とに ソー シ ャル サ ポー ト とし て以 下 の3つ を再 設 定 し,定 義 を した 。 3つ の ソー シ ャ ル サ ポ ー トの 機 能 の う ち,「 身 体 的 安 楽 を保 つ た め の手 段 の提 供 」,「自然 流 産 の 経 験 に対 処 す る た め の情 報 の提 供 」 に は,ソ ー シ ャル サ ポ ー トの 機 能 だ け で な く,そ の サ ポ ー トが 得 や す い もの か,あ る い は 必 要 に 見 合 っ た もの か,と い うそ れ ぞ れ の 機 能 に対 す る対 象者 の評 価 的側 面 も含 まれ て いた 。 1)自 然 流 産 の経 験 に対 す る情 緒 的支 援 この下 位 概 念 は 「自然 流 産 の経 験 の もつ意 味 を 理 解 し,対 象 者 が 悲 嘆 の 過 程 を た どる上 で経 験 し て い る さ まざ まな感 情 に対 し て配 慮 す る こ と」 と 定 義 した 。 また,こ の 下 位概 念 に は以 下 の2つ の カ テ ゴ リー が 含 まれ る と考 えた 。 ① 自然 流 産 の 経 験 に伴 う感 情 を共 有 す る こ と この カ テ ゴ リー は,「 自 然 流 産 の 経 験 に 際 して 対 象 者 が 抱 い て い る思 い を だ れ か と分 か ち合 い た い とい う ニ ー ズ を理 解 し,実 際 に 対 象 者 に働 きか け る こ と,ま た は 非 言 語 的 に,こ う した 感 情 を共 有 す る こ と」 と定 義 した 。 対 象 者 とサ ポ ー ト提 供 者 が 感 情 を共 有 す る場 面 は,周 囲 の 者 が 対 象者 に必 ず し も慰 め の 言 葉 な ど を か けな く と も,対 象者 が サ ポ ー ト提 供 者 の 行 動 や態 度 を通 し て認 知 す る場 合 も あ っ た。 対 象 者1は 退 院 後 の 夫 の 様 子 に つ い て,「 男 だ か らプ ラ イ ドも あ る か ら見 せ な い よ うに して るん で し ょ う け ど,傷 つ い て る とか,ど う し て も感 じ る部 分 っ て あ り ま す よ ね 」 と述 べ,夫 の 態 度 か ら,夫 が 自分 と同 じ よ うに傷 つ き,自 分 の 「苦 し み をわ か っ て くれ て い る」,「わ が こ との よ う に思 って くれ て い る」 と感 じ た とい う。 この よ う に, サ ポー ト提 供 者 が対 象 者 の <気 持 ち を くみ 取 る こ と> は,夫 や両 親 との 間,あ る い は看 護 者,自 然 流 産 の 経 験 の あ る友 人 との 間 で 見 い だ され る こ と が 多 か った 。 しか し,対 象 者 の 何 人 か は 「女 で な い とわ か ら な い」,「 同 じ経 験 を した 人 で な い と わ か らな い」 と も話 して お り,こ の サ ポ ー トは, だ れ が 提 供 す る か とい う こ とで は な く,自 然 流 産 の 経験 が 対 象 者 に とっ て もつ 意 味 をサ ポー ト提 供 者 が認 識 して い る か否 か とい う こ とが 重 要 な鍵 と な っ て い た 。 また 一 方 で は,自 然 流 産 の経 験 を想 起 し た り, 会 話 を通 し,対 象 者 とサ ポ ー ト提 供 者 が 感 情 を共 有 す る こ とが あ った 。 これ に は,サ ポ ー ト提 供 者 が 対 象者 を 「励 ます こ と」,「い た わ りの 言 葉 を か け る こ と」 な どの く思 いや りの気 持 ち を表 す 〉 こ とや,対 象 者 が どの よ う な 経 験 を した か とい う 「話 を聴 く こ と」,「お互 い の気 持 ち を語 り合 う こ と」 に よ っ て 自然 流 産 の経 験 に伴 う 〈感 情 の表 出 を可 能 に す る こ と 〉が 含 まれ て い た 。 対 象 者11は 自然 流 産 の経 験 の あ る友 人 に つ い て,「 私 も流 産 に な っ ち ゃ っ た っ て い っ た ら,あ らゆ る面 で 慰 め の 言 葉 が 全 面 に あ って 『厄 落 と し と思 え ば い い じ ゃ な い」 っ て,結 構 慰 め られ て ね 」 と述 べ て い る。 これ らの サ ポ ー トも,自 然 流 産 の 経 験 の あ る 友 人 や 夫,両 親 な どか ら提 供 され る こ とが 多 か っ た 。 しか し,対 象 者1は,職 場 の 上 司 が 自分 の妻 も 自然 流 産 の経 験 が あ る こ とに ふ れ,い た わ りの 言 葉 を か け て くれ た こ とに つ い て,「 思 い が け な
自然 流産 を経験 した 女性 の ソー シ ャルサ ポ ー トを測 定 す る質 問紙 の作 成(第1報)
表1対 象 者 の背景
自然 流産 を経験 した女 性 の ソー シャル サ ポ ー トを測 定 す る質 問 紙 の作 成(第1報) 表2自 然流 産 を経 験 した女性 のソ ー シ ャル サ ポー トの下位 概 念 お よび カテ ゴ リー い こ とだ った 」 とい い な が ら も非 常 に肯 定 的 に受 け止 めて いた 。 ② プ ライ バ シー を尊 重 す る こ と この カ テ ゴ リー は 「自然 流産 とい う経 験 に際 し て,周 囲 の 人 た ち の か か わ りや 言 動 に よ っ て対 象 者 が 悲 しみ,自 責 感,怒 りな どの感 情 が 喚 起 され る こ と を理 解 し,対 象 者 の 『一 人 で い た い』 とい うニ ー ズ を尊 重 す る こ と」 と定 義 した 。 入 院 中 や 退 院 後 の外 来 受 診 で 対 象 者 は,妊 婦 と 接 した り新 生 児 を 目 に す る こ とで 悲 嘆 が喚 起 され る こ とが 多 か っ た。 対 象 者 は,こ れ に 関 して 「一 人 の 時 間 が あ る こ と」,「人 に気 兼 ね な く過 ごせ る こ と」 な ど の周 囲 の配 慮 を求 め て い た。 また,プ ラ イバ シ ー を尊 重 す る こ と は,義 理 の 両 親,知 人 との 関係 で 述 べ られ る こ と もあ った 。 対 象 者13は 「主人 とか,主 人 の母 とか も 『今 回 が
自然 流産 を経験 した女 性 の ソー シャ ルサ ポ ー トを測 定 す る質 問紙 の作 成(第1報) だ め だか らっ て プ レ ッ シ ャー に感 じな くて い い の よ」 な ん て い っ て た の が プ レ ッ シ ャ ー だ っ た3と 述 べ て い る。 多 くの対 象 者 が,自 然 流 産 の 原 因 を 「重 い荷 物 を持 っ た 」 な ど 自分 自身 が 行 っ た 行 為 に 結 び 付 け て 自責 感 を有 し て い た 。 また,「 自 分 は不 良 品 で あ る」 と述 べ,子 ど もを産 め な か った こ とに よ って 女 性 とし て の 自尊 心 を脅 か され て い る対 象 者 もい た 。 対 象 者 の多 くは 周 囲 の者 の か か わ りに よ って,時 に は こ う した感 情 が 喚起 され る こ とが 理 解 され る こ とを望 み,周 囲 の 者 が か か わ りを もつ よ り も,む しろ か か わ りを控 え,見 守 っ て い くこ とを求 め て い た。 ここで は,義 理 の両 親 や 同 室 の妊 婦 な ど との 関 係 で は,対 象 者 とか か わ り を控 え る とい う意 味 で 述 べ られ る こ とが 多 か っ た が,医 療 関 係 者 につ い て は,対 象 者 が 入 院 す る部 屋 や 外 来 受 診 の 際 の 環 境 を調 整 す る こ と,夫 な どの 身 内 の 者 に対 して は 義 理 の両 親 や 知 人 の対 象 者 へ の か か わ りを調 整 す る とい う よ うに,調 整 役 と して位 置 づ けて い た 。 2)身 体 的 安 楽 を保 つ た め の 手 段 の 提 供 この下 位 概 念 は 「自 然 流産 に伴 う症 状 に対 し, そ の緩 和 の た め の援 助 ・手段 を講 じた り,対 象 者 が安 楽 に過 ごせ る よ う に,対 象 者 の 日常 的 に行 う 行 為 を代 行 す る こ と。 また,そ の 援 助 を対 象 者 の 必 要 に応 じて提 供 す る こ と」 と定 義 した 。 この下 位 概 念 に は,「 体 に つ らい 所 が あ る 時 に 手 当 て を す る こ と」 の よ う に痛 み な どの く症 状 を 軽 減 す る こ と〉 や,対 象 者 が 手術 の 直 後 に食 事 や 排 泄 な どの行 為 を 自分 自身 で 行 う こ とが で き な い 場 合,「 対 象者 に付 き添 い」,助 けた り,退 院 後, 家 事 や 育 児 な ど の く対 象 者 の 行 為 を 代 行 す る こ と〉,職 場 で の仕 事 に 関 す る調 整 を行 う こ とな ど が 含 まれ て い た。 〈症状 を軽 減 す る こ と〉 は,入 院 中 の 看 護 者 や 付 き添 って いた 夫,家 族 との 関 係 で 述 べ られ る こ とが 多 か った 。 前 述 の よ う に,対 象 者 の うち11名 が 性 器 出 血 や 下腹 痛 な どの 自覚 症 状 を伴 っ て い た が,対 象 者13 は,そ う した 症 状 が あ っ た と きの 看護 者 の ケ ア に 関 して以 下 の よ う に述 べ た。 r腰 を さ す っ て くだ さ っ て る方 が い て,あ の, 肩 を た た い て くれ た り手 を 握 っ て くれ た り,な ん か それ が 力 強 か っ た で す。 た だ,な ん か ぽ ん と放 っ て お か れ た ん じ ゃ な か っ た っ て い う ん で す か (中略),た ぶ ん,皆 さ ん普 通 に 自然 な形 で そ うい う動 作 を し て くだ さ っ た と思 うん で す け ど(中 略 〉 す ご く,痛 み強 い ん で す け ど,ほ ん と うに さ す って も らうだ け で も薄 れ て い くとか,そ うい う の あ るん で す か?」 他 の 対 象 者 も,上 記 の よ う な 看 護 者 の援 助 を 「手 当 て 」 と表 現 し,こ う した か か わ りに よ っ て 症 状 が 軽 減 され た と表 現 して い る。 また,対 象 者 に こ う した症 状 が あ っ た 際 に迅 速 に医 師 との 連 絡 を と り処 置 を す る こ とや,手 術 後 の 対 象 者 の状 態 を頻 繁 に診 に く る こ とな ど,「 身 体 的 な状 態 を適 切 に診 断 す る こ と」 も含 まれ て い た 。 前 述 の 対 象 者13の コ メ ン トで は,看 護 者 の か か わ りに よ って 対 象 者 が 「力 強 か っ た」,「放 って お か れ た ん じ ゃ な い と思 っ た」 と述 べ て お り,対 象 者 が 周 囲 の 者 の 手 段 的 な サ ポ ー トを通 して情 緒 的 サ ポー トを も感 じて い る こ とを示 して い る。対 象 者 は,看 護 者 や 家 族 の 手 段 的 サ ポ ー トに よっ て 安 心 感 を得 た り,あ る い は そ う した サ ポ ー トが十 分 に得 られ な い こ とに よ っ て悲 しみ や孤 独 感 を感 じ て い る。 ま た,手 術 後 の体 調 に つ い て は 多 くの 対 象 者 が,体 調 が 元 に戻 る まで に は数 日を要 した,と 述 べ て い る。 す で に子 ど もの い る対 象者 で は育 児 や 家 事 が 負 担 で あ る と感 じ,有 職 者 の場 合 に は職 場 との 関 係 で 十 分 な休 暇 を とれ る か ど うか とい う こ とが 問 題 とな っ て いた 。 こ う した時 に 周 囲 の者 が 〈対 象 者 の 行 為 を代 行 〉 し,対 象 者 が 「ゆ っ く り 休 め る よ う にす る」,「横 に な っ て い られ る よ う に す る」 こ とが 求 め られ て い た。 このサ ポー トに関 す る評 価 的側 面 に つ い て は, 「気 兼 ね な く手 段 が 得 られ る こ と」,「い つ で も得 られ る こ と」 とい う〈手 段 が得 や す い こ と〉が 挙 げ られ た 。 これ らの評 価 的 側 面 に 関 して,対 象 者 6は,退 院 後 自宅 に戻 る と 「夫 は 何 もで き な い の で 動 い て し ま う」,対 象 者9は,実 母 も有 職 者 で あ る こ とか ら 「2人 の子 ど も を24時 間 任 せ る こ と はで き な い」 と述 べ,経 産 婦 や有 職 者 の場 合,安 楽 を保 つた め の手 段 が十 分 に は得 られ な い と述 べ る こ と もあ っ た。 日本 助 産学 会 誌 第12巻 第2号(1999.1) 51
自然 流産 を経験 した 女性 の ソー シ ャル サ ポー トを測 定 す る質 問紙 の作 成(第1報) 3)自 然 流 産 の経 験 に対 処 す る た め の情 報 の 提 供 こ の下 位 概 念 は,「 今 回 の 自 然 流 産 の経 験 を現 実 的 に と ら え,次 回 の 妊 娠 に関 して の 見 通 し を立 て る た め に必 要 な情 報 を提 供 す る こ と。 また,そ の情 報 が信 頼 に足 る こ と」 と定 義 した 。 情 報 の提 供 に は,以 下 の4つ の 内容 が 含 まれ て い た。 ① 身 体 的 な状 態 に関 す る情 報 の提 供 これ は,対 象 者 が 自然 流産 を診 断 され る以 前 に 腹 痛 が あ った り,あ る い は,退 院 後 に性 器 出 血 が 増 量 した 場 合 に,そ れ に どの よ う に対 処 す れ ば い い か とい う こ とに関 連 した 内 容 で あ る。 対 象 者1は 出血 な どの症 状 が あ った 時 に,十 分 な情 報 が 得 られ ず と ま ど った状 況 につ い て,以 下 の よ う に述 べ て い る。 「土 曜 日だ った ん で,(病 院 が)休 み の 日 だ っ た ん で す ね,午 後 だ っ た ん で あ わ て て電 話 した ん で す け ど来 な くて もい い とか っ て いわ れ ち ゃ っ た ん で,ど う し よ うっ て … … それ を もう ち ょっ と こ う し て て くだ さ い とか っ て(中 略),こ う い う状 態 で 安 静 に して て くだ さい とか っ て い っ て い た だ け れ ば よ か っ た ん じ ゃな い か っ て思 い ます」 ま た,こ の カ テ ゴ リー に は 「自然 流 産 後 の夫 婦 生 活 を い つ か ら再 開 して い い か」,「避 妊 は どの よ うに行 っ た らい い か 」 とい う よ うな プ ラ イベ ー ト な 内容 も含 まれ て い た 。 対 象 者 の 多 くは,こ の種 の 内容 に 関 して は医 療 関 係 者 に情 報 を求 め る こ と に た め らい を感 じて お り,自 ら情 報 を求 め る とい うよ り も,自 分 な りの 解 釈 を して い る こ とが 多 か っ た。 情 報 の提 供 に関 し て は,そ の情 報 源 が 医 師,看 護 者,自 然 流産 を経 験 した こ との あ る友 人 な ど, 非 常 に 限 られ て お り,ま た,対 象者 の 入 院 期 間 が 1日 か ら2日 と短 く,サ ポ ー トを提 供 す る者 との 接 点 が少 な い こ とか ら,い つ で も,必 要 な 時 に情 報 が 得 られ るわ けで は な い,と 指 摘 す る こ とが 多 か っ た。 ② 自然 流 産 の 原 因 に関 す る情 報 の提 供 これ は,お も に対 象 者 の 自責 感 や 次 回 の 妊 娠 予 後 との 関係 で 表 出 され て い た。 対 象 者7は 以 下 の よ うに述 べ て い る。 「自分 の して た こ との 何 か,自 分 が い け な か っ た こ とが 何 か … 私,今 回 す ご く反 省 して た の は,ダ イ エ ッ ト… … そ う い うの が 影 響 す るの か と か,そ う い う の っ て,わ か ん な い で す よ ね 」 こ う した対 象 者 の 自 責 感 は,「 妊 娠 を知 っ た と きに妊 娠 の 継 続 を迷 った こ と」,「激 しい運 動 を し た こ と」 な どさ ま ざ ま な形 で表 現 され た。 対 象者 の 多 くが 初 め て の 自然 流 産 の経 験 で あ り,医 師 や 看 護 者 か ら,自 然 流 産 は偶 発 的 な 理 由 に よ る こ と が 多 い,と い う説 明 を聞 い た り,自 然 流 産 を経 験 した こ との あ る友 人 か ら 「流 産 は2回 目 まで は大 丈 夫 み た い 」 とい う情 報 を受 け て,自 分 に原 因 が あ る の で は な い と納 得 し て い る こ とが 多 か っ た。 しか し なが ら,2回 目の 自然 流 産 の 経 験 を した 35歳 の対 象 者 は,自 然 流 産 の 原 因 は偶 発 的 な もの が 多 い とい う説 明 に対 し て,以 下 の よ う に述 べ て い る。 「原 因 が ち ょっ とよ くわ か らな い ん だ け ど,わ か らな い の か も しれ な い け ど,原 因 の 説 明 が 欲 し い(中 略),1回 目だ っ た ら軽 くそ うい う説 明 で, じゃ あ 大 当 た りか な っ て 感 じ だ っ た ん で す け ど, 1年 に2回 だ っ た か ら結 構 き つ い か な,年 も い っ て る か ら,こ う い う こ と を い っ ち ゃ い け な い け ど,21歳 とか,22歳 とか で 流 産 した ん だ った らこ こ まで ず き っ と こな か った か も しれ な い」 そ の情 報 が 対 象 者 に と っ て 有 効 で あ る か 否 か は,得 られ た情 報 が 対 象 者 が 〈納 得 で き る 〉 もの で あ るか,そ の情 報 に よ っ て次 回 の妊 娠 の 継 続 が 保 証 され る か否 か と い う点 に あ る。 この 点 に お い て,対 象 者 が必 要 とす る情 報 は,年 齢 や 既 往 の 自 然 流 産,妊 娠 の 受 け止 め な どの個 人 的 要 因 に関 連 し,質 が 異 な っ て い た 。 ③ 失 っ た胎 児 に 関 す る情 報 の提 供 胎 児 に 関 す る情 報 に つ い て は,3名 の対 象者 だ けが 述 べ て い た 。 こ の うち2名 は対 象 者 自 身 の希 望 に よっ て,手 術 後 に胎 児,あ る い は子 宮 内容 物 を 自分 の 目 で 確 認 す る こ とが で き た 対 象 者 で あ る。 この 対 象 者 は 自 分 の 目 で 確 認 す る こ と に よ っ て,自 然 流 産 とな っ た こ と を 「納 得 で きた 」 と話 して い る。 しか し,他 の 自然 流 産 を経 験 した 女 性 が胎 児 や 子 宮 内容 物 を 自分 の 目 で確 認 す る こ とに 関 し て は,「 私 は よ か っ た けれ ど,思 い 出 して 悲 し くな るか も しれ な い か ら,他 の 人 に は どう な の か わ か ら な い」 と述 べ て い た。
自然流 産 を経 験 した女 性 の ソー シャル サ ポー トを測 定 す る質問 紙 の作 成(第1報) 胎 児 に関 す る情 報 に つ い て 述 べ た もう一 人 の対 象 者 は,子 宮 内容 除 去 術 後 に胎 児,あ る い は 内容 物 が どの よ う に処 理 さ れ る の か,「 捨 て られ て し ま うの で はか わ い そ う」 と研 究 者 に尋 ね て い た。 胎 児 に関 す る情 報 は,対 象 者 が 自然 流 産 が 自分 自身 に起 こ っ た とい う事 実 を納 得 し,児 との別 れ をす る う えで 必 要 な情 報 で あ る よ う に思 わ れ た。 しか し,こ の点 に 関 して 今 回 の対 象 者 か ら得 られ た コ メ ン トは少 な く,さ ら に長 期 的 な視 点 で多 く の 対 象 者 か らの情 報 を得 て い く必 要 が あ る と思 わ れ た 。 ④ 次 回 の 妊 娠 に関 す る情 報 の 提供 こ こ に は 「次 に妊 娠 した 時 に流 産 す る可 能 性 は どれ く らい あ る の か 」,「次 の妊 娠 はい つ ご ろ計 画 した らい い のか 」,「次 に妊 娠 した と き に,日 常 生 活 で どん な こ とに注 意 した らい い の か」 な どの 内 容 が 含 まれ て い た 。 これ に 関 して も,対 象 者 は 「流 産 につ い て 書 い て あ る本 を探 して もな か な か 見 つ か ら なか っ た」 と述 べ て お り,対 象者 に と っ て,必 要 な情 報 を得 る場 が非 常 に 限 られ て い る こ とが 示 され て い る。 また,次 回 の妊 娠 に 関 す る情 報 は,自 然 流 産 の原 因 に 関 す る情 報 と同様 に,こ う した情 報 が 対 象 者 の 自責 感 を軽 減 し,次 回 の妊 娠 を保 証 す る もの で あ る た め に必 要 と され て い る と思 わ れ た 。 IV考 察 1.ソ ー シ ャ ル サ ポ ー トの 機 能 的 側 面 につ い て 本 研 究 で は,Houseの 枠 組 み を も と に,ソ ー シ ャル サ ポ ー トの機 能 的 な側 面 を設 定 した 。 帰 納 的 デ ー タ収 集 に よ っ て 得 ら れ た 内 容 は,House が 提 示 した ソー シ ャル サ ポー トの 機 能 に ほ ぼ該 当 す る もの で あ っ た が,自 然 流 産 の 経 験 に対 す る情 緒 的 支 援 に含 まれ る 〈プ ライ バ シー を尊 重 す る こ と 〉 は,自 然 流 産 な どに よ り悲嘆 の 過 程 をた ど っ て い る対 象 者 に特 有 な サ ポ ー トで あ る と思 わ れ る。 既 存 の ソー シ ャル サ ポ ー トを測 定 す る質 問紙 に お い て も,こ の カ テ ゴ リー に含 まれ る よ うな 「状 況 に よ っ て は対 象 者 との か か わ りを あ え て差 し控 え る」 とい う側 面 は 含 まれ て い な い。 Gorer23)は,近 親 者 との死 別 を経 験 した 人 が, 死 別 後 に 「一 人 で い た い とい う欲 求 」 を も っ て い る,と 述 べ て い るが,本 研 究 で行 っ た イ ン タ ビ ュ ー の結 果 か ら は,対 象 者 は配 偶 者 や実 の両 親,あ る い は 「身 内 の 者 」,「家 族 」 に 対 し て は,<プ ラ イバ シー を尊 重 す る こ と 〉 に関 して対 象 者 と周 囲 の人 び との 間 に立 ち,対 象 者 の プ ラ イバ シ ー が守 られ る環 境 を調 整 して い くとい う役 割 を期 待 し, 義 理 の両 親 や友 人 な どに対 して は 自然 流 産 の経 験 か ら間 もな い時 期 に は,対 象者 との か か わ りを差 し控 え て対 象 者 を見 守 る と い う 役 割 を求 め て お り,対 象 者 とサ ポ ー ト提 供 者 の 関係 性 に よ って 位 置 づ けが 微 妙 に異 な っ て い る こ とが 明 らか とな っ た 。 さ ら に,〈 プ ラ イバ シ ー を尊 重 す る こ と 〉は 単 に対 象 者 が 一 人 で い る こ とや 無 関 心 で い る こ とで は な く,対 象 者 が この サ ポ ー トを通 して,自 分 の 感 情 が 尊 重 され,理 解 され て い る と感 じて い る こ と を意 味 して い る。 その た め,こ う した 関係 に基 づ か な い か か わ りは対 象 者 か らサ ポ ー トと して認 知 され て い な か った 。 対 象 者 の 多 くが 自然 流 産 の 経 験 に つ い てrこ う い う こ と は男 の人 に はわ か ら な い」,「流 産 の経 験 の な い人 に は わ か らな い」 と述 べ,こ れ ま で の サ ポ ー ト提 供 者 が 流産 の 経験 に際 して 必 ず し もサ ポ ー ト提 供 者 とな る とは 限 らな い と述 べ て いた。 こ の こ とか ら,サ ポ ー ト と し て 認 知 さ れ るた め に は,対 象者 との これ まで の 関係 ば か りで な く,サ ポ ー ト提 供 者 が 対 象者 の 「気持 ち をわ か る」 こ と や 「気 持 ち を よ む」 こ と,あ るい は対 象 者 の 経 験 を 「わ が こ との よ うに思 う」 とい う,対 象 者 と気 持 ちが 通 じ合 う こ と,〈 気 持 ち を くみ 取 る こ と〉 が 基 本 的 に重 要 な の で は な い か と考 えた 。 南 は16)∼18),日本 的 観 念 で あ る 「甘 え」 を も と に 「甘 え ネ ッ トワ ー ク 質 問 紙 」 を作 成 した 。 南 は,甘 えの 関 係 に お い て は個 人 が他 者 との 間 に一 体 化 願 望 を有 す る と述 べ て い る。 南 は,こ の 自己 と他 者 との 「一 体 化 願 望 」 の 要 素 と して,「 身 体 的 接 近 」,「情 緒 的 接 近 」,「結 合 性」,「自己 の 打 ち 明 け」 の4つ を提 示 して い る。 本 研 究 で 〈気 持 ち を くみ 取 る〉 と した もの は 南 が 述 べ た 要 素 の う ち,感 情 の 一 体感 を表 す 「情 緒 的接 近」 や,関 係 へ の 自己投 機体 験 を意 味 す る 「結 合 性 」 に近 い の で はな い か と考 え る。 日本助 産 学会 誌 第12巻 第2号(1999.1) 53
自然流 産 を経 験 した女 性 の ソー シャル サ ポー トを測 定 す る質 問紙 の作 成(第1報) Houseは ソ ー シ ャ ル サ ポ ー トの 構 成 要 素 の 中 で,情 緒 的 支 援 が 最 も重 要 で あ る と述 べ て い る が,本 研 究 で 得 られ た結 果 か らは,情 緒 的 支 援 の うち,対 象 者 の 気 持 ち を感 じ取 る こ と,く み取 る こ とが 特 に重 要 な要 素 な の で は な い か と考 え る、 2.ソ ー シ ャル サ ポ ー トの 下位 概 念 間 の 関 係 対 象 者 は,例 え ば,看 護 者 が痛 み の 手 当 て な ど を行 う こ とを通 し て,「 安 心 した 」,「心 強 か っ た 」 と述 べ て お り,サ ポ ー ト提 供 者 の手 段 的 な 支 援 を 通 して情 緒 的 支 援 を も感 じ取 っ て い た 。 こ う した 対 象者 の コ メ ン トは,看 護 者 に 関 す る もの だ けで な く,夫 や 家 族 の 支 援 に関 す る もの も含 まれ て い た。 ソー シ ャル サ ポー トの構 成 要素 に関 して は,ソ ー シ ャル サ ポー トを測 定 す る質 問紙 の 開発 過 程 に お い て,因 子 分 析 の 結 果,因 子 の単 純 構 造 が 得 ら れ て い る もの24)と,単 純 構 造 を示 し て い な い も の25)∼26)が報 告 さ れ て い る。 こ う し た 統 計 的 な 結 果 か ら は,ソ ー シ ャル サ ポ ー トの下 位 概 念 は互 い に独 立 した もの で は な く,互 い に複 雑 に重 な り合 う もの で あ る こ と も推 論 で き る。 今 後,本 研 究 で 得 られ た ソー シ ャル サ ポ ー トの下 位 概 念 間 の 関 係 に つ い て,統 計 的 に もデ ー タ を得 て分 析 を行 い, 検 討 して い く必 要 が あ る と思 わ れ る。 V結 論 1.帰 納 的 デ ー タ 収 集 と内 容 妥 当 性 の 検 討 の 結 果,自 然 流 産 を経 験 した女 性 の ソー シ ャル サ ポ ー トは 「自然 流 産 の 経 験 に対 す る情 緒 的 支 援 」, 「身 体 的安 楽 を保 つ た め の手 段 の 提 供 」,「自 然 流 産 の経 験 に対 処 す る た め の情 報 の提 供 」 の3 つ の下 位 概 念 に よ っ て構 成 され て い た。 2.本 研 究 で設 定 した 「プ ラ イバ シー を尊 重 す る こ と」 に 含 まれ る内 容 は,こ れ まで の ソー シ ャ ル サ ポ ー トを測 定 す る質 問 紙 に は含 まれ て お ら ず,自 然 流産 な どの 喪 失 を経 験 した対 象 に特 有 の もの で あ った 。 3.ソ ー シ ャル サ ポ ー トの下 位 概 念 は互 い に独 立 し て い る もの で はな く,相 互 に 関連 した もの で あ る と思 わ れ るが,こ れ に関 して は,今 後 さ ら に検 証 して い く必 要 が あ る。 謝 辞 本研 究 の実施 に あた り,イ ンタ ビュ ー,質 問 紙 へ の 回答 に ご協 力 くだ さ い ま した皆 様,協 力施 設 の関 係 者 の 皆様,ま た,研 究 を ご指 導 くだ さ い ま した 日 本 赤 十 字看 護 大 学母 性 看 護 学教 授,平 澤 美 恵子 先 生 に深謝 いた します。 な お本 研 究 は,日 本 赤 十字 看 護 大学 修 士 論 文 の 一 部 で あ り,第12回 日本 助 産学 会学 術 集会 で 発表 した。 引用 ・参考文献 1) 青 木 耕 治:治 療 の ス ト ラ テ ジ ー,臨 床 婦 人 科 産 科, 50(5),668-672,1996. 2) 桑 原 慶 紀,藤 井 知 行,水 野 正 彦:妊 娠 予 後 一 流 産 に 関 す る 統 計,予 測 法,産 婦 人 科 の 世 界,42(5)3-6,1990. 3 ) Swanson-Kauffman, K.M.: Caring in the instance
of unexpected early pregnancy loss, Topics in
Clinical Nursing, 8 (2) , 37-46,1983.
4) Swanson-Kauffman, K.: The unborn one : A file of the human experience of miscarriage,
published Doctoral Dissetation, 1983.
5) Potvin, L., Lasker, J., & Toedter, L.: Measuring Grief : A short version of the perinatal grief
scale, Journal of Psychopathology and
al Assessment, 11 (1) , 29-45,1989.
6) Bansen, S.S., & Stevens, H. A.: Women's ences of miscarriage in early pregnancy, Journal
of Nurse-Midwifery, 37 (2) , 84-90,1992. 7) 松 下 美 恵,野 口 眞 弓,水 野 金 一 郎,他:自 然 流 産 を経 験 し た 女 性 の 心 理 過 程 の 分 析 と そ の ケ ア シ ス テ ム に つ い て の 検 討-自 然 流 産 を 経 験 し た 女 性 が 周 囲 の 人 た ち の 望 む こ と-,愛 知 母 性 衛 生 学,10,63-68,1992. 8) 松 下 美 恵,加 藤 高 枝,池 田 玉 味,他:自 然 流 産 を 経 験 した 女 性 の 心 理 過 程 の 分 析-自 然 流 産 後 に お け る 悲 嘆 の 反 応 に つ い て-,母 性 衛 生,35(2),187-192,1994. 9) 松 下 美 恵,加 藤 高 枝,池 田 玉 味,他:自 然 流 産 を 経 験 した 女 性 の 心 理 過 程 の 分 析-悲 嘆 反 応 に お け る 怒 り ・ 不 信 ・非 難 の 感 情 に つ い て の 分 析 と考 察,母 性 衛 生, 35(4),278-283,1994. 10) 松 下 美 恵,池 田 玉 味,他:自 然 流 産 を経 験 し た 女 性 の 心 理 過 程 の 分 析 一 心 理 環 境 因 子 と し て の 家 族 の 重 要 性 に つ い て,母 性 衛 生,36(4),449-454,1995. 11) 交 野 好 子,杉 下 知 子:自 然 流 産 後 の 悲 嘆 過 程,母 性 衛 生,35(1),90-96,1994.
12) Neubebauer, R., Kline, J., O'Connor, P. et. al.: minants of depressive symptoms in the early
weeks after miscarriage, American Journal of
Public Health, 82 (10), 1332-1339, 1992.
13) Neubebauer, R., Kline, J., O'Connor, P. et. al. : pressive symptoms in women in the six month
after miscarriage, American Journal of
rics and Gynecology, 166, 104-109, 1992.
14) Lake, M., Knuppel, R.A., Murphy, J. et. al. : The role of grief support team following stillbirth,
American Journal of Obstetrics and Gynecology,
自然 流産 を経験 した女 性 の ソー シ ャル サ ポー トを測 定 す る質問 紙 の作 成(第1報) 146(8), 887-881,1983.
15) Madden,M,E.:The variety of emotionai reactions to miscarriage, Women & Health, 21, 85-101, 1994 . 16) 南 裕 子:甘 え ネ ッ トワ ー ク 質 問 紙 の 作 成 と検 定-そ の 1-,看 護 研 究,19(2), 67-78, 1986. 17) 南 裕 子:甘 え ネ ッ トワ ー ク 質 問 紙 の 作 成 と検 定-そ の 2-,看 護 研 究, 19(4), 59-69, 1986. 18) 南 裕 子:甘 え ネ ッ トワ ー ク 質 問 紙 の 作 成 と検 定-そ の 3-,看 護 研 究, 20(3), 36-53, 1987. 19) 南 裕 子:「Norbechソ ー シ ャ ル サ ポ ー ト質 問 紙 」 の 日 本 語 版 の 作 成 過 程,看 護 研 究, 17(3), 11-13, 1984. 20) 筒 井 真 優 美:日 本 語 版Personal Resourse
Question-naire 85(JpRQ85)Part2の 妥 当 性 と信 頼 性 の 検 討, 日本 看 護 科 学 学 会 誌, 15(1), 38-44, 1995.
21) House,J.S.:Work stress and sociail suppart, Addison-Wesley, 1981. 22) Tilden, V.P.:(1985).羽 山 由 美 子 監 訳,看 護 理 論 構 築 に お け る ソー シ ャ ル サ ポ ー トの 概 念 化 お よ び 測 定 に 関 す る 若 干 の 論 点 に つ い て,看 護 研 究,20(2),32-41, 1987. 23) Gorer,G:(1965).宇 都 宮 輝 夫 訳,死 と 悲 し み の 社 会 学,ヨ ル ダ ン 社,1986. 24) 嶋 信 宏:大 学 生 の ソ ー シ ャ ル サ ポ ー トネ ッ トワ ー ク の 測 定 に 関 す る 研 究,教 育 心 理 学 研 究, 39(4), 440-447, 1991. 25) 森 和 代,堀 野 緑:児 童 の ソ ー シ ャ ル サ ポ ー トに 関 す る 研 究,教 育 心 理 学 研 究,40(4), 402-410, 1992. 26) 和 田 実:大 学 新 入 生 の 心 理 的 要 因 に 及 ぼ す ソ ー シ ャ ル サ ポ ー トの 影 響,教 育 心 理 学 研 究,(40)4,386-393, 1992. 日本 助 産学 会 誌 第12巻 第2号(1999.1) 55