函数論(
2014
年度前期)
川口 周 京都大学理学研究科数学教室 2014年度前期の函数論(全学共通科目,2回生,理系向け)の配布資料をまとめたものです.見つけた誤 植は訂正しています.またNo. 10などにいくつか修正を加えました.図は手書きで入れていましたので, このpdfファイルには図は入っていません. もともとは,練習問題とその略解を中心にするつもりでしたが,レジュメの部分もけっこう増えてしまい ました.このウェブサイト用のpdfファイルでは,略解は削りました. 講義内容を決めるときには,工学部の受講者も多いと思っていたので(教室も吉田南キャンパスなので), 理学部数学系向けのような講義計画はたてませんでした.しかし,5月ぐらいに確定した履修名簿を見て みると,思っていたよりも理学部の受講者がずっと多かったです.(140人くらいが登録していて,そ の7割以上が理学部生でした.それ以外には,工学部,総合人間学部,経済学部,医学部,薬学部の学生 が履修していました.)そこで,数学的な論証はかなりきちんとしたつもりです(ただし,ジョルダンの 曲線定理はもちろん(?)認めて,グリーンの公式(微分積分学続論の内容)の証明は概略しか述べませ んでしたが).共通のシラバスにある内容をこなすだけで,かなり忙しく感じました. —– この函数論の講義を進めるにあたって,主に以下の本を参考にさせて頂きました. • 神保道夫『複素関数入門』岩波書店 (全般的によく参考にさせて頂きました.複素線積分を区分的になめらかなもの曲線に沿うものに 限って定義すること,コーシーの積分定理の述べ方,グリーンの公式に帰着させて証明する方法を とったことなどは,この本を参考にしています.) • 杉浦光夫『解析入門II』東京大学出版会 (留数定理の定積分への応用の部分で,よく参考にさせて頂きました.Fourier変換型の広義積分を長 方形の積分路をとって計算する方法などは,この本を参考にしています.) • アールフォルス『複素解析』現代数学社 • 野口潤次郎『複素解析概論』裳華房 • 楠幸男『解析函数論』廣川書店追記:ウェブサイト用に,No. 1– No. 14の練習問題と復習問題の略解を削っています.
函数論
No. 1
講義の説明,準備(複素数,複素平面,複素数列の収束)
函数論(
2014
年度前期)
学年:主として2回生,理系向け(全学共通科目) 時間・場所:水曜4限・共北38 担当:川口 周シラバスより
1回生で学んだ微分積分学に引き続くものとして,複素1変数函数の微分積分学である複素函数論(複素解 析)について講義する.理論の根幹をなすコーシーの積分定理と,そこから導かれる正則関数・有理型関数の 基本的性質を中心に解説する.複素函数論は非常に美しく,その応用は数学の他分野だけでなく,物理学,工 学,医学にまで及んでいる.本講義ではあくまで数学としての複素函数論を講義するが,将来様々な分野に進 む学生が聴講することを考慮して,具体的な計算や応用についてもある程度時間を取る予定である.講義の計画
複素関数f (z)がz = z0で微分可能(つまり,複素微分可能)であるというのは,実関数が微分可能である ことと同じように定義される.しかし,複素関数では複素平面のさまざまな方向からz0に近づくことができ るので,複素関数の微分可能性は実関数の微分可能性よりもずっと強い条件になる(コーシー・リーマン方程 式というものを満たす).そして,コーシーの積分定理という強力な定理が成り立つ. コーシーの積分定理は非常に広い応用を持つ.領域上で複素関数が微分可能であれば,何回でも微分可能 になる.代数学の基本定理(複素数係数のn次方程式は重複度を込めてちょうどn個の複素数解をもつ)の 一つの証明を与えることができる.また,いくつかの実関数の定積分( ∫ ∞ 0 sin x x dx = π 2, ∫ ∞ 0 xm−1 1 + xndx = π n sin(mπ/n)(ただし,m, nは正の整数でm < n)など)を,複素線積分を経由して計算することができる. 具体的には,講義では次の内容を扱う予定にしている. • 準備:複素数,複素平面,複素数列の収束• ベキ級数:収束半径,初等関数ez, sin z, cos z, log z, zαの定義
• 正則関数:複素関数の複素微分可能性,コーシー・リーマン方程式 • 複素線積分,グリーンの定理,コーシーの積分定理,コーシーの積分公式 • 正則関数の性質:正則関数の収束ベキ級数展開,正則関数は何回でも複素微分可能,コーシーの評価式 とリュービルの定理,代数学の基本定理,一致の定理,最大値の原理,原始関数,モレラの定理 • 孤立特異点の分類,ローラン展開,有理型関数 • 留数定理,実関数の定積分の計算への応用,リーマン球面 •(時間があれば)偏角の原理とルーシェの定理,シュワルツの補題と単位円板上の双正則写像など
参考書
教科書は指定しないが,参考書を一冊は購入すること.函数論の本は非常にたくさんあるので,図書館や書 店で見て,自分に合いそうなものを一つ選ぶとよいと思う.以下は一例(これらに限る必要はない)である. 2014 年 4 月 9 日• 神保道夫『複素関数入門』,チャーチル・ブラウン『複素関数入門』,今吉洋一『複素関数概説』など.
• アールフォルス『複素解析』(古典),野口潤次郎『複素解析概論』,高橋礼司『複素解析』,小平邦彦『複
素解析』(絶版?),楠幸男『解析函数論』(絶版?)など.
4
月
9
日の講義のレジュメ(準備:複素数,複素平面,複素数列の収束)
• 複素数についての復習:i2=−1となる数を虚数単位(imaginary unit)という.複素数は,z = x + iy (x, y∈ R)と表される.xを実部(real part),yを虚部(imaginary part)といい,x = Re(z), y = Im(z)
で表す.|z| :=√x2+ y2をzの絶対値(absolute value)という.絶対値は三角不等式|z+w| ≤ |z|+|w| を満たす.¯z := x− iyをzの複素共役(complex conjugate)という. • 複素数の演算:複素数全体をCで表すと,Cでは和・差・積・商の四則演算ができ,和と積について結 合法則,交換法則,分配法則などを満たす(この事実を,Cは体をなすという).なお,実2次正方行列 ( x −y y x ) (x, y∈ R)と,複素数z = x + iyの対応は演算を保つ. • 複素平面:複素数は平面上の点によって表される.z̸= 0を複素平面において,原点を中心に実軸の正 の部分から反時計回りに測ったときになす角度をθとすると,z = r(cos θ + i sin θ) (r > 0, θ∈ R)と表 される.この形を,複素数zの極形式(polar form)という.θ = arg(z)で表し,zの偏角(argument)
という.argはz̸= 0に対して2πn(nは整数)の不定性をもって定義される多価関数(1つの元に複 数の値を対応させる関数)である.複素数の絶対値,複素共役,複素数の和と積には,複素平面におけ る幾何学的な意味がある. • 複素数列:複素平面上の2点z, wの距離は,絶対値|z − w|で表される.複素数列{zn}∞n=1がzに収 束するとは, lim n→∞|zn− z| = 0となることと定義する.zn = xn+ iyn, z = x + iyのとき,複素数列 {zn}∞n=1がzに収束することは,その実部と虚部からなる実数列{xn}∞n=1,{yn}∞n=1がそれぞれx, yに 収束することと同値になる.これから,複素数列の収束列の和や積に関する性質は,対応する実数列の 収束列の性質に帰着できる.
練習問題
問1.1 (1) z2= iとなる複素数をすべて求めて複素平面に図示せよ. (2) z3= iとなる複素数をすべて求めて複素平面に図示せよ. 問1.2 z, w∈ C, z ̸= wのとき,z + w z− w = |z|2− |w|2 |z − w|2 + i 2 Im(¯zw) |z − w|2 を示せ. 問1.3 z, wは相異なる複素数とし,いずれも0でないとする.このとき,複素平面において0, z, wが正三 角形の3頂点をなすことと,z2− zw + w2 = 0であることは同値であることを示せ.(ヒント:複素数に, ρ = cos(π3)+ i sin(π3)をかけることの幾何学的な意味は?) 問1.4 a, b, c, d ∈ R はad− bc > 0 を満たすとする.z ∈ C とする.このとき,Im(z) > 0 ならば, Im ( az + b cz + d ) > 0を示せ.(これより,f (z) = az + b cz + d とし,複素平面における上半平面をH := {z ∈ C | Im(z) > 0}とおくと,f (H) ⊆ Hである.さらに,f :H → Hは全単射であることも示せる.) 問1.5 α∈ Cは|α| < 1を満たす複素数とする.z∈ Cとする.このとき,|z| < 1ならば,z− α 1− ¯αz < 1を 示せ.(これより,g(z) = z− α 1− ¯αzとし,複素平面における単位円の内部を∆ :={z ∈ C | |z| < 1}とおくと, g(∆)⊆ ∆である.さらに,g : ∆→ ∆は全単射であることも示せる.)函数論
No. 2
ベキ級数
4
月
16
日の講義のレジュメ(複素級数,ベキ級数,指数関数
e
z,三角関数
cos z, sin z
)
複素級数 • 複素級数∑∞n=0zn(zn∈ C)が収束するとは,はじめから順にとっていった部分和Sn:= z0+· · · + zn のなす複素数列{Sn}∞n=0が収束することである. ∑∞ n=0|zn|が収束するとき,級数 ∑∞ n=0znは絶対収 束(absolute convergent)するという. • 命題2.1 (1) 級数∑∞n=0znは絶対収束すれば,収束する.(2) (優級数判定法(test by majorant series))級数 ∑∞n=0zn に対して,Mn ≥ 0 で,|zn| ≤ Mn
(n = 0, 1, . . .)かつ∑∞n=0Mnが収束するものが存在すれば,級数 ∑∞ n=0znは絶対収束する. (3) 級数∑∞n=0zn, ∑∞ n=0z′nが収束するとき, ∑∞ n=0(zn± zn′) = ∑∞ n=0zn± ∑∞ n=0zn′, ∑∞ n=0αzn = α∑∞n=0zn(α∈ C)が成り立つ (4) 級数∑∞n=0zn, ∑∞ n=0z′nに対して,wn := ∑n k=0zkz′n−kとおく(Cauchy積という).このとき, ∑∞ n=0zn, ∑∞ n=0zn′ が絶対収束すれば, ∑∞ n=0wnも絶対収束し,( ∑∞ n=0zn) ( ∑∞ n=0zn′) = ∑∞ n=0wn が成り立つ. 上の命題は,実数の場合と同じように,あるいは実数の場合に帰着させて示すことができる. ベキ級数 • ∑∞n=0anzn(an ∈ C, z ∈ C)をベキ級数(power series)という. • 定理2.2 ベキ級数∑∞n=0anznに対して,次のいずれか一つが成り立つ. (i) すべてのz∈ Cについて,絶対収束する. (ii) あるρ > 0が存在して,|z| < ρにおいては絶対収束,|z| > ρにおいては発散する. (iii) 0以外のすべてのzについて,発散する.
この ρをベキ級数∑∞n=0anzn の収束半径(radius of convergence),円|z| = ρを収束円(circle of convergence)という.(i), (iii)のときをそれぞれ,ρ =∞, 0とする.ρ̸= 0のとき,ベキ級数を収束ベ
キ級数とよぶ.(収束円上での収束・発散は一概には言えない.練習問題2.2参照.) • ベキ級数∑∞n=0anznの収束半径ρを求める方法に次のようなものがある.(1) 1/∞ = 0, 1/0 = ∞と 約束するとき,1 ρ = lim supn→∞ n √ |an|が成り立つ*1(Cauchy–Hadamardの公式).(2)十分大きな任 意のnに対して,an ̸= 0であり,|a|an+1n|| がn → ∞で収束すれば,その極限は収束半径ρに等しい (d’Alembertの判定法,係数比判定法). ベキ級数の例:指数関数ez,三角関数cos z, sin z • 指数関数(exponential function)をベキ級数ez :=∑∞ n=0 zn n! で,三角関数(trigonometric function)を ベキ級数cos z :=∑∞n=0(−1)n z2n (2n)!, sin z := ∑∞ n=0(−1) n z2n+1 (2n+1)! で定める.これらはすべてのz ∈ C で絶対収束する(収束半径は∞である).
• 指数関数ezは次の性質をもつ.(1) eiz = cos z + i sin z(Eulerの公式) ,(2) ez+w= ezew(指数法
則) ,(3) z = x + iy(x = Re(z), y = Im(z))のとき,ez= ex(cos(y) + i sin(y))(ezの極形式),(4)
ez= ew⇐⇒ z = w + 2nπi(n∈ Z)(周期性),(5)任意のz∈ Cに対して,ez̸= 0. 2014 年 4 月 16 日 *1有界な実数列{bn}∞n=1に対して,cn= sup k≥nbkとおくと,{cn} ∞ n=1は単調減少数列となる.この単調減少数列の極限 limn→∞cn を,数列{bn}∞n=1の上極限といい,lim sup n→∞ bnで表す.
練習問題
問2.1 次のベキ級数の収束半径を計算せよ. (1) ∞ ∑ n=1 ( 1 + 1 n )n2 zn (2) ∞ ∑ n=0 (2n− 3n) zn (3) ∞ ∑ n=0 zn! (4) ∞ ∑ n=0 n3zn (5) ∞ ∑ n=1 1 n ( 1 + 1 2+· · · + 1 n ) zn (6) ∞ ∑ n=1 (n!)2 (2n)!z n 問2.2 収束半径が1のベキ級数で,(a)収束円|z| = 1のどの点でも収束するもの,(b)収束円|z| = 1のど の点でも発散するもの,(c) z = 1では発散し,|z| = 1上のその他の点では収束するもの,の例をそれぞれ挙 げよ. 問2.3 命題2.1(4)を証明せよ. 問2.4 (1) cos z = e iz+ e−iz 2 , sin z = eiz− e−iz 2i を示せ. (2) 指数関数ezの性質を用いて,実数のときに知っていた次の関係が,複素数でも正しいことを示せ(ただ し,z, w∈ Cとする).cos(z + w) = cos z cos w− sin z sin w, sin(z + w) = sin z cos w + cos z sin w, cos(z + 2π) = cos z, sin(z + 2π) = sin z, cos2z + sin2z = 1.
(3) 定義域がRのとき, 実関数sin xの零点は{nπ | n ∈ Z}であった.指数関数ezの性質を用いて,定義
域をCとした複素関数sin zの零点は何か調べよ.同様に,複素関数cos zの零点は何か調べよ.
問2.5 実数xに対して,双曲線関数cosh x, sinh xはそれぞれ,cosh x = e x+ e−x
2 , sinh x =
ex− e−x
2 で
定義された.
(1) xが実数のとき,cos(ix) = cosh x, sin(ix) = i sinh xが成り立つことを示せ.
(2) z = x + iyを複素数とするとき,cos(z), sin(z)の実部と虚部を求めよ.
函数論
No. 3
複素関数の複素微分可能性,
Cauchy–Riemann
方程式
4
月
23
日のレジュメ(複素関数の複素微分可能性,
Cauchy–Riemann
方程式)
領域 • 中心α∈ C,半径r > 0の開円板を∆r(α) :={z ∈ C | |z − α| < r}で表す. • DをCの部分集合とする.Dが開集合(open set)であるとは,任意のα∈ Dに対して,あるr > 0が 存在して,∆r(α)⊆ Dとなることをいう.Dが弧状連結(arcwise connected)とは,任意のα, β∈ D をD内の連続曲線で結べるときにいう(つまり,γ(0) = α, γ(1) = βとなる連続な写像γ : [0, 1]→ D が存在する). • DをCの部分集合とする.Dが弧状連結な開集合のとき,Dを領域(domain)という*1. 複素関数の複素微分可能性,Cauchy–Riemann方程式 • この講義で考える関数(複素関数)は,Cのある領域D上で定義された写像f : D→ C, z 7→ f(z)で ある.f (z)を 領域D上で定義された関数とする.z = x + iyとし,f (z) = u(x, y) + iv(x, y)と書く. 実部u(x, y)と虚部v(x, y)は(x, y)の実2変数関数である. • f(z)を領域D上の関数とする.f (z)が点z = z0∈ Dで連続であるとは,limz→z0f (z) = f (z0)とな るときにいう.これは,z0= x0+ iy0と書くとき,u(x, y), v(x, y)がともに点(x0, y0)で連続であるこ とと同値である.f (z)がD上で連続であるとは,Dの各点で連続であるときにいう. • f(z)を領域D上の関数とする.f (z)が点z = z0∈ Dで複素微分可能とは,lim z→z0 f (z)− f(z0) z− z0 が存在 するときにいう.この極限の値をf′(z0)で表す.点z0で複素微分可能ならば連続である.zはz0にい ろいろな方向から近づけるので,複素微分可能性は非常に強い条件である.実際,次の定理が成り立つ. 定理3.1 f (z) = u(x, y) + iv(x, y)を領域D上の関数とする.z0= x0+ iy0∈ Dとする.このとき, 次は同値である. (i) f (z)はz = z0で複素微分可能である.(ii) u(x, y), v(x, y)はいずれも実2変数の関数として(x0, y0)で全微分可能であり,さらに,Cauchy–
Riemannの方程式 ∂u ∂x = ∂v ∂y, ∂u ∂y =− ∂v ∂x, を(x0, y0)で満たす. • 例:複素微分の定義から,f (z) = zn(n = 1, 2, . . .)のとき,f′(z) = nzn−1となる. • f′(z) = ux+ ivx= 1 i(uy+ ivy)である.(ただし,ux:= ∂u ∂x など.) 正則関数 • f(z)を 領域D 上で定義された関数とする.f (z)が(i) Dの各点で複素微分可能であり,(ii)導関数 f′(z)がD上の連続関数になるとき,f (z)をD上の正則関数(holomorphic function)という*2. 2014 年 4 月 23 日 *1 C の開集合 D が連結とは,D が2つの共通部分を持たない空でない開集合の和で表されないときにいう.C の開集合について, 連結であることと弧状連結であることは同値であることが知られている(「集合と位相」の講義の内容).そこで,領域を連結な開 集合を定義しても同じになる.(連結な開集合として領域を定義することも多い.) *2実は,(i) の条件だけから,(ii) が成り立つことが導ける(時間が許せば,この講義でも触れたい).これから,正則関数を定義する とき,(ii) の条件をつけないことが多い.
• 領域D上で定義された正則関数f について,D上で恒等的にf′= 0ならば,fは定数関数である.
練習問題
問3.1 C上の関数f (z) =|z|2について,複素微分可能な点zをすべて求めよ.これから,f (z) =|z|2はど んな領域D上でも正則関数にならないことを示せ. 問3.2 f (z) = z3とする.このとき,f (1 + 2i)− f(1 + i) (1 + 2i)− (1 + i) = f ′(1 + ti)となる実数1≤ t ≤ 2は存在しない ことを示せ.(複素関数については,いわゆる「平均値の定理」は,そのままでは成り立たない.) 問3.3 領域D上の正則関数f について,以下を示せ. (1) 任意のz∈ Dに対してf (z)∈ Rであれば,f は実数値の定数関数である. (2) |f(z)|が定数関数ならば,f (z)も定数関数である. ヒント: (1)(2)とも(さらに問3.4も)Cauchy–Riemannの関係式を用いる.(1) f = u + ivとかくと,仮定よ り,D上でvは恒等的に0である.(2) u2+ v2が定数である.問3.4 f (z) = u(x, y) + iv(x, y)を 領域D上で定義された正則関数とし,u(x, y), v(x, y)は2回連続微分可
能とする(実は,正則関数は何回でも複素微分可能になるので,後半の仮定は不要である).このとき,D上で ∂2u ∂x2 + ∂2u ∂y2 = 0, ∂2v ∂x2 + ∂2v ∂y2 = 0 が成り立つことを示せ.(上の等式を,Laplace方程式といい,これを満たす関数を調和関数という.)
函数論
No. 4
正則関数の基本的な性質,収束ベキ級数の複素微分,
log z
と
z
αなど
4
月
30
日のレジュメ(後半部分は
5
月
7
日?)
No. 5からは,複素関数の積分(複素線積分)の話に入る予定. 補足 • f(z)が点z0 ∈ D で複素微分可能とすると,f (z)− f(z0) = f′(z0)(z− z0) + o(|z − z0|)である. f′(z0) = r(cos θ + i sin θ)と極形式で表すと,複素数の積の幾何学的意味から,f はz0のまわりの点を, f (z0)のまわりに(ほぼ)r倍に拡大してθだけ回転させて写すことが分かる.とくに,r̸= 0(つまり f′(z0)̸= 0)のときは,z0を通る2つの曲線の間の角度は,fで写しても変わらない(等角性という). • f(z) = u(x, u) + iv(x, y)が領域D上で正則であることは,実2変数関数u(x, y), v(x, y)がD上でC1級であり,Cauchy–Riemannの方程式を満たすことと言い換えられる*1. 記号 ∂ ∂z と ∂ ∂ ¯z • f(z)をx, yの関数とみたときに,記号 ∂ ∂z と ∂ ∂ ¯z を, ∂ ∂z := 1 2 ( ∂ ∂x− i ∂ ∂y ) と ∂ ∂ ¯z := 1 2 ( ∂ ∂x+ i ∂ ∂y ) で定義する.このとき,Cauchy–Riemannの方程式は,∂f ∂ ¯z = 0と表される.また,f (z)がz0で複素 微分可能であるとき,f′(z0) = ∂f∂z(z0)となる. • ∂z ∂z = 1, ∂ ¯z ∂z = 0と, ∂z ∂ ¯z = 0, ∂ ¯z ∂z = 1が成り立つ.例えば, ∂ ∂z(z n¯zm) = nzn−1z¯m, ∂ ∂ ¯z(z nz¯m) = mznz¯m−1である.(あたかもz, ¯zを独立な変数と思って微分した結果に等しい.) 正則関数の基本的な性質 • 通常の実1変数関数の微分の公式と同様に次が成り立つ(同じ方法で証明できる). 命題4.1 (1) f (z), g(z)は領域D上の正則関数とする.このとき,その和,差,スカラー倍,積もD 上で正則になり,以下が成り立つ. (a) (f (z)± g(z))′= f′(z)± g′(z), (αf (z))′ = αf′(z)(α∈ C). (b) (f (z)g(z))′ = f′(z)g(z) + f (z)g′(z). (c) fがD上で零点を持たないときは,1/f もD上で正則になり,(1/f (z))′=−f′(z)/f (z)2. (2) f (z)は領域D上の正則関数,g(z)は領域D′上の正則関数で,f (D)⊆ D′を満たすとする.この とき,合成関数g(f (z))はD上の正則関数になり,(g(f (z)))′= g′(f (z))f′(z)となる. • 複素微分可能の定義,命題4.1を使うと以下が分かる.(a)定数関数f (z) = cはC上で正則で,(c)′= 0. (b) z はC上で正則で,(z)′ = 1.(c) zn(n = 1, 2, . . .)はC上で正則で,(zn)′ = nzn−1.多項式 anzn+· · · + a1z + a0 もC上で正則で,(anzn +· · · + a0)′ = nanzn−1 +· · · + a1.(d) 有理関数 anzn+· · · + a1z + a0 bmzn+· · · + b1z + b0 は分母が0でないzの範囲で正則.(e)以下でみるように,指数関数ezはC上 で正則で(ez)′= ezなので,合成関数e(1+z2) もC上で正則で(e(1+z2) )′ = (2z)e(1+z2) など. 2014 年 4 月 30 日 *1ここで,一般にR2の開集合 D 上で定義された 実 2 変数関数 g(x, y) が C1級であるとは,D の各点で g は x と y について偏微 分可能で,偏導関数 ∂g/∂x, ∂g/∂y が D 上連続であることをいった.1 回生の微積の内容より,R2の開集合 D 上で定義された実 2 変数関数 g(x, y) が C1級の関数ならば,g は D の各点で全微分可能である.
収束ベキ級数の複素微分 • 定理4.2 収束ベキ級数f (z) = ∞ ∑ n=0 anzn = a0+ a1z + a2z2+· · · + anzn+· · · を項別に微分して得 られるベキ級数をf1(z) = ∞ ∑ n=1 nanzn−1= a1+ 2a2z2+· · · + nanzn−1+· · · とする.このとき,両者 の収束半径は等しく,収束円の内部でf′(z) = f1(z)が成り立つ. • 系4.3 収束ベキ級数は収束円の内部で正則である.さらに,収束円の内部で何回でも複素微分可能で ある.さらに,収束ベキ級数f (z) = ∞ ∑ n=0 anznについて,an = f(n)(0)/n!(n = 0, 1, . . .)となる(ベ キ級数展開の一意性).
• 例:指数関数ez,三角関数sin z, cos zはC上で正則で,(ez)′= ez, (sin z)′
= cos z, (cos z)′=− sin z.
対数関数log z,累乗関数zα
• 指数関数の逆関数として対数関数を定義する.零でない複素数zに対して,ew= zとなる複素数wは
w = log|z| + i arg(z)と表される.ここで,arg(z)はzの偏角であり,2πの整数倍の不定性をもつ多 価関数である.そこで,零でない複素数zに対して,対数関数をlog z := log|z| + i arg(z)で定義する.
log zは多価関数である.
• 多価関数は何かと考えにくいので,零でない複素数zに対して,zの偏角の範囲を(−π, π]と限定したと
きの値をArg(z)とおく.(つまり,−π < Arg(z) ≤ πととる.テキストによっては,[0, 2π)の範囲を とることもあるので注意する.)そして,Log z := log|z| + i Arg(z)とおき,対数関数の主値(principal
value)という.Logは一価関数になるが,実軸の負の部分で連続性が失われる. • D0:=C ∖ (−∞, 0]を複素平面から0と実軸の負の部分を取り除いた領域とする.このとき,Log zは D0上で正則であり,(Log z)′= 1 z が成り立つ *2. • 複素数の累乗を,z, αを複素数(z̸= 0)とするとき,zα:= eα log zで定義する*3.αが整数ならば,zα は一意に定まるが,一般には,log zの多価性により,zαも多価関数になる. • 例:ii= ei log i= ei(i(π2+2nπ)) = e−(π2+2nπ)(nは整数)となる.特に,iiは多価であるが,いずれの 値も実数である.
No. 4
の練習問題
問4.1 次の値を求めよ.(1) log(−1 +√3i) (2) Log(−1 +√3i) (3) (−1 +√3i)i. 問4.2 α, β, γを複素数とする.z = x + iy(x, y∈ R)に対して,f (z) := αx2+ βxy + γy2とおく.fがC 上の正則関数となるためのα, β, γの条件を求めよ.(ヒント: x = (z + ¯z)/2, y = (z− ¯z)/(2i)に注意して,f をzとz¯の多項式で表す.f はx, yについてC1級であるから,f が正則である条件は ∂f ∂ ¯z = 0である.)No. 1 – No. 4
の復習問題
問A.1 (1) Cの部分集合Dが領域であることの定義を述べよ. (2) f を領域D上で定義された複素関数とする.f がz0∈ Dで複素微分可能であることの定義を述べよ. *2 偏角の範囲を [0, 2π) にとると,複素平面から 0 と実軸の正の部分を取り除いた領域上で,対数関数の主値が一価の正則関数にな り,その領域上で微分は 1/z になる.*3この講義では,ezはつねに指数関数を表す.(特に,eα log zは指数関数の α log z での値である.)ただし,ezが指数関数か e の
(3) f を領域D 上で定義された複素関数とし,f (z) = u(x, y) + iv(x, y)(z = x + iy)と表す.f が z0= x0+ iy0∈ Dで複素微分可能であることを,実部u(x, y),虚部v(x, y)を用いて言い換えよ. (4) f を領域D上で定義された複素関数とする.f がD上の正則関数であることの定義を述べよ. 問A.2 (1) z2がC上の正則関数であることを,Cauchy–Riemann方程式を満たすことを確認することに よって示せ. (2) C上の正則関数f (z)(z = x + iy)の実部がu = x2− y2であるとき,f (z)の虚部はv = 2xy + C(C は定数)と表されることを示せ. (3) 実部がu = x2+ y2であるようなC上の正則関数f (z)は存在しないことを示せ. 問B.1 複素平面における上半平面をH := {z ∈ C | Im(z) > 0},単位円の内部を∆ :={z ∈ C | |z| < 1}とお く.このとき,f (z) := z− i z + iは,H上の正則関数で,f (H) ⊆ ∆を満たすことを示せ.また,g(z) := z + 1 i(z− 1) は,∆ 上の正則関数で,g(∆) ⊆ Hを満たし,f (g(z)) = z, g(f (z)) = z となることを示せ.(これから, f :H → ∆は全単射であり,逆写像f−1: ∆→ Hはgで与えられ,f もその逆写像f−1= gも正則写像であ ることが分かる.f をCayley変換という.) 問B.2 f (z) = 1 (1− z)m(m = 1, 2, . . .)をzのベキ級数に展開せよ.(ヒント: 1 1− z = ∞ ∑ n=0 znを(m− 1) 回微分する.定理4.2参照.) 問B.3 zのベキ級数 z +1 2 · z3 3 + 1 2 · 3 4 · z5 5 + 1 2 · 3 4 · 5 6· z7 7 +· · · = z + ∞ ∑ n=1 (2n− 1)!! (2n)!! z2n+1 2n + 1 (B.3.1) z−z 3 3 + z5 5 − z7 7 +· · · = ∞ ∑ n=0 (−1)nz 2n+1 2n + 1 (B.3.2) の収束半径をそれぞれ求めよ.ここで,(2n− 1)!! = (2n − 1)(2n − 3) · · · 3 · 1, (2n)!! = (2n)(2n − 2) · · · 4 · 2. (なお,(B.3.1)はarcsin zをz = 0の周りでTaylor展開したものに等しい.また,(B.3.2)はarctan zをz = 0
の周りでTaylor展開したものに等しい.)
問B.4 Dは実軸に関して対称な領域とする.f (z)がD上の正則関数のとき,f (¯z)もD上の正則関数である ことを示せ.(ヒント: f (z) = u(x, y) + iv(x, y)とおき,f (¯z)の実部と虚部をu(x, y), v(x, y)を用いて表す.)
次は,ベキ級数の収束円上における挙動についての問題である.(復習問題ではない.) 問B.5(Abelの連続性定理の特別な場合) ベキ級数f (z) = ∞ ∑ n=0 anzn の収束半径は1 とする. ベキ級数 ∞ ∑ n=0 anznはz = 1で収束するとし,s = ∞ ∑ n=0 anとおく.このとき,収束円の内部からzが実軸にそって1に 近づくとき,f (z)→ sとなることを示せ. ヒント: 必要ならa0に定数を加えてs = 0としてよい.sn:= ∑n k=0akとおく.このとき, ∑n k=0akzk= s0+ (s1− s0)z +· · ·+(sn−sn−1)zn= (1−z)(∑nk=0−1skzk ) +snznになる(Abelの変形法).これから,f (z) = (1−z) ∑∞ n=0snz n と表せる. Abelの連続性定理の例:f (z) =∑∞n=0(−1)nz2n+1/(2n + 1)の収束半径は1であり(問題B.3参照),かつz = 1で 収束する.zが実数で−1 < z < 1のとき,f (z) = arctan zであることを知っているから,実軸上でz → 1のとき, f (z)→ π/4.よって,π/4 =∑∞n=0(−1)n/(2n + 1)となる.(この最後の等式は,xを実数として,arctan xをx = 0の
周りで,剰余項付きのTaylorの定理を用いて,arctan x =∑nk=0(−1)kx2k+1/(2k + 1) + R2n+2(x)と書いて,|R2n+2(x)| を評価しても得られる(この方が普通かもしれない).) 注意:Abelの連続性定理の逆は成り立たない.例えば,f (z) := 1 1+z = 1− z + z 2− · · · である.|z| < 1において, limz→1f (z) = 12 であるが,右辺のベキ級数はz = 1で収束しない.しかし,適当な条件を付け加えると(例えば,
函数論
No. 5
複素線積分
5
月
7
日のレジュメ(曲線,複素線積分)
目標:Cのある領域で定義された連続な複素数値関数f (z)に対して,領域内の区分的になめらかな曲線γ に沿った複素線積分∫γf (z)dzを定義する. 曲線• C内の曲線(curve)とは,Rの閉区間[a, b]からCへの連続写像γ : [a, b]→ Cのことである.γ(a)を 曲線γの始点(initial point),γ(b)を曲線γの終点(terminal point)という.
• 曲線γ : [a, b]→ Cは始点と終点が一致しているとき(つまり,γ(a) = γ(b)のとき),閉曲線(closed curve)であるという.曲線γ : [a, b]→ Cが単純(simple)であるとは,始点と終点の例外を除いて,γ
が単射であるときにいう.つまり,a≤ t1< t2< bならば,γ(t1)̸= γ(t2)となっているときにいう*1. • 定理5.1(Jordanの曲線定理) C(= R2)内の単純閉曲線γは,その補集合C ∖ Im(γ)を,有界な領 域(内部)と有界でない領域(外部)の2つの領域に分ける.(ここで,Im(γ) := γ([a, b])はγの像.) 上の定理の有界な領域(内部)を,γを境界とするJordan領域という.Jordanの曲線定理は,明らかに 思えるかもしれないが,その証明は全く明らかではなく位相幾何の準備を必要とする(この講義では証 明しない).ただし,この講義で積分の実際の計算に使う単純閉曲線は,円周の一部や有限個の線分に よって囲まれるような簡単なものだけである.
• γ : [a, b] → Cを単純閉曲線とする.γが正の向き(positive orientation)をもつとは,tがaからbまで
動くとき,γ(t)はJordan領域を左手の方向に見ながら動くときにいう.例えば,反時計回りに1周す
るγ(t) = eit(0≤ t ≤ 2π)は正の向きである.
• 曲線γ : [a, b]→ Cに対し,γ−1(t) := γ(a + b− t)(a≤ t ≤ b)と定める.γ−1はγ(b)を始点,γ(a)を
終点とする曲線である.γ : [a, b]→ Cを単純閉曲線とする.γが正の向きでない(負の向きの)とき, γ−1: [a, b]→ C(γ−1(t) := γ(a + b− t))は正の向きになる. • 2つの曲線γ1: [a1, b1]→ C, γ2: [a2, b2]→ Cにおいて,γ1の終点とγ2の始点が一致しているならば (つまり,γ1(b1) = γ2(a2)ならば),γ1にγ2をつないだ曲線を考えることができる.この曲線をγ2γ1 で表す(γ2+ γ1と書くことも多い).γ := γ2γ1は,γ : [a1, b1+ (b2− a2)]→ Cで, γ(t) = { γ1(t) (a1≤ t ≤ b1) γ2(a2+ (t− b1)) (b1≤ t ≤ b1+ b2− a2) で定められる. • 曲線 γ : [a, b] → C がなめらか(smooth)であるとは,γ(t)がtの関数としてC1 級であり(つま り,γ(t)は tについて微分可能で,dγ dt(t) が連続であり),さらに,任意の t について dγ dt(t) ̸= 0
を満たすことをいう*2.曲線 γ : [a, b] → Cが区分的になめらか(piecewise smooth)であるとは, a = t0< t1<· · · < tn = b(区分点)が存在して,γは各[ti, ti+1]上ではなめらかなときにいう.(各 tiにおいて,左微分係数と右微分係数が存在するが,両者は一致しなくてよい.) 2014 年 5 月 7 日 *1単純曲線を Jordan 曲線ともいう. *2t = a, t = b においては,dγ dt(t) はそれぞれ右微分係数および左微分係数の値とする.なお,テキストによっては,なめらかな曲線 の定義にdγ dt(t)̸= 0 の条件を入れないこともあるので注意する.
複素線積分 •(複素数値関数の区間上の積分)[a, b]⊂ Rを閉区間とし,f (t)を[a, b]上で定義された複素数値連続関 数とする.f (t) = u(t) + iv(t)と実部と虚部に分けて書く.このとき, ∫ b a f (t)dt := ∫ b a u(t)dt + i ∫ b a v(t)dt によって,複素数値連続関数f (t)の閉区間[a, b]上の積分∫abf (t)dtを定義する.
• 曲線γ : [a, b]→ Cをなめらかな曲線,f (z)をγの像Im(γ) := γ([a, b])上で定義された複素数値連続
関数とする.このとき,γに沿ったf (z)の積分を (5.1) ∫ γ f (z)dz := ∫ b a f (γ(t))dγ dt(t)dt で定義する(右辺は,上で述べた複素数値関数の区間上の積分).γが区分的になめらかで,γ = γk· · · γ1 (γiはなめらか)と書けるときは, ∫ γf (z)dz := ∑k i=1 ∫ γif (z)dzによって定義する. • 補題5.2 複素線積分は,曲線γ : [a, b]→ Cの(向きを変えない)パラメータ付けには依らない.ただ し,向きには依存し,曲線の向きを変えると(−1)倍される.正確に述べると以下の通り. (1) φ : [ea,eb] → [a, b]をC1級の関数で,dφ
dt > 0, φ(ea) = a, φ(eb) = bとする.eγ := γ ◦ φ : [ea,eb] → C
とおくと,∫eγf (z)dz =∫γf (z)dz. (2) ∫γ−1f (z)dz =− ∫ γf (z)dz. • 定理5.3(複素線積分の基本的な性質)(1) γは区分的になめらかで,f (z), g(z)はγの像の上で連続 とすると, ∫ γ (f (z)± g(z))dz = ∫ γ f (z)dz± ∫ γ g(z)dz, ∫ γ αf (z)dz = α ∫ γ f (z)dz (α∈ C). (2) γ1, γ2は区分的になめらかで,γ1の終点とγ2の始点が等しいとする.f (z)はγ1, γ2の像の上で連 続とすると, ∫ γ2γ1 f (z)dz = ∫ γ1 f (z)dz + ∫ γ2 f (z)dz. (3) γ : [a, b] → Cは区分的になめらかで,f (z) はγの像の上で連続とすると, ∫ γ f (z)dz ≤ ∫ γ |f(z)| |dz|. こ こ で ,右 辺 は ,γ = γk· · · γ1 (γi : [ai, bi] → C は な め ら か) の と き , k ∑ i=1 ∫ bi ai |f(γ(t))|dγi dt(t) dtを表す.*3. 上の定理の(3)は積分の大きさを評価するときによく用いられる. • 曲線γ : [a, b]→ Cとγの像の上で定義された複素数値連続関数に対して,γに沿っての積分を(5.1)で 定義した. しかし,(5.1)の定義はやや唐突に見えるかもしれない.実1変数の(Riemann)積分の定 義を思い出すと,閉区間[a, b]の分点a = t0 < t1<· · · < tN = bをとり,その分点の取り方を細かく していったときの区分和の極限 (5.2) lim |∆|→0 N∑−1 i=0 f (γ(si)) (γ(ti+1)− γ(ti))
(ただし,(|∆| := max0≤i≤N−1|ti+1− ti|, si∈ [ti, ti+1])として,複素線積分を定義するのが自然に思
えるだろう.γが区分的になめらかなときは,両者は一致することが分かる. 補題5.4 γが区分的になめらかで,f (z)がγの像の上で連続のとき,(5.1)の右辺と(5.2)は一致する. そこで,この講義では,区分的になめらかな曲線に対して,(5.1)を複素線積分の定義とする*4. *3特に,γ : [a, b]→ C を γ(t) = t とすると,区間上の積分になり,∫b af (t)dt ≤ ∫b a|f(t)| dt を得る. *4(5.2) の定義の方が適用範囲は広く,(5.2) を用いて,長さ有限の曲線に沿う複素線積分を定義することができる.しかし,この講義 では,区分的になめらかな曲線に沿う複素線積分だけを考え,(5.1) をその定義としてとる.
No. 5
の練習問題
問5.1 nを整数とする.α∈ Cに対して,γをαを中心とする半径r > 0の反時計回りの円周とする.この とき,∫γ(z− α)ndzを求めよ. 問5.2 0から1 + iにいたる3つの曲線γ1(t) = t + it(0≤ t ≤ 1),γ2(t) = t + it2(0≤ t ≤ 1),γ3:= γ32γ31 (γ31(t) = t(0≤ t ≤ 1),γ32(t) = 1 + it(0≤ t ≤ 1))を考える.このとき,i = 1, 2, 3に対して, ∫ γiRe(z) dz を求めよ. 問5.3 R > 0を正の数とする.γ1(t) = t(−R ≤ t ≤ R), γ2(t) = Reit= R(cos t + i sin t)(0≤ t ≤ π)と し,γ = γ2γ1とおく.次の積分を求めよ*5. (1) ∫ γ zndz (n = 0, 1, 2, . . .) (2) ∫ γ ¯ z dz補題
5.4
の証明
補題5.4は講義では証明しない.ここに証明を書いておく.γがなめらかなときに示せば十分である.仮定 より,dγ dt は 閉区間[a, b]上で連続だから,一様連続になる.従って,任意のε > 0に対して,δ > 0が存在し, ti+1− ti< δならば,任意のt∈ [ti, ti+1]に対して, dγdt(t)−dγ dt(si) < εとなる. よって, (γ(ti+1)− γ(ti))− dγ dt(si)(ti+1− ti) =∫ ti+1 ti dγ dt(t)dt− ∫ ti+1 ti dγ dt(si)dt ≤ ∫ ti+1 ti dγ dt(t)− dγ dt(si) dt < ε(ti+1− ti) となる.|f(γ(t))|は 閉区間[a, b]上の連続関数なので最大値が存在する.その最大値をMとおく.すると, N∑−1 i=0 f (γ(si)) (γ(ti+1)− γ(ti))− N∑−1 i=0 f (γ(si)) dγ dt(si)(ti+1− ti) (5.3) ≤ N∑−1 i=0 |f(γ(si))| (γ(ti+1)− γ(ti))− dγ dt(si)(ti+1− ti) ≤ MN∑−1 i=0 ε(ti+1− ti) = M (b− a)ε となる.実関数のRiemann積分の定義から,∫b af (γ(t)) dγ dt(t)dt = lim|∆|→0 ∑N−1 i=0 f (γ(si))dγdt(si)(ti+1 − ti) が 成 り 立 つ の で ,(5.3) で |∆| → 0 と し て か ら ,ε が 任 意 の 正 の 数 で あ る こ と を 使 え ば , lim|∆|→0∑Ni=0−1f (γ(si)) (γ(ti+1)− γ(ti)) =∫b af (γ(t)) dγ dt(t)dtを得る. *5(1) 答えは 0 である.γ := γ2γ1は単純閉曲線であり,f (z) := znは,γ およびその内部を含む領域上(C 全体をとればよい)で, 正則関数である.このとき,今後の講義で説明する Cauchy の積分定理より∫γf (z) dz = 0 が成り立つ.この問題では,Cauchy の 積分定理を用いずに,直接の計算で積分を計算することを求めている.(2) 答えは,γ の囲む内部の領域の面積 πR2/2 を 2i 倍した ものに等しい.これは,偶然ではなく,一般に成り立つことを,後にみる.なお,¯z は正則関数ではないことに注意する.
函数論
No. 6
Cauchy
の積分定理
5
月
14
日のレジュメ(後半は
5
月
21
日の予定)
1変数複素関数論で最も重要な定理である「Cauchyの積分定理」を説明する.Cauchyの積分定理は,正則 関数が非常に性質の良いものであることを示している. 開集合などの復習 • Cの部分集合Uが開集合であるとは,任意のc∈ U に対して,(cに依存して)あるr > 0が存在して, ∆r(c)⊆ U となることをいった.ここで,∆r(c) :={z ∈ C | |z − c| < r}はcを中心とする半径rの 開円板を表す. • Cの部分集合Aが閉集合(closed set)であるとは,Aの補集合C ∖ Aが開集合のときにいう. • Cの部分集合Xの開近傍(open neighborhood)とは,X を含む開集合のことをいう. • XをCの部分集合とする.z∈ CがXの触点(adherent point)とは,zの任意の開近傍U がX と交 わること(U∩ X ̸= ∅)である.つまり,zのどんな近くにもXの点が存在するとき,zをXの触点と いう.z∈ Xであれば,zはXの触点である.実際,zの任意の開近傍にz自身というX の点が存在 する. • XをCの部分集合とする.X の触点全体のなす集合をXと書き,X の閉包(closure)という.定義 からX ⊆ Xである.さらに,XはCの閉集合である(練習問題参照). • XをCの部分集合とする.z ∈ XがX の内点であるとは,(zに依存して)あるr > 0が存在して, ∆r(z)⊆ Xとなることをいう.Xの内点全体のなす集合をint(X)で表す.int(X)はCの開集合であ る.∂X := X∖ int(X)とおいて,Xの境界(boundary)という. • Cの部分集合X が 有界(bounded)であるとは,あるR > 0が存在して,X ⊆ ∆R(0)となることを いう. Cauchyの積分定理• 定理6.1(Cauchyの積分定理(Cauchy’s integral theorem)) D を有限個の区分的になめらかな単
純閉曲線に囲まれた有界領域とする.f はD を含む開集合U 上で定義された正則関数とする.この とき, ∫ ∂D f (z)dz = 0 となる*1.ただし,∂Dの向きは,Dを左手側に見る向きにとる.(Dには「穴」があいているかもしれ ない.そのときは,穴の周囲の曲線の向きに注意する.なお,∂Dが単純閉曲線γ1, . . . , γk からなると き,∫ ∂Df (z)dz = ∑k i=1 ∫ γif (z)dzと定める.ただし,γiの向きはDを左手側に見る向きである.) • 注意6.2 fの条件は弱められる. (1) f はU の各点で複素微分可能を仮定すればよい.(f′(z)の連続性は不要である.)この講義では, Cauchyの積分定理をベクトル解析の定理であるGreenの定理を用いて証明するので,f′(z)の連続 性を必要とする.しかし,f′(z)の連続性を仮定しないで,∫∂Df (z)dz = 0を示すことができる*2. (2) f はD上で連続でDで正則であればよい. 2014 年 5 月 14 日 *1正の向きの単純閉曲線 γ に沿った積分を, I γ f (z)dz と表すことも多い. *2 証明は Goursat による.
• Cauchyの積分定理にはいくつかの形がある.少し後の講義で説明する予定にしている. 複素線積分の計算 α∈ C, r > 0とする.問5.1で計算したように,nを整数とすると*3, (6.4) ∫ |z−α|=r (z− α)ndz = { 2πi (n =−1のとき) 0 (それ以外のとき) となる.(6.4)とCauchyの積分定理から導かれる積分路の変形によって,単純閉曲線に沿う積分を計算するこ とができる(練習問題を参照).この方法は,より洗練された形で,留数定理としてまとめられる.留数定理 は,7月頃に説明する予定にしている. Greenの定理
Greenの定理は,Gaussの発散定理やStokesの定理とともに,「微分積分学続論I–ベクトル解析 」の講義の
曲線積分と曲面積分のところで扱われる.ここでは,一般的な形ではなく,Cauchyの積分定理の証明に必要
な範囲で,Greenの定理について簡単に述べる.
• 連続写像γ : [a, b]→ R2を(R2内の)曲線という.γ(t) = (x(t), y(t))(t∈ [a, b])と書く.単純曲線, 閉曲線,区分的になめらかな曲線は,以前と同じように(z = x + iy∈ Cを(x, y)∈ R2と同一視して) 定義される.
• DをR2の領域とし,γ : [a, b]→ Dを区分的になめらかな曲線とする.γ(t) = (x(t), y(t))(t∈ [a, b]) と書く.P (x, y), Q(x, y)をD上の実数値連続関数とするとき,曲線γに沿ったP (x, y)dx + Q(x, y)dy
*4の積分を (6.5) ∫ γ P (x, y)dx + Q(x, y)dy := ∫ b a { P (x(t), y(t))dx dt(t) + Q(x(t), y(t)) dy dt(t) } dt
で定義する.この積分をP dx + Qdyのγに沿った線積分(line integral)とよぶ.
• 定理6.3(Greenの定理) Dを有限個の区分的になめらかな単純閉曲線に囲まれたR2の有界領域と する.実関数P (x, y), Q(x, y)はDを含む開集合上でC1級とする. このとき, ∫ ∂D P (x, y)dx + Q(x, y)dy = ∫∫ D ( ∂Q ∂x − ∂P ∂y ) dxdy が成り立つ.ただし,∂Dの向きは有界領域Dを左手側に見る向きとする. • CとR2を同一視するとき,複素線積分とR2内の線積分は次の関係にある.γ : [a, b]→ C = R2を区 分的になめらかな曲線とし,f (z) = u(x, y) + iv(x, y)とすると, (6.6) ∫ γ f (z)dz = ∫ γ
(u(x, y)dx− v(x, y)dy) + i ∫
γ
(v(x, y)dx + u(x, y)dy).
ここで,左辺は複素線積分であり,右辺はR2内の線積分である.左辺において,形式的にdz = dx + idy とおいて,f dz = (u + iv)(dx + idy)を展開すれば右辺になる. *3上の脚注にも書いたように, I |z−α|=r(z− α) ndz とも書く. *4P (x, y)dx + Q(x, y)dy は 1 次微分形式とよばれる.「微分積分学続論I–ベクトル解析 」は履修中の人が多いと思う.ここでは, dx や dy は単に記号と思っておけば十分である.
Cauchyの積分定理の証明 Greenの定理を使うと,Cauchyの積分定理(定理6.1)は次のように証明できる. ∫ ∂D f (z)dz = ∫ ∂D
(u(x, y)dx− v(x, y)dy) + i ∫
∂D
(v(x, y)dx + u(x, y)dy) = ∫∫ D ( −∂v ∂x− ∂u ∂y ) dxdy + i ∫∫ D ( ∂u ∂x− ∂v ∂y ) dxdy = 0 ここで,最初の等式は(6.6)による.次の等式はGreenの定理(定理 6.3)による.最後の等式はCauchy– Riemannの関係式による.まとめると,関数が正則であるということからCauchy–Riemannの関係式が成り立 ち,ベクトル解析のGreenの定理を経由すると,Cauchyの積分定理が証明できる(注意6.2(1)も参照).
No. 6
の練習問題
特に断りのないかぎり,単純閉曲線は正の向きとする. 問6.1 XをCの部分集合とする.X は閉集合であることを示せ.また,∂Xは閉集合であることを示せ. 問6.2 (1) γを区分的になめらかな単純閉曲線とし,αはγ上にない点とする.このとき,整数nに対し て,∫γ(z− α)ndzの値を求めよ. (2) ∫ |z|=1 1 z(z− 2)dzの値を求めよ.(ヒント: 1 z(z−2) = 1 2 ( 1 z−2− 1 z ) である.(1)を用いよ.) (3) ∫ |z|=1 sin(z100) eezdzの値を求めよ. 問6.3 (6.4)を用いて, ∫ |z|=1 ( z +1 z )2n dz z の値を求めよ.これから, ∫ 2π 0 cos2nθdθ = 2π(2n− 1)!! (2n)!! を導 け.ただし,(2n− 1)!! = (2n − 1)(2n − 3) · · · 1, (2n)!! = (2n)(2n − 2) · · · 2である. 問6.4 a, bは正の実数とし,曲線γ : [0, 2π]→ Cをγ(t) = a cos t + ib sin tで定める(γは楕円の周である). (1) 問6.2(1)を用いて, ∫ γ 1 zdz := ∫ 2π 0 1 γ(t) dγ dt(t)dtの値を求めよ. (2) (1)の両辺の虚部を比べて,積分 ∫ 2π 0 1 a2cos2t + b2sin2 tdtの値を求めよ. 問6.5 Dを有限個の区分的になめらかな単純閉曲線に囲まれた有界領域とする.このとき,∫ ∂Dzdz =¯ 2i· area(D)を示せ.ここで,area(D) =∫∫DdxdyはDの面積である.(ヒント:Greenの定理を用いよ.)函数論
No. 7
Cauchy
の積分公式
5
月
21
日のレジュメ(後半は
5
月
28
日の予定)
Cauchyの積分公式は,Cauchyの積分定理を用いて証明できる.「Cauchyの積分公式」は「Cauchyの積分
定理」とならんで,1変数複素関数論の非常に大切な定理で,これから,正則関数のさまざまな強力な性質が 導かれる. Cauchyの積分公式 •(Cauchyの積分定理の補足)γを区分的になめらかな単純閉曲線とし,f (z)はγの像とその内部を含む 領域で正則とする.このとき,Cauchyの積分定理より,∫ γf (z)dz = 0となる.これから,適当な条件 のもとで,単純とは限らない区分的になめらかな閉曲線γについても,∫ γf (z)dz = 0がいえる(詳し くは講義で).
• 定理7.1(Cauchyの積分公式(Cauchy’s integral formula)) Dを有限個の区分的になめらかな単純
閉曲線を境界にもつ有界領域とする.fはDを含む開集合U上で定義された正則関数とする.このと き,z∈ Dに対して,このとき, f (z) = 1 2πi ∫ ∂D f (ζ) ζ− zdζ となる.ただし,∂Dの向きは有界領域Dを左手側にみる向きとする. Cauchyの積分公式は,境界でのfの値から,内部の点のf の値が決定されてしまう ことをいってい る. これも,複素関数の正則性が非常に強い性質であることを示している.今後の講義で見るように, Cauchyの積分定理,Cauchyの積分公式は非常に広い応用を持つ.
• 注意7.2 Cauchyの積分公式はCauchyの積分定理を用いて示すので,Cauchyの積分定理と同様にf
の条件は弱めることができる.(1) fはU の各点で複素微分可能を仮定すればよい.(f′(z)の連続性は 不要である.)(2) f はDで連続かつDで正則であればよい. • Cauchyの積分公式を証明するために,まず,その特別な場合である,Dが開円板の場合を証明する. 補題7.3(Cauchyの積分公式(円の場合)) ∆r(c) を c 中心で半径 r > 0 の開円板とする.f は ∆r(c) を 含 む 開 集 合 上 で 定 義 さ れ た 正 則 関 数 と す る .こ の と き ,z ∈ ∆r(c) に 対 し て ,f (z) = 1 2πi ∫ |ζ−c|=r f (ζ) ζ− zdζ が成り立つ.ここで,積分路の円周の向きは反時計回り(つまり,正の向き) とする. • 補題7.3の状況のもとで,z = cのときを考える.円周をc + reiθ(θ∈ [0, 2π])で表せば, (7.7) f (c) = 1 2π ∫ 2π 0 f (c + reiθ)dθ が成り立つ.この式は,正則関数f のある点での値は,その点を中心とする円周上での値の平均値に なっていることを示している.これを正則関数に対する平均値の性質(mean-value property)という. 一様収束などの復習 次週の正則関数の収束ベキ級数展開の証明に向けて,一様収束などを復習する. 2014 年 5 月 21 日
• KをCの部分集合とする.fn(z)(n = 1, 2, . . .)とf (z)はK上に定義された複素数値関数とする.こ のとき,関数列{fn}∞n=1がf にK上で一様収束する(converge uniformly)とは, lim n→∞zsup∈K|fn(z)− f(z)| = 0 となるときにいう. • 命題7.4 γ : [a, b]→ Cを曲線とする.γの像γ([a, b])上で定義された連続関数の列{fn}∞n=1がfに 一様収束しているならば,f も連続関数で,lim n→∞ ∫ γ fn(z)dz = ∫ γ f (z)dzが成り立つ. • 上を級数の場合に言い換える.連続関数un(z)を項とする級数f (z) = ∑∞ n=0un(z)がK上一様収束す るとは,はじめから順にとっていった部分和fn(z) := u0(z) +· · · + un(z)のなす関数列{fn(z)}∞n=0 が一様収束することと定める.このとき,上の命題は,関数項級数f (z) =∑∞n=0un(z)がγ([a, b])上 で一様収束すれば, ∫ γ ∞ ∑ n=0 un(z)dz = ∞ ∑ n=0 ∫ γ un(z)dzとなる(つまり,項別積分できる)ことをいって いる. • 関数項級数が一様収束することの判定法として,次の優級数判定法はよく使われる.(ただし,優級数判 定法が使えない場合も多く,一般には,関数項級数が一様収束することを判定するのは簡単ではない.)
命題7.5(優級数判定法(test by majorant series),WeierstrassのM-判定法(M-test)) Cの部分 集合K上の関数項級数∑∞n=0un(z)に対して,Mn≥ 0で,supz∈K|un(z)| ≤ Mn(n = 0, 1, . . .)か つ∑∞n=0Mnが収束するものが存在すれば, ∑∞ n=0un(z)はK上で一様収束する. • 例:f (z) =∑∞n=0anznを収束半径がρ > 0の収束ベキ級数とする.このとき,任意の0 < r < ρに対 して,f (z) =∑∞n=0anznは∆r(0) ={z ∈ C | |z| ≤ r}上で一様収束する(M -判定法を使えばよい). しかし,上でr = ρとは一般にとれない.つまり,f (z) =∑∞n=0anznは 収束円の内部∆ρ(0)で一様収 束するとは限らない.例えば,f (z) =∑∞n=0zn= 1−z1 は収束半径は1で,sup|z|<1f (z)−∑nk=0zk= sup|z|<1∑∞k=n+1zk= sup|z|<1z1n+1−z = ∞となるから,収束円の内部∆ρ(0)上では一様収束しない. • 上の例のように,領域D上で一様収束するという条件は強くて満たされないことも多い.そこで,もう 少し弱い条件を考える.fn(z)(n = 1, 2, . . .)とf (z)は領域D上の複素数値関数とする.Dに含まれ る任意のコンパクト集合(=有界閉集合)Kに対して*1,関数列{fn}∞ n=1がfにK上で一様収束する
とき,関数列{fn}∞n=1はf に広義一様収束(converge uniformly on compact subsets)するという.
• 例:収束ベキ級数f (z) =∑∞n=0anznは収束円の内部で広義一様収束する.実際,f (z)の収束半径をρ とし,Kを∆r(ρ)に含まれるコンパクト集合(=有界閉集合)とする.|z|はK上の連続関数であるか ら,K上で最大値rをとる*2.r < 1である.このとき,K⊆ ∆r(0)である.上で見たように,f (z) は∆r(0)上で一様収束するから,K上で一様収束する. • 領域D上で定義された連続関数の列{fn}∞n=1はf に広義一様収束しているとする.このとき,f も 連続関数になる(証明は実関数のときと同様である.練習問題).さらに,γ : [a, b] → DをDに含 まれる曲線とするとき,γの像γ([a, b])はコンパクト集合(=有界閉集合)だから,命題7.4より, lim n→∞ ∫ γ fn(z)dz = ∫ γ f (z)dzが成り立つ.