平成11年4月1日
肺腺扁平上皮癌手術症例の検討
山梨県立中央病院外科、病理科* 高橋章弘 天白典秀 吉田竜二 奥田純一 武藤俊治 千葉成宏 高瀬優 小山敏夫 要 旨 当院外科にて、1988年1月より1997年12月までに取り扱った原発性肺癌症 例298例のうち、日本肺癌学会による定義に基づいて病理組織学的に診断され た、腺扁平上皮癌5例について臨床病理学的に検討した。 本組織型は高齢の男性で、特に重喫煙者に多く認められた。腫瘍は末梢型で、 臨床病期については様々で、特徴は認められなかった。本組織型の予後は不良 であった。しかし、いずれの報告例においても絶対数が少なく、生物学的悪性 度の検討など、今後も課題の多い組織型であると思われた。 Key Words 肺癌、肺腺扁平上皮癌、日本肺癌学会分類 はじめに 肺癌組織型は多彩であり、時に混在して認められることがある。本組織型の 定義としては、日本肺癌学会による分類とWHOによる分類が一般的に用いら れているが、我々は“それぞれの組織が少なくとも20%以上存在する必要があ る”と数字で明確な基準を持つ日本肺癌学会分類を用いて、当施設での肺腺扁 平上皮癌の手術症例について検討した。 −3一方法と対象 対象は、1988年1月から1997年12月の10年間に当院にて手術を行った肺 癌症例298例のうち、摘出標本の病理組織所見が日本肺癌学会分類に基づく腺 扁平上皮癌と診断された5例について臨床病理学的に検討した(表1)。 結 果 腺扁平上皮癌症例は、肺癌手術症例298例中5例で1.7%であった。その5 例の平均年令は66.2才で、全例男性であった。喫煙歴では1例不明であったが、 他の4例はあり、Brinkman Index(B.1.)の平均は953であった。術前診断では、 4例は扁平上皮癌と診断されていた。腫瘍マーカーでは、5例中4例でCEAが 陽性であった。また症例4、5はCEA、 SCCともに陽性であった。腫瘍の存在 部位は全例末梢型であった。さらに最大腫瘍経の平均は5.22cmであった(表 2)。病理組織所見では、5例中4例は腺癌成分、扁平上皮癌成分ともに中分化 型で一致していた(表3)。予後は1例は21ヶ月現在生存中であるが、他の4 例はすべて19ヶ月を最長に死亡した(他病死はなかった)。当科における肺癌 手術症例の組織別の累積生存曲線において他の3型と比較しても、腺扁平上皮 癌は明らかに予後は悪かった(表4)。 考 i察 肺腺扁平上皮癌の検討についてはこれまでいくつかの報告があるが、その定 義についてについては比較的よく論じられている。山下らによると性差、予後、 発生部位等に、日本肺癌学会分類とWHO分類の間に有意差がなく、特にこだ わる必要がないのではないかとしている。しかし実際に検鏡すると、多彩な組 織像を示す肺癌組織ははっきりと腺癌成分と扁平上皮癌成分に分けることは困 難である部分も多く、20%以上とした方が客観性があると考え、今回我々は日 本肺癌学会分類の方を用いた。 本組織型は比較的まれであり、諸家の報告では肺癌の0.6−6.9%とされてい る。自験でも1.7%ときわめてまれな組織型であった。 −4一
平成11年4月1日 本組織型の特長は、その生物学的態度は腺癌のそれと類似するとされ、自験 例においても肺の末梢型発生、CEAの上昇などは類似しているが、 B.Lの平均 が高く、また全例男性であったという点は扁平上皮癌のそれと類似しており、 両方の特徴を有する組織型であると思われた。 日本肺癌学会分類による、肺腺扁平上皮癌の過去の報告例と当院に報告例の まとめでは、全例で104例で、平均年令は65.3才で、男性86例、女性18例と 男性に多く、中枢型肺癌が8例に対し、末梢型肺癌が96例と多かった。Stage は皿が比較的多く、進行例が多かった(表5)。 予後に関しては他の報告でも述べられているとおり、腺扁平上皮癌は他の組 織型と比較して不良であったが(表4)、この組織の生物学的悪性度が高いか どうかはさらに症例を重ねて検討する必要があると思われた。 結 語 本組織型はまれな組織型であるため、その生物学的特徴が未だはっきりと検 討されていない。ゆえに切除症例の成績も不良で、効果的な治療が選択されて いるとはいえない。生物学的悪性度の検討など、今後も課題の多い腫瘍型であ ると思われた。 参考文献 1)柴 光年 他:肺腺扁平上皮癌の臨床病理学的検討、肺 癌30(7);987− 992,1990 2)笠島 学 他:肺腺扁平上皮癌切除症例の臨床病理学的検討、肺 癌31 (6);895−900,1991 3)由田康弘 他:肺の腺扁平上皮癌の臨床病理学的検討、肺 癌32(4);543− 550,1992 4)山下眞一 他:肺腺扁平上皮癌の臨床病理像と予後、日胸52(1) ;25−32,1993 5)水島豊他:肺腺扁平上皮癌34例の臨床的検討、肺癌35(1);23−28,1995 6)向田尊洋 他:肺腺扁平上皮癌の臨床病理学的検討、胸部外科49(12); 975−981・1996 _5_
山梨肺癌研究会会誌12巻1号1999 表1 当院肺癌手術症例(1988年1月一1997年12月) 組織型 症例数(%) 5年生存率 腺 癌 G平上皮癌 @小細胞癌 @大細胞癌 B扁平上皮癌 ェ類不能癌 174例(5&4) P06例(35θ V例(23) T例(1の T(例1フ) P例(0.3) 46.1% S7.3% S5.8% 計 298例 表2 当院における腺扁平上皮癌症例(5例)の臨床所見 症例 年令ノ性 喫煙歴(BJ.) 術前診断 腫瘍マーカー 腫瘍の存在部 ハと大きさ 予 後 i術後経過) 1 81/男 15本x30年 @(450) 扁平上皮癌 CEA 1.9 rCC O.9, mSE 6.0 右側、末梢型 T5叉2、5x6cm 13ヶ月で死亡 2 58/男 20本x28年 @(560) 腺扁平上皮癌 CEA 73 bA 19−9 P304.9 右側、末梢型 R.3x2.Ox2.2cm 19ケ月で死亡 3 59!男 40本x20年 @(800) 扁平上皮癌 CEA B.1 rCC O.9 左側、末梢型 @4x3x3cm 11ケ月で死亡 4 65/男 不 明 扁平上皮癌 CEA 12.8 rCC 7.0, mSE 7.2 右側、末梢型 @6x4×3cm 9ヶ月で死亡 5 68/男 50本x40年 @(2000) 扁平上皮癌 CEA 5.8 rCC 8.4 右側、末梢型 U.8x2.6x6.Ocm 21ヶ月生存中 表3 病理組織所見 症 例 分化度(構成比%) 転 移 腺癌成分 扁平上皮癌成分 1 中分化型(70) 中分化型(30) 骨 @リンパ節 i扁平上皮癌) 2 中分化型(50) 中分化型(50) 肝 3 中分化型(60) 中分化型(40) 副腎
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中分化型(70) 中分化型(30) 骨 5 低分化型(30) 高分化型(70) な し 一6一平成11年4月1日 表4 当院における、肺癌組織型別累積生存率 生存率(%) 1。。 Squ・rn。u、 C,ll、Carcin。ma’