1 .はじめに
従来の平置きされたチップ実装形態に対し,チップを積層 する三次元集積では,図 1 に示すように,LSI の各機能ブロッ クを分割し,TSV(貫通 Si ビア)を介して極めて短い配線で接 続するため,LSI の性能を著しく高めることができるだけで なく,消費電力も大幅に低減できる。チップの周辺部で接続 するワイヤボンディングの単なる代替ではなく,チップ全面 に狭ピッチで貫通 Si ビアを配置して入出力(I/O)のピン数を 大幅に増加させてデータバンド幅を高めることを想定した基 本概念は 1980 年後期に既に提唱されている1)。1980 年代初頭 から研究されているポリ Si のレーザー再結晶化によるモノリ シックな三次元集積2)とは異なり,薄い単結晶 Si ウエハを接 合して高密度貫通配線で接続する現在のマルチシリックな三 次元集積の原点と言える。小柳は 1989 年に TSV を用いた三 次元集積回路の概念を発表するとともに,1995 年に世界初の ポリ Si-TSV(当時は Vertical Buried Interconnection と呼んで いた)の作製に成功している。このポリ Si-TSV では,ポリ Si の抵抗を下げるために,ポリ Si に高濃度に燐をドープし ている。このポリ Si -TSV を用いて Wafer-on-Wafer 積層型の 三次元イメージセンサ(1999 年)3),三次元共有メモリ(2000 年)4),三次元人工網膜チップ(2001 年)5),三次元マイクロ プロセッサ(2002 年)6)を作製して動作検証に成功している。一方,欧州の Siemens と Fraunhofer IFT Munich(現 Fraunhofer EMFT)でも「Cubic Integration-VIC(vertical inter-chip)」(1993 ~ 1996 年)と称する国家プロジェクトの中で W を導体とし て用いた TSV の原型とも言える技術を開発している7)。こ
れらの業績をたたえて,2015 年の 3D ASIP(3D Architectures for Semiconductor Integration and Packaging)Conference で東北 大 学 の 小 柳 と Fraunhofer EMFT の P. Ramm に 3DIC Pioneer Award が授与されている8), 9)。
その後,2006 年頃から TSV という言葉が普及し,この 10 年間,三次元集積化技術に関する研究開発が活発に行われる ようになっている。TSV と言う呼び方はアーカンソー大学 が最初に言い始め,2003 年に,半導体パッケージング最大 の国際会議 ECTC(IEEE Electronic Components and Technology Conference)の発表論文の中で用いている10)。その論文の中で, 新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の「超高密度電子 SI 技術の研究開発」(1999 ~ 2003 年)を実施した ASET(技 術研究組合 超先端電子技術開発機構)の成果を引用し,そこ では Cu を使った貫通 Si ビアのことを Through Via と表現し ている11)。「スルービア(スルーホール)」とはプリント基板
半導体ウエハへの三次元配線加工:TSV と狭ピッチ電極を中心に
福島 誉史
a,b,c,李 康旭
b,田中 徹
a,d,小柳 光正
b a東北大学 大学院工学研究科 機械機能創成専攻(〒 980︲8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6︲6︲01) b東北大学 未来科学技術共同研究センター(〒 980︲8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6︲6︲10) c カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA), 電気工学専攻(420 Westwood Plaza, Los Angeles, CA 90095, USA)d東北大学 大学院医学研究科 医工学専攻(〒 980︲8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6︲6︲12)
3D Interconnect Technologies Based on TSV and Fine-Pitch Electrode
Takafumi FUKUSHIMA
a,b,c, Kang-Wook LEE
b, Tetsu TANAKA
a,dand Mitsumasa KOYANAGI
ba Dept. of Mechanical Systems Engineering, Tohoku University(6-6-01 Aza-Aoba, Aramaki, Aoba-ku, Sendai-shi, Miyagi 980-8579) b New Industry Creation Hatchery Center(NICHe), Tohoku University(6-6-10 Aza-Aoba, Aramaki, Aoba-ku, Sendai-shi, Miyagi 980-8579) c University of California, Los Angeles (UCLA), Electrical Engineering Department (420 Westwood Plaza, Los Angeles, CA 90095, USA) d Dept. of Biomechanical Engineering, Tohoku University(6-6-12 Aza-Aoba, Aramaki, Aoba-ku, Sendai-shi, Miyagi 980-8579)
Keywords : TSV, Fine-Pitch Microbump, Direct Bonding, Hybrid Bonding, 3D Integration, FOWLP
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小特集:シリコンウエハの表面処理
半導体ウエハへの三次元配線加工:TSV と狭ピッチ電極を中心に の貫通電極を意味した古くから使用されている用語であり, この由来からも想像できる通り,TSV はパッケージング技 術であるとの認識が当時は高かった。そのため,TSV に関 しても,直径 50 ~ 70 μm という大きな寸法の TSV の開発 が行われていた。しかし,東北大学と Fraunhofer では,大き な寸法の TSV では TSV の寄生容量のために信号の伝搬速度 が低下するとの考えから,TSV 開発の当初(1990 年半ば)か ら直径 1 ~ 2 μm の TSV に焦点を充てて技術の開発を行っ てきた。その後,ITRS の TSV に関するロードマップが発表 さ れ た が,2013 年 版 の ITRS に は,2015 ~ 2018 年 に は Intermediate-level の多層配線で TSV のピッチが 1 ~ 4 μm, グローバル配線で 4 ~ 7 μm になると記述されている12)。情 報量が増えるにしたがって信号線の I/O 数は増大の一途を辿 るため,再配線(RDL)層を介して TSV とそれにつながる微 細な電極は今後ますます狭ピッチ化が進むと思われる。本稿 では,TSV と狭ピッチ電極を合わせて三次元配線と定義し, それらの特徴と技術動向について解説する。
2 .チップ積層形態による分類
三次元積層する対象に着目すると Chip-on-Chip,Chip-on-Wafer,Wafer-on-Wafer などが挙げられるが,紙面の都合上, この分類については他誌を参考にされたい13)。ここでは高 密度三次元配線について述べる前にチップを積層する向きに 焦点を充てて,この分類の特徴について紹介する。図 2 に示 すように,積層形態は,チップのデバイス面(表面)と裏面を 接合した Face-to-Back 積層とでデバイス面同士を接合させた Face-to-Face 積層に分けられる14)。 前者は,メモリの積層で見られる形態であり,最下層のチッ プは Face-down でインターポーザ,およびラミネート基板に フリップチップ実装されているため,積層した TSV を介さ ず信号と電源の供給が行われる。しかし,上層に積層された チップ間では,多重に TSV を介し複雑な配線網を経てアク ティブ領域に対する信号の授受と電源の供給が達成される。 そのため,LSI の消費電力の増大にともない電源配線上に生 じる電流と抵抗の積で表される電圧降下(IR ドロップと呼 ぶ)の影響が無視できないので,この積層形態は比較的低電 力動作の三次元 LSI の積層には有利な形態であると言える。 後者は,プロセッサとメモリの用途に適しており,下層の チップが Face-up でラミネート基板に実装されているため, ラミネート基板から供給される全ての信号と電源が TSV を 介して両チップに供給される。しかし,チップ間の信号伝送 は狭ピッチのμバンプを介して行われる。これによって両 チップ間のレイテンシを減らし,バンド幅を広げることがで きる。当然,この実装形態は 2 つのチップ間の積層に限定さ れ,一方のチップの消費電力が大きく,且つチップ間のレイ テンシを極力低減し,大容量のバンド幅を必要とする用途に 好まれる。 Face-to-Back,および Face-to-Face 積層の両者で言えること であるが,最上層のチップのみヒートシンクが実装可能であ る。ラミネート基板からの熱放出は,全発熱量の 10% 未満 であることを留意したい14)。3 .狭ピッチ電極
3.1 μバンプ接合 μバンプの厳密なサイズの定義は明らかではないが, 100 μm 以上のピッチで半導体チップとラミネート基板を接 続する C4 バンプ(Controlled Collapse Chip Connection)よりも 小さいサイズを一般的にμバンプと呼んでいるように思われ る。この IBM が開発した C4 が電解めっきやスクリーン印 刷で半田バンプを形成して Mass Reflow により接続するのに 対して,μバンプでは電解めっきや真空プロセスで半田バン プ,もしくは Cu ピラー上に半田バンプを形成して熱圧着 (Thermo-Compression Bonding)により半導体チップ同士を接 続する点が大きく異なる。三次元積層したチップをμバンプ 電極で接続するという概念は古くから提案されており1),そ のサイズ/ピッチの微細化は年々進行している。東北大学で 図 2 チップの積層形態:Face-to-Back(上),Face-to-Face(下) 図 3 狭ピッチμバンプ,およびバンプレス接合技術解 説 は三次元集積のためのμバンプの作製と接合を 1995 年に報 告し15),実デバイスチップに搭載して動作させることに成 功している3)∼6)。技術開発が進み,図 3(a)に示すように, 最小サイズ 2 μm,最小ピッチ 5 μm の In/Au から構成される μバンプを用いて,5M ピクセルの CMOS イメージセンサを 試作している16)。近年ではコストと信頼性の観点から Cu ピ ラー上に薄い Ni 等の拡散防止層を介して Sn 系材料(SAC305 など)を堆積させたμバンプが主流である。10 μm 以下のピッ チで Cu/Sn から構成されるμバンプを接続することは技術的 には可能であるが17), 18),狭ピッチ化が進むにつれて従来の 毛管力によるアンダーフィルが困難となってきている。この 背 景 を 受 け て,NCP(Non-Conductive Paste)や NCF(Non-Conductive Film)などのプレアンダーフィル材の使用が検討 されている。特に NCF はウエハレベルで成膜可能であるため, スループットの向上に大きく貢献できる材料である19), 20)。 3.2 バンプレス接合 μバンプ接合の狭ピッチ化には隣接するバンプ間で半田が 橋架けする問題も懸念されている。そこで半田を使わずに狭 ピッチ電極を接続する研究開発が並行して行われてきた。東 京大学では,真空下でプラズマ活性化することにより 6 μm ピッチで高さ 100 nm 以下の Cu 電極同士を接続することに 成功している20)。このバンプレス接合にアンダーフィルを 適用するのは非常に難しく,微細な空隙を残す点が信頼性の 面で課題ではあるが,以下に述べる狭ピッチのハイブリッド 接合における先駆的な研究である。 ハイブリッド接合は Cu や Au などの金属と SiO2や有機高 分子などの絶縁膜を CMP によって面一に加工し,対向する ウエハの金属同士を原子レベルで接合する手法である。Cu と Sn のような異種材料の拡散により共晶を形成するμバン プ接合とは異なるのでカーケンダルボイドの発生がなく,ア ンダーフィルも必要としないため,次世代の狭ピッチ電極接 続技術として期待されている。Cu 電極と SiO2を用いたハイ ブリッド接合技術に関しては,傘下に半導体パッケージ技術 会社の Invensas 社を有する Tessera 社に 2015 年に買収された Ziptronix 社が得意としており,図 3(b)に示す通り,2 μm 未 満の狭ピッチ Cu/SiO2接合を R&D では実現している22)。 図 3(c)に示すように,Samsung Galaxy S7 に搭載されている Sony 製のカメラモジュールではこのハイブリッド接合が採 用されている23)。パーティクルの管理が厳しく商用には時 間がかかると言われていたが,電極サイズ 3 μm,電極ピッ チ 14 μm のハイブリッド接合が実用化されていることは驚 くべく事実である。他にも日立中研/ ASET は Cu 電極と有 機高分子24),NHK /東京大学は Au 電極と SiO 225)でそれぞ れ TSV デバイス,CMOS イメージセンサの試作を行っている。 ウエハレベルの Cu-Cu ハイブリッド技術では,ダマシン 技術を利用して平坦化した Cu と SiO2を接着剤レスで接合 するが,Cu-CMP では僅かに Cu のディッシングが生じるため, 室温で SiO2を直接接合してからアニールし,Cu 表面の熱膨 張を利用して接合する手法がとられている26)。この制御は 非常に難しく,歩留りの面でさらなる向上が望まれている。 図 3(d)に示すように,東北大学では,Cu-Cu ハイブリッド 接合における CMP のコスト低減と歩留り増大のために,富 士フィルムが開発した直径 60 nm の Cu ナノピラーを内蔵し た異方導電性フィルムをチップ間に挟み込み電気的な接続を 可能とする技術を開発している27)。さらに,潜在的に歩留 りやチップサイズの多様性に課題を抱える Wafer-on-Wafer 接 合を用いず,良品チップを選別して熱圧着する Chip-on-Wafer 接合により,6 μm ピッチの微細な Cu-Cu ハイブリッ ド接合を達成している。
4 .T S V
4.1 TSV 形成技術 冒頭で述べたように TSV という言葉が普及した 2006 年頃 には,TSV に使う導体材料や TSV の形成工程が定まってい なかったように思われる。しかし,2008 年頃にはコスト面 から電解めっきを用いた Cu-TSV が主流になり,TSV 形成技 術もある程度標準的な手法が誕生した。2010 年以降,TSV の信頼性解析や実デバイスを用いた三次元集積,生産性・歩 留りの向上,テスト技術などに研究の主点が移行している。 本章では現在主流となった 2 つの TSV 形成工程についてそ の詳細を述べる。1 つが TSMC 社や Globalfoundries 社などの ファウンドリ(前工程請負)と DRAM メーカーが推進する Via-Middle 工 程 で あ り, も う 1 つ が 後 工 程 請 負 の OSAT (Outsourced Semiconductor Assembly & Test)が中心となって推半導体ウエハへの三次元配線加工:TSV と狭ピッチ電極を中心に 進する Via-Last(バックビア)工程である。両者の典型的な工 程について述べる前に,図 4 に示すように,最近の研究を含 む TSV 形成の標準的な主要素技術について紹介する。 TSV 形成の最初の工程は Si の高異方性エッチングである。 ウエットエッチングでも高い異方性が実現できるようになっ てきているが28),SF 6/C4F8ガスを交互に用いるボッシュエッ チ,もしくは SF6/O2/ フッ化炭素系ガスを用いる非ボッシュ エッチが採用されている29)。前者ではスキャロップと呼ば れる貝殻の表面模様のような数十 nm ~数百 nm の表面荒れ が発生するのに対し,後者ではスキャロップの発生は無いが, ビア開口部にアンダーカットが発生しやすく順テーパ形状に なりやすい。 次いで TSV 絶縁膜(TSV ライナー)形成工程が続く。Via-Middle では 350 ℃以上の高温工程が使えるため,オゾン TEOS(テトラエトキシシラン)-CVD と呼ばれる準常圧熱 CVD により 80%近い高い被覆率(ビア表面に対するビア底 部や側面の膜厚比)で SiO2を成膜できるが,高ストレスの膜 が成長するため厚くすることは難しい。配線の寄生容量の低 減と信頼性の高い絶縁性を確保するにはある程度の厚い絶縁 膜が必要となる。一方,Via-Last ではテンポラリー接着剤の 耐熱温度の制約により 250 ℃以上で成膜することが困難であ るため同じく TEOS と O2をソースとしたプラズマ CVD が 広く利用されている30)。200 ℃以下の低温で成膜可能である が,被覆率が 15%前後と低い。また,TSV の導体材料であ る Cu との CTE ミスマッチ起因で発生する内部応力により Si の移動度が変化するため,KOZ(Keep Out Zone)と呼ばれ るトランジスタを配置できない領域が発生する31)。 東北大学では,気相堆積重合32)やスピンオン33)によるポ リイミドの TSV ライナーの形成に挑戦してきた。前者では 溶剤レスで 350 ℃以上の熱分解開始温度を有するポリイミド を 200 ℃の低温で成膜でき,深さ 300 μm の Si 孔であっても 被覆率は 80%以上を示す。驚くことに,SiO2膜と比べて一 桁以上低い弾性率により応力緩和効果を示すので KOZ が極 めて少ない。後者では真空下で支援してスピン塗布すること により,アスペクト比の高い Si 孔にポリイミドを 35 ~ 65% の高い被覆率で成膜できる。ビア底部の厚さが側壁に対して 厚い点は後述する Via-Last 工程では不利であるが,安価に成 膜できる手法として興味深い。 電解 Cu めっきによる Si 深孔の充填を想定した場合,TSV ライナー形成の次の工程はバリア層とシード層の堆積である。 スパッタリングによりバリア層として Ti34)や Ta35)など,シー ド層として Cu を成膜するのが一般的であるが,PVD(物理 気相堆積)の原理的な限界により被覆率は 10% にも満たない。 したがって,ビア表面に数 μm 堆積させても,底部や底部側 壁に堆積する厚さは数十 nm にも至らない。ビア表面に厚く 堆積させたバリア層とシード層は強い応力によりウエハに大 きな反りを誘発させ,CMP の処理時間を長くする。そのため, CVD36)や ALD(原子層堆積)37)や無電解めっき38)による高被 覆率の成膜手法も検討されている。その後,ボトムアップ型 の電解めっきにより Si 深孔を Cu で埋め込み,最表面のオー バーバーデンを CMP で除去して TSV が形成される。 著者らの技術開発を中心に TSV の微細化技術について紹 介する。TSV のサイズ(直径,深さ,アスペクト比)は用途 により異なる。図 5 から分かるように,PVD バリア層とシー ド層を用いて形成した Cu-TSV の微細化は直径 3 μm,アス ペクト比 10 程度まで可能である。さらに直径を小さく(φ 2 μm 以下),アスペクト比を高く(A.R. 17 以上)するためには, 無電解 Ni めっき被膜をシード層兼バリア層に使用すること で達成できている38)。一方,直径 1 μm 以下,アスペクト比 50 に迫る微細な TSV の形成は,古くから CVD により達成 できることを証明している39), 40)。 4.2 Via-Middle 工程 典型的な Via-Middle 工程を図 6(上)に示す41)。MOS トラ ンジスタを形成し,M1(1 層目のメタル)から Intermediate レ ベルの多層配線を形成してから TSV を形成する。この理由は, M1 と TSV のサイズミスマッチ,および下層の層間絶縁膜に 用いられる Low-k 材料の低い機械的強度が挙げられる。TSV 形成後のアニール処理で Cu が膨張すると,脆弱な Low-k 材 料が損傷する42)。図 7(左)に示す通り,IBM 社では M11 に TSV を接続しているが,彼らはリング状にしたアニュラ 図 5 TSV の微細化と高アスペクト比
解 説 TSV で Cu の体積を減らして低応力化をはかる試みも行って いる43)。 Via-Middle で最も煩雑な工程は,TSV の“底出し”であろ う。前工程の多層配線工程の中で TSV を形成するため,Cu 汚染に対する基準が非常に高い。そのため図 6(上)に示すよ うに,Si 薄化の際に TSV まで露出させず,直前で薄化を停 止してドライエッチング41)で TSV の底出しを行う。TSV の 外周はライナー絶縁膜で追われているため Cu は露出しない が,拡散による Cu 汚染を懸念してバリア効果の高い Si3N4 を低温の CVD で成膜する。その後,SiO2を CVD で堆積さ せた上で Cu-CMP を行って TSV を RDL で接続し,その上に μバンプを形成して上下チップの通信を可能とする。IMEC では,Cu の CMP を行わずに,Si の全面エッチング直後に リソと SiO2のコンタクトエッチを実施して Via-Middle 工程 の簡素化と歩留り向上を狙っている44)。また,ウエットエッ チングにより Si を全面エッチングする方法も検討されてい る45)。 4.3 Via-Last(バックビア)工程 典型的な Via-Last(バックビア)工程を図 6(下)に示す34), 46)。 MOS トランジスタの形成はもちろん,多層配線工程を全て 終えた後,テンポラリー接合からこの工程は開始する。した がって,それ以降の工程は TSV ライナーの形成や Cu のア ニール,さらには半田リフローなどの高温工程を 250 ℃以下 で行う必要がある。図 7(右)に示すように,TSV を上層の メタルではなく M1 と接続することはプロセス面で利点が多 いが,M1 と TSV のサイズミスマッチを考慮して TSV のレ イアウトを設計する必要がある。最も難しいのが Si に続け て M1 下の絶縁膜をドライエッチングする工程である。 300 mm ウエハで歩留りを上げるためには Si をある程度オー バーエッチングし,Si 孔の深さばらつきを克服しなければ ならない。しかし,過度のオーバーエッチングは,エッチン グに作用するイオン成分のチャージアップにより Si と絶縁 膜界面でノッチを発生させる。このノッチは,TSV ライナー やバリア・シード層の被覆率低下を招き,絶縁不良,あるい は導通不良を引き起こす。 TSV の“底抜き”工程も難易度の高い技術である。特に プラズマ CVD で堆積させた TSV ライナーは,TSV の底部 側壁で最も薄くなる。したがって,底部側壁より底部の絶縁 膜が厚くなると選択エッチングで底抜きする際に側面まで エッチングしてしまう恐れがある。M1 に Al 配線を使って いる場合には特に堆積物や酸化も注意しなければならない。 その後,バリア層・シード層の形成とボトムアップ方式の電 解 Cu めっきを行い,最後にアニールと Cu-CMP で TSV 工 程を完了させる。 東北大学では NEDO の「立体構造新機能集積回路(ドリー ムチップ)技術開発」(2008 ~ 2012 年)の中で 10,000 フレー ム/秒で 2 M ピクセルのデジタル・アナログ回路混載のイ メージセンサ(4 種の異種デバイスチップから構成)を Chip-on-Wafer 方式でヘテロ集積し,Via-Last(バックビア)により 直径 5 μm の Cu-TSV で接続したカメラモジュールを試作し た47)。また,CREST(戦略的創造研究推進事業)の研究領域 「ディペンダブル VLSI システムの基盤技術」の研究課題「自 己修復機能を有する 3 次元 VLSI システムの創製」(2009 ~ 2013 年)の中で,バックビア技術により形成した直径 10 μm の Cu-TSV を用い,自己診断・修復機能を有する三次元積層 型画像処理マルチコアプロセッサを動作させることに成功し, TSV に冗長性を装備して高いディペンダビリティ(一般的な 信頼性にとどまらず,一部が壊れても残りの部分で自立的に 自己修復的に動作させる概念)を示した48)。この 2 つの三次 1) TSV・多層配線形成, テンポラリー接合, Siウエハ薄化 2) 全面Siエッチング ガラス支持ウエハ テンポラリー有機接着剤 ガラス支持ウエハ テンポラリー有機接着剤 Si Si Si Si Si Si Si Si 3) Si3N4/SiO2成膜 4) Cu/SiO2-CMP ガラス支持ウエハ テンポラリー有機接着剤 5) 再配線(RDL)・µバンプ形成 絶縁膜SiO2 Cu拡散防止膜Si3O4 絶縁膜 SiO2 Cu拡散防止層 Si Si M10前後とTSVを接続 µバンプ RDL Cuシード層 MOS トランジスタ Si ガラス支持ウエハ テンポラリー接着剤 1) 多層配線形成, テンポラリー接合, Siウェハ薄化 2) Si/M1下絶縁膜の エッチング Si Si 3) TSV絶縁膜形成, 底部絶縁膜の 選択エッチング 4) Cu拡散防止膜と めっき用シード層の堆積 Si 5) Si貫通孔の埋め込み ガラス支持ウエハ テンポラリー接着剤 ガラス支持ウエハ テンポラリー接着剤 ガラス支持ウエハ テンポラリー接着剤 Cu 6) Cu-CMP,アニール, 再配線(RDL)・µバンプ形成 µバンプ RDL Si ガラス支持ウエハ テンポラリー接着剤 M1まで到達する貫通孔 MOS トランジスタ Si ガラス支持ウエハ テンポラリー接着剤 多層配線 図 6 典型的な Via-Middle 工程(上)と Via-Last 工程(下) アニュラ Cu-TSV M11 M13 M12 Low-k 絶縁膜 M1 Cu-TSV Si ノッチ 発生無 M1
図 7 Via-Middle(左)と Via-Last(右)で形成した Cu-TSV の断面 SEM 写真
半導体ウエハへの三次元配線加工:TSV と狭ピッチ電極を中心に 元積層デバイスは,車載用の自動運転システムに必須の構成 要素として期待できる。 Sony 製のカメラモジュールでイメージセンサチップとロ ジック回路チップを CMP された SiO2同士の直接接合で形成 した技術も Via-Last(バックビア)方式と言える(図 8)。この 技術では直接接合した後に数μm の非常に薄い Si 層を介して 下層のロジック回路と上層のピクセル回路をピッチ 3 μm の 微細な TSV を介して接続している49)。
5 .おわりに
本稿では,狭ピッチ電極と TSV を三次元配線と定義し, 両技術の特徴と研究開発動向を解説した。両技術に焦点を充 て た 国 際 会 議 は 多 く,ECTC,3D ASIP,3DIC(IEEE International 3D Systems Integration Conference),SSDM (International Conference on Solid State Devices and Materials)の Area 2: Interconnect などで情報が入手できる。半導体の殿堂 と言われる IEDM(IEEE International Electron Devices Meeting) や ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)で も 狭 ピッチ電極や TSV を使った三次元デバイスに関する発表件 数が増えるであろう。ここ 5 年間を振り返って見ると,信頼 性解析に関する研究が多く,歩留りを含めた生産性の向上に も関心が寄せられている。TSV のコストが問題視されてい る一方で,最近特に注目されているのが FOWLP(Fan-Out Wafer-Level Packaging)である。図 9 にその工程を示す。樹脂 で構成されたウエハに良品チップ(KGD)を内蔵し,μバンプ を使わずにウエハレベルでチップ外に RDL を拡張でき(信号 線のピン数を増大でき),その上に C4 バンプを直接搭載可 能なので,従来のフリップチップと比べると配線の微細化に も有利である。また,μバンプ/アンダーフィルのパッケー ジ工程を削減できるので,性能面では TSV に劣るもののコ スト面で大きな利点があるため脚光を浴びている。特に TSMC 社がスマートフォン用途に独自に開発しているアプリ ケーションプロセッサとメモリパッケージを集積化した InFO(Integrated Fan-Out)技術には目が離せない状況である50)。 従来のパッケージング技術では困難な L/S(Line&Space) 2/2 μm 以下の高密度配線の形成がウエハレベルでは可能と なる。図 10 を見て分かる通り,Si 技術ではテクノロジーノー ドがこの数十年間で 1/1,000 に微細化されたのに対し,パッ ケージ技術では 1/4 程度である51)。ここに伸びしろがあると 見て FOWLP のような Si 技術と融合させた先端パッケージ 技術の研究開発が推進される一方,ラミネート基板を使わず にオール Si で高集積化しようとする研究も米国では進めら れている51)。今後の動向に引き続き注目したい。 謝 辞 本稿で紹介した研究の一部は三次元スーパーチップ LSI 試 作製造拠点(GINTI: Global INTegration Initiative)で行われた。 関係各位のご協力に感謝する。また,微細 TSV 形成のため の無電解めっき技術の開発にご協力いただいたメルテックス 株式会社の渡口 繁,谷口和子,下田隆博 氏に感謝する。 併せて,本稿を作成するにあたりご助言をいただいた UCLA Electrical Engineering Department の Distinguished Chancellor's Prof. Subramanian S. Iyer に感謝の意を表する。(Received June 13, 2016)
文 献
₁ )M. Koyanagi ; Proc. 8th Symposium on Future Electron Devices, 55 (1989).
₂ )S. Kawamura, N. Sasaki, T. Iwai, M. Nakano, M. Takagi ; IEEE
5 µm ~3 µm Si (CMOSイメージセンサ) Si (ロジック) カラーフィルタとマイクロレンズ層 ピクセル領域 ペリへラル領域 ピクセル ロジック ロジック ロジック 直接接合界面 TSV
(Through Silicon Vias)
図 8 狭ピッチ TSV 形成のための直接接合技術 図 9 RDL-Last による典型的な FOWLP 工程 テ ク ノ ロ ジ ー ノ ー ド (n m ) 年 Si技術 パッケージ技術 図 10 Si 技術とパッケージ技術における配線寸法の推移
解 説
Electron Device Lett., 4, 366(1983).
₃ )H. Kurino, K. W. Lee, T. Nakamura, K. Sakuma, H. Hashimoto, K. T. Park, N. Miyakawa, H. Shimazutsu, K. Y. Kim, K. Inamura, M. Koyanagi ; Tech. Dig. IEDM, 879(1999).
₄ )K. W. Lee, T. Nakamura, T. Ono, Y. Yamada, T. Mizukusa, H. Hashimoto, K. T. Park, H. Kurino, M. Koyanagi ; Tech. Dig. IEDM, 165(2000).
₅ )M. Koyanagi, Y. Nakagawa, K.-W. Lee, T. Nakamura, Y. Yamada, K. Inamura, K.-T. Park, H. Kurino ; Proc. 48th ISSCC, 270(2001). ₆ )T. Ono, T. Mizukusa, T. Nakamura, Y. Yamada, Y. Igarashi, T.
Morooka, H. Kurino, M. Koyanagi ; Proc. COOL Chips, 186(2002). ₇ )P. Ramm, D. Bollmann, R. Braun, R. Buchner, U. Cao-Minh, M.
Engelhardt, G. Errmann, T. Grassl, K. Hieber, H. Hubner ; Microelectronic Engineering, 37/38, 39(1997).
₈ )M. Koyanagi ; Proc. 3D ASIP(2015). ₉ )P. Ramm ; Proc. 3D ASIP(2015).
10)S. Spiesshoefer, L. Schaper ; Proc. 53rd ECTC, 631(2003). 11)K. Takahashi, M. Hoshino, H. Yonemura, M. Tomisaka, M. Sunohara,
M. Tanioka, T. Sato, K. Kojima, H. Terao ; Proc. 51st ECTC, 541 (2001).
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